物理のつまずきマップ — 解けない単元から戻り先を探す

文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月2日

物理で「この単元が解けない」というとき、原因は前の単元にあることがほとんどです。円運動が解けないのは運動方程式が立てられないから、コンデンサーの極板操作で混乱するのはエネルギーの収支が書けないから、というふうに、単元どうしがつながっています。この記事では、物理基礎と物理の全19単元のつながりを整理し、「解けない症状」から戻り先を探せるようにしました。

単元のつながり

物理基礎の力学3単元は、運動の表し方(v-tグラフ・等加速度運動)→力と運動の法則(力の図示・運動方程式)→仕事と力学的エネルギー(エネルギーの収支)の順に積み上がります。この3つが、物理のすべての土台です。

専門物理の力学は、その上に、平面内の運動(方向ごとの分解)、剛体のつり合い(モーメント)、運動量と力積(保存則)、円運動と万有引力(運動方程式の応用)、単振動(復元力)と続きます。運動量とエネルギーの2つの保存則は、以後のすべての分野で使います。

熱は、物理基礎の熱とエネルギー(熱量・第1法則)→気体の熱力学(状態方程式との組合せ)です。気体の熱力学のピストンの問題は、力のつり合いが前提です。

波動は、物理基礎の波の性質と音(基本式・定常波)→波の伝わり方と音(正弦波の式・ドップラー効果)→光(干渉・レンズ)です。光の干渉は、波の干渉の条件と、屈折の法則が前提です。

電磁気は、物理基礎の電気とエネルギーの利用(オームの法則・回路)→電場と電位(場とエネルギー)→直流回路(キルヒホッフ)→電流と磁場(ローレンツ力)→電磁誘導と交流(変化と起電力)です。電磁気の後半は、力学の運動方程式・エネルギー保存・単振動に戻ります。

原子は、力学の円運動、波動の定常波と干渉、電磁気の電場による加速を、すべて前提にします。

症状別の戻り先

力の図が描けない、力を見落とす。 戻り先は力と運動の法則の基礎です。「触れているものから受ける力を先に、重力を最後に」という描き方の手順を、斜面・糸・ばねの問題で固めます。この症状は、円運動・単振動・剛体・電磁気の導体棒まで、あらゆる単元の失点の原因になります。

v-tグラフの面積と傾きが読めない。 運動の表し方の基礎です。面積が変位、傾きが加速度、という対応を、F-tグラフ(面積が力積)、P-Vグラフ(面積が仕事)でも同じように使うので、ここが不安定だと後の単元でグラフ問題が全部止まります。

エネルギー保存と運動量保存のどちらを使うか迷う。 運動量と力積の標準にある「保存則と反発係数の連立」と「弾丸の撃ち込み」を解いて、「衝突の瞬間は運動量、それ以外の区間はエネルギー」という幕分けを固めます。その前提として、仕事と力学的エネルギーのエネルギーの帳簿が書けるかを確認してください。

向心力・復元力を新しい力だと思っている。 円運動と万有引力の基礎「向心力」と、単振動の基礎「復元力」を、力の図を描いてから解き直します。どちらも「既にある力の成分に付けた役割の名前」です。

慣性力・遠心力を地上の立場と混ぜてしまう。 円運動と万有引力の「加速する電車の中のつり革」「回転台の上の物体」を、地上から見る立場と乗り物の中から見る立場の2通りで解き、同じ答えになることを確かめます。

第1法則の の符号で混乱する。 気体の熱力学の基礎「定積・定圧・等温・断熱」の4問を、「何が0になるか」の表を作りながら解きます。前提として、熱とエネルギーの第1法則の問題で、熱と仕事の向きの取り決めを確認してください。

定常波の節と腹、気柱の共鳴条件が描けない。 波の性質と音の基礎「定常波の節と腹」「閉管」「開管」で、管の中の波形を自分で描きます。光の干渉で薄膜の条件が立てられないときも、ここに戻ります。

ドップラー効果で、音源が動く場合と観測者が動く場合を混同する。 波の伝わり方と音の基礎の2問(音源が近づく・観測者が近づく)を、「波長が変わるのはどちらか」を書き出しながら解き直します。

電場と電位の区別がつかない。 電場と電位の基礎「電場の定義」と「点電荷のまわりの電位」を並べて、「ベクトルかスカラーか、分母が2乗か1乗か」で区別します。 の中点で電場は足されるのに電位は消える、という標準の対比問題が効きます。

コンデンサーの極板操作で、何が固定されるかわからない。 電場と電位の標準「極板間隔を広げる(電池を切って)」「(つないだまま)」の2問を、最初に「 固定か 固定か」を書いてから解きます。

回路で直列と並列の判断を間違える。 電気とエネルギーの利用の基礎「直列」「並列」と、標準「電圧配分」「電流配分」に戻ります。キルヒホッフの法則が立てられない場合も、ここが前提です。

右ねじとフレミングの左手を混同する。 電流と磁場の基礎「右ねじの法則(向きの総合)」で、「磁場をつくるのは右ねじ、力を受けるのは左手」と役割で分けます。

導体棒の問題で、起電力・電流・力・運動の順序がわからない。 電磁誘導と交流の基礎「動く導体棒の起電力」「電流」「力」の3問を続けて解き、「起電力→電流→力→運動方程式」の連鎖を1本にします。前提として、力学の終端速度(空気抵抗)の問題が解けるかを確認してください。

使い方

解けない問題があったら、上の症状のどれに当たるかを探し、戻り先の基礎問題を3〜5問解いてから、元の問題に戻ってください。戻り先でも止まるなら、さらに前の単元に戻ります。物理は積み上げの科目なので、戻る勇気が最も速い近道です。

数学のつまずきについては、高校数学のつまずきマップに同じ形式でまとめてあります。物理の計算で止まる場合(三角関数・ベクトル・微積分)は、そちらも参照してください。

数学が原因で止まるとき

物理の問題で止まる原因が、物理ではなく数学にあることもあります。典型的なものを挙げます。

三角比の分解( のどちらか)で迷うなら、数学Iの図形と計量の基礎「三角比の定義」に戻ります。斜面の角度がどこに現れるかを、直角三角形の相似で確かめると迷わなくなります。

ベクトルの合成と分解(相対速度・力の合成)で迷うなら、数学Cの平面ベクトルの基礎「和」「実数倍と差」です。三角形則か平行四辺形則か、どちらか1つに決めて描きます。

2次方程式の解の吟味(放物運動の着地時刻、ぎりぎり追いつく条件の重解)で迷うなら、数学Iの2次方程式・2次不等式の判別式と解の配置です。

単振動や交流の式(、位相のずれ、 の平均)で迷うなら、数学IIの三角関数のグラフと半角の公式です。

指数の計算(半減期・減衰・桁の見積もり)で迷うなら、数学IIの指数関数・対数関数です。

物理の計算で「式は立ったが解けない」ときは、上のどれかに戻ると解決することが多いです。物理と数学の両方のつまずきマップを手元に置いて、原因がどちらにあるかを切り分けてください。