図をかく技術 — 数学と物理で「見つけるための図」を描く

文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月2日

数学と物理で「図をかけ」と言われても、何をどう描けばよいかわからない、という人は多いです。図は絵のうまさではなく、「何を描くか」の判断で決まります。この記事では、数学と物理でよく使う図の型を、目的別に整理し、それぞれで描くべきものと描かなくてよいものを説明します。

図は「考えるため」に描く

図には2つの役割があります。1つは問題の設定を整理するため、もう1つは解法の途中で「次に何をするか」を見つけるためです。多くの人は最初の役割しか使っていませんが、差がつくのは2つ目です。断面を取り出す、補助線を引く、グラフに横線を動かす、力を分解する、といった「推論の図」を描けるかどうかで、解けるかどうかが決まります。

このサイトの解説では、設定の図を問題文側に、推論の図を解答側に置いています。解答側の図を見るとき、「この図は何を見つけるために描かれたか」を意識してください。

数学の図の型

グラフと横線。 方程式の解の個数、不等式が成り立つ範囲、最大・最小は、関数のグラフを描いて横線 を上下に動かす図で読みます。描くべきものは、極値の位置と値、定義域の端、漸近線です。目盛りを細かく入れる必要はありません。微分の考えの「3次方程式の実数解の個数」で、この図の使い方を確認してください。

数直線。 不等式の共通範囲、場合分けの境界、整数解の個数は、数直線に範囲を描いて重ねます。境界を含むか(黒丸か白丸か)を必ず区別して描きます。実数と1次不等式の連立不等式で練習できます。

放物線と定義域。 2次関数の最大・最小は、放物線と定義域の範囲を描き、軸が範囲のどこにあるかを見ます。軸が動く場合分けは、「左外・中・右外」の3枚の図を並べて描きます。2次関数の場合分けの問題で、この3枚の描き方が身につきます。

座標平面の配置。 図形と方程式、軌跡と領域では、座標を置いた図を描き、求める点・直線・円を書き込みます。領域は、境界線を描いてから、どちら側かを1点で確かめて塗ります。軌跡と領域の領域の問題で、塗り分けの図を見てください。

立体の断面。 空間図形の問題は、「どの平面で切れば直角三角形が現れるか」を見つけて、その断面を平面図として描き出します。立体をそのまま描くより、断面を取り出すほうが計算に直結します。図形と計量の正四面体、空間ベクトルの点と平面の距離で、断面の取り出し方を確認してください。

単位円。 三角関数の方程式・不等式は、単位円に点を打って、条件を満たす弧を読みます。角の範囲が のときは、その全体の範囲を先に書き直してから円に当てはめます。三角関数の方程式・不等式の解説に、単位円の図があります。

物理の図の型

力の図示。 物体を1つ選び、その物体にはたらく力だけを描きます。「触れているものから受ける力」(垂直抗力・張力・弾性力・摩擦力)を先に、重力を最後に描くと見落としがなくなります。他の物体にはたらく力を同じ図に混ぜないのが原則です。力と運動の法則は全問に力の図を付けてあります。

v-tグラフ。 直線運動は、v-tグラフを描けば公式を使わずに解けることが多いです。傾きが加速度、面積が変位です。2つの物体の運動を1つのグラフに重ねると、追いつく時刻や出会う位置が交点として見えます。運動の表し方で、グラフから式を立てる練習ができます。

エネルギーの帳簿。 最初の状態と後の状態で、運動エネルギー・位置エネルギー・弾性エネルギー・熱の4つを棒グラフのように並べます。合計が等しければ保存、減っていれば摩擦の仕事です。このサイトでは、この図を「エネルギー棒グラフ」として仕事と力学的エネルギーの多くの問題に付けています。

P-Vグラフ。 気体の変化は、P-Vグラフ上に描いて、曲線の下の面積を仕事として読みます。サイクルなら、囲む面積が正味の仕事です。各過程の横に の表を添えると、熱効率まで一本で計算できます。気体の熱力学の記事に、この表の作り方をまとめてあります。

波形の図。 定常波の節と腹、反射波の作図、干渉の経路差は、波形を描いて初めて見えます。とくに固定端反射の「上下反転」と、薄膜干渉の「位相の反転」は、図に矢印を描いて数えます。波の性質と音で、波形と干渉の図を確認してください。

回路図。 回路の問題は、問題の図をそのまま使わず、自分でJIS記号で描き直します。直列・並列の判断、コンデンサーの「直後と十分後」の2状態、キルヒホッフのループの取り方は、描き直した図の上で決めます。直流回路の回路図を手本にしてください。

描くときの3つの約束

1つ目、図の中の記号()と、式の中の記号を一致させます。図と式で記号が違うと、自分でも対応がわからなくなります。

2つ目、正の向きを図に書き込みます。物理の符号の間違いの大半は、正の向きを決めずに式を立てることから起きます。

3つ目、答案には、図を「図より」と参照して使います。図は答案の一部で、採点者に方針を伝える手段です。記述答案の書き方に、図の扱いを含めた答案の型をまとめてあります。

図は「うまく描く」ものではなく「見つけるために描く」ものです。汚くても、必要な要素(点・線・範囲・向き)が入っていれば十分です。

図から式を立てる練習

図を描けるようになったら、次は「図から式を立てる」練習です。この2つは別の技術で、図は描けるのに式にできない、という段階が必ずあります。

数学では、図の中の「等しいもの」「垂直なもの」「通る点」を見つけて、それを式にします。放物線と直線が接するなら判別式が0、点が円上にあるなら円の方程式を満たす、2直線が垂直なら傾きの積が 、という言い換えです。図の中に「条件」を書き込み、その横に対応する式を書く、という往復を、図形と方程式の標準問題で練習してください。

物理では、図に描いた力を「方向ごとに足す」ことが式を立てる操作です。運動の方向には運動方程式、垂直な方向にはつり合い、と決めて、図の力を1つずつ式に移します。力の図に書いた記号がそのまま式に現れるので、図の記号と式の記号を一致させる約束が、ここで効きます。力と運動の法則の標準「斜面をすべり降りる」で、図から2本の式を立てる手順を確認してください。

図が描けない問題の扱い

すべての問題に図が要るわけではありません。導関数の計算、不定積分の公式の当てはめ、Σの計算、対数の計算、複素数の四則のように、「計算そのものが答え」の問題には図はありません。このサイトでも、そうした問題には図を付けず、代わりに「図が不要な理由」を記録してあります。

見分け方は、「本文だけでは得られない形・位置・関係を、図が見せているか」です。見せていないなら描かなくてよく、見せているなら描くべきです。図が要るのに描かない失点のほうが、要らないのに描く無駄よりはるかに大きいので、迷ったら描いてください。