数学II / 積分の考え

積分の考え ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 不定積分
  2. 条件から関数を決める
  3. 定積分の計算
  4. 定積分(1次式)
  5. 曲線と x 軸で囲む面積
  6. 定積分(3次式)
  7. 2曲線で囲む面積
  8. 奇関数の定積分
  9. 偶関数の定積分
  10. 偶関数・奇関数に分けて計算
  11. 微分と積分の関係
  12. x 軸の下にある部分の面積

問1不定積分

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

微分の逆をたどる。『微分するとこの式になる』関数を項ごとに探そう。不定積分ならではの、最後に付け足すものを忘れずに。

解答・解説

方針

積分は微分の逆。 は「指数を 増やして、その数で割る」。各項を別々に積分し、最後に積分定数 を必ず付ける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 積分は、微分の逆である。

「微分すると になる関数は何か?」。これを探すのが積分だ。

公式は微分の公式を逆に読む。

「指数を 増やして、その数で割る」。微分( を前に出して、 減らす)の、ちょうど逆だ。

項ごとに計算する。

積分定数 を忘れない。 これを書かないと、減点される。

公式()。微分の逆で「指数を 増やしてその数で割る」

各項を積分する。

まとめて、積分定数 を付ける。

まとめ:積分は微分の逆。指数を 上げてその数で割る。 を付けるのが不定積分の約束だ。微分して元に戻るか確かめると安心。

発展。 微分と積分は「逆の操作」だが、難しさが対称ではない。

微分は機械的にできる。

のような複雑な関数でも、積の微分・合成関数の微分を組み合わせれば、必ず答えが出る。

積分は、そうはいかない。

この積分は初等関数では表せない。(、、、多項式、指数関数などをいくら組み合わせても書けないことが、証明されている。)

ガウス積分と呼ばれるこの関数は、統計学の正規分布そのものだ。答えが「書けない」のに、面積は計算できる(定積分なら という値になる)。

微分は「必ずできる」、積分は「できないことがある」。この違いには理由がある。理由を直感的に言えばこうだ。

微分は「分解」である。 関数を細かく見て、局所的な傾きを取り出すので、常に可能。

積分は「合成」である。 バラバラの情報を積み上げて全体を復元するので、うまく組み上がるとは限らない。

同じ非対称性は他の場面にもある。

  • 掛け算は簡単、素因数分解は難しい( RSA暗号)
  • 料理は作れる、味から材料を逆算するのは難しい
  • 微分方程式を「作る」のは易しいが、「解く」のは難しい

「順方向は易しく、逆方向は難しい」。この非対称性が暗号に利用され、科学の難問のもとにもなっている。

そして、だからこそ積分の技術(置換積分、部分積分)が、数IIIで丁寧に教えられる。 「解ける形に持ち込む」ための工夫が、必要だからだ。

が簡単に解けるのは、多項式という「素直な」関数だからである。 数IIの積分は多項式だけを扱うので、どれもこのように計算できる。

答

別解

積分は「微分して確かめられる」。これほど確実な検算方法は他にない。そして「なぜ が必要なのか」を、はっきりさせよう。

検算: 微分して戻す。

微分する。

元の被積分関数に戻ったので、積分は正しい。

この検算はすぐにできて、 確実だ。

積分の答えを書いたら、必ず微分して戻す。 係数を間違えていれば、必ずここで気づく。

たとえば、 と間違えたとしよう。 微分すると になり、元の に戻らない。 すぐにミスが分かる。

さて、積分定数 の意味。「微分して になる関数」は、 つではない。

どれを微分しても、同じ になる(定数の微分は だから)。

つまり、答えは無数にある。 そのすべてをまとめて表すのが

は「どれか つに決められない」という事実の表明である。グラフで見ると、意味がはっきりする。 を変えると、グラフは縦に平行移動する。

平行移動しても、各点での「傾き」は変わらない。だから微分すると同じになる。

山の斜面の傾きだけを知っていても、山の「標高」は分からない。 海抜 m から測るのか、地面から測るのかによって変わる。基準を決めなければ、高さは決まらない。

その「基準の任意性」が である。そして、基準を決めるのが「初期条件」だ。

「」のような条件が つあれば、 が決まる(次の問題でやる)。物理では、この が「初期位置」や「初期速度」に対応する。

「加速度が分かっても、初速と初期位置を知らなければ、物体がどこにいるかは分からない」。当たり前だが、大事な事実だ。積分定数は単なる形式ではなく、「条件が足りない」ことを表している。

ポイント

  • 。
  • 不定積分には積分定数 を必ず付ける。

よくある間違い

  • 積分定数 を書き忘れる
  • のように、指数を1増やすのを忘れる(正しくは )
  • としてしまう(正しくは 。定数を積分すると1次式になる)

問2条件から関数を決める

★ 基礎不定積分初期条件

問題

かつ を満たす関数 を求めよ。

ヒントを見る

が分かっているので、まず不定積分で候補をぜんぶ書く(定数が残る)。条件 が、その定数を つに決めてくれる。

解答・解説

方針

まず を積分して の形にする。次に を代入して を決める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 段階で考える。

手順1: とりあえず積分する。 積分定数 をつけて。

この時点では、 が決まっていない。 答えの候補が無数にある。

手順2: 条件 を使って、 を決める。

これが に等しい。

「積分して、条件で を決める」。この 段階が初期条件つき積分の型だ。

検算: 、 のように、 つとも確かめる。

重要積分定数 は、与えられた条件( など)に代入して決める

① 積分して一般形を出す。

② 条件で を決める。 を代入。

よって

まとめ:「導関数と 点の値」が分かれば関数が決まる。積分で 付きの形を出し、点の条件で を確定する 段構えだ。

発展。 「導関数と初期条件から、もとの関数を復元する」ことは、微分方程式の最も簡単な例である。

この形の問題を「初期値問題」という。微分方程式は科学で自然の法則を表すのに使われる。物理:

「力が分かれば、加速度が分かる。 回積分すれば、位置が分かる。」

初期条件(初期位置と初速度)を与えれば、。これが古典力学の決定論だ。ラプラスはこう言った( 年)。

「宇宙のすべての原子の位置と速度を知る知性があれば、その知性にとって未来は過去と同じように明らかであろう。」

「ラプラスの悪魔」 と呼ばれるこの思想は、微分方程式と初期条件が未来を決定する、という信念に基づいていた。しかし、 世紀にこの信念は 度、揺らいだ。

度目: 量子力学( 年代)。 粒子の位置と速度を、同時に正確には決められない(不確定性原理)。初期条件が原理的に確定できない。

度目: カオス理論( 年代)。 初期条件のごくわずかな違いが、時間とともに指数的に拡大する。「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起きる」(バタフライ効果)。天気予報が 週間先までしかできないのは、このためだ。

微分方程式は決定論的なのに、実際には予測できない。 これは矛盾ではない。「決定されている」ことと「予測できる」ことは、別物だ。

、 という素朴な初期値問題。 同じ考え方が 年にわたって議論されてきた「未来は予測できるか」という問題の出発点になっている。

答

別解

この問題をグラフで見よう。 「無数の候補から、 つを選ぶ」という構造が、目に見える形になる。 が表すのは、 本の曲線ではない。

放物線の「群れ」だ。

同じ形の放物線が縦にずらりと並んでいる(縦に平行移動しただけ)。この「曲線の族」を、曲線族という。どの放物線も同じ性質を持っている。

  • での傾きはどれも ()
  • での傾きはどれも

傾きの情報()だけでは、どの放物線かを特定できない。どれも条件を満たすからだ。

そこで、条件 を使う。「点 を通る」という条件だ。無数の放物線のうち、点 を通るものはただ 本。

「曲線の群れから、 本を選び出す」。それが初期条件の役割である。この構造は物理でそのまま現れる。

「速度が の物体の、位置 は?」

は「初期位置」だ。 どこから出発したかによって、位置は変わる。「時刻 で、位置 にいた」という情報があれば、 と決まる。

「速度だけでは、位置は決まらない。出発点が要る。」。当たり前だが、これが積分定数の物理的な意味だ。

さらに 階微分になると、条件が つ必要になる。「加速度が (重力)の物体の運動は?」

積分定数が つ現れる。だから初速度と初期位置の つを知らないと、ボールがどこに落ちるか計算できない。

「 回積分すれば、 個の定数が現れる」。そして、それを決めるには 個の条件が必要だ。

微分方程式を解くとはこの構造を扱うことである。 数IIIで、その本格的な理論が始まる。

ポイント

  • 積分 → 付きの一般形。
  • 条件を代入して を決める。

よくある間違い

  • 積分定数 を置かずに としてしまい、条件が使えなくなる
  • の条件を使い忘れて、 を決めずに答えてしまう
  • に でなく別の値を代入してしまう

問3定積分の計算

★ 基礎定積分

問題

定積分 を求めよ。

ヒントを見る

まず原始関数を作り、上端・下端を代入して引く、の手順どおり。定積分で定数 が要らなくなる理由も考えてみると理解が深まる。

解答・解説

方針

まず原始関数(積分した式)を求め、上端・下端を代入して引く。。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 定積分は、 段階で計算する。

手順1: 不定積分(原始関数)を求める。

( は、この後で消えるので書かなくてよい。)

手順2: 上端と下端を代入して、引く。

は「代入して引く」という記号。

必ず「上端 下端」の順。 逆にすると符号が反対になる。なぜ積分定数 が要らないのか。

が引き算で消える。だから定積分では書かなくてよい。

公式定積分

① 原始関数を求める。 。

② 上端・下端を代入して引く。

まとめ:定積分は「原始関数に上端を入れた値 下端を入れた値」。 は引き算で消えるので書かなくてよい。

発展。 「無限に細い長方形を、無限個足す」という操作が、なぜ有限の値になるのか。

素朴に考えると、危うい。

という、不定形だ。 何にでもなりうる。しかし、掛け算の「バランス」が取れていれば、有限の値に収束する。

  • 長方形の幅: ( で へ)
  • 長方形の個数: ( へ)
  • 幅 個数: (一定)

「 に近づく速さ」と「 に発散する速さ」が、ちょうど釣り合っている。 だから積は有限に収まる。この「釣り合い」の感覚が極限を扱ううえで大事だ。

微分でも、同じ構造があった。

分子も分母も に近づくが、「同じ速さ」で近づくので、比は有限。

微分は 、積分は で、どちらも不定形を極限で扱う方法だ。そして、両者が逆演算であることは、決して自明ではない。

「傾き」と「面積」は、一見、何の関係もない つの概念だ。それが、微積分学の基本定理によって結ばれる。

「面積を、上端で微分すると、もとの関数に戻る」(問題 で扱う)。

局所と大域が、 本の式で結びつく。これが微積分の基本定理の内容である。

「なぜ面積を求めるのに、微分の逆をすればよいのか」。この問いの答えが微積分学の基本定理である。

答

別解

定積分の値 は何を意味するのか。 それは面積である。そして、その面積を「長方形で近似して」求める方法を体験しよう。積分の原点がそこにある。

面積として読む。

この面積が である。

では、公式を使わずに、面積を「測って」みよう。方法: 長方形で埋める(区分求積法)。

区間 を、 等分する(幅 の区間が つ)。各区間の「右端」の高さを使って、長方形を作る。

区間 右端 高さ 面積(幅 )
合計

。 真の値 より、かなり大きい。

なぜか。 曲線は右上がりなので、右端の高さを使うと、長方形が曲線からはみ出す(過大評価)。

では、 等分してみよう(幅 )。

同じ計算をすると、合計は約 。 真の値 に近づいた。

等分すると? 約 になる。

等分すると? 約 になる。

これが「区分求積法」であり、積分の定義そのものである。

「無限に細い長方形を、無限個足し合わせる」。それが積分だ。

記号 はSum(和)の を引き伸ばしたもの。 は「無限に小さい幅」を表す。

この定義はアルキメデスの時代(紀元前 世紀)から知られていた。 彼は「取り尽くし法」で、放物線の面積を求めていた。

しかし、それは「職人芸」だった。 図形ごとに、特別な工夫が必要だった。ニュートンとライプニッツが見つけたのは、「積分は微分の逆である」という関係だった。

微積分学の基本定理。

無限個の長方形を足す作業が、「原始関数を求めて、 点で代入して引く」だけになった。

年かかった面積計算が、 行で終わるようになった。これは数学の歴史の中でも大きな発見である。

という 行。 その裏に、無限個の長方形と、 年の歴史がある。

ポイント

  • 。
  • 定積分に積分定数 は不要。

よくある間違い

  • 上端と下端を逆に代入する(必ず「上端 下端」)
  • 定積分に積分定数 をつけてしまう(引き算で消えるので不要)
  • の係数計算を誤る()

問4定積分(1次式)

★ 基礎定積分

問題

定積分 を求めよ。

ヒントを見る

原始関数を作って、上端・下端を代入して引く。代入の計算(引き算の符号)だけ丁寧に。

解答・解説

方針

原始関数 を求め、 と を代入して引く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 手順は前問と同じ。原始関数を求めて、代入して引く。

原始関数。

代入して引く。

上端 :

下端 :

引く。

下端の値が になったので、簡単だった。

しかし油断は禁物。 下端の代入を忘れると、たまたま答えが合ってしまうことがある。「 だから引かなくていい」ではなく、「計算したら だった」という手順を踏む。

この積分は 次関数の下の面積、つまり台形の面積である(別解で見る)。

公式

① 原始関数を求める。 。

② 代入して引く。

まとめ:下端の代入 もきちんと引く。「」の引き算を省かないのがミス防止のコツだ。

発展。 「積分は面積」だが、負の値になることもある。そこが、素朴な「面積」との違いだ。

負の値になった。 面積が負になるはずはない。

なぜか。 区間 で、 は負の値をとる( 軸の下にある)。

定積分が表しているのは「符号つき面積」だ。この性質は便利だが、間違いのもとにもなる。便利な例: 打ち消し合い。

左半分の負の面積と、右半分の正の面積が、ちょうど打ち消し合う。これが、奇関数の積分が になる理由だ(問題 )。間違いやすい例として、「面積を求めよ」と言われた場合を考える。

素直に積分すると

面積が負になるはずがない。 軸の下にあるからだ。「面積」を求めたいなら、絶対値をとるか、符号を反転させる。

または、(上 下の順で引く)。問題 で、これを扱う。物理では、この「符号つき」がむしろ大事になる。

速度 を積分すると、(位置の変化)になる。

行きと帰りで往復すれば、変位は (元の位置に戻る)。負の速度が正の速度を打ち消す。

一方、(走った距離)は

絶対値をつけるので、こちらは決して負にならない。「変位」と「道のり」の違いが、「符号つき面積」と「面積」の違いに、そのまま対応している。定積分は単なる面積ではなく、「向き」を持った量である。

答

別解

この積分は積分を使わずに求められる。 小学校で習った「台形の面積」で。

図で考える。

直線 と、 軸、、 で囲まれた図形は?

つの頂点を確認する。

  • 、( 軸の上)
  • ( での直線の高さ: )
  • ( での高さ: )

これは台形だ。

  • 上底(左の縦の辺):
  • 下底(右の縦の辺):
  • 高さ(横の長さ):

台形の面積公式。

積分の答えと、ぴったり一致した

小学校の公式で、定積分が計算できた。この一致は何を意味するか。

( 次関数なら台形、 次関数なら曲線の下の面積になる。図形の種類が変わっても、積分は同じ手順で計算できる。)そして、この一致は「検算」に使える。

次関数の定積分なら、必ず台形(または三角形)の面積になる。 積分の答えが台形の面積と合わなければ、どこかで計算ミスをしている。

もう つの見方: 平均の高さ。台形の面積 (平均の高さ)(幅)

「平均の高さ で、幅 の長方形」と同じ面積。この 「平均の高さ」 は区間の中点 での値と一致する。

次関数では、「中点での値」が「平均の高さ」になる。直線だから、真ん中がちょうど平均だ。この考え方を一般化すると、「関数の平均値」という概念になる。

今回なら で、平均の高さは

「積分して、区間の幅で割る」= 平均である。データの平均()と、まったく同じ構造だ。離散(データ)では和を個数で割り、連続(関数)では積分を幅で割る。

積分は「連続的な和」である。

ポイント

  • 原始関数に上端・下端を代入して引く。
  • 下端の値も必ず引く(省略しない)。

よくある間違い

  • の を書き忘れる(定数 の積分は )
  • 下端の代入を省略して、上端の値だけで答えてしまう
  • の計算で、 の括弧をつけ忘れて符号を誤る

問5曲線と x 軸で囲む面積

★ 基礎面積

問題

曲線 と 軸、および 直線 、 で囲まれた部分の面積を求めよ。

ヒントを見る

まず図をかいて、区間内で曲線が 軸の上下どちらにあるかを確認する。上にあるなら、面積はそのまま定積分で出せる。

解答・解説

方針

区間 で (曲線が 軸より上)なので、面積はそのまま定積分 に等しい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「曲線と 軸で囲まれた面積」は、定積分そのものである。

ただし、 つ確認すること。

区間 で、( 軸の上にある)。上にあるなら、定積分がそのまま面積になる。

面積は 。

もし曲線が 軸の下にあれば、定積分は負になり、面積とは符号が違ってしまう。だから、上にあるか下にあるかを必ず確認する。

面積の問題は 段階。 ①グラフを描く → ②上下を確認する → ③積分する。グラフを描かずに積分すると、必ず間違える。

重要区間で (曲線が 軸より上)なら、面積

① 位置関係を確かめる。 で 。曲線は 軸の上にある。

② 面積を定積分で計算する。

xyO
y=x^2 と x軸、x=0〜3 で囲む面積(=∫[0→3]x^2 dx=9)

まとめ:面積を積分で出すときは、まず「曲線が 軸の上か下か」を確認する。上にあるなら面積 = 定積分そのもの。下にある場合は 番以降で扱う。

発展。 アルキメデスが「取り尽くし法」で放物線の面積を求めたのは、紀元前 世紀。微積分の発明( 世紀)の、 年前である。

彼の方法はどんなものだったか。放物線と弦で囲まれた図形に、三角形を敷き詰めていく。

  1. まず、大きな三角形を つ入れる(面積 とする)
  2. 残った隙間に、小さな三角形を つ入れる(合計 )
  3. さらに残った隙間に、 つ入れる(合計 )
  4. これを無限に繰り返す

面積の合計は

無限等比級数になる。

アルキメデスは無限級数の和を(極限の概念なしに)厳密に扱い、正しい答えを得た。

彼の議論は今の基準で見ても正しい。 ただし、彼は「無限」という言葉を注意深く避け、「どんなに小さな差も、有限回の操作で下回れる」という形で論じた(取り尽くし法)。

なぜ、そこまで慎重だったのか。 当時のギリシャ数学は「無限」を扱う論理を持っていなかったからだ。ゼノンのパラドックス(アキレスと亀)が、無限の危険性を突きつけていた。

アルキメデスはあと一歩で微積分に到達していた。

しかし、彼には「一般的な手続き」がなかった。 放物線の面積は求められたが、それは放物線専用の職人芸だった。別の曲線には、別の工夫が必要だった。

ニュートンとライプニッツが与えたのは、「どんな曲線にも通用する、機械的な手続き」である。

アルキメデスが何ページも費やした計算が、 行になった。

一部の人にしかできなかった計算を、誰でも使える道具に変える。数学はこうして進歩してきた。

そしてアルキメデスは自分の墓碑に「球と円柱」の図を刻むよう遺言した。 球の体積が外接する円柱の であることを発見したことを記念したものだ。

の法則も、 の法則も、アルキメデスが見つけたものだ。 積分を使えば、どちらも 行で計算できる。

答

別解

この面積 には、図形的な意味がある。 年前、アルキメデスが発見した「 の法則」だ。

囲む長方形と比べる。

区間 で、 の下の面積を求めた。 この放物線を長方形で囲んでみよう。

  • 横: ( から まで)
  • 縦: ( での高さ )

長方形の面積は 。

放物線の下の面積は 。

簡単な比になった。

これは偶然ではない。一般に

放物線の下は必ず長方形の 。

アルキメデスはこの事実を微積分なしで証明した(取り尽くし法という、極限の先駆的な方法で)。紀元前 世紀のことである。

さらに一般化すると

曲線 長方形に対する割合
(直線) (三角形)
(放物線)

が大きいほど、曲線は「床に張りついて」から急上昇するので、下の面積は小さくなる。表と一致する。

で になるのは、三角形の面積公式そのもの。小学校の知識と、積分がつながった。

この「 の法則」を知っていると、検算がすぐにできる。

長方形()の は 。合っている。

逆に、答えが や になったら、明らかにおかしい。図形的な感覚で、計算ミスに気づける。

「答えの大きさが、図と合っているか」。積分の計算では、この確認がとても大事だ。

放物線の下は長方形の 。 この事実を体に染み込ませておけば、面積の問題で大きく外すことはない。

ポイント

  • 曲線が 軸より上なら 面積 = 定積分。
  • 面積を出す前に上下(符号)を確認する。

よくある間違い

  • グラフを描かずに積分し、曲線が 軸の上にあるか確認しない
  • の分母 を忘れる
  • 上端の を代入したあと、下端 の代入を省略する(0でも手順は踏む)

問6定積分(3次式)

★ 基礎定積分

問題

定積分 を求めよ。

ヒントを見る

項ごとに原始関数を作って、上端・下端を代入する。 を入れる側は消えるので、実質 回の計算で済む。

解答・解説

方針

各項を積分して原始関数を作り、 を代入して引く。 の原始関数は 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 項ごとに積分する。次数が上がっても、手順は同じだ。

原始関数を求める。

係数がきれいに約分される。この問題はそうなるように作られている。

代入して引く。

答えは 。

検算: 微分して戻す。 。元に戻った。

公式

① 原始関数を求める。

② 代入して引く。

まとめ: 次でも手順は同じ。(係数 が になる)のように、係数の変化も確かめると計算ミスが減る。

発展。 「積の積分は、積分の積ではない」。では、積の積分はどう計算するのか。

数IIIで学ぶ「部分積分」が、その答えだ。

積の微分公式

を、両辺積分する。

移項すると

部分積分の公式。 「積の積分を、別の積の積分に置きかえる」ことで、計算しやすい形へ持ち込む技術だ。例:

、 とすると

積の形が積分できた。

「微分公式を積分すると、積分公式が生まれる」。積分の技術はどれもこの関係から作られている。

微分公式 対応する積分技術
積の微分 部分積分
合成関数の微分 置換積分
商の微分 部分分数分解と組み合わせて

積分の方法はどれも微分公式の「裏返し」だ。

そして、それでも積分できない関数がある。 や がその例だ。

微分は必ずできるが、積分はできないことがある。 この非対称性が積分を「技術」たらしめている。

数IIの積分( だけ)はその最初の段階にすぎない。 数IIIでは置換積分・部分積分という道具を使って、より多くの関数を積分する。数IIでは「バラして積分できる」ので、項ごとの計算で答えが出る。

答

別解

「項ごとにバラして積分してよい」。この性質(線形性)は当たり前に見えて、実は積分でいちばんよく使う性質である。それを確かめよう。

線形性を分けて計算して確認する。

足す。

まとめて積分しても、バラして積分してから足しても、同じ答え。

これを「積分の線形性」という。

面積で考えれば、当たり前だ。 「高さが の図形の面積」は、「高さ の面積」と「高さ の面積」の和なので、積み重ねればよい。

しかし、当たり前でないことも押さえておこう。

積の積分は積分の積ではない。

確かめる。 として、区間 で。

左辺:

右辺:

同じことが微分でも言える。

正しくは、積の微分公式

微分でも積分でも、「和と定数倍」は素直に分けられるが、「積と商」は分けられない。この「素直に分けられる」性質を、数学では線形性という。線形性を持つ操作は扱いやすい。

  • 微分・積分(和と定数倍について)
  • 行列の掛け算
  • 期待値()
  • 極限

逆に、線形でない操作は途端に難しくなる。

「バラして計算できる」という、この当たり前の性質。 それがどれほど貴重かは、バラせない場面に出会って、はじめて分かる。

線形性は計算を大きく楽にする性質だ。

ポイント

  • 、。
  • 上端・下端を代入して引く。

よくある間違い

  • としてしまう(4で割るのを忘れる。正しくは )
  • を代入したとき を としてしまう(2項とも足す)
  • 積の形( のような)と勘違いして、無理な変形をする(これは和なので項別に積分する)

問72曲線で囲む面積

★ 基礎面積2曲線

問題

曲線 と直線 で囲まれた部分の面積を求めよ。

ヒントを見る

まず交点を求めて、囲まれる区間を確定する。区間内でどちらが上かを確かめたら、面積は『上 − 下』の定積分。

解答・解説

方針

まず交点を求めて積分区間を決める。囲まれた部分では「上の曲線 − 下の曲線」を積分する。 では直線 が上、放物線 が下。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 曲線で囲まれた面積は、「上 下」を積分する。

段階で準備する。

手順1: 交点を求める(積分区間が決まる)。

積分区間は 。

手順2: どちらが上かを確認する。

で比べる。

直線 のほうが上だ。

「上 下」の順序を間違えると、符号が逆になる。 必ず確認する。

重要囲まれた面積

① 交点を求める。 より 、、。積分区間は 。

② 上下を決める。 では (例: で )。直線 が上、放物線 が下。

③ 「上 − 下」を積分する。

xyO(1,1)
y=x と y=x^2 で囲む面積(∫[0→1](x−x^2)dx=1/6)

まとめ: 曲線の面積は「交点で区間を決める → どちらが上か確かめる → 上 − 下 を積分」。上下を逆にすると符号が変わるので、代表点で必ず確認する。

発展。 「上 下」を積分する、という考え方は、 軸の位置に依存しないという点で優れている。

なぜか。 曲線の「差」だけを見ているので、グラフ全体を上下に平行移動しても、面積は変わらない。

が消える。当然だ。 つの曲線を同じだけ上げても、間の面積は変わらない。

この性質があるので、「曲線が 軸の下にあるかどうか」を気にしなくてよい。例: と (どちらも 軸の下)で囲まれた面積は?そのまま「上 下」を積分すればよい。

が消えた。この問題の面積は元の問題( と )と同じ である。

軸の下にあっても、面積の計算は変わらない。これに対し、「 軸との面積」を求めるときは、 軸の上下を必ず確認する必要があった。

「 軸との面積」も、実は「 曲線間の面積」の特別な場合だ。

だから「上 下」の考え方に統一できる。曲線が 軸の下にあるなら

「 軸(上) 曲線(下)」。この形で書けば、符号で悩まない。

すべての面積問題を、「上 下」に統一する。 そうすれば、場合分けが減り、ミスが減る。そして、この考え方は 次元へ拡張される。

体積を求めるときは、「断面積」を積分する。

「面積を積分すると、体積になる」。次元が つ上がるだけで、構造はまったく同じだ。

「積分とは、 つ低い次元の量を足し合わせて、 つ高い次元の量を作ること」。この見方は数IIIの回転体や、大学の重積分でも使う。

答

別解

この答え には、有名な公式がある。「 公式」だ。 知っていれば、すぐに答えが出る。

公式。

または、放物線と直線で囲まれた面積として

( は 次の係数、、 は 交点の 座標。)

この問題に当てはめる。

「上 下」の差の関数を作る。

次の係数は 、交点は 、。

積分を 度もせずに、答えが出た。

この公式の何が便利か。

交点の 座標さえ分かれば、面積が「引き算と 乗」だけで出る。例: と で囲まれた面積は?

交点を求める。

公式を使う。( 次の係数は 。)

積分計算なしで、面積が出た。 素直に積分すると、 次式の展開と代入で 分はかかる。なぜこの公式が成り立つのか。

差の関数は必ず の形になる(交点で になる 次式だから)。

これを積分すると、常に という形に収まる。計算してみれば確かめられる。

「交点の間隔の 乗を、 で割る」。覚えやすい形だ。そして、この公式は入試で頻出する。

放物線と直線、放物線と放物線のように、 次曲線どうしで囲まれた面積は、すべてこの公式ですぐに求められる。ただし、条件を確認すること。

  • 次関数と 次関数(または 次関数どうし)であること
  • 交点が つあること
  • その 交点のあいだの面積であること

この 条件が揃えば、 公式が使える。

「公式を知っていること」は、試験時間の中で大きな差になる。 しかし、なぜ成り立つのかを理解していないと、条件を外れた問題で誤用する。

公式はなぜ成り立つかを理解したうえで使う。それが正しい使い方だ。

ポイント

  • 交点で積分区間を決める。
  • 面積 = ∫(上 − 下)。上下は代表点で確認。

よくある間違い

  • 「上 下」の順序を逆にして、面積が負になる
  • 交点を求めずに、積分区間を勝手に決めてしまう
  • どちらが上かを確認せず、直感で決めてしまう(区間内の1点で値を比べる)

問8奇関数の定積分

★ 基礎定積分奇関数

問題

定積分 を求めよ。

ヒントを見る

計算する前に、被積分関数の対称性(原点対称かどうか)と積分区間の形に注目しよう。気づけば、計算せずに答えられる。

解答・解説

方針

は奇関数(原点対称)。左右対称な区間 での積分は、正の部分と負の部分が打ち消し合って になる。もちろん計算しても確かめられる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 計算する前に、答えが分かる。

これは奇関数である。

奇関数を原点対称な区間 で積分すると、必ず になる。

理由は「打ち消し合い」だ。 のグラフは原点対称なので、

  • 右半分()は 軸の上 → 正の面積
  • 左半分()は 軸の下 → 負の面積(同じ大きさ)

足すと、ちょうど 。もちろん、まともに計算しても になる。

しかし、対称性に気づけば、計算せずに済む。

公式奇関数()は、対称区間で

① 奇関数だと見抜く。 は なので奇関数。グラフは原点対称。

② 対称区間なので 。 で正の部分と負の部分がちょうど打ち消す。

(計算で確かめると 。)

xyO
奇関数 y=x³。原点対称で正負の面積が打ち消し、∫=0

まとめ:奇関数 × 対称区間 は即 。 を見たら、まず対称性を疑うと計算がすぐに終わる。

発展。 「対称性を使って計算を省く」考え方は、数学だけでなく、物理学の根本原理にもなっている。

物理では、対称性が「保存則」を生む。ネーターの定理( 年、エミー・ネーター)

対称性 保存される量
時間の平行移動対称(実験を明日やっても同じ結果) エネルギー保存則
空間の平行移動対称(場所を変えても同じ結果) 運動量保存則
回転対称(向きを変えても同じ結果) 角運動量保存則

「物理法則が、いつでも・どこでも・どの向きでも同じ」という当たり前の事実から、エネルギー・運動量・角運動量の保存則が導かれる。これは 世紀物理学の最も重要な定理の一つと言われる。そして、その証明の中で「対称な積分」が使われる。

素粒子物理でも、対称性が中心的な役割を果たす。

  • 粒子と反粒子の対称性(C対称性)
  • 鏡映対称性(P対称性)
  • 時間反転対称性(T対称性)

そして、これらの対称性が「わずかに破れている」ことが、宇宙に物質が存在する理由だと考えられている(CP対称性の破れ、小林・益川理論でノーベル賞)。

完全に対称なら、物質と反物質は同量作られ、すべて対消滅して、宇宙には何も残らなかったはずだ。わずかな非対称があったから、物質が残ったと考えられている。

「対称なら になる」という、この積分の事実。 物理でも「対称なら打ち消し合う」という考え方がよく使われる。 という 行に、そんな含意が隠れている。

答

別解

「なぜ になるのか」を、面積の絵で完全に理解しよう。 そして、この技がどれほど計算を省くかを見る。左右を別々に計算する。

右半分( から )。

正の値。 軸の上にある面積だ。

左半分( から )。

負の値になる。 軸の下にあるからだ。

足す。

「正の面積 」と「負の面積 」が、ぴったり打ち消し合った。これが になる理由である。大事な注意: 「面積が 」ではない。

もし「 と 軸で囲まれた『面積』は?」と聞かれたら、答えは ではない。

符号を無視して、絶対値で足す。

「定積分」と「面積」は別物である。この区別を必ず覚えておくこと。さて、この対称性の技がどれほど有効かを見よう。

問題: を求めよ。

まともに計算すると、 次式の原始関数を求めて、 を代入して引くことになり、かなりの手間だ。しかし、被積分関数を見てほしい。

すべて奇関数だ。 奇関数の和はまた奇関数である。

計算せずに、答えは 。

すぐに終わった。

この技が使える条件を、確認しておこう。

  • 被積分関数が奇関数( の奇数乗だけからなる)
  • 積分区間が原点対称( の形)

つとも揃って、はじめて になる。区間が や なら、対称でないので にならない。

「積分の前に、対称性を確認する」。この習慣で、計算量が大きく減る。

数IIIの積分では、この技が生死を分ける。 のような問題で、 は偶関数だから でよい。そう見抜けるかどうかで、時間が半分になる。

対称性を使うと、計算を大きく省ける。

ポイント

  • 奇関数は ()。
  • 対称区間 で奇関数の積分は 。

よくある間違い

  • 定積分の値 を「面積が 」と勘違いする(面積は )
  • 奇関数であることに気づかず、まともに計算して時間を使う
  • 積分区間が原点対称でない場合にも「奇関数だから0」と適用してしまう

問9偶関数の定積分

★ 基礎定積分偶関数

問題

定積分 を求めよ。

ヒントを見る

被積分関数の対称性( 軸対称)と、区間が左右対称であることに注目。半分の区間の積分に直すと計算が軽くなる。

解答・解説

方針

は偶関数( 軸対称)。対称区間なら「 から端までの積分の 倍」で計算できる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 今度は偶関数だ。

偶関数のグラフは 軸対称。原点対称な区間で積分すると、左右の面積が「等しい」(打ち消し合わない)。

半分だけ計算して、 倍すればよい。

まともに計算しても、同じ。

偶関数は 倍、奇関数は 。対称性から得られる つの方法だ。

公式偶関数()は、対称区間で

① 偶関数だと見抜く。 は なので偶関数。 軸対称。

② 倍公式を使う。

まとめ:偶関数 × 対称区間 は「片側の 倍」。下端が になるぶん代入がやさしくなる。 は偶関数だ。

発展。 どんな関数も偶関数と奇関数の和に分解できる。

確かめよう。 第 項を 、第 項を とすると

そして

例: を分解する。

となる。当たり前だが、多項式では「偶数乗と奇数乗に分ける」だけである。この分解が積分で役に立つ。

次の問題の答えがもう出てしまった。そして、この「偶奇分解」の考え方は、はるかに広い場面で使われる。

関数を「性質のよい部品」に分解する。これが解析学の中心的な方法だ。

  • 偶関数 奇関数(対称性による分解)
  • フーリエ級数( と への分解)
  • テイラー展開(多項式への分解)
  • 固有関数展開(量子力学)

「複雑なものを、扱いやすい部品の和に分ける」

そして、部品ごとに計算して、最後に足し合わせる。線形性があるからこそ、この方法が使える。偶関数と奇関数への分解は、その最も簡単な例だ。

つの関数を、 つの対称性に分ける。 そこから、解析学の大きな流れが始まっている。

答

別解

偶関数と奇関数を、完全に整理しておこう。 この つを見分けられれば、積分の計算量が大きく減る。定義と、見分け方。

偶関数 奇関数
定義
グラフ 軸対称 原点対称
例 、、、定数 、、、
の積分

見分け方のコツ: の「次数」を見る。

  • 偶数乗だけ(、、定数 )→ 偶関数
  • 奇数乗だけ(、、)→ 奇関数
  • 混じっている()→ どちらでもない

「偶数乗 → 偶関数、奇数乗 → 奇関数」。名前の由来そのままだ。

面積で確認する。

右半分( から )。

左半分( から )。

両方とも で、等しい。

偶関数では、左右の面積が同じ(打ち消さない)。だから 倍でよい。奇関数との違いを、絵で見よう。

奇関数(): 左半分が 軸の下(負)、右半分が上(正)→ 打ち消し合って

偶関数(): 左右とも 軸の上(正)→ 足し合わさって 倍

「対称の仕方」が違うので、結果が正反対になる。そして、この つの技を組み合わせると、複雑な積分がすぐに解ける。例:

項ごとに、偶奇を判定する。

項 次数 偶奇 積分値
(偶) 偶関数
(奇) 奇関数
(偶) 偶関数
(奇) 奇関数
(偶) 偶関数

奇数乗の項( と )は計算するまでもなく になる。

残った偶数乗の項だけを、半分の区間で計算して 倍する。

計算量が大幅に減った。

「奇数乗は捨てる、偶数乗は半分にして 倍」。原点対称な区間の積分では、この 行が最初の一手になる。次の問題(問題 )で、この技を使う。

ポイント

  • 偶関数は ()。
  • 対称区間で 。

よくある間違い

  • 偶関数なのに「 になる」と勘違いする( になるのは奇関数)
  • 倍するのを忘れて、 の値()を答えてしまう
  • の符号処理を誤り、 としてしまう

問10偶関数・奇関数に分けて計算

★ 基礎定積分偶関数奇関数

問題

定積分 を求めよ。

ヒントを見る

つの項を別々に見る。左右対称な区間の積分では、奇関数の項と偶関数の項で結果が分かれる。どちらが消えるか。

解答・解説

方針

偶関数の部分()と奇関数の部分()に分ける。奇関数は対称区間で になるので、偶関数の部分だけ計算すればよい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 被積分関数 は、偶関数でも奇関数でもない(偶数乗と奇数乗が混じっている)。

しかし、 項に分ければ、それぞれは対称性を持つ。

奇関数の項は 。 計算する必要すらない。

偶関数の項は半分を 倍。

足す。

「奇数乗の項は捨てる」。この一手で、計算が半分になった。

公式奇関数の対称区間積分は 、偶関数は

① 偶・奇に分ける。 は偶関数、 は奇関数。

② 奇関数の部分は消える。 。

③ 偶関数の部分を計算する。

よって全体は 。

まとめ:対称区間の積分は偶と奇に分けると速い。奇の項は消えるので、偶の項だけ 倍公式で計算すればよい。

発展。 「奇関数の項は、対称区間で になる」という性質は、フーリエ級数で重要な役割を果たす。

フーリエ級数とは。 任意の周期関数を、 と の和で表す方法だ。

問題は係数 、 をどう求めるかである。

答え: 積分を使う。

なぜ、この積分で係数が取り出せるのか。

決め手は「直交性」だ。

「違う波どうしを掛けて積分すると、 になる。」

理由は対称性である。 は奇関数(偶 奇 奇)だから、対称区間の積分は 。

だから、 に を掛けて積分すると、 の成分だけが残り、他はすべて になる。狙った係数だけを「抽出」できる。

「奇関数の積分は 」という性質は、フーリエ解析という理論の基礎になっている。そして、フーリエ解析は現代の多くの技術で使われている。

  • 音楽の圧縮(MP3)
  • 画像の圧縮(JPEG)
  • 音声認識、ノイズ除去
  • 医療画像(MRI、CT)
  • 通信(電波の変調)

音楽や写真のデータを扱う計算でも、 と同じ性質が使われている。

対称性による「打ち消し」は、単なる計算の省略ではなく、情報を分けて取り出すための原理でもある。

答

別解

素直に計算しても、もちろん解ける。 つのルートを比べて、対称性を使う利点を確かめる。そして、この技が使えない場合も押さえる。

素直ルート: そのまま積分する。

上端 :

下端 :

引く。

同じ答え。 しかし分数の計算が 回入った。符号ミス・通分ミスの機会が 回ある。

対称性ルートなら、分数計算は 回だけ()。ミスの危険が大きく減る。

特に の符号処理は、ミスの温床だ。 を としてしまえば、答えが変わってしまう。

「計算しなくてよい部分は、計算しない」。これがいちばん確実なミス防止策である。さて、この技が使えない場合を確認しておこう。

ケース1: 区間が原点対称でない。

奇関数の項()も確かに寄与している( の部分)。 にはならない。

「区間が の形」でなければ、対称性の技は使えない。ケース2: 区間がずれている。

は原点対称ではない → 素直に計算するしかない。

「対称性が使えるか」の判定は、 つ。

  1. 積分区間が の形か?
  2. 被積分関数の偶奇は?

この つを、積分を始める前に確認する。 秒の確認で、計算量が半分になることがある。

そして、対称性が使えないときは、素直に計算する。 無理に使おうとすると、間違える。

「使えるときに使う、使えないときは使わない」。当たり前だが、これを見極める判断力が計算力である。

検算も忘れずに。 答え は妥当か?

の積分()は正、 の積分は なので、合計は 。図形的にも、 の面積が残るだけだから、納得できる。

ポイント

  • 対称区間では偶・奇に分ける。
  • 奇の項は 、偶の項だけ 。

よくある間違い

  • の項(奇関数)も計算に入れてしまい、余計な手間と符号ミスを招く
  • 偶関数部分を 倍するのを忘れる
  • の符号処理を誤る(素直に計算するときの最頻ミス)

問11微分と積分の関係

★ 基礎微分積分の関係

問題

を求めよ。

ヒントを見る

『積分してから微分する』とどうなるか、という関係そのものを問う問題。関係を思い出せなければ、実際に積分 → 微分と手を動かして確かめてもよい。

解答・解説

方針

「上端が の定積分」を で微分すると、被積分関数の を に置きかえたものになる。積分してから微分すると元に戻る、という関係。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) この式は、微積分学の基本定理そのものだ。

「積分してから微分すると、元に戻る。」

答えは被積分関数に を代入するだけ。

計算はこれで終わり。注意するのは、記号の使い分けだ。

  • : 積分の中で動く変数(積分変数)。積分が終われば消える
  • : 積分の上端。積分の結果は の関数になる

は「 の関数」である( は消えている)。

その関数を で微分すると、被積分関数の を に置きかえたものになる。これが定理の主張だ。

定理(積分してから微分すると元に戻る)

上端が の定積分を で微分すると、被積分関数の を に置きかえたものになる。

(確かめ:。これを微分すると 。)

まとめ:「 を で微分 = 中身の を に」。下端 が何であっても結果は同じ(定数部分は微分で消える)。

発展。 「積分してから微分すると元に戻る」ことは分かった。では、上端が でなく、 の関数だったら?

単純に を代入するだけでは間違いだ。合成関数の微分(連鎖律)が必要になる。

「被積分関数に上端を代入」× 「上端の微分」。後ろの を忘れてはいけない。

一般形で書くと

この形は大学入試でも問われる。そして、下端が の場合はどうか。

上端と下端を入れかえると、符号が反転する。

マイナスがつく。

「上端で微分 → そのまま」「下端で微分 → 符号反転」。この違いを押さえておこう。さらに、両方が の関数なら

ライプニッツの積分則の特別な場合だ。この公式は物理や工学で「積分の中に変数が入っている量」を扱うときに、頻繁に使われる。

電磁気学のマクスウェル方程式(積分形)、流体力学のレイノルズの輸送定理など、「動く境界での積分の微分」を扱う場面は多い。

基本定理は単なる計算規則ではなく、「積分と微分がどう関係するか」を表す、解析学の基本のきまりである。

答

別解

定理を信じずに、実際に積分してから微分してみよう。 本当に元に戻るのかを、この目で確かめる。

手順1: まず、定積分を計算する。

上端 :

下端 :

引く。

これは の関数だ( が消えている)。

手順2: これを で微分する。

元の被積分関数に戻った。

定理は正しかった。

注目してほしいのは、 という定数(下端 から来た部分)が、微分で消えたこと。

「下端が何であっても、微分すれば同じ結果になる」。下端は定数を生むだけで、微分すれば消えてしまう。

この事実から、定理の意味が分かる。

は、 の原始関数の つである。下端 を変えると、定数だけが変わる(これが積分定数である)。微積分学の基本定理を、 つの形で書いておこう。

この つは、同じ定理の表と裏である。形1が言うのは、「面積を上端で微分すると、その点の高さになる」ということ。

直感的に理解しよう。 面積 を考える。 を少し( だけ)増やすと、面積はどれだけ増えるか?

増えた部分は、幅 、高さ約 の「細長い短冊」だ。

とすると

「面積の増加率 その点の高さ」。当たり前のようだが、これが基本定理の内容だ。

面積を求める(積分)ことと、傾きを求める(微分)ことが、逆の操作である。この発見が 世紀の数学の大きな進歩だった。

この定理があるから、面積を「原始関数の差」として計算できる。 無限個の長方形を足す必要は、もうない。

ポイント

  • 。
  • 下端の定数は微分すると消えるので影響しない。

よくある間違い

  • と の役割を混同する( は積分変数で消え、 は上端として残る)
  • 被積分関数に を代入せず、そのまま と答えてしまう
  • 定積分を計算してから微分する手間を惜しんで、公式を誤って適用する(下端で微分すると符号が逆になる)

問12x 軸の下にある部分の面積

★ 基礎面積

問題

曲線 と 軸で囲まれた部分の面積を求めよ。

ヒントを見る

まず交点を求めて図をかく。曲線が 軸の下にある区間の面積は符号をどう扱うのだったか。『上 − 下』の原則で考えれば迷わない。

解答・解説

方針

囲まれた区間では曲線が 軸より下()。面積は「 軸 − 曲線」つまり で計算する。まず 軸との交点で区間を決める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) まずグラフを描く。 これを飛ばしてはいけない。

軸との交点は 。

そして、 の範囲では、 で、グラフは 軸の下にある( 切片が だ)。

ここで間違えやすい。

素直に積分すると、負の値が出る。

負になった。 面積が負になるはずがない。面積を求めるには、「上 下」の順で引く。

( 軸 が「上」、曲線が「下」。)グラフを描かずに積分すると、符号を間違える。

重要区間で (曲線が 軸より下)なら、面積

① 交点で区間を決める。 より 。区間は 。

② 上下を確かめる。 この区間で (曲線は 軸の下)。面積は「上( 軸)− 下(曲線)」。

③ 偶関数なので 倍で計算する。

xyO-22
y=x^2-4 と x軸で囲む面積(x軸より下、面積=32/3)

まとめ:曲線が 軸の下にあるときは、そのまま積分すると負の値になる。面積は正なので「 を積分」または「定積分」で正にする。上下の確認が命だ。

発展。 「 軸の上と下がある場合」の面積計算は、さらに注意が必要だ。

例: と 軸で囲まれた面積は?

グラフを描くと

  • 区間 では で、 軸の上
  • 区間 では で、 軸の下

上と下の両方がある。

素直に で積分すると

になってしまう。 上の面積と下の面積が、打ち消し合ったのだ。しかし、面積は ではない。

正しくは、区間を分けて、それぞれ絶対値をとる。

計算すると

面積は 。

軸と交わるたびに、区間を分ける。これが原則だ。

手順をまとめよう。

  1. グラフを描く(または、 軸との交点を全部求める)
  2. 交点で区間を分ける
  3. 各区間で、 軸の上か下かを判定する
  4. 上なら 、下なら
  5. すべて足す

この 段階を踏めば、どんな面積問題も解ける。そして、絶対値を使って 行で書くこともできる。

絶対値がついた積分が、「面積」の正確な表現だ。

しかし、絶対値のままでは計算できない。 結局、符号で場合分けして、区間を分ける必要がある。

「絶対値を外す 場合分けする」。数Iで学んだこの原則を、積分でも使う。

面積の問題で、いきなり積分に飛びつかないこと。 グラフを描き、交点を求め、上下を確認する。この 手順を必ず踏む。

答

別解

この面積は 通りの方法で求められる。 どれも同じ になることを確かめ、最速の道を見つけよう。方法1: 偶関数の対称性を使う。

半分を計算して、 倍する。

負の数の代入が消えるので、符号ミスが起きない。方法2: 公式を使う(最速)曲線 と 軸()で囲まれた面積。

差の関数は

次の係数 、交点 、。

積分せずに、すぐに答えが出た。

方法3: 素直に積分して、符号を反転する。

つとも同じ答え。理論に矛盾はない。

速さを比べる。

方法 手間 ミスのリスク
公式 秒 交点さえ正しければ安全
偶関数の対称性 分 低い(負の代入なし)
素直に積分 分 高い(符号ミス多発)

公式がいちばん速い。 使える場面では必ず使いたい。しかし、公式の適用条件を確認すること。

  • 次関数と直線( 軸も直線)で囲まれている
  • 交点のあいだの面積

この条件が揃っているので、使える。さて、「面積」と「定積分」の違いを、最後にもう 度確認しよう。

符号が違う。

問題文が「面積を求めよ」なら、答えは正の 。問題文が「定積分の値を求めよ」なら、答えは負の 。「何を聞かれているか」を、必ず読み取る。

この区別を曖昧にすると、正しく計算しても不正解になる。 数学の答案では、問いに正確に答えることが、計算力と同じくらい大切だ。

ポイント

  • 曲線が 軸より下なら 面積 。
  • そのまま積分した負の値の絶対値でもよい。

よくある間違い

  • 軸の下にあることを見落とし、負の値をそのまま面積として答える
  • 「上 下」の順序を間違える( 軸 が上、曲線が下)
  • 交点 を求めずに、積分区間を決めてしまう