数学B / 統計的な推測

二項分布の確率

★ 基礎二項分布確率

問題

枚の硬貨を 回投げるとき、表が 回出る確率を求めよ。

ヒントを見る

回中どの 回で表が出るかの選び方』×『その各パターンが起こる確率』という構造で式を組み立てよう。

解答・解説

方針

表が出る回数 は二項分布 を入れる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 硬貨 回で表がちょうど 回。これは反復試行の確率(数A)そのものだ。

確率変数の言葉に翻訳すると、表の回数 は二項分布 に従う。

「二項分布の確率」と「反復試行の確率」は、同じものである。 名前が違うだけだ。

式の つの部分を、意味で読む。

回のうちどの 回が表かの選び方その パターンが起こる確率

「場合の数 パターンの確率」 — これが反復試行の骨格である。

公式二項分布の確率

表の回数 を代入する。

012343/8
硬貨4回の表の回数 B(4,1/2)。ちょうど2回=6/16=3/8

まとめ:「 回中ちょうど 回」の確率は は「どの回で起こるかの組合せ」、 は「その パターンの確率」だ。

発展 — 一歩先へ。 硬貨 回の分布は、 という山の形をしていた。

投げる回数を増やすと、この山はどうなるか。

回なら、通り数は

真ん中が高く、両すそが低い、なめらかな山。

回なら? 回なら?

回数を増やすほど、この山は"あの曲線"に近づいていく。

正規分布の釣鐘曲線だ。

これをド・モアブル–ラプラスの定理という( 年、ド・モアブルが硬貨投げの計算を楽にしようとして発見した)。

離散的な二項分布(棒グラフ)が、連続的な正規分布(なめらかな曲線)に化ける。

この事実の意味は、途方もなく大きい。

二項分布の計算は、 が大きいと絶望的になる。

桁の数だ。 手計算はもちろん、電卓でも溢れる。

だが正規分布で近似すれば、標準化して表を引くだけで済む。

そして、話はもっと深いところへ続く。

中心極限定理。

「どんな分布から取ってきたデータでも、たくさん足し合わせれば、その和は正規分布に近づく」

元がサイコロでも、コイン投げでも、いびつな分布でも構わない。 足し合わせれば、必ず釣鐘の形になる。

だから、世の中は正規分布だらけなのだ。

  • 身長: 無数の遺伝子と環境要因の"足し算"
  • 測定誤差: 無数の小さな誤差の"足し算"
  • 株価の変動: 無数の取引の"足し算"

細かい原因が山ほど足し合わされると、結果は釣鐘になる。

硬貨を 回投げる素朴な問題の先に、「なぜ世界は正規分布に満ちているのか」という答えが待っている。

別解

公式を使わず、 通りを全部書き出す。

回投げたときの結果は、 通り。 全部書けてしまう数だ。

表を H、裏を T として、表が 回のものを探す。

  • HHTT
  • HTHT
  • HTTH
  • THHT
  • THTH
  • TTHH

通り。

通りはすべて同じ確率( ずつ)だから

公式と同じ答え ✓

この「 通り」の正体が、二項係数だ。

回のうち、どの 回を表にするか」の選び方 通り。公式の は、この数え上げをしていたのである。

表の回数ごとに、全部数えてみよう。

通り数は 合計

この数の並びに、見覚えはないか。

パスカルの三角形の 段目だ。

二項分布の"形"は、パスカルの三角形そのものである。

そして、この分布は左右対称で、真ん中( 回)がいちばん高い。

「ちょうど半分」がもっとも出やすい — 硬貨を 回投げたら、表 回がいちばんありそうだ、という直感と合う。

書き出しの価値。

通りなら書ける。だが 回投げたら 通りで、宇宙の原子の数を超える。

書き出せない大きさになったとき、公式が要る。 公式は「書き出しの結果を、一発で計算する装置」なのだ。

小さい場合で書き出して、公式と合うことを確かめる。 これが公式を信じられるようになる、いちばん確実な道である。

ポイント

  • は起こる回の選び方。

よくある間違い

  • 二項係数 を掛け忘れ、 だけで答えてしまう。「どの 回が表か」の選び方を数える必要がある
  • と誤って計算する。
  • 「ちょうど 回」を「 回以上」と読み違える。ちょうど 回なら 項だけ、 回以上なら の和になる