内積の使い方 — 2つの顔と「2乗して展開」

文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月6日

内積は、ベクトルの単元で最初に出会う「計算と図形をつなぐ道具」です。角度・長さ・垂直・面積・最大最小、すべて内積で扱えますが、「定義の顔」と「成分の顔」の使い分けと、「大きさは2乗して内積で展開する」という技術で止まる人が多いです。この記事では、内積を使う場面を5つに分け、それぞれの式の作り方と、平面から空間への拡張を説明します。

内積の2つの顔

内積 には、(定義の顔)と、(成分の顔)の2つの計算方法があります。この2つが等しい、というのが内積の本体で、片方で計算して他方に等しいとおくことで、なす角や大きさが求まります。平面ベクトルの基礎「内積(成分)」「内積(定義)」「なす角」で、2つの顔を確認してください。空間では成分が3つに増えるだけで、同じ式です。

場面1: なす角と垂直

で角が求まります。垂直は内積が0です。「垂直条件から未知数を決める」問題(難関の垂直条件からtを求める)は、内積を成分で計算して0とおくだけです。空間の2直線のなす角も、方向ベクトルの内積で求まります(難関の空間の2直線のなす角)。

場面2: 大きさは「2乗して展開」

のような和の大きさは、直接は求まりません。 と、2乗して内積で展開します。この「2乗して展開」が、ベクトルの計算で最も頻繁に使う技術です。 の最小値は、2乗すると の2次関数になり、平方完成で求まります(標準のベクトルの大きさの最小、応用の同名の問題)。最小になるとき と垂直になる、という図形的な意味を、図で確かめてください。

逆に、 の値から を求める問題(難関の大きさの条件から内積・なす角)は、2乗した式を連立します。

場面3: 三角形の面積

が内積による面積公式で、成分なら です。 を入れると出ます。応用の三角形の面積(ベクトル)と難関の内積から三角形の面積で確認してください。空間の三角形も同じ式で、外積を知らなくても面積が出ます。

場面4: 内積の最大・最小

が円上を動くとき、 なので、(同じ向き)で最大、 で最小です。応用の内積の最大・最小と実戦編の円上を動く点との内積の最大・最小で、この「向きがそろうとき最大」を図で確かめてください。数学IIの領域の問題で「円の領域上で1次式の最大」を求めるのと同じ構造です。

場面5: 図形の証明

(中線定理)」のような等式は、ベクトルで各辺を表して2乗して展開すると示せます。「垂直であること」の証明は、内積が0になることを示します。標準の内積を用いた垂直の証明と実戦編の中線定理をベクトルで示すで、証明の型を確認してください。垂心・外心の位置(実戦編・最難関編)も、内積の条件で特徴づけられます。

空間への拡張

空間では、点と平面の距離、平面の法線ベクトル、2つのベクトルに垂直なベクトルが加わります。法線ベクトルは「平面上の2つのベクトルと内積が0」という連立で求まり、点と平面の距離はその法線への射影です。空間ベクトルの標準「空間で垂直なベクトルの作成」「平面のベクトル方程式(法線)」、応用「点と平面の距離」で、内積が空間でどう使われるかを確認してください。

つまずきやすいところ

最も多い誤りは、 としてしまうことです。大きさは足せません。2乗して展開してください。次に、内積の定義で を「2つのベクトルの始点をそろえたときの角」ではなく、図の見た目の角で取ってしまうことです。始点をそろえてから角を読みます。3つ目は、面積公式の根号の中を と逆にすることです。根号の中は正でなければならないので、符号で気づけます。

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ベクトルと初等幾何・座標の使い分けは図形の道具の使い分けに、数学Cの全体は数学Cの勉強法にまとめてあります。物理では、仕事 が内積そのもので、「力の向きと動く向きのなす角」で仕事の符号が決まります(仕事と力学的エネルギーの記事を参照)。