数学B / 統計的な推測

正規分布の標準化

★ 基礎正規分布標準化

問題

確率変数 が正規分布 に従うとき、 を標準化した値 を求めよ。

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標準化とは『平均からのずれを、標準偏差を単位にして測り直す』こと。この言葉どおりに式を作れば、公式を忘れていても出せる。

解答・解説

方針

標準化は「平均を引いて標準偏差で割る」。 を入れる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 正規分布は、平均 と標準偏差 の組み合わせだけ、無数に存在する。

すべて形は同じ釣鐘だが、位置と幅が違う。

確率の表を、無数の分布ぶん用意するわけにはいかない。

そこで、全部を つに揃える。

段階の操作だ。

  • : 平均を引いて、中心を に移す
  • : 標準偏差で割って、幅を に揃える

こうして、どんな正規分布も (標準正規分布)に変換できる。

の意味は「平均から標準偏差いくつ分ズレているか」。 なら「 分、上」ということだ。

公式標準化 ( を標準正規分布 に直す)

は平均 、標準偏差 を標準化する。

xyOZ=0Z=10(X=50)1(X=60)
X=60 を標準化すると Z=(60−50)/10=1(平均から1σ右)

まとめ:標準化は「平均からどれだけ離れているかを、標準偏差を単位にして測る」。 は「平均より標準偏差 個ぶん上」を意味する。どんな正規分布も標準化すれば で扱える。

発展 — 一歩先へ。 標準化して得た は、平均 、分散 になる。これを確かめておこう。

期待値の性質から。

分散の性質から。

( は分散を 倍にし、 は分散に効かない。)

きっちり になった。

ここで、注意すべき落とし穴がある。

標準化は、どんな分布にもできる。 平均を引いて で割るだけだから、二項分布でも一様分布でも、いびつな分布でもできる。

だが、「標準化したから正規分布になる」わけではない。

標準化がするのは「位置と幅を揃える」ことだけ。形は変わらない。

いびつな分布を標準化しても、いびつなまま平均 、分散 になるだけだ。

だから、正規分布表を引けるのは、もとが正規分布のときだけ。

この区別を、混同してはいけない。

ただし — 救いがある。

中心極限定理により、「たくさんのデータの平均」や「たくさんの試行の和」は、もとがどんな分布でも正規分布に近づく。

だから実務では、標本平均を標準化して正規分布表を引く、という手順が正当化される。

二項分布 を標準化して正規分布表を引けるのも、 が十分大きいからだ( が小さければ、この近似は使えない)。

「標準化」と「正規化」は違う。 前者は座標変換、後者は形そのものの話。この つを区別できると、統計の議論が正確になる。

別解

標準化の正体は、じつは「偏差値」である。

模試で誰もが見ている、あの偏差値だ。

偏差値の定義は、こうだ。

(標準化した値)を 倍して、 を足しただけ。

この問題に当てはめる。 平均 点、標準偏差 点のテストで、 点をとった。

偏差値 である。

なぜ を使うのか。

の値は から くらいの小数になる。「あなたの 」と言われても、ピンとこない。

そこで、平均を 、標準偏差を に置き直す。 見慣れた 桁の数になり、直感的に扱える。

偏差値の分布を、読んでみよう。

  • 偏差値 ちょうど平均
  • 偏差値 上位 約
  • 偏差値 上位 約
  • 偏差値 下位 約

偏差値 人に 人ちょっと — なるほど、と思える。

大事なのは「点数では比べられないものが、比べられる」ことだ。

数学 点(平均 )と、国語 点(平均 )。どちらがよくできたか。

点数だけ見れば、国語の 点が上に見える。

標準化する。

数学のほうが、圧倒的によくできている。(偏差値 対 偏差値 )

難しいテストと簡単なテスト、 点満点と 点満点 — 標準化すれば、すべて同じ土俵に乗る。

は「単位のない世界」の言葉なのだ。

同じ発想は、あちこちで使われている。

  • IQ: 平均 、標準偏差 に揃えた スコア
  • 株の評価: 業種の違う会社を、平均からのズレで比べる
  • 異常検知: なら「異常値」と判定する

「そのままでは比べられないものを、比べられるようにする」 — 標準化は、その普遍的な技術である。

ポイント

  • は「平均から標準偏差何個ぶん離れているか」。

よくある間違い

  • を標準偏差だと思い、 としてしまう。 の第 引数は分散なので、
  • 引き算と割り算の順序を逆にして とする。まず平均を引いて中心を にし、それから で割る
  • が負になったとき「計算ミス」と思ってしまう。平均より小さい値は必ず になる