数学B / 統計的な推測

1次式の期待値

★ 基礎期待値変換

問題

のとき、 を求めよ。

ヒントを見る

倍して を足すと、平均はどう変わるか — 期待値の 次式の性質を思い出そう。分布表を作り直す必要はない。

解答・解説

方針

期待値は 次式をそのまま通す。 を入れる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 とは、「 倍して、 足す」という変換だ。

全員のテストの点を 倍して 点おまけしたと思えばいい。

そのとき、平均点はどうなるか。

当然、平均も 倍して 足した値になる。 全員に同じ操作をしたのだから、平均も同じ操作を受ける。

期待値は、 次式をそのまま通り抜ける。 これを期待値の線形性という。

直感どおりの性質だが、あとで「分散はそうならない」ことを学ぶと、この当たり前さがありがたく感じられる。

まずは公式に値を入れるだけ。

公式(期待値は 次式をそのまま通す)

公式に を入れる。

まとめ:期待値は「 の形をそのまま通す」。 倍して 足した量の平均は、平均を 倍して 足したものに等しい。直感どおりだ。

発展 — 一歩先へ。 期待値が素通りするのは、 次式だけだ。 乗になると、話は変わる。

確かめてみよう。 でとる。

一方、 の期待値は

一致しない。 しかも、必ず のほうが大きい。

その差は何か。

分散だ!

分散は 乗の平均だから、必ず 以上。 だから

が、いつでも成り立つ。 等号が成り立つのは、 が常に同じ値をとるとき(散らばりゼロ)だけだ。

この不等式は、もっと一般的な定理の一例である。

イェンセンの不等式。 下に凸な関数 について

「先に関数を通してから平均」は、「先に平均してから関数を通す」より大きい。

は下に凸だから、 になる。

身近な例で言えば。

平均年収 万円の集団があるとする。「年収の 乗の平均」は、 より必ず大きい。格差(散らばり)があるほど、大きくなる。

逆に、 は上に凸なので、不等号が逆を向く。

「平均の平方根」より「平方根の平均」のほうが小さい。

平均と関数は、順番を入れかえてはいけない。 次式だけが、この規則の唯一の例外なのだ。

別解

公式を信じずに、分布表を作り直して確かめる。

「本当にそうなるの?」を、自分の手で確認する別解である。

もとの分布( でとる)から、 の分布を作る。

値を つずつ変換する。

確率は変わらない。 になる」ことと「 になる」ことは、同じ出来事だからだ。

新しい分布表ができた。 でとる。

期待値を、定義どおり計算する。

公式と同じ答え ✓

公式が「本当だった」ことを、自分で確かめられた。

この作業から見えること。

値の間隔が 倍に広がり、全体が だけ右へずれた。

重心(期待値)も、同じように動く。 倍で 、そこに して

確率(重み)は つも変わっていない。 変わったのは、おもりを置く位置だけだ。

だから重心も、位置と同じ変換を受ける。 これが の正体である。

公式が不安なときは、分布表を作り直せばいい。 行の表なら 分で検算できる。「公式を確かめる手段を持っている」ことが、本当の自信になる。

ポイント

  • 期待値は 次式を線形に通す。

よくある間違い

  • のように、定数 にも期待値をとろうとする。定数はそのまま足す
  • 次式の性質を 乗にも使い、 としてしまう。期待値が素通りするのは 次式だけ
  • 値を 倍したときに、確率も 倍してしまう。変換されるのは値であって、確率は変わらない