実数と1次不等式の解説

文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月2日

この単元は、実数の分類(有理数と無理数)、平方根と絶対値の計算、1次不等式という、それぞれ独立した3つの話題をまとめたものです。1つ1つは中学の延長に見えますが、絶対値の場合分けと不等式の整数解は、高校で初めて本格的に扱う考え方で、ここでの理解が2次不等式や数学IIの領域の問題に直接つながります。

平方根の計算で身につけること

平方根の計算は、 という1行に集約されます。 ではなく で、 の範囲によって にも にもなります。この符号の判定を飛ばすと、根号と絶対値の問題は全部ずれます。標準の根号を含む絶対値の計算と応用の根号と絶対値のはずし方は、この1点だけを繰り返し確認する問題です。

分母の有理化は、 を使って分母から根号を消す操作です。分母が3項になると2段階の有理化が必要で、難関(★★★★)の3項の分母の有理化で扱います。

二重根号 は、「和が 、積が になる2数」を見つけて の形に直します。中の の係数が2でないときは、分子分母に数をかけて2に整えるのが手順です。二重根号を外す、標準の二重根号の簡約、応用の二重根号と分母の有理化の順に進んでください。

整数部分・小数部分と対称式

の整数部分は、 から で、小数部分は です。この「小数部分を根号で表す」操作ができると、その先の式の値が計算できます。整数部分・小数部分から応用の整数部分・小数部分と式の値まで、同じ型を深めていきます。

対称式の値は、 から を作る計算で、数と式の単元の展開公式をそのまま使います。 の型は、両辺を2乗すると が出る、という手順が数学IIの式と証明まで繰り返し登場します。標準のx+1/x 型の対称式で型を固めてください。

絶対値を含む方程式・不等式

絶対値の扱いには2つの方法があります。1つは「中身の符号で場合分けして絶対値を外す」方法、もう1つは「 または 」という型に直接当てはめる方法です。

基本形なら型に当てはめるほうが速く、右辺に文字や別の絶対値があるときは場合分けが必要になります。標準の基本形場合分けを並べて解くと、どちらの方法をいつ使うかの判断が身につきます。

場合分けで最も多い間違いは、場合分けの範囲と求めた解の範囲を照合し忘れることです。「 のとき」と仮定して解いた は、仮定に反するので解ではありません。この照合を毎回書く習慣をつけてください。

絶対値は「数直線上の距離」と読むこともできます。 の距離で、 が最小になるのは の間、という見方は、難関の絶対値方程式の解の個数(距離で読む)や実戦編の絶対値の和を最小にするで使います。

1次不等式と整数解

1次不等式は、両辺に負の数をかけたり割ったりすると不等号の向きが変わる、という1点さえ守れば、方程式と同じ手順で解けます。分数や小数の係数は、最初に整数に直します(標準の分数・小数係数)。

連立不等式では、それぞれの解を数直線に描いて共通部分をとります。「共通部分の整数解がちょうど3個になるように定数を決める」という問題(標準の連立1次不等式と整数解の個数、応用の同名の問題)は、境界を含むかどうかで答えの範囲の端が変わるので、数直線に境界の値を書き込んで、端を1つずつ確かめてください。

文章題は、「何を とおくか」「不等号の向きはどちらか」「 は整数か」の3点を最初に確認します。1次不等式の文章題から応用の個数と金額の条件まで、同じ確認を繰り返します。

絶対値を「距離」で読む

は、数直線上の の距離です。この読み方をすると、 は「3からの距離が2未満」で は「1と5から等距離」で 、と場合分けなしで解けます。 の最小値は、「1と3の両方からの距離の和」が最小になるのは1と3の間にいるときで、その値は2です。

この「距離」の見方は、絶対値のグラフ(折れ線)を描くことと同じで、 の解の個数を、折れ線と横線の交点で数える問題(難関の絶対値方程式の解の個数(距離で読む))や、絶対値の和の最小値(実戦編の絶対値の和を最小にする)で使います。場合分けで解く方法と、距離で読む方法の両方を持っていると、問題に応じて速いほうを選べます。

有理数と無理数の証明の入り口

この単元の「循環小数は分数で表せる」「 は無理数」という話題は、数学Iの集合と命題で背理法の題材になり、数学Aの整数で「互いに素」を使う証明につながります。基礎の有理数・無理数の判別と循環小数、応用の循環小数の分数化と有理数の判定で、「有理数とは何か」の定義を確認しておくと、後の証明で「有理数だと仮定して とおく」という出発点で迷いません。

学習の順序と入試での出方

基礎12問を上から順に解けば、実数の分類・絶対値・平方根・有理化・二重根号・整数部分・対称式・1次不等式・連立・絶対値の方程式と不等式・文章題の順で、この単元の型を一通り確認できます。

入試では、この単元が単独で出ることは少なく、絶対値を含む関数のグラフ(2次関数)、絶対値つきの不等式の領域(数学II)、有理数と無理数の証明(集合と命題の背理法)として形を変えて出てきます。最難関編には、 が無理数であることの証明や、対数を使わずに の桁数を求める問題のように、この単元の道具だけで解ける論証問題を集めました。

実数と1次不等式の問題一覧(全56問)へ