数学B / 統計的な推測
1次式の分散
問題
のとき、 を求めよ。
ヒントを見る
散らばりを表す分散は、全体をずらす操作()と拡大する操作( 倍)で受ける影響が違う。それぞれどう効くのだったか。
解答・解説
方針
分散は「(平行移動)では変わらず、 では 倍になる」。。定数 を足してもバラつきは変わらない点に注意。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 期待値は 次式を素通りした。分散は、そうはいかない。
つの操作を、分けて考えよう。
まず「」。 全員の点数に 点足す。散らばりは変わるか。
変わらない。 全員が同じだけ動くので、互いの間隔はそのままだ。
次に「」。 全員の点数を 倍する。散らばりはどうなるか。
間隔も 倍に広がる。 つまり標準偏差(ズレの大きさ)が 倍。
そして分散は、ズレの 乗だから
平行移動には反応せず、拡大には 乗で反応する。 これが分散の性格である。
公式に 、 を入れる。 は分散に効かない。
まとめ:分散は「バラつきの大きさ」なので、全体を平行移動()しても変わらない。 倍に引き伸ばすとバラつきは 倍になる。 ではなく 倍がポイント。
発展 — 一歩先へ。 「平行移動で不変、拡大で 倍」— この性質は、単位換算の場面で牙をむく。
摂氏と華氏。
ある都市の気温(摂氏)の標準偏差が ℃ だとする。華氏では?
標準偏差は 倍。
分散は 倍だ。
は、どちらにも効かない。 全体が ずれるだけで、散らばりは変わらないからだ。
ここで、 つの疑問が湧く。
「気温の散らばりが、単位を変えただけで変わるの?」
変わる。 それは「 cm の散らばり」を mm で測ると「 mm の散らばり」になるのと同じ、単なる目盛りの読み替えだ。散らばりの"実質"は同じである。
では、単位に依存しない散らばりの指標はないか。
ある。変動係数という。
割り算だから、単位が約分されて消える。
この指標が効く場面。
「体重の標準偏差 kg」と「身長の標準偏差 cm」— どちらが散らばっているか? 単位が違うので、直接は比べられない。
変動係数なら比べられる。
体重のほうが、相対的にずっと散らばっている。
「 で不変、 で 倍」という標準偏差の性質があるからこそ、 で単位が消える。
性質を知ることは、道具を作れるようになることだ。
別解
定義から導いて、「なぜ なのか」を目で見る。
とおく。 まず期待値は
分散の定義は「平均からのズレの 乗の平均」だった。
中身のズレを計算する。
が、きれいに消えた!
ここがすべてだ。 平均も一緒に ずれるので、ズレを測ると は打ち消される。
本解と同じ答え ✓
この導出が語ること。
- が消えるのは、平均も同じだけ動くから。 「ズレ」を見る限り、平行移動は無関係
- が 倍になるのは、 乗の中で が 回かかるから
数直線で見ると、もっとはっきりする。
もとの値 は、平均 のまわりに散らばっていた。
倍すると — 間隔がすべて 倍。 平均 からの距離も 倍。
すると — 全体が右へ 移動。距離は変わらない。
標準偏差は 倍(素直)、分散は 倍( 乗)。
単位を意識すると、納得できる。
身長を cm から mm に直す( 倍)と、標準偏差も 倍になる(単位が同じだから当然)。だが分散の単位は cm なので、 倍になる。
「分散は 乗の世界の量」 — この一言を覚えておけば、 を忘れない。
ポイント
- 。
- は分散に影響しない、 で 倍。
よくある間違い
- と、期待値と同じ感覚で計算する。分散は 次式を素通りしない
- を 乗し忘れて とする。ズレを 乗する定義から、係数も 乗される
- が分散を増やすと考える。全員が同じだけ動いても、互いの間隔(散らばり)は ミリも変わらない