数学B / 統計的な推測

仮説検定(両側)

★★★ 応用仮説検定

問題

ある硬貨を 回投げたところ、表が 回出た。この硬貨は「表と裏が同じ確率で出る」といえるか。有意水準 で両側検定せよ。両側 の棄却域の境界は とする。

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『表と裏が同じ確率』を仮説として立て、その仮説のもとで観測値がどれほど珍しいかを標準化した値で測る。両側の棄却域と比べて結論を述べる — 結論の言い回しまで含めて答案だ。

解答・解説

方針

帰無仮説「表の確率 」を立てる。この仮定のもとで表の回数 とみなせる。観測値 を標準化した が棄却域()に入るかを調べる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 検定では、示したい主張の反対を仮説として立てる。ここでは帰無仮説「硬貨は公正 」だ。

この仮説が正しいと仮定すると、表の回数 とみなせる。

観測値 を標準化して、平均からどれだけ離れているかを で測る。

両側で なら「珍しすぎる」として仮説を棄却する。

定理両側検定(有意水準 ): なら帰無仮説を棄却する

① 帰無仮説を立てる。 「硬貨は公正」すなわち表の確率

② 仮説のもとで分布を出す。 を正規近似。

③ 観測値を標準化する。 回。

④ 棄却域と比べる。 両側 の棄却域は なので、棄却域に入る。

xyO1.96-1.96
両側5%の棄却域(|Z|>1.96)。Z=3.0 は棄却域内

結論。 帰無仮説「公正」は棄却される。この硬貨は表と裏が同じ確率で出るとはいえない。

まとめ:仮説検定は「まず『差はない』(公正)と仮定 → その仮定でどのくらい珍しい結果か で測る → 珍しすぎ()なら仮定を捨てる」。 を大きく超え、偶然とは考えにくい。

発展 — 一歩先へ。 有意水準 とは、じつは「正しい仮説を誤って棄却してしまう確率」を まで許す、という約束だ。

公正な硬貨でも、 回投げれば偶然 となることが約 起きる。そのときは公正なのに「公正でない」と誤って結論してしまう。これを第一種の誤りという。

水準を に厳しくすればこの誤りは減る。だが今度は、本当に偏った硬貨を「公正」と見逃す第二種の誤りが増える。 種類の誤りは、片方を抑えると片方が膨らむ関係にある。

だから「棄却されなかった」は「公正だと証明された」ではない。あくまで「公正を否定するほどの証拠はなかった」という控えめな結論にとどまる。

Z=3.0 は棄却域にあり、「同じ確率」とはいえない(公正でない)

別解

別解 — 回数のものさしで棄却域を作る(苦手な人向けの直接ルート)。 標準化せず、表の回数 のまま「ありうる範囲」を先に決めてしまう。

仮説が正しいなら平均 、標準偏差 。偶然の範囲(中央 )は、平均から標準偏差 個ぶんの内側だ。

観測値は 回。この受容域 の外側にはみ出している。

だから仮説は棄却される。 に直す本解と同じ結論だ。回数のものさしのままだと、 が「ありうる範囲」からどれだけ外れたかが直に見える。

ポイント

  • 帰無仮説()のもとで標準化。
  • 両側 で棄却。

よくある間違い

  • 帰無仮説を「硬貨は公正でない」と立ててしまい、疑う対象と仮定する対象を逆にする。
  • 標準偏差を でなく分散 で標準化し、 などと誤る。
  • と大きな値が出ても「棄却」の一言を書かず、結論の言い切りを省いてしまう。