数学B / 統計的な推測

期待値の加法性

★ 基礎期待値

問題

確率変数 について のとき、 を求めよ。

ヒントを見る

期待値の和の性質(独立でなくても成り立つ)をそのまま使うだけ。

解答・解説

方針

期待値は和に分けられる( が独立かどうかによらず)。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 期待値は、そのまま足せる。

しかも、条件がひとつもない。

が独立でなくてもよい。 互いにどんなに絡み合っていても、平均は足せる。

これは、驚くべき強さだ。

分散はこうはいかない。

分散を足すには、独立という条件が要る。

なぜ差が出るのか。 期待値は「 次の量」だから、和と交換できる。分散は「 乗の量」なので、 の絡み合い(共分散)が効いてくるからだ。

「平均は無条件で足せる。散らばりは独立でないと足せない。」

この対比を、まず頭に入れよう。 計算自体は、公式に入れるだけである。

公式(期待値の加法性。独立でなくても成立)

まとめ:期待値は「和の期待値 = 期待値の和」がいつでも成り立つ(独立の条件は不要)。これは分散とちがう点。分散の加法性 独立のときだけ成り立つ。

発展 — 一歩先へ。 独立でないとき、分散の加法性はどう壊れるのか。正しい式を書いてみよう。

最後の項が、共分散である。

が平均より大きいとき、 も大きくなりがちか」を測る量だ。

  • 一緒に大きくなる( が上なら も上)→ 共分散は正分散は加法性より大きくなる
  • 逆に動く( が上なら は下)→ 共分散は負分散は小さくなる
  • 無関係(独立)共分散は ちょうど足し算になる

独立なら共分散が消える。 だから が成り立っていたのだ。

この式が、資産運用の基本原理になっている。

分散投資。

つの株に半分ずつ投資する。 リターンを 、リスク(標準偏差)をそれぞれ とする。

つが同じ動きをする株(共分散が正で大きい)なら、リスクはほとんど減らない。片方が下がるとき、もう片方も下がるからだ。

逆に、逆向きに動く株(共分散が負)を組み合わせると、リスクは大きく減る。片方の損を、もう片方の益が埋める。

完全に独立な株なら、リスクは

減る。 個に分散すれば 標本平均とまったく同じ式だ。

「卵を つのカゴに盛るな」という格言は、この式の言い換えである。

そして、 年の金融危機は、この式の裏切りだった。

平時には独立に見えた資産が、危機のときには一斉に下落した。 共分散が突然、大きな正の値に化けたのだ。

「独立だと思っていたものが、独立ではなかった」

分散を足す前に、独立性を確かめよ — この教訓は、教室の中だけの話ではない。

別解

「独立でなくても足せる」を、極端な例で実感する。

いちばん独立から遠い状況を作ってみよう。

にする。 のコピーだ。これ以上ないほど、べったり従属している。

具体的に、 ずつとるとする。

このとき である。

期待値の加法性が正しいなら

直接確かめる。 ずつとるから

べったり従属でも、期待値はちゃんと足せた。

では、分散はどうか。

まず を計算する。 平均 からのズレは

「独立なら足せる」の式をそのまま使うと

本当か。直接計算しよう。 をとり、平均 。ズレは

合わない! 実際は 倍もズレている。

当然だ。 が正しい。

は独立ではないので、分散の加法性は使えなかった。

独立なら、ちゃんと成り立つことも確かめよう。

サイコロ 個( は独立)。 個の分散は

通りすべての和()から直接計算すると、ぴったり になる ✓

まとめると。

この つの違いが、統計の議論では決定的に効いてくる。

「平均は自由に足せる。散らばりは、独立を確かめてから足す。」

うっかり分散を足す前に、必ず「これは独立か?」と自問する習慣をつけたい。

ポイント

  • (いつでも成立)。
  • 分散の加法性は独立のときだけ(区別する)。

よくある間違い

  • 期待値の加法性に「独立」という条件が要ると思い込み、独立性を確かめようとして手が止まる。期待値は無条件で足せる
  • 分散も同じ感覚で と、独立を確かめずに使ってしまう。分散の加法性は独立のときだけ
  • も無条件で成り立つと思ってしまう。積の期待値が分かれるのは、独立のときだけ