数学II / 微分の考え

微分の考え ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 平均変化率
  2. 微分係数(定義)
  3. 導関数の計算
  4. 微分係数の計算
  5. 接線の方程式
  6. 接線の方程式(2)
  7. 関数の増減と極値
  8. 極値の計算
  9. 閉区間での最大・最小
  10. 傾きが与えられた接点
  11. 3次関数のグラフの概形
  12. 接線の方程式(3次曲線)

問1平均変化率

★ 基礎平均変化率

問題

関数 について、 が から まで変化するときの平均変化率を求めよ。

ヒントを見る

平均変化率は『 の増えた量 ÷ の増えた量』。まず区間の両端での関数の値を計算するところから。

解答・解説

方針

平均変化率は「 の増加量 ÷ の増加量」。 を計算するだけ。グラフでは 点を結ぶ直線の傾きにあたる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 平均変化率とは、「 がどれだけ変わったか」を「 がどれだけ変わったか」で割ったもの。

これは、 点を結ぶ直線の傾きそのものである。

計算する。

「 が から へ 増えるあいだに、 は から へ 増えた。 あたり の増加」。これが平均変化率の意味だ。

中学で習った「変化の割合」と、まったく同じものである。名前が変わっただけ。

公式平均変化率 ( 点を結ぶ直線の傾き)

の増加量を の増加量で割る。

平均変化率は 。これはグラフ上の 点 、 を結ぶ直線の傾きと同じ。

xyO(1,1)(3,9)
平均変化率=2点(1,1),(3,9)を結ぶ直線の傾き=4

発展。 「平均」と「瞬間」を結びつける定理がある。平均値の定理だ。

「平均の傾きと同じ傾きを持つ点が、区間内に必ずある。」

今回の例で確かめる。 平均変化率は 、 だから

は、確かに と のあいだにある

この定理を車で読むとこうなる。「 時間で km 走った(平均時速 km)なら、途中のどこかで、ちょうど時速 km だった瞬間が必ずある。」

当たり前に思えるが、証明が必要な事実である。(常に時速 km 未満なら km 走れないし、常に km 超なら km を超えてしまう。だから途中で km ちょうどを「通過」するはずだ。)

そして、この定理には実用的な応用がある。

高速道路の「平均速度違反」の取り締まり。 入口と出口の通過時刻から平均速度を計算し、制限速度を超えていれば「どこかで必ず速度超過していた」と断定できる。平均値の定理が法的な根拠になっている(実際にイタリアなどで導入されている)。

「平均から、瞬間を保証する」。微分法の最も基本的な定理が道路の取り締まりに使われている。

答

別解

平均変化率が「割線の傾き」であることを、絵で確認しよう。 そして、これが微分の出発点であることを見る。

グラフで見る。

放物線 の上に、 点をとる。

この 点を、まっすぐな線で結ぶ。 この直線を割線(せっせん、曲線を「割る」線)という。

割線の傾きは?

平均変化率と、同じ値

「平均」という名前の意味。放物線は の付近ではゆるやかで、 の付近では急だ(グラフを見れば分かる)。傾きは場所によって違う。

しかし「 から まで、ならして見れば、 あたり 増えた」。これが平均変化率である。車で考えると分かりやすい。

「 時間で km 走った」→ 平均時速 km。

しかし、ずっと時速 km で走っていたわけではなく、信号で止まったり、高速で km 出したりしている。「ならせば km/h」。それが平均速度だ。

では、「今この瞬間の速度」は、どうやって測るのか。これが、次の問題(微分係数)の主題である。発想: 区間をどんどん狭くする。

区間 平均変化率
の瞬間 に近づく

区間を狭めていくと、平均変化率は に近づく。

この極限が「 における瞬間の変化率」。つまり微分係数 である。

そして、割線はどうなるか。 を に近づけていくと、割線は「接線」に近づいていく。

「平均」から「瞬間」へ。「割線」から「接線」へ。 この 歩が微分という数学を生んだ。

ちなみに の場合、区間 の平均変化率には、きれいな公式がある。

点の 座標を、ただ足すだけでよい。 。計算はすぐに終わる。

そして とすれば となり、 という導関数が、この式から分かる。

ポイント

  • 平均変化率 = の増加量 ÷ の増加量。
  • グラフでは 点を結ぶ直線の傾き。

よくある間違い

  • 分母と分子を逆にする(( の変化)÷( の変化))
  • を と計算してしまう
  • 平均変化率を「微分係数」と混同する(平均変化率は2点間、微分係数は1点での瞬間の傾き)

問2微分係数(定義)

★ 基礎微分係数極限

問題

関数 について、微分係数 を定義にしたがって求めよ。

ヒントを見る

『定義にしたがって』が指示。極限の式を書き、分子を展開すると全部の項に が入った形になる。約分してから を に近づける。

解答・解説

方針

微分係数は平均変化率の極限。 を計算する。分子を展開すると が約分できて、極限が求まる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 微分係数の定義は、「区間を限りなく狭めた平均変化率」だ。

は「 からのズレ」。 これを に近づける。

計算する。 、。

分子を計算する。

で割る。

ここが大事なところだ。 で約分できた。 としても にならない。

「約分してから、」。この順序を守ることが大切だ。

公式微分係数

① 分子を計算する。 、。

② で割って極限をとる。

微分係数 。これは点 での接線の傾き。

まとめ:微分係数は平均変化率の極限。分子を展開すると必ず がくくり出せて約分できる。約分してから とするのが手順だ。

発展。 微分の定義に現れる という不定形は、 世紀の数学者たちを悩ませ続けた。

ニュートンとライプニッツは、 年代に微分法を発明した。 しかし、その基礎は危うかった。

当時の議論はこうだ。 「 を でない微小な量とする。 を計算した後で、 を とみなす。」

哲学者バークリーはこれを痛烈に批判した( 年)。「 は なのか、 でないのか。 でないなら約分できるが、最後に とみなすのは詐欺だ。これは「死んだ量の亡霊」ではないか。」

この批判は正当だった。 「無限小」という曖昧な概念に頼っていたのだ。

決着がついたのは、 年後。 コーシーとワイエルシュトラスが、「極限」を厳密に定義した(- 論法)。

「 を にする」のではない。「 を に『いくらでも近づけたとき』、値が にいくらでも近くなる」と言い換えた。

は決して にならない( という条件がある)。だから約分は正当だ。 そして「近づく先」だけを問題にする。「亡霊」の批判はこれで解消された。

微分積分は 年かけて、ようやく厳密な基礎を得た。

数学はしばしば「使えるが、なぜ使えるか分からない」状態から始まる。 厳密化は後からついてくる。しかし、厳密になってはじめて、その先の理論を積み上げられる。

この問題の での約分もその例である。 その操作の正当性のために、 年の議論があった。

答

別解

導関数の公式を使えば、すぐに終わる。 しかし、それでも定義を学ぶ意味がある。その理由を説明する。

公式ルート。

行で終わった。 定義の計算(展開、約分、極限)が、公式では ステップに圧縮されている。では、なぜわざわざ定義から計算するのか。

理由1: 公式は定義から作られる。 の導関数を、定義から導いてみよう。

公式 が出てきた。 公式は天から降ってきたのではなく、定義から作られたのだ。理由2: 公式が使えない関数に出会ったとき、定義に戻るしかない。

数IIIで学ぶ 、 も、すべて定義から証明される。

理由3: という不定形の意味が分かる。 とすると、分子も分母も に近づく。

はそのままでは意味を持たない(何にでもなりうる)。しかし、「どう に近づくか」の速さの比なら、意味がある。

約分すると、意味が分かる。 分子は「 の 次の速さ」で に近づき、分母も同じ速さで近づく。だから比は有限の値に収束する。

「 に近づく つの量の比」。微分とはこの比の極限のことだ。 の形になるからこそ、意味がある。

極限の値が、割り切れた形()の での値になるのは、 が で連続だからである。約分してしまえば、あとは代入するだけでよい。

数値で確かめよう。

に収束していく。極限の意味が数値で見える。

負の側から近づけても同じ。 なら で、やはり に近づく。

「左右どちらから近づいても同じ値になる」ことが、微分可能であることの条件である。 が原点で微分できないのは、左からは 、右からは と、食い違うからだった。定義の計算は遠回りに見えて、微分のすべてを含んでいる。

ポイント

  • は平均変化率 の の極限。
  • 分子から を約分してから極限をとる。

よくある間違い

  • の展開で の項を落とす
  • で約分する前に としてしまい、 で止まる
  • を と誤って分解する

問3導関数の計算

★ 基礎導関数

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

各項ごとに微分すればよい。 の微分の規則(次数が前に出て、次数が つ下がる)を思い出そう。定数の項はどうなるかも。

解答・解説

方針

の微分は 。各項を別々に微分し、定数は になる。係数はそのまま前に残る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 導関数の計算は、 つの公式で全部片づく。

項ずつ処理する。

足し合わせる。

「指数を前に降ろして、指数を 減らす」。これが の意味だ。

定数の微分は 。 定数は変化しないから、変化率も になる。当たり前の話である。

公式、定数の微分は 、和・定数倍はそのまま項ごとに微分

各項を別々に微分する。

まとめて

発展。 「微分すると、次数が 下がる」という性質から、次のことが分かる。

次の多項式を 回微分すると、必ず になる。

この事実が「多項式を特徴づける」ことに使える。 逆に言えば、「何回か微分すると になる関数」は、多項式に限られる。では、微分しても にならない関数は?

指数関数は「不動」、三角関数は「 周期で循環」、多項式は「やがて消える」。微分という操作の下での振る舞いが、関数の「個性」を決めている。この視点は微分方程式で大事になる。

「 回微分すると、符号が反転して元に戻る関数は?」 答えは と だ。

この方程式は単振動(バネの振動、振り子)を記述する。 だから振動は 波になる。運動の形は方程式で決まる。

「微分しても変わらない関数は?」 答えは 。これは指数的成長(細菌、複利、放射性崩壊)を記述する。

微分方程式とは「関数の微分の振る舞い」から「関数そのもの」を逆算する技術である。

そして自然法則は、ほとんどが微分方程式で書かれている。 ニュートンの運動方程式 も という 階微分の式だ。

という素朴な計算。 この計算は物理法則を表す微分方程式の基礎になる。

答

別解

公式 を、定義から証明してみよう。 「なぜ指数が前に降りてくるのか」が分かる。

の場合(すでに見た)。

の場合。

一般の でも、同じ構造だ。二項定理で展開すると

が引き算で消え、 で割ると

とすると、 を含む項はすべて消える。

「指数が前に降りてくる」理由は、二項定理の 番目の項の係数が だからだった。

の 次の項だけが残り、 次以上は消える。これが微分の仕組みである。「 次の項だけが結果に影響する」という考え方は、微分のあらゆる場面に現れる。関数を「直線で近似する」のが微分だから、 次の情報だけを取り出しているのだ。

この近似式( 次近似)が微分の実用的な意味である。

検算の習慣をつけよう。 導関数を求めたら、数値で確かめる。

の での傾きを、 通りに計算する。

公式から:

数値から( として):

一致した

「公式の答えを、数値で検算する」。計算ミスがあれば、ここで見つかる。そして、微分の順序を間違えないこと。

係数はそのまま、 の部分だけ微分する。 などとしてはいけない。積の微分はそんなに単純ではない(数IIIで学ぶ)。定数倍は外に出したままでよい。

ポイント

  • 。指数を前に出して指数を 減らす。
  • 定数項は微分すると消える。

よくある間違い

  • 定数項 を微分して のまま残してしまう(定数の微分は )
  • としてしまう(正しくは )
  • 指数を1つ減らすのを忘れる( ではなく )

問4微分係数の計算

★ 基礎微分係数導関数

問題

関数 について、 を求めよ。

ヒントを見る

まず導関数 を求め、それから を代入する。符号の処理だけ慎重に。

解答・解説

方針

まず導関数 を求め、そこに を代入する。定義の極限を使わなくても、導関数に代入すれば微分係数が出る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 微分係数 とは、導関数 に を代入した値である。

手順は 段階。

手順1: 導関数を求める。

手順2: を代入する。

なので、符号に注意する。 を 乗すれば正になる。

答えは (負ではない)。

この という値の意味。 曲線 の、点 における接線の傾きが ということだ。傾きが正 → その点で、グラフは右上がり(増加している)。

公式 は導関数 に を代入した値

導関数は 。 を代入する。

(負の 乗は正)なので 。

まとめ:微分係数は「導関数に代入」で速く出せる。定義の極限は 番の問題のように、意味を確かめるときに使う。

発展。 導関数 はもとの関数の設計図である。 の符号を読むだけで、グラフの形が分かる。

の場合、 だから常に増加する。では、 をもう 回微分したら?

この (第 次導関数)は「傾きの変化率」を表す。

  • ()→ 傾きが増えていく → グラフは下に凸(お椀型)
  • ()→ 傾きが減っていく → グラフは上に凸(山型)
  • ()→ 凸の向きが変わる → 変曲点

の原点は上に凸から下に凸へ切り替わる「変曲点」だった。 が「速度」なら、 は「加速度」だ。車の運転で言えば:

  • : 位置(どこにいるか)
  • : 速度(どれだけ速く動いているか)
  • : 加速度(どれだけ速度が変わっているか)

アクセルを踏むと加速度が正、ブレーキを踏むと負。そして、ニュートンの運動方程式は

「力は、位置の 階微分に比例する」。物体の運動はこの 本の式から計算される。

という小さな計算。 そこから、微分・ 階微分・運動方程式へと、道は一直線につながっている。

答

別解

定義から直接計算して、公式の答えを検証しよう。 そして、 という値が「グラフの形」について何を表しているかを読む。

定義から計算する。

分子を展開する。

( に 、 を代入。符号に注意:、、、。)

で割る。

とする。

公式と一致した。 定義から計算しても、確かに になる。 という値は、何を表しているのか。

のグラフの、点 での接線の傾きが 。

傾き はかなり急だ。 が 増えると が 増える勢いで、グラフは上昇している。 の導関数を、もう 度見てほしい。

これは常に 以上( 乗だから)。

が負でも正でも、グラフは右上がり。 どこにも「下り坂」がない。

唯一の例外は である。ここで で、傾きが になり、水平になる。

しかし、そこで極値をとるわけではない。 前後を見ると

  • で (上り)
  • で (水平)
  • で (上り)

上り → 水平 → 上り。 1点だけで平らになるが、下がらずにまた上る。

これを「変曲点で接線が水平になる」という。 極大でも極小でもない。 でも、極値とは限らないのだ。

この事実は次に学ぶ「極値」の議論で使う。

が になる点を見つけたら、その前後で の符号が「変わるか」を必ず確かめる。変わらなければ、極値ではない。 の原点はその最も有名な反例である。

ポイント

  • 微分係数 = 導関数に を代入した値。
  • 。符号ミスに注意。

よくある間違い

  • としてしまう(2乗なので正。)
  • に を代入して を答えてしまう(聞かれているのは )
  • の を書き忘れる

問5接線の方程式

★ 基礎接線

問題

曲線 上の点 における接線の方程式を求めよ。

ヒントを見る

接線に必要なのは『傾き』と『通る点』の つ。傾きは微分係数で分かる。通る点は問題文にある。

解答・解説

方針

接線の傾きはその点での微分係数。 を求めて傾きにし、点 を通る直線の式を作る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 接線を決めるには、「傾き」と「通る点」が要る。

通る点は与えられている: 。傾きは微分係数で求まる。

。これが微分の最も基本的な意味だ。 点と傾きが分かれば、直線の式が書ける。

接線の公式として書くと

「点 を通り、傾き の直線」。覚えるのは、この 本でよい。

公式点 における接線:

① 接線の傾きを求める。 なので、 での傾きは

② 点 を通る直線を作る。

xyO(1,1)
y=x^2 と接点(1,1)での接線 y=2x-1

まとめ:接線は「傾き 、通る点 」の直線。傾きを微分で出して、点を通る直線の式に入れるだけだ。

発展。 接線には、実用的な使い道がある。複雑な関数を、直線で近似することだ。

接線はその点の近くで、曲線のよい近似になっている。例: を、電卓なしで計算する。、 とする( は分かっている)。

接線による近似。

真の値は なので、誤差は 未満だ。曲線を直線で置きかえただけなのに、かなり正確だ。この「 次近似」は科学と工学の至るところで使われている。

振り子の運動。 厳密な方程式は解けないが、 と近似する( が小さいとき)と方程式が解けて、振り子の等時性が導かれる。

相対性理論。 光速に比べて遅い速度では と近似でき、ニュートン力学の式に戻る。相対論が古典力学を含むことが、この近似で示される。

機械学習。 損失関数の最小値を探すとき、現在地での接線(勾配)の向きへ、少しずつ進む(勾配降下法)。AI の学習は 次近似の繰り返しである。

「曲がったものを、まっすぐなもので近似する」。これが微分の最も実用的な意味だ。接線の方程式 を求めることは、「放物線を、点 の近くで直線とみなす」という単純化の第一歩である。

答

別解

微分を使わずに、接線を求める方法がある。 判別式を使う、数Iの発想だ。 つのルートを比べると、「接する」ということの意味がよく分かる。

判別式ルート: 「接する 重解」を使う。点 を通る直線を、傾き として置く。

この直線が放物線 と「接する」とはどういうことか。 つの式を連立して、共有点を求める。

「接する」とは「共有点がちょうど つ」。つまりこの 次方程式が重解を持つということ。

傾きが と決まった。

微分と同じ答え。

この つのルートは「接する」ことの つの意味を表している。

ルート 「接する」の意味
微分 その点での瞬間の傾きと一致する
判別式 共有点が重なっている(重解)

どちらも正しく、そして同じ答えに着く。「接する」ことを、代数的に確かめよう。

曲線と接線の差が、 という「完全平方」になった。

この形が「接する」ことの代数的な特徴だ。 だから、曲線は接線の上にあり、 でだけ触れる。

判別式ルートの限界。 この方法は、 次関数にしか使えない( 次以上では、判別式が使えない)。

微分ルートなら、どんな関数でも通用する。 でも でも でも、接線の傾きは である。これが「微分の発明」の意義だ。

次関数だけの特殊技(判別式)から、すべての関数に通用する一般理論(微分)へと、方法が一般化された。

ニュートンとライプニッツが微分を発明する前、接線を引くのは「職人芸」だった。 曲線ごとに、特別な工夫が必要だった。

微分はそれを「機械的な手続き」に変えた。 を計算して、 を代入するだけだ。誰でも、どんな曲線でも、同じ手順で接線が引ける。

「特殊な技巧」を「一般的な手続き」に変える。 微分はそうした一般化の例の1つである。

ポイント

  • 接線の傾きはその点での微分係数 。
  • 接線 。

よくある間違い

  • 接線の傾きに (関数の値)を使ってしまう(傾きは )
  • の展開で符号を誤る()
  • 接点の座標を代入せず、傾きだけで答えを止めてしまう

問6接線の方程式(2)

★ 基礎接線

問題

曲線 上の点 における接線の方程式を求めよ。

ヒントを見る

手順は、導関数 → 接点の を代入して傾き → 点と傾きから直線の式。 座標が負の点を通るときの整理だけ丁寧に。

解答・解説

方針

点での微分係数を傾きにする。 を求め、点 を通る直線を作る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 前問と、まったく同じ手順だ。

手順1: 導関数を求める。

手順2: 接点での傾きを計算する。

手順3: 点 を通り、傾き の直線。

符号に注意。 となる。接点の 座標が負のとき、ここでミスが起きやすい。

検算しよう。 接点 を代入すると 。確かに通る。

公式接線

① 傾きを求める。 なので

② 点 を通る直線を作る。

xyO(2,−2)
y=x²−3x の点(2,−2)での接線 y=x−4

発展。 は、 を平行移動したグラフだ。平行移動と接線の関係を見ておこう。

平方完成する。

頂点は 。 を、右に 、下に 動かしたものだ。では、接線はどうなるか。

の での接線は傾き だった。平行移動すると、 は に移る。この点での接線の傾きを計算すると

傾きは のままだ。

当然だ。 グラフ全体を、形を変えずにずらしただけなのだから、各点での「傾き」もそのまま平行移動される。

式でも確かめられる。

微分すると、(縦の移動)は消え、 は の中に残る。 つまり「 だけずれた場所での、元の傾き」になる。傾きの分布ごと、平行移動している。

この性質は「微分は平行移動に対して自然に振る舞う」ことを意味する。

そして、これは物理の「ガリレイの相対性」に対応する。 「等速で動く電車の中で物を落としても、地上と同じように落ちる」ということだ。座標を平行移動しても、物理法則(微分方程式)は変わらない。

「移動しても変わらないもの」を探すことは、物理学の中心的な問いであり、対称性と保存則(ネーターの定理)の理論につながっていく。

接線の傾きが平行移動で変わらない、という小さな観察。 これも、平行移動に対する対称性の一例だ。

答

別解

公式を使わず、微分係数の定義から傾きを出してみる。 そして「本当に接しているか」を、代数的に検証する。

定義から を計算する。

分子を計算する。

で割る。

公式( に )と同じ答え。さて、「本当に接しているか」を確かめよう。曲線と接線の差を計算する。

完全平方の形だ。 になった。

この式から分かること。

つまり

  • 曲線は接線より「上」にある(または同じ高さ)
  • でだけ、ぴったり触れる(等号成立)
  • 他の点では、必ず接線より上(離れている)

これが「接する」ということの、代数的な姿だ。

「 点でだけ触れて、他では離れている」。交わる(突き抜ける)のとは違う。比較: 接線でない直線ならどうなるか。

たとえば ( を通るが、傾きが違う)。

つの 次式の積なので、 と で になる。 点で交わっている。

符号も変わる( では負、その外では正)。曲線が直線を「突き抜けて」いる。

「重解になる 接する」。数Iで学んだこの事実が微分で求めた接線でも、確かに成り立っている。

つの単元( 次関数と微分)が、同じ結論に到達した。 異なる道具で同じ結論が出るので、答えが正しいことを確かめられる。

ポイント

  • 接線の傾き 。
  • 点を通る直線の式に代入して整理する。

よくある間違い

  • を としてしまう(接点の 座標が負のときの符号ミス)
  • の計算で を落とす
  • 接点が曲線上にあることを確認しない( になるか、まず確かめる)

問7関数の増減と極値

★ 基礎極値増減

問題

関数 の極値を求めよ。

ヒントを見る

まず微分して になる を求める。そのうえで の符号の変化を増減表で調べよう。符号がどう変わるところが極大で、どう変わるところが極小だったか。

解答・解説

方針

となる が極値の候補。 の符号が「正→負」なら極大、「負→正」なら極小。増減表を書いて確かめる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 極値とは「山の頂上(極大)と、谷の底(極小)」。

そこでは、接線が水平になる。 つまり

段階で進める。

手順1: 導関数を求め、 を解く。

手順2: 増減表を書く。 の符号を調べる。

増加 極大 減少 極小 増加

手順3: 極値を計算する。

を解くだけでは終わらない。符号の変化を必ず調べる。

公式 の前後で が正→負なら極大、負→正なら極小

① を求めて とおく。

② 符号を調べる。 は下に凸の放物線。 で正、 で負、 で正。

  • :正→負 なので極大。。
  • :負→正 なので極小。。
xyO極大(-1,2)極小(1,-2)
y=x^3-3x:極大(-1,2)・極小(1,-2)

まとめ:極値は「 の点で、 の符号が入れかわる所」。正→負は山(極大)、負→正は谷(極小)。増減表か数直線で符号を必ず確かめる。

発展。 極値を求める方法は最適化という応用分野の基本である。

「最も良い状態を探す」問題はすべて「極値を探す問題」に言い換えられる。

  • 利益を最大にする価格は? → 利益関数の極大値
  • 材料を最小にする容器の形は? → 表面積関数の極小値
  • 最も速く着く経路は? → 時間関数の極小値
  • AI の誤差を最小にするパラメータは? → 損失関数の極小値

そして、その解法はいつも同じ。「微分して とおく」。光の屈折(スネルの法則)もこの原理から導かれる。

フェルマーの原理: 「光は、 点間を最短時間で進む経路を選ぶ。」空気中と水中では光の速さが違う。最短の距離ではなく、最短の時間になる経路を、微分して とおいて求めると、屈折の法則 が出てくる。

光は微分方程式を解いてから進んでいるかのようだ。自然界はしばしば「何かを最小化(または最大化)」している。

  • 石けん膜: 表面積を最小にする(だから球などの曲面になる)
  • 蜂の巣: 材料を最小にして最大の容積(正六角形)
  • 物体の運動: 「作用」という量を最小にする経路を通る(最小作用の原理)

物理法則そのものが「ある量の極値をとる」という形で書けるのである。ニュートンの運動方程式も、電磁気学のマクスウェル方程式も、一般相対性理論も、すべて最小作用の原理から導かれる。

を解く。 この単純な作業は、「自然はなぜこう振る舞うのか」という物理の大きな問いにもつながっている。

答

極大値 ()、極小値 ()

別解

この関数には、隠れた対称性がある。 それに気づくと、計算が半分で済み、答えの検算もできる。

対称性に気づく。

を代入してみる。

奇関数だ。 グラフは原点対称である。この対称性から、何が言えるか。 で極大値 をとるなら、原点対称な位置 では、 の符号が反転して極小値 をとる。

片方を計算すれば、もう片方は「ただで」分かる。

計算量が半分になった。 そして検算にもなる。もし にならなければ、どこかで計算ミスをしている。

グラフの形も対称性から読める。

  • 左端()から上ってきて
  • で山()
  • 下って原点を通り()
  • で谷()
  • また上っていく

原点を中心に、点対称なS字カーブになる。これが 次関数の典型的な形だ。そして、 次関数の「極大と極小の関係」には、一般的な法則がある。

次関数のグラフは必ず「変曲点」に関して点対称である。 の変曲点は?

変曲点は原点。だからグラフは原点対称だった。

一般の 次関数でも同じ。 (次の問題)なら、変曲点は で、その点に関して点対称である(頂点が原点でないだけ)。

この事実の実用的な帰結。

「極大値と極小値の『中点』は、必ず変曲点の高さになる。」

次関数の つの極値と、変曲点は、一直線上に等間隔で並んでいる。

座標でも同じ。 極大の 、変曲点の 、極小の は等間隔

「 次関数は、変曲点に関して点対称」。この 文を知っているだけで、グラフの概形がすぐに描ける。極値を つ求めたら、もう つは対称性から出る。

対称性を見抜くことは、計算を減らし、間違いを減らす。 そして、グラフの「かたち」が分かる。

ポイント

  • 極値の候補は の解。
  • 符号 正→負 が極大、負→正 が極小。

よくある間違い

  • の解を求めただけで、極値の「値」を計算し忘れる( に代入する)
  • 極大と極小を取り違える(増減表で の符号変化を確認する)
  • となる点が必ず極値だと思い込む(符号が変わらなければ極値ではない)

問8極値の計算

★ 基礎極値

問題

関数 の極値を求めよ。

ヒントを見る

微分して の を出し、増減表を書く。極値の『値』を答えるときは、忘れずにもとの に代入すること( に入れてしまうミスが多い)。

解答・解説

方針

の解を求め、符号の変化から極大・極小を判定する。それぞれの を に代入して極値を出す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 手順は前問と同じ。微分して、 とおいて、増減表。

手順1: 導関数を求め、因数分解する。

因数分解しておくと、符号が読みやすい。

手順2: 増減表。 の符号を、 つの区間で調べる。

増加 極大 減少 極小 増加

手順3: 極値を計算する。

を因数分解すると、符号の判定がすぐにできる。展開したままだと、符号を読み違えやすい。

公式 の前後の符号変化で極大・極小を判定

① を解く。

② 符号と極値を調べる。 は で正、 で負、 で正。

  • :正→負 で極大。。
  • :負→正 で極小。。

xyO極大(0,0)極小(2,−4)
y=x³−3x² の極大(0,0)・極小(2,−4)

まとめ:手順は極値の基本と同じ。 の符号を数直線で見て、山と谷を決め、 に代入して値を出す。

発展。 極大・極小の判定には、 階微分を使う方法もある。増減表より速いことがある。

なぜか。

  • → 傾きが減っていく → グラフは上に凸(山型)→ その頂上だから極大
  • → 傾きが増えていく → グラフは下に凸(谷型)→ その底だから極小

この問題で確かめる。

で: → 極大

で: → 極小

増減表を書かずに、代入 回で判定できた。しかし、この方法には注意点がある。 のときは、判定できない。

例: 。 、。 で 、そして なので、 階微分の判定法が使えない。

しかし、実際には で極小( は 字型で、原点が最下点)。

もう つの例: 。 、 だが、こちらは極値でない(変曲点)。

のときは、極値かもしれないし、そうでないかもしれない。 増減表に戻って、 の符号変化を調べるしかない。

つの方法の使い分け。

階微分の判定 増減表
速さ 速い(代入だけ) 遅い(符号を調べる)
確実性 で破綻 常に有効
グラフの情報 極値の判定のみ 全体の増減が分かる

答案では増減表を書くのが安全(グラフの概形も同時に示せる)。検算には 階微分が速い。

道具は複数持ち、状況で使い分けるとよい。

答

極大値 ()、極小値 ()

別解

微分する前に、グラフの概形を「予想」する。 元の関数を因数分解すれば、 軸との交点が分かり、形の見当がつく。答えを予測してから計算するのが、上級者の作法だ。

まず、元の関数を因数分解する。

軸との交点( となる )を読む。

が重解であることに注目する。重解 グラフが 軸に「接する」。ここまでで、グラフの形がほぼ分かる。

  • で 軸に接する(突き抜けない)
  • で 軸を横切る
  • 次の係数が正なので、右端は上がり、左端は下がる

この つから、グラフを描いてみよう。左から上ってきて、 で 軸に接し(ここが山の頂上)、いったん下がって谷を作り、 で 軸を突き抜けて、上昇していく。

微分する前に、答えの形が予想できた。

なぜ「 軸に接する 極値」なのか。 グラフが 軸に接するとき、そこで接線が水平になる( 軸そのものが接線だから)。接線が水平 極値の候補

さて、微分で確かめる。

予想通り、 が極値(極大値 )

極小は (予想した「 と のあいだ」に、確かに入っている)

予想と計算が一致した。

この「予想 → 計算 → 照合」というプロセスが、ミスを防ぐ。

もし計算結果が「極大値 、極小値 」などと出たら、予想と食い違う。その時点で、計算ミスに気づける。

因数分解から読み取れる情報を、整理しておこう。

因数分解の形 軸との関係 意味
横切る 単純な交点
接する そこで極値(接線が水平)
横切る(水平に) 変曲点(接線は水平だが極値でない)

の原点が「 なのに極値でない」のは、 という 乗の形だからだ。この表がその理由を説明している。

式の「形」を読むだけで、グラフが見える。 微分はその予想を確認し、正確な値を与えてくれる道具である。

ポイント

  • の符号で判定。
  • 極値は に代入して求める(値は 、位置は )。

よくある間違い

  • の因数分解を誤り、 の解を落とす
  • 極大値 を「極値なし」と勘違いする(値が でも、立派な極大値)
  • 増減表を書かずに、 の解だけで極大・極小を決めつける

問9閉区間での最大・最小

★ 基礎最大最小

問題

における関数 の最大値と最小値を求めよ。

ヒントを見る

区間つきの最大・最小は『区間内にある極値の候補』と『両端』をすべて洗い出して値をくらべる。候補が区間の外にあるときは捨てる。

解答・解説

方針

閉区間の最大最小は「区間内の極値の候補」と「区間の両端」の値を全部くらべる。 の解のうち区間に入るものと、端点 を調べる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「閉区間での最大・最小」では、極値だけでは足りない。 も候補である。

なぜか。 区間の端では、グラフが途中で「切られている」。切り口が最大値や最小値になることがある。

候補は 種類。

  • 区間内の極値( となる点)
  • 左端
  • 右端

より、 となるのは 。

このうち に入るのは、 だけ( は区間外)。 つの候補の値を、すべて計算する。

最大値は (、右端)、最小値は (、極小)。

最大値が「端点」で実現した。極値だけ見ていたら、見逃していた。

公式閉区間の最大最小 = (区間内の の点)と(両端)の値をすべてくらべる

① の候補を出す。 は 。区間 に入るのは だけ。

② 候補と両端の値をくらべる。

③ 最大・最小を選ぶ。

xyO最大(2,2)最小(1,-2)
y=x^3-3x(0≦x≦2):最大(2,2)・最小(1,-2)

まとめ:閉区間では極値だけでなく両端も候補。区間に入る の点と端点の値を全部くらべて、一番大きい・小さいを選ぶ。範囲外の は使わない。

発展。 「閉区間なら、最大値と最小値が必ず存在する」ことは当たり前ではなく、定理である。

最大値・最小値の定理(ワイエルシュトラスの定理)

つの条件が必要だ。

条件1: 区間が「閉じている」( の形で、端点を含む)。

開区間だと、崩れる。 を、開区間 で考えると

  • 最大値はあるか? を に近づければ値は に近づくが、 は区間に含まれない。だから最大値は存在しない( も も、もっと大きい値がある。)

「端が含まれない」だけで、最大値が消える。条件2: 関数が「連続」である。

不連続だと、崩れる。 で

を に近づけると値は に近づくが、 では突然 に落ちる。だから最大値は存在しない。

つの条件が揃って、はじめて「必ず存在する」と言える。この定理がなぜ重要なのか。

「最大値を求めよ」という問題は、「最大値が存在する」ことを前提にしている。 その前提を保証しているのが、この定理だ。存在が保証されているからこそ、「候補を全部調べれば、その中に必ず答えがある」と言える。

もし存在が保証されていなければ、「候補を全部調べたが、どれも最大値ではない」ということが起こりうる。実際、開区間ではそうなる。数学では「求める」前に「存在する」ことを確かめる。

方程式に解があるか(中間値の定理)、極限が存在するか、最大値が存在するかも同じだ。存在定理があるから、答えを探す作業が正当になる。「閉区間」という指定は、単なる問題設定ではなく、「答えが必ずある」という保証になる。

答

最大値 ()、最小値 ()

別解

増減表を書いて、グラフを「見る」。 そうすれば、なぜ端点が最大になるのかが目で分かる。そして「極値と最大値は別物」という区別を身につける。

区間 での増減表。

減少 ↓ 増加 ↑

グラフの動きを追う。

  • からスタート()
  • 下り坂()を降りていく
  • で谷底()、つまり極小値
  • 上り坂()を上っていく
  • で終了()、ここで最も高くなる

「谷を降りて、また上って、右端で出発点より高くなった」。これがグラフの形だ。最大値 は右端 で実現している。

ここが大事な点だ。

「極大」とは「その近所で」いちばん高いこと(局所的)。 「最大」とは「区間全体で」いちばん高いこと(大域的)。

この関数には、区間 内に極大値が存在しない( の極大は区間外)。それでも最大値はある。それは端点でとる。

逆のことも起こりうる。 極大値があっても、それが最大値とは限らない。例: 同じ関数を、区間 で考えると

最大値は (、右端)で、極大値 より、はるかに大きい。

「極大値は、全体の最大値ではない」。この区別を忘れてはいけない。

山登りに例えると。

「極大」は近くの丘の頂上。周りを見渡せば、そこが一番高い。 「最大」は山脈全体の最高峰。

丘の上に立っている人は「ここが一番高い」と思うかもしれない。しかし、遠くにもっと高い山があるかもしれない。この「局所と大域の違い」は、最適化の最大の難問である。

AI の学習(勾配降下法)は「傾きを下る」ことで最小値を探す。 しかし局所的な谷にはまると、そこから抜け出せない(局所最適解の問題)。本当の最小値はもっと遠くにあるかもしれないのに。

この問題を避けるために、様々な工夫(乱数を混ぜる、複数の初期値から試す)が開発されている。

閉区間の最大最小問題で「端点も調べる」という手続き。 局所だけを見て全体を判断すると、最大値を取り違えることがある。

ポイント

  • 候補は「区間内の 」+「両端」。
  • 区間の外にある極値は使わない。

よくある間違い

  • 端点(、)の値を調べ忘れる(最大値は端点でとることが多い)
  • 区間外の極値()を候補に入れてしまう
  • 極大値がないから最大値もない、と思ってしまう(閉区間なら必ず最大値・最小値が存在する)

問10傾きが与えられた接点

★ 基礎接線微分係数

問題

曲線 の接線のうち、傾きが であるものの接点の座標を求めよ。

ヒントを見る

接線の傾きは微分係数。『傾きが 』を導関数についての方程式として書けば、接点の が求まる。

解答・解説

方針

接線の傾きは 。これが になる を求めれば、接点の 座標が分かる。 座標は曲線の式に代入する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) これまでは「接点 → 傾き」の向きだった。今回は逆向きだ。

「傾きが になるのは、どの点か?」

接線の傾きは、微分係数だから

この方程式を解けばよい。

接点の 座標が と分かった。

座標も忘れずに。 接点は曲線上にあるので

「傾きから接点を逆算する」。 という方程式を解くだけである。

重要接点の は、 を解いて求める

① 傾きの条件を式にする。 接線の傾きは 。これが なので

② 座標を求める。 に を代入。

よって接点は 。

xyO(2,4)
y=x² の傾き4の接線の接点(2,4)

まとめ:「傾きが決まっている接線」は、 が指定の傾きに等しいという方程式を解いて接点の を出す。 は元の曲線に代入して求める。

発展。 「 を解いて接点を求める」という発想を、曲線の外の点から接線を引く問題に応用しよう。入試でよく出る。

問題: 点 から、放物線 に接線を引け。

注意: 点 は放物線の上にない()。接点は別の場所にある。

手順: 接点を と「文字で置く」。

その点での接線は

この接線が点 を通る条件。

接点は つある。 と だ。

接線も 本。

曲線の外の点からは、接線が 本引ける。放物線の場合はそうなる。この手法の要点は「接点を文字で置く」ことだ。

接点が分かっていないのだから、 と置いて、条件から を決める。

同じ手法が 次関数でも使える。 そして 次関数では、外の点から引ける接線の本数が 本、 本、 本と変わる(点の位置による)。これが入試の頻出テーマになる。

「接線の本数」を数える問題は、 についての方程式が「何個の実数解を持つか」の問題に言い換えられる。

そして実数解の個数はグラフの交点として数えられる。問題をさらに別の問題に言い換えたことになる。

このように言い換えを何段か重ねると、難しい問題も解ける。

つ つの言い換えは易しい。 しかし、それを連ねると、最初は手も足も出なかった問題が解ける。難しい問題では、こうした言い換えの順番を自分で組み立てることが求められる。

答

別解

判別式ルートでも解ける。 そして、 つのルートを比べると、「傾きが与えられた接線」の構造が分かる。

判別式ルート。

傾き の直線を、 と置く( は未知)。この直線が に接する条件を求める。連立して、 次方程式を作る。

接する 重解 判別式 。

接線は 。

接点(重解)は

微分ルートと同じ答え。

ついでに、接線の方程式も出た()。微分ルートでも、接点が分かれば

同じ直線である。

さて、この問題の「構造」を考えてみよう。放物線 の接線の傾きは 。 を動かすと、傾きも動く。

接点の
接線の傾き

すべての実数の傾きがちょうど 回ずつ現れる。

が、 の 次式( 対 の関数)だからだ。では、 次関数ではどうか。

傾き の接線は?

接点が つある。 と で、同じ傾きの接線が 本引ける(平行な 本の接線)。そして、傾き の接線は?

実数解なしなので、傾きが負の接線は、 本も存在しない( は常に増加だから、当然だ。) の形が、「どんな傾きの接線が、何本あるか」を決めている。

を「傾きの分布図」として読む。この見方が接線の本数を数える問題(入試頻出)を解く決め手になる。

ポイント

  • 接線の傾き 。傾きの条件は 値 の方程式。
  • 接点の は元の曲線に代入。

よくある間違い

  • 座標だけ求めて、 座標を出し忘れる(接点は座標で答える)
  • (関数の値が4)と誤って立式する(傾きが4なので )
  • 接点の 座標を、接線の式に代入して求めようとして混乱する(接点は曲線上にあるので )

問113次関数のグラフの概形

★ 基礎極値グラフ

問題

関数 の極値を求め、グラフの増減のようすを述べよ。

ヒントを見る

微分して増減表を書く。 の係数が負であることが、グラフ全体の流れ(どちらから来てどちらへ抜けるか)にどう影響するかも意識しよう。

解答・解説

方針

の係数が負なので、右下がりが基本の形。 の解と符号から、極小が先・極大が後にくることに注意する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、 次の係数が負だ。ここが今までと違う。

手順は同じ。微分して、 とおく。

符号を調べる。 が掛かっているので、符号が反転することに注意。

減少 極小 増加 極大 減少

が極小、 が極大で、前の問題()とは逆になった。

次の係数が負だと、グラフの向きが上下逆になる。

公式 で増加、 で減少。 の係数が負だと「減少→増加→減少」

① を解く。

② 符号を調べる。 は上に凸。 で負、 で正、 で負。

  • :負→正 で極小。。
  • :正→負 で極大。。
xyO極小(-1,-2)極大(1,2)
y=-x^3+3x:極小(-1,-2)・極大(1,2)

よって で増加、その外側で減少。

まとめ: の係数が負だと、グラフは「左上から来て・谷・山・右下へ」。 の符号を見れば、極小が先・極大が後にくることが分かる。

発展。 次関数のグラフには、 つの型しかない。判別式で見分けられる。

この 次方程式 の判別式 を見る。

の解 グラフの形
異なる 解 極大と極小がある(S字カーブ)
重解 極値なし(変曲点で水平、 型)
実数解なし 極値なし(単調に増加 or 減少)

今回の は

極値が つある。S字カーブだ。 なら、極値がない。

例: → (常に正)→ 単調増加、極値なし。

この判定が方程式の解の個数の問題に直結する。「 次方程式 の実数解の個数は?」

グラフ と、水平線 の交点の個数を数えればよい。 の極大値は 、極小値は 。

の範囲 交点の個数
個
個(極大点で接する)
個
個(極小点で接する)
個

極値の値( と )が解の個数の「境目」になっている。

「 次方程式が 個の実数解を持つ条件」は、( 軸をまたぐ)と書ける。極値を求める作業が方程式の解の個数を数える方法になった。

微分は方程式論の道具でもある。 グラフを描くことで、代数的には難しい「解の個数」が目で数えられるようになるのだ。

答

極小値 ()、極大値 ()。 で増加、その外で減少

別解

この関数は前に扱った を「ひっくり返した」ものだ。 そう気づけば、計算せずに答えが分かる。

関係を見抜く。

は を 軸で折り返したグラフである( の符号を反転)。折り返すと、何が起こるか。山と谷が入れかわる。

  • の極大(、値 )→ では極小(、値 )
  • の極小(、値 )→ では極大(、値 )

計算せずに、答えが出た

確かめる。

増減も反転する。

  • が増加していた区間( と )→ では減少
  • が減少していた区間()→ では増加

「 で増加、その外で減少」 となり、答えと一致した。

グラフの概形。

左端()から下ってきて( が支配的で、 が負なら は正の大きな値 → 左端は上)

待った。丁寧に見よう。

のとき、(負の 乗は負、それにマイナスで正)。左端は上。 のとき、。右端は下。

つまり「左上から、右下へ」向かうグラフで、通常の 次関数()とは逆向きだ。その途中で、谷()を作り、山()を作って、下っていく。 次の係数の符号がグラフの「大局的な向き」を決める。

この向きさえ押さえれば、極大・極小の位置関係も自動的に決まる。

  • : 増加 → 極大 → 減少 → 極小 → 増加(山が先、谷が後)
  • : 減少 → 極小 → 増加 → 極大 → 減少(谷が先、山が後)

「係数の符号を見て、グラフの向きを先に決める」。これが 次関数を描くときの第一手だ。そして、対称性を使うと計算が半分になる。

も奇関数である()。だから原点対称で、片方の極値が分かれば、もう片方は符号を変えるだけだ。

「変換で結ばれた関数は、性質も対応する」。これを見抜けるかどうかで、計算量が変わる。

ポイント

  • の係数が負 → 全体は右下がり基調。
  • 極小(谷)が先、極大(山)が後にくる。

よくある間違い

  • の符号を調べるとき、 を掛けることによる符号の反転を見落とす
  • 極大と極小を、 のときと同じだと思い込む(3次の係数が負なので入れかわる)
  • グラフの向き(左上から右下へ)を確認せず、増減を逆に書いてしまう

問12接線の方程式(3次曲線)

★ 基礎接線

問題

曲線 上の原点 における接線の方程式を求めよ。

ヒントを見る

原点での傾きを微分係数で求める。通る点が原点だから、傾きさえ出れば式はすぐ書ける。

解答・解説

方針

原点は曲線上の点なので、そこでの微分係数を傾きにすればよい。 を求めて、原点を通る直線を作る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 手順は変わらない。微分して、接点での値を代入する。

原点 での傾き。

傾きは (負)。原点を通り、傾き の直線。

まず確認すべきこと: 原点は曲線上にあるか。

曲線は原点を通っている。 だから は接点になれる。

接線の傾きが負なので、原点付近でグラフは右下がりである。 次関数なのに、原点で減少している。

公式接線

① 傾きを求める。 なので

② 原点を通る直線を作る。 点 、傾き 。

xyO
y=x³−x の原点での接線 y=−x

まとめ:接点が原点なら、接線は必ず原点を通る。傾き さえ出せば、傾き の形ですぐ書ける。

発展。 「接線が曲線を突き抜ける」現象は、変曲点の特徴である。変曲点は現実の判断でも意味をもつ。

変曲点とは「増え方が変わる点」だ。

  • 変曲点の前: 増加が加速している(勢いを増している)
  • 変曲点の後: 増加が減速している(勢いを失っている)

まだ増えてはいるが、「伸びの勢い」がピークを過ぎた点が変曲点である。感染症の流行で、この言葉が広く知られるようになった。

「新規感染者数が減り始めた」のではなく、「新規感染者数の『増え方』が鈍り始めた」。これが変曲点だ。総感染者数のグラフ(S字カーブ)を考えよう。

  • 初期: ゆっくり増える(下に凸)
  • 急増期: 急激に増える
  • 変曲点: 増加のスピードがピーク( 日の新規感染者数が最大)
  • 収束期: 増加が鈍る(上に凸)、やがて頭打ち

変曲点を過ぎることが、「流行のピークを越えた」ことを意味する。 総数はまだ増えているが、勢いは落ちている。対策が効き始めたことを示している。

同じ構造があらゆる「普及」の場面に現れる。

  • 新製品の売上(イノベーター理論のS字カーブ)
  • 技術の普及(スマホ、電気自動車)
  • 人口増加(ロジスティック曲線)
  • 細菌の増殖(栄養が尽きて頭打ち)

変曲点は「勢いのピーク」であり、「転換点」である。そして、変曲点を知るには 階微分が要る。

階微分()は「増えているか」を教える。 階微分()は「勢いが増しているか」を教える。

ニュースで「感染者数の増加は鈍化した」と聞くとき、それは かつ の状態を言っている。

の原点で接線が突き抜ける、という数学的な現象。 同じ見方で、身の回りの「勢いの変化」を読むことができる。

答

別解

次曲線の接線には、 次曲線にはない特徴がある。 「接する」ことの代数的な意味を調べると、それが分かる。曲線と接線の差を計算する。

で、 乗になった。

次曲線のときは、 という 乗(重解)だった。 今回は 乗( 重解)である。この違いは何を意味するのか。

の符号を調べる。

  • → → 曲線が接線の上
  • → → 接している
  • → → 曲線が接線の下

符号が変わっている。

つまり、曲線は接線を「突き抜けて」いる。

次曲線の接線では、こんなことは起こらなかった。 で、曲線は常に接線の片側にあった。

「接しながら、突き抜ける」。意外に聞こえるが、これが 重解の場合に起きることだ。接している(傾きが一致している)のに、交差している。

この点を「変曲点」という。 凸の向きが変わる点だ。

確かに は変曲点( が符号を変える点)

変曲点での接線は曲線を突き抜ける。これが 次関数の特徴的な現象である。

グラフで確認しよう。

は、 で 軸と交わる。

原点付近では、右下がり(傾き )。左では上に凸、右では下に凸で、原点で凸の向きが変わる。

接線 は原点でグラフに接し、そこを境に曲線の反対側へ抜けていく。「接する」ことの意味を、もう 度整理しよう。

差の形 意味 例
単に交わる(傾きは違う) 割線
接する(片側にとどまる) 放物線の接線
接して、突き抜ける 変曲点での接線

「重複度」が接触の「深さ」を表している。

重複度が高いほど、曲線と直線は「より深く」接している。 次近似だけでなく、 次の項まで一致しているのだ。

この考え方は、数IIIのテイラー展開へつながる。 「どこまで高い次数まで一致させるか」で、近似の精度が決まる。接線はその最も簡単な( 次の)場合である。

ポイント

  • 接点が原点 → 接線は 。
  • は導関数の定数項。

よくある間違い

  • の定数項 を落として、傾きを としてしまう
  • 接線が曲線を突き抜けることに違和感を持ち、答えを疑ってしまう(変曲点では正常なこと)
  • 原点が曲線上にあるか()を確認しない