数学III / 積分法の応用

積分法の応用 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. tanⁿx の積分漸化式と漸近
  2. 重みつき積分の対称化
  3. 直交する2つの円柱の共通部分
  4. 絶対値つき積分の最小化
  5. 積分方程式(未知関数を求める)
  6. 対数×余弦の曲線の長さ
  7. 区分求積で円が現れる和
  8. 対数曲線の領域の y軸回転

問1tanⁿx の積分漸化式と漸近

最難関編積分漸化式はさみうち

問題

()とおく。

(1) のとき を示せ。

(2) を示せ。

(3) を求めよ。

ヒントを見る

と割って、 を積分しやすい形に書き替えると何が起きるか。(3)は の大小と漸化式を組み合わせて、 をはさめないか。

解答・解説

方針

tan²x=1/cos²x−1 の恒等式で tanⁿ を分解すると、tanⁿ⁻²x/cos²x の部分が (tanⁿ⁻¹x)/(n−1) の微分形になり2つ飛びの漸化式が出る。(2)は漸化式と正値性から I_n<1/(n+1)。(3)は単調減少と漸化式で 2I_n を両側からはさむ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の積分は、単独では求まらない。恒等式 で

と分解すると、第1項は そのもの。恒等式が2つ飛びの漸化式を生む。

値は求まらないのに、(2)(3)のように漸近だけは正確に取り出せるのが、この型の特徴だ。決め手は「漸化式+単調性ではさむ」ことだ。

公式。

① 漸化式((1))。

(、。)

② ((2))。 で だから 。(1)で を に替えると で、 より

はさみうちで 。

xyOn=1n=2n=6
y=tanⁿx(0≤x≤π/4)。n が増えるほど曲線は下に張りつき(図は n=1,2,6)、面積 Iₙ は 0 に近づく。その速さ 1/(2n) が漸化式から分かる

③ のはさみうち((3))。 より だから (単調減少)。よって

すなわち 。両端とも に収束するから

まとめ: 「恒等式 → 漸化式 → 単調性ではさむ」の3段。積分の値は1つも求めていないのに、 が の速さで消えることまで分かる。これが積分漸化式の型の完成形で、どの関数( でも でも)でも同じ考え方が通る。

発展。 漸化式を から逆向きにほどくと、 となり、 が得られる。円周率のライプニッツ級数が漸化式から出てくる( が級数の収束を保証)。値の分からない積分が漸化式を通して級数と結びつく代表例だ。

答

(1)(2) 証明 (3)

別解

置換 で有理関数にする((1)(2)が2行になる)。 (、)と置換すると

三角関数が消えて、ただの有理関数の積分になる。すると:

(1) となり、分母が約分で消える。(2) から となり、1行で済む。(3)は本解と同じく、単調性 と漸化式で をはさむ。

三角の恒等式(本解)と置換(本ルート)は同じ内容の2つの書き方だが、有理関数の形になると「なぜ なのか」( の積分だから)が一目になる。 の積分漸化式は、 で書き直すと見通しがよくなる。覚えておきたい書き換えだ。

ポイント

  • の分解で 。
  • 。
  • → 。

よくある間違い

  • (3)で単調性 を言わずに ではさむ(はさみの片側が立たない)。
  • 漸化式の計算で の分母を とする。
  • (2)で の根拠(区間内で )を書かずに「明らか」で流す。

問2重みつき積分の対称化

最難関編置換積分対称性

問題

(1) 連続な関数 に対して、置換 を用いて次の等式を示せ。

(2) を求めよ。

ヒントを見る

重みの が邪魔になる。積分区間を裏返す置換で、 を保ったまま だけを に取り替えられないか。取り替えた式ともとの式を並べて足すと何が起きるか。

解答・解説

方針

(1) x=π−t の置換で sin は不変、重み x だけが π−x に変わる。変換前と足すと、重みが定数 π に均される。(2)は 1+cos²x=2−sin²x に気づけば g(sinx) の形で(1)が使え、残る積分は u=cosx → 1/(1+u²) → u=tanθ の置換2連で π/2。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 重み がなければ計算できそうな積分に、 が掛かって手が出ない。そんなときは区間を裏返す置換 だ。

だから の部分は不変で、重みだけが に変わる。変換後の式ともとの式を足せば、重みは定数 に均されて(1)の等式が出る。

(2)は 。被積分関数が の形であることを見抜けば(1)に乗り、残った積分はいつもの置換を2回(、)行えば求まる。

重要置換 は区間 を保ち、 を変えず、重み を に替える → 足して重みを均す

① (1) を示す。 で (、 のとき )と置換すると

移項して 、すなわち示す等式を得る。

② (1) を適用する((2))。 だから、被積分関数は ()の形。よって

③ 残りを置換2連で。 ()で

さらに で 。よって求める値は

まとめ: 重みつき積分は裏返しの置換で重みを均す。 型では、いつもこれが第一手になる。均したあとに残る積分も への置換 → → 置換という置換の連続で、置換積分の組み立て方をまとめて試す問題だ。

発展。 この裏返しの置換は という一般形で、対称化によく使う方法として、入試で非常によく出る(たとえば も同じ技)。「重みを均す」「対になるものと足して簡単にする」は、形は違ってもどれもこの1本の置換の応用だ。

答

(1) 証明 (2)

別解

「対称な重みの重心」と読む(一般化すると仕組みが分かる)。 (1)の等式は に限らない一般則の特殊な場合だ。区間 上の関数 が中央 について対称()なら、まったく同じ裏返しの置換で

左辺は「重み のモーメント」、右辺は「(重心の位置 )×(総量)」。つまりこの等式は、対称な分布の重心は中央にあるという力学の常識を積分で言ったものだ。 は からつねに対称なので、(1)はこの一般則に含まれる。

(2)ではさらに、 が の役を務める。「 掛ける対称関数を見たら、 を重心 に置き換えてよい」と読めば、置換計算を暗記でなく描像で再現できる。

ポイント

  • で 。
  • で の形と見抜く。
  • → → 答え 。

よくある間違い

  • 置換 で、 と積分区間の反転()を二重に処理して符号を誤る。
  • の変形に気づかず、(1)が使える形()と見抜けない。
  • の原始関数を と誤る(それは の積分。正しくは 置換)。

問3直交する2つの円柱の共通部分

最難関編断面積の積分非回転体

問題

半径1の2つの直円柱があり、その中心軸は直交している。2つの円柱の共通部分の体積を求めよ。

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体積の一般原理は「断面積を積む」。どの向きで切れば断面が簡単になるかを考える。2本の軸の両方に垂直な向きで切ると、それぞれの円柱の条件は何を制限する形になるか。

解答・解説

方針

回転体ではないので断面積の積分 V=∫S(z)dz に戻る。決め手は切る向きだ: 2本の軸のどちらとも垂直な方向 z で切ると、各円柱の条件が「|x|≤√(1−z²)」「|y|≤√(1−z²)」という独立な帯になり、断面は正方形 S(z)=4(1−z²) になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 回転体ではないから は使えない。原点に戻って断面積の積分 だ。「切る向きの選び方」が大事だ。

軸を 軸()と 軸()にとり、どちらの軸とも垂直な 方向で切る。 を止めると、1本目の条件は 、2本目は 。 と が独立に制限され、断面は正方形になる。

円柱を円柱らしく(軸方向に)切ると円が出て絡まるのに、直角に切ると正方形が現れる。この違いが決め手だ。

公式体積 = 断面積の積分 。切る向きは「条件が独立になる向き」を選ぶ

① 断面を求める。 円柱を (軸は 軸)、(軸は 軸)とする。高さ ()の断面は

すなわち1辺 の正方形で、面積は

2√(1−z²)
高さ z の断面。1本目の円柱が |x|≤√(1−z²) の帯(縦)、2本目が |y|≤√(1−z²) の帯(横)を与え、共通部分は正方形(赤)。破線は各帯の境界

② 積分する。

③ 答えの吟味。 円柱2本の交わりなのに、体積 に円周率が現れない。断面がすべて正方形だからだ。この立体に内接する球(半径1、体積 )と比べると で、たしかに球を包んでいる。

まとめ: 非回転体の体積は「切る向きの設計」が9割。2つの条件が独立の帯になる方向を探すと、断面が初等図形(正方形)に落ちる。円柱の交差でπが消える意外性ごと、断面積分の代表例として胸に置きたい。

発展。 この立体はシュタインメッツの立体と呼ばれ、古代中国では「牟合方蓋」の名で研究された(祖沖之父子が体積を求めている)。円柱を3本直交させた共通部分は で、これも断面の取り方を工夫すれば高校の積分で求められる。断面が初等図形になる向きを探す、という本問の設計思想はそのまま通用する。

答

(円周率が現れない)

別解

球と断面を比べる(カヴァリエリの原理で積分が消える)。 この立体には、半径1の球がぴったり内接する。高さ で両方を切ってみよう。

  • 本問の立体の断面: 1辺 の正方形、面積
  • 内接球の断面: 半径 の円、面積

つまり、どの高さで切っても、断面は円とその外接正方形の関係にあり、面積比はつねに

断面積の比がすべての高さで一定なら、体積の比も同じになる(カヴァリエリの原理:体積は断面積の積分だから)。よって

積分を1本も書かずに答えへ着いた。 が消える理由も「球の と比の が約分される」と、この見方でいちばんよく分かる。

ポイント

  • 両軸に垂直な で切ると条件が独立の帯になる。
  • 断面は1辺 の正方形、。
  • (πが消える)。

よくある間違い

  • 回転体の公式 を使おうとする(この立体は回転体ではない)。
  • 断面の正方形の1辺を (半分)として体積が になる。
  • を の2倍にするときの処理を混乱する(偶関数なので2倍でよいが、どちらか一方に統一)。

問4絶対値つき積分の最小化

最難関編絶対値の積分最小化

問題

を を満たす実数とする。

を最小にする の値と、そのときの最小値を求めよ。

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絶対値の積分は、中身が0になる点で区間を分けてから。 が の式になったら、あとは1変数の最小化だ。最小を与える条件を言葉に直すと、交点はどこに来ているか。

解答・解説

方針

絶対値は中身の符号が変わる交点 x=log a で分割して S(a) を a の式にする。微分すると S'(a)=2log a−1 となる。交点が積分区間のちょうど中央 (log a=1/2) に来るとき最小になり、「中央値」の構造が現れる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は増加だから、水平線 ()とは1点 で交わる。絶対値の積分はこの交点で分割して の式にするのが原則だ。左では 、右では 。

を計算して微分すると 。最小の条件は 、つまり交点が積分区間 のちょうど真ん中に来るとき。絶対偏差の和は「中央」で最小になる。統計で学ぶ中央値の原理の、積分版が現れる。

重要 の積分は交点で分割。最小の条件は「 が中身の中央の値」、つまり交点が区間の中点に来ること

① 分割して計算する。 。

前半は 、後半は 。よって

② 微分して最小点を探す。

で負、 で正だから、()で最小。交点は で、たしかに区間の中点だ。

xyOa=√e0.51
y=eˣ と最適な高さ a=√e(破線)。交点 x=1/2 がちょうど区間 [0,1] の中点にある。左右の「ずれの面積」が釣り合う位置で S(a) が最小になる

③ 最小値。

まとめ: 「交点で分割 → の関数化 → 微分」の直進で解けるが、最小の条件を「交点=区間の中点」と読むと意味が分かる。 の総和を最小にする は、 の「時間の中央値」 だ。最小値は と平方の形にまとまる。

発展。 「 を最小にする は の中央値(上下の測度が釣り合う値)、 を最小にする は平均値 」となる。データの分析で学ぶ「絶対偏差は中央値・平方偏差は平均」と同じ対応がここにもある。本問の なら、平方版の最適値は で、中央値版の とずれるのも統計と同じ現象だ。

答

のとき最小値

別解

微分を「長さの差」で読む(釣り合いからすぐ出す)。 をわずかに だけ持ち上げると、 はどう変わるか。図で考える。

  • 交点より左( の区間、長さ ): 帯 が厚くなる → 面積は
  • 交点より右(長さ ): 帯が薄くなる → 面積は

よって

微分の計算(本解の①②)をせずに、 が図から直接読めた。最小の条件 は となる。これは左右の区間の長さが釣り合うとき、つまり交点が中点に来るときだ。

「絶対値の積分の 微分=(下側の測度)−(上側の測度)」という読み方は、この型の最小化すべてに通じる。最小値の計算だけは本解の式に任せればよい。

ポイント

  • 交点 で分割し 。
  • → (交点が区間の中点)。
  • 最小値 。

よくある間違い

  • 絶対値を外さずに をそのまま計算する(交点 での分割が先)。
  • 端の場合( で 、 で )の検分を忘れる(本問は の符号で内部最小が確定するので結論は変わらないが、分割の妥当性の確認として要る)。
  • 最小値 を と畳めず、検算の機会を逃す。

問5積分方程式(未知関数を求める)

最難関編積分方程式加法定理

問題

連続な関数 が

を満たすとき、 を求めよ。

ヒントを見る

積分の中の に注目する。 と を分離できる公式があったはずだ。分離できれば、積分全体は「定数×cosx+定数×sinx」となり、 の形が決まってしまう。あとはその定数を自分自身で確かめる連立。

解答・解説

方針

cos(x−t) を加法定理で cosx cost + sinx sint にほどくと、積分は x によらない2つの定数 A, B を係数とする cosx, sinx の1次結合になる。これで f の形が先に確定する。その形を A, B の定義に代入して自己整合の連立を解く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 積分の中の には、 と が両方入っていて手が出ない。加法定理 でほどくと、 の部分は積分の外に出る:

は によらないただの定数だ。与式は となり、 の形が先に確定する。あとは、この形を の定義に戻して代入すれば、自己整合の連立方程式になる。

重要核を加法定理で分離 → 未知関数の形が確定 → 定数を自己整合の連立で決める。部品: 、

① 形を確定する。 上の分離により

② を決める。 この形を に代入:

よって で、 だから 。

③ を決めて仕上げる。 同様に

したがって

( なので係数は負になる。もとの方程式に戻して代入すると、たしかに両辺が一致することが確かめられる。)

まとめ: 「核の分離 → 形の確定 → 自己整合」の3手。( で )の3つで計算はすべて済み、未知関数の問題が定数2つの連立に帰着する。

発展。 核 が と「 の関数× の関数」の和に分解できたことが全てだった。関数を の成分に分けて扱うこの見方は、フーリエ級数(任意の周期関数を三角関数の和に分解する理論)の最小モデルで、途中で使った は「 と の直交性」と呼ばれ、フーリエ級数の中心になる性質だ。

答

別解

形を先に断定して係数比較(未知数が最初から2つ)。 加法定理でほどいた瞬間に「 は と の1次結合」と分かるのだから、最初から とおいてしまう。必要な積分は3つだけ( 上):

代入して積分を実行すると

方程式 で、 の係数を比較して

第2式から 、第1式から 。積分に名前を付ける(本解の )か、関数の形に名前を付ける()かの2通りがある。数IIの積分方程式で出会った2つのやり方を、ここでは三角関数の直交性()と組み合わせて使う。

ポイント

  • の分離で 。
  • → 、 → 。
  • (係数は負)。

よくある間違い

  • の を定数扱いして、そのまま で積分しようとする(加法定理でほどくのが第一手)。
  • を とする(正しくは 。 の積分で確認)。
  • 求めた を元の方程式に代入する検算を飛ばす(係数 が負になる違和感を検算で解消しておく)。

問6対数×余弦の曲線の長さ

最難関編曲線の長さ部分分数

問題

曲線 ()の長さを求めよ。

ヒントを見る

長さの公式の根号の中身 は、この曲線ではとても簡単になる。残った の積分は分母分子に何を掛ければ既知の形(置換+部分分数)に持ち込めるか。

解答・解説

方針

長さの公式で y'=−tanx、1+tan²x=1/cos²x と根号がきれいに外れて L=∫dx/cosx に落ちる。1/cosx の積分は分母分子に cosx を掛けて t=sinx とおき、部分分数に分ける。最後は (2−√3)(2+√3)=1 の共役の関係で対数が1つにまとまる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 曲線の長さは 。 の微分は で、。

根号がきれいに外れて( の範囲)、 に落ちる。 の積分が本丸だ。分母分子に を掛けて の部分分数に持ち込む。最後は共役 の関係で、対数が1つにまとまる。

公式。(分母分子に → → 部分分数)

① 根号を外す。 だから

② を積分する。 分母分子に を掛けて

③ 値を入れる。 は だから

ここで より 。よって

xyO(π/3, −log2)
曲線 y=log(cosx)(0≤x≤π/3)。右端 (π/3, −log2) までの弧の長さが log(2+√3)≈1.317

まとめ: で根号が外れる曲線は、長さの計算の名品。 の積分(掛けて置換して部分分数)と、共役 による最後の畳み込みまで、計算の見せ場が続く。

発展。 は航海術の積分でもある。メルカトル図法(角度が正しい世界地図)で緯度 の緯線を描く高さがちょうどこの積分で、高緯度ほど地図が縦に伸びる(グリーンランドが巨大に見える)理由がこの の発散だ。曲線の長さの計算が16世紀の地図製作の数学と同じ式に出会う。

答

別解

半角置換 (いつでも使える置換で有理式にする)。 の積分には三角関数を全部 の有理式にする、いつでも使える置換もある。

を入れると

で だから

の部分分数(本解)と半角置換(本ルート)、 の2大ルートだ。半角置換は「三角関数の有理式なら何でも有理関数に変える」最終兵器で、他の手が尽きたときの保険になる。

ポイント

  • で 。
  • は の部分分数。
  • 共役の関係で 。

よくある間違い

  • とするとき、()の確認を落とす(一般には絶対値)。
  • 部分分数 の係数 を落とす。
  • 答えを のまま提出する(共役で有理化して まで畳む)。

問7区分求積で円が現れる和

最難関編区分求積法置換積分

問題

極限 を求めよ。

ヒントを見る

で割る形は和を「幅 の短冊の面積の合計」と読み替える合図。短冊の高さを与える関数は何か。それが分かれば、極限の値は図形の面積として先に分かる。

解答・解説

方針

√(n²−k²)=n√(1−(k/n)²) と n をくくり出すと、和は (1/n)Σ√(1−(k/n)²) となる。これは曲線 y=√(1−x²)(単位円の上半分)の短冊の和だ。極限は ∫₀¹√(1−x²)dx で、x=sinθ の置換(または四分円の面積)から π/4。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) と をくくり出すと

「幅 の短冊の和」の形、すなわち区分求積だ。並んでいるのは曲線 、単位円の上半分。極限は 、つまり四分円の面積 に一致する。和の中に、円が隠れていた。

公式区分求積法: 。 は で計算できる

① 区分求積の形に直す。 上の変形により、求める極限は

xyO
y=√(1−x²)(四分円)と幅 1/n の短冊(n=10)。短冊の面積和が極限で四分円の面積 π/4 に一致する

② 置換で計算する。 (、 で ):

③ 答え。 。(単位円の四分円の面積、と読めば検算にもなる。)

まとめ: 「 で割る和 → をくくって短冊 → 区分求積」という書き直しだけで解ける。数列の和の極限に円周率が現れるのは、和が円の面積を近似しているからだ。区分求積は「和の中の図形」を探す方法だと考えるとよい。

発展。 左右の和の差 は、リーマン和の誤差が のオーダーであることを示している。短冊を台形に替える(台形則)と誤差は に改善する。これは数値積分の精度理論で扱う内容だ。円周率をこの和で数値計算してみると、 で 程度と、 の遅さが体感できる。

答

別解

左右の和ではさむ(区分求積を「手作り」する)。 区分求積法を定理として引用する代わりに、はさみうちで自前で示すこともできる。 は減少関数。幅 の各小区間 で、 の値は右端 以上・左端 以下だから

左の和(与式)と右の和の差は、端の項の差だけ:

よって両者は同じ極限をもち、その値は (四分円の面積)。単調な関数なら、区分求積は「左右の短冊ではさんで、差 」で毎回その場で正当化できる。定理の中身を自分で確かめられるので安心だ。

ポイント

  • の短冊和に直す。
  • 極限は (四分円)。
  • の置換で 。

よくある間違い

  • から をくくるとき ()の処理を雑にする。
  • 和の範囲( から )と区分求積の端点( の項の有無)の対応を気にして止まる(端の1本は で極限に影響しない、と言えばよい)。
  • を置換で計算するとき、 の範囲 と の対応を崩す(四分円の面積と読めば計算不要)。

問8対数曲線の領域の y軸回転

最難関編回転体の体積逆関数

問題

曲線 、 軸、直線 で囲まれた部分を、 軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を求めよ。

ヒントを見る

軸のまわりに回すなら、切るのも で。高さ の水平線が領域を横切る範囲は、 がどこからどこまでか。曲線の式を「」の形に書き替えると分かる。

解答・解説

方針

y軸回転は y で切る: 高さ y (0≤y≤1) の断面は、外半径 e(直線 x=e)・内半径 e^y(曲線 y=logx を x について解いた逆関数)の円環。V=π∫(外²−内²)dy に逆関数を乗せて計算する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 軸まわりの回転体は、 で切るのが基本だ。高さ ()の断面を考える。

外側の境界は直線 、内側の境界は曲線 、すなわち (逆関数に直す)。断面は外半径 ・内半径 の円環になる。あとは を計算するだけ。逆関数に直すのが、この型の最初の一手になる。

公式 軸回転の円環: 。(逆関数への持ち替え)

① 断面を読む。 領域は 、。高さ で切ると は から まで動くから、回転断面は

の円環。

xyOx=e11
回転させる領域(色部分): y=logx、x軸、x=e で囲まれた部分。高さ y の水平線は x=e^y(曲線)から x=e(破線)まで。これが円環断面の内径と外径になる

② 積分する。

③ 吟味。 外側の円柱(半径 ・高さ1)の体積は で、そこから内側のラッパ状の部分 をくり抜いた、と読める。たしかに で勘定が合う。

まとめ: 軸回転は「 で切る+逆関数への持ち替え」の2点セット。円柱からのくり抜きとして検算する目線まで持てば、符号や半径の取り違えも自分で捕まえられる。

発展。 輪切り( で切る)とバウムクーヘン( で切る)が同じ答えを出すのは、平面領域を縦に走査するか横に走査するかの違いだけだからだ。これは大学で学ぶ重積分の「積分順序の交換」の最初の実例だ。 軸回転で逆関数が求めにくい曲線(たとえば )では、バウムクーヘンだけが実行可能になる。両刀を持つ価値はそこにある。

答

別解

バウムクーヘン積分(縦に切って筒を積む)。 で切る(本解)代わりに、 で切って円筒の殻を積む方法もある。

位置 ()の縦の短冊(高さ 、幅 )を 軸まわりに回すと、半径 ・高さ ・厚さ の筒(バウムクーヘンの1層)になり、その体積は 。よって

部分積分( を微分する側に)で

本解(輪切り)と一致した。輪切りは逆関数に直す一手が要り、バウムクーヘンは のまま使える代わりに部分積分が要る。どちらの手間を選ぶかの違いで、両方で解いて照合すれば答えはまず間違えない。

ポイント

  • で切る: 外半径 、内半径 (逆関数)。
  • 。
  • 円柱 からのくり抜きとして検算できる。

よくある間違い

  • 内外の半径を取り違える(外=直線 、内=曲線 。 が大きいほど円環は細い)。
  • を逆関数 に直さず、 の積分に のまま持ち込む。
  • バウムクーヘンの公式 の (円周)を とする。