数学III / 微分法の計算

微分法の計算 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 微分できるのに導関数が連続でない関数
  2. 1/(1+x²) の第 n 次導関数の値
  3. cos nθ が満たす微分方程式(媒介変数の2階微分)
  4. f(x+y)=f(x)f(y) を満たす微分可能な関数
  5. 対称2階差分は f'' に収束するか
  6. 逆関数の第2次導関数
  7. x^(n-1) log x の第 n 次導関数
  8. すべての階の微分係数が 0 になる関数

問1微分できるのに導関数が連続でない関数

最難関編微分の定義はさみうち導関数の不連続

問題

関数 を次で定める。

(1) は で微分可能であり であることを、微分の定義に従って示せ。

(2) における を求めよ。

(3) は存在しないことを示せ。すなわち は で連続でない。

ヒントを見る

(1) 差の商を書くと の前に が1つ残る。暴れる部分に何が掛かっているかを見よ。(3) の近づけ方は自由に選べる。 の値を狙って固定できる の列を作れるか。

解答・解説

方針

(1)は定義の差の商を書き、 の有界性ではさみうちにする。(2)は積の微分と合成関数の微分。(3)は「近づけ方を自分で選ぶ」。 が になる列と になる列を、ともに に収束するように作る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は で無限に速く振動する。値は と を行き来し、極限を持たない。

だがその前に が掛かっている。振動の振幅が で押さえつけられているのだ。決め手は押さえの強さだ。 は で割ってもまだ が残る。だから微分係数は存在する。

ところが導関数を計算すると、合成関数の微分から が単独で現れる。こちらには同じ押さえ方が使えない。これが「微分できるのに導関数が連続でない」理由である。

定理はさみうちの原理: かつ ならば

① (1) 定義に戻る。 だから、差の商は

なので 。右辺は で に行く。はさみうちより差の商の極限は である。よって は で微分可能で 。

② (2) では普通に微分する。 積の微分と合成関数の微分を使う。 に注意して

第1項は で に押さえ込まれる。第2項 は振幅 のまま残る。この違いが結論を決める。

xyO
y=x^2 sin(1/x) は帯 |y|<=x^2(破線)に閉じ込められる。原点に近づくほど振動は速くなるが、振幅は x^2 につぶされて 0 に落ちる。だから x=0 での接線の傾きは 0 になる(図は |x|>=0.028 の部分。原点の直近では振動が細かすぎて描けない)

③ (3) 近づけ方を2つ作る。 とおくと だから

とおくと だから

のとき 、 である。ところが の値は一方では 、他方では 。もし が存在するなら、どんな近づけ方でも同じ値に収束しなければならない。 と の両方になることはありえない。よって極限は存在しない。

xyO1-1
導関数 y=f'(x)=2x sin(1/x) - cos(1/x)。x を 0 に近づけると、値は +1 と -1 のあいだを何度でも往復し、どこにも落ち着かない(振幅は 1 に近づく)。f'(0)=0 なのに、その近くの傾きは 0 に近づかない

まとめ: 「 で微分できる」ことと「導関数が で連続」は別物である。 は差の商の極限で決まる値であり、 の の極限とは何の関係もない。この2つを結びつける定理は存在しないのだ。

発展。 押さえつけの指数を変えると、滑らかさが1段ずつ変わる。( で )なら差の商は そのもので、振動して極限がない。つまり連続だが微分できない。 なら導関数は となり、今度は も に押さえ込まれるので、導関数まで連続になる。「どこまで滑らかか」を指数で測る、という見方の最初の例である。

答

(1) 差の商は で 。よって (2) (3) では 、 では 。 に近づけても値が を往復するので極限はない

別解

(3)を背理法で見る(高い視点)。 導関数の極限には、実は強い制約がある。

仮に が存在したとしよう。 をとると、平均値の定理より と のあいだに があって

が成り立つ。 とすると だから、右辺は に近づく。左辺は(1)より に近づく。したがって でなければならない。

ところが②の式で とすれば であり、 のいくらでも近くに となる点がある。これは と矛盾する。よって は存在しない。

この論法から、次の一般則が分かる。導関数の極限 が存在するならば、それは必ず に一致する。言いかえると、導関数は「飛び」を持てない。持てるのは、この問題のような「振動」だけだ。

ポイント

  • 微分の定義に戻れば、 ははさみうちで 。
  • 導関数には が押さえなしで残る。
  • 極限の非存在は「2つの近づけ方で違う値」で示す。

よくある間違い

  • に極限がないから も微分できない、と早合点する。振幅が で押さえられている点を見落としている。定義の差の商を実際に書けば、はさみうちが使えることがすぐ分かる。
  • (2)の合成関数の微分で の負号を落とし、 としてしまう。(3)の結論は符号を落としても出てしまうので、間違いに気づけない。
  • (3)から「 も存在しない」と結論する。 は差の商の極限で決まる値で、 の の極限とは別物である。この2つの混同こそ、本問が壊そうとしている思い込みだ。

問21/(1+x²) の第 n 次導関数の値

最難関編ライプニッツの公式高階導関数漸化式

問題

とする。

(1) すべての自然数 に対して

が成り立つことを示せ。ライプニッツの公式 を用いてよい。

(2) を求めよ。

ヒントを見る

商のまま微分を重ねると分母が に膨らむ。その前に、分母を消せないか。 は何回微分すると になるか。そこにライプニッツの公式が使える理由がある。

解答・解説

方針

商の形のまま 回微分するのは無理。分母を払って とし、両辺を微分する。右辺は定数だから何回微分しても 。左辺はライプニッツで3項だけ残り、高階導関数の漸化式になる。 を代入すれば値の漸化式が得られる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) をそのまま 回微分するのは無謀だ。商の微分を繰り返すたびに分母は へ膨らみ、分子の多項式は手に負えなくなる。

そこで分母を払う。 という「多項式 関数 定数」の形にしてから微分するのだ。

右辺は定数だから、何回微分しても 。左辺は積のライプニッツの公式で展開できる。しかも は3階以上の導関数が なので、項は3つしか残らない。こうして高階導関数どうしの漸化式が手に入る。

あとは を代入する。 の付いた項が消えて、値だけの漸化式になる。

公式ライプニッツの公式

① 分母を払う。 両辺に を掛けて

② 両辺を 回微分する。 左辺に 、 としてライプニッツの公式を使う。、、 だから、和は の3項で終わる。

、 である。整理すると

右辺が なのは、定数 を 回( 回以上)微分したからだ。

③ を代入する。 の付いた第2項が消える。

出発点は と である( に を入れる)。漸化式は2つ飛びで値をつなぐ。奇数階は から出発するので、次々と になる。偶数階は 、すなわち とおいて

順に使うと 、、。掛かる因数は で、これを まで掛け合わせると になり、負号が 個つく。

まとめ: 商のままでは近寄れない高階導関数も、分母を払って「多項式 関数」にすれば、ライプニッツの公式が有限個の項で閉じてくれる。 の代入で 付きの項を落とし、値の漸化式にする。この2つが高階微分の基本の手順である。

発展。 得られた値は見覚えのある形をしている。 である。一方 は初項 、公比 の無限等比級数の和として と書ける()。その の係数もまた だ。一般に「関数を のべきで書いたときの の係数」と「 階微分係数」は で結ばれる。この対応(テイラー展開)は大学で本格的に学ぶが、本問のような漸化式はその基礎になる。

答

(1) の両辺を 回微分する( は3階以上が なので項は3つだけ残る) (2) 、

別解

有限の等比の和に剰余をつけて、係数を直接読む(得意な人向け)。 微分を1回もせずに答えの形を出す道もある。初項 、公比 、項数 の等比数列の和の公式から、次の恒等式が得られる(これは有限和なので、収束の議論は要らない)。

両辺を 回微分して とおく。右辺の最後の項を ()と書くと、ライプニッツの公式より の各項には の 回以下の微分が現れる。それらはまだ の正のべきを含むので、 ではすべて になる。つまり剰余項は消える。

残るのは多項式部分だけだ。 を 回微分して とすると、 の項だけが残って 、他は 。よって

同じ議論を 回微分で行えば、残る項がなく である。「微分を繰り返す」代わりに「代数の恒等式を1本立てて、余りが消えることを言う」。これも高階微分で役に立つ方法だ。

ポイント

  • 分母を払って にしてから微分する。
  • は3階以上が 。ライプニッツの和は3項で終わる。
  • で 。2つ飛びの漸化式。

よくある間違い

  • 商の微分を繰り返して一般項を出そうとする。分母が に膨らみ、分子の多項式が制御できなくなって時間を失う。先に分母を払う。
  • ライプニッツの公式を書いたあと、和を から まで全部書き出そうとする。 の3階以上が だから、残るのは3項だけである。
  • (2)で漸化式が「1つ飛び」だと思い込む。つなぐのは と 、つまり2つ飛びである。奇数階と偶数階は完全に別系統で、混ぜてはいけない。

問3cos nθ が満たす微分方程式(媒介変数の2階微分)

最難関編媒介変数表示第2次導関数三角関数

問題

を自然数とし、 とする。、 とおく。

(1) を で表せ。

(2) 次が成り立つことを示せ。

(3) のとき、 を の多項式で表せ。

ヒントを見る

で微分できないなら、 で微分して で割ればよい。2階も同じ道を通る。 を で書くと何になるか。それが分かれば、分母の を消せる。

解答・解説

方針

を の式で書くことは( が一般なので)できない。だが微分の関係式なら のまま計算できる。媒介変数の1階・2階の公式で 、 を の式にし、 で分母を掃除する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) を の式で書こうとすると、 が一般だから多項式の形が見えない。行き止まりだ。

しかし「微分の関係式」なら、 の式を経由せずに作れる。媒介変数のままで も も計算できるからだ。

2階の計算では分母に が出てくる。これが残ると式は汚いままだ。ところが である。 を掛けるという操作が、この分母をちょうど消す。問題文の左辺に が付いている理由がここにある。

公式媒介変数表示の微分 、

① 1階を作る。 、 である。 より だから割れる。

② 2階を作る。 ①の式をもう一度 で微分し、 で割る。商の微分より

これを で割って

③ 3つの項を足す。 である。これを掛けると分母が から に落ちる。

3つを足すと、 が消え、 と も消える。残りは 。これで(2)が示された。

④ (3) の場合。 3倍角の公式 に を入れて

念のため(2)で検算する。、 だから

確かに満たす。

xyO-11
n=3 のとき、x=cosθ・y=cos3θ の対応は多項式 y=4x^3-3x になる。-1<=x<=1 では帯 |y|<=1(破線)の中を行き来し、ちょうど4回だけ縁に触れる(赤点)

まとめ: 媒介変数のまま2階微分を組み立て、 で分母を掃除する。 に無理に直さず、 のまま計算を最後まで進めるのが要である。

発展。 (3)で現れた は を の多項式で表したもので、チェビシェフ多項式 と呼ばれる。 がいくつでも は 次多項式になり、(2)の微分方程式を満たす。 では だから 。つまり は「区間 で のあいだを 回振動する 次多項式」である。この激しい振動があるので、 は「区間上での最大値をできるだけ小さくする多項式」として、近似理論で中心的な役割をもつ。

答

(1) (2) を使うと3項がちょうど打ち消し合う(証明) (3)

別解

加法定理から漸化式を作る(手を動かして確かめるルート)。 微分方程式を通らずに、 が多項式になる仕組みそのものを見ることもできる。和積の公式から

ここで ()と書けば、これは

という漸化式である。、 から順に

(3)の答えが3倍角の公式を覚えていなくても出てくる。しかもこの漸化式から「 は 次多項式である」ことが帰納法で言える(最高次の係数は になる)。

微分方程式が「 の満たす関係」を微分の言葉で述べているのに対し、この漸化式は同じ事実を代数の言葉で述べている。どちらの言葉でも を捕まえられる。

ポイント

  • の式にできなくても、微分の関係式は のまま作れる。
  • 2階は「1階をもう一度 で微分し、 で割る」。
  • が分母 を掃除する。

よくある間違い

  • 2階微分を と書いてしまう。分数のように上下を2階微分する公式は存在しない。1階の式をもう一度 で微分し、 で割る。
  • で割る場面で を除く条件を書き忘れる。この2点()では の式そのものが意味を持たない。
  • (3)で3倍角を と符号を逆に覚えている。 を入れて になるかを見れば、その場で検算できる。

問4f(x+y)=f(x)f(y) を満たす微分可能な関数

最難関編関数方程式微分の定義指数関数

問題

実数全体で微分可能な関数 が、すべての実数 に対して

を満たし、さらに ( は定数)であるとする。以下、 は恒等的に ではないとする。

(1) であり、すべての で であることを示せ。

(2) すべての で が成り立つことを、微分の定義から示せ。

(3) を求めよ。

ヒントを見る

がどんな関数かは分からない。それでも微分の定義には が現れる。関係式が使える場所はどこか。

が出たあと、答えを予想して代入するだけでは「ほかにない」と言えない。 を微分してみるとどうなるか。

解答・解説

方針

与えられているのは値の関係式だけで、 がどんな関数かは分からない。だが微分の定義には が現れる。そこに関係式を差し込むと、 の部分がくくり出され、残りは になる。得られた から を決めるには、 を微分して定数だと示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 与えられているのは「値の関係式」だけだ。 が何者なのかは書かれていない。

それでも微分の定義 には が現れる。ここに関係式を差し込める、と気づけるかどうかがすべてである。

を使うと、差の商は と分離する。 の部分がくくり出され、 の部分は そのものになる。こうして という「自分自身に比例して増える」関係が出る。

最後の詰めが大事だ。 を思いついて代入し「確かに満たす」で終えてはいけない。それは十分性の確認にすぎない。ほかに解がないことを言うには、 を微分して定数だと示すのが筋である。

公式微分の定義
定理区間で常に ならば、 はその区間で定数(平均値の定理の系)

① (1) まず を入れる。 より または 。

もし なら、任意の について となり、 は恒等的に になってしまう。これは仮定に反する。よって 。

次に を入れると 。積が なのだから、 が になることはない。

② (2) 微分の定義に関係式を差し込む。 より

だから、右の分数は にほかならない。 とすればこれは に収束する。 は に無関係だから、そのまま外に出る。

③ (3) 比例関係から を決める。 とおく。積の微分より

②より中カッコは常に だからだ。導関数が恒等的に なので は定数である。 だから 、すなわち

逆にこれは と を満たす。よって求める関数は ただ1つである。

まとめ: 手順は2手だ。関係式を微分の定義に差し込んで を出す。そして を掛けて定数化し、ほかに解がないことまで言い切る。関数方程式の問題で「予想して代入」だけで終えるのは、答案として半分しか書いていない。

発展。 実は「 を満たす連続関数」は、微分可能性を仮定しなくても 型に限ることが証明できる。ところが連続性まで外すと、グラフが平面じゅうに稠密に散らばるような、とんでもなく病的な解が存在してしまう(選択公理を使う構成)。「1つの等式 わずかな滑らかさ」だけで関数が完全に決まる、というのがこの種の問題の特徴である。兄弟もいる。 なら 、()なら だ。掛け算と足し算をつなぐ関数が対数である。

答

(1) と、 から従う (2) 差の商が と分離する (3)

別解

対数をとって、掛け算を足し算に変える(高い視点)。 関係式は「和を積に変える」形をしている。ならば対数をとれば、和が和のまま残るはずだ。

まず を確かめる。 であり、(1)より だから である。そこで とおける。 は微分可能で 、。

関係式は

になる。掛け算の関係が足し算の関係に変わった。ここで微分の定義を書くと、 だから

は に依存しない定数になる。傾きが一定なら直線だ。、 より 。したがって

本解が「比例関係 を解く」方法なら、こちらは「変数を変えて一次関数に直す」方法である。 が掛け算を足し算に変える、という一点で全体が成り立っている。

ポイント

  • から ( は恒等的に の場合)。
  • 差の商は に分離する。
  • を微分して定数だと示せば、一意性まで言える。

よくある間違い

  • と予想して代入し、「確かに満たす」で終える。それは十分性の確認にすぎない。ほかに解がないこと(必要性)を示さなければ解答にならない。
  • (1)で の場合を切り捨てずに進む。この場合 は恒等的に になり、問題の除外条件に当たる。場合分けを明示してから捨てる。
  • (2)で を「 の の極限」と混同する。これは における微分係数 そのものである( を使って差の商の形にする)。

問5対称2階差分は f'' に収束するか

最難関編微分の定義平均値の定理第2次導関数

問題

関数 と実数 に対して

とおく。

(1) が で2回微分可能ならば であることを示せ。

(2) 逆は成り立たない。すなわち が存在しても が存在するとは限らない。 と の場合について、そのことを確かめよ。

ヒントを見る

(1) と を足すと、奇数次の項は消える。残る誤差の大きさをどう押さえるか。手持ちの道具は平均値の定理だけだ。

(2) は左右を同時に見ている。左右の食い違いが「打ち消し合う」形の関数を探せ。

解答・解説

方針

(1)は を「 誤差」と書き、誤差が より速く に行くことを平均値の定理で示す。足し合わせると1次の項が消える。(2)は で を直接計算し、 が原点で折れることを見る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は「差の差」を で割ったものだ。1階の差の商が に近づくのだから、2階の差は に近づくはずだ、という直感がある。

これを厳密に言うには、 を「 誤差」と書き、誤差が より速く に行くことを示せばよい。使える道具は平均値の定理だけである。

(2)は逆向きだ。 は右と左を同時に見て、平均をとっている。もし左右の折れ方が対称に食い違えば、 の中で打ち消し合ってしまう。 の がその例だ。関数自身はなめらかなのに、導関数が原点で折れている。その折れを は見逃す。

定理平均値の定理: が微分可能なら となる ()が存在する

① 誤差を定義する。 は で2回微分可能とする。

とおくと であり、 で微分して

② 誤差は より速く消える。 平均値の定理を に使うと、 となる があって 。両辺を で割ると

ここで のとき

である。これは の定義そのものだ。 だから 。よって

を に置き換えた式も同様で、 である。

③ 足し合わせる。 定義から

辺々足して を引くと、1次の項 が消える。

で割れば

④ (2) 反例を調べる。 、 とする。、、 だから

ならつねに である。したがって で、極限は確かに存在する。一方、導関数を調べる。 では で 、 では で 、 では 。まとめると

この は で微分できない。右から近づけると 、左から近づけると で食い違うからだ。よって は存在しない。

xyOy=x|x|y=f'(x)=2|x|
y=x|x|(青)は原点でなめらかで、接線は x 軸そのもの。ところが導関数 y=f'(x)=2|x|(赤)は原点で折れる。2階微分はここで存在しない。対称2階差分 D(h) はこの折れを見逃す

まとめ: 対称2階差分は の「近似」としては正しい。しかし「存在の証拠」にはならない。左右の食い違いを、平均をとる過程で打ち消してしまうからだ。

発展。 数値計算では をそのまま使う(2階中心差分)。 が4回微分できる場合、誤差が に比例することまで示せて、片側の差分よりずっと精度が高い。実用上はきわめて有能な近似式である。それでも本問(2)が示すとおり、 が収束することから の存在は導けない。「近似式が使えること」と「極限が存在すること」は別の問題だ。数値計算で使える近似と、極限が存在するかどうかとの違いがよく分かる例である。

答

(1) 誤差 が を満たす(平均値の定理)ことから従う (2) は で極限 をもつが、 が で微分できず は存在しない

別解

を「2つの傾きの差」と読む(意味から見る)。 式を次のように分解する。

中カッコの中身は「右側の傾き」と「左側の傾き」だ。その差をさらに で割っている。つまり は「傾きの傾き」を測っている。これが に近づく、というのが(1)の意味である。

この読み方で、(2)の反例がなぜ起きるかも分かる。、 で計算してみよう。右側の傾きは 。左側の傾きは 。

両者は完全に一致する。だから差は 、 である。 は原点で と に折れているのに、 が見ているのは「右の傾きと左の傾きの差」であり、その2つが同じ値 で に近づくために、折れが完全に隠れてしまうのだ。

打ち消しの構造がはっきり見えれば、(2)のような反例は自分で作れるようになる。

ポイント

  • 誤差 を定義し、平均値の定理で を出す。
  • で1次の項が消え、 が残る。
  • は 。 の折れを は見逃す。

よくある間違い

  • (1)で を「テイラー展開」と称して の先まで書き、誤差の扱いをあいまいにする。必要なのは「誤差が より速く に行く」という一点で、それを平均値の定理で押さえるのが筋である。
  • (2)で を「原点でなめらかでない関数」と早合点する。 自身は原点で微分可能()で、折れているのは導関数 のほうだ。どの段で壊れているかを取り違えない。
  • の存在を「 の存在」と同一視する。この問題はその2つが同値でないことを示すためにある。

問6逆関数の第2次導関数

最難関編逆関数の微分合成関数の微分凸性

問題

は2回微分可能で、つねに であるとする。 の逆関数を とする(すなわち、すべての で )。

(1) とするとき

が成り立つことを示せ。

(2) の逆関数を とするとき、 と を求めよ。

ヒントを見る

の式は書けない。それでも は書ける。この等式は何回でも微分できる。

(2) 公式に代入するのは「 に対応する 」での値だ。それはどこか。

解答・解説

方針

逆関数 は式で書けない( は について解けない)。それでも という恒等式は使える。両辺を で微分すれば が、もう一度微分すれば が求まる。(2)ではまず に対応する を見つける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 逆関数 を式で書こうとしても書けない。 を について解く方法は存在しないからだ。

それでも微分係数は求まる。ここがこの分野の要である。

決め手は という恒等式だ。両辺を で微分すれば、 の式が分からなくても の値が出る。2階も同じで、もう一度微分するだけだ。ただし左辺は合成関数だから、微分すると と の両方が現れる。すでに分かっている を代入すれば が解ける。

(2)では、公式に入れる を間違えないことが大事だ。使うのは「 に対応する 」である。 を睨むと が見える。

公式逆関数の微分 ()。2階は

① 1階を出す。 の両辺を で微分する。左辺は合成関数だから

だから割れて、 とすれば 。

② 2階を出す。 ①の等式 を、もう一度 で微分する。左辺は積の微分と合成関数の微分の両方を使う。

すなわち 。ここに①の を入れると

③ (2) 対応する点を先に見つける。 だから、 に対応するのは である( は増加関数だから、対応する はこれ1つ)。

より 。 より 。公式に入れて

xyO
増加関数 y=e^x(青、下に凸)とその逆関数 y=log x(赤、上に凸)は、直線 y=x(破線)について対称。折り返すと凸性が裏返る。公式 g''=-f''/(f')^3 の負号は、この裏返りを表している

まとめ: 逆関数は「式が書けなくても微分できる」。 を必要な回数だけ微分する、これが正攻法である。負号の意味は図で確かめられる。増加関数のグラフを直線 で折り返すと、下に凸は上に凸へ裏返る。 の符号が の逆になるのは、この裏返りの現れだ。

発展。 公式は既知の例で検算する習慣をつけたい。(下に凸)なら逆関数は (上に凸)である。公式に入れると

直接微分した と一致する。公式を「覚える」のではなく、こうして手元の例で検算すれば、符号やべき指数の記憶違いはその場で直せる。さらに3階まで同じ手順を続けると の公式も出る。 という1本の恒等式が、いくらでも情報を引き出せる。

答

(1) の両辺を2回微分する(証明) (2) に対応するのは 。、 より 、

別解

を の関数と見て、微分の乗り換えで導く(高い視点)。 ライプニッツ流の記号で書くと、公式の構造が別の形で見える。出発点は である。これを、さらに で微分したい。だが右辺は の式だ。そこで「微分の乗り換え」

を使う。すると

記号は違うが中身は本解と同じである。この書き方だと、逆関数の微分が媒介変数表示の微分とまったく同じ形をしていることが分かる。実際、 のグラフは 自身を媒介変数とする表示 にほかならない。「逆関数」も「媒介変数」も への乗り換えという1つの操作の別の形だ。

検算しておく。 なら で、 を入れて 。本解と一致する。

ポイント

  • を微分すれば の式を知らずに が出る。
  • もう一度微分すると と が現れる。 を代入して解く。
  • 代入するのは「 に対応する 」での値。 に注意。

よくある間違い

  • と書いてしまう。1階の「逆数」の形をそのまま2階に持ち込む誤りである。 を2回微分すれば、そんな形にならないことはすぐ分かる。
  • (2)で に対応する を求めずに 、 を代入する。公式の右辺に入れるのは での値である。
  • を式変形で解こうとして迷い込む。左辺は増加関数だから解はたかだか1つ。 を入れて になることを確かめれば、一意性まで込みで解決する。

問7x^(n-1) log x の第 n 次導関数

最難関編高階導関数数学的帰納法対数関数

問題

を自然数とし、 で

とおく。

(1) 、、 をそれぞれ計算せよ。

(2) すべての自然数 に対して

であることを示せ。

ヒントを見る

を1回だけ微分してみよ。何が現れるか。 の添字に注目。

出てきたおまけの多項式はあと何回微分すれば消えるか。それが 回でよいなら、話は閉じる。

解答・解説

方針

回微分を書き下すのは無理。まず1回だけ微分すると、同じ形の と多項式 が出る。多項式は残りの 回の微分で消える。この構造に気づけば帰納法にのる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「 回微分せよ」と言われて 回書き下すのは無理だ。だが1回だけ微分してみると、様子が変わる。

1回微分すると、同じ形で添字が1つ下がった が現れた。おまけに付いてきた は 次の多項式だから、あと 回微分すれば完全に消える。

つまり「微分すると1つ次数の低い同じ形の式になる」という構造だ。ここまで見えれば、残りの 回の微分を両辺に浴びせて帰納法にのせるだけである。

公式積の微分 、。 次多項式は 回微分すると になる

① (1) 具体的に計算する。 だから 。

だから 、もう一度微分して 。 だから 、、さらに微分して 。3つとも の形である。これが(2)の予想になる。

② (2) 微分すると弟になる。 のとき、積の微分より

③ 両辺を 回微分する。 左辺は になる。右辺の第2項 は 次の多項式だから、 回微分すると である(ここが要)。よって

④ 帰納法で締める。 のとき で成立する。

で が成り立つと仮定すると、③より

となり、 でも成立する。よってすべての自然数 で 。

まとめ: 高階微分では「1回微分して構造を見る」。同じ形が添字を下げて再登場するなら、それは漸化式であり、帰納法の合図である。おまけの多項式は「あと何回で消えるか」だけ確かめればよい。

発展。 階でぴたりと階乗が現れるのは、 という多項式部分が 階でちょうど消え尽くすからだ。もう1回微分すれば で、以降はただの の微分にすぎない。「 乗を 回微分するとちょうど何かが消える(あるいは残る)」という構造は、 がルジャンドル多項式を生むなど、直交多項式の定義に繰り返し現れる。 階微分は、次数が より低い部分をすべて消すふるいのようにはたらく。

答

(1) 、、(順に ) (2) の両辺を 回微分すると多項式部分が消え、帰納法で従う

別解

ライプニッツの公式で正面から展開する(得意な人向け)。 積 に、いきなり 階のライプニッツの公式を当てる道もある。必要な部品は2つ。(、 では )と、()である。後者は を繰り返し微分すれば出る。

の項は だから消える。残る の項では なので

ここで のべきは で、 によらず一定になる。しかも (同じ数だ)。したがって

残った和は二項定理で片づく。 だから、 の項()を移項して

よって 。帰納法を使わず、二項係数の交代和が になることですぐに決まる。 という一言で決まっている。

ポイント

  • 1回微分すると 。弟が現れる。
  • は 回の微分で消える。ここが要点。
  • から帰納法で 。

よくある間違い

  • (1)の3つの結果から だろうと予想して終える。予想は出発点にすぎない。帰納法(あるいは別解の展開)で証明しないと解答にならない。
  • の を「小さいから無視」と扱う。無視してよい理由は「 次の多項式を 回微分すると 」という一点で、これは必ず書く。
  • の微分に の条件を忘れる、あるいは と混同する。本問は の範囲の話である。

問8すべての階の微分係数が 0 になる関数

最難関編高階導関数指数関数の増大微分の定義

問題

関数 を次で定める。

以下、( は自然数)は用いてよい。

(1) 任意の自然数 に対して を示せ。

(2) において、 は多項式 を用いて と書けることを示せ。

(3) は何回でも微分可能で、すべての自然数 に対して であることを示せ。

ヒントを見る

(1) をひとかたまりの文字に置き換えてみよ。何と何の競争になるか。(2) とおくと、 での微分は での微分に何倍かで乗り換えられる。その倍率は何か。

解答・解説

方針

は で「指数的に小さい」。この小ささが の大きさを呑み込む、というのが(1)であり、この問題のエンジン。(2)で導関数の形を押さえ、(3)では差の商が(1)の形になることを見る。左側は常に なので、左右をそろえて示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) では は完全に である。 では で、これは原点の近くで非常に小さい。 なら 、 なら となり、非常に小さい。

この「指数的な小ささ」がどんな の大きさをも呑み込む。それが(1)の主張であり、この問題のエンジンである。(2)では の形を押さえる。微分するたびに が湧いてくるが、 と見れば「多項式 」という形は崩れない。

すると(3)では、差の商が「多項式 」の形になり、(1)からそれは に収束する。左からは常に 。こうして、すべての階の微分係数が になる。

重要指数関数は多項式より速く増大する:

① (1) 変数を取り替える。 とおくと、 は にあたる。

多項式 と指数 の競争で、指数が必ず勝つ。よって極限は 。

② (2) 微分の乗り換え。 とおくと だから、 での微分は

と乗り換えられる。 のときは で、 とすれば主張が成り立つ。 と書けたとする。両辺を で微分すると

そこで とおけば、これも多項式である。帰納法より、すべての で ()。実際、、、 のように、次数は2つずつ上がっていく。

③ (3) 原点での微分係数を追う。 「 が存在して に等しい」を についての帰納法で示す。

: で 、 で だから は原点で連続で 。 が言えたとして、 を差の商で調べる。

のとき: (左側では もそのすべての導関数も )だから、この商は 。左極限は 。 のとき: ②より 。 とおくと

もまた多項式である。その各項は の形で、(1)よりすべて に収束する。よって右極限も 。

左右の極限が一致して 。したがって は存在して である。帰納法より、すべての で 。

xyO
y=f(x)。原点の左では完全に 0、右でも x が小さいうちは x 軸にぴたりと貼りつく(x=0.1 で e^(-10) は約 0.000045)。原点ではすべての階の微分係数が 0 になる。それでも x>0 では f>0 である

まとめ: 原点において、 の値も、すべての階の微分係数も である。それなのに では だ。つまり、「原点でのふるまいを微分でいくら調べても、この関数の形までは決まらない」のである。

発展。 原点でのすべての微分係数が なのだから、微分係数の情報だけから を復元しようとすれば「 は恒等的に 」という誤った結論に至る。実際には で である。つまり、微分係数の列は関数を決めない。これはテイラー展開が元の関数に戻る保証はない、という解析学の有名な警告である。

一方でこの性質は道具にもなる。 を考えると、 でも でも 、 では正で、しかも何回でも微分できる関数になる。「区間の外では完全に 、内側では正、境目もなめらか」というこの部品(なめらかなスイッチ)は、現代の解析学で欠かせない道具である。特殊に見えた関数が、実は基本的な部品だった。

答

(1) とおけば (2) ()で帰納法 (3) 左からの差の商は常に 、右からは(1)より 。よってすべての で

別解

どれくらい小さいのかを数で実感する(苦手な人向け)。 (1)の主張は式で見ると当たり前に見えるかもしれない。数で確かめると、どれほど小さいかが分かる。

のとき 。 なら である。一方 はどうか。、 でも にすぎない。掛け合わせると 。まだ に向かって落ちていく途中だ。 をいくつにしても、 を小さくすれば必ず小さくなる。

なぜ必ず勝てるのか。 とおけば、比べているのは「(多項式)」と「(指数)」である。 を 増やすたびに は 倍(約 倍)になる。 のほうは 倍にしかならず、 が大きいとこの倍率は に近づく。増え方のエンジンの大きさが違うのだ。だから が十分大きくなれば、指数が必ず追い越す。

この一点が腹に落ちれば、(3)の証明は「差の商が(多項式) の形になる」ことを言うだけの作業になる。難しく見える論証も、もとはこの単純な大小関係ひとつである。

ポイント

  • で「指数 対 多項式 」の競争に言い換える。
  • で、 の漸化式が出る。
  • 原点では左右両方の差の商を調べる。左は常に 。

よくある間違い

  • 側を忘れて だけで議論する。 が存在するというためには、左右両方の差の商が同じ値に収束しなければならない。左は常に 、右は(1)で と、この2本立てが要る。
  • (2)で の負号や を落とす。 の は、微分のたびに次数が2つ上がることを意味している。
  • 「すべての階の微分係数が なのだから は恒等的に 」と結論する。 で だから明らかに誤りである。この思い込みを壊すために、この関数は作られている。