数学C / 平面上の曲線

平面上の曲線 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 楕円の反射性質
  2. 焦点距離の公式と離心率・準線
  3. 双曲線と漸近線への距離の積
  4. レムニスケートの囲む面積
  5. 平行な弦の中点の軌跡
  6. サイクロイドの法線と接地点
  7. 共焦点の楕円と双曲線の直交
  8. アステロイドの接線の切片

問1楕円の反射性質

最難関編楕円接線

問題

楕円 の焦点を とする。楕円上の点 (長軸の端を除く)における接線 について、 と直線 のなす角と、 と直線 のなす角が等しいことを示せ。

ヒントを見る

角度の計算に入る前に、鏡(接線)に映した焦点を考える。F₂ から F₁′ までの折れ線の長さと、楕円の定義(距離の和)を見比べるとよい。接線上で和を最小にする点はどこか。

解答・解説

方針

角の等しさを直接計算せず、F₁ の接線に関する対称点 F₁′ をとる: 対称性から「ℓ と PF₁ の角」=「ℓ と PF₁′ の角」なので、F₂, P, F₁′ が一直線に並ぶことを言えばよい。決め手は楕円の定義 PF₁+PF₂=2a と、接線の外側では距離の和が 2a を超えることだ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「2つの角が等しい」を、角の計算で示すのは茨の道だ。鏡像で言い換える。

の、接線 に関する対称点 をとる。対称性から「 と のなす角」=「 と のなす角」。だから示すべきことは、 が一直線に並ぶこと、に変わる。

一直線を言うには、楕円の定義 と、「接線上の他の点はすべて楕円の外側にある(=距離の和が を超える)」という接線の性質を使う。折れ線の最短が直線、という原理で結ばれる。

重要楕円の定義: 。接線は楕円と1点で接し、接線上の他の点は楕円の外側()

① 対称点をとる。 の に関する対称点を とする。 上の任意の点 で だから

(折れ線は直線より長い。等号は が線分 上のとき。)

② 最小が で起きることを使う。 接点 以外の 上の点 は楕円の外側にあるから 、一方 では 。つまり①の左辺は で最小になる。等号成立点は に限られ、 は線分 上にある。すなわち は一直線に並ぶ(このとき も従う)。

③ 角を結論する。 は の鏡映だから、 と のなす角 と のなす角。②より は の延長そのものなので、この角は と直線 のなす角(対頂角)に等しい。よって2つの角は等しい。

xyOF₁F₂P
楕円上の点 P での接線(赤)と2本の焦点半径。接線とのなす角が等しいので、F₁ から出た光は反射して F₂ へ向かう

まとめ: 「等角は鏡映+共線」に言い換え、共線は「定義の最小性」から引き出す。計算を使わず、定義だけで進む証明だ。この性質が『一方の焦点から出た光が楕円面で反射してもう一方の焦点に集まる』という反射望遠鏡・ささやきの回廊の原理そのものだ。

発展。 この反射性質は実用の塊だ。楕円形の部屋では一方の焦点のささやきが他方の焦点で聞こえ(ささやきの回廊)、医療では楕円面鏡で衝撃波を焦点の結石に集める(結石破砕術)。双曲線・放物線にもそれぞれ反射性質があり(放物線は「焦点から出た光が軸に平行に」=パラボラアンテナ)、円錐曲線の一家はみな「光の設計図」として現役で働いている。

答

証明( の に関する対称点が線分 の延長上に乗る)

別解

法線が角を二等分することを、単位ベクトルで示す(解析ルート)。 ひし形の対角線の原理、つまり「長さの等しい2本のベクトルの和は、なす角を二等分する」ことを使う。

から各焦点へ向かう単位ベクトル の和 は、角 の二等分方向を向く。一方、楕円 の点 での法線方向は (接線の公式 の係数)。焦点距離の公式 を使って を成分計算すると、ちょうど の定数倍になることが確かめられる。

法線が内角を二等分する ⟺ 接線と2本の焦点半径のなす角が等しいという関係は、反射の性質の言い換えだ。鏡像(本解)は補助点1つで済む総合幾何、単位ベクトルの和は座標で押し切る解析幾何だ。二等分を「和のベクトル」で作るこの手筋は、内心の位置ベクトルなどでも使った、平面図形の汎用部品である。

ポイント

  • の鏡映 で等角を共線に言い換える。
  • 接線上では が でだけ (最小)。
  • 共線 → 2角が等しい。

よくある間違い

  • 角の等しさを接線の傾きと の加法定理で直接計算しようとして、式の海で遭難する(鏡像か単位ベクトルの和で構造化する)。
  • 「接線上の 以外の点は楕円の外側()」という接線の特徴づけを、証明なしに暗黙で使う(答案では一言根拠を)。
  • 長軸の端(法線が対称軸と一致し、角の議論が退化する点)の除外に触れない。

問2焦点距離の公式と離心率・準線

最難関編楕円離心率

問題

楕円 の焦点 と直線 を考える。

(1) 楕円上の点 について、 が成り立つことを示せ。

(2) から に下ろした垂線の足を とするとき、 が一定であることを示し、その値を求めよ。

ヒントを見る

距離はまず2乗する。 に楕円の式を代入すると、 の2次式が完全平方になるはずだ。(2)は を で書いて割るだけだが、その「比が一定」の図形的な意味まで考えたい。

解答・解説

方針

(1) PF² を計算し、y²=3(1−x²/4) を代入すると完全平方 (2−x/2)² に畳まれる(x の範囲から 2−x/2>0 で根号が外れる)。(2) PH=4−x なので比を取ると x が約分されて定数 1/2 になる。これは焦点・準線・離心率による統一的な見方につながる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (1)は距離の式を2乗して、楕円の式で を消すのが基本だ。 に を入れると、 の2次式がぴったり完全平方に畳まれる。

根号を外すときは符号の検分( で )を忘れずに。(2)は との比をとるだけ。 が約分されて定数 が残る。焦点からの距離と準線からの距離の比が一定になるという、円錐曲線に共通する性質(離心率)が現れる。

公式焦点距離: ()。準線 と組で

① を計算する((1))。 。楕円の式から を代入して

② 根号を外す。 楕円上では だから 。よって

③ 比をとる((2))。 より 。

これは の位置によらず一定で、値は離心率 に一致する。

xyOFPH
楕円上の P から焦点 F への距離と、準線 x=4 への距離 PH。比 PF:PH はどこでも 1:2(離心率 1/2)

まとめ: 手順は「距離は2乗 → 曲線の式で消去 → 完全平方」だ。この畳み込みが起こるのは焦点だけで、副産物の は焦点弦の計算などに広く使える。比が一定()という見方は放物線()・双曲線()まで貫く、2次曲線の統一原理だ。

発展。 比 を逆に定義に採用すると、 で楕円、 で放物線、 で双曲線と、3曲線が1本の式 から生まれる(焦点・準線による統一定義)。極座標で書いた は惑星の軌道の式そのもので、離心率 は軌道の「つぶれ具合」を測る天文学の実用量だ。

答

(1) 平方して楕円の式で を消す(証明) (2) (離心率)

別解

パラメータ表示なら完全平方が自然に出る。 とおいて距離を直接計算する。

だから 。 を戻せば となり、絶対値の心配なく本解と同じ式になる。(2)も で、比は見た瞬間に 。

座標のまま2乗する(本解)か、角 で1変数化するか。楕円の計算では、迷ったらパラメータ表示にすると楽になる場面が多い。三角関数の恒等式が平方完成の代わりになるからだ。

ポイント

  • に を代入すると 。
  • 範囲から (焦点距離の公式)。
  • (準線と離心率)。

よくある間違い

  • とする前に、 で の確認を落とす。
  • (2)で を と書いて符号が負になる( は準線の左側なので )。
  • 焦点 と離心率・準線の関係()を検算に使わず、比の定数性を偶然と思って通り過ぎる。

問3双曲線と漸近線への距離の積

最難関編双曲線漸近線

問題

双曲線 上の任意の点 から、2本の漸近線に下ろした垂線の長さをそれぞれ とする。積 は の位置によらず一定であることを示し、その値を求めよ。

ヒントを見る

2本の漸近線への距離を公式で書いて掛けてみる。分子に現れる式はどこかで見た形ではないか。双曲線の方程式を「左辺の因数分解」の目で見直すと。

解答・解説

方針

漸近線は x−2y=0 と x+2y=0。点と直線の距離の公式で d₁d₂ を書くと、分子に |x²−4y²| が現れる。これは双曲線の方程式そのもの(=4)だ。曲線の式が「距離の積」の形に因数分解されていることが、積が一定になる理由だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 漸近線は と 。点と直線の距離の公式で を書くと、分子に積 が現れる。

ここで双曲線の式 は、左辺が

と漸近線の1次式の積に因数分解されている。つまり曲線上ではつねに である。距離の積の分子は方程式の左辺そのものだった。定数になる理由が式の構造に最初から書き込まれている。

公式点 と直線 の距離 。双曲線 の漸近線は

① 距離を書く。 漸近線は と 。 から

② 積に方程式を代入する。

は双曲線上にあるから 、すなわち 。よって

たしかに の位置によらない。

xyOP
双曲線と2本の漸近線(黒)。点 P から漸近線への2つの垂線(赤破線)の長さの積は、P がどこでも 4/5

③ 吟味。 が遠くへ行くと一方の漸近線に近づく()が、そのぶんもう一方から遠ざかり()、積はぴったり釣り合う。「漸近する」ことと「積一定」は同時に成り立っている。

まとめ: 双曲線の方程式は「漸近線への距離の積 = 一定」の言い換えである。左辺の因数分解がそのまま図形の性質になる。一般の では積は になる(同じ計算)。

発展。 の見方をさらに進めると、45°回転で 型(反比例)に移る直角双曲線の一般化が見える。「双曲線=2本の漸近線の1次式の積が一定」という読み方は、漸近線が直交しない一般の双曲線でも通用し、 という一般公式も同じ計算で出る。

答

(一定)

別解

漸近線を新しい座標軸にする( 一定の形に直す)。 思い切って、漸近線の1次式そのものを新しい変数にとる:

すると双曲線の方程式 は

これは中学以来の反比例のグラフの形だ。双曲線とは「斜めの座標系で見た 一定」と見ることができる。2本の漸近線への距離は (点と直線の距離の公式の分子が、ちょうど になる)。よって

一定であることが、 の一言に還元された。本解の「分子が方程式そのもの」という観察を、座標変換として言い切った形で、 型の双曲線(直角双曲線)との血縁も見える。

ポイント

  • 左辺の因数分解 が理由だ。
  • に方程式 を代入。
  • (遠方で 、 の釣り合い)。

よくある間違い

  • 漸近線を から に直すとき、距離公式の分母 を 等と誤る。
  • 絶対値の積 の処理で、双曲線の左枝()を別扱いし始める(絶対値のまま方程式を代入すれば枝によらない)。
  • とする( の両辺4倍で 。定数の掛け忘れ)。

問4レムニスケートの囲む面積

最難関編極座標面積

問題

極方程式 で表される曲線(レムニスケート)の囲む部分の面積を求めよ。

ヒントを見る

の左辺は負になれない。このことから の「立ち入り禁止区間」が決まり、曲線の形(2枚の葉)が分かる。面積は極座標の公式に をそのまま流し込めばよい。

解答・解説

方針

まず r² ≥ 0 から θ の動ける範囲(−π/4 ≤ θ ≤ π/4 とその反対側)を確定することが大事だ。曲線は原点で交差する2枚の葉になる。極座標の面積公式 S=∫(1/2)r²dθ に r²=cos2θ を入れると、右葉の面積が (1/2)∫cos2θdθ で求まり、対称性で2倍する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 極方程式では、まず から の動ける範囲を確定する。 より (右葉)とその反対側(左葉)に限られる。曲線は原点で交差する2枚の葉だ。

面積は極座標の公式 。 をそのまま入れられるのがこの形の御利益で、右葉の面積を計算して対称性で2倍する。範囲の確定を飛ばすと、葉のない方向まで積分して答えが合わなくなる。まず定義域を確かめる手間が欠かせない。

公式極座標の面積: 。定義域は から決める

① 定義域(葉の範囲)。 (mod )。 で (原点)、 で (最遠点)となり、右葉はこの範囲で閉じる。左葉は対称。

xyOθ=0, r=1
レムニスケート r²=cos2θ。θ=±π/4 で原点に戻る2枚の葉(8の字)で、囲む面積の合計はちょうど1

② 右葉の面積。

③ 全体。 左右対称だから

曲線の式は4次式なのに、面積はちょうど という整数になる。

まとめ: 極方程式では「 の定義域」が形を決める。立ち入り禁止の が葉の切れ目になる。面積公式が を直接受け取るので、 型はむしろ計算が軽い。定義域の吟味を飛ばして から まで積分すると、負の を拾って値が合わない。この問題で間違えやすいところだ。

発展。 レムニスケート(ベルヌーイの連珠形)は「2定点からの距離の積が一定」の軌跡でもある(和なら楕円、差なら双曲線、積ならこの曲線)。面積は本問のとおり初等的に と求まるのに、弧長は初等関数では書けない。その研究(レムニスケート積分)から楕円関数論という大きな分野が生まれた。面積と長さで難しさが大きく違う、歴史的に重要な曲線だ。

答

別解

面積公式を扇形の区分求積で手作りしてから使う。 極座標の面積公式 を、天下りでなく自前で正当化しておこう。

角の範囲を細かく ずつに刻むと、各切れ端は「半径 、中心角 の扇形」でほぼ近似できる。扇形の面積は (円の面積 の 倍)。足し上げて とすれば

区分求積の考え方そのものだ。あとは本解と同じ計算で、右葉 、全体で 。なお、この曲線は直交座標では と書ける(、 を代入)。直交形では面積計算が非常に難しいのに、極座標なら3行で済む。「曲線に合った座標を選ぶ」ことが役に立つ例だ。

ポイント

  • から の範囲(2枚の葉)を確定。
  • 。
  • 対称で2倍して面積1。

よくある間違い

  • の範囲確認を飛ばして から まで積分し、正負が打ち消して面積が壊れる(最頻)。
  • 極座標の面積を (弧長の類推)と混同する(正しくは )。
  • 2枚の葉の対称性で2倍するとき、右葉の中でさらに上下対称で2倍…と重複して4倍にする。

問5平行な弦の中点の軌跡

最難関編楕円解と係数の関係

問題

楕円 を、傾き1の直線 ( は実数)が2点で切るとき、その2交点を結ぶ弦の中点は、 を動かすと1つの直線上に乗ることを示し、その直線の方程式を求めよ。

ヒントを見る

中点に必要なのは2つの解の「和」だけで、判別式や個々の解はいらない。代入してできる2次方程式から、解と係数の関係で中点を の式にし、最後に を消す。

解答・解説

方針

直線を楕円に代入してできる x の2次方程式の「解の和」だけが中点に要る。解と係数の関係で中点の x 座標を k で表し、y 座標も k で表して、k を消去する。個々の交点を求めないことが、計算を軽くするこつだ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 弦の中点に必要なのは、2交点の座標ではなく解の和だけだ。

直線 を楕円に代入して の2次方程式を作り、解と係数の関係で中点の 座標を で表す。 座標も直線の式から で書ける。

あとは2つの式から を消去すれば、中点の乗る直線が出る。個々の交点は求めない。「和だけ取り出す」計算の組み立てが、この型の問題の決め手になる。

重要弦の中点は解の和で書ける(解と係数の関係)。個々の交点を求めるのは遠回り

① 代入して2次方程式を作る。 を楕円に代入:

2点で交わる条件は判別式 、整理すると (この範囲の を考える)。

② 中点を解の和で書く。 2解を とすると、解と係数の関係で

中点の座標 は

③ を消去する。 を に代入して 、すなわち

中点はすべてこの直線上に乗る( に対応して、楕円の内部にある部分だけを動く)。

xyO
傾き1の平行な弦たち(黒)とその中点(赤点)。中点はすべて直線 y=−x/4(赤)の上に並ぶ

まとめ: 「中点は解の和」で表すので、根号が一切現れない。一般の楕円 と傾き でも同じ計算で中点直線 が出る(共役な直径)。傾きの積が で一定になるという、楕円の対称性の一つだ。

発展。 弦の傾き を一般にすると、中点の直線の傾き とのあいだに (本問は )という関係が成り立つ。この2方向の組は「共役直径」と呼ばれ、円の「垂直な直径」()が伸長でゆがんだ姿。楕円の作図・面積・接線の議論で繰り返し出てくる、楕円の基本的な構造だ。

答

直線 (楕円の内部の部分)

別解

楕円を円に伸ばして、垂直な直径で読む(アフィン変換)。 と縦に2倍伸ばすと、楕円 は円 になる。

この変換で、直線は直線に、中点は中点に移る(1次変換は内分比を保つ)。弦の族 は 、つまり傾き2の平行な弦の族に移る。

円ならすぐに分かる。平行な弦の中点は弦に垂直な直径の上に乗る(円の対称性)。傾き2に垂直な直径は 。

これを元の座標に戻す()と

解と係数(本解)はどんな場合にも使える計算で、円への伸長は「なぜ直線に乗るのか」を対称性で説明する方法だ。楕円の問題は、円に伸ばすと自明になるものが多い。面積 もこの変換から出てきた。

ポイント

  • 代入で 。
  • (解の和だけ使う)。
  • 消去で (楕円内部の部分)。

よくある間違い

  • 交点そのもの(解の公式)を計算し始めて計算量が非常に多くなる(中点に要るのは解の和だけ)。
  • 判別式 (2点で交わる の範囲)を忘れ、直線 の全体を答えにする(楕円内部の線分に限る)。
  • 中点の 座標を で出すときに、 の消去を「代入した式の整理」でなく暗算でやって符号を誤る。

問6サイクロイドの法線と接地点

最難関編サイクロイド媒介変数

問題

サイクロイド ()上の点 における法線は、そのときの転がる円と 軸の接点 を通ることを示せ。

ヒントを見る

「法線が通る」は「その点へのベクトルが接ベクトルと垂直」で判定できる。接ベクトルと、P から接地点へ向かうベクトルを媒介変数で書いて、内積を取ってみると。

解答・解説

方針

接ベクトルは (dx/dt, dy/dt)=(1−cost, sint)。P から接地点 (t,0) へのベクトルは (sint, cost−1)。内積を計算すると (1−cost)sint+sint(cost−1)=0 となり、恒等的に垂直なので、法線が接地点を通る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「法線が接地点を通る」⟺「 から接地点へのベクトルが、接ベクトルと垂直」である。垂直の主張は内積で表すのが一番早い。

接ベクトルは 。 から接地点 へのベクトルは 。内積を計算すると、恒等的に 。1行の計算で、サイクロイドの幾何の大事な性質が分かる。

公式媒介変数表示の接ベクトルは 。法線が を通る ⟺

① 接ベクトル。

( では で接ベクトルが定まる。)

② 接地点へのベクトル。 から接地点 へ:

③ 内積を計算する。

つまり恒等的に垂直である。よって における法線は接地点 を通る。

xyOP(t, 0)
サイクロイドと、点 P での法線(赤)。法線はその瞬間の転がる円(破線)の接地点 (t, 0) を必ず通る(図は t=2)

まとめ: 内積を1回計算するだけだが、力学的な意味もある。転がる円はその瞬間、接地点を軸に回転しており、円上の各点の速度は接地点へ向かう半径と垂直になる(瞬間中心)。「法線が接地点を通る」はその力学の言い換えで、サイクロイドの接線の向き( と円の最高点を結ぶ)もここから読める。

発展。 サイクロイドには多くの性質があり、「最速降下線」(重力だけで2点間を最短時間で滑る形)であり、「等時曲線」(どこから放しても最下点までの時間が同じ)でもある。振り子時計のホイヘンスはこの等時性を利用した。本問の「法線が接地点を通る」は、これらの証明で繰り返し使われる基本部品だ。

答

証明( から接地点へのベクトルと接ベクトルの内積が恒等的に0)

別解

瞬間回転の中心として読む(物理の1行)。 転がる円の運動は、各瞬間には「接地点を中心とする回転」とみなせる(接地点は滑らないので、その瞬間だけ速度0=回転の軸)。

回転運動では、各点の速度はつねに「回転中心からその点へのベクトル」と垂直。点 の速度ベクトルは接線方向だから、「接線 ⊥(接地点から )」となる。すなわち法線が接地点を通る。計算の内積 はこの力学の言い換えだった。

おまけに速さまで分かる。回転の角速度は (単位時間に角 が 進む)なので、速さ 接地点までの距離。実際 が恒等的に成り立つ。サイクロイドの頂上()で速さが最大 (=直径)になるのも、この見方なら一目だ。

ポイント

  • 接ベクトル 。
  • との内積が恒等的に0。
  • 背景は瞬間中心(接地点を軸に回る)。

よくある間違い

  • 接ベクトルの微分 の符号を誤る。
  • 「法線が を通る」ことを、法線の方程式を立てて代入する重い道で確かめる(垂直の内積1行で足りる)。
  • (尖点。接ベクトルが零になり法線が定義できない)を除く断りを落とす。

問7共焦点の楕円と双曲線の直交

最難関編焦点接線の直交

問題

楕円 と双曲線 を考える。

(1) 2つの曲線の焦点が一致することを示せ。

(2) 2つの曲線は4つの交点をもつ。各交点において、楕円の接線と双曲線の接線が直交することを示せ。

ヒントを見る

焦点の計算は符号の規約(引くか足すか)に注意。交点は2式の連立で具体的に出る。接線は公式で書けるから、傾きの積を交点の座標の関係式で評価すればよい。

解答・解説

方針

(1)は c²=a²−b²(楕円)と c²=a²+b²(双曲線)の計算。(2)は連立して交点 (±2, ±√2) を求め、接線の公式(x₀x/8+y₀y/4=1 と x₀x/2−y₀y/2=1)から傾きを出して積が −1 になることを確かめる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (1)は焦点の公式の確認だ。楕円は 、双曲線は である。引く側と足す側で同じ になり、焦点 が一致する。

(2)は正面から: 2式を連立して交点 を求め、接線の公式( と )から傾きを出して、積が を確かめる。対称性から、4つの交点のうち1つで確かめれば、残りは符号の反転で同じ計算になる。

公式接線: 楕円 、双曲線 。焦点: 楕円 、双曲線

① 焦点の一致((1))。 楕円: → 焦点 。双曲線: → 焦点 。一致する。

② 交点を求める。 双曲線の式から 。楕円の式(×8)から 。差をとって 、、:

③ 接線の傾きの積((2))。 交点 ()で、接線の公式から傾きは

( を代入。)よって4つの交点すべてで2接線は直交する。

xyO(2, √2)
同じ焦点(±2, 0)をもつ楕円(青)と双曲線(黒)。4つの交点(赤)で2曲線は直角に交わる

まとめ: 「焦点を共有する楕円と双曲線は直角に交わる」ことが分かった。焦点半径の反射性質(楕円は等角に反射、双曲線は等角に発散)を思い出すと、2曲線の接線が入射・反射の2等分線どうしになっている、という光学的な説明もつく。計算では の値が積 をぴったり作る瞬間が見どころだ。

発展。 焦点 を共有する楕円と双曲線を全部描くと、平面が2つの曲線族の直交する網の目(直交曲線族)で覆われる。これは「楕円座標」と呼ばれる座標系で、熱の等温線と熱流の線、電場の等電位線と電気力線のように、「レベルの線と流れの線が直交する」物理の関係がこの網の目そのものになっている。

答

(1) ともに (2) 交点 で接線の傾きの積が (証明)

別解

反射性質どうしの直交(計算のない一般証明)。 交点の座標も接線の傾きも計算せずに、(2)をすべての共焦点ペアで示せる。

  • 楕円の反射性質: 接線は2本の焦点半径 のなす角の外角を二等分する(焦点からの光が反対の焦点へ反射する)。
  • 双曲線の反射性質: 接線は同じ2本の焦点半径のなす角の内角を二等分する。

交点 では、2曲線が同じ2本の線分 を共有している。そして、同じ角の内角二等分線と外角二等分線はつねに直交する(2つの二等分線のなす角は )。

よって、楕円の接線と双曲線の接線は直交する。焦点が同じでありさえすれば、どの楕円とどの双曲線の組でも成り立つ。本解の傾きの積 はこの一般的な事実を座標で確かめたものである。

ポイント

  • : 楕円 、双曲線 で、ともに焦点 。
  • 交点は (連立の差)。
  • (直交)。

よくある間違い

  • 双曲線の焦点を で計算してしまう(双曲線は足す: )。
  • 接線の公式の符号(双曲線は とマイナス)を楕円と混同する。
  • 1つの交点で確かめただけで「4交点すべて」と述べる(対称性で移り合うことの一言を添える)。

問8アステロイドの接線の切片

最難関編アステロイド接線

問題

アステロイド の の部分の点 における接線が、 軸、 軸と交わる点をそれぞれ とする。線分 の長さは の位置によらず一定であることを示し、その長さを求めよ。

ヒントを見る

媒介変数で傾きを出して接線を書き、思い切って整理すると「切片形」にならないか。切片が読めれば、長さの計算は三平方の定理でできる。最後にどの恒等式を使うか。

解答・解説

方針

接線の傾きは dy/dx=(dy/dt)/(dx/dt)=−tant。接線の方程式を整理すると x/cost + y/sint = 1 という切片形になり、切片は (cost, 0), (0, sint) となる。よって AB² = cos²t+sin²t = 1 で一定。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 媒介変数の曲線の接線は、傾き から。計算すると になる。

接線の方程式を点 で立てて整理すると、単純な切片形 になる。切片は と 。だから である。長さが1になることは、この恒等式から直接分かる。

公式媒介変数の傾き: 。切片形 の軸との交点は

① 接線の傾き。

② 接線を切片形に整理する。 点 を通り傾き :

両辺に を掛けて整理すると

③ 切片の長さ。 、 だから

これは の位置によらず一定である。

xyOABP
アステロイド(青)と1本の接線(赤)。接線が両軸で切り取られる線分 AB の長さは、接点がどこでも1になる(長さ1の棒が滑ってできる曲線)

まとめ: アステロイドは「長さ1の棒(はしご)が壁と床を滑るときの包絡線」である。接線の切片間の長さが常に1なのは、この曲線がそうやってできることの表れだ。媒介変数の微分 → 切片形への整理 → 恒等式で締める、と計算の見せ場が3段続く。

発展。 アステロイドの全長は (四分弧が )と、曲線の長さとしては珍しく有理数になる。また「半径 の円を半径 の円の内側で転がした点の軌跡」でもあり(内サイクロイド)、はしごの包絡線と転がり曲線という2つの出自をもつ。円の中で円を転がす歯車の設計(ハイポサイクロイド)の、代表的な特別な場合だ。

答

(一定)

別解

「滑るはしご」との関係を見る(包絡線の逆読み)。 長さ1のはしごが、上端を 軸、下端を 軸に置いたまま滑る。下端が 、上端が のときのはしごの直線は

これは本解で導いた接線とまったく同じ式だ。

実際、点 はこの直線上にあり()、直線の傾き は曲線の と一致する。つまりアステロイドの接線の全体=滑るはしごの位置の全体である。アステロイドは、はしごの通過範囲の境界(包絡線)そのものだった。

このことが分かれば、 は「はしごの長さは1」というただの前提になる。切片形(本解)の計算が導いた事実の裏に、動くはしごの1枚の絵が隠れていた。

ポイント

  • 傾き (共通因数の約分)。
  • 接線は切片形 。
  • (滑る棒の包絡線)。

よくある間違い

  • の分母分子を逆にする( になったら疑う)。
  • 接線を点傾き式のまま整理せず、切片形 の単純さに気づかない(整理の途中で を2回使う)。
  • 端 (接線が軸と平行になり三角形が退化)を範囲から除く断りを落とす。