数学I / 実数と1次不等式

実数と1次不等式 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 中間の分数と最小の分母
  2. 整数部分の分割恒等式
  3. 相加相乗の等号が使えない最小値
  4. √n の小数部分と 1/2
  5. 3つの平方根の和の無理性
  6. 循環しない小数は無理数
  7. 対数を使わずに桁数を求める
  8. 距離を縮める分数の不等式

問1中間の分数と最小の分母

最難関編分数の不等式数え上げ

問題

(1) 正の整数 が を満たすとき、次の不等式を示せ。

(2) を満たす分数 ( は正の整数)のうち、分母 が最小のものを求めよ。

ヒントを見る

(1) 2つの分数の大小は差を通分して調べる。分子に共通して現れる量は何か。(2) 分母が4以下の分数を全部並べても、1/3 と 1/2 の隙間に入るものはあるか。候補が尽きたら、(1)から「必ず間に入る分数」が分かる。

解答・解説

方針

(1)は差をとって通分するだけだが、分子に「ad−bc の符号」が共通部品として現れる設計を見抜く。(2)は q=1,2,3,4 の分数を全数調査して間に入るものがないことを確かめ、q=5 で (1)の中間分数 (1+1)/(3+2)=2/5 が実際に間に入ることを示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (1)の は、分子どうし・分母どうしを足した分数だ。一見でたらめな操作に見える。だがこれが、必ずもとの2数の間に入る。

証明は差の通分でよい。分子に ( の言い換え)が共通部品として現れる。それが理由だ。

(2)は「分母最小」を問う数え上げ。分母 の分数は有限個しかない。だから全数調査で「隙間に入らない」ことを確かめる。あとは の実例を出せば最小性が確定する。その実例こそ、(1)の中間分数 である。

重要分数の大小は差の通分: 。「最小」の証明 = 下の候補の全数調査 + 実例の提示

① (1) を示す。 と から 。差を通分すると

分子はどちらも同じ だ。よって 。

② (2) 分母4以下の全数調査。 に入るかを、分母ごとに調べる:

  • : は と の間に整数なし
  • : 候補は ()だが、端なので入らない
  • : ⟺ で、整数なし
  • : で、整数なし

よって分母4以下の分数は存在しない。

③ の実例。 (1)を に使う。中間分数 が間に入る(検算: ⟺ 、 ⟺ )。②とあわせて、分母最小の分数は

x1/31/2隙間1/51/42/53/5
分母5以下の分数の位置。1/3 と 1/2 の隙間(青)に入るのは 2/5 だけ。1/5, 1/4 は左の外、3/5 は右の外

まとめ: 分数の大小は差の通分。最小性は「下を全部つぶす+実例」。この2つの証明の方法が本問の中心だ。中間分数は「必ず間に入る分数」を機械的に作れる名品で、しかもその隙間で分母最小になることが知られている。

発展。 と は を満たす「隣どうし」のペアだ。このとき、間に入る分数の分母は必ず 以上になることが一般に証明できる。中間分数が分母最小を与えるのは偶然ではない。既約分数を分母の小さい順に並べた列(フェアリー数列)の理論では、この性質が基本になる。

答

(1) 差の通分による(証明) (2)

別解

勝率で見る(直感ルート)。 分数を「勝率」と読んでみよう。チームAは 試合で 勝(勝率 )。チームBは 試合で 勝(勝率 )。2チームの成績を合算すると、 試合で 勝。その勝率が中間分数 だ。

弱いチームと強いチームを合わせた全体の勝率が、両者の間に来るのは自然なこと。式でも確かめられる:

つまり中間分数は2つの勝率の重みつき平均(重みは試合数 )である。平均は必ず2数の間に入る。これで(1)の理由が分かる。

「分子どうし・分母どうしを足す」という一見でたらめな操作が、「成績の合算」というごく自然な操作だった。そう分かると、この分数はもう忘れられない。

ポイント

  • 差の通分で分子に共通の 。
  • 分母4以下は全数調査で不存在。
  • 中間分数 が答え。

よくある間違い

  • 中間分数 を「分数の足し算」と混同する。和 は通分して計算するもので、これは別の操作(2数の間を作る操作)だ。
  • (2)で を見つけて満足し、分母4以下に候補がないこと(全数調査)を書かない。「最小」の証明は下の候補を全部つぶして初めて完成する。
  • の や の を範囲内と数えてしまう。不等号は端を含まない(開区間)。

問2整数部分の分割恒等式

最難関編整数部分場合分け

問題

実数 に対し、 を超えない最大の整数を で表す。すべての実数 について、次の等式が成り立つことを示せ。

ヒントを見る

(整数はくくり出せる)を使えば、 は の場合だけ調べれば足りる。そのうえで、両辺の値が変わる「境目」を探す。区間を切って表を作れば終わる。

解答・解説

方針

x = n+f(n は整数、0≤f<1)と整数部分と小数部分に分けると、[x+k/3] や [3x] の値は f がどの「3分の1区間」にいるかだけで決まる。f の3区間で両辺をそれぞれ計算して一致を確かめる。漏れのない場合分けがそのまま証明になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 整数部分の等式では「整数を外へくくり出す」のが基本だ。(整数 )を使う。()とおけば、両辺から がそろって消える。調べるのは の場合だけでよくなる。

残った の範囲で、 や の値が変わる境目はどこか。 の2か所だ。そこで3つの区間に切り、両辺を表にする。場合分けそのものが証明になる。

公式( は整数)。値の変わる境目で区間を切り、各区間で両辺を計算し尽くす

① 整数部分をくくり出す。 (、)とおくと

よって で を示せば十分だ()。

② 3区間で両辺を計算する。

  • : 左辺 。 より右辺
  • : 、 より左辺 。 より右辺
  • : 、 より左辺 。 より右辺
fyO1/32/312
0≤f<1 での両辺の値。左辺(3つの整数部分の和)も右辺 [3f] も、境目 f=1/3, 2/3 で1段ずつ上がる同じ階段になる

③ 結論。 すべての区間で一致する。よって、すべての実数 で等式が成り立つ。

まとめ: 整数をくくり出して に帰着し、境目で区間を切る。整数部分の証明の完全な型だ。この等式は一般に と拡張でき( が本問)、同じ場合分けの設計がそのまま通る。

答

証明( とおき、 を 、、 の3つに場合分け)

別解

階段の歩幅で見る(得意な人向け)。 両辺を の関数として見る。差 について、2つのことが言える。

まず、 を 増やすとどうなるか。左辺の3項は に入れ替わる。顔ぶれが1つずれただけで、 だから、左辺全体はちょうど1増える。右辺も でちょうど1増える。つまり差は変わらない:

次に、 では両辺とも0(直接計算)。だからこの区間で 。2つを合わせる。 は幅 ごとに同じ値を繰り返す関数で、最初の区間で0。よってすべての実数で 、すなわち等式が成り立つ。

両辺は「幅 ごとに1段上がる、同じ階段」だった。そういう見方をすると、区間の表を作らなくても、階段の歩幅だけで証明が終わる。

ポイント

  • で に帰着。
  • 境目 の3区間で両辺を表にする。
  • 一般形 の の場合。

よくある間違い

  • 一般の のまま を式変形しようとして手が止まる。整数部分は「値の変わる境目で場合分けする」以外に計算の手がない。
  • 区間の端( ちょうど等)をどちらに含めるかを曖昧にしたまま表を作る。半開区間 の形でそろえると、漏れも重複もない。
  • が負の場合を別に調べようとする。 で に帰着した時点で、正負の区別は消えている。

問3相加相乗の等号が使えない最小値

最難関編最小値等号の吟味

問題

を実数とするとき、 の最小値を求めよ。

ヒントを見る

根号を1文字に置き換えると見慣れた形になる。ただし置き換えた文字の動ける範囲を必ず確認すること。相加相乗の等号が成り立つ値は、その範囲に入っているか。入っていないなら、代わりに何で最小を決めるか。

解答・解説

方針

t=√(x²+4) とおくと式は t+1/t になるが、t の動く範囲は t≥2。相加相乗の等号 t=1 は範囲外で使えない。t+1/t が t≥1 で増加することを差の因数分解で示し、範囲の左端 t=2 で最小と結論する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) とおくと 。式は

になる。相加相乗で 、とやりたくなるところだ。だが待ってほしい。等号 が成り立つには が必要で、実数 では不可能だ()。「」自体は正しい。しかし2には届かない。届かない下界は最小値ではない。

範囲つきの は で増加することを示して、範囲の左端 で最小と締める。これが正しい設計だ。

重要置き換えたら範囲を確認: 。相加相乗の等号が範囲外なら、単調性で端に寄せる

① 置き換える。 とおく。( で 、それ以外で )で、

② の増加を示す()。 に対し

だから、最後の因子は正だ。よって の範囲では で最小になる。

xyO(2, 5/2)等号点(範囲外)12
y=t+1/t のグラフ。谷底(等号点)は t=1 だが、動ける範囲は t≥2(色部分側)なので、最小は範囲の左端 t=2 での 5/2(赤点)

③ 最小値。

は で実現する。よって最小値は 。

まとめ: 「」はいつでも使えるわけではない。最小値を求めるときに欠かせないのは、等号が実際に成り立つかの確認だ。等号が範囲外なら、単調性(差の因数分解)で端点に寄せる。この「相加相乗の等号が届かない」型は、根号や2次式の置き換えでよく出る、間違えやすい形である。

発展。 の最小が「2」と言えるのは、 が動ける範囲に入っているときだけだ。範囲が ()なら、最小は左端の になる。本問は の場合。数IIIに進むと微分で同じ結論を出せるが、「等号の実現可能性を疑う」習慣はどの学年でも役に立つ。

答

( のとき)

別解

答えの候補を引いて、因数分解する(1行で締まる別ルート)。 まず範囲の端 を代入してみる。値は 。これが最小の候補だ。

候補が立ったら、「つねに 以上」を直接示せばよい。 とおいて、差を計算する:

では 、、。よって差は0以上。等号は ()のときだけだ。最小値 がすぐに出る。

単調性の証明すら要らない。「端の値を予想して、引いて、因数分解で符号を見る」。最小値問題を解く、もう1つの有効な方法だ。等号の場所が因数 にそのまま見えているのも分かりやすい。

ポイント

  • で式は 。
  • 等号 は範囲外なので、下界2は最小値でない。
  • 増加性(差の因数分解)で左端 、最小値 。

よくある間違い

  • 相加相乗で と書き、最小値2と答える。等号 は を要求し、実数では不可能。届かない下界は最小値ではない。
  • と置き換えたのに、 の動ける範囲()を書かない。範囲のない置き換えは答案として未完成。
  • 増加性を「グラフの形から明らか」で済ませる。数Iでは差をとって因数分解し、符号で示す。

問4√n の小数部分と 1/2

最難関編平方根の評価数え上げ

問題

を正の整数とし、 を満たす整数 ( 個ある)を考える。

(1) の小数部分がちょうど になることはないことを示せ。

(2) 個の のうち、 の小数部分が より小さいものはちょうど 個であることを示せ。

ヒントを見る

小数部分が 未満、という条件を根号のない形に直したい。両辺とも正なら2乗できる。出てきた境界 と整数 の関係をよく見ると、(1)も(2)も同じ1行から出てくる。

解答・解説

方針

小数部分の不等式は「2乗して整数の不等式に直す」: √n−k<1/2 ⟺ n<(k+1/2)²=k²+k+1/4 ⟺ n≤k²+k(n は整数だから)。この「整数だから 1/4 を切り捨てられる」一手が両方の小問を貫く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の小数部分は だ。「 との大小」を、根号のない不等式に直したい。両辺が正だから2乗できる:

ここで整数の性質を使う。 は整数だから、端数 は切り捨てられる。条件は と同値になる。

しかも境界 が整数でないこと、それ自体が(1)の答えでもある。1本の不等式を書き直すだけで、2つの小問が同時に片づく。

重要根号の不等式は(両辺が正なら)2乗して根号を外す。整数変数なら端数 は切り捨てられる。「ちょうど半分」に分かれるのは、境界が整数でないから

① (1) を示す。 小数部分がちょうど なら 。両辺を2乗して

右辺は整数でない。整数 がこれに等しくなることはない。

② 条件を整数の形に直す。 の について

最後の同値は、 が整数であることによる。

n912.2516小数部分<1/2小数部分>1/2
k=3 の例: 9<n<16 の6個の n。境界 k²+k+1/4 = 12.25(整数でない)を境に、小数部分が 1/2 未満(n=10,11,12)と 1/2 超(n=13,14,15)がちょうど3個ずつに割れる

③ (2) 数える。 範囲は 。このうち②を満たすのは の、ちょうど 個だ。

残りの の 個は、小数部分が より大きい。(1)より「ちょうど 」はないから、 個は2つのグループに完全に分かれる。

まとめ: 「根号の大小は2乗して整数の不等式に直す」+「整数だから端数を切り捨てる」の2手。境界 が整数の隙間に落ちるので、 個が 個ずつぴったり半分に割れる。平方数の間で の小数部分が「前半に 個・後半に 個」と規則正しく並ぶ様子まで見えれば完答だ。

答

(1) が整数にならない(証明) (2) の 個(証明)

別解

グラフで見る(直感ルート)。 のグラフに、高さ の水平線を引いてみる。

ny=3.5(9, 3)(16, 4)12.25
k=3: y=√x 上の6点。水平線 y=3.5 より下が n=10,11,12(青)、上が n=13,14,15(赤)。増加関数だから、大小の判定は交点 x=12.25 との左右に置き換わる

の小数部分が より小さいとは、点 がこの水平線より下にあることだ。 は増加だから、「 と の大小」は「 と の大小」とまったく同じ。増加関数を通しても、大小関係は変わらない。

あとは、水平線との交点 より左にある整数を数えるだけ。 から までの 個だ。交点の 座標が整数でない(どの も線上に乗らない)ことが、(1)に当たる。

不等式の変形が苦手でも、この1枚の絵なら「なぜ半々に割れるか」が目で分かる。

ポイント

  • ちょうど なら となり、整数でない。
  • (整数の切り捨て)。
  • 前半 個が 未満、後半 個が 超。

よくある間違い

  • を2乗するとき、両辺が正であることの確認を飛ばす。 から を一言添える。
  • のまま数えて、境界の扱いに迷う。 は整数だから に直してから数えるのが先。
  • (2)で「残り半分は より大きい」と言うときに(1)を使い忘れる。「ちょうど 」が存在しないからこそ、2つのグループへの分割が完全になる。

問53つの平方根の和の無理性

最難関編無理数背理法

問題

(1) が無理数であることを示せ。

(2) が無理数であることを示せ。

ヒントを見る

根号が3種類あるので、一度の2乗では消えない。1つを移項して2乗し、残ったものをまた孤立させて2乗する。最後に残る根号は何か。その1つがつぶせれば全体が崩れる(それが(1)の役目)。

解答・解説

方針

(2)を有理数 r と仮定して √5 を移項し、2乗すると √6 が残る。もう一度整理して2乗すると、今度は √30 だけが孤立して「r の式=√30」の形になり、(1)と矛盾する。「2乗するたびに根号が1種類ずつ減る」設計。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 根号が3種類あると、1回の平方では消えない。だが「孤立させて2乗」を繰り返すと、根号は1段ずつ減っていく。

を有理数と仮定しよう。 を移項して平方すると が残る。それを孤立させてもう一度平方すると、最後に が1つだけ、有理数の式で書けてしまう。

とどめを刺すのが(1)だ。 の無理性を、既約分数と偶奇を使ういつもの背理法で先に確保しておく。

重要多重根号ほどきの設計: 孤立させて平方 → 根号が1種類ずつ減る。最後に残る1つの無理性((1))が全体の背理法を締める

① (1) の無理性。 ( は互いに素な正の整数)と仮定すると 。右辺は偶数だから は偶数だ。 とおくと 、つまり 。左辺は偶数で は奇数だから、 は偶数。 も偶数となり、 が互いに素であることに矛盾する。よって は無理数。

② 1回目の平方。 が有理数と仮定する。 の両辺を2乗:

③ 2回目の平方でとどめ。 の両辺を2乗すると

これはうまく消えない( が残る)。そこで②の を、そのまま2乗する方が早い:

なので割ってよい。右辺は有理数の四則だけでできているから、有理数だ。これは(1)に矛盾する。よって は無理数である。

まとめ: 平方のたびに と、根号の種類が減って1つに絞られていく。多重根号の背理法は最後に孤立する根号を先に片づけておく(小問(1))のが答案の組み立て方だ。(2項)の一段上として、消し切る腕力を測る問題である。

発展。 実は (相異なる素数)はすべて無理数だ。「孤立させて平方」を繰り返す本問の設計は、原理的にはそのまま伸びていく(式の次数は倍々に増えるが)。

答

(1) 既約分数と偶奇の背理法 (2) 有理数と仮定し、2回の平方で が有理数になって矛盾

別解

消す順番を変える(得意な人向け)。 本解は にとどめを任せた。実は消す順番を工夫すると、とどめの根号をもっと軽い にできる。

②の を、今度は の項が右に孤立するように整理する:

両辺を2乗すると

が有理数なら右辺は有理数。ところが は無理数だ( から が偶数、 から も偶数、と(1)と同じ偶奇の背理法)。矛盾。

同じ2回の平方でも、どの根号を孤立させるかで「最後に残る1個」が変わる。 より の方が無理性の証明も軽い。消去の設計は一通りではない、という見本だ。

ポイント

  • : 既約分数+偶奇の背理法。
  • 移項して平方 → 。
  • もう一度平方すると が有理式で表せて、矛盾。

よくある間違い

  • 3項をいきなり2乗して、 が一度に湧いて散らかる。移項して「孤立させてから」平方するのが原則だ。
  • (1)の使いどころを見失う。小問は「最後に残る根号を先に片づけておく」ための準備だ。
  • の形にするとき、()の確認なしに で割る。

問6循環しない小数は無理数

最難関編無理数循環小数

問題

小数 (1と1の間に並ぶ0の個数が と1個ずつ増えていく)は無理数であることを示せ。ただし、有理数の小数表示は必ず有限小数または循環小数になることは用いてよい。

ヒントを見る

有理数だと仮定すると「ある桁から先は長さ の繰り返し」になる。これが、この小数の構造(0の連続がどこまでも長くなる、1が無限に現れる)のどこと衝突するか。節の長さ を固定してから、十分先の項を調べてみる。

解答・解説

方針

有理数なら小数はある桁から先が長さ p の節の繰り返しになる。この小数では 0 が p 個以上連続する区間が(いくらでも先に)あるので、その区間が循環部分に入れば節の中身はすべて 0 になる。すると以後は 0 しか現れないはずだが、1 は無限に現れる。矛盾。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「有理数 ⟺ 有限小数または循環小数」の対偶を使う。循環しないことを示せば、無理数だと言える。

循環すると仮定して、矛盾を出そう。設計はこうだ。まず循環節の長さ を固定する。次に、この小数の2つの特徴とぶつける。0の連続がいくらでも伸びること。そして、1が無限個あることだ。

0が 個以上並ぶ区間が循環部分に入った瞬間、節は「全部0」と確定してしまう。それなのに、その先でまた1が現れる。この衝突が矛盾になる。

重要無理性の証明 = 「循環しない」ことの証明。循環節の長さ を固定し、構造上の特徴(伸びる0の連・無限個の1)と衝突させる

① 仮定を立てる。 が有理数と仮定する。すると小数表示は、ある桁(第 位とする)から先が長さ の節の繰り返しになる。( には1が無限に現れるから、有限小数ではない。)

② 長い0の連を循環部分に見つける。 の構造から、0の連続は1個、2個、3個、…と際限なく伸びる。よって第 位より先に、0が 個以上連続する区間が存在する。

1010010001000011個2個3個4個
最初の15桁。0の連が 1個 → 2個 → 3個 → 4個 と伸びていく。循環節の長さ p がいくつでも、いずれ「0だけの p 桁」が現れ、節は全部0に確定する

③ 節が全部0になって矛盾。 その区間は連続する 桁をまるごと含む。つまり循環節のすべての位置に0が入っている。節は だ。

すると第 位から先はすべて0のはず。だが には、0の連が終わるたびに1が無限に現れる。矛盾。よって は循環せず、無理数である。

まとめ: 根号も方程式もない「作られた無理数」。無理性の根拠が、計算ではなく小数の構造(規則的だが周期的でない)にあるところが新鮮だ。「循環節の長さを固定して、それより長い反復不能パターンを見つける」論法は、この種の構成小数すべてに通用する。

答

証明(循環すると仮定すると、循環節より長い0の連続の先で節がすべて0となり、以後1が現れず矛盾)

別解

節の長さを1つ決めて、実演してみる(苦手な人向け)。 一般の で考える前に、たとえば「節の長さが3」だったらどうなるか、目で見てみよう。

循環が始まったあとの桁は、3桁の同じパターン ABC がずっと繰り返す。ところが には、その先のどこかに「0が3個以上並ぶ場所」が必ずある。0の連は 個と伸びていくからだ。

0だけの区間は繰り返しパターンを「まるごと1周以上」含む。パターンの3文字がどこから始まっていようと、A も B も C もその区間の中にいる。つまり 。

節が 000 なら、そこから先は永久に0だけのはずだ。でも では、0の連が終わるたびに必ず1が来る。破綻した。

節の長さが3でなく、100でも1万でも、話はまったく同じだ。「0の連はどんな長さも追い越す」から、どんな節も0で埋まってしまう。一般の の証明はこの実演をそのまま文字にしたものである。

ポイント

  • 有理数 ⟹ ある桁から長さ の循環。
  • 0の連は 個以上に伸びる → 節はすべて0。
  • 以後1が現れないはずだが、1は無限個あるので矛盾。

よくある間違い

  • 「規則があるから有理数」と直感で誤る。有理数の条件は「循環する」という特定の規則であって、規則性一般ではない。
  • 循環が最初の桁から始まると決めつける。循環は途中の桁から始まってもよい。だから「第 位から先」と置いて、 より先だけで議論する。
  • 0の連が「無限に長い」必要があると誤解する。節の長さ を1つ固定すれば、 個を超えた時点で十分。

問7対数を使わずに桁数を求める

最難関編累乗の評価桁数

問題

は31桁の自然数であることを、対数を用いずに示せ。

ヒントを見る

桁数の条件を10のべきではさむ形に書く。 が にとても近い。下からの評価はすぐにできる。上からは、はみ出しぶん がどれほど小さいか、2乗の繰り返しで見積もれないか。

解答・解説

方針

31桁 ⟺ 10³⁰ ≤ 2¹⁰⁰ < 10³¹。下からは 2¹⁰=1024>10³ を10乗するだけ。上からは 1024=1.024×10³ と分けて (1.024)¹⁰ を評価する。1.024<1.1 とゆるめてから2乗を繰り返せば、手計算で 3 未満に押さえられる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「31桁」とは、不等式 のことだ。まず問いを不等式で表す。

決め手は、 が のすぐ上にあることだ。下からの評価は を10乗するだけで出る。上からはどうするか。 と分解し、はみ出し係数 が 未満だと示せばよい。 と大きめにゆるめてから、2乗を繰り返す。電卓なしの手計算で押さえられる。

重要桁数 ⟺ 。累乗の評価は「近い10のべき × はみ出し係数」に分解し、係数は2乗の繰り返しで見積もる

① 下からの評価。 の両辺を10乗して

② 上からの評価。 だから

を2乗の繰り返しで見積もる:

よって 。したがって

③ 結論。 。よって は31桁の自然数である。(実際 。たしかに31桁で、評価の と の間に収まっている。)

まとめ: 常用対数なら1行の問題を、不等式の組み立てだけで解いた。「近い10のべきで下から」「はみ出し係数を2乗の繰り返しで上から」の2部構成だ。 という有名な近さ(計算機の「キロ」)が、評価の足場になっている。

答

証明( で下から、 と で上から)

別解

精度を上げると、先頭の数字まで見える(得意な人向け)。 は近似ではなく、正確な等式だ。つまりこの問題は「誤差の玉 が 以上 未満に収まるか」の一点に圧縮されている。

そこで にゆるめず、 のまま2乗を繰り返して、両側から精密にはさんでみる。出発点は :

  • 下から: 、、。よって で、
  • 上から: 、、。よって

まとめると

31桁であるだけでなく、最高位の数字が だとまで分かった(真の値は )。同じ道具(2乗の繰り返し)でも、ゆるめ方しだいで結論の細かさが変わる。それが「評価」という方法の特徴だ。

ポイント

  • の10乗で下界。
  • 、 で上界。
  • なので、31桁。

よくある間違い

  • 桁数の定義を と書いて1つずれる。 桁 ⟺ 。「 は1桁」と具体例で確かめる。
  • を「だいたい2.6くらい」と暗算で断言する。証明では2乗の繰り返しを不等式の鎖として1段ずつ書く。
  • 不等号を10乗しても向きが保たれる理由(両辺が正)を書かずに進める。

問8距離を縮める分数の不等式

最難関編不等式の証明関数の単調性

問題

実数 について、次の不等式が成り立つことを示せ。

ヒントを見る

3つの項がすべて同じ形 をしている。この関数の増減はどうなっているか( と変形すると分かる)。増加なら、中身の三角不等式がそのまま外側に伝わる。仕上げは分数の分母の大小比較。

解答・解説

方針

共通の形 f(t)=t/(1+t) に注目する。f は t≥0 で増加(f(t)=1−1/(1+t) と見れば明らか)だから、三角不等式 |a+b|≤|a|+|b| がそのまま f の値にも持ち込める。最後は分子を分けて、それぞれの分母を小さいものに取り替える。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 3つの項が、すべて の形をしている。なら、関数 の性質で攻めるのが筋だ。

と変形すると、 で増加なのが一目で分かる。増加関数は不等式を保存する。だから三角不等式 を に通して

までは、そのまま進められる。残るは を2項に分ける仕事だ。分子を分けて、分母を小さいものに取り替える(分数は分母が小さいほど大きい)。それだけでよい。

重要 は で増加。増加関数は不等式を保存する。分数は分母を小さくすると大きくなる

① の増加性。 なら だから

tyOy=111(1, 1/2)
f(t)=t/(1+t) は増加して1に近づく(届かない)。どんな t も1未満に縮める変換。増加だから、中身の大小(三角不等式)がそのまま外側に伝わる

② 三角不等式を通す。 と①より

③ 2項に分けて分母を取り替える。

各項の分母 を、それぞれ小さい 、 に取り替えた。②と③をつなげて、示すべき不等式を得る。

まとめ: 「同じ形の項 → 関数として抽象化 → 単調性で中身の不等式を外へ運ぶ」。不等式証明の上級の型だ。この は「距離を1未満に押し縮める」変換として知られ、本問は、その縮めた距離でも三角不等式が保たれることの証明になっている。

答

証明( の増加性で 、あとは分母を大きくして分割)

別解

通分して、差を恒等式で見る(得意な人向け)。 とおく。決め手は次の恒等式だ:

右辺は左辺を通分して整理すれば出る。分子に がくくり出せるのがポイントだ。 では右辺は0以上。よって

最後の不等号は三角不等式と の増加性による。

この道の収穫は等号の完全な特定だ。恒等式の分子 が0になるのは、 または のときだけ。つまり、もとの不等式の等号は または のときに限る。分母の取り替えでは見えにくい等号の姿が、恒等式にははっきり写っている。

ポイント

  • は増加なので、三角不等式が を通る。
  • 分子を分けて分母を小さく取り替える。
  • の完成。

よくある間違い

  • いきなり全体を通分して、4次の式の海で溺れる。共通の形 の単調性に気づけば3行で終わる。
  • の増加を「分子も分母も増えるから」と説明する。それでは大小は決まらない。 への変形か、差の計算で示す。
  • ③で分母を取り替えるとき()、不等号の向きを逆にする。分母を小さくすれば分数は大きくなる。