数学B / 統計的な推測

正規分布の確率(標準化して表)

★ 基礎正規分布標準化

問題

確率変数 が正規分布 に従うとき、 を求めよ。ただし とする。

ヒントを見る

の範囲の両端をそれぞれ標準化すると、 の範囲に翻訳される。翻訳したあとの確率は、表の値そのもの。

解答・解説

方針

の範囲を標準化して の範囲に直し、正規分布表を引く。 を読む。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 正規分布の確率計算は、いつも同じ ステップだ。

① 標準化する。 で、 の範囲を の範囲に翻訳する。

② 図で確認する。 求める面積が、釣鐘のどこにあたるか。

③ 表を引く。

この問題では、範囲の両端を標準化する。

は、 に翻訳された。

あとは表を引くだけ。 表が返すのは、まさに「 から までの面積」だ。

の世界」から「 の世界」へ移し、表を引き、確率を持ち帰る。 この往復が、正規分布計算の基本形である。

重要正規分布の確率は、標準化して の範囲に直し、表を引く

① 両端を標準化する。

の範囲で表を引く。

xyO01
N(50,10²)を標準化。0≦Z≦1 の面積 0.3413

まとめ:一般の正規分布の確率は「標準化 → 表」の 段。 の範囲の両端を に直せば、あとは標準正規分布表を読むだけ。範囲がそのまま から始まる形になり、表の値そのものになった。

発展 — 一歩先へ。 なぜ、 から までの面積を「表」で与えるのか。自分で積分すればよいのでは?

それができないのだ。

標準正規分布の式は、こうだ。

この関数の原始関数(積分した形)は、初等関数では書けない。

「まだ見つかっていない」のではない。「存在しないことが証明されている」( 年、リウヴィルによる)。

— こうしたおなじみの関数を、どう組み合わせても の積分は書けない。

だから、数値計算した表を作るしかない。

手計算では絶望的だが、面白い事実もある。

から まで」の全積分なら、きれいに求まるのだ。

ガウス積分と呼ばれる、有名な式である。

途中は計算できないのに、全体だけは できっちり出る。

なぜか。 つ掛けて 次元の積分にし、極座標に変換すると、突然計算できるようになる( 次元では不可能、 次元では可能 — これも数学の不思議のひとつだ)。

この があるからこそ、正規分布の式に という係数が付いている。

全体の面積を (確率の総和)にするための、正規化の係数である。

釣鐘曲線の式に が現れる理由は、ここにある。円周率が、確率の式に顔を出す。

円とも三角形とも無縁に見える正規分布の中に、 が住んでいる。 数学のあちこちで が出会うのは、偶然ではない — そう思わせる、美しい事実である。

別解

標準化する前に、「 何個分か」で読む。

問題の範囲を、よく見てほしい。

は平均 そのもの。 そして

平均から、標準偏差ちょうど 個分だけ上。

つまりこの範囲は、 から までである。

ここで、正規分布の重要な性質を使う。

だから、計算せずに答えが分かる。

なぜ、分布によらず同じなのか。

正規分布は、 を"ものさし"にすると、すべて同じ形になるからだ。

どれも面積は

身長の分布でも、テストの点でも、工場の部品の寸法でも — 「平均から 上まで」の割合は、必ず である。

これが「正規分布はひとつしかない」ということの意味だ。

世の中に正規分布は無数にあるように見える。だが、 という自分のものさしで測れば、すべて同じ つの分布に重なる。

だから、表は 枚で足りる。

この見方の実用性。

「平均 点、 点のテストで、 点から 点の人は何%か」

標準化の計算をしなくても、「 から だから 」と即答できる。

さらに、 ルールと組み合わせると。

  • 点 〜 ()→ 約
  • 点 〜 ()→ 約
  • 点以上( 以上)→ 約

表を引かずに、分布の全体像が読める。

標準化は「計算の手続き」だが、その本質は「 をものさしにして世界を見る」ことなのだ。

ポイント

  • 両端を標準化して の範囲に。

よくある間違い

  • 片方の端だけ標準化して、もう一方を のまま表に持ち込む。範囲の両端を、必ず両方 に直す
  • が平均そのものだと気づかず、 の下端を 以外の値にしてしまう。 なら必ず
  • と読み、 としてしまう。 は分散で、