数学B / 統計的な推測
標準正規分布の確率
問題
確率変数 が標準正規分布 に従うとき、 を求めよ。ただし、正規分布表より とする。
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正規分布表は『 から までの面積』を載せた表。問われている確率が、表の値そのものになっている。
解答・解説
方針
標準正規分布表は「 から までの確率(面積)」を与える。今回は の値を読むだけ。グラフでは、山の中央から右へ標準偏差 ぶんまでの面積にあたる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 正規分布では、確率 曲線の下の面積だ。
なぜ面積なのか。 は連続的な値をとるので、「ちょうど になる確率」は になってしまう。幅のある区間でしか、確率は語れない。
だから面積で測る。
この面積は、手では計算できない( の積分は、初等関数では書けない)。だからあらかじめ計算した表が用意されている。
正規分布表が返すのは「 から までの面積」だ。
表を引く前に、必ず「どこの面積を知りたいのか」を図で確認する。 表が返すのは中央から右の面積であって、それ以外ではない。
この問題は、まさに表そのものを引く形になっている。
表より の値を読む。
これは、標準正規分布の曲線の下で、(中央)から までの面積(= 確率)。
まとめ:確率 = 曲線の下の面積。正規分布表は「中央 から まで」の面積を並べた表。 で 、つまり全体の約 がこの範囲に入る。
発展 — 一歩先へ。 そもそも、なぜ正規分布が特別扱いされるのか。世の中には無数の分布があるのに。
理由は、中心極限定理にある。
「独立な確率変数をたくさん足し合わせると、その和の分布は、もとの分布が何であれ、正規分布に近づく」
「もとの分布が何であれ」— ここが驚異的だ。
サイコロで実験してみよう。
個振る。 出る目の分布は 〜 が等確率 — 平らな長方形だ。釣鐘のかけらもない。
個振って和をとる。 和は 〜 で、 がいちばん出やすい — 三角形の分布になる。
個振って和をとる。 もう釣鐘の形が見えてくる。
個振れば、ほとんど正規分布と区別がつかない。
平らな分布を足しただけで、山ができる。 これが中心極限定理の実演だ。
なぜ、こんなことが起こるのか。
極端な値になるには、"全部"が極端でなければならないからだ。
サイコロ 個の和が (最小)になるには、 個すべてが でなければならない。確率は — ほぼゼロ。
一方、和が (平均あたり)になる組み合わせは、天文学的な数がある。
「真ん中は組み合わせが多く、端は組み合わせが少ない」 — この単純な事実が、山を作る。
この定理が、統計学のすべてを支えている。
- 標本平均は、たくさんのデータの和(を で割ったもの)→ 正規分布に近づく
- 測定誤差は、無数の小さな誤差の和 → 正規分布
- 身長は、無数の遺伝的・環境的要因の和 → 正規分布
「もとが何であれ、足せば釣鐘」
だから、母集団の分布を知らなくても、標本平均については正規分布で議論できる。 母集団の正体を知らずに推測ができる — この魔法の根拠が、中心極限定理なのだ。
正規分布は、たまたま便利な分布ではない。 足し算の行き着く先という、数学的な必然として現れる。
別解
つの数 から、対称性だけで芋づる式にすべてを出す。
正規分布表には「 から まで」の面積しか載っていない。 それで足りるのは、釣鐘が左右対称だからだ。
まず、全体の面積は 。
そして、中央 で左右に分かれる。
この つと、表の だけで、あらゆる確率が出せる。
① — 中央をまたぐ範囲。
左半分( から )は、右半分( から )と対称だから同じ面積。
約 。
② — 右のすそ。
右半分の全体()から、 〜 の分を引く。
約 。
③ — より小さい全部。
左半分()に、 〜 の分を足す。
約 。
④ — 左のすそ。
対称性から、右のすそと同じ。
表の 行から、 つの確率が出た。
大事なのは、毎回「図のどこを塗るか」を確かめることだ。
- 中央をまたぐ → 足す(または 倍)
- すそ(片側の端) → から引く
- 負の側 → 対称性で正の側に読み替える
この つのパターンさえ押さえれば、正規分布の確率計算はすべて処理できる。
そして、次の つの数は暗記しておくと強い。
「–– ルール」と呼ばれる。
の中に約 割、 の中に約 、 の中にほぼ全部。
この 数を頭に入れておけば、表がなくても、正規分布のだいたいの姿がつかめる。
ポイント
- 確率 = 正規分布曲線の下の面積。
- 表は を与える。
よくある間違い
- を「 の確率」だと思ってしまう。表が返すのは中央 から までの面積だけ
- を求めるのに、表の値をそのまま と答える。中央をまたぐ範囲は 倍する
- すその確率 を としてしまう。引くのは右半分の であって、全体の ではない