数学B / 統計的な推測

二項分布の分散

★ 基礎二項分布分散

問題

確率変数 が二項分布 に従うとき、分散 と標準偏差 を求めよ。

ヒントを見る

二項分布の分散は、 と『失敗の確率』の つで書ける。当てはめるだけだが、失敗の側を忘れるミスが多い。

解答・解説

方針

二項分布の分散は ()。 を入れる。標準偏差は分散の平方根。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 二項分布と分かった時点で、平均も分散も公式から即座に出る。

この つは、セットで覚える。

は「はずれる確率」だ。 分散の式に の両方が出てくることには、意味がある。

極端な場合を考えてみよう。

  • (必ず当たる) なら で、散らばりゼロ(毎回必ず当たるから、回数は常に 回)
  • (絶対当たらない) でも やはり散らばりゼロ
  • (五分五分) のとき は最大 — いちばん予測しづらい

「確実なら散らばらない。五分五分がいちばん揺れる。」 という式は、その直感を数式にしたものだ。

あとは、 を代入するだけ。

公式二項分布 の分散 ()、標準偏差

① 分散を計算する。

② 標準偏差を求める。

まとめ:二項分布は「期待値 、分散 」をセットで覚える。定義から計算しなくても、この公式で一発。標準偏差はそのルートだ。

発展 — 一歩先へ。 という「ものさし」は、工場の品質管理を支えている。

シックスシグマという言葉を聞いたことがあるだろうか。

製品の寸法にはバラつきがある。平均 、標準偏差 で散らばるとしよう。

規格の許容範囲が なら、不良品は約 個作って 個の不良だ。

これでは足りない、というのが現代の製造業だ。

台の車には 万点の部品が使われる。 部品あたり の不良率なら、車 台が完璧である確率は

ほぼゼロ。 どこかに必ず不良品が混ざる。

そこで、許容範囲を に広げる(逆に言えば、 を小さくして が規格内に収まるようにする)。

不良率は、 万個あたり 個。 これがシックスシグマの目標である。

から へ。 たった 倍だが、不良率は 倍以上改善する。正規分布のすそが、指数関数的に薄いからだ。

を減らす つの道。

(1) 工程そのものを改善する(バラつきの原因を潰す)

(2) の法則を使う — 複数回測って平均をとれば、平均のバラつきは に減る

測定の世界では、(2) が日常的に使われている。

回の測定の誤差が mm でも、 回測って平均すれば、誤差は mm になる。

ただし、精度を 倍にするには測定回数が 倍必要。 の法則は、恵みであると同時に、厳しい制約でもある。

世論調査で「 人に聞けば十分」と言われるのも、 人に増やしても誤差が 分の にしかならないからだ。

を知ることは、「どこまで信じてよいか」を知ることである。

別解

答えの が、何を意味するかを読む。

計算して終わりにしない。「 という数は、何を語っているのか」を考える別解である。

まず、平均は 回、標準偏差は 回。

標準偏差とは「だいたいこれくらいズレる」という目安だった。だから

この範囲に、実際どれくらい収まるのか。

厳密に計算すると(二項分布の確率をすべて足す)

回に 回は、この範囲に収まる。

()まで広げると

ほとんどすべてがこの中だ。

回引いて、当たりは 回から 回のあいだ」 — これが実感である。

次に、標本を増やすとどうなるか。

回引いたら?

回数を 倍にしたら、()にしかならない。

に比例する。 これが有名な 法則である。

ここに、統計のいちばん大事な事実がある。

「平均に対するブレの割合」を見よう。

回数を 倍にすると、相対的なブレは半分になった。

「たくさん試すほど、割合は安定する」 — これが大数の法則の中身である。

回では「当たり率 」とブレるが、 回引けば なので

当たり率は に収まる。

回数が増えるほど、実測の割合は真の確率 に近づいていく。

だからこそ、カジノは必ず儲かる。 回ごとの勝負は運まかせでも、何万回も繰り返せば、割合はきっかり期待値に収束する。

という数の裏には、「大量に繰り返せば予測できる」という統計学の根拠が横たわっている。

ポイント

  • 二項分布

よくある間違い

  • と同じ にしてしまう。(はずれる確率)
  • を忘れて とする。期待値 と分散 の違いを、 の有無で区別する
  • 分散 をそのまま標準偏差として答える。 まで戻さないと、回数と同じ単位にならない