電磁誘導と交流の解説
文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月2日
電磁誘導と交流は、「磁場の変化が起電力を生む」というファラデーの法則から始まり、動く導体棒、自己誘導と相互誘導、交流の発生と実効値、コイルとコンデンサーのリアクタンス、共振、電気振動まで進む単元です。前半は力学と結びついた導体棒の問題、後半は交流回路の計算で、性格が変わります。この記事では、前半の「起電力→電流→力→運動」の連鎖と、後半の「単振動との対応」を軸に説明します。
ファラデーの法則とレンツの法則
コイルを貫く磁束 が変化すると、その変化率に比例する起電力 が生じます。磁束を変える手段は、 を変える、 を変える、面の向きを変える、の3つです。ファラデーの電磁誘導の法則、面積が変化するコイルの起電力、標準の磁束の時間変化のグラフで、「磁束の大きさ」ではなく「変化率」が起電力を決めることを確認してください。グラフの傾きが起電力です。
誘導電流の向きは、「磁束の変化を妨げる向き」です(レンツの法則)。もし妨げる向きでなければ、電流が磁束を増やし、それがさらに電流を増やして永久機関になってしまう、というエネルギー保存の要請から決まります(レンツの法則)。
動く導体棒は「電池」になる
磁場中を速さ で動く長さ の導体棒には、 の起電力が生じます。棒の中の電子がローレンツ力で片側に寄る、という見方と、棒が掃く面積の磁束の変化率、という見方が一致します。磁場中を動く導体棒の起電力で確認してください。
この起電力を電池とみなすと、回路に電流 が流れ、その電流が磁場から力 を受けます。この力は必ず運動を妨げる向き(レンツの法則)で、電磁ブレーキの原理です。回路につないだ導体棒の電流、誘導電流が流れる棒が受ける力、標準のコの字レール上の導体棒、斜面レール上の導体棒の終端速度、応用のエネルギー総合の順に進むと、「起電力 → 電流 → 力 → 運動方程式 → 終端速度」の連鎖と、「手がした仕事 = ジュール熱」というエネルギー収支が身につきます。制動力が で速度に比例する、という形は、空気抵抗と同じです。
自己誘導とコイルのエネルギー
コイル自身の電流が変化すると、それを妨げる起電力 が生じます(自己誘導)。 は「電気の慣性」にあたり、コイルの電流は急には変えられません。蓄えられるエネルギーは で、コンデンサーの の双子です。自己誘導、コイルに蓄えられるエネルギー、標準のスイッチ切り替え、応用のRL回路の過渡現象で確認してください。コイルを含む回路は、直後は「断線」・十分後は「導線」で、コンデンサーと正反対です。
交流は「実効値」と「リアクタンス」で扱う
交流の電圧・電流は正弦波で、その大きさは実効値(最大値の )で表します。実効値は「同じ発熱をする直流の値」で、 の平均が であることから来ます。交流の実効値、周波数・周期・角周波数で確認してください。
コイルとコンデンサーは、交流に対して「抵抗のようなもの」(リアクタンス)として振る舞います。コイルは (高周波を通しにくい)、コンデンサーは (低周波を通しにくい)です。ただし、電流と電圧の位相が ずれるので、抵抗と合成するときは直角三角形で です(インピーダンス)。標準の誘導リアクタンス、容量リアクタンス、RL直列回路、応用のRLC直列回路で、3:4:5 の直角三角形で合成する練習をしてください。
電力を消費するのは抵抗だけで、平均電力は です。 が力率です(標準の平均電力と力率、応用の力率と有効電力)。
電気振動は単振動と同じ式
コイルとコンデンサーをつなぐと、電荷が往復する電気振動が起こり、角振動数は です。ばね振り子との対応(電荷 ↔ 変位、電流 ↔ 速度、 ↔ ばね定数、 ↔ 質量)を表にすると、単振動の知識がそのまま使えます。RLC直列回路で になる周波数が共振周波数で、 と一致します。応用の電気振動とLC共振で、この対応表を確認してください。
変圧器と送電
変圧器は、1次と2次のコイルの巻数比で電圧を変え、電力は保存されるので電流は逆比になります。交流でしか働きません(変圧器の電圧、電流)。送電損失 を減らすには電圧を上げて電流を減らす、という筋道は物理基礎の復習です(標準の送電と変圧器、応用の電力損失と変圧比)。
学習の順序と次の単元へ
基礎12問でファラデー、面積変化、レンツ、導体棒、電流、力、自己誘導、エネルギー、実効値、変圧器、周波数を確認し、標準12問でグラフ、レール、終端速度、相互誘導、切り替え、リアクタンス、インピーダンス、送電、力率、過渡、ジュール熱を扱い、応用8問でエネルギー総合、電気振動、RLC、結合、発電機、送電、過渡、力率へ進みます。
この単元は純計算・概念問題が多く、図はレールと磁石、過渡現象のグラフ、磁束のグラフを中心に7枚に絞ってあります。最難関編には、磁場の領域を落ちるコイル、共振でコイルの電圧が電源を超える理由、抵抗のないループの磁束保存、モーターの逆起電力、回転する棒の起電力、変圧器のインピーダンス変換、レール上の2本の棒、コイルの遮断で出る高電圧など、電磁誘導の物理を深く扱う問題を集めました。次の「原子」では、光と電子の粒子性・波動性を扱い、物理の全体を締めくくります。