数学B / 統計的な推測
正規分布の確率(標準化して表)
問題
確率変数 が正規分布 に従うとき、 を求めよ。ただし とする。
ヒントを見る
の範囲の両端をそれぞれ標準化すると、 の範囲に翻訳される。翻訳したあとの確率は、表の値そのもの。
解答・解説
方針
の範囲を標準化して の範囲に直し、正規分布表を引く。、。 を読む。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 正規分布の確率計算は、いつも同じ ステップだ。
① 標準化する。 で、 の範囲を の範囲に翻訳する。
② 図で確認する。 求める面積が、釣鐘のどこにあたるか。
③ 表を引く。
この問題では、範囲の両端を標準化する。
は、 に翻訳された。
あとは表を引くだけ。 表が返すのは、まさに「 から までの面積」だ。
「 の世界」から「 の世界」へ移し、表を引き、確率を持ち帰る。 この往復が、正規分布計算の基本形である。
① 両端を標準化する。 。
② の範囲で表を引く。
まとめ:一般の正規分布の確率は「標準化 → 表」の 段。 の範囲の両端を に直せば、あとは標準正規分布表を読むだけ。範囲がそのまま から始まる形になり、表の値そのものになった。
発展 — 一歩先へ。 なぜ、 から までの面積を「表」で与えるのか。自分で積分すればよいのでは?
それができないのだ。
標準正規分布の式は、こうだ。
この関数の原始関数(積分した形)は、初等関数では書けない。
「まだ見つかっていない」のではない。「存在しないことが証明されている」( 年、リウヴィルによる)。
、、、 — こうしたおなじみの関数を、どう組み合わせても の積分は書けない。
だから、数値計算した表を作るしかない。
手計算では絶望的だが、面白い事実もある。
「 から まで」の全積分なら、きれいに求まるのだ。
ガウス積分と呼ばれる、有名な式である。
途中は計算できないのに、全体だけは できっちり出る。
なぜか。 つ掛けて 次元の積分にし、極座標に変換すると、突然計算できるようになる( 次元では不可能、 次元では可能 — これも数学の不思議のひとつだ)。
この があるからこそ、正規分布の式に という係数が付いている。
全体の面積を (確率の総和)にするための、正規化の係数である。
釣鐘曲線の式に が現れる理由は、ここにある。円周率が、確率の式に顔を出す。
円とも三角形とも無縁に見える正規分布の中に、 が住んでいる。 数学のあちこちで と が出会うのは、偶然ではない — そう思わせる、美しい事実である。
別解
標準化する前に、「 何個分か」で読む。
問題の範囲を、よく見てほしい。
は平均 そのもの。 そして は
平均から、標準偏差ちょうど 個分だけ上。
つまりこの範囲は、 から までである。
ここで、正規分布の重要な性質を使う。
だから、計算せずに答えが分かる。
なぜ、分布によらず同じなのか。
正規分布は、 を"ものさし"にすると、すべて同じ形になるからだ。
どれも面積は 。
身長の分布でも、テストの点でも、工場の部品の寸法でも — 「平均から 上まで」の割合は、必ず である。
これが「正規分布はひとつしかない」ということの意味だ。
世の中に正規分布は無数にあるように見える。だが、 という自分のものさしで測れば、すべて同じ つの分布に重なる。
だから、表は 枚で足りる。
この見方の実用性。
「平均 点、 点のテストで、 点から 点の人は何%か」
標準化の計算をしなくても、「 から だから 」と即答できる。
さらに、–– ルールと組み合わせると。
- 点 〜 点()→ 約
- 点 〜 点()→ 約
- 点以上( 以上)→ 約
表を引かずに、分布の全体像が読める。
標準化は「計算の手続き」だが、その本質は「 をものさしにして世界を見る」ことなのだ。
ポイント
- 両端を標準化して の範囲に。
- 。
よくある間違い
- 片方の端だけ標準化して、もう一方を のまま表に持ち込む。範囲の両端を、必ず両方 に直す
- が平均そのものだと気づかず、 の下端を 以外の値にしてしまう。 なら必ず
- の を と読み、 としてしまう。 は分散で、