数学III / 微分法の計算

微分法の計算 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 積の微分
  2. 商の微分
  3. 合成関数の微分
  4. 三角関数の微分(sin)
  5. 三角関数の微分(cos)
  6. 指数関数の微分
  7. 対数関数の微分
  8. 三角関数の微分(tan)
  9. 合成関数の微分(指数)
  10. 合成関数の微分(対数)
  11. 累乗の微分(分数・根号)
  12. 合成関数の微分(3乗)

問1積の微分

★ 基礎積の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

積の形の微分には専用の規則がある。展開してから項別に微分しても答えは同じだ。両方やって一致を確かめると、規則の練習になる。

解答・解説

方針

積の微分公式 を使う。、 として、それぞれの導関数を組み合わせる。(展開してから微分しても同じ。)

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) つの式の掛け算だ。どう微分するか、道は つある。

  • 展開してから、 項ずつ微分する
  • 積の微分公式を使う

この問題は展開できるので、どちらでも解ける。それでも、あえて公式で解く。

なぜか。 これから出てくる積は展開できないものばかりだからだ。

こうした積は、展開しようがない。 積の微分公式が使えなければ、手も足も出ない。

「どちらが で、どちらが か」を決めて、機械的に当てはめる。

展開できる問題で公式に慣れておくことが、この問題のねらいである。

公式積の微分

、 とする。、。

展開して整理する。

まとめ:積の微分は「片方を微分 × もう片方 + そのまま × もう片方を微分」。 項の和になる。多項式なら展開して微分しても同じ結果になるので、検算に使える。

発展。 積の微分を何回も繰り返すとどうなるか。

を計算してみよう。

もう 回微分する。 各項に、また積の微分を使う。

係数が になった。

回微分すると?

係数は 。

この数の並びに、見覚えがあるはずだ。パスカルの三角形に並ぶ、二項係数である。

まったく同じ係数が現れる。一般に、こう書ける。

ライプニッツの公式という。二項定理 と、瓜二つだ。なぜ、こんな一致が起こるのか。

微分を 回するたびに、「 を微分するか、 を微分するか」の 択が生じる。 回微分すれば、 通りの選び方がある。そのうち「 を 回、 を 回」微分するものが 通り。

これは「 個の から、 を 個、 を 個選ぶ」のと、まったく同じ数え上げである。

微分と、展開。 まるで無関係に見える つの操作が、同じ組み合わせの構造をもっている。この公式は実用的でもある。

を 回微分せよ、と言われたら。

素直にやると、地獄だ。 だが、ライプニッツの公式なら

は 回微分すると になるので、 項で終わる。

回の微分が 行で片づいた。

「組み合わせの構造」を見抜くと、計算が消える。 数学のあちこちで、同じことが起きる。

答

別解

展開してから微分する。そして、公式の「意味」を考える。まず、素直に展開しよう。

あとは、 項ずつ微分するだけ。

公式を使った答えと、一致する

この方法の価値は検算にある。

積の微分公式は符号や項を間違えやすい。 展開できる問題なら、展開ルートで検算できる。

では、なぜ という形なのか。面積で考えると、腑に落ちる。

縦 、横 の長方形を想像しよう。 面積は である。時間が少し( だけ)進むと、縦も横も少し伸びる。

  • 縦が 伸びる → 面積が 増える(下に横長の帯が追加)
  • 横が 伸びる → 面積が 増える(右に縦長の帯が追加)
  • 角の小さな長方形 も増えるが、これは極めて小さい( つの微小量の積)

だから、面積の増加は

両辺を で割って、 とすると

公式の 項は「縦が伸びた分」と「横が伸びた分」である。

角の小さな長方形が無視できるのは、 が「小さい 小さい」= 極めて小さいから。 極限をとると、完全に消える。この見方から、 ではない理由も分かる。

縦だけ伸ばしても、横だけ伸ばしても、面積は増える。 両方の寄与を足さなければならない。「 つの変化が、それぞれ独立に影響する」というのが、積の微分の考え方である。

つの積なら?

「 つずつ微分して、残りはそのまま」を、 通り足す。 直方体の つの面が伸びる、と思えばよい。

ポイント

  • 。
  • 「微分 × そのまま」を 通り足す。

よくある間違い

  • としてしまう(それぞれを微分して掛ける)。積の微分は 項の和になる
  • の 項目で、 をうっかり にしてしまう。各項で微分するのは片方だけ
  • 展開ルートで検算するとき、展開そのものを間違える。 の展開は 項すべてを丁寧に出す

問2商の微分

★ 基礎商の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

商の形の微分規則を使う。分子の並び順(どちらを先に微分するか)と符号を間違えやすいので、規則を書き出してから当てはめよう。

解答・解説

方針

商の微分公式 を使う。、 を代入する。分子の引き算の順番に注意。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分数の形をした関数だ。商の微分公式を使う。

この公式には、間違えやすい点が つある。

① 分子は引き算。 しかも順番が命だ。

逆にすると、符号が丸ごと反対になる。

② 分母は 。 ではない。

覚え方のコツ。

「分子を微分 分母 分子 分母を微分、全部を分母の 乗で割る」呪文のように唱えて、順序を体に入れてしまうのが早い。あとは 、 と仕分けて、機械的に当てはめるだけである。

公式商の微分

、。、。

分子を整理する。

まとめ:商の微分は分子が「」(引き算の順番が大事)、分母が「」。分子の順番を逆にすると符号が変わるので、 が先、と覚える。

発展。 微分の公式はたくさんあるように見える。だが、本当に必要なのは つだけだ。

基本の 公式。

和・定数倍。

積。

合成(連鎖律)。

この つから、他はすべて導ける。

商の微分は? と書いて、積と合成から出る。

の微分は? の商だから、これも積と合成から出る。

逆関数の微分は? の両辺を、合成の規則で微分すれば出る。

対数微分法は? を、合成の規則で微分するだけ。「公式が多い」のではなく、「 つの原理の応用例が多い」のだ。

この視点をもつと、覚えることが大きく減る。そして、なぜ つなのか。関数の作り方が 通りしかないからだ。

  • 足す・定数倍する → 和・定数倍の規則
  • 掛ける → 積の規則
  • 入れ子にする → 合成の規則(連鎖律)

どんなに複雑な関数もこの つの操作を組み合わせて作られている。たとえば

この怪物も分解すればこうだ。

  • :合成( と )
  • :積
  • :合成
  • 全体:商( 積 逆数、つまり積と合成)

つの原理を、正しい順番で適用していけば、必ず微分できる。「微分は、どんな関数でも機械的に計算できる」

これが微分の大きな強みだ。 積分がしばしば「解けない」( の積分は初等関数で書けない)のとは、対照的である。微分は有限の手順で必ず終わる。積分は終わらないことがある。

この非対称性は微積分の大きな特徴である。

答

別解

商の微分公式を使わずに解く。式を変形すればいい。分数を割り算で整理する。

確かめる。 なら、左辺 、右辺

この形なら、商の微分は要らない。 は定数だから、微分すると 。

残りの を微分する。 これは合成関数だ。

べきの微分()を使う。 内側 の微分は 。

本解と同じ答え

この方法の つの利点。

利点 : 公式を つ減らせる。そもそも、商の微分公式は覚えなくてもよい。

と書けば、積の微分 合成関数の微分で導ける。

商の公式は積と合成から自動的に出てくる。 独立した公式ではないのだ。「公式を減らして、原理を増やす」と、覚える量が減り、応用は広がる。

利点 : グラフが見える。

これは双曲線だ。 漸近線は と 。しかも、導関数

は、 のすべてで正。この関数はどこでも増加している。

を境に、左の枝も右の枝も、それぞれ右上がりになる。双曲線の 本の枝が、どちらも増加していることが分かる。「割り算で整理する」というひと手間が、微分を楽にし、グラフまで見せてくれる。

ポイント

  • 。
  • 分子は が先(順番に注意)。

よくある間違い

  • 分子の引き算の順を逆にして としてしまう。答えの符号が丸ごと反対になる
  • 分母を のままにする( にし忘れる)。商の微分の分母は必ず 乗
  • 分子の展開で となるところを、 の計算を焦って符号を落とす

問3合成関数の微分

★ 基礎合成関数の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

乗の外側と、 の内側からなる、 段構えの合成関数だ。外側を微分したあと、内側の微分を掛け忘れないこと。

解答・解説

方針

合成関数の微分(連鎖律)。「外側の微分 × 内側の微分」。外側は を微分して 、内側 の微分は 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、入れ子構造をしている。

外側と内側に分けて見る。

  • 外側: (かたまりを 乗する操作)
  • 内側: (かたまりの中身)

この 段構えの関数を、合成関数という。微分の仕方はこうだ。

外側: を で微分して 。 を戻して 。

内側: を で微分して 。

掛ける。

忘れがちなのが、この最後の「」だ。 内側の微分を掛け忘れると、答えが 分の になってしまう。

「外を微分して、中を微分して、掛ける。」 この連鎖律が、数学IIIの微分の中核である。

公式合成関数の微分(連鎖律)(外側の微分 × 内側の微分)

外側は 、内側は 。

① 外側を微分する。 を微分して 。中身はそのまま。

② 内側の微分をかける。 。

まとめ:合成関数は「外側を微分(中身そのまま)× 内側を微分」。かっこの中身を つのかたまりとみて外を微分し、最後に中身の微分をかける。連鎖律は数III微分の最重要ツールだ。

発展。 連鎖律は単なる計算規則ではなく、「変化が伝わる」ことの数学的な表現だ。

具体例で考えよう。

風船を膨らませている。 半径 が 秒に cm ずつ増えているとする。体積 は 秒に何 cm³ 増えるか。

体積の式は 。知りたいのは (時間あたりの体積の変化)だ。

連鎖律を使う。

半径が cm のとき

ここで、あることに気づく。

「体積の、半径についての変化率」は、「表面積」に等しい。

当たり前だ。 半径を少し増やすと、球の表面に薄い皮が 枚追加される。 その体積は「表面積 厚み」だからだ。

同じことが円でも起こる。

面積を微分すると、円周になる。

「 を増やすと、外周に沿って細い輪が つ追加される」 と考えればよい。その面積が「円周 幅」だからだ。連鎖律の応用例は、理科の全域に広がっている。

  • 物理: 位置 → 速度 → 加速度(時間で 回微分)
  • 化学: 反応速度が濃度の関数、濃度が時間の関数
  • 経済: 利益が価格の関数、価格が需要の関数
  • 機械学習: 誤差が重みの関数(誤差逆伝播法は、連鎖律を何万層も繰り返す計算だ)

AI の学習の計算でも、連鎖律が使われている。深層学習の「バックプロパゲーション」は、 を、何千万回も適用しているにすぎない。「変化は、鎖のように伝わる」という 行の原理が、現代のAIの学習に使われている。

答

別解

展開してから微分し、公式の正しさを自分の目で確かめる。「内側の微分を掛ける」が本当に必要か、検算しよう。

まず展開する。

項ずつ微分する。

これが、公式の答えと一致するか。公式の答えは 。展開してみる。

ぴったり一致

もし「」を忘れて としていたら?

正しい答えのちょうど半分。 展開ルートと合わない。「内側の微分」が本当に必要だったことが、これで確かめられた。

なぜ「掛ける」のか。連鎖律の意味を考えよう。歯車を思い浮かべてほしい。

が 回転すると、 は 回転する(内側の変化率 )。

が 回転すると、 は 回転する(外側の変化率)。では、 が 回転したら、 は何回転するか。

段の歯車をつなぐと、変化率は掛け算になる。ライプニッツの記法で書くと、とても分かりやすい。

が約分されて消えるので、分数のように見える。

これは偶然ではない。 ライプニッツは、微分をこう書けば連鎖律が「約分」に見えることを、意図して設計した。

記号のうまさが理解を助ける。 「」という書き方は、 年たった今も使われている。ちなみに、この問題では展開できたが、 ならどうか。

展開は不可能。 だが連鎖律なら 行だ。

公式が特に役に立つのは、展開できない場面だ。

ポイント

  • 連鎖律:外側の微分 × 内側の微分。
  • 外側を微分するとき中身はそのまま。

よくある間違い

  • 内側の微分()を掛け忘れて とする。合成関数は必ず「外の微分 中の微分」
  • の を に置き換えて としてしまう。外側を微分したあとも、中身はそのまま残る
  • 展開ルートで検算するとき、 の展開の係数()を間違える。 のように、 ごと 乗する

問4三角関数の微分(sin)

★ 基礎三角関数の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

の微分に、中身()の微分を掛ける。合成関数の規則そのままだ。中身の微分の掛け忘れがよくあるミスだ。

解答・解説

方針

が基本。 は合成関数なので、 に内側 の微分 をかける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、 の中に が入った合成関数だ。

  • 外側:
  • 内側:

手順はいつもの連鎖律である。

外側の微分: だから 。

内側の微分: 。

掛ける。

ここでも、 を忘れないことが命だ。間違いに気づく方法がある。

は より 倍の速さで振動している。 波が急なぶん、傾きも大きくなるはずだ。だから、微分して振幅が 倍()になるのは、むしろ自然だ。

「速く振動する波は、傾きも大きい」という感覚をもっておくと、 を落としたときに違和感が働く。

公式。合成なら

とみる。、内側 。

まとめ: の微分は 。中身が のように 以外なら合成関数で、内側の微分 を忘れずにかける。 の中身が複雑なほど連鎖律が役に立つ。

発展。 の微分に現れる係数 は、物理では角速度と呼ばれる。

波の式を見てみよう。

  • : 振幅(波の高さ)
  • : 角速度(振動の速さ)
  • : 時間

この波の「速度」は、時間で微分して

速度の振幅は で、角速度 が掛かる。もう 回微分すると、加速度が出る。

次の関係が現れた。

「加速度は、位置に比例し、向きは逆」これは単振動の運動方程式そのものだ。バネにつないだおもりを思い浮かべよう。

フックの法則: バネの力は伸びに比例し、向きは逆()。

ニュートンの運動方程式: 。合わせると

これは、上で微分から出てきた と同じ形だ。

振動の速さ(角速度)がバネの硬さと重さから決まる。周期は

「重いおもりはゆっくり、硬いバネは速く振動する」ので、直感と合う。

なぜ なのか。

という方程式(「 回微分すると、自分自身の 倍」)を満たす関数は、 と しかない。振動する現象が、必ず 波になる理由が、ここにある。

  • 音波・光波・電波
  • 交流電流
  • 振り子・バネ・原子の熱振動

すべて に従い、すべて で書ける。 という計算の中の は、振動の速さ(角速度)を表しているのだ。

答

別解

倍角の公式で書き直し、積の微分で解く。まったく違う道から、同じ答えにたどり着けるかを確かめる別解である。

倍角の公式を思い出す。

この形なら、合成関数ではなく積の形だ。

積の微分公式を使う。 、 とする。

ここで、また 倍角の公式が使える。

本解と、完全に一致した

この一致は偶然ではない。

同じ関数を微分しているのだから、どんな道を通っても答えは同じになる。 数学の整合性そのものだ。そして、この計算には副産物がある。

途中で出てきた式

と、公式から得た

を比べると

倍角の公式が微分から「再発見」できた。微分は恒等式を検証する道具にもなる。「 つの関数が等しいなら、その導関数も等しい」という当たり前の事実を使うと、公式の検算ができる。

逆に言えば、導関数が違えば、もとの関数は違う。たとえば「」という間違った式を疑うには、微分してみればいい。

で、左辺は 、右辺は となり、一致しない。微分が違うのだから、もとの式も間違い。

公式に自信がないときは、微分してみる。 意外に役に立つ検算法である。

ポイント

  • 。
  • 中身が なら (連鎖律)。

よくある間違い

  • 内側の微分()を忘れて とする。合成関数では必ず中身の微分を掛ける
  • の を、 の中に入れて としてしまう。 は係数として前に出す
  • を と書き換えてしまう。 は 次関数ではないので、係数は外に出せない

問5三角関数の微分(cos)

★ 基礎三角関数の微分

問題

関数 を微分せよ。また も微分せよ。

ヒントを見る

の微分は符号に注意。 のほうは、さらに中身の微分も掛かる。

解答・解説

方針

(マイナスがつく)。 は合成なので、 に内側 の微分 をかける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の微分には、マイナスがつく。

の微分()には符号が変わらないのに、 は変わる。 ここが混乱のもとだ。

グラフで納得しておこう。

の近くで、 は から下がり始める。 つまり傾きは負である。そして 、 が少し増えると となり、確かに負だ。

は「山の頂上」から始まるので、最初は下り坂。だからマイナス。後半の はいつもの合成関数だ。

マイナスと、内側の微分。 つとも落とさないことである。

公式(マイナスがつく)。合成なら

① の微分。

② の微分。 、。

まとめ: の微分は (マイナスが出る)。 の微分()との符号のちがいを押さえる。中身が なら連鎖律で 。

発展。 と が微分で 周期の循環をなすこと。この構造は意外な場所で再会する。

虚数単位 の累乗を見てほしい。

回掛けると、元に戻る。微分の循環と、まったく同じ周期だ。

「微分する」ことと「 を掛ける」ことが、同じ構造をもっている。

これは偶然ではない。

オイラーの公式がその理由を明かす。

両辺を で微分してみよう。

左辺: (合成関数。内側 の微分が )

右辺:

右辺を でくくり直す。

( だから)

両辺が一致した。

「微分する」ことがそのまま「 を掛ける」ことになっている。

三角関数の微分の循環は複素数平面での 回転である。

を掛けることは、複素数平面で 回転させること( の回転)。

微分すると位相が 進む。この つは、同じことを言っている。オイラーの公式に を代入すると

オイラーの等式と呼ばれる有名な式だ。 、、、、 という数学の つの基本定数が、 行に収まっている。その根っこには「 を微分すると 」という、この問題の 行がある。

符号のマイナス つが、 の回転やオイラーの等式につながっている。

答

、

別解

を で表して、公式を つに減らす。三角関数には、こんな関係がある。

確かめよう。 なら、左辺 、右辺

なら、左辺 、右辺

この式を使えば、 の微分公式を覚えなくても済む。 の微分公式と、連鎖律だけで計算する。

外側: の微分は 。

内側: の微分は 。

ここで、 を使う。

本解と同じ

マイナスがつく理由が分かった。内側 の微分が だからである。 のマイナスは「 の中で が逆向きに動いている」ことの現れだった。

このアイデアはもっと広く使える。 と は ずらしただけの、同じ波である。

この式でも、微分してみよう。

( だから。)

同じ答え。

そして、この見方から次の法則が分かる。「微分すると、位相が 進む」

回微分すると、元に戻る。

波を微分するとは波を だけずらすこと。 回ずらせば で、 周して元に戻る。「 の微分はマイナス 」を丸暗記する代わりに、この円環を思い浮かべればいい。

符号を間違えたら、 つの循環を書いて確かめる。 暗記より、構造で覚えるほうが強い。

ポイント

  • (マイナス)。
  • は 、 は 。符号に注意。

よくある間違い

  • と、マイナスを落とす。 の微分には必ず負号がつく
  • で、マイナスは書けても内側の微分 を掛け忘れる。符号と係数の両方が要る
  • と、 のほうにマイナスをつけてしまう。負号がつくのは の微分だけ

問6指数関数の微分

★ 基礎指数関数の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

の累乗の微分は形が変わらないのが持ち味。ただし中身が なので、その微分を掛ける。

解答・解説

方針

(微分しても変わらない)。 は合成なので、 に内側 の微分 をかける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) には、他のどんな関数にもない特別な性質がある。

微分しても、自分自身。

これは特別な性質だ。 を微分すれば になり、 は になる。形が変わる。

だが だけは、微分しても のまま。 姿が変わらない。 という数()は、この性質をもつように選ばれた底である。

さて、 は合成関数だ。

  • 外側:
  • 内側:

外側は変わらず、内側の微分 が前に出る。「 は不変、合成なら中身の微分を掛ける」の 点で、指数の微分はすべて処理できる。

公式(微分しても自分自身)。合成なら

、。

まとめ: は微分しても のまま(この性質が指数関数の特別なところ)。中身が なら連鎖律で 。 はそのまま残り、中身の微分が前に出る。

発展。 「微分しても変わらない関数」は、 のほかにあるだろうか。

方程式で書くと、こうだ。

「変化率が、自分自身に等しい」この方程式を満たす関数を、すべて求めてみよう。

左辺は だ。 両辺を積分すると

答えは で、 の定数倍だけだ。

を満たす関数は、定数倍を除けば しかない。そして、この方程式は自然界のいたるところに現れる。 の意味は「増える速さが、今の量に比例する」。

  • 細菌の増殖: 菌が多いほど、分裂して増える数も多い
  • 複利: 元本が多いほど、利息も多い
  • 放射性崩壊: 原子が多いほど、崩壊する数も多い(こちらは で減少)
  • ムーアの法則: 技術が進むほど、次の進歩も速い

すべて の形で、解は 。「指数関数的」という言葉が、これほど使われる理由がここにある。「自分自身に比例して変化する」システムは、必ず指数関数になる。

の符号で結果が分かれる。

  • → 急増(細菌・複利・パンデミック)
  • → 消滅(放射性崩壊・薬の代謝・冷却)

という数はこの方程式のために存在する。もし底が なら

余計な係数 がつく。

底が なら が。

底が のときだけ、係数が になる。

は「微分の係数が になる、ただ つの底」である。

この つの性質のために、微積分では を標準の底として使う。 自然対数の「自然」とはこの意味である。

答

別解

を「 の 乗」と見て、積の微分で解く。

指数法則を思い出そう。

合成関数ではなく、 つの の積だと見るのだ。

積の微分公式を使う。 とする。

本解と同じ答え

連鎖律を使わずに、積の微分だけで解けた。

この計算が示すこと。

の は、「 が 個ある」ことから来ている。

片方を微分するときに、もう片方はそのまま残る。 通りの微分の仕方があるから、 倍になる。この見方を に広げてみよう。

つの積の微分は

すべて だから、 項とも になる。

連鎖律の答えと一致する

「 個の積だから、 通りの微分がある。だから 倍」係数 の意味が、はっきり見えた。もう つ、対数微分法という道もある。

両辺の対数をとる。

両辺を で微分する。 左辺は合成関数( の が の関数)だから

つ目の道でも、同じ答え

対数微分法は のような「手も足も出ない」関数で役に立つ。

指数の肩に がある関数は、普通の公式では微分できない。 対数をとって、掛け算を足し算に変えるのだ。

つの関数に、 つの道。 どれも同じ答えに着く。数学の一貫性を自分の手で確かめられる。

ポイント

  • (不変)。
  • 。中身の微分を前に。

よくある間違い

  • 内側の微分()を忘れて とする。 の微分が なのは、肩がちょうど のときだけ
  • のように、内側そのもの()を掛けてしまう。掛けるのは内側の「微分」()
  • を の肩を下ろして とする(べき関数と混同)。 の微分と の微分は別物

問7対数関数の微分

★ 基礎対数関数の微分

問題

関数 を微分せよ。( は自然対数)

ヒントを見る

自然対数の微分の基本公式そのもの。即答できるようにしたい 問。

解答・解説

方針

自然対数の微分は 。これは基本公式として覚える。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (自然対数)の微分は、覚えるべき基本公式だ。

この式の「意外さ」を、確かめておこう。対数という、いかにも複雑な関数を微分したら、 という素朴な分数が出てきた。まったく種類の違う関数が、微分でつながっている。

グラフでも確かめられる。

  • のとき、傾きは ( は で の傾き)
  • が大きくなると、傾きは に近づく( の増え方はどんどん緩やかになる)
  • が に近づくと、傾きは無限大( 軸に沿って急降下する)

「対数はゆっくり増える」という感覚が、 という導関数にそのまま表れている。まずは公式として使い、そのうえで「なぜ なのか」を考えてみよう。

公式(自然対数の微分)

まとめ:自然対数 (底 )の微分は 。とてもシンプルな結果。 の積分が になる(逆の関係)ことにもつながる、重要な公式だ。

発展。 という式には、大事な意味がある。

逆から読んでみよう。

「 の原始関数は 」

この事実がなぜ重要か。べきの積分公式を思い出そう。

この公式は のときだけ使えない。 分母が になってしまう。

例外は の つだけだ。この穴を埋めるために、対数が要る。

「 の積分は、いつも の累乗。ただし のときだけ、対数という異質な関数が現れる。」この例外を埋めるのが、対数という関数である。

実は、歴史的には順序が逆だった。 世紀、数学者たちは「双曲線 の下の面積」を計算しようとしていた。

この面積が特別な性質をもつことに気づいた。

「掛け算が、足し算になる」これは、対数の性質そのものだ。

つまり、この面積そのものが対数だった。

そして、この関数の逆関数として現れる数が である。

「 から までの双曲線の下の面積が、ちょうど 」これが の、もう つの定義だ。 という値は、この面積が になる点として決まっている。

なぜ が「自然」なのか。

  • 微分の視点: 微分しても変わらない関数の底
  • 積分の視点: の面積が になる点
  • 極限の視点: の行き着く先
  • 級数の視点:

まったく違う つの道が、同じ に集まる。そういう数だけが「自然」と呼ばれる資格をもつ。

答

別解

なぜ になるのか。逆関数の関係から導く。 の微分公式を、 の微分から作り出す別解である。

出発点は、 と が互いに逆関数だという事実だ。

この つは、同じ関係を、違う向きから書いたものにすぎない。そこで、 のほうを、 で微分する。

ここで、 だった(上の関係式)。

知りたいのは である。

逆関数の微分は逆数になる。

導けた

なぜ「逆数」でよいのか。

グラフで見ると明快だ。 逆関数のグラフは に関して折り返した形になる。折り返すと、傾きは逆数になる。

もとのグラフで「右に 、上に 」なら、折り返したグラフでは「右に 、上に 」 となり、傾きは から に変わる。

ライプニッツの記法だと、これは「分数の逆数」に見える。 記号の便利さがここでも生かされている。

具体的な数で確かめよう。

での傾きは?

公式では 。

逆関数で見ると: 。 の での傾きは 。その逆数は

一致した。

この導出の教訓。

は、天下り式の公式ではなく、 という つの事実から、逆関数の関係だけで自動的に出てくる。

覚える公式は つでいい。 の微分さえ知っていれば、 の微分はその「裏返し」として、いつでも復元できる。

同じ技法で、 や の微分も導ける。 「逆関数の微分は逆数」という 行から、多くの公式が導ける。

ポイント

  • 。
  • の積分が (逆の関係)。

よくある間違い

  • の何か、と考えて としてしまう。導関数は で、対数は消える
  • 底が でない対数( など)にも、そのまま を使う。正しくは で、底の対数で割る
  • 定義域を忘れる。 は でしか定義されないので、導関数 も の話

問8三角関数の微分(tan)

★ 基礎三角関数の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

の微分公式を思い出そう。うろ覚えなら、 とみて商の規則から自力で導ける。導出も良い練習になる。

解答・解説

方針

。 を商の微分で計算しても導ける公式。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の微分は、公式として与えられる。

だが、これは丸暗記する必要がない公式だ。

の定義を思い出そう。

分数の形をしている。 ならば、商の微分公式が使える。

、 と当てはめれば、 の微分公式が自分の手で作れる。公式は 通りの形で書ける。

どれも同じもの。 場面によって使いやすい形が違う。

まずは公式を使い、そのうえで導出を追ってみよう。 由来を知ると、忘れない。

公式

(確認: を商の微分すると 。)

まとめ: の微分は 。 を使うと、 の商の微分からきれいに出る。 でもある。

発展。 の微分から、(逆正接)の微分が出る。そして、そこから が出てくる。

逆関数の微分を使おう。

を で微分すると

逆数をとって

とても簡単な式だ。 三角関数の逆関数を微分したら、 も もない、ただの有理式になった。この式を逆から読む。

そして、 から まで積分すると

が現れた。

なぜこれが重要か。

左辺は代数的な関数( と しかない)の積分だ。 そこに が出てくる。この式が を計算する道を開く。

を、等比級数として展開してみよう()。

( 項ずつ確かめると、公比 の無限等比級数だ。)両辺を から まで積分する。

ライプニッツの公式。

奇数の逆数を、符号を交互に変えて足すと、 になる。円周率が奇数の足し算から出てくる。円とも三角形とも無関係な式から、 が生まれる。

この式は 年にライプニッツが発見した。(実はインドのマーダヴァが 年前に発見していた。)

ただし、収束はとても遅い。 を小数点以下 桁求めるだけで、数百項が要る。実用にはならない。

それでも、この式の価値は計算にはない。「代数と幾何が、微積分を通してつながっている」ことを、はっきり示しているからだ。 の微分という、教科書の 行から、 の無限級数まで、道は 本につながっている。

答

別解

商の微分公式で、 の微分公式を自分で作る。 に、商の微分を当てはめる。

公式に入れる。

分子を整理する。 マイナス マイナスで、プラスになる。

ここで、三角関数の最重要公式が使える。

公式が導けた

分子が になる瞬間が、この導出のクライマックスだ。さて、分子を別の形で整理してみよう。

分子・分母を で割る。

つの表現が手に入った。

どちらを使うか。

の形が便利なのは、「 の値だけで導関数が書ける」ときだ。たとえば、 となる点での傾きは?

の値を知らなくても、 と即答できる。この形は微分方程式でも活躍する。

「変化率が、 に自分の 乗を足したもの」という方程式。 解は である。もう つ、大事な観察。

導関数は常に正( だから)。

だから は定義されているどの区間でも、必ず増加している。

グラフを思い出そう。 は から まで、 から へ一直線に駆け上がる。下がる場面が 度もない。

「導関数が常に正 単調増加」 のように、微分の値からグラフの形が分かる。

この単調性があるので、 には逆関数()が存在する。 対 だからだ。

ポイント

  • 。
  • 商の微分 + から導ける。

よくある間違い

  • と、分母を にしてしまう。分母は
  • 商の微分で導くとき、分子の の符号処理を誤り、 としてしまう。マイナス マイナスはプラス
  • の定義域を忘れる。( など)では 自体が定義されない

問9合成関数の微分(指数)

★ 基礎合成関数の微分指数関数の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

外側は の累乗、内側は 。合成の規則で、内側の微分を忘れずに。

解答・解説

方針

合成関数。外側 の微分は 、内側 の微分は 。かけ合わせる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の肩に乗っているのは、 ではなく という式だ。

だから、これは合成関数である。

  • 外側:
  • 内側:

連鎖律を当てはめる。

外側の微分: (指数関数は微分しても変わらない)

内側の微分:

掛ける。

書く順番の慣習として、係数を前に出して とする。間違えやすいのは を と混同することだ。

  • の内側は 、微分は
  • の内側は 、微分は

肩に何が乗っているかを、まず正確に読む。 そこからすべてが決まる。

公式(連鎖律)

、。

まとめ: の微分は「 そのまま × 中身の微分」。中身が なら 。指数はそのまま残り、中身の微分 が前に出る。

発展。 の親戚に、統計学でもっとも有名な関数がいる。

符号がマイナスになっただけだ。

この関数のグラフは を頂点とする、左右対称の釣鐘型。 正規分布の曲線である。

微分してみよう。

で となり、ここが頂点だ。

で なので、右下がりになる。

で なので、そこでは右上がり(増加)になる。確かに、 を頂点とする山になっている。微分は簡単だった。 すぐに終わる。

では、積分は?

これが、できない。「まだ誰も見つけていない」のではない。「初等関数では書けないことが、証明されている」のだ。、、、、 をどう組み合わせても、 の原始関数は作れない。

微分は 秒。積分は永遠に不可能。この非対称性は微積分の大事な性質を表している。

微分は「機械的な作業」だ。 どんな関数も つの公式(和・積・合成)を組み合わせれば、必ず微分できる。アルゴリズムがある。

積分は「発見」である。 うまい変形を見つけられるかどうかで決まり、そもそも答えが存在しないことすらある。

では、統計学者はどうやって正規分布の確率を計算しているのか。

数値積分だ。 コンピュータで面積を細かく足し上げる。そして、その結果を表にした。

正規分布表が存在する理由が、これである。 公式で計算できないから、あらかじめ計算した値を並べておくしかない。ただし、例外がある。

から までの全積分だけは、きれいに求まる。

途中は計算できないのに、全体は 。

次元にして極座標に変換すると、突然計算できるようになる( 次元では不可能、 次元では可能)。数学はときに「遠回りをすると近道になる」。 という、微分がすぐに終わる関数でも、積分を考えるとこうした話につながる。

答

別解

対数をとってから微分する方法を、対数微分法という。この方法は、指数の肩が複雑なときに特に役に立つ。まず、両辺の自然対数をとる。

指数が肩から降りてきた。 対数をとると、こうなる。

両辺を で微分する。

左辺は合成関数である。 は の関数だから

右辺は簡単。

等式にする。

について解く。

本解と同じ答え

この方法の何が便利なのか。「肩に乗った式を、地上に降ろせる」ことだ。

を微分してみよう。

これは、べき関数()でも指数関数()でもない。 底も肩も で、どの公式も当てはまらない。

だが、対数微分法なら解ける。

右辺を積の微分で微分する。

どの公式でも歯が立たなかった関数が、あっさり微分できた。対数微分法が役立つ場面は、 つある。

① 指数の肩に式がある(、、)

② 積・商が入り組んでいる

このまま商と積の微分をやると、地獄だ。 対数をとれば

掛け算と割り算が、足し算と引き算になった。 微分は 行で終わる。

③ 累乗の指数が変数

対数のもつ「掛け算を足し算にする」性質が、微分をずっと簡単にする。 はただの関数ではなく、計算の形を変える道具だ。

ポイント

  • 。
  • 指数はそのまま、中身の微分を前に。

よくある間違い

  • と を混同し、内側の微分を としてしまう。肩が なら、その微分は
  • の微分で、 の肩まで微分して としてしまう。外側( の部分)は微分しても変わらない
  • のように、べき関数の公式を使う。 と はまったく別の関数

問10合成関数の微分(対数)

★ 基礎合成関数の微分対数関数の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

対数の微分は『中身の微分 ÷ 中身』の形になる。中身が 次式なので分子は定数。

解答・解説

方針

。、。分子が内側の微分、分母が中身そのもの。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、 の中に が入った合成関数だ。

連鎖律を当てはめる。

外側: だから 。

内側: 。

掛ける。

この形を公式として覚えておくと速い。

「中身の微分 中身」

分子に内側の微分、分母に中身そのもの。 きれいな形だ。この公式は、応用範囲が広い。

「中身の微分を、中身で割る」だけで、どんな対数も微分できる。

公式(中身の微分 ÷ 中身)

、。

まとめ: の微分は 。 の が に一般化された形だ。分子に内側の微分がくる。

発展。 という式には、経済学でおなじみの意味がある。

この を、対数微分または成長率という。

なぜ「成長率」なのか。

「今の量に対して、何割増えているか」、つまり変化率をパーセントで測ったものだ。

具体例で見よう。

売上が 万円のとき、 年で 万円増えた。 成長率は

売上が 万円のとき、 万円増えた。 成長率は

同じ「 万円増」でも、意味がまるで違う。規模が違うものを比べるには、絶対量()ではなく、相対量()を見なければならない。この相対量が「 の微分」である。

「対数をとって微分すると、成長率が出る」だから、経済のグラフは対数目盛りで描かれることが多い。株価のチャートを、対数目盛りで見ると。

  • 直線に見える → 一定の成長率(毎年 ずつ)
  • 傾きが急 → 成長率が高い

通常目盛りだと、価格が高くなるほどグラフが急に見えて、成長率の比較ができない。

対数目盛りなら、「 円 → 円」と「 円 → 円」が、同じ高さの上昇として描かれる。 どちらも 倍だからだ。さらに、対数微分は積を分解する。

両辺を微分すると

「積の成長率は、成長率の和」売上 客数 単価 なら

客数が 増、単価が 増なら、売上は約 増。掛け算の関係が足し算で扱えるようになる。これがビジネスの現場で「対数」が使われる理由だ。

という 行の公式が、成長率という概念の数学的な定義になっている。

答

別解

置き換えを明示して、連鎖律を「分数の約分」として見る。内側を独立した文字で置く。

すると、もとの関数は 段に分かれる。

それぞれを、独立に微分する。

連鎖律をライプニッツの記法で書く。

最後に、 を戻す。

本解と同じ

この記法の形を見てほしい。

が分数のように約分されて消える。

もちろん、 や は本当の数ではないので、厳密には「約分」ではない。 それでも、この形に書くと連鎖律を忘れない。

ライプニッツ(–)は、この記法を意図的に設計した。「記号がうまくできていれば、記号のほうが考えてくれる」というのが、彼の考えだった。

同時代のニュートンは微分を (ドット)で書いた。 こちらは簡潔だが、連鎖律が見えない。

どちらの記法も正しい。だが、 のほうがずっと使いやすかった。

結果、大陸ヨーロッパの数学は 世紀に飛躍し、ニュートン記法にこだわったイギリスの数学は 年遅れたと言われる。記号の設計が学問の速度を変えた。 段階の合成なら、こう書ける。

どんなに深い入れ子でも、鎖のようにつないでいけばいい。

「何が何の関数か」を見失いそうになったら、この記法で書き出す。 迷子にならない道しるべになる。

ポイント

  • 。
  • 分子が中身の微分、分母が中身。

よくある間違い

  • 内側の微分()を忘れて とする。 の分子を落とさない
  • を と展開してしまう。対数の性質は で、和の中身は分解できない
  • 分子の を分母に入れて としてしまう。内側の微分は分子に掛かる

問11累乗の微分(分数・根号)

★ 基礎導関数

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

根号を分数の指数に書き直すと、いつもの累乗の微分規則が使える。答えを根号の形に戻すところまでやろう。

解答・解説

方針

と指数に直す。( は実数でよい)を使い、最後に根号に戻す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 根号のままでは、微分の公式が当てはまらない。

そこで、指数に直す。

これで、べきの微分公式が使える。

この公式が、 が分数でも負の数でも成り立つことが大事だ。

を入れる。

最後に、根号の形に戻す。

「根号 → 分数指数 → 公式 → 根号に戻す」

この ステップが根号を含む微分の定型である。 でも でも、手順は同じだ。

公式( は実数。分数・負でも成り立つ)

① 指数に直す。 。

② 公式で微分する。

③ 根号に戻す。 。

まとめ: や は、まず指数(、)に直すと が使える。この公式は が分数や負でも成り立つのが数IIIの強み。答えは根号に戻して書く。

発展。 の微分は電卓のない時代に平方根を計算する方法を与えた。

ニュートン法という。

を求めたいとしよう。 つまり、 の解を探す。

アイデアは単純だ。

適当な出発点 をとり、そこでの接線を引く。 接線が 軸と交わる点を、次の近似値 とする。

これを繰り返す。

接線の式は微分から出る。

とおいて、 を求める。

、 を入れる。

この漸化式で、 が計算できる。

から始めよう。

回だけで、小数点以下 桁が合った。

非常に速い。 ニュートン法は、 回の反復で正しい桁数が約 倍になる( 次収束)。

  • : 桁
  • : 桁
  • : 桁
  • : 桁
  • : 桁

回も回せば、小数点以下 桁を超える。コンピュータが平方根を計算するとき、内部でやっているのがこれである。なぜ、これほど速いのか。

接線はその点で関数を「最もよく近似する直線」だからだ。

曲線を直線で置き換えて、答えを近似する。その近似がとてもよいので、繰り返すたびに精度が大きく上がる。微分で「接線の傾き」が分かるからこそ、この方法が成立する。

方程式が解けなくても、微分できれば、解に近づける。 という 行を使えば、 を 桁まで計算できる。

答

別解

微分の定義に戻って、極限から導く。公式を使わずに、定義だけで計算する別解である。

微分の定義。

を にすると、分子も分母も になり、 の不定形だ。根号の引き算は有理化で処理する。分子・分母に を掛ける。

分子は、和と差の積の公式で

分子がただの になった。

が約分で消えた。 これで が解消した。

あとは とするだけ。

公式と同じ答え

この計算が示すこと。

の「」は、 が 回足されたことから来ている。公式の が有理化の中から自然に出てきた。この導関数をくわしく見てみる。

が大きくなると、 は に近づく。 の増え方はどんどん緩やかになる。

が 倍になっても、 は 倍にしかならない。逆に、 では

傾きが無限大に発散する。

グラフは原点で、垂直に立ち上がる。この事実には、意味がある。 は で連続だが、微分できない。

「連続だが微分できない点」は、グラフが尖っていたり、垂直になっていたりする点だ。

も、 で連続だが微分できない(左からの傾き 、右からの傾き で一致しない)。「連続 微分可能」は成り立たない。逆に「微分可能 連続」は正しい。

微分可能のほうが強い条件だ。

さらに、「すべての点で連続だが、すべての点で微分できない関数」も存在する(ワイエルシュトラス関数)。どこまで拡大しても、ギザギザが続く。 直感だけでは、こうした関数は思いつかない。

ポイント

  • ・ は指数に直す。
  • ( が実数ならよい)。

よくある間違い

  • の指数計算で、 を のままにしてしまう。指数は必ず 減る
  • を と読み違える。負の指数は逆数()であって、符号のマイナスではない
  • の微分を とし、 を落とす。係数の は、指数から降りてきたもの

問12合成関数の微分(3乗)

★ 基礎合成関数の微分三角関数の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

は『 の 乗』で、外側が 乗、内側が の合成だ。外→内の順に微分して掛ける。

解答・解説

方針

とみる。外側 の微分 、内側 の微分 。かけ合わせる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) という書き方に、まず慣れよう。

を 乗したもの、という意味だ。 ではない。この読み替えがすべてを決める。

と書けば、構造が見える。

  • 外側: (かたまりを 乗)
  • 内側: (かたまりの中身)

合成関数だ。連鎖律を当てはめる。

外側の微分: を微分して 、つまり 。

内側の微分: 。

掛ける。

「かたまりを見抜けば、あとはいつもの連鎖律」で、 でも でも、まったく同じ手順で微分できる。

公式合成関数 ()

とみる。。

① 外側を微分する。 。

② 内側の微分をかける。 。

まとめ: は「 の 乗」= 合成関数。外側( 乗)を微分し、内側()の微分 をかける。 の微分では が必ず出てくる。

発展。 ここまでで、数学IIIの微分の道具が出そろった。全体を 枚の地図にまとめておこう。

覚えるべき基本の導関数。

つだけ。

組み立ての規則(これも つだけ)。

基本 つ、規則 つ。合わせて 個。これだけで、高校で出会うどんな関数も微分できる。

商の微分は? 積 合成から出る。 の微分は? 商から出る。 逆関数の微分は? 合成から出る。 対数微分法は? 合成 対数の性質。

「 個の道具で、無限の関数を微分する」少ない道具で足りることが、微分の特徴だ。そして、微分は必ず終わる。

どんなに複雑な式でも、分解していけば、必ず基本の つに行き着く。 迷子になることはない。

手順はいつも同じ。

① 式の「いちばん外側」の構造を見る(和? 積? 商? 合成?)

② 対応する規則を当てはめる

③ 出てきた部品を、また ① から

この再帰的な手続きが必ず有限回で終わる。

だから、微分はコンピュータにもできる。 数式処理システム(Mathematica、SymPy)は、この手順を実装している。一方、積分にはこんな保証がない。

、、 は、どれも微分はすぐにできるが、積分は初等関数で書けない。

微分は「分解」、積分は「発見」。次の単元(積分法の計算)ではこの非対称性と向き合うことになる。そこで道具になるのは、意外にも微分の公式である。

「積分とは、微分の逆をたどること」 だからだ。

個の道具を、しっかり手に馴染ませておこう。 次の問題でも、同じ道具を使う。

答

別解

倍角の公式で「波の重ね合わせ」に分解してから微分する。まったく違う道を通って、同じ答えに着くことを確かめよう。

倍角の公式を思い出す。

これを について解く。

確かめよう。 なら、左辺 。右辺

この形なら、合成関数の 乗はどこにもない。 ただの の足し算だ。

微分する。

( の微分は 。内側の微分 を忘れずに。)さて、これが本解の と一致するだろうか。

倍角( 版)を使う。

で割ると

本解と一致した

遠回りだったが、収穫がある。 が つの単純な波の重ね合わせだと分かった。

「 乗する」という非線形な操作の結果は、「基本の波()と、 倍の速さの波()の混合」である。この分解は音の性質を説明するのにも使われる。ギターの弦を弾くと、基本の振動()だけでなく、 倍・ 倍の速さの振動(倍音)も同時に鳴る。

その混ざり具合が音色を決める。 同じ「ド」でも、ピアノとバイオリンで音色が違うのは、倍音の配合が違うからだ。「どんな波も、単純な 波の重ね合わせで書ける」

これをフーリエ級数という。 音声・画像の圧縮(MP3・JPEG)は、この原理で動いている。 の微分という素朴な計算が、音楽や信号処理の考え方につながっていた。

そして、この分解形は積分でも役に立つ。

をそのまま積分するより、はるかに楽だ。「難しい形を、単純な形の和に分解する」という発想は、微分でも積分でも役に立つ。

ポイント

  • は合成関数。
  • 外側 × 内側 。

よくある間違い

  • を と読み違える。 は で、 乗されるのは 全体
  • 内側の微分()を掛け忘れて で終える。合成関数は必ず中身の微分を掛ける
  • 外側を微分したあと、 をさらに に減らそうとする。 の には をそのまま戻す