統計的な推測の解説

文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月2日

統計的な推測は、確率変数の期待値と分散から始まり、二項分布、正規分布、標本平均の分布を経て、推定と仮説検定へ進む単元です。新課程で数学Bに入り、共通テストでも出題されるようになりました。計算は四則演算と正規分布表の読み取りだけですが、「なぜ標準化するのか」「信頼区間の幅は何で決まるのか」という手順の意味を理解していないと、問題文の言い回しが変わっただけで手が止まります。この記事では、この単元を「分布の性質」「標本の分布」「推定と検定」の3段に分けて説明します。

確率変数と分布の性質

確率変数 の期待値 は「確率で重みをつけた平均」、分散 は「散らばりの大きさ」です。数学Iのデータの分析の平均と分散を、「データの個数で割る」代わりに「確率で重みをつける」形にしたものです。確率変数の期待値分散と標準偏差で定義を確認してください。

1次式の変換 では、期待値は 、分散は です。データの分析の変量の変換と同じ規則です(1次式の期待値分散)。独立な確率変数の和では、期待値も分散も足し算になります(期待値の加法性、標準の独立な確率変数の和の分散)。分散が足せるのは「独立」のときだけ、という条件を忘れないでください。

二項分布 は、成功確率 の試行を 回繰り返したときの成功回数の分布で、 です。二項分布の期待値分散確率で、数学Aの反復試行との対応を確認してください。

正規分布は「標準化して表を引く」

正規分布 に従う の確率は、 と標準化して標準正規分布 に直し、正規分布表で読みます。表には の確率しか載っていないので、対称性を使って左側や区間の確率に直します。正規分布の標準化標準正規分布の確率標準化して表、標準の区間の順に進んでください。このサイトでは、釣鐘型の曲線と求める確率の面積を塗った図を付けてあります。「表の値がどの面積か」を図で確かめると、対称性の使い方で迷わなくなります。

二項分布は、 が大きいとき正規分布 で近似できます。「200回投げて表が110回以上出る確率」のような問題は、この近似で解きます(標準の二項分布の正規近似、応用の同名の問題)。

標本平均の分布が推定の土台

母平均 、母標準偏差 の母集団から大きさ の標本をとると、標本平均 は、期待値 、標準偏差 の正規分布に(近似的に)従います。標本を大きくするほど、標本平均は母平均の近くに集まる、ということです。標本平均の期待値と標準偏差と標準の標本平均の分布と確率で、 で割ることを確認してください。

推定は「信頼区間」、検定は「棄却するかどうか」

母平均の95%信頼区間は です。標本平均の分布の「真ん中95%」を、母平均を中心に置き直した式です。母比率の信頼区間は、 に置き換えます。標準の母平均の信頼区間母比率の信頼区間で式を確認し、応用の信頼区間の幅と標本の大きさ必要な標本数で、「幅を半分にするには標本を4倍にする」という関係を確かめてください。

仮説検定は、「帰無仮説(たとえば『コインは公正』)のもとで、観測された結果が起こる確率が5%より小さければ、帰無仮説を棄却する」という手順です。両側検定なら 、片側なら が棄却域です。応用の仮説検定(両側)片側で、棄却域の図を見ながら手順を固めてください。「棄却できない」は「帰無仮説が正しい」ではなく「否定する根拠がない」という意味である点も、この単元でよく問われます。

つまずきやすいところ

最も多い誤りは、標本平均の標準偏差を のまま(あるいは と)して計算することです。 で割る理由は、独立な 個の和の分散が になり、 で割った平均の分散が になるからです。この導出を1度たどると、忘れなくなります。

正規分布表の読み方で、「」の表なのか「」の表なのかを問題文で確認しないまま計算する誤りも多いです。このサイトの問題は、表の値を問題文で与えているので、どの面積を指しているかを図で確かめてください。

学習の順序と入試での出方

基礎12問は、期待値と分散、1次式、二項分布、標準化と正規分布表、標本平均、加法性の順です。標準12問で分布の決定、正規近似、標本平均の確率、信頼区間、線形性を扱い、応用8問で独立な和、正規近似、標本の大きさ、仮説検定へ進みます。

共通テストでは、正規分布表を使う確率、信頼区間、仮説検定の判断が定番で、計算量は少なく、手順の意味を問う設問が中心です。実戦編には二項分布の期待値・分散の証明、最難関編には不偏分散(なぜ で割るか)、二項分布の再生性、有限母集団修正など、公式の背景を扱う問題を集めました。

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