図とグラフで考える物理基礎の勉強法

文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月3日

物理基礎でつまずく人の勉強を見ていると、ほぼ共通した特徴があります。公式を「文字の並び」として暗記して、問題文の数字をどれかに当てはめようとしていることです。公式が20個を超えたあたりで組み合わせが分からなくなり、「物理は無理」となります。

物理は公式を覚える科目ではなく、図と単位で考える科目です。暗記の代わりに使える道具が3つあります。

道具1: 単位を使う

物理の量には必ず単位が付いています。そして単位は式の作り方と検算の両方に使えます。

たとえば速さの単位は m/s です。「メートル毎秒」で、つまり距離÷時間のことです。これを知っていれば という式は覚える必要がなく、単位から復元できます。逆に、速さ m/s に時間 s を掛ければ m、つまり距離です。 も単位から出てきます。

計算の最後にも単位を使ってください。加速度を求めたのに答えの単位が m/s になっていたら、どこかで割り算を1回忘れています。答えの数値が合っているかは分からなくても、単位が合っているかは自分で確かめられるはずです。この検算の習慣があるだけで、テストの失点はかなり減ります。

道具2: 力の図示とv-tグラフを描く

力の図示ができれば、力学の問題の多くは式が立ちます。物体を1つ選び、その物体が受けている力を全部矢印で描きます。重力、面から受ける垂直抗力、糸の張力、摩擦力を、1本も漏らさず描いてください。力を1本でも見落とすと、その後の計算は必ず間違えるので、式を立てる前に矢印を描くことを徹底してください。

物体が静止しているか等速で動いているなら、矢印はつり合っています。加速しているなら、矢印の合計が です。運動方程式というのは、描いた矢印を式に書き写す作業にすぎません。

v-tグラフ(縦軸が速度、横軸が時間)は、等加速度運動の公式群の代わりになります。覚えることは2つだけです。

たとえば「初速 、加速度 で何秒後に止まるか、それまでに何 m 進むか」という問題は、右下がりの直線を1本描けば、止まるのは5秒後(直線が横軸に届く点)、進む距離は三角形の面積で とわかります。公式を1つも思い出さずに解けます。

当サイトの運動の表し方と力と運動の法則の解説には、ほぼ全問にこの種の図を付けています。解答の図を「読む」だけでなく、自分の手で描き写してみてください。

道具3: エネルギーの収支を書く

仕事とエネルギーの分野は、お金の収支と同じ構造をしています。最初に持っていたエネルギー(位置・運動)と、途中の出入り(された仕事・摩擦で失った熱)を足し引きすると、最後のエネルギーになります。

問題を解くときは、「最初」と「最後」の2つの場面を決めて、それぞれの場面で持っているエネルギーを書き出してください。仕事と力学的エネルギーの解説では、これを積み上げ棒グラフ(バーチャート)の図で示しています。摩擦がある斜面の問題も、バーチャートで見ると「位置エネルギーが、運動エネルギーと熱に分かれた」というただの振り分けだと分かります。

公式は導出とセットで1回だけ確かめる

暗記をゼロにはできませんが、公式は「一度だけ導出を追って、あとは使いながら覚える」のが結局早いです。たとえば は新しい法則ではなく、 と から を消しただけの式です。これを一度手で確かめた人は、係数を思い出せなくなっても自力で復元できます。

このサイトの物理問題について

物理基礎は全6単元(運動の表し方・力と運動・仕事とエネルギー・熱・波・電気)、専門の物理は全13単元を公開しています。数値は答えが割り切れるように設計してあるので、計算の途中で汚い小数が出たら、それ自体が「どこかで間違えた」というサインです。

進め方は数学と同じで、★から順に解きます。1問ごとに「図を描いたか」「単位は合っているか」の2つを自分に聞きながら進めてください。この2つの習慣が付いたころには、物理基礎は得点源になっているはずです。

単元の解説記事と、専門物理とのつながり

物理基礎の6つの単元には、それぞれ解説記事があり(単元ページのいちばん下にリンクがあります)、「この単元でできるようになること」「つまずきやすいところ」「学習の順序」「次の単元へ」を書いてあります。初めての単元に入るときは、この記事を読んでから基礎の問題に進んでください。とくに「次の単元へ」の節は、物理基礎の各単元が専門の物理のどの単元につながるかを書いてあるので、物理に進む人は先の見通しを立てるのに使えます。

物理基礎から物理へ進むときに何が変わるかは、物理基礎から物理へにまとめてあります。物理で増える法則は多くなく、変わるのは「方向を分ける」「複数の物体を扱う」「段階ごとに法則を選ぶ」「立場を乗り換える」「文字式で運ぶ」の5つです。物理基礎の3つの道具(単位・図・エネルギーの収支)が身についていれば、物理はその応用として読めます。

つまずいたときの戻り先

物理基礎の単元で止まったら、原因は前の単元にあることが多いです。運動方程式が立てられないなら力の図示、エネルギーの収支が書けないなら仕事の符号、というふうに、戻る先は決まっています。症状別の戻り先の一覧は物理のつまずきマップです。三角比の分解やベクトルの合成で止まっているなら、原因は数学にあるので、そちらの戻り先も同じ記事に書いてあります。

共通テストの物理基礎

共通テストの物理基礎は、計算量が少なく、グラフの読み取り・実験の考察・日常の現象の説明が中心です。この記事の3つの道具(単位・図・収支)は、そのまま共通テストの対策になります。とくに v-tグラフの読み取りは毎年のように出るので、運動の表し方のグラフの問題を、時間を計って解く練習をしてください。形式ごとの準備は共通テスト物理・物理基礎の対策にまとめてあります。