数学B / 統計的な推測

仮説検定(片側)

★★★ 応用仮説検定

問題

ある工場の製品は不良率が とされている。改善のため製法を変え、 個を調べたところ不良品は 個だった。「不良率は より高くなった」といえるか。有意水準 で片側検定せよ。片側 の棄却域の境界は とする。

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片側検定の型。仮説のもとでの平均・標準偏差から観測値を標準化し、片側の棄却域と比べる。両側のときと境界の値が違う理由も考えてみよう。

解答・解説

方針

帰無仮説「不良率 (変わらない)」を立てる。この仮定で不良品数 。観測値 を標準化し、片側の棄却域()に入るか調べる。「高くなった」を疑うので右側だけの片側検定。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 問われているのは「不良率が高くなったか」だけ。片方向の変化だけを見るので片側検定になる。

帰無仮説は「不良率は変わらず 」。これが正しいと仮定する。

観測値を標準化し、右側の棄却域 に入るかを調べる。

一方向の主張は片側検定。境界が両側の と変わる点が主題だ。

定理片側検定(有意水準 ):(右片側)なら帰無仮説を棄却する

① 帰無仮説を立てる。 「不良率は変わらず 」。対立仮説は「(高くなった)」なので右片側検定。

② 仮説のもとで分布を出す。 を正規近似。

③ 観測値を標準化する。 不良 個。

④ 棄却域と比べる。 片側 の棄却域は なので棄却域に入る。

xyO1.64
片側5%の棄却域(Z>1.64)。Z=2.5 は棄却域内

結論。 帰無仮説は棄却される。不良率は より高くなったといえる。

まとめ:「高くなったか」だけを問うので片側検定(右側だけ)。棄却域の境界は両側の より内側の 。同じ有意水準でも、片側のほうが棄却されやすい(境界が甘い)。問題文が『高い/低い』の一方向なら片側、と判断する。

発展 — 一歩先へ。 片側検定は、調べたい方向をあらかじめ絞るぶん、その向きの変化に敏感になる(境界が と甘い)。かわりに反対向きの変化はまったく検出できない。

だからどちらを使うかは、データを見る前に問いの立て方で決めておく必要がある。結果を見てから「片側にすれば棄却できる」と後出しで選ぶのは、有意水準をこっそり甘くする反則になる。

今回は「高くなったか」という一方向の問いなので片側で正しい。もし「 と変わったか」を両方向で問うなら、境界は になり、判定がより慎重になる。問いの向きが、棄却域の形をそのまま決めている。

Z=2.5 は棄却域にあり、「不良率が高くなった」といえる

別解

別解 — 珍しさを確率そのもので測る(得意な人向けの視点)。 が境界を超えるか」ではなく、「仮説が正しいとき、これほど不良が多くなるのは偶然どれくらい珍しいか」を確率で直接見る。

仮説のもとで不良数は平均 、標準偏差 。観測値 の標準化は 。片側なので、右すその面積を読む。

この確率 は、有意水準 よりずっと小さい。「偶然では起こりにくい」ので仮説を棄却する。

境界 を比べる本解と、棄却するという結論は同じ。境界と比べるかわりに「珍しさ 」という数字で見ると、どれほど例外的かが直感でつかめる。

ポイント

  • 一方向の主張(高くなった)は片側検定。
  • 片側 で棄却(両側 より内側)。

よくある間違い

  • 「高くなったか」という一方向の問いなのに、両側の境界 で判定して結論を鈍らせる。
  • 対立仮説の向きを と取り違え、右すそでなく左すそで判定してしまう。
  • 結果を見てから片側に切り替えるなど、棄却しやすいほうへ後出しで基準を動かす。