数学I / 集合と命題

集合と命題 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 5つの整数から3つ選んで和を3の倍数に
  2. 調和数は整数にならない
  3. 円 x²+y²=3 上に有理点はない
  4. 3つの集合すべてに属する人数の最小
  5. x²−x と x³−x が有理数なら x は有理数
  6. 2つの有理数の間には無理数がある
  7. 三角不等式の等号条件
  8. 存在命題が真になる条件

問15つの整数から3つ選んで和を3の倍数に

最難関編鳩の巣原理場合分け

問題

どのような5つの整数からも、うまく3つを選べば、その和が3の倍数になるようにできることを示せ。

ヒントを見る

和が3の倍数かどうかは、それぞれの数の「3で割った余り」だけで決まる。5つの数の余りの内訳として、どんなパターンがあり得るか。3種類全部あるときと、そうでないときに分けてみる。

解答・解説

方針

整数を3で割った余り 0, 1, 2 で3つの組に分類する。余りが3種類とも現れるなら1つずつ選べば和の余りは 0+1+2≡0。現れる余りが2種類以下なら、5個を2組に入れるので鳩の巣原理により同じ余りが3個ある組が存在し、その3つの和は余り 3r≡0。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 和が3の倍数かどうかは、各数の3で割った余りだけで決まる。だから5つの数を、余り の3つの部屋に分類して考える。

部屋の使われ方は大きく2通りしかない。3部屋すべてに数があるか。使われる部屋が2つ以下か。

前者なら、余り の組合せですぐに決まる。後者なら、5個を2部屋に入れるのだから、鳩の巣原理で「同じ部屋に3個」が保証される。 で、やはりすぐに決まる。どちらに転んでも、3の倍数の和が作れる。

重要鳩の巣原理: 5個を2部屋に分ければ、少なくとも一方の部屋に3個以上入る()。余り 、

① 余りで分類する。 5つの整数を、3で割った余り()によって3組に分ける。和の余りは各数の余りの和で決まる。

② 3種類の余りがすべて現れる場合。 余り の数を1つずつ選ぶ。和の余りは

和は3の倍数になる。

③ 現れる余りが2種類以下の場合。 5個の数が高々2つの組に入っている。鳩の巣原理により、どちらかの組に3個以上入っている。その組から3つ選べば、余りはすべて同じ で、和の余りは

やはり3の倍数だ。①②③より、つねに可能である。

まとめ: 「全種類そろう」か「どれかに偏る」か。この二者択一はどちらに転んでも勝てるようにできている。5という個数は最良で、4つの整数(たとえば )では3つの和を3の倍数にできない。ぎりぎりの線で成り立つ定理だと見えれば十分だ。

発展。 この事実は一般化できる。「どんな 個の整数からも、 個選んで和を の倍数にできる」(本問は 、)。エルデシュ・ギンツブルグ・ジヴの定理と呼ばれ、 個では反例が作れる。本問はこの定理で3個選ぶ場合を、余りの分類で確かめたものだ。

答

証明(3で割った余りで分類: 3種類すべてあれば1つずつ、なければ鳩の巣で同じ余りが3つ)

別解

部屋割りの全パターン表で押す(苦手な人向け)。 「場合分けが本当に全部なのか不安」という人は、部屋割りの内訳を全部書き出してしまえばよい。5個を3部屋(余り )に入れる内訳は、人数の組だけ見れば次の5通りしかない:

  • 型: 同じ部屋に5個。そこから3個選べば
  • 型: 4個の部屋から3個
  • 型: 3個の部屋から3個
  • 型: 3個の部屋から3個
  • 型: 3部屋すべてに数がある。1つずつ選んで

どの行でも、「同じ部屋3個」か「3部屋から1個ずつ」のどちらかが必ず取れる。5行の表がそのまま証明になる。

本解の「3種類そろう or 偏る」という二分は、この表を2グループにまとめた言い方だ。表で確かめてから二分の言葉に戻ると、論理の骨組みがはっきり見える。

ポイント

  • 余り 0,1,2 の3部屋に分類。
  • 3種類あれば 、2種類以下なら鳩の巣で同じ余り3個。
  • 4個では反例()があり、5が最良。

よくある間違い

  • 数そのものでなく余りで考えてよい理由(和の余りは余りの和で決まる)を書かずに進める。
  • 「3種類そろう」と「2種類以下」で場合が尽きる理由(部屋は3つしかない)を言わない。網羅の一言が論証の資格になる。
  • 4個でも成り立つと思って一般化する。反例 (どの3つの和も余り1か2)がある。5個が最良。

問2調和数は整数にならない

最難関編背理法偶奇の論証

問題

を2以上の整数とするとき、 は整数でないことを示せ。

ヒントを見る

分母たちの中で「2で割れる回数」に注目する。いちばん多く2で割れる数は、 以下にいくつあるか。もし2つあったら、間に何が挟まるはずか。その「ただ1つ」の項だけが、通分したときに仲間はずれになる。

解答・解説

方針

n 以下の整数のうち、2で割れる回数が最大のもの(2^m)はただ1つ。ここに気づけば解ける。和に「2^{m−1}×(1〜n の奇数の積)」を掛けると、1/2^m の項だけが半整数になり、他の項はすべて整数になる。整数+非整数は非整数なので、和は整数になり得ない。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 通分して分子を調べたいが、分母の最小公倍数は複雑だ。そこで、2で割れる回数(2のべき)だけに注目する。

以下で最大の2のべきを とすると、 は 以下でただ1つ。 の2倍 はもう を超えるし、 の奇数倍 はさらに大きいからだ。

この「仲間はずれの1項」 が決め手になる。うまく選んだ数を掛けると、この項だけが整数にならない。背理法はそこで決まる。

重要 以下で2で割れる回数が最大の数 はただ1つ()。「整数の和+整数でない1項」は整数でない

① 仲間はずれを特定する。 となる をとる( なので存在)。 で なら、 の2で割れる回数は 以下である。もし 回以上割れたら、 は の倍数。 なら となって矛盾する。

② 掛けて整数性を仕分ける。 を から までの奇数すべての積とし、 を和に掛ける。 の項は、()と書けるから

は整数だ( はその奇数を因数にもつ)。一方、 の項は

で、 は奇数だから整数でない。

③ 背理法で締める。 和 が整数と仮定すると、 は整数のはず。だが②より で、整数でない。矛盾。よって は整数でない。

まとめ: 「最大の2のべきはただ1つ」という一点から、証明の全体が組み立てられている。素朴に通分するのではなく、うまい倍率 を設計して1項だけを仲間はずれにする。発想の芯は集合の中の「唯一の極端な要素」に目をつけることだ。

発展。 同じ論法を磨くと、もっと強いことが言える。 の は「約分し尽くすと分母が偶数」の分数になる。さらに、(項が2つ以上の連続区間の和)も、すべて整数にならない。「区間内で2で割れる回数が最大の数はただ1つ」が、そのまま通用するからだ。

答

証明( 以下で最大の2のべき がただ1つであることを使う背理法)

別解

最小公倍数でまとめて通分する(よく使う別の方法)。 掛ける数を自分で設計する代わりに、 から の最小公倍数 で普通に通分してもよい。

の素因数2の個数はちょうど ( 以下の最大の2のべき から来る)。すると各分子 のうち、奇数になるのは の項ただ1つで、他はすべて偶数だ( の2の個数が 未満なら、 に2が残る)。

分子の総和は「奇数1個+偶数たち」で奇数。分母 は偶数()。奇数を偶数で割っても、2は約分できないから整数にならない。

掛け算 を設計する本解と、最小公倍数で通分する本ルート。どちらも中心は同じ「 の唯一性」で、書き方だけが違う。分子の偶奇という1ビットに情報を圧縮するのが、この証明の見どころだ。

ポイント

  • 以下の最大の2のべき は唯一。
  • を掛けると の項だけ (非整数)。
  • 整数の和+非整数 → 全体は非整数(背理法)。

よくある間違い

  • 小さい で実験して「整数にならなそう」で終える。実験は予想であって、すべての の証明にはならない。
  • 「最大の2のべき」が2つ以上あると思ってしまう。 の次に2で 回割れる数は で、もう を超えている。
  • 掛ける数 を天下りに出す。「全項を整数化したいが、 だけはわざと半端に残す」という設計意図を一言添える。

問3円 x²+y²=3 上に有理点はない

最難関編背理法余りの場合分け

問題

(1) 整数 について、 が3の倍数ならば、 はともに3の倍数であることを示せ。

(2) 円 上に、 座標と 座標がともに有理数である点は存在しないことを示せ。

ヒントを見る

(1) 3で割った余りが 0, 1, 2 の数の平方の余りをそれぞれ計算してみる。和が3の倍数になる余りの組は限られる。(2) 分母を払った等式に(1)を使うと、3がどんどん出てくる。どこかで「約分し尽くした」ことと衝突しないか。

解答・解説

方針

(1) 平方数を3で割った余りは 0 か 1 だけ。和が余り0になる組合せは 0+0 のみ。(2) 有理点を通分して a²+b²=3c² とし、gcd(a,b,c)=1 に整えてから(1)を使うと a,b が3の倍数 → 9 | 3c² → c も3の倍数となり、既約性に矛盾する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (2)のような「存在しない」証明は、有理点があると仮定して分母を払い、整数の等式 に直すのが第一手だ。

このとき、(3つ全体で約分し尽くす)と整えておく。ここが解けるかどうかの分かれ目になる。(1)で が3の倍数と分かると、左辺は9の倍数。すると まで3の倍数になり、「約分し尽くした」ことと矛盾するのだ。

(1)自身は「平方の余りは 0 か 1」という3で割った余りの基本観察で落ちる。

重要平方数を3で割った余りは 0 か 1(、)。有理点の非存在は「通分 → 整数の等式 → 共通因数の湧き出しで既約性と矛盾」

① (1) を示す。 整数を の形に分けると、平方の余りは

よって の余りは のどれか、つまり 。3の倍数(余り0)になるのは の場合だけだ。すなわち はともに3の倍数である。

② 通分して整える((2))。 有理点 が存在すると仮定する。分母をそろえて ( は整数、)と書く。さらに の共通因数で約分し、 としてよい。代入して分母を払うと

③ 3が湧いて矛盾。 右辺は3の倍数だから、(1)より 。代入して

が3の倍数だから、 も3の倍数(平方の余りの観察から)。すると がすべて3の倍数となり、 に矛盾する。よって有理点は存在しない。

まとめ: 半径 の円は有理数の座標を1点もかすらずに描かれている。「余りの場合分け(1)」と「既約に整えてから矛盾させる(2)」の連携が証明の設計だ。 や には有理点が無数にあるのと対照的で、右辺の3(平方の余りで作れない数)が違いを生んでいる。

発展。 有理点が1つでも見つかる円では、その点を通る傾き有理数の直線を回すことで、有理点が無数に作れる( と直線の交点の計算)。「1つもない」か「無数にある」か。円と有理点の関係は、この両極端しかない。

答

(1) 平方の余りは0か1(場合分け) (2) 通分と(1)で共通因数3が湧き、既約性に矛盾

別解

無限降下法。「最小の解」で矛盾させる(得意な人向け)。 に整える代わりに、こう論じてもよい。

を満たす正の整数の組があると仮定する。その中で が最小のものを選ぶ。(1)より 。代入して整理すると 。 が3の倍数だから で、さらに整理すると

すると、同じ形の等式が で再び現れる。これは「 が最小」という選び方に矛盾する。よって解は存在しない。

約分の代わりに「最小の反例を取ると、さらに小さい反例が湧く」で締める。この論法を無限降下法という。既約性の議論とやっていることは同じだが、「解があるなら、いくらでも小さい解がある。だが正の整数は無限に小さくなれない」という論法は、それ自体が整数問題の各所で使える方法だ。

ポイント

  • 平方の余り(mod 3)は 0 か 1 なので、和が0になるのは のみ。
  • と整えてから 。
  • → で既約性に矛盾。

よくある間違い

  • に整えずに進めて、「3で割れる」がどこにもぶつからない。矛盾の相手(既約性)を先に用意しておくのが設計。
  • が3の倍数 → が3の倍数、の一言(平方の余りは0か1)を飛ばす。ここも(1)の観察が働いている。
  • を別々の分数のまま扱って式が濁る。分母をそろえて と置くのが先。

問43つの集合すべてに属する人数の最小

最難関編集合の要素数補集合

問題

100人の生徒のうち、A を満たす者が80人、B を満たす者が75人、C を満たす者が65人いる。A, B, C のすべてを満たす者の人数として考えられる最小値を求めよ。

ヒントを見る

「3つすべてに属する」を直接数えるより、属さない側(補集合)の人数を見積もる方が早い。属さない者は最大で何人か。そして、その最大が本当に達成できる配置はあるか。

解答・解説

方針

「すべて満たす」の反対側を数える。A∩B∩C に入らない者は、A でないか B でないか C でない者。その人数は多くても 20+25+35=80 人。よって全員100人のうち少なくとも 20 人は3つとも満たす。最小値には補集合3つが互いに重ならない実現例を作って達成を示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 最小値の問題は、2本立てで考える。「下から押さえる不等式」と、「その値を達成する実例」だ。

押さえるには補集合(ド・モルガン)を使う。3つすべてを満たさない者は、「A でない」「B でない」「C でない」のどれかに入る。だからその人数は各補集合の人数の和 を超えない。よって3つとも満たす者は、少なくとも 人。

達成には3つの補集合(計80人)を互いに重ならないように配置した実例を作ればよい。 だから可能だ。

重要ド・モルガン: 「すべて満たす」の補集合は「少なくとも1つ満たさない」。。最小値 = 下界の証明 + 達成例

① 下から押さえる。 補集合の人数は 。3つすべてを満たさない者の集合は で、その人数は

よって、3つすべてを満たす者は

② 20人が達成できることを示す。 100人を次のように分ける。「A だけ満たさない」20人。「B だけ満たさない」25人。「C だけ満たさない」35人。「3つとも満たす」20人()。

このとき A を満たすのは 人、B は 人、C は 人。条件をすべて満たし、3つとも満たす者はちょうど20人だ。

③ 結論。 最小値は 人。

まとめ: 「すべて」の最小は補集合の「少なくとも1つ」に裏返して和で押さえる。そして達成例の構成(補集合たちを互いに素に敷き詰める)までが答案だ。補集合の合計が全体を超えるかどうか()が、最小値が正になるか0で止まるかの分かれ目になっている。

答

人

別解

表側から、2段階で絞る(補集合を使わないルート)。 「A かつ B」の人数から順に押さえていく方法もある。

まず2つ。A が80人、B が75人。合わせて155人ぶんの「所属」が100人の中に詰め込まれている。あふれた 人ぶんは重なりだ:

次に「A かつ B」(55人以上)と C(65人)で同じことをする:

2段階の絞り込みで、同じ下界20人に着く。

どちらのルートも中身は同じ勘定だが、性格は少し違う。補集合ルートは1行で全体を押さえ、こちらは「2つずつ」の直感(あふれた分は重なる)を積み重ねる。あふれの感覚がつかみやすい人は、この段階式が手になじむはずだ。

ポイント

  • 補集合の和で 。
  • 3つとも満たす者 。
  • 補集合を互いに素に配置する実例で20が達成。

よくある間違い

  • 「いちばん重ならない絵」を描いて感覚で20人と答え、下界の証明を書かない。絵は達成例にすぎず、それより小さくできない理由が別に要る。
  • 達成例を出したのに検算(A が80人、B が75人、C が65人になっているか)を省く。配置が条件に合わなければ例にならない。
  • 最小と最大を取り違える。3つとも満たす人数の最大は 人で、これは別の問題。

問5x²−x と x³−x が有理数なら x は有理数

最難関編有理数と無理数恒等式の発見

問題

実数 について、 と がともに有理数ならば、 は有理数であることを示せ。また、「 が有理数ならば は有理数」は正しいか。正しければ証明し、正しくなければ反例をあげよ。

ヒントを見る

を で「割って」みる。簡単な恒等式が隠れている。割るときは0で割る場合の別扱いを忘れずに。後半は、 が有理数になる無理数を、2次方程式の解から探してみる。

解答・解説

方針

決め手は恒等式 x³−x=(x+1)(x²−x) だ。a=x²−x≠0 なら x+1=(x³−x)/a が有理数の商で有理数、よって x も有理数。a=0 なら x=0,1 で直接有理数。後半は「黄金比」x=(1+√5)/2 が x²=x+1 を満たすことから反例になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 与えられた2つの量 と の、間の関係を探すのが第一手だ。 を で割ってみると

きれいな恒等式が出る。 なら は有理数どうしの商で有理数。よって も有理数だ。 の場合は から で片づく。

後半は「条件を1つに減らすと崩れるか」という問いだ。 有理数、を満たす無理数を2次方程式の解から逆算する。 の解 が反例になる。

重要(割り算による恒等式の発見)。0で割る場合の分離と、条件を弱めたときの反例の構成

① の場合。 とおくと、上の恒等式から 。 なら

右辺は有理数の四則だけでできているから有理数。 は有理数である。

② の場合。 より 。 または で、どちらも有理数。①②より前半が示された。

③ 後半は誤り(反例)。 は の解だから、(有理数)。しかし は無理数だ( が有理数なら も有理数になって矛盾)。よって「 が有理数 ⟹ 有理数」は偽である。

なお、この では が無理数になっており、前半の主張と整合している。

まとめ: 前半は「2つの量の間の恒等式を割り算で発見する」。後半は「条件を1つ外すと、2次方程式の無理数解が反例になる」。証明と反例の両輪で、条件の強さの境目をぴったり見極める問題だ。0で割る場合の分離という作法も込みで、論証の総合演習になっている。

発展。 反例の (黄金比)では、 を繰り返し使うと、どの も「整数 整数」の形になる(係数にはフィボナッチ数列が現れる)。だから のような組合せだけが、無理数部分が打ち消されて有理数になる。反例が偶然でなく、構造から来ていることが分かる。

答

前半: から を有理数の式で表す(証明)。後半: 誤り(反例 では )

別解

次数下げで機械的に進む(発見に頼らないルート)。 恒等式を「見つける」のが不安なら、 を と読み替えて、次数を下げていけばよい。 を計算する。 を繰り返し使うと

よって

の1次方程式になった。 なら で、有理数の四則だから有理数。 の場合は本解と同じく 。

「2次の関係式があれば、どんな高次式も1次まで下げられる」。この次数下げはひらめきではなく手順だ。恒等式の因数分解に気づかなくても、同じゴールに機械的にたどり着ける。

ポイント

  • という恒等式を、割り算で見つける。
  • なら 有理数、 なら 。
  • 反例 ( だが は無理数)。

よくある間違い

  • ()の場合分けを忘れて、いきなり で割る。0で割る操作は常に別扱い。
  • 後半を「正しい」と思い込んで証明を試み、時間を失う。示せないときは反例探しに切り替える。 の無理数解、と逆算するのが早い。
  • 反例で が無理数であることの確認( 有理なら も有理で矛盾)を省く。「 を含むから無理数」は論証になっていない。

問62つの有理数の間には無理数がある

最難関編無理数存在の構成

問題

を満たすどんな有理数 に対しても、 を満たす無理数 が存在することを示せ。

ヒントを見る

「存在する」を示すには、実際に作ってみせるのが早い。区間の中の点は「a + (幅)×(0と1の間の数)」の形をしている。その「0と1の間の数」に無理数を仕込むと、できあがった点はどうなるか。

解答・解説

方針

存在の証明は「具体的に1つ作る」のがいちばん確実だ。区間の幅 b−a を 1/√2 倍だけ進んだ点 c=a+(b−a)/√2 を候補にする: 0<1/√2<1 だから c は区間の内部にあり、もし c が有理数なら √2=(b−a)/(c−a) が有理数になって矛盾する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 存在証明の最短路は構成だ。条件を満たすものを、式で1つ作ってみせる。

区間 の点は ()の形に書ける。そこで に、0と1の間の無理数 を仕込む:

あとは2つの確認で完成する。「区間に入る」( から即)。そして「無理数である」(有理数と仮定すると が有理数の式で書けて矛盾)。

重要存在は構成で: 区間の点は 。「(有理数)+(0でない有理数)×(無理数)は無理数」(有理数は四則演算で閉じているから)

① 候補を作る。 とおく( は有理数、)。

② 区間に入ることを確かめる。 より 。 を掛けて 。各辺に を足して

xab区間 (a, b)c
a=0, b=1 の例。幅 b−a の 1/√2 ≈ 0.707 倍だけ進んだ点 c は、区間の内部に入る。そして √2 由来だから無理数になる

③ 無理数であることを確かめる。 が有理数と仮定すると

( は②から)。右辺は有理数の四則でできた有理数。 が無理数であることに矛盾する。よって は無理数で、求める点が存在する。

まとめ: 「存在せよ、と言われたら作ってみせる」。構成的証明の見本だ。仕込みに使えるのは に限らず、0と1の間の無理数なら何でもよい。この事実は「どんなに狭い区間にも無理数がぎっしり詰まっている」ことを意味する。

発展。 逆向きも成り立つ。どんな2つの無理数の間にも有理数がある(小数表示を途中で打ち切って作る)。合わせると、数直線の上で有理数と無理数は、どちらも「どんな短い区間にも現れる」ほど細かく織り合わさっている。この性質を稠密という。

答

証明( が無理数で、 から )

別解

小さすぎる一歩を足す(もう1つの構成)。 区間の幅に合わせて割る代わりに、「十分小さい無理数の歩幅」を に足す作り方もある。 を半分、また半分、と割っていく: 倍々で割るのだから、いずれ区間の幅 より小さくなる。そこで

とおけば、 で区間に入る。無理数であることは本解と同じ背理法( 有理なら が有理で矛盾)。

この作り方の教訓は2つ。無理数はいくらでも小さく作れること。そして「有理数+0でない有理数×無理数=無理数」という道具は、歩幅がどんな形でも同じように働くことだ。構成は一通りではない。

ポイント

  • 候補 を構成。
  • で区間の内部。
  • 有理なら 有理で矛盾。

よくある間違い

  • 中点 を候補にする。有理数どうしの平均は有理数で、無理数にならない(有理数は四則で閉じている)。
  • が区間に入る確認( を掛けて足す)を省く。構成した点は条件を全部検品して初めて答えになる。
  • 「 は を含む式だから無理数」で済ませる。含むだけなら もある。有理数と仮定して を解き出す背理法まで書く。

問7三角不等式の等号条件

最難関編必要十分条件絶対値

問題

実数 について、次を示せ。

ヒントを見る

絶対値の比較は2乗するのが基本だ。ただし「2乗しても同値」と言えるのは、両辺がどんなときか。2乗して打ち消し合ったあとに残る1行は、右側の条件とどうつながるか。

解答・解説

方針

絶対値の等式は、両辺が0以上であることを確認してから2乗すると同値変形できる。2乗して整理すると |ab|=ab という1行にまとまり、これは ab≥0 の定義そのもの。「⟺ を保ったまま変形する」ことを明示するのが答案の基本だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 場合分け( の符号4通り)でも示せる。だが、同値変形を1本道で通す方が短く済む。

決め手は「両辺が0以上の等式は、2乗しても同値」ということだ。 も も0以上だから、安心して2乗できる。展開すると共通部分が消えて、残るのは

の1行。そしてこれは「」の定義そのものだ。必要も十分も、この同値の鎖1本が同時に済ませてくれる。

重要 のとき (同値)。(絶対値の定義)

① 2乗して同値変形する。 両辺とも0以上だから

② 展開してまとめる。 左辺は 。右辺は 。共通の を消して

③ 定義に帰着する。 (絶対値が自分自身に等しいのは0以上のときに限る)。①②③の同値の鎖により

が示された。

まとめ: 「0以上どうしなら2乗は同値」。この一言を明示することが、⟺ の証明では欠かせない。三角不等式 の等号条件を切り出した問題で、ベクトルや複素数の三角不等式でも同じ条件(同じ向き)が現れる。

発展。 個版も同じ形になる。 ⟺ すべて同符号(0は どちらにも数えてよい)。ベクトルでは ⟺ 同じ向き。次元が上がっても、等号の意味は「打ち消し合いが起きない」で一貫している。

答

証明(両辺とも0以上なので2乗して同値変形: )

別解

数直線の歩みで見る(直感ルート+場合分けの証明)。 は「原点からの道のり」、 は「 歩いてから 歩く」こと。すると等式の意味はこうなる。

道のりの合計( )が、到達距離( )に等しい。 寄り道せず、2歩が同じ向きのときだけ起こることだ。逆向きに歩くと、打ち消した分だけ到達距離は縮む。

この直感を符号の場合分けでそのまま証明にできる:

  • のとき: (等号成立。このとき )
  • のとき: (等号成立。)
  • 異符号(たとえば )のとき: は の差の絶対値で、 より真に小さい( の打ち消しが起こる)。等号不成立。このとき

等号が成り立つ場合とそうでない場合が、 と にぴったり対応する。2乗の同値変形(本解)はこの場合分けを1本の式に圧縮したものだ。

ポイント

  • 両辺0以上 → 2乗しても同値。
  • 展開して の1行にまとまる。
  • (定義)。

よくある間違い

  • 「2乗しても同値」の資格(両辺が0以上)を言わずに2乗する。一般には と は同値でない( と )。
  • ⟸(十分性)だけ示して満足する。⟺ の証明は両向き。同値変形の鎖で書けば、両向きが同時に済む。
  • 等号条件を と書いて、一方が0の場合を落とす。 なら で等号は成立している。

問8存在命題が真になる条件

最難関編存在命題絶対値と距離

問題

を実数の定数とする。命題

「ある実数 が存在して 」

が真となるような の値の範囲を求めよ。

ヒントを見る

「ある で成り立つ」は左辺をいちばん小さくする で成り立つかどうか、と同じこと。距離の和 がいちばん小さくなるのは がどこにあるときで、その最小値はいくらか。

解答・解説

方針

「ある x で ≤2」⟺「左辺の最小値が ≤2」。存在命題を最小値の言葉で言い換える。|x−a|+|x−1| は2点 a, 1 への距離の和で、最小値は x を2点の間に置いたときの |a−1|(2点間の距離)。よって条件は |a−1|≤2。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 存在命題「ある で 」は、「 の最小値が2以下」と同値だ。量化子を最小値の言葉に置き換える。これが第一手になる(全称なら最大値に置き換える、と対で覚える)。

は、数直線上の2点 への距離の和だ。 が2点の間(両端含む)にあれば、和はちょうど2点間の距離 。外に出ると、それより大きくなる。つまり最小値は 。

条件は の1本にまとまる。

重要存在命題 ⟺ 最小値で判定(全称命題 ⟺ 最大値)。 の最小値は2点間の距離 ( が2点の間のとき)

① 最小値を求める。 三角不等式より、すべての で

等号は と が異符号または0のとき。すなわち が と の間にあるときだ。そのような は実際に存在するから、最小値は である。

② 存在命題を言い換える。

③ 解く。

a−113−1 ≤ a ≤ 3
命題が真になる a の範囲(青)。a が 1 から距離2以内(−1 ≤ a ≤ 3)なら、2点 a, 1 の間の x が距離の和を |a−1| ≤ 2 にできる

まとめ: 「ある 」は最小値、「すべての 」は最大値。量化子と最大最小の対応表が、この型の基本だ。距離の和の最小が「2点の間なら2点間の距離」という数直線の描像とセットで、絶対値の式がすぐに1次不等式にまとまる。

発展。 平面で「2定点への距離の和が一定」の点の集まりは楕円になる(数Cの2次曲線)。本問の「距離の和が2以下になれるか」は、その1次元版だ。存在条件 は、「楕円がつぶれずに残る条件(定数 ≥ 焦点間の距離)」とまったく同じ形をしている。

答

別解

グラフの「皿」で見る(直感ルート)。 のグラフを描いてみよう。2つのV字の和は、両すそが上がった皿型になる。

xyOy=2|a−1|=1.51a
a=2.5 の例。グラフは2点 1, a の間で高さ |a−1|=1.5 の平らな底(赤)になる。底が破線 y=2 以下だから、条件を満たす x が存在する。底が2を超えるのは a<−1, a>3 のとき

形の理由はこうだ。 が2点 の外側にいるとき、動くと両方の距離が同時に増減するから、傾きは 。2点の間では片方に近づいたぶん片方から遠ざかり、和は変わらない。だから底は平らで、高さは2点間の距離 だ。

「ある で 」とは、皿のどこかが高さ2以下にあること。いちばん低いのは平らな底だから、条件は 。つまり 。

場合分け(1次式3本)で最小値を計算しても同じ結論になる。だが皿の絵が頭にあれば、式より先に答えの形が見える。

ポイント

  • (言い換え)。
  • 距離の和の最小 = (2点の間で等号)。
  • 。

よくある間違い

  • 「ある 」を「すべての 」と読み違える。この は上に有界でないから、全称版は必ず偽になってしまう。量化子の確認が最初の仕事。
  • 最小値が になる理由(等号は が2点の間のとき、その が存在すること)を書かない。三角不等式は下界を与えるだけで、達成の確認が要る。
  • を だけにして、左側 を落とす。絶対値不等式は両側に開く。