数学C / 平面ベクトル

平面ベクトル 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 面積公式の証明(コーシー・シュワルツ)
  2. 外心を1次結合で表す
  3. 内積が等しい点は垂心
  4. 斜交座標の領域の面積
  5. 内積が一定な点の軌跡
  6. 和と差の大きさから積の範囲へ
  7. 単位円上の3点の和が零ベクトルなら正三角形
  8. 直線上の点への距離の平方和の最小

問1面積公式の証明(コーシー・シュワルツ)

最難関編内積不等式の証明

問題

を平面上の零ベクトルでないベクトルとする。

(1) すべての実数 について が成り立つことを用いて、不等式 を示せ。

(2) が平行でないとき、 の張る三角形の面積が で与えられることを示せ。さらに のとき を導け。

ヒントを見る

(1) について展開すると2次式になる。「すべての で0以上」を係数の条件に直す道具は何か。(2) 面積の を、内積で書ける に置き換えると根号の中に何が残るか。

解答・解説

方針

(1)は |a−tb|² を t の2次式として展開し、常に0以上 ⟺ 判別式≤0 と読む。(2)は S=½|a||b|sinθ の sin²θ=1−cos²θ に内積の定義を入れると根号の中身がそのまま現れ、成分計算(ラグランジュの恒等式)で行列式の形に畳まれる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (1)のヒント が全てだ。左辺を展開すると の2次式になる。

どんな でも0以上の2次式は、判別式が0以下。その判別式こそ、示したい不等式(コーシー・シュワルツ)の姿をしている。

(2)は面積公式 から。 に内積の定義を入れると、根号の中身に(1)の左辺の形がそのまま現れる。あとは成分で展開すれば、行列式の形に畳まれる。

重要(すべての )⟺ 判別式 。 が内積と面積の橋になる

① (1) 判別式で示す。 展開すると

の2次式がすべての実数 で0以上だから、判別式は0以下:

② (2) 面積公式。 なす角を ()とすると 。 だから

((1)より根号の中は0以上なので、不等式がこの公式を使ってよい根拠になっている。)

③ 成分で畳む。 に成分を入れて展開すると

(交差しない項 が相殺して、完全平方だけが残る。)よって

まとめ: 「長さの平方 ≥ 0 → 判別式」がコーシー・シュワルツの最短証明で、その差 は(面積の2倍)の平方になっている。不等式と面積公式が同じ1つの式の裏表であることを、この2問構成が示している。

発展。 3役を演じた量 は、行列式(2次)であり、3次元では外積の第3成分になる。符号まで見ると「 から へ反時計回りなら正」という向きの情報を持っていて、面積に符号をつけた「符号つき面積」は多角形の面積公式(靴ひも公式)へ一直線につながる。

答

(1) の2次式の判別式(証明) (2) から(証明)

別解

成分の恒等式で1行で示す(ラグランジュの恒等式)。 、 とおいて、示したい差を直接展開してしまう。

(展開すると と が消え、残りが完全平方にまとまる。)右辺は平方だから となり、これで(1)が出た。等号は 、すなわち平行のとき。

しかも(2)の面積公式はこの恒等式の右辺そのもの:

の2次式(本解)からは「不等式の構造」が、成分の恒等式(本ルート)からは「差は平方だった」という理由が分かる。 という量が、不等式・面積・平行判定の3役を1人で演じている。

ポイント

  • の判別式で 。
  • で 。
  • 成分展開で に畳まれる。

よくある間違い

  • 判別式の向きを誤る(すべての で ⟺ 判別式 。「解をもつ」条件と混線しやすい)。
  • (2)で ()の確認なしに とする。
  • 等号条件(平行のとき、面積0)への言及を落とす。

問2外心を1次結合で表す

最難関編外心連立の設計

問題

三角形 において とし、 とする。外心を とし、 とおくとき、 の値を求めよ。

ヒントを見る

外心の条件を距離の等式のまま2乗して整理してもよい。しかし「P から辺 OA の中点へ下ろした垂線」を内積の式で書くと、ずっと短い条件式にならないか。 の値は何になるべきか。

解答・解説

方針

外心の定義「3頂点から等距離」を直接使うより、「辺 OA の垂直二等分線上 ⟺ OP の OA への正射影が OA の半分」と読み替えると、条件が内積の1次方程式 OP·a=|a|²/2、OP·b=|b|²/2 の2本に言い換えられ、s, t の連立になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 外心の定義は「3頂点から等距離」。だが を2乗して展開するより、幾何で一段よい言い換えがある。

外心は辺 OA の垂直二等分線の上にある。これは「 の 方向への正射影が、ちょうど の半分」ということ。式にすると

辺 OB についても同様で、条件が内積の1次方程式2本に言い換えられる。 を入れれば、 の連立になる。

重要外心の条件は かつ (各辺の垂直二等分線の内積表現)

① 条件を導く。 の両辺を2乗:

より 。同様に 。

② 連立を立てる。 を代入し、 を使うと

③ 解く。 2式の差: より 。代入して 、。

xyOABP
O(0,0), A(2,0), B(3/2, (3√3)/2 に近い位置)の三角形と外心 P。P から各辺の中点への垂線(破線)が垂直二等分線で、その内積表現が連立の式になる

まとめ: 五心のベクトル表示では定義(等距離)をそのまま使うより「垂直二等分線 ⟺ 正射影が半分 ⟺ 内積 」と1次の条件に言い換えれば解ける。重心(平均)・内心(辺の重み)と並べて、外心は「内積の連立」で求まる。求め方の型として整理しておきたい。

発展。 射影条件 、 は、どんな三角形でも通用する外心の連立の型だ。同じ流儀で、垂心は 型、内心は角の二等分の重みつき平均で表せる。五心がすべて「内積・1次結合の方程式」で表せる。ベクトルを使うと、五心をすべて同じ方法で扱える。

答

別解

座標に落とす(機械で確実に)。 と置いてよい。 は と から

外心は垂直二等分線の交点。辺 OA の垂直二等分線は 。辺 OB については を展開して 、成分で 。 を入れて 、つまり 。

最後に を成分で解く: 第2成分から で 、第1成分から で 。内積の連立(本解)は座標を選ばない普遍の道、座標化は「具体的な数で手を動かしたい」ときの確実な道。座標を に合わせて張る自由は、いつでも使ってよい。

ポイント

  • 外心 ⟺ 、。
  • 、 の連立。
  • 。

よくある間違い

  • 外心の条件を式にするときに と を落とす(射影が「半分」であることが垂直二等分線の中身)。
  • を2乗展開して進める(できるが項数が倍。射影条件のほうが1次で軽い)。
  • 外心と重心()や垂心の位置ベクトルを混同する。

問3内積が等しい点は垂心

最難関編垂心内積の変形

問題

三角形 と点 が

を満たすとする。

(1) は三角形 の垂心であることを示せ。

(2) のとき、この条件を満たす点 の座標を求めよ。

ヒントを見る

3つの量が等しい、という条件は「差が0」を2回使うのと同じ。 を共通因数でくくると、どんな垂直が見えるか。

解答・解説

方針

(1) 等式の差をとる: PA·PB−PB·PC=PB·(PA−PC)=PB·CA となり、第1の等号が「PB⊥CA」を言っている。3つの等号から2組の垂直が出て P は垂心。(2)は垂心を座標で: BC が x 軸なので A からの高さは x=0、B からの高さと連立する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 3つの量が等しい、という条件は差をとると使いやすい。第1の等号から

つまり「」であり、等式の差がそのまま垂直を言っている。残りの等号からもう1組の垂直が出て、P は2本の高さの交点、すなわち垂心だ。(2)は具体的な座標で、垂心を高さの交点として計算すればよい。

重要等式の差をとって共通因数でくくる: 。垂心 = 2本の高さの交点(3本目は自動)

① (1) を示す。 第1の等号から

第2の等号から同様に

は「 を通る への垂線」と「 を通る への垂線」の交点、すなわち垂心である(第3の等号は残りの垂直 を与え、整合する)。

② (2) 座標で求める。 は 軸上にあるから、 を通る高さは直線 。 を通り に垂直な高さ: だから方向 の直線 。 より 、。

③ 検算。 :

たしかに3つとも等しい。

xyOABCP
A(0,3), B(−1,0), C(2,0) と垂心 P(0, 2/3)。B からの高さ(破線)は AC に垂直、A からの高さは x=0 で、2本の交点が P

まとめ: 「等しい」は「差が0」と読む。内積の差をくくると垂直が現れる、という変形1つで、見慣れない条件が垂心を表していると分かる。逆に垂心ならこの3内積が等しいことも同じ計算で出る(同値な特徴づけ)。

発展。 3つの内積の共通の値 自体にも意味がある。 は(2)の垂心で計算でき、鋭角三角形なら負になる(垂心から見て各頂点対が鈍角に見える)。また、この等式条件は「P を原点にとると 」とも読める。垂心を原点に選ぶと計算が対称になるので、垂心を基準にした座標の取り方にもつながる。

答

(1) 差をとると など(証明) (2)

別解

(2)を定理なしで解く(差の方程式は1次になる)。 (1)の「垂心」に気づかなくても、(2)は条件式をそのまま連立すれば解ける。 とおくと、3つの内積はどれも の2次式だ。

だが等式の差をとると、共通の の項が相殺して1次方程式に落ちる:

  • から 、
  • から が出る。

2本の1次方程式の連立で となり、本解と同じ答えに着く。

「2次の条件の差は1次(円の根軸と同じ現象)」という構造は、この形の連立でいつも使える省力化だ。もっとも、(1)を経由して「A からの高さは 」と読む本解のほうが計算は軽い。定理は近道、連立は保険として、両方持っておきたい。

ポイント

  • 差をくくって 、。
  • 2本の高さの交点 = 垂心。
  • (2) 、3内積はすべて 。

よくある間違い

  • (1)で3つの等式から3組の垂直をすべて示そうとして冗長になる(2組で垂心は確定。3つ目は自動)。
  • 差をとるときの引き算の向きを混乱し、 を とする(垂直の結論は同じだが、論理の筋は明示する)。
  • (2)で A からの高さが ( 軸)であることを見落とし、3本とも計算して時間を失う(BC が 軸なので高さは垂直)。

問4斜交座標の領域の面積

最難関編1次結合領域と面積

問題

とする。実数 が を満たしながら動くとき、 で定まる点 の動く領域の面積を求めよ。

ヒントを見る

まず 平面で領域がどんな形か描く。次に、基本ベクトル が に置き換わると、面積はどんな倍率で変わるか。単位正方形の行き先を考えるとよい。

解答・解説

方針

(x, y) 平面での |x|+|y|≤1 は頂点 (±1,0),(0,±1) のひし形(面積2)。対応 P=xa+yb はひし形の頂点を ±a, ±b に移し、領域は平行四辺形2枚分に。面積の倍率は基本の平行四辺形(a, b の張る面積 |det|=5)で測れて、2×5=10。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 平面では、 は頂点 のひし形(面積2)だ。

対応 は、、 という1次変換。直線は直線に、ひし形はひし形の像(平行四辺形)に移る。1次変換は面積を一律に 倍する。基本の正方形が の張る平行四辺形(面積 )に移るから、答えは 。「形は変わるが、面積の倍率は一定」が決め手だ。

重要 の対応で、 平面の図形の面積は 倍される(単位正方形 → の平行四辺形)

① もとの領域。 は4直線 で囲まれた正方形(ひし形)で、面積は対角線 から 。

② 像の形。 1次の対応だから、頂点 はそれぞれ 、すなわち に移り、辺は辺に移る。したがって像はこの4点を頂点とする平行四辺形である。

xyOab
像の領域: 頂点 ±a=±(2,1), ±b=±(1,3) の平行四辺形(面積10)。矢印は a(赤)と b(青)で、ひし形の4頂点の行き先を示す

③ 面積。 倍率は 。よって

(検算: 頂点 の平行四辺形の面積を対角線や成分で直接計算しても10になる。)

まとめ: は「 を目盛りにした斜交座標」である。領域の形は 平面で読み、面積は倍率 で運ぶ、と役割を分けて考える。1次変換の面積比の考え方を、ベクトルの言葉だけで先取りする問題だ。

発展。 「1次変換は面積を 倍する」は、円を楕円に移して面積 を出す(数C・曲線)、積分の置換(ヤコビアン)など、これから何度も再会する原理だ。 のとき(像がつぶれるとき)面積が0になることも、平行判定 と同じ式で説明がつく。

答

別解

像の対角線で直接測る(変換の一般論を使わない)。 ひし形の頂点 の行き先は 。1次の対応は直線を直線に移すから、P の動く領域は4点 を順に結んだ四角形だ。

この四角形は、対角線が ( から まで)と で、どちらも中点 O で交わる。対角線が互いに他を二等分する四角形は平行四辺形だ。対角線 の四角形の面積は で

「1次変換は面積を 倍する」(本解)を天下りに使わず、像の四角形を特定して対角線公式で測った。答えの の「=ひし形の面積、=単位正方形の像の面積」という分解も、この絵で腑に落ちる。

ポイント

  • 平面ではひし形、面積2。
  • 対応の面積倍率は 。
  • 。

よくある間違い

  • 平面の領域の面積(ひし形 )をそのまま答えにする(P のある平面に移すときの倍率 を忘れる)。
  • の計算 の符号・順序を誤る(面積には絶対値)。
  • 像の四角形を「ひし形のまま」と思い込む(直角は保たれない。平行四辺形になる)。

問5内積が一定な点の軌跡

最難関編ベクトル方程式軌跡

問題

2点 に対し、 を満たす点 の軌跡を求めよ。

ヒントを見る

と の2つの終点 A, B のちょうど真ん中の点を仲介させると、この2つのベクトルは「共通部分 ± 半分のずれ」の形に書ける。すると内積はどんな形にまとまるか。

解答・解説

方針

PA と PB を、中点 M(ここでは原点)からのベクトルで書き直す。PA=MA−MP, PB=MB−MP で MA=−MB だから、積は |MP|²−|MA|² と「和と差の積」にまとまる。内積一定 ⟺ 中点からの距離一定 = 円。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 2定点 A, B が対等に現れる式は、中点 M を間に入れると、対称性を最大限に使える。

、 で、。積は「和と差の積」にまとまって

内積が一定 ⟺ 中点からの距離が一定 ⟺ 円。式を見た瞬間に、答えの形(中点中心の円)まで見通せる。

重要( は の中点)。中点を仲介して和と差の積に直す

① 中点を仲介する。 の中点は原点 。 だから

② 条件を書き直す。

③ 軌跡。 原点(= の中点)を中心とする半径3の円

xyOABP
軌跡は AB の中点(原点)を中心とする半径3の円。P が円上のどこでも PA·PB = 9−4 = 5

まとめ: 「2定点向きの内積は中点で開く」。 のときが直径 の円(直角=タレスの円)で、本問はその一般化( で半径が に膨らむ)である。値の符号と の下限( で円が存在)まで見えれば完全だ。

発展。 一般に の軌跡は、中点 M 中心・半径 の円( のとき)。特に は直径 AB の円(タレスの円)で、図形と方程式で学んだ「直角に見込む点の軌跡」がこの式の特別な場合だったと分かる。

答

円 (中心は線分 の中点、半径3)

別解

座標で2行(苦手な人の最短路)。 とおいて成分計算してしまえば、置き換えの工夫は要らない。

条件 より

中心が原点(= AB の中点)、半径3の円。2行で終わる。

本解の中点分解 は、この計算がなぜこんなに軽いのかの理由でもある( が 、 が )。座標で答えを出し、ベクトルで構造を説明する。2つの表し方を往復すると、どんな配置(A,B が斜めでも)に対しても手が動くようになる。

ポイント

  • 中点仲介で にまとめる。
  • 。
  • 円 ( ならタレスの円)。

よくある間違い

  • を の向きで書いてしまう(P から A へ、なので 。内積の値は両方逆にすれば同じだが、混ぜると符号を間違える)。
  • 内積 から「P は AB の外側」のような余計な思い込みで場合分けを始める(式は全平面でまとめて処理できる)。
  • 答えを「円」とだけ書き、中心(中点)と半径()を明示しない。

問6和と差の大きさから積の範囲へ

最難関編内積とりうる値の範囲

問題

平面上のベクトル が を満たす。

(1) と の値を求めよ。

(2) のとりうる値の範囲を求めよ。

ヒントを見る

と を展開して、足す・引くをすると何が取り出せるか。(2)では、積 を上から押さえる不等式と下から押さえる不等式が、(1)の2つの値からそれぞれ1本ずつ出る。

解答・解説

方針

(1)は2乗の差と和(平行四辺形の法則)。(2)は p=|a||b| に2つの制約がかかる。コーシー・シュワルツ |a·b|≤p から下限、相加相乗 2p≤|a|²+|b|² から上限。両端が実現することの確認まで書いて完答。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) と の情報は、2乗して初めて使える形になる。どちらも展開すれば

差をとれば が、和をとれば が単独で取り出せる(平行四辺形の法則)。(2)は に2つの制約が両側からかかる。コーシー・シュワルツ が下から、相加相乗 が上から。両端が実現することの確認までがワンセットだ。

公式。(CS)、(相加相乗)

① (1) 足し引きで取り出す。 、。差の で

和の で

② (2) 両側から挟む。 とおく。コーシー・シュワルツより 。相加相乗( に適用)より 、すなわち 。

③ 端の実現を確かめる。 : 等号は (同じ向き)のときで、 とすると 、。: 等号は のときで、このとき で実現できる(なす角が実在する)。よって

まとめ: 和と差の大きさは、内積と平方和を別の形で書いたものだ。足し引きでほどくのが第一手。範囲問題では、上限と下限が別々の不等式から来ることを見抜き、端の実現(等号条件が両立するか)まで確かめて初めて範囲と言い切れる。

発展。 (1)の2式を足した は中線定理そのもの(平行四辺形の対角線の平方和=4辺の平方和)。ベクトルの展開1行が幾何の定理と同じ内容になっている。「2乗して展開」からは中線定理も余弦定理も出てくる。

答

(1) (2)

別解

和と積の2数として見る(解と係数の関係)。 とおくと、(1)から

つまり は2次方程式 の2つの実数解(しかも正)だ。実数解の条件は判別式

これが上限。下限はコーシー・シュワルツ (本解と同じ)。このルートの御利益は、両端の実現例が判別式から自動で出ること。 は重解 、つまり のとき。 は から 、つまり で (たとえば が実際に を満たす)。

大きさの2乗たちを和と積で管理する。対称式の目で見ると、範囲と実現例が同じ計算から出てくる。

ポイント

  • 足し引きで 、。
  • CSで 、相加相乗で 。
  • 両端とも実現例あり → 。

よくある間違い

  • (2)で上限だけ()や下限だけ()を出して満足する(範囲は両側+実現の確認)。
  • コーシー・シュワルツの等号(平行)と相加相乗の等号()を取り違える。
  • の展開で交差項の係数2を落とす。

問7単位円上の3点の和が零ベクトルなら正三角形

最難関編対称性内積の計算

問題

原点 を中心とする半径1の円周上に3点 があり、

を満たすとする。三角形 は正三角形であることを示せ。

ヒントを見る

1本のベクトルを残り2本で表して、大きさの2乗をとる。すると単位ベクトルどうしの内積が1つ決まる。同じことを3回やれば、3辺の長さは内積からすべて計算できる。

解答・解説

方針

条件から OC=−(OA+OB) を作り、両辺の大きさを2乗すると OA·OB=−1/2 が出る。対称性から他の2組の内積も −1/2 で、辺の長さはすべて |AB|²=2−2(−1/2)=3 となり、3辺が等しい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 和の条件は、1本を孤立させると使える形になる: 。

両辺の大きさを2乗すると、 と から が出る。対称性から、どの2本の内積も 。すると辺の長さはすべて で等しく、正三角形だ。

重要移項して2乗: が内積を1つ決める。単位ベクトルどうしなら

① 内積を求める。 の両辺の大きさを2乗:

② 対称性で3組とも。 条件は について対称だから、同じ計算で

③ 辺の長さを計算する。

他の2辺も同様に 。3辺がすべて で等しいから、三角形 は正三角形である(なす角はどの2本も で なので、3本が円を三等分している)。

xyOOAOBOC
和が零ベクトルになる単位円上の3点。3本のベクトルは互いに120°をなし、円を三等分する。三角形は正三角形(1辺 √3)

まとめ: 「和が 」は移項して2乗で内積の式に直す。対称な条件は1回計算すれば全組に写る。この事実は「重心が外心に一致する三角形は正三角形」の言い換えでもあり、円に内接する正三角形の対称性そのものだ。

発展。 単位円上の 点で和が になる配置は、 では正三角形に限るが、 では正方形以外にも無数にある(向かい合う2組の直径など)。「和が0=重心が中心」は必要条件としては常に働くが、正多角形になると決まるのは のときだけだ。3点の配置は自由度が少ないことが、この問題の背景にある。

答

証明(和の条件から など、すべての辺が )

別解

重心と外心が一致する、と読む(計算のない証明)。 条件 は、割る3をすれば「三角形 ABC の重心が O」と言っている。一方、O は円の中心だから、3頂点から等距離にある。つまり O は外心でもある。

重心と外心が一致したとする。頂点 A から重心への中線はBC の中点 M を通る。外心から BC の中点への線分は BC と垂直(垂直二等分線)。両者が同じ直線なのだから、中線 AM が BC の垂直二等分線になる。よって 。同様に他の辺についても等しく、3辺がすべて等しい正三角形になる。

内積の計算(本解)は値(、辺 )まで出せる定量の道、五心の一致(本ルート)は「なぜ正三角形しかありえないか」を一言で言い切る定性の道。「重心=外心 ⟺ 正三角形」は覚えておく価値のある特徴づけだ。

ポイント

  • 移項して2乗で 。
  • 対称性で3組とも (なす角120°)。
  • 全辺 → 正三角形。

よくある間違い

  • を2乗するとき、 を代入し忘れて文字が残る。
  • 1組の内積 だけで「正三角形」と結論する(3辺すべてが等しいことを、対称性の一言とともに言う)。
  • 「なす角がすべて 」で止めて、辺の長さ()への書き直しを書かない(問題の要求に合わせて締める)。

問8直線上の点への距離の平方和の最小

最難関編中線定理最小化

問題

2点 と、 軸上を動く点 に対し、 の最小値と、そのときの の座標を求めよ。

ヒントを見る

2つの距離の平方の和について、真ん中の点を持ち出すと1つの距離に束ねられる定理があった。束ねたあと、動くのは何で、最小はどこで起きるか。

解答・解説

方針

PA²+PB² は中点 M を仲介すると 2PM²+AB²/2 に変わる(中線定理)。AB²/2 は定数なので、最小化は「PM の最小化」= M から x 軸への垂線の足、に置き換わる。座標で置いて平方完成しても同じ答えに着地する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) という対称な量は、中点 M を仲介すると構造が見える。中線定理で

は定数。だから最小化の相手は だけ、つまり「 軸上の点 P と定点 M の距離の最小化」に置き換わる。答えは M から 軸に下ろした垂線の足。2点への距離の平方和が1点への距離で表せる。この言いかえが決め手だ。

定理中線定理: ( は の中点)

① 中線定理で束ねる。 は の中点 、。よって

② を最小化する。 は 軸上を動くから、 が最小になるのは から 軸へ下ろした垂線の足 のとき。最小値は 。

③ 最小値。

(検算: で直接計算すると 、、和は 。座標のまま平方完成しても で最小 になる。)

xyOABMP
A(0,2), B(4,4) の中点 M(2,3)。x軸上の P への距離の平方和は 2PM²+10 に束ねられ、最小は M の真下 P(2,0)

まとめ: 「平方和は中点で束ねる」。中線定理を計算道具として使うと、2点への最小化が1点への最小化(=垂線の足)に帰着する。恒等式は証明のためだけでなく、問題を別の形に移す道具として使える。

発展。 点の数を増やしても同じ構造が働く。 点 への距離の平方和は、重心 G を使って と分解でき、直線上での最小化は「重心の射影」で決まる。本問の M は2点の重心にほかならない。統計の「偏差平方和は平均のまわりで最小」と同じ式が、幾何では重心の言葉で現れる。

答

最小値 ( のとき)

別解

座標で平方完成(構造を知らなくても届く)。 とおいて直接計算する。

で最小値 。。3行で終わる。

中線定理(本解)からは、この平方完成の「」が の変動部分であり、「」の内訳が ( までの最短距離の2乗の2倍+)であることが分かる。

最小点 がA, B の中点 の真下(= 軸への正射影)である、という図形の答えを先に予想してから計算で確かめる、という順番でも戦える。

ポイント

  • 中線定理で 。
  • 最小は垂線の足 、。
  • 最小値 (直接計算・平方完成とも一致)。

よくある間違い

  • 中線定理の定数項 を とする(2で割るのを忘れる)。
  • 最小点を「A, B の中点そのもの」と誤る(P は 軸上の制約つき。中点の射影が答え)。
  • 平方完成 の定数項の検算( 代入)を飛ばす。