数学III / 微分法の応用

微分法の応用 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 接線の方程式(指数関数)
  2. 接線の方程式(対数関数)
  3. 接線の方程式(三角関数)
  4. 極値(x e^{-x})
  5. 極値(x + 1/x)
  6. 変曲点
  7. 最大・最小(x e^{-x})
  8. 凹凸の判定
  9. 速度と加速度
  10. 接線の傾き(微分係数)
  11. 極値(log x / x)
  12. 平均値の定理

問1接線の方程式(指数関数)

★ 基礎接線

問題

曲線 上の点 における接線の方程式を求めよ。

ヒントを見る

傾きは微分係数から。 は微分しても形が変わらないという性質を使えば、 での傾きはすぐ分かる。あとは点と傾きで直線を書く。

解答・解説

方針

接線の傾きはその点での微分係数。 なので での傾きは 。点 を通る直線を作る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 接線を求める手順は、いつも同じ 段階だ。

① 傾きを出す(傾きは微分係数に等しい)

② 傾きと通る点から、直線の式を書く

この問題では、点 での傾きが要る。

傾き 、つまり の直線だ。そして、点 を通る。

関数が に変わっても、 でも でも、接線の作り方は変わらない。数IIで身につけた「微分係数を傾きにして、点を通す」という 手が、そのまま使える。

公式接線

① 傾きを求める。 なので 。

② 点 を通る直線を作る。

xyO(0,1)
y=e^x と点(0,1)での接線 y=x+1

まとめ:数III でも接線の作り方は同じ。「傾き 、通る点 」。 の微分が なので、 での傾きは 。 は の原点付近での近似にもなっている。

発展。 接線は 次の近似だった。では、もっと精度を上げるには?

次の項を足せばいい。

次なら

この調子で、無限に続けると

マクローリン展開(テイラー展開)という。 という超越的な関数が、 のべき( 次、 次、 次 )の無限和で書けてしまった。

係数の分母は階乗だ。 なぜか。 回微分したときの値が、係数を決めるからである。

は何回微分しても で、 での値は常に 。 だから 。 を代入すると、 の値を表す式が得られる。

を計算する、いちばん実用的な方法だ。 項も足せば、小数点以下 桁が合う。同じことが と にもできる。

そして、 も同じように級数で書いてみる。

、、 を使って整理すると

オイラーの公式が級数から導けた。

指数関数と三角関数は、まったく別物に見える。 だが、べき級数の形で書くと、同じ家族だったことが分かる。

そして、コンピュータが や を計算する方法も、これだ。 内部ではこの級数を有限項で打ち切って足している。「接線 次近似」という考えを進めていくと、関数を級数で表す方法にたどり着く。

答

別解

接線を「最良の 次近似」として読む。

答えの が、何を意味するのかを考える別解である。

接点のごく近くでは、曲線と接線はほとんど重なっている。つまり、 が に近いとき

この近似がどれくらい正確か。数値で見てみよう。

誤差は 。

誤差は 。

を にすると、誤差は になった。

誤差が の 乗のオーダーで小さくなる。 これが「接線が最良の 次近似である」ことの意味だ。

次近似の一般形。

この右辺は接線の式そのものだ。実用的な近似公式が次々に出てくる。

すべて、 での接線である。

を暗算してみよう。

実際は なので、小数第 位まで合っている。もう つ、この接線には重要な性質がある。 のグラフは接線 の常に上にある。

等号は のときだけ。

なぜか。 は下に凸(常に )だからだ。下に凸な関数はどの接線よりも上にある。

この不等式は意外なところで役に立つ。

を入れると となるが、これは当たり前の式だ。 に を入れると

の基本不等式が出てきた。

本の接線から、 つの重要な不等式が生まれる。接線は単に「曲線に触れる直線」ではなく、曲線を近似したり、曲線を上下から押さえたりするのにも使える道具だ。

ポイント

  • 接線の傾き 。
  • 、。

よくある間違い

  • 接線の式で を足し忘れ、 としてしまう。接線は必ず接点 を通る
  • を と計算してしまう。どんな数の 乗も で、
  • 接点の座標を代入せず、 のまま傾きにしてしまう。傾きは という数値

問2接線の方程式(対数関数)

★ 基礎接線

問題

曲線 上の点 における接線の方程式を求めよ。

ヒントを見る

の導関数に を入れて傾きを出す。通る点は問題文にある。

解答・解説

方針

傾きは の での値、。点 を通る直線を作る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 関数が に変わっても、手順はまったく同じだ。

① 傾き(微分係数)を出す。

傾きは 。

② 点 を通る直線を書く。

接線が求まった。

ここで、 つ気づいてほしい。

前問( の接線)の答えは だった。 今回は 。

傾きはどちらも 。 定数だけが と で逆になっている。

これは偶然だろうか。 その答えは別解で明かされる。

公式接線 、

① 傾きを求める。 なので 。

② 点 を通る直線を作る。

xyO(1,0)
y=log x と点(1,0)での接線 y=x−1

まとめ: の での傾きは 。接線 は の 付近での近似になる。 の接線 と について対称なのは、両者が逆関数だからだ。

発展。 接線から得られた不等式

は、見た目よりずっと多くの場面で使える。

まず、形を変えてみよう。 を に置き換える()。

下からの評価も手に入った。

が つの簡単な式で挟まれた。この挟み込みがいろいろな極限を証明する。そして、この不等式の応用のなかで、もっとも有名なのは相加平均・相乗平均の不等式の証明だ。

個の正の数 について

証明の流れ。 相加平均を とおき、 を に入れる。

から まで、すべて足す。

左辺は対数の性質でまとめられる。

両辺の 乗根をとって

証明できた。

変数の相加相乗()は中学レベルの変形で示せるが、 変数となると、とたんに難しくなる。その難問が「」という接線の不等式 本で片づいた。

しかも、等号成立条件まで自動的に出る。 の等号は のときだけだから、すべての 、つまり のとき。接線という、素朴な図形的対象。

そこから引き出された不等式が、 変数の不等式を証明する。「接線は曲線を押さえる」という 行の幾何的事実を使って、代数の難しい不等式が証明できた。

答

別解

微分せずに、鏡に映して求める。 と は互いに逆関数だ。逆関数のグラフは直線 に関して対称になる。

つまり、 のグラフは のグラフを で折り返したものである。

折り返しの規則。

座標と 座標を入れかえるだけ。

接点を折り返す。

の接点は だった。 入れかえると となり、この問題の接点と一致する。

接線も折り返す。

の接線は だった。 この直線上の点を、片端から入れかえてみよう。

折り返した 点 、、 は、どんな直線に乗るか。

すべて を満たす。

点とも、確かに満たしている。微分を 回もせずに、接線 が求まった

なぜ、これでよいのか。

「折り返し」は図形をそのまま移す操作だ。 曲線と接線が触れていたなら、折り返した後も触れている。

接するという関係は鏡に映しても壊れない。傾きについても確かめておこう。

の傾きは 。折り返すと、傾きは逆数になる()。たまたま だったので、変わらなかった。

もし の接線の傾きが なら、 側では になる。 これが「逆関数の微分は逆数」ということだ。この見方から分かること。

を、 で折り返すと

不等号の向きがひっくり返る。上に凸(下に凸)も折り返しで入れかわるのだ。

は下に凸で、接線の上にある。 は上に凸で、接線の下にある。 折り返すと、凸の向きも接線との上下も入れかわる。

つの計算で、 つの関数が同時に分かる。 逆関数の対称性を使うと、それだけ手間が省ける。

ポイント

  • 接線の傾き 。
  • 、。

よくある間違い

  • の計算で、 と混同して傾きを にしてしまう。傾きは導関数 の値
  • 接点 の 座標が なので、 を書かずに としてしまう。 の が落ちる
  • の定義域()を無視して、 の範囲でもグラフを考えてしまう

問3接線の方程式(三角関数)

★ 基礎接線

問題

曲線 上の原点 における接線の方程式を求めよ。

ヒントを見る

原点での傾きを微分係数で求める。この接線は数IIIの基本極限( の行き先)と深く関係している。

解答・解説

方針

傾きは の での値、。原点を通り傾き の直線。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 手順は変わらない。傾きを出して、点を通す。

傾きは 。原点を通る。

答えはごく単純な形になった。

だが、この結果には見覚えがあるはずだ。

この基本極限は「原点の近くで 」という意味だった。今、それが「原点での接線が 」という形で、幾何的に確認された。 つは、同じ事実の言い換えである。

  • 極限の言葉:
  • 接線の言葉: 原点での接線は

計算と図形が、 点でつながっている。 計算の結果と図の形が、ここで一致する。

公式接線 、

① 傾きを求める。 なので 。

② 原点を通る直線を作る。

xyO
y=sin x と原点での接線 y=x

まとめ: の原点での傾きは 。接線は 。これは基本極限 ( で )と同じことを言っている。原点付近で と がほぼ重なる。

発展。 接線 は の 次近似だった。もっと精度を上げよう。

次の項を足すと、精度が跳ね上がる。

で比べてみよう(真の値は )。

  • 次近似 → 誤差
  • 次近似 → 誤差

誤差が 分の に減った。さらに項を足すと

奇数次の項だけが現れ、符号が交互に変わる。

なぜ奇数次だけか。

は奇関数()だからだ。 偶数次の項(、)があると、対称性が壊れてしまう。 は偶関数なので、偶数次だけが現れる。

関数の対称性がそのまま級数の形に刻まれている。この級数は実用上とても重要だ。コンピュータは をどう計算しているのか。

三角比の表を持っているわけではなく、この級数を必要な精度まで足し上げているのだ。 が小さければ、数項で十分な精度が出る。

が大きいときは? 周期性()を使って、まず を の近くに引き寄せる。それから級数を使う。

「近似は、 の近くでいちばん精度がよい。だから の近くに持ち込む。」これが数値計算の基本戦略である。

そして、この級数からは思わぬ結果も導ける。両辺を で割ると

とすると、右辺は 。

基本極限が級数からすぐに出た。

はさみうちの証明が要らない。 級数の形で書けると、このような極限は式を見るだけで分かる。「接線 = 次近似」から始まった話が、無限級数を経て、また基本極限に戻ってきた。

数学はこうして円環をなす。

答

別解

微分の公式を使わず、定義の極限から直接、傾きを出す。微分係数の定義に、正面から戻ってみよう。

だから

この極限は である(三角関数の基本極限)。

傾きが 、原点を通るので、接線は

という公式を、 度も使っていない。なぜ、これが意味をもつのか。そもそも、 という公式は、 から導かれたものだった。

つまり、順序としてはこうだ。

この別解は途中を飛ばして、いちばん根っこから直接、接線を出したことになる。そして、いま「接線が 」ということの図形的な意味を確認しよう。 のグラフは原点で の傾きをもつ。

単位円で考えると、こうだ。 角 (弧度法)は弧の長さ、 は縦の高さ。角が小さいとき、弧はほとんど直線に見え、その高さは弧の長さとほぼ同じ。

という接線はこのことを表している。

数値で確かめよう。

に対して、誤差は 。

誤差は 。

誤差は に比例して小さくなる(実際 )。

なら となり、上の誤差と一致する

この近似 は物理でよく使われる。

振り子、バネ、弦の振動、光の回折などでは、どれも「角度が小さい」という仮定のもとで、 を に置き換えて、方程式を解いている。

この置き換えができるのは、原点での接線が だからだ。接線 本が物理学の計算を可能にしている。

ポイント

  • 接線の傾き 。
  • の原点での接線は 。

よくある間違い

  • を と計算してしまう。、 で、値が入れかわりやすい
  • 接線 を「」と読み違える。等しいのは原点付近での近似で、 が大きければ大きくずれる
  • を度数法で考えてしまう。度数法では傾きが になり、接線は にならない

問4極値(x e^{-x})

★ 基礎極値

問題

関数 の極値を求めよ。

ヒントを見る

積の規則で微分し、共通因数でくくる。指数関数の部分は常に正なので、符号の変化を決めるのは残りの因数だけだ。増減表で極大か極小かを判定しよう。

解答・解説

方針

を積の微分で求め、 を解く。 なので、符号は残りの因数で決まる。符号変化から極大・極小を判定する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 極値を求める手順は、 段階だ。

① を計算する → ② を解く → ③ 前後の符号を調べる

この関数は積の形( と )なので、積の微分を使う。

ここで、大事な観察がある。

指数関数は決して にも負にもならない。だから の符号は だけで決まる。

  • のとき なので、 で増加
  • のとき なので、 で減少

増加から減少へ切り替わる が極大点だ。「常に正の因数は、符号判定から外す」ことが、指数を含む関数を扱うときのいちばんのコツである。

公式積の微分。 なので符号は残りの因数で決まる

① を求める。 積の微分。。

② を解く。 なので 、。

③ 符号を調べる。 は で正、 で負。正→負 なので で極大。

xyO極大(1,1/e)
y=xe^{-x}。極大(1, 1/e≈0.37)、x→∞で0に近づく

まとめ: はつねに正なので、 の符号は残りの だけで決まる。 で正→負に変わり極大。値は 。指数がつく関数の極値の典型だ。

発展。 という関数は、自然現象のなかによく現れる。

その理由は「増加と減衰の積」という構造にある。

例 : 薬の血中濃度。

薬を飲むと、まず腸から吸収されて濃度が上がる。 同時に、肝臓で分解され、腎臓から排出されて濃度が下がる。吸収(増加)と代謝(減衰)の綱引き。

濃度のグラフは の形になる。 飲んでしばらくで濃度がピークを迎え、その後ゆっくり減っていく。「食後 分で効き始め、 時間後にピーク」というときの、この曲線の頂点が極大値だ。

薬の投与間隔はこの関数から設計されている。例 : 放射性物質の連鎖崩壊。親核種 が崩壊して娘核種 になり、 もまた崩壊する。

の量は からの供給(増加)と、自身の崩壊(減衰)のバランスで決まる。やはり の形になり、ある時刻でピークを迎える。例 : 待ち行列・故障率。

製品の故障率もこの形をとることがある(初期不良で増え、その後は安定して減る)。なぜ、これほど普遍的なのか。「何かが供給され、同時に一定の割合で失われていく」という状況が、身の回りに多くあるからだ。

失われる分が現在量に比例する()なら、指数的減衰が生まれる。この構造は微分方程式で書ける。

そして、この解に が現れる。極大値 という数も、示唆的だ。、つまり「時定数」と呼ばれる特徴的な時間で、ピークを迎える。

という数は工学のあちこちに出てくる。 「 充電されるまでの時間」や「信号が に減衰するまでの時間」は、どれも が基準になっている。 の極大値を求める、という教科書の問題。

その答えの は薬の濃度の変化を表す簡単なモデルでも、濃度が最大になるときの値として現れる。

答

極大値 ()

別解

この関数の「性格」を、 つの力のせめぎ合いとして読む。 は、 つの部分の積だ。

  • :どこまでも大きくなろうとする(増加の力)
  • :急速に に向かう(減衰の力)

つの力が綱引きをしている。

が小さいうちは、増加の力が勝つ。 が から に増えると、 自体は 倍から 倍へ大きくなるが、 の減り方はまだ緩やかだ。

が大きくなると、減衰の力が圧勝する。 指数関数の減り方は 次関数の増え方よりはるかに速いからだ。どこかで、力関係が逆転する。それが極大点だ。

数値で見てみよう。

を頂点として、上がって、下がる。そして、 では

に収束する。指数の減衰が完全に勝つ。さて、極大点を「対数微分法」で求めてみよう。

両辺の対数をとる( の範囲で)。

掛け算が足し算になった。

両辺を微分する。

となるのは、 のもとで のとき。

極値の候補が、あっさり出た

極大値は

本解と同じ

対数微分法の利点。

積の微分をしなくて済む。 が掛け算を足し算に変えてくれるので、微分が単純な引き算になる。そして、 という形が便利だ。

の範囲では、 の符号は の符号と一致する。

符号の判定まで、そのままできる。「掛け算の関数は、対数をとって足し算にする」という方法は、微分でも符号判定でも役に立つ。

ポイント

  • → 符号は残りの因数で決まる。
  • 正→負 で極大。極大値 。

よくある間違い

  • の微分を としてしまい、マイナスを落とす。内側 の微分は なので
  • を解くとき、 という解も探してしまう。指数関数は決して にならない
  • となる を見つけて、それだけで「極大」と決めつける。前後の符号変化(増加 → 減少)を確認して初めて極大と言える

問5極値(x + 1/x)

★ 基礎極値

問題

関数 ()の極値を求めよ。

ヒントを見る

微分して の を探す。定義域が であることを忘れずに候補を絞る。符号の変化で極大・極小を見きわめる。

解答・解説

方針

。 を解くと ()。符号変化を調べて極小と分かる。相加相乗平均でも最小値 が確かめられる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) ()は、 つの相反する項の和だ。

  • : が大きいほど大きい
  • : が小さいほど大きい

両方を小さくすることはできない。 を小さくすれば が暴れ、 を大きくすれば 自身が暴れる。「どこかに、いちばん得なバランス点がある」と予想できる。

微分で見つけよう。

の前後で符号を調べると、負から正へ変わるので、極小だ。

この という値には、微分を使わない別の導き方がある。 別解で見よう。

公式

① を求める。

② を解く。 、 より 。

③ 符号を調べる。 で 、 で 。負→正 なので で極小。

xyO極小(1,2)
y=x+1/x(x>0)。極小(1,2)、漸近線 x=0 と y=x

まとめ:()は で極小値 。相加相乗平均 (等号 )からも同じ最小値が出る。微分と不等式、 つの見方でつながる。

発展。 のグラフを、全体として見てみる。

では を底とする「谷」の形。 最小値は 。

では? 奇関数()だから、原点対称の「山」になる。最大値は ()。

そして、この関数には 本の漸近線がある。

① のとき、 が暴れる → 軸()が漸近線

② のとき、 → に近づく

本目に注目する。 縦でも横でもなく、斜めの漸近線だ。

遠くから見ると、この曲線は直線 にぴったり寄り添っている。斜め漸近線を見つける手順。

となる直線 を探す。

この関数なら

斜め漸近線は

グラフの全体像がこれで完成する。

  • : 軸に沿って上から降りてきて、 で底を打ち、 に沿って昇っていく
  • : 原点対称の形

本の漸近線に挟まれた、 つの枝。 双曲線に似た姿だ。この形は、実は双曲線そのものである。

次曲線の方程式だ。 判別式( の項があるので回転している)を調べると、双曲線と分かる。「」という素朴な式が、傾いた双曲線を描いていた。

そして、この関数は物理にも出てくる。

電気回路のインピーダンス、レンズの公式()、てこの原理のように、「足すと 型が現れる」構造は、あちこちにある。

最小値 という結果は、「バランスが取れているときが最も効率がよい」ことを意味する。

極端に偏った状態より、 つが釣り合った状態のほうが得である。相加相乗の不等式が表しているのは、このことだ。

答

極小値 ()

別解

微分を使わずに、相加平均・相乗平均の不等式で解く。 つの正の数 、 について、こんな不等式が成り立つ。

「足して で割った値(相加平均)は、掛けて した値(相乗平均)以上」この不等式を、、 に使う。( なので、。 つとも正だから、不等式が使える。)

根号の中を見てほしい。

約分されて、 になる。 ここが、この不等式が使える理由だ。

最小値は 以上と分かった。等号が成り立つのは、 のとき、つまり

で、確かに になる。

最小値 () 微分を 度も使っていない。なぜ、相加相乗が使えたのか。「掛けると定数になる 数の和」だったからだ。

積が一定なら、和は 以上。 等号は つが等しいとき。この構造を見抜けるかどうかが、解けるかどうかの分かれ目だ。

同じ構造の問題を、いくつか見ておこう。

「積が定数になるペア」を見つけたら、相加相乗。ただし、注意点もある。 で、 のときは?

相加相乗は正の数にしか使えない。 では使えない。

このとき、実は になる(最大値 )。符号がひっくり返る。

「」という条件が問題文にあった理由が、これである。微分なら、条件を忘れても増減表で分かる。相加相乗は速いが、適用条件に注意が要る。

速さと安全性。 つの道具を、場面で使い分けたい。

ポイント

  • 。負→正 で極小。
  • 相加相乗平均でも最小値 。

よくある間違い

  • のマイナスを落とす。 の微分は
  • から を出したあと、条件 を確認せず も答えに入れてしまう
  • 相加相乗を使うとき、 の条件を確かめない。負の数には使えず、実際 では最大値 になる

問6変曲点

★ 基礎変曲点凹凸

問題

関数 の変曲点を求めよ。

ヒントを見る

変曲点は凹凸が入れかわる点なので、第 次導関数の符号が変わる場所を探す。 を解くだけでなく、符号が本当に入れかわるかの確認まで。

解答・解説

方針

変曲点は「凹凸が入れかわる点」で、第 次導関数 が になり、その前後で符号が変わる点。 を解いて確認する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 変曲点とは、グラフの「曲がり方」が入れ替わる点だ。

「曲がり方」とは何か。

  • 下に凸(お椀の形):接線がグラフの下にある
  • 上に凸(山の形):接線がグラフの上にある

この つが切り替わる境目が、変曲点である。 階と 階の導関数で、役割分担がある。

  • :増減(上がっているか、下がっているか)
  • :凹凸(どちらに曲がっているか)

変曲点を探すには、 を見る。

注意。 だけでは足りない。前後で の符号が変わることまで確かめる。

変わっている。 よって が変曲点だ。

定理変曲点: となり、その前後で の符号(凹凸)が変わる点

① を求める。 、。

② を解く。 、。

③ 符号の変化を確認する。 は で負(上に凸)、 で正(下に凸)。符号が変わるので は変曲点。。

xyO変曲点(0,0)
y=x³−3x の変曲点(0,0)。ここで凹凸が変わる

まとめ:変曲点は「グラフの曲がり方(凹凸)が切りかわる点」。 の符号で凹凸が決まり( で下に凸、 で上に凸)、それが変わる所が変曲点。 だけでなく、前後で符号が変わることまで確認する。

発展。 「 だが、変曲点ではない」という点は存在するだろうか。

存在する。

を考えよう。

となるのは 。

だが、 の符号は?

どちらも正。符号が変わらない。

つまり、 の前後で、どちらも下に凸のまま。 曲がり方は入れ替わっていない。 は変曲点ではない。

グラフを見れば当然だ。 は原点を底とするお椀の形。ずっと下に凸で、曲がり方が変わる場所はない。

教訓。

「」を解いたら、必ず前後の符号を調べる。この構造は極値の判定とまったく同じである。

で確かめよう。 は で になる。

だが は前後で正のまま()。増加が続いているだけで、極値ではない。

グラフは原点で1点だけ水平になるが、そのまま登り続ける。(「停留点」と呼ばれる。) つの注意点が、きれいに対応している。

どちらも「 になっただけでは足りない。符号が変わってこそ意味がある」という話だ。なぜ、こんなことが起こるのか。

微分から分かるのは「その瞬間」の情報だけだからだ。

は「 で瞬間的に水平」と言っているだけ。 その前後がどうなっているかは、別に調べる必要がある。「点の情報」から「区間の性質」を結論するには、必ず追加の確認が要る。

この慎重さが微分を正しく使うということである。そして、変曲点には つ、覚えておきたい性質がある。変曲点では、接線がグラフを「貫く」。

普通の点では、接線はグラフの片側(上か下)にある。 だが変曲点では、接線が曲線を横切る。

の変曲点 での接線は 。

この直線は原点でグラフを貫通している。左では曲線の上、右では下を通る。「凹凸が入れ替わる」ことの、いちばん目に見える現れである。

答

変曲点

別解

微分せずに、対称性から変曲点を当てる。この関数をよく見てほしい。

を に置き換えると?

奇関数である。

奇関数のグラフは原点に関して点対称だ。

具体的に確かめよう。

と は原点をはさんでちょうど反対側にある。

と も、やはり点対称の位置にある。

ここからが本題だ。

点対称なグラフでは対称の中心のまわりで、曲がり方が反転する。右側で下に凸なら、左側は( 回すのだから)上に凸になる。だから、対称の中心がそのまま変曲点になる。

この関数の対称の中心は原点 。

微分せずに、答えが出た

この見方は、 次関数の一般論につながる。すべての 次関数は変曲点に関して点対称である。 の変曲点は

この点を中心に、グラフは 回転対称になっている。

確かめてみよう。 の変曲点は 、 で、。

から等距離の点を調べる。

つを足すと

平均が なので、 点の中点の 座標は常に変曲点の 座標に等しい。これが「点対称」の定義そのものだ

次関数は必ず変曲点を つもち、そこを中心に点対称。この事実を知っていると、 次関数のグラフを描くのがずっと楽になる。「極大と極小の中点が、変曲点」と分かっていれば、増減表を書く前にグラフの大まかな形がつかめる。

ポイント

  • 変曲点は かつ前後で符号が変わる点。
  • で下に凸、 で上に凸。

よくある間違い

  • となる点を、そのまま変曲点だと決めつける。前後で の符号が変わることを確認する必要がある
  • 変曲点を「極値」と混同する。極値は (増減の切り替わり)、変曲点は の符号変化(凹凸の切り替わり)
  • 変曲点の 座標だけ答えて、 座標を出し忘れる。変曲点は点なので と座標で答える

問7最大・最小(x e^{-x})

★ 基礎最大最小

問題

における関数 の最大値を求めよ。

ヒントを見る

極値の候補が区間内にあるかを確認して、候補と両端の値をくらべる。指数を含む値どうしの大小比較になる。

解答・解説

方針

区間内の の点と、両端 の値をくらべる。 より が候補。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 区間が限られている()。ここが最大のポイントだ。

最大値の候補は 種類ある。

  • 区間の内側で、 になる点(山の頂上)
  • 区間の両端( と )

なぜ端が候補になるのか。

グラフが端で切られているからだ。 端ではそこから先へ行けない。だから、端の値が最大になることがある。

手順は 段階。

① 候補を全部出す。

は区間の内側にある

② 候補の値を全部計算して、比べる。

この つを比べるだけ。

「閉区間の最大最小 極値の候補 端点」なので、端を忘れないこと。これが唯一にして最大の注意点である。

公式閉区間の最大最小 = 区間内の の点と両端の値をくらべる

① 候補を出す。 より (区間 内)。

② 候補と両端の値を計算する。

③ 最大を選ぶ。 いちばん大きいのは 。

xyO最大(1, 1/e)
y=x e^{−x}(0≤x≤2)の最大値 1/e(x=1)

まとめ:数III でも閉区間の最大最小は「 の点 + 両端」をくらべる。 と の大小は、 で概算すると比べられる。

発展。 「閉区間なら、最大値と最小値が必ず存在する」というのは、当たり前だろうか。

当たり前ではなく、定理として保証されているのだ。最大値・最小値の定理(ワイエルシュトラスの定理)。

「有界な閉区間 で連続な関数は、必ず最大値と最小値をもつ。」この定理の つの条件を使っている。条件 : 閉区間であること。

開区間だと、成り立たない。 を、開区間 で考える。

最大値はあるか? を に近づければ、 は に近づく。だが は区間に入っていない。

? もっと大きい がある。? もっと大きいのがある。

最大値は存在しない。 いくらでも に近づけるが、決して到達しない。端点が「入っている」ことが大事だ。

条件 : 連続であること。不連続だと、成り立たない。

閉区間 で定義されているが、 で不連続。

最大値は? やはり存在しない。 に近づくと値は に近づくが、 では に落ちてしまう。

「連続」と「閉区間」の両方があって、初めて最大値が保証される。なぜ、こんな当たり前のことを定理にするのか。「存在する」ことと「求められる」ことは、別だからだ。

この定理からは、最大値がどこにあるかは何も分からない。 ただ「必ずある」と保証するだけ。その保証があるから、安心して最大値を探せる。

「候補を全部調べれば、その中に必ず答えがある」もし最大値が存在しないかもしれないなら、、、 を比べたところで、「これが最大とは限らない」ことになってしまう。存在定理は探索を正当化する。

この定理は経済学や物理学でも使われている。

  • 経済: 効用を最大化する消費計画は「存在する」か
  • 物理: 最小作用の原理によると、自然は作用を最小にする経路を選ぶ。その経路は「存在する」か
  • 最適化: 機械学習の損失関数に、最小値は「存在する」か

「解が存在する」ことを証明してから、「解を求める」。数学が厳密さにこだわるのは、この順序を守るためだ。

答

最大値 ()

別解

候補の値を実際の数で並べて比べる。

「端点も候補」と言われても、ピンとこないかもしれない。 数字で確かめよう。 つの候補の値を、小数で出す。

並べる。

最大は 最小は 。確かに、極大点が最大値になっている。では、端点が最大になることは、本当にあるのか。

区間を変えてみよう。

区間 で、同じ関数の最大値は?この区間には、 となる点()が含まれていない。

区間全体で、減少し続けている。最大値は左端の 。

極大点は区間の外にある。 端点が最大値になった。もう つ。区間 なら?

この区間ではずっと増加している。 最大値は右端の 。 つのパターンが出そろった。

  • 区間内に頂上がある → 頂上が最大
  • 頂上が区間の左外 → 左端が最大(区間内は減少)
  • 頂上が区間の右外 → 右端が最大(区間内は増加)

「 を解いて終わり」ではない理由が、これで分かる。その点が区間に入っているか、入っていなければ増減はどうかまで見て、初めて答えが出る。実用的な手順を、まとめておこう。

① を解く

② 解が区間内にあるか確認する(外なら候補から外す)

③ 区間内の解と、両端の値を、すべて計算する

④ 数値を並べて、いちばん大きいものを選ぶ

この ステップを機械的に踏めば、閉区間の最大最小で間違えることはない。「増減表を書いて、端の値も表に入れる」ようにする。増減表の左端と右端に、区間の端点の値を書き込む習慣をつけたい。

ポイント

  • 候補は の点と両端。
  • と は概算で比較。

よくある間違い

  • の解 だけを調べ、端点(、)の値を計算し忘れる。閉区間では端も必ず候補
  • を と読み違える。負の指数は逆数()であって、符号のマイナスではない
  • 極大値がある限り、それが必ず最大値だと思い込む。区間の端の値のほうが大きいこともある

問8凹凸の判定

★ 基礎凹凸

問題

関数 について、下に凸となる の範囲と、上に凸となる の範囲を求めよ。

ヒントを見る

凹凸を調べる道具は第 次導関数。その符号がどちらの凸に対応するのだったか、グラフの形と結びつけて思い出そう。

解答・解説

方針

凹凸は第 次導関数 の符号で決まる。 で下に凸、 で上に凸。 を求めて符号を調べる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 凹凸を決めるのは、第 次導関数 の符号だ。

この関数の を計算する。

の符号は、 の符号そのものだ。

  • → → 下に凸
  • → → 上に凸

を境に、曲がり方が反転する。

のグラフを思い出そう。 左半分は上に膨らみ、右半分は下に膨らむ、あのS字の形。

原点で、S字がねじれている。 そこが変曲点だ。「凹凸は の符号」で決まる。この 行を、まず確実にする。

定理 で下に凸、 で上に凸

① を求める。 、。

② 符号で凹凸を判定する。

  • : なので下に凸。
  • : なので上に凸。

で凹凸が入れかわる(変曲点)。

xyO変曲点
y=x³。x>0で下に凸、x<0で上に凸(変曲点 x=0)

まとめ:凹凸は の符号で読む。 なら「谷型(下に凸)」、 なら「山型(上に凸)」。 は原点で凹凸が切りかわる、変曲点をもつ代表例だ。

発展。 凹凸は単なるグラフの形の話ではなく、「不等式を生む」という、役に立つ性質をもっている。

下に凸な関数の、 つの見方。顔 : 接線はグラフの下にある。顔 : グラフ上の 点を結んだ線分(弦)は、グラフの上にある。

この「顔 」を式で書くと、こうなる。

「中点での値」は「両端の値の平均」以下。イェンセンの不等式である。これを (下に凸)で試そう。

整理すると

当たり前の不等式に帰着した。 逆に言えば、 という事実は、「 が下に凸」ということを式で表したものだった。次に、(上に凸)で試そう。

上に凸なので、不等号が逆向きになる。

は単調増加だから、中身どうしを比べてよい。

相加平均・相乗平均の不等式が出てきた。

「 が上に凸」という つの事実だけから出てくる。 個に拡張しても、同じことが言える。

変数の相加相乗が 行で証明できた。凹凸からは、不等式が次々に作れる。この視点は現代数学でも中心的な役割をもつ。

凸最適化という分野がある。「関数が凸なら、局所的な最小値は必ず大域的な最小値になる」という性質があり、これが最適化問題を大きく簡単にする。機械学習でも、損失関数が凸かどうかが大事になる。

  • 凸 → 勾配を下っていけば、必ず最適解に着く
  • 非凸 → 局所的な谷にはまり、抜け出せない可能性がある

深層学習の損失関数は非凸で、だからこそ学習が難しい。「 なら下に凸」という、教科書の 行。この考えは、不等式の理論や最適化の分野につながっている。

答

で下に凸、 で上に凸(変曲点 )

別解

「 の符号」を丸暗記せず、「傾きの変化」として読む。

とは何か。 を微分したもの、つまり傾きの変化率だ。だから、こう言い換えられる。

傾きが増えていく、とはどういうことか。

坂道を想像してほしい。

最初は緩やかな上り、だんだん急な上りになる。 傾きが と増えていく。これは、下に凸(お椀の形)だ。

逆に、傾きが と減っていくなら、上に凸(山の形)。この関数で、実際に確かめよう。

傾きの値を、 に沿って並べる。

左半分()では、傾きが と減っている。傾きが減少 → 上に凸

右半分()では、傾きが と増えている。傾きが増加 → 下に凸

の符号を計算しなくても、傾きの動きを追うだけで凹凸が読めた。ここで、 つ注意しておきたいことがある。

傾き は、常に 以上だ。 つまり、この関数はずっと増加している( で1点だけ水平になる)。「増加しているのに、上に凸」ということが起こりうる。

増減()と凹凸()は、独立した情報だ。 つの組み合わせがすべて存在する。

  • 増加 下に凸:加速しながら上る(指数的な成長)
  • 増加 上に凸:減速しながら上る(頭打ちに近づく)
  • 減少 下に凸:減速しながら下る(下げ止まりに近づく)
  • 減少 上に凸:加速しながら下る(暴落)

この つを区別できると、グラフの読み方が一段深くなる。

株価が「上がっているが、上に凸」なら、勢いが鈍っている。 増加の事実だけを見ていては、この兆候は読めない。「 で向きを、 で勢いを読む」ようにすると、 つの導関数からそれぞれ別の情報が得られる。

ポイント

  • で下に凸、 で上に凸。
  • 凹凸の切りかわる点が変曲点。

よくある間違い

  • なら下に凸、と考えてしまう。増減は 、凹凸は で、別の情報
  • 「下に凸」と「上に凸」を逆に覚える。 で下に凸(お椀の形)
  • が常に 以上だから「常に下に凸」と結論してしまう。 の符号は増減の話で、凹凸は で判定する

問9速度と加速度

★ 基礎速度加速度

問題

数直線上を動く点 の時刻 での座標が で表される。時刻 での速度 と加速度 を求めよ。また、速度が になる時刻を求めよ。

ヒントを見る

速度は位置の微分、加速度は速度の微分なので、定義どおりに 回微分する。

解答・解説

方針

速度は座標の時間微分 、加速度は速度の時間微分 。 を解くと、運動の向きが変わる時刻が分かる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 位置、速度、加速度の つは、微分の階段でつながっている。

なぜ、そうなるのか。

速度とは、位置が時間あたりどれだけ変わるかだ。それは位置の変化率、つまり微分である。

加速度は「速度が、時間あたりどれだけ変わるか」。

微分するたびに、 段上がる。そして、この問題では「 になる時刻」も聞かれている。速度 とは、動きが止まる瞬間だ。

だが、そこで永久に止まるわけではなく、多くの場合、向きが変わる折り返し点である。

ボールを真上に投げたとき、最高点で一瞬止まる。その瞬間が だ。「 は、運動の折り返し」という物理的な意味を頭に置いて計算する。

公式速度 、加速度 (位置を時間で微分)

① 速度を求める。 座標を で微分。

② 加速度を求める。 速度をもう 回微分。

③ 速度が の時刻。

txOv=0
x=t²−4t。t=2で折り返し(速度 v=0)

まとめ:速度は位置の微分、加速度は速度の微分( 位置の 階微分)。 の は、点 が向きを変える瞬間(いったん止まって折り返す)。加速度が一定 なのは等加速度運動だからだ。

発展。 「位置を微分すると速度、速度を微分すると加速度」

では、加速度をさらに微分すると?

ジャーク(躍度)という。

「加速度の変化率」だ。

この量は乗り心地を決める。エレベーターを想像しよう。

  • 速度が一定 → 何も感じない(等速運動)
  • 加速度が一定 → 一定の圧迫感(体が押される感じが続く)
  • 加速度が急変(ジャークが大きい) → 「ガクン」とくる

不快に感じるのは、加速度そのものより、加速度の「変化」だ。だから、高級なエレベーターや新幹線は、ジャークを小さくするように制御されている。

加速するときも、なめらかに加速度を上げていく。 急に力をかけない。

ジェットコースターの設計でも、ジャークが問題になる。 直線からいきなり円弧のカーブに入ると、加速度が不連続に変化する(ジャークが無限大になる)。だから、クロソイド曲線という、曲率が連続に変化する曲線が使われる。

高速道路のカーブにも、同じ曲線が使われている。 ハンドルを一定の速さで回せば曲がれるように設計されているのだ。微分の階段はさらに続く。

(名前は冗談めいているが、実際に使われている。)そして、逆方向にも階段は伸びる。

位置を積分すると? 「アブソーメント」という量になる(制御工学で使う)。微分と積分の階段の、どのあたりに注目するか。

それは、何を知りたいかによる。

  • どこにいるか → 位置
  • どれくらいの速さか → 速度
  • どんな力がかかっているか → 加速度()
  • 乗り心地はどうか → ジャーク

ニュートンの運動方程式が「加速度」の式である理由も、ここにある。

力は加速度と直結している。 だから、物理法則は「 階微分」の方程式として書かれる。

階でも 階でもなく、 階。 物体の運動はこの形の方程式を解いて求める。

答

、、 は

別解

点 の動きを、実際に追いかけてみる。

式だけ見ていても、運動のイメージが湧かない。 時刻ごとに、どこにいるかを書き出そう。

これで動きが分かる。

で原点にいる。そこから左(負の向き)へ動き出す。 で、いちばん左()に達する。

そこから右へ折り返し、 で原点に戻る。その後は、右へ加速しながら遠ざかっていく。速度を計算すると、この動きが裏づけられる。

  • : なので、左へ動いている
  • : となり、止まる(折り返し)
  • : なので、右へ動いている

が、ちょうど折り返しの瞬間だ

加速度は?

常に右向きに、一定の加速度がかかっている。

これは「等加速度運動」だ。 車が一定の力でブレーキをかけながらバックし、止まって、そのまま前進を始めるようなもの。 の期間に注目する。

速度は左向き()なのに、加速度は右向き()。「加速度が右向きなのに、左へ動いている」

矛盾ではない。 加速度は「速度の変化」であって、「動く向き」ではないからだ。右向きの加速度が左向きの速度を、じわじわ弱めている。

速度が毎秒 ずつ増えている(左向きが弱まり、やがて右向きに転じる)。「減速」とはこのことを指している。

車のブレーキも同じ。 前に進んでいる車にブレーキをかけると、加速度は後ろ向きになる。速度は前向きのまま、だんだん小さくなる。

速度と加速度の向きが逆 → 減速。 速度と加速度の向きが同じ → 加速。

位置・速度・加速度の つを、別々の情報として読めるようになると、運動が「見える」ようになる。変位と道のりの違いも、押さえておこう。

での変位は で、元の位置に戻った。

だが、道のりは となる。左に 進み、右に 戻ったから、 だけ動いている。

「差し引きゼロ」と「まったく動かなかった」は、違う。 折り返しがある運動では、この区別が大事になる。

ポイント

  • 、。
  • は運動の向きが変わる時刻。

よくある間違い

  • 加速度を求めるのに、位置 を 回しか微分しない。加速度は位置の 階微分( をさらに微分)
  • を「そこで永久に止まる」と解釈する。多くの場合は折り返しの瞬間で、直後には逆向きに動き出す
  • 速度が負()のとき、「マイナスの速さ」だと考えて混乱する。負号は向き(左向き)を表し、速さの大きさは

問10接線の傾き(微分係数)

★ 基礎接線

問題

曲線 上の点 における接線の方程式を求めよ。

ヒントを見る

傾きは微分係数、通る点は与えられている。基本の手順どおりに。

解答・解説

方針

傾きは の での値 。点 を通る直線を作る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の接線は、数IIで扱った、いちばん基本の接線だ。

手順をもう一度確認しておこう。

① 傾きを出す。

② 点 を通る、傾き の直線を書く。

接線の公式はこれだけだ。

「点 を通り、傾き の直線」という意味を読めば、覚える必要すらない。

数IIIに入っても、接線の作り方は ミリも変わらない。 変わるのは、微分する関数の種類だけである。基本を、確実に。

公式接線

① 傾きを求める。 、。

② 直線を作る。

xyO(1,1)
y=x² と点(1,1)での接線 y=2x−1

まとめ:接線の基本。傾き 、点 を通る。数III でも数II でも、接線は「傾き の点 を通る直線」で変わらない。

発展。 接線 と放物線 の関係を、もう少し掘ってみよう。

接線は放物線の下にある。

確かめる。 移項すると

平方だから、常に 以上 等号は (接点)のときだけ。 は下に凸なので、どの接線もグラフの下にある。この性質を使うと、便利な不等式が作れる。

接点を とした一般の接線は

放物線が接線の上にあるので

整理すると

数の平方和と積の、有名な不等式が出てきた。相加相乗( と の)そのものである。「放物線が接線の上」という幾何的事実が、代数の不等式になった。

さて、もう つ。接線と放物線が囲む面積を考えてみよう。

接線 と、放物線 。 この つは 点で接するだけで、面積は囲まない。では、放物線と、別の直線 ()なら?

点で交わり、間に面積ができる。

解を 、()とすると、囲む面積は

有名な 公式である。

面積が 交点の距離の 乗で決まる。 とすると、 交点が近づいて重なり()、面積も に近づく。その極限が「接する」状態だ。

接線とは「面積 の極限」でもある。 交点が重なった瞬間、囲む領域は消滅する。

接する、重解、面積 という つの言葉は同じ つの現象を表している。

幾何(接する)、代数(重解)、解析(面積 )。数学の つの部門が 本の接線の上で出会っている。

答

別解

微分を使わずに、「接する」を代数で表現する。微分が発明される前、人々はどうやって接線を求めていたのか。「接する 重解をもつ」という代数的な言い換えを使ったのだ。

接線とは何か。

曲線と、 点だけを共有する直線と言いたくなるが、正確ではない。正しくは、「 つの交点が重なって 点になった」直線である。 次曲線の場合、この言い換えがそのまま成り立つ。

点 を通る、傾き の直線を考える。

放物線 との交点を求める。

この 次方程式の解が交点の 座標だ。

接する条件は「重解をもつ」こと。 つまり判別式が 。

傾きが と決まった。

接線は

本解と同じ答え 微分を 度も使っていない。

重解になっていることを、確かめよう。 を代入すると

確かに、 が 重に現れる。 これが「接する」ということの代数的な姿だ。この方法は、 世紀のフェルマーやデカルトが使っていた。

微分が生まれる前の、接線の求め方である。だが、この方法には大きな限界がある。「重解」という言い換えが使えるのは、多項式(それも低次)だけだ。

や の接線を、この方法で求められるか?

この方程式が「重解をもつ条件」を、判別式で書けるだろうか。

書けない。 判別式は 次方程式のための道具にすぎない。ここで、微分の強みが分かる。

微分なら、どんな関数でも同じ手順で接線が出る。

でも でも でも、この 行で終わり。「特殊な技巧」から「普遍的な方法」へ。ニュートンとライプニッツがやったのは、この転換だった。

判別式による接線の求め方は、計算が短い。だが、それは 次曲線という限られた場合でしか通用しない。

微分はあらゆる曲線に通用する。 どんな関数にも使えることが、微積分が科学で広く使われる理由だ。

ポイント

  • 接線の傾き 。
  • 点を通る直線の式に代入。

よくある間違い

  • 接線の式で を足し忘れ、 としてしまう。接点の 座標を必ず足す
  • 導関数 をそのまま傾きに使い、 と書いてしまう。傾きは という数値
  • 「接線は曲線と 点だけで交わる」と思い込む。 次曲線などでは、接線が別の点で曲線と交わることもある

問11極値(log x / x)

★ 基礎極値

問題

関数 ()の極値を求めよ。

ヒントを見る

商の規則で微分する。分子が になる条件は対数の方程式になる。 となる はどんな数か。

解答・解説

方針

商の微分で を求める。分子が になる が候補。 なので符号は分子で決まる。符号変化から極大と判定する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、分数の形。商の微分を使う。

ここで、大事な観察をする。

分母は常に正だ。だから の符号は分子 だけで決まる。

極値の候補は 。

前後の符号を調べる。

  • → → 分子は正 → 増加
  • → → 分子は負 → 減少

増加から減少へ。 で極大だ。「分数関数の符号は、正の分母を無視して、分子で判断する」のは、前問の と同じ発想である。

公式商の微分

① を求める。 、。

② を解く。 なので分子 、、。

③ 符号を調べる。 は で正()、 で負。正→負 なので で極大。

xyO極大(e,1/e)
y=(log x)/x。極大(e, 1/e≈0.37)、x→∞で0に近づく

まとめ: は で極大値 。分母 なので、 の符号は分子 だけで決まる。 が決め手だ。

発展。 のグラフを、全体として描いてみよう。

つのポイントを押さえる。

① 定義域:

② のとき

と の積 → 。 グラフは、 軸に沿って下から立ち上がる。

③ のとき

の増え方より、 の増え方のほうがはるかに速い。 だから に近づく。( は、どんな の正のべきよりも、ゆっくり増える。)

④ で極大値

グラフの姿が見えた。

軸から の底を這い上がり、 で 軸を横切り()、 で最高点 に達し、そこからゆっくり へ降りていく。この形が意外な問題を解く。問題: 方程式 の解の個数を求めよ。

両辺の対数をとる。

左辺はこの問題の関数だ。

「 と、水平線 の交点の個数」を数えればよい。グラフから、一目瞭然だ。

  • (最大値より上)→ 交点 個
  • (ちょうど頂上)→ 交点 個()
  • → 交点 個(左右に つずつ)
  • → 交点 個

関数の形が分かっていれば、方程式の解の個数が「見える」。この考え方から、次の事実が出てくる。

と を計算してみよう。

同じ値だ。

と は の同じ高さにある。 グラフの山の、左右の斜面に対応する 点だ。そして、これが を満たす、唯一の「きれいな」整数解になる。

この等式は、 という関数が山の形をしていることから生じている。グラフを描くと、その関数の性質を 枚の絵にまとめられる。

答

極大値 ()

別解

この極値を使って、有名な難問を解く。問題: と 、どちらが大きいか。(、。電卓は使わずに、大小を決めよ。)

一見、手も足も出ない。 底も指数も違う つの数を、どう比べるのか。ここで、この問題で調べた関数を使う。

まず、両辺の対数をとる。

は単調増加だから、対数の大小がそのまま元の数の大小になる。

両辺を ()で割る。

形が分かった。

どちらもこの問題の関数 の値だ。そして、 は で極大値をとり、それが最大値になる。

逆にたどると

電卓なしで、決着した

(念のため数値で確認: 、)この解法のよいところは、どこにあるか。「比べにくい 数」を、「 つの関数の つの値」に言い換えたことだ。

関数の最大値が にあると分かっていれば、 と他のどんな数を比べても、大小はすでに決まっている。そして、この結果は一般化できる。任意の正の数 ()について

はこの意味で「特別な」底だ。

() ()

「 を底にしたほうが、常に大きくなる」

の最大値が にあるという つの事実も、 が特別な数であることを別の面から示している。

ポイント

  • 商の微分。分母 で符号は分子で決まる。
  • 。極大値 。

よくある間違い

  • 商の微分で、分子の の約分を忘れ、 を残したまま進めてしまう
  • を と解いてしまう。 の解は ()
  • 極大値を のままにして、 を使わない。答えは という数値

問12平均値の定理

★ 基礎平均値の定理

問題

関数 と区間 について、平均値の定理 ()を満たす を求めよ。

ヒントを見る

定理の等式の左辺(平均変化率)を数値で計算し、右辺の と等しいとおいて の方程式を解く。出た が区間の内側にあるかも確認。

解答・解説

方針

左辺(平均変化率)を計算し、右辺 と等しいとおいて を求める。。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 平均値の定理は、「割線の傾き」と「接線の傾き」を結びつける定理だ。

言葉で言うと、こうなる。「区間の両端を結んだ直線と、平行な接線が、区間のどこかに必ず引ける。」

イメージしてほしい。

東京から大阪まで、平均時速 km で走った。 途中で、ちょうど時速 km だった瞬間が必ずある。

平均を出したなら、その平均値をぴったり実現する瞬間がどこかにあるというのが、平均値の定理である。式で書くと

左辺が「平均変化率(割線の傾き)」、右辺が「 での接線の傾き」。この問題では両辺を計算して を求めるだけだ。

まず左辺(平均変化率)を数値で出し、次に とおいて を解く。 手順は単純である。

定理平均値の定理: が で連続・微分可能なら となる が に存在

① 平均変化率(左辺)を計算する。

② と等しいとおく。 。

③ 範囲を確認する。 は を満たす。

xyOABc=2
平均値の定理: 割線(1,1)-(3,9)に平行な接線をもつ c=2

まとめ:平均値の定理は「 点を結ぶ直線の傾き(平均変化率)と同じ傾きの接線が、途中に必ずある」という定理。その接点の が 。 を解くだけで求まる。

発展。 平均値の定理は「 がどこにあるかまでは分からない」。それなのに、なぜ最重要定理なのか。

答えは「存在するだけで十分な場面が、山ほどある」からだ。

応用 : 「 ならば、 は定数」の証明。当たり前に思えるだろうか。だが、証明が要る。

区間内の任意の 点 をとる。 平均値の定理より

どの 点でも値が等しい → 定数関数

がどこにあるかは、まったく使っていない。 ただ「存在する」ことだけで、証明が完結した。この結果は積分の基礎になる。

「原始関数は、定数の差を除いて 通り」と言える。不定積分の はこの定理で正当化される。

応用 : 「 ならば、 は増加」の証明。これも、当たり前に見えて、証明が要る。

だから、

増減表の根拠が平均値の定理だった。「導関数の符号から、関数の増減が分かる」という、毎回使っている推論も平均値の定理に支えられている。

応用 : 不等式の証明。

で を示そう。

に、区間 で平均値の定理を使う。

ここで だから 、よって 。

の正確な位置は不要。「」という範囲だけで、不等式が示せた。これが平均値の定理の使い方だ。

「 は存在する。位置は分からない。だが、範囲は分かる。」

その「範囲」の情報だけで、多くのことが証明できる。平均値の定理は微分の理論を支える基礎である。そして、この定理自体はもっと基本的な「最大値・最小値の定理」から導かれる。

数学はこうして 段ずつ積み上げられている。

答

別解

答えの が「区間の中点」であることに、気づいただろうか。

これは偶然か。それとも、必然か。一般の 次関数で、確かめてみよう。

区間 での平均変化率を計算する。

分子の を因数分解する。

平均変化率がきれいな形になった。一方、導関数は

平均値の定理の式に入れる。

で割る。

偶然ではなかった。 次関数なら、どんな区間でも、 は中点になる。

この問題では 。計算するまでもなかった。

なぜ、中点になるのか。放物線が軸に関して左右対称だからだ。区間の両端から等距離の点(中点)で、対称性から傾きが平均になる。

では、 次関数ではどうか。

平均変化率は

より

中点()ではない。

次関数は左右対称ではないので、 は中点からずれる。「中点になるのは 次関数の特権」だった。この観察から分かること。

平均値の定理は「 が存在する」としか言っていない。 どこにあるかは関数によって違う。「存在は保証するが、位置は教えない」

この一見弱そうな主張が、微積分の最重要定理のひとつである理由は、次の発展で明らかになる。

ポイント

  • 平均変化率 となる が存在。
  • が 内にあることを確認。

よくある間違い

  • 平均変化率 の分母を や にしてしまう。分母は区間の幅
  • を と書き間違える。右辺は導関数の値(接線の傾き)
  • 求めた が区間の内側()にあるかを確認しない。定理は開区間内の の存在を主張している