数学II / 三角関数

三角関数 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 度とラジアンの変換
  2. 扇形の弧長と面積
  3. 三角関数の値(単位円)
  4. 三角関数の相互関係
  5. 三角関数の性質
  6. 特殊角の三角関数の値
  7. 三角関数のグラフ(振幅・周期)
  8. グラフの平行移動
  9. 三角方程式(基本)
  10. 三角不等式(基本)
  11. 加法定理
  12. 2倍角の公式

問1度とラジアンの変換

★ 基礎弧度法

問題

(1) 、 をラジアンで表せ。

(2) 、 を度で表せ。

ヒントを見る

がラジアンで何にあたるかを思い出す。この 本の対応さえあれば、あとは比例配分で変換できる。

解答・解説

方針

ラジアンが変換の基本。度からラジアンは を、ラジアンから度は をかける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 度とラジアンの変換は、 本の関係式から全部作れる。

これだけ覚える。 あとは比例計算だ。

(1) 度 → ラジアン: で割って、 を掛ける()。

(2) ラジアン → 度: で割って、 を掛ける()。

「 を に置きかえるだけ」 と覚えると、ラジアン → 度は暗算でできる。

公式 ラジアン。度 → ラジアンは 、ラジアン → 度は

(1) 度にラジアン換算の をかける。

(2) ラジアンに をかける。

発展。 なぜ 周を に分けたのか。この数には、古代の名残がある。

古代バビロニアの 進法。 彼らは を基本の単位としていた( は で割り切れ、約数がとても多い)。 年が約 日であることとも相まって、 が円の分割に選ばれたという。

時間の単位( 時間 分、 分 秒)も、この 進法の名残である。 年前の習慣が今も腕時計の中で生きている。

しかし、数学と物理は を捨てた。 自然界に という数の必然性はないからだ。

代わりに現れたのが である。 円周と直径の比は、人間が決めた数ではなく、自然に決まっている数だ。誰が測っても、同じ になる。

「人間の都合の単位」から「自然の単位」へ。 これは科学の進歩に、繰り返し現れるパターンだ。

  • 長さ: フィート(人の足の長さ)→ メートル(地球の子午線から定義、現在は光速で定義)
  • 温度: 華氏(人の体温を基準)→ ケルビン(絶対零度を基準)
  • 角度: 度( 分割)→ ラジアン(弧と半径の比)

「自然が採用している単位」で書き直すと、法則は必ずシンプルになる。 アインシュタインの も、光速を とする単位系では となり、これ以上ないほど簡潔になる。

ラジアンを使うと、微分や積分の公式が簡単な形になる。

答

(1) 、 (2) 、

別解

そもそも、なぜラジアンなんてものを使うのか。 度( 分割)で困ることはなかったはずだ。この疑問に答えておこう。理由が分かれば、ラジアンが好きになる。

ラジアンの定義に立ち返る。

「弧の長さ 半径」を角度とするのがラジアンだ。

円周は だから、 周()は ラジアン。 半周()なら ラジアンとなる。これが の意味である。

理由1: 弧の長さと面積の公式が、ずっと簡単になる。

度で書くと ラジアンで書くと
弧の長さ
扇形の面積

という数字が消え、 も消えた。 掛け算だけの、きれいな式になる。理由2(こちらが本命): 微分の公式がラジアンでしか成り立たない。

数IIIで学ぶ、最も基本的な公式。

この簡単な式は、 がラジアンのときにしか成り立たない。もし度を使ったら

という、汚い係数がくっついてくる。 階微分すればその 乗、 階なら 乗がつき、式がどんどん複雑になる。

その根っこにあるのが、この極限だ。

ラジアンだからこそ、この極限がぴったり になる。 度で測ると という半端な値になってしまう。

( が小さいとき) という便利な近似も、ラジアンで測るときだけ成り立つ。振り子の運動方程式、光の回折、波の解析など、物理のあらゆる場面で、この近似が使われている。

理由3: 単位がない(無次元)。 は「長さ 長さ」だから、単位が打ち消し合って消える。だからラジアンは他の物理量と自由に掛けたり足したりできる。

度は「人間の都合( という数の割り切れやすさ)」で決めた単位。ラジアンは「数学の都合」で決めた単位。

そして、自然法則はラジアンで書くと簡単になる。だから物理も工学もラジアンを使う。 という変換には、早めに慣れておきたい。

ポイント

  • が換算のかなめ。
  • の前の分数を、そのまま度に直せる()。

よくある間違い

  • としてしまう( が正しい)
  • 度からラジアンへの変換で を掛けてしまう(度→ラジアンは 倍)
  • 約分を忘れて のまま答える(既約分数に直す)

問2扇形の弧長と面積

★ 基礎弧度法扇形

問題

半径 、中心角 の扇形の弧の長さ と面積 を求めよ。

ヒントを見る

中心角がラジアンで与えられたときの弧の長さ・面積の式を思い出そう。どちらも半径と中心角だけで書ける、度数法の公式よりずっと短い形だった。

解答・解説

方針

弧度法だと、扇形の弧長と面積の公式がとても簡単になる。中心角(ラジアン)を として、、。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) ラジアンを使うと、扇形の公式はとても簡単になる。

も も出てこない。掛け算だけ。

弧の長さ。

面積。

には必ずラジアンを入れる。 度()を代入すると、まったく違う値になってしまう。公式が使えるのはラジアンのときだけだ。

この簡潔さがラジアンを使う理由の つである。

公式扇形(中心角 ラジアン):弧長 、面積

弧長は

面積は

2π/36
半径6・中心角 2π/3 の扇形(弧長4π・面積12π)

発展。 扇形の公式 は回転運動の物理でそのまま使われる。

角速度 (オメガ、 秒あたり何ラジアン回るか)で回る物体を考えよう。時間 秒で回る角度は 。そのとき、物体が円周上を進む距離は

速さ(距離 時間)は

「速さ 半径 角速度」。これが回転運動の最も基本的な式だ。ラジアンだからこそ、この式がこんなに簡単になる(度で測ったら、 が紛れ込む)。

この式の意味を身近な例で。

メリーゴーラウンド。 内側の馬も外側の馬も同じ角速度 で回る( 周する時間が同じ)。しかし外側( が大きい)のほうが、速さ が大きい。だから外側のほうがスリルがある。

レコード盤・ハードディスク。 中心に近いデータと外周のデータでは、読み取りヘッドに対する相対速度が違う。CD が「一定の速さでデータを読む」ために、回転数を場所によって変えているのは、この式のせいだ。

地球。 赤道上の人( 最大)は時速 km で東へ動いている。北極点の人()はその場で回っているだけ。同じ角速度でも、緯度で速さが違う。(ロケットを赤道近くから東向きに打ち上げるのは、この初速をタダで貰うためだ。)

という、扇形の弧の長さの式。 回転するものの運動はこの式で記述できる。

答

、

別解

公式を忘れても、「円全体の何分のいくつか」で考えれば必ず解ける。 小学校の考え方に戻るルートだ。そして、面積のもう つの公式も紹介する。

割合ルート: 円全体の何分の か。中心角 は 周()の何倍か。

円全体の である。( は の なので、度で考えても同じ。)あとは、円全体の弧(円周)と面積を 倍するだけ。

弧の長さ: 円周は 。その は

面積: 円の面積は 。その は

公式ルートと同じ答え。 小学校で習った「扇形は円の一部」という感覚だけで解けた。

公式が不安なときは、この割合ルートに戻ればよい。 遠回りだが、間違えにくい。さて、扇形の面積には、もう つ公式がある。

「弧の長さ 半径 」。 今回の値で確かめると

この式、何かに似ていないだろうか。

そっくりだ。

偶然ではない。 扇形を中心から放射状に細かく切り分けてみよう。細い扇形はほとんど三角形に見える(底辺 弧の切れ端、高さ 半径)。

その面積を全部足すと

扇形は「無限に細い三角形の集まり」だった。

曲がったものを、まっすぐなものの集まりで近似するというこの発想が、積分の出発点である。 アルキメデスは 年前、この考え方で円の面積 を導いた(円は「中心角 の扇形」だから、)。

つの公式(、、)は、すべてつながっている。 を に代入すれば になる。 つ覚えれば、残りは作れる。

ポイント

  • ラジアンなら 、。
  • とも書ける(弧長を使う形)。

よくある間違い

  • 公式に度()を代入してしまう(ラジアンを入れる)
  • 面積の公式で を忘れる()
  • 弧の長さの公式に を使ってしまう( で、 は1乗)

問3三角関数の値(単位円)

★ 基礎三角関数の定義

問題

のとき、、、 の値を求めよ。

ヒントを見る

まず単位円をかいて、この角の点がどの象限に来るかを確認する。座標のどちらが でどちらが かさえ思い出せば、符号のミスも防げる。

解答・解説

方針

単位円の上で、角 (=)の位置の点をとる。その点の 座標が 、 座標が 。 は 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 三角関数の値は、単位円の上の点の座標として読む。

の点は、単位円の左上(第 象限)にいる。

軸から 回った点は、 の点()を、 軸で折り返した点だ。

だから

は 。

単位円に点を打てば、符号も値も同時に決まる。

公式単位円上で、角 の点の座標が 。

は第2象限。基準となる角( 軸とのなす角)は なので、、 の大きさは と同じで、符号を象限で決める。第2象限は が正、 が負なので

は割り算。

xyOθ(-1/2, √3/2)
単位円で θ=2π/3 の点は (-1/2, √3/2)

発展。 「三角比」から「三角関数」への拡張は、定義を根本から作り直す大きな一歩だった。

中学・数Iの三角比: 直角三角形の辺の比

この定義では、 でしか意味がない。 直角三角形の鋭角しか扱えないからだ( の直角三角形など存在しない)。

数IIの三角関数: 単位円上の点の座標

この定義なら、 はどんな実数でもよい。 でも、 でも、 でも、単位円の上に点は打てる。

定義を広げても、古い値は変わらないことが大事だ。 は直角三角形で測っても単位円で測っても である。拡張は既存の知識を壊さない。

この「定義の拡張」というパターンは、数学の随所に現れる。

元の定義 拡張後 拡張のしかた
( は自然数)= 回掛ける 、、 指数法則を保つように決める
( は自然数) 公式が成り立つように決める
三角比(鋭角) 三角関数(すべての角) 単位円で定義し直す
実数 複素数 の解を追加する

「今まで通用していたルールが、拡張後も成り立つように定義する」。これが数学の拡張の作法だ。 も も、そう決めると全部つじつまが合うから、そう決めている。

そして拡張すると、新しい性質が分かる。三角関数を単位円で定義し直したことで、周期性(グラフが波になる)という性質が現れた。三角比のままでは、 が波だとは気づけない。

波は自然界のいたるところに現れる。 音、光、電波、量子力学の波動関数は、すべて三角関数で記述される。

単位円に点を打つ、という小さな一歩。 波を数学で扱うことは、ここから始まる。

答

、、

別解

三角定規を使う方法を紹介する。値を丸暗記しなくても、絵を描けばその場で作れる。

の点を作る手順。

手順1: 単位円を描き、 の方向に線を引く。 第 象限(左上)だ。

手順2: その点から 軸に垂線を下ろす。 すると直角三角形ができる。

手順3: この三角形の角度を読む。 軸の負の方向とのなす角は

-- の三角定規が現れた。

手順4: 三角定規の辺の比を思い出す。

単位円なので斜辺(半径)は 。だから

  • 横の辺( 軸方向)
  • 縦の辺( 軸方向)

手順5: 符号をつける。 第 象限なので、 は負、 は正。

「大きさは三角定規、符号は象限」。この 段階で、どんな角の値も作れる。象限と符号の対応を、表で押さえておこう。

象限 位置 () ()
第 右上
第 左上
第 左下
第 右下

覚え方はいろいろあるが、「 座標が 、 座標が 」に立ち返れば、表を覚える必要はない。 図を描いて、点がどの部屋にいるかを見るだけだ。

の符号は の符号になる。分子と分母の符号が同じなら正、違えば負だ。第 象限は 。

には、もう つの見方がある。

の方向に引いた直線の傾きが、 だ。左上へ向かう急な直線なので、傾きは負で、絶対値が大きい。図と一致する

を「傾き」と読むと、 が定義されない理由も分かる。 の方向は真上(垂直な直線)。そのため傾きが定義できないのだ。

単位円という 枚の絵で、・・ のすべてが分かる。 迷ったら、円を描く。

ポイント

  • 単位円の点の座標 = 。
  • 大きさは基準角で、符号は象限で決める。

よくある間違い

  • 第2象限なのに を正にしてしまう( 座標が負)
  • と を取り違える( が 座標、 が 座標)
  • の符号を、 と の符号から確認せずに答える

問4三角関数の相互関係

★ 基礎相互関係

問題

が第2象限の角で、 のとき、 と の値を求めよ。

ヒントを見る

と の 乗の和には、いつでも成り立つ関係がある。それで大きさを出し、符号は象限から決める。 は と の比。

解答・解説

方針

から の大きさが出る。符号は象限で決める(第2象限は )。 は 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 相互関係の公式を使う。

ここで が出た。どちらか決めなければならない。

決め手は「第 象限」という条件。 第 象限では 座標が負、つまり 。

は割り算で。

乗して を外すと、必ず が出る。 その符号を決めるのが象限の条件だ。これを使い忘れると、答えが つ出て終わらない。

公式相互関係 、

なので 。 は第2象限なので 。よって

は割り算。

xyO(−4/5, 3/5)
第2象限の点 (−4/5, 3/5)。直角三角形は 3:4:5

発展。 という式は、三平方の定理そのものである。

単位円上の点 は、原点からの距離が 。距離の公式(三平方の定理)から

証明終わり。 三角関数の最も基本的な等式が幾何の最も基本的な定理の言い換えだった。この式はいろいろな場面で使う。

使い道1: と の変換(この問題)

使い道2: 式の簡単化。 を見たら に置きかえられるので、 だけの式に統一できる。

使い道3: 積分。 は、(半角の公式、これも相互関係から出る)に直せば計算できる。

使い道4: 媒介変数の消去。 点 の軌跡を求めるとき

楕円が出てくる。 を消すのに、この式を使う。

そして、双曲線関数という「いとこ」もいる。

(、。符号がマイナスになっている。)

三角関数が円 を描くのに対し、双曲線関数は双曲線 を描く。 名前の由来だ。そして、この つは複素数を通じてつながっている。

円と双曲線が、虚数を経由して同じものになる。 オイラーの公式 が、その架け橋だ。 という素朴な式は、ここまでつながっている。

答

、

別解

単位円に、直角三角形を実際に描く。 そうすれば、公式も符号の議論も要らない。図を描けば、すべて分かる。

手順1: 単位円を描き、第 象限に点をとる。

ということは、 座標が 。第 象限(左上)なので、点は左上にある。

手順2: その点から 軸に垂線を下ろし、直角三角形を作る。

  • 斜辺(原点から点まで)(単位円の半径)
  • 縦の辺( 座標)
  • 横の辺()

手順3: 三平方の定理で、横の辺を求める。

-- の直角三角形が現れた(辺の比 )。

手順4: 符号を絵から読む。

点は第 象限(左上)にあるので、 座標は負。

で迷う余地がない。 図を見れば、 が左にあることは一目瞭然だ。

手順5: は「傾き」として読む。

原点から点 へ引いた直線の傾きは

左上へ向かう、ゆるやかな直線になる。傾きは負で、絶対値は より小さい。図と一致する。

この方法の何がよいか。

つ目: 符号ミスが構造的に起きない。 「第 象限だから は負」と頭で考えるのではなく、図を見れば左にある。考える必要すらない。

つ目: -- に気づける。 と聞いた瞬間に「あ、-- だな」と分かれば、 の値()は計算せずに出る。有名な直角三角形の比は覚えておくと速い。

つ目: 検算ができる。 のように、必ず になることを確かめる。もう つの相互関係も確認しておこう。

代入すると

一致した。 この公式は の両辺を で割っただけなので、覚えるより、その場で作るほうが早い。

ポイント

  • の大きさは 、符号は象限で決める。
  • 第2象限:、、。

よくある間違い

  • の符号を にしてしまうミス。象限で決める
  • のまま両方を答えにしてしまう(象限の条件で1つに絞る)
  • の符号を、 と から計算せずに勘で決めてしまう

問5三角関数の性質

★ 基礎三角関数の性質

問題

次の値を、 の三角関数を使って表せ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

丸暗記に頼らず、単位円で考えよう。、、 の点はもとの の点をそれぞれどう対称移動した位置にあるか。図を見れば符号も込みで読める。

解答・解説

方針

単位円で、角をずらしたときに点がどう動くかを考える。、、 での対称移動を使うと符号と関数が決まる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 三角関数の性質(公式)は つも つもあって、覚えきれない。単位円の対称性で読むのが正解だ。

基本の点 を、単位円に打つ( とする)。

(1) は 軸に関する対称点( が反転)になる。

(2) は原点対称( も も反転)の点になる。

(3) は 軸対称( が反転)の点になる。

公式を覚えるのではなく、点がどこへ移るかを見る。

公式、、

単位円での対称移動から、それぞれ次のようになる。

(1) は 軸に関する対称なので は変わらない。

(2) は原点に関する対称なので は符号が変わる。

(3) は 軸に関する対称なので は符号が変わる。

xyOθπ−θπ+θ−θ
θ の点と、π−θ(y軸対称)・π+θ(原点対称)・−θ(x軸対称)

発展。 、 という性質には、名前がついている。

  • 奇関数: → 原点対称なグラフ(、、、)
  • 偶関数: → 軸対称なグラフ(、、)

「奇」「偶」の名は の の偶奇に由来する。 (奇数乗)は奇関数、(偶数乗)は偶関数だ。この分類は積分でとても役に立つ。

奇関数を原点対称な区間で積分すると、必ず 。 左半分と右半分が、符号違いで打ち消し合うからだ。

偶関数なら、半分だけ計算して 倍すればよい。

「対称性を見抜いて、計算を省く」。数IIIの積分では、この判断が時間を大きく左右する。そして、この対称性は物理でも重要だ。

量子力学では、波動関数の「パリティ(偶奇性)」が保存される。粒子が奇関数的か偶関数的かで、起こりうる反応が決まる。対称性が自然法則を制限している。

「 は奇関数、 は偶関数」 という何気ない事実。それは、単位円を 軸で折り返したときに、 座標だけが反転する、という単純な観察から来ている。

単純な観察が、大事な法則につながる。 数学では、こうしたことがよくある。

答

(1) (2) (3)

別解

もし公式を「覚える」なら、 つの機械的なルールにまとめられる。 単位円が使えないとき(暗算したいとき)の保険として、知っておくとよい。ルール1: 「」「」では、関数名は変わらない。

符号だけが変わる可能性がある。ルール2: 符号は「 を鋭角だと思って、移った先の象限を見る」。

具体的にやってみよう。

(1)

を鋭角(たとえば )とすると、 は第 象限。

第 象限で は正。 だから符号は 。

(2)

は第 象限。

第 象限で は負。 だから符号は 。

(3)

は第 象限。

第 象限で は負。 だから符号は 。

「関数名そのまま、符号は移った先の象限で決める」。この ステップで、すべての公式が再現できる。ただし、例外がある。「」のときは、関数名が変わる。

と が入れかわる。

なぜか。()は「軸を 回す」ことに対応し、 軸と 軸が入れかわるからだ。 座標()と 座標()が交代する。

まとめ。

角 関数名 符号
、、 そのまま 象限で決める
入れかわる() 象限で決める

「 の『奇数倍』なら入れかわり、『偶数倍』ならそのまま」と覚えてもよい( は偶数倍だからそのまま)。

それでも、いちばん確実なのは単位円だ。 試験中に迷ったら、円を描いて点を打つ。 秒ほどで済み、間違えることもない。

公式は「速く解くための道具」であって、「思い出せないと解けないもの」ではない。 単位円という原理を持っていれば、公式は忘れてもよいのだ。

ポイント

  • =軸対称、=原点対称、=軸対称。
  • 対称移動で / の符号が決まる。

よくある間違い

  • の符号を負にしてしまう(第2象限で は正)
  • と を取り違える
  • でも関数名が変わらないと思ってしまう( と が入れかわる)

問6特殊角の三角関数の値

★ 基礎三角関数の値

問題

次の値を求めよ。

(1)

(2)

ヒントを見る

ラジアンを度に直して、どの象限のどの角かをはっきりさせる。・・ の値に、象限に応じた符号をつければよい。

解答・解説

方針

それぞれの角を度に直すか単位円で位置を確認し、特殊角の値を当てはめる。象限で符号を決める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 特殊角の値は、単位円に点を打って読む。

(1) ()

第 象限。 なので、 の点を 軸で折り返した点だ。

()は前に求めた通り 。

(2) ()

第 象限で、点は 。

は「傾き」を表す。 の方向へ引いた直線の傾きは 。図と一致する。

公式特殊角の値と単位円の符号(第2象限は 、、)

(1) は第2象限。基準角 で は正。 も第2象限、基準角 で は負。

たして

(2) は第2象限、基準角 。 は第2象限で負なので

xyO120°150°
第2象限の角 120°・135°・150°(基準角 60°・45°・30°)

発展。 特殊角(、、)の三角比が「きれいな値」になるのは、なぜだろうか。

理由は、対応する図形が「作図できる」からである。

  • : 正方形の対角線から()
  • 、: 正三角形を半分に切って()

定規とコンパスで作れる図形の角度だけが、根号で書ける値を持つ。では、 は?

根号では書けない。 は「角の 等分」()に対応し、これは定規とコンパスでは作図不可能であることが証明されている( 年、ヴァンツェル)。

古代ギリシャの三大作図問題の つ、「角の三等分問題」。 年間、誰も解けなかったこの問題は、「解けない」ことが証明されて決着した。その証明の決め手が、 が満たす 次方程式である。

倍角の公式 に を入れると

この 次方程式は有理数解を持たない(有理根定理で確かめられる)。そして「定規とコンパスで作図できる長さは、 次方程式を繰り返し解いて得られる数に限る」という定理から、 は作図できない。したがって の角も作図できない。

「作図できるか」という幾何の問題を、「方程式が解けるか」という代数の問題に言い換えて、答えが出た。

がきれいな値であること。 これは、 年以上前から続いた作図の問題とつながっている。

答

(1) (2)

別解

特殊角の値を「すぐに作る」方法を紹介する。表を丸暗記するより、はるかに確実だ。特殊角の の値を、 で並べる。

値

分子の根号の中が と順に増えていく。 分母はすべて 。これほど覚えやすい規則はない。

はこの表を逆から読むだけ。

値

根号の中が と減っていく。 と が鏡像になっている( だから当然だ)。この表さえあれば、あとは象限で符号をつけるだけ。

(1)を、この方法で解く。

: 。第 象限 → は正。 大きさは 。

: 。第 象限 → は負。 大きさは 。

足す。

(2) : 。第 象限 → は負。 大きさは 。

「大きさは基本の角、符号は象限」。この 段構えが特殊角の値を出す最短ルートだ。

検算のコツ。 答えが出たら、単位円の絵と照らし合わせる。

については、 の点は少しだけ上にある(高さ )。図と合う。

「値が正か負か」「大きいか小さいか」を、図で 度確かめる。 符号ミスの 割はこれで防げる。

ポイント

  • 角を度に直すと象限と基準角が見やすい。
  • 第2象限: 正、 負、 負。

よくある間違い

  • 第2象限の符号を取り違える( は正、 と は負)
  • を と分解できず、値が出せない
  • と の ・ の値を取り違える

問7三角関数のグラフ(振幅・周期)

★ 基礎三角関数のグラフ

問題

関数 について、値域(とりうる の範囲)と周期を答えよ。

ヒントを見る

自身の値域を思い出し、それが 倍されたらどうなるかを考える。縦に伸ばす変形が周期に影響するかどうかも、グラフを思い浮かべて判断しよう。

解答・解説

方針

は、( から )を縦に 倍したもの。振幅が 、周期は と同じ 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、元の を、縦に 倍に引き伸ばしたグラフだ。

値域(とりうる の範囲)。 は から まで動く。

全体を 倍する。

値域は 。 この「」を振幅という(波の高さ)。周期(何回で元に戻るか)。

縦に伸ばしても、横方向は何も変わらない。 が ごとに繰り返すなら、 も ごとに繰り返す。

縦の変化(振幅)と、横の変化(周期)は独立している。ここを混同しないこと。

公式 は振幅 、周期 、値域

は から まで動く。それを 倍するので

よって値域は (振幅 )。周期は、縦に 倍しても横方向は変わらないので、 と同じ 。

xyO
y=2sinθ:振幅2・周期2π(青は y=sinθ)

発展。 「どんな波でも、 と の足し算で書ける」というのがフーリエ級数で、 世紀の大きな発見の つだ。

どんなに複雑な波形も単純な 波の重ね合わせに分解できる。ギザギザの波(のこぎり波)でも、四角い波(矩形波)でも、 の無限和で表せる。

なめらかな 波を足していくと、カクカクした四角い波が現れる。意外だが、本当だ。この定理は音声や画像を扱うデジタル技術で使われている。

  • 音楽の圧縮(MP3): 音を 波に分解し、人間に聞こえない成分を捨てる。だからファイルが小さくなる
  • 画像の圧縮(JPEG): 画像を 次元の波に分解し、細かい成分を粗く記録する
  • 音声認識: 声を周波数成分に分解して、パターンを認識する
  • 地震波の解析、MRI、電波通信: どれもフーリエ変換を中心に使っている

「音を 波に分解する」考え方は、音楽や画像のデータを圧縮するときにも使われている。そして、その分解の基本単位が という 本の波だ。

振幅・周期・位相の つを読む練習は、フーリエ解析を学ぶための準備になる。

答

値域 、周期

別解

三角関数のグラフは つのパラメータで完全に決まる。 それを整理しておけば、どんな形でも読めるようになる。

一般形。

記号 名前 効果
振幅 縦に 倍(波の高さ)
なし 横に 倍(周期は )
位相 横に 平行移動
なし 縦に 平行移動(中心線の高さ)

今回の は、、、。

  • 振幅 → 値域は
  • 周期

練習してみよう。 なら?

  • 振幅 → 値域は
  • 周期 → 倍速く振動する

なら?

  • 振幅 、周期

「 の係数が大きいほど、周期は短い(速く振動する)」。直感と逆に感じるかもしれないが、 が少し変わるだけで中身が大きく変わるから、当然だ。周期の意味を定義から確かめる。

なら

これが と等しくなるのは、 のとき。

公式が導けた。 暗記でなく、定義から作れる。そして、この つのパラメータは現実の波を表すときにもそのまま使われる。

音の場合:

  • 振幅 → 音の大きさ(ボリューム)
  • 周期 (逆数の振動数 )→ 音の高さ(ピッチ)。 Hz が「ラ」の音
  • 位相 → 波の「ずれ」(ノイズキャンセリングは、逆位相の波をぶつけて音を消す)
  • → 通常は (基準線)

光の場合: 振動数が色を決める(赤は低く、紫は高い)。

電波の場合: 振幅を変えて情報を乗せるのがAM ラジオ、振動数を変えるのがFM ラジオだ。名前の由来はここにある(Amplitude Modulation / Frequency Modulation)。

の「振幅 」「周期 」を読む作業。 それは、音や光や電波を分析する作業と同じだ。

ポイント

  • :振幅 、周期 。
  • 縦の拡大(振幅)は周期に影響しない。

よくある間違い

  • 振幅が2倍になると周期も2倍になると思ってしまう(周期は変わらない)
  • 値域を のままにする(2倍するので から )
  • (周期が半分)と (振幅が2倍)を混同する

問8グラフの平行移動

★ 基礎三角関数のグラフ平行移動

問題

関数 のグラフは、 のグラフをどのように平行移動したものか答えよ。

ヒントを見る

中身が『 正の数 』の形。中身から引くとき、グラフは左右どちらに動くのだったか。具体的な点(たとえば山の頂上がどこへ行くか)で確かめると間違えない。

解答・解説

方針

が に変わると、グラフは 軸方向に 平行移動する(右へ動く)。。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) では、 が だけ引かれている。

引くと、グラフは右へ動く。

「マイナスなのに、右へ?」という点が、直感に反する。しかし理由は単純だ。

元のグラフ は で から始まる。

新しいグラフはいつ から始まるか? カッコの中身が になるときだ。

元の「 での出来事」が、新しいグラフでは「」で起こる。つまり だけ遅れている(右にずれている)。

公式 は、 を 軸方向に 平行移動したグラフ

中身が なので、。よって を 軸方向(横方向)に 、つまり右へ 平行移動したもの。

xyO
y=sinθ(青破線)を右へ π/3 動かした y=sin(θ−π/3)(赤)

発展。 この「横のずれ」を、物理では位相という。そして、位相のずれが大きな役割を果たす場面がある。

ノイズキャンセリング・イヤホン。外の騒音(波)をマイクで拾い、まったく逆の位相の波( だけずらした波)を作って重ねる。

波が打ち消し合って、静寂が生まれる。 「音で音を消す」ことができるのは、位相のずれを利用しているからだ。逆に、位相が揃うと波は強め合う。

この「強め合い・弱め合い」を干渉という。

光の干渉がシャボン玉の虹色を作り、CD の裏面が虹色に光る理由になっている。電波の干渉が、スマホの電波が届いたり届かなかったりする原因になる。位相には、もう つ大事な役割がある。

は を ずらしただけ。 つまり と は同じ波であり、位相が 違うだけだ。

この のずれが回転を生む。 単位円上の点 が円を描くのは、 方向と 方向の振動が ずれているからである( つの振動が同位相なら、点は斜めの直線上を往復するだけだ)。

つの波を、位相をずらして組み合わせると、回転が生まれる。 これが交流モーターが回る原理( 相交流)であり、円運動と単振動が表裏一体である理由だ。

「 右にずらす」という小さな操作。 その先に、音を消し、光を虹色に染め、モーターを回す物理が広がっている。

答

軸方向に だけ平行移動

別解

「マイナスなのに右へ動く」という違和感を、完全に解消しておこう。 ここを納得しておかないと、この先ずっと迷い続けることになる。具体的な点を、 つ追いかける。

元のグラフ の特徴点:

(上昇中) (山) (下降中)

新しいグラフ で、同じ出来事はいつ起こるか?「山()」になるのは、カッコの中身が のとき。

元は で山だったのが、新しくは で山。

ちょうど だけ、右にずれた

表にすると、一目瞭然だ。

出来事 元のグラフ 新しいグラフ ずれ
ゼロから上昇
山
ゼロへ下降

すべての出来事が ずつ遅れて起こる。 グラフ全体が右へずれた

直感的な言い方をすると。

「」は「 だけ遅れた時計」を見ているようなものだ。時計が 遅れていたら、その時計で「 時」のとき、実際には 時である。出来事が遅れて起こる 右へずれる。

この規則は三角関数に限らない。すべての関数で成り立つ。

方向は「逆」、 方向は「そのまま」。この非対称性が混乱のもとだ。

なぜ非対称なのか。 実は、 方向も「逆」になっている。 は、書き直すと

から を引いているので、 と同じく「引いたら正の方向へ動く」。

この形で書けば、 も も同じルール( から引いた分だけ右、 から引いた分だけ上)。円の方程式 が中心 を表すのと、まったく同じ理屈だ。

「 と の形にすれば、 だけ動く」。このように統一して理解しておけば、もう迷わない。

ポイント

  • は右へ 、 は左へ 。
  • 中身の符号に注意(引き算は右)。

よくある間違い

  • なので左へ移動、と逆に答えてしまう
  • 軸方向の移動と混同する( の中身が変われば横方向)
  • と を同じだと思ってしまう(後者は下へ 平行移動)

問9三角方程式(基本)

★ 基礎三角方程式

問題

のとき、方程式 を解け。

ヒントを見る

単位円で『高さが 』の点を探す。 つ見つけたら、同じ高さの点がもう つどこにあるかを、対称性で見つける。

解答・解説

方針

単位円で、 座標(=)が になる点をさがす。そのような点は左右に2つあり、対応する角が解。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 三角方程式は、単位円で解く。

は 座標。だから「 座標が になる点」を、単位円の上で探す。水平線 を引くと、円と か所で交わる。

  • 右上(第 象限):
  • 左上(第 象限):

つある。 だけで終わらせるのが、最大のミスだ。

「水平線は円を 回切る」。この絵をいつも頭に置いておく。

重要三角方程式 は、単位円で高さ( 座標)が になる角をさがす

は、単位円で 座標が の点。高さ の点は第1象限と第2象限に1つずつある。第1象限では 。もう1つは 軸に関して対称な位置で、。

xyOπ/65π/6
高さ 1/2 になる角は π/6 と 5π/6

発展。 三角方程式の解が「 つ」「無限個」になるのは、 が 対 の関数ではないからだ。

違う が同じ値を返す。 だから「 の逆」を考えようとすると、値が つに決まらない。

しかし、逆関数がほしい。 「 を満たす は?」に、 つの答えを返す関数がほしい。

そこで、範囲を狭めて、無理やり 対 にする。

この範囲での逆関数を (アークサイン、)という。

は返ってこない(範囲外だから)。逆関数は つの値しか返さないと決められている。

電卓の ボタンはこれを計算している。 だから「」を押すと しか出てこない。もう つの解 は自分で見つけなければならない。

電卓は方程式を解いてくれない。 逆関数の値を つ返すだけだ。「解は つある」ことは、自分で考えて補う必要がある。

同じ話が と にもある。

  • : に制限
  • : に制限

「逆関数を作るために、定義域を制限する」。この作法は の逆関数 ( に制限)でも同じだった。

逆関数は 対 でなければ作れない。 そして三角関数は周期的なので、そのままでは 対 になりえない。だから制限が必要になる。

「解を全部書く」という高校数学の要求は、電卓が答えられない部分を、人間が引き受けることを意味している。

答

別解

グラフで解くルートも押さえておこう。単位円とグラフ、 つの絵を持てば、解の見落としがなくなる。グラフルート: と の交点を探す。

の範囲で、 のグラフを描く。山が つ( で最大 )、谷が つ( で最小 )の波だ。そこへ、水平線 を引く。

山の部分で、 回交わる。( から上がっていく途中で 回、山を越えて下がる途中で 回。)

谷の部分( が負)では交わらない( だから)。

答えは つ。単位円ルートと一致。

つの絵の使い分け。

単位円 グラフ
得意 値を求める、対称性を見る 解の個数を数える、不等式
弱点 慣れないと つ目を見落とす 描くのに少し時間がかかる

「解が何個あるか」を確実に知りたいなら、グラフが強い。

たとえば なら? 水平線 は山の上のほうを切るので、やはり 交点になる。

なら? 水平線が山の頂点にちょうど接するので、 交点だけになる()。

なら? 水平線が山より上を通るので、交点なし(解なし)。

なら? 谷の部分で 交点(、)。グラフを描けば、解の個数が一目で分かる。

そして、 の方程式では話が違う。

単位円では垂直線 を引く。上下 か所で交わる(、)。

の範囲なら、 も解は 個である。( に限れば の解は 個だが、 まで許すと 個になる。範囲によって個数が変わる。)

範囲の確認が大切だ。 なのか、 なのか、範囲の指定がないのかを確かめる。問題文の範囲を、最初に丸で囲む習慣をつけたい。

範囲の指定がなければ、解は無限にある。

ごとに、同じ解が繰り返される。周期関数だからだ。「一般解」と呼ばれるこの形も、書けるようにしておきたい。

ポイント

  • は単位円の高さ の角。ふつう2つある。
  • の範囲で、すべての解を拾う。

よくある間違い

  • だけで終えるミス。第2象限の解も忘れない
  • 第2象限の解を としてしまう(正しくは )
  • 指定された範囲()を確認せず、範囲外の解を書いてしまう

問10三角不等式(基本)

★ 基礎三角不等式

問題

のとき、不等式 を解け。

ヒントを見る

は単位円の横の座標。まず等号になる境目の角を求め、円周上で条件を満たす部分がどこからどこまでかを塗ってみよう。範囲が つに分かれることに注意。

解答・解説

方針

単位円で、 座標(=)が より大きい点の範囲をさがす。境界は となる角。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 不等式も、まず等号のとき(方程式)を解く。それが境目になる。

この つが境界。 あとは「どちら側が か」を決める。単位円で考える。 は 座標。

垂直線 より、右側にある点。 それは円の右端の部分(弧)だ。

その弧に対応する角は の付近( より小さい角と、 より大きい角)。

をまたぐので、答えが つに分かれる。ここで間違えやすい。

重要三角不等式は単位円で、条件( 座標が 超)を満たす角の範囲を読む

は単位円の 座標。 は、 座標が より右にある点。境界 は (第1象限)と (第4象限)。

座標が大きい(右寄りの)角は、 の近くと の近く。よって

xyOπ/35π/3
x座標が 1/2 より大きい角の範囲(境界 π/3・5π/3)

発展。 三角不等式の解が「 つの範囲に分かれる」現象は、周期関数ならではの特徴である。

次不等式なら、解は「 つの区間」か「 つの外側」のどちらかだった。

三角不等式では、周期性のせいで解が「繰り返し」現れる。範囲を ( 周期分)に広げたら、どうなるか。

の解は

つの範囲に増えた。 範囲を広げるほど、解の「島」が増えていく。一般解として書くなら

「 ごとに、同じ形の島が並ぶ」。周期関数の解はこのような形になる。この構造は現実の問題に直結する。

「潮位が m を超えるのは、 日のうち何時間か?」潮の満ち引きは、およそ 波で近似できる。潮位が基準を超える時間帯は、周期的に繰り返し現れる。これは三角不等式の解になる。

「日照時間が 時間を超える季節は?」。太陽高度も 年周期の三角関数で近似できる。

「交流電圧が V を超える割合は?」。交流は 波そのものだ。

周期的な現象を扱う限り、「どの範囲で条件が成り立つか」は、必ず三角不等式になる。

そして答えは必ず「周期的に繰り返す島の集まり」の形をしている。 つに分かれた答えを見て「変だ」と思わなくてよい。周期的な現象では、それがふつうの形だ。

答

または

別解

グラフで解けば、答えが つに分かれる理由が「見える」。 単位円で混乱したら、こちらに切り替えよう。グラフルート: と を、同じ図に描く。

で、 のグラフは

  • で (最大)
  • で (最小)
  • で に戻る

「 から下がって、 まで行き、また に戻る」。U字のような、なめらかな谷の形だ。水平線 を引くと、 点で交わる。

「グラフが水平線より上にある範囲」を読む。

  • 左端( 付近): グラフは から始まるので、線より上
  • で線と交わり、下へ潜る
  • 谷底()を通り、また上がってくる
  • で線を上に突き抜ける
  • 右端( 付近): また線より上

「上にある」のは両端の か所。 真ん中(谷の部分)は線より下だ。

グラフを見れば、「なぜ つに分かれるのか」が明白だ。 谷が真ん中にあるから、上にある部分が両端に分断される。単位円とグラフ、どちらを使うか。

この問題では、グラフのほうが分かりやすい。 単位円だと「 の前後」で角が と に分かれるのが、直感的につかみにくい。

しかし の不等式なら、単位円も強い。 なら、水平線より上の弧で、つながった つの範囲()になり、分断されない。 つの道具を、状況で使い分ける。

境界の扱いにも注意しよう。

だから と は、答えに含まない(不等号は 、 のまま)。

一方、左端の は含む( と書く)。なぜか。 なので、 は確かに不等式を満たしている。 範囲の端()であって、不等式の境界ではないからだ。

「不等式の境界」と「問題文の範囲の端」は、別物である。 混同して と書いてしまうと、 という正しい解を落とすことになる。細かいが、確実に減点される場所だ。

ポイント

  • は 座標。 は右寄りの角。
  • 境界の角を求め、単位円で範囲を読む。

よくある間違い

  • 答えが2つの範囲に分かれることに気づかず、片方だけ書く
  • 境界の 、 を含めてしまう(不等号は なので含まない)
  • を除いてしまう( なので、 は解に含まれる)

問11加法定理

★ 基礎加法定理

問題

加法定理を使って、 の値を求めよ。

ヒントを見る

を、値を知っている つの角の和(または差)に分解する。分解さえできれば、指定された加法定理を使う。

解答・解説

方針

を、値のわかる2つの角の和()に分ける。加法定理 を使う。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は特殊角ではない。しかし、特殊角の「和」に分解できる。

分解できたら、加法定理を使う。

知っている値を入れる。

「知らない角を、知っている角の和・差に分解する」。これが加法定理の使い方だ。

、、 の足し引きで作れる角なら、すべて値が求まる。

定理加法定理

とみて代入する。

各値を入れる。

発展。 加法定理は三角関数のすべての公式の親である。ここから、ほとんどが導ける。

倍角( とするだけ):

半角( 倍角を逆に解く):

倍角( と分けて、加法定理を 回):

和と積の公式(加法定理を足し引きする):

合成():

これも加法定理の逆読みである。公式集にずらりと並ぶ三角関数の公式。その 割が加法定理から出てくる。だから、覚えるのは加法定理だけでよい。

( の符号が「逆」になるのが唯一の注意点。)そして、加法定理は「回転の合成」を表している。複素数で書くと、ずっと簡単になる。

「 回転してから 回転すれば、 回転」。これは当たり前の事実だ。これを の形で書き直すと

左辺を展開して、実部と虚部を比べると、加法定理そのものが出てくる。

あの複雑な公式は「回転を 回すると、角度が足される」という当たり前を、実部と虚部に分けて書いただけだった。

複素数を学ぶと、三角関数の公式が「当たり前」だと分かる。 これは数Cの複素数平面で学ぶ。

答

別解

半角の公式でも解ける。 そして、そこで現れる二重根号を外す練習もできる。半角ルート: は の半分。

とすると、。

(第 象限なので負)を代入する。

平方根をとる。 は第 象限なので 。

二重根号が出た。 このままでは加法定理の答え と同じに見えない。

二重根号を外す。

コツ: 中身を と書き直す(分母分子を 倍)。

を、 の形にする。 足して 、掛けて になる 数は と 。

きれいな平方になった。

したがって

加法定理の答えと、完全に一致した。

つのルートの比較。

加法定理 半角の公式
手間 少ない(代入するだけ) 多い(二重根号を外す)
使える角 の和・差で作れる角 半分になる角(なんでも)

この問題では加法定理のほうがずっと速い。 しかし ()のような角は、加法定理では作れない。半角の公式でしか求まらない。

道具は使い分けるためにある。

検算しておこう。

は に近い値のはずなので、 は妥当

もう1つ、確認をしておく。

(、余角の関係。) だから も、同じ値 である。 つ求めれば、 つ分かる。

ポイント

  • 特殊角の和・差に分けて加法定理。
  • 。

よくある間違い

  • 加法定理を としてしまう(そんな公式はない)
  • の と の組み合わせを取り違える
  • の計算を誤る、または通分でつまずく

問122倍角の公式

★ 基礎2倍角

問題

は第1象限の角で、 とする。 と の値を求めよ。

ヒントを見る

や を の ・ で表す変形を思い出そう。そのために、まず足りない を相互関係から出す(符号は象限から)。

解答・解説

方針

まず を相互関係で出す(第1象限なので正)。2倍角の公式 、 に入れる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 倍角の公式を使う。

は与えられている。 が要る。

まず を求める。 相互関係から

第 象限なので 。

あとは代入するだけ。

には つの形がある。どれを使ってもよいが、与えられている値()で書ける形を選ぶのがコツだ。

公式2倍角 、

まず 。第1象限なので正で

:

:

xyO(4/5, 3/5)
第1象限の点 (4/5, 3/5)。3:4:5 の直角三角形

発展。 倍角の公式を逆に読むと、積分で不可欠な「次数下げ」の道具になる。

( 次)が ( 次)に変わった。

なぜこれが重要か。 は、そのままでは計算できない。しかし

次数を下げれば、積分できる。 数IIIの積分で、この変形は何十回と使うことになる。

同じ発想で、 も も積分できる( 回、 回と次数下げを繰り返す)。この「次数下げ」は物理でも使う。

交流電流の「実効値」。 家庭のコンセントは「 V」だが、実際の電圧は

と振動していて、瞬間ごとに変わる( V から V まで)。では「 V」とは何か。

電力は に比例する。 その平均をとると

( の平均が になるのは、 で の平均が だから)

コンセントの「 V」は、 の平均が であることから来ている。

家庭の電圧の値も 倍角の公式から説明できる。 数学の公式は身の回りの技術でも使われている。

答

、

別解

の つの形が本当に全部同じ値になるか確かめよう。 そして、答えの妥当性を「 がどこにいるか」で検証する。

の つの形。

つとも計算してみる。(、)形1:

形2:

形3:

つとも 。完全に一致した。

なぜ つも形があるのか。 を使って、 と を行き来できるからだ。中身は同じ、見た目が違うだけ。

使い分けの指針。

  • だけが分かっている → 形3()
  • だけが分かっている → 形2()
  • 両方分かっている / 積分で使う → 形1()

「与えられた情報で書ける形」を選ぶ。 今回は が与えられているので、形3が最短だった。さて、答えの検証をしよう。 つの方法で確かめる。

検証1: か?

ぴったり 。 相互関係はどんな角でも成り立つ。 でも成り立つはずだから、これは役に立つ検算になる。

(-- という直角三角形の比が現れた。。-- の 倍角から、新しいピタゴラス数が生まれた。)検証2: はどの象限にいるか?

、 から、。

第 象限だ。 ということは 、 のはず。

符号が合っている。 さらに、 は に近いので、 は に近く()、 は に近い()。値の大きさも妥当だ。

「 が第 象限だから、 も第 象限」とは限らない。

もし (第 象限)なら、 で第 象限になる。角を 倍すると、象限が変わりうる。この点に注意したい。

「 の象限を、値から確かめる」。計算した 、 の符号が の位置と整合しているかを見る。この確認が答えの信頼性を保証する。

ポイント

  • 先に を相互関係で(符号は象限)。
  • 、。

よくある間違い

  • としてしまう(正しくは )
  • の符号を確認せずに負にしてしまう(第1象限なので正)
  • の3つの形を混ぜて使い、 と を取り違える