物理基礎から物理へ — 何が変わり、何が変わらないか

文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月2日

物理基礎が終わって専門の物理に入ると、急に難しく感じる人が多いです。ただ、物理で「新しく増える法則」は、実はそれほど多くありません。難しく感じる理由は、法則の数ではなく、「同じ法則を、複数の方向・複数の物体・複数の段階で使う」場面が増えることにあります。この記事では、物理基礎から物理へ進むときに何が変わり、何が変わらないかを整理します。

変わらないもの: 3つの道具

物理の力学で使う道具は、物理基礎で学んだ運動方程式、エネルギー保存(仕事)、そして物理で加わる運動量保存(力積)の3つです。運動量保存は新しく見えますが、運動方程式を時間で積分したもので、エネルギー保存が距離で積分したものであるのと対になっています。

物理の円運動も単振動も、運動方程式の応用です。加速度に を入れるだけで、新しい力が現れるわけではありません。「向心力」「復元力」は、既にある力の成分に付けた役割の名前です。

物理基礎の力の図示、v-tグラフの読み方、エネルギーの収支の書き方は、物理でも毎回使います。ここが不安定なまま物理に入ると、すべての単元で止まります。物理のつまずきマップに、症状別の戻り先を一覧にしてあります。

変わるもの1: 方向を分けて扱う

物理基礎の運動は直線上でした。物理では、平面内の運動で、水平方向と鉛直方向に分けて同時に扱います。放物運動は「水平は等速、鉛直は落体」で、時刻 で結びつけます。ベクトルの分解(数学Cの平面ベクトル、または三角比)が計算の道具になります。

変わるもの2: 複数の物体を同時に扱う

物理基礎でも2物体の連結は出てきましたが、物理では、衝突・分裂(運動量と力積)、2室に仕切られた気体(気体の熱力学)、レール上の2本の棒(電磁誘導と交流)のように、複数の物体の相互作用を扱う問題が中心になります。「物体ごとに式を立てて、作用反作用や保存則でつなぐ」という手順が、物理の標準的な解き方です。

変わるもの3: 段階を分けて別の法則を使う

弾道振り子(弾丸が木片に食い込んで振り上がる)は、衝突の瞬間は運動量保存、そのあとの振り上がりはエネルギー保存で解きます。ばねに弾丸が当たる問題も同じです。「幕を分けて、幕ごとに使う法則を選ぶ」という考え方が、物理の応用問題の骨格です。物理基礎では1つの法則で1問が終わりましたが、物理では2〜3の法則を順につなぎます。

変わるもの4: 立場を乗り換える

加速する電車の中、回転する台の上、といった「加速している立場」から見ると、慣性力や遠心力という見かけの力が現れます(円運動と万有引力)。地上から見て運動方程式を立てるか、乗り物の中から見て見かけの力を入れてつり合いを書くか、どちらか一方を選んで混ぜない、というルールを最初に身につけてください。

変わるもの5: 式で扱う範囲が広がる

物理基礎では数値で答える問題が中心でしたが、物理では文字式で答える問題が増えます。「 で表せ」という問いに、途中で数値を入れずに式を運ぶ必要があります。文字式の答えは、単位の次元と、極限(角度を0にしたとき、質量を無限大にしたとき)で検算できます。単位と有効数字の扱いに、この検算の方法をまとめてあります。

三角関数(数学II)と微分・積分の考え方も、物理では前提になります。単振動の速度と加速度、交流の実効値(正弦波の2乗の平均)、電磁誘導の「変化率」は、数学IIの三角関数と微分の考えがあると理解が速くなります。

分野ごとの「橋」

物理基礎の各単元は、物理の次の単元につながっています。

運動の表し方→平面内の運動(方向の分解)。力と運動の法則→剛体のつり合い(モーメントの追加)・円運動(運動方程式の応用)。仕事と力学的エネルギー→運動量と力積(2つの保存則の使い分け)・単振動(エネルギーと復元力)。熱とエネルギー→気体の熱力学(状態方程式との組合せ)。波の性質と音→波の伝わり方と音(正弦波の式・ドップラー効果)→光(干渉・レンズ)。電気とエネルギーの利用→電場と電位(場とエネルギーの区別)→直流回路(キルヒホッフ)。

物理の単元で止まったら、この橋を逆にたどって、物理基礎の対応する単元の標準問題を数問解いてから戻ると、原因が見つかります。

進め方

物理基礎の力学3単元の基礎と標準が解けていれば、物理に入る準備はできています。物理の力学5単元は順番に進めてください。熱・波動・電磁気・原子は独立しているので、学校の進度に合わせて選べます。

各単元の記事(単元ページの先頭)に、その単元で身につけること・つまずきやすいところ・学習の順序をまとめてあります。物理に入るときは、まず平面内の運動の記事から読んでください。物理の勉強法には、力学の3本柱の使い分けを軸にした、物理全体の学習順序をまとめてあります。

物理に入ってから最初につまずく場所

物理に入った人が最初に止まるのは、たいてい「平面内の運動」の放物運動か、「運動量と力積」の保存則の使い分けです。

放物運動で止まる原因は、「水平と鉛直を分ける」という考え方が身についていないことです。物理基礎の落体運動(鉛直だけ)と、等速直線運動(水平だけ)は解けるのに、2つを同時に扱うと混乱します。対策は、水平と鉛直で別々の表を作ることです。時刻 を共通の変数にして、水平の位置と速度、鉛直の位置と速度を、2列に分けて書きます。「時刻でつなぐ」という感覚がつかめれば、放物運動の問題はすべて同じ手順で解けます。

保存則の使い分けで止まる原因は、「運動量が保存されるならエネルギーも保存される」という思い込みです。非弾性衝突では運動エネルギーが減ります。逆に、衝突以外の区間(斜面・振り子)では運動量は変わりますがエネルギーは保存されます。「衝突の瞬間は運動量、それ以外はエネルギー」という幕分けを、弾道振り子の問題で1度体に入れると、以後の融合問題で迷わなくなります。

物理基礎の知識で解ける物理の問題

物理の各単元の基礎12問は、物理基礎の知識だけで解けるものが多く含まれています。円運動の「角速度・周期・回転数」、単振動の「基本量」、気体の「ボイルの法則」、波の「基本式」、電場の「クーロンの法則」などです。物理に入るとき、各単元の基礎の前半だけを先に一通り解いておくと、「物理は物理基礎の続きだ」という感覚がつかめて、心理的な壁が低くなります。