数学I / データの分析

データの分析 ★★ 標準の問題 全12問

定期テストレベル。典型パターンの運用

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 度数分布表の平均値と中央値の階級
  2. 平均値から未知のデータを決定する
  3. 分散・標準偏差の計算
  4. データの修正と平均値・分散の変化
  5. 変量の変換(1次式)と標準化
  6. 相関係数の計算(偏差の表)
  7. 箱ひげ図(五数要約)の読み取りと正誤判定
  8. 外れ値の判定と平均値への影響
  9. 仮説検定の考え方(効果の判断)
  10. 変量の変換と相関係数
  11. 2つのグループを合わせた平均値と分散
  12. データの合計値から相関係数を求める

問1度数分布表の平均値と中央値の階級

★★ 標準度数分布表代表値

問題

あるクラス40人のテストの得点(100点満点)を度数分布表に整理したところ、次のようになった。

  • 点以上 点未満: 人
  • 点以上 点未満: 人
  • 点以上 点未満: 人
  • 点以上 点未満: 人
  • 点以上 点未満: 人

(1) 階級値を用いて平均値を求めよ。

(2) 中央値が含まれる階級を答えよ。

ヒントを見る

(2)がヤマ。度数分布表では個々の値が不明だから、中央値の『値』は出せない。でも『何番目の人がどの階級か』なら追える。上から人数を積み上げて、まん中の順位がどの階級に落ちるかを探そう。

解答・解説

方針

(1)は基礎で学んだとおり、(階級値 × 度数)の総和を総度数 で割るだけだ。(2)がこの問題のヤマだ。度数分布表では個々の得点がわからないので、中央値の値は求められない。でも『何番目の人がどの階級にいるか』なら追える。

人の中央値は 番目と 番目の平均。そこで累積度数(その階級までの人数の合計)を上から順に足していき、 番目・ 番目の人がどの階級で現れるかを突き止める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 度数分布表では、個々の得点はもう分からない。だから「表から求められるもの」と「求められないもの」の区別が出発点になる。

平均値は各階級の真ん中(階級値)で代表させて計算する近似値だ。中央値は、値そのものは出せない。でも「何番目の人がどの階級にいるか」なら追える。累積度数を上から足していき、40人の真ん中(20番目と21番目)がどの階級に落ちるかを探す。

公式度数分布表の平均値 。中央値の階級は累積度数で追う

(1) 各階級の階級値は 点だ。(階級値 × 度数)の総和は

よって

(2) 人の中央値は小さいほうから 番目と 番目の得点の平均だ。個々の得点は表からわからないが、順位がどの階級に落ちるかは数えられる。累積度数を順に計算すると

  • 点未満: 人
  • 点未満: 人
  • 点未満: 人

番目までの人は 点未満、 番目から 番目までの人が 点以上 点未満の階級にいる。 番目も 番目もこの中に入る。よって中央値が含まれる階級は 点以上 点未満の階級だ。

『中央値そのもの』ではなく『中央値が含まれる階級』を聞かれている理由がここにある。度数分布表からわかるのはそこまで、という情報の限界を意識できると、統計の問題文が正確に読めるようになる。

020406080100051015(点)(人)
得点のヒストグラム(階級の幅 20 点)

発展。 度数分布表の平均が「近似値」なのは、各人の得点を階級の真ん中で代用しているからだ。元データから直接計算した平均とは、ふつう少しずれる。まとめ方(階級の幅)によって統計量が変わる、という感覚は資料を読むときの大切な警戒心になる。

別解の仮平均の考え方はあとで学ぶ変量の変換( と引いてから計算する)の実用版そのものだ。

答

(1) 点 (2) 点以上 点未満の階級

別解

(1)の平均は「仮の平均」を置いて、ずれだけを集計する方法もある。真ん中の階級値 を仮の平均にすると、各階級値のずれは 。度数を掛けて合計すると

ずれの平均は 。よって平均値は 点。大きい数の掛け算( など)が、小さいずれの計算に置き換わる。「平均=基準+ずれの平均」という見方は、電卓のない試験場で役に立つし、次の変量の変換の考え方にもつながっている。

ポイント

  • 度数分布表の平均値は階級値で代表させて計算する
  • 中央値の位置(何番目か)を先に確定し、累積度数で階級を特定する
  • 人なら中央値は 番目と 番目の平均なので、両方が入る階級を確認する

よくある間違い

  • 累積度数の足し算を誤って1つ隣の階級を答える
  • 中央値を「 番目の値」だけで考える(偶数個では 番目と 番目の平均)
  • 度数分布表から中央値の「値」まで求めようとして手が止まる(表から分かるのは階級まで)

問2平均値から未知のデータを決定する

★★ 標準代表値分散

問題

6個のデータ

の平均値が であるとき、次の問いに答えよ。

(1) の値を求めよ。

(2) このデータの中央値と分散を求めよ。

ヒントを見る

未知の があるが、平均が与えられている。これが方程式になる。平均の定義から、総和はいくつのはず? それと を含む総和を等しいと置けば が出る。(2)は を入れてから、並べ直して中央値・偏差で分散。

解答・解説

方針

データの中に未知の値 が混ざっているが、平均値が だとわかっている。この条件が方程式になる。平均の定義から、総和は のはずだ。 を含む総和をこれとイコールで結べば が決まる。

(2)は が決まったあとの普通の計算だ。並べ直して中央値、偏差の2乗の平均で分散。『与えられた統計量から逆算して未知データを決める』→『決まったデータで別の統計量を計算する』という2段構えは、この分野でよく出る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) データの中に未知の が混ざっている。でも平均値が と分かっている。この条件がそのまま方程式になる。

平均の定義から、総和は のはず。 を含む総和をこれと等しいと置けば、 が決まる。(2)は が決まったあとの通常の計算だ。「与えられた統計量から未知データを逆算する」という向きの問題は、定義さえ正確なら怖くない。

公式総和 平均値 個数

(1) 平均値が なので、総和は でなければならない。

(2) データは になる。中央値を求めるときは、まず小さい順に並べ直す。この一手間を飛ばすと確実に誤る。

個(偶数個)なので、中央値は 番目と 番目の平均で

(たまたま 番目と 番目が同じ なので平均も 。『同じ値の平均』に戸惑うかもしれないが、ルールどおり計算すればいい。)分散を求める。平均値 からの偏差は順に

(偏差の和は 。検算も合う。)偏差の2乗の和は なので

まとめ:分散は『2乗和 ÷ 個数』だ。ついさっき(1)で総和 を使ったからといって、ここで で割ったりしないこと。何で割るかを毎回定義に戻って確認する。

発展。 「統計量からデータを逆算する」問題は、平均だけでなく分散や中央値が条件になる型へ発展する。分散が条件なら2次方程式が、中央値が条件なら場合分けが現れる。どの型でも、出発点は定義を等式で書くことだ。

偏差の和が必ず になる事実は、この先の共分散や相関係数の計算でも、表の検算行としてずっと使える。

答

(1) (2) 中央値 、分散

別解

(1)は「過不足の帳尻」で暗算もできる。平均が なら、各データの平均とのずれ(偏差)は全部足すと必ず になる。分かっている5つのずれは 、、、、。合計すると 。

すでに帳尻が合っている。だから のずれは 、つまり だ。

「偏差の合計は必ず 」は、平均の定義を言い換えただけの事実だが、検算にも逆算にも使える便利な1行である。分散の計算前に偏差の合計が になっているか見る習慣をつけると、ミスの早期発見にもなる。

ポイント

  • 「平均値 × 個数 = 総和」から未知のデータの方程式が立つ
  • 未知数が決まったら、必ず並べ直してから中央値を求める
  • 偏差の和が になることを確認しながら計算する

よくある間違い

  • 総和を と、個数を間違える
  • 分散の分母を ( 流儀)とする(高校の教科書では個数 で割る)
  • 偏差の合計が になるかの検算をせず、偏差の写し間違いに気づかない

問3分散・標準偏差の計算

★★ 標準分散標準偏差

問題

5人の生徒の通学時間は次の通りであった。

(1) 平均値を求めよ。

(2) 分散と標準偏差を、定義(偏差の2乗の平均)と公式()の両方で計算し、一致することを確かめよ。

ヒントを見る

定義(偏差の2乗の平均)と公式()の両方でやって、一致を確かめる問題。平均が整数できれいなら定義が楽で、半端なら公式が楽だ。なぜそう言えるか、両方で計算して実感しよう。

解答・解説

方針

分散の2つの計算法、定義(偏差の2乗の平均)と公式()を、同じデータで両方やって、同じ値になることを確かめる問題だ。

結果が一致するのは当然だ(公式は定義を変形しただけ)。でも手を動かして一致を見ることで、公式への信頼と使い分けの感覚が生まれる。

目安はこうだ。平均が整数できれいなら定義式でも苦にならない。平均が半端(小数・分数)なら偏差がすべて半端になるので、公式のほうがずっと楽だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分散には2つの計算法がある。定義(偏差の2乗の平均)と、公式()だ。

この問題は同じデータで両方を実行して、一致を自分の手で確かめる。公式は定義を変形しただけだから、一致は当然。でも手を動かした一致は公式への信頼になる。

使い分けの目安も掴んでおく。平均が整数できれいなら定義式。平均が半端な小数なら、偏差が汚くなるので公式が有利だ。

公式分散 偏差の2乗の平均 (2通りで計算できる)

(1)

(2)

方法1: 定義(偏差の2乗の平均)。 偏差は順に (和は 。検算も合う)で、その2乗は だ。

方法2: 公式()。 偏差を経由せず、元のデータを直接2乗して平均する。

確かに両方とも分散は で一致する。標準偏差は

まとめ:今回は平均が ときれいなので、どちらの方法でも手間は大差ない。でも平均がたとえば のような値になると、定義式では偏差 の2乗という小数計算地獄になる。そのとき公式が役に立つ。両方を使える状態にしておき、データを見て有利なほうを選ぶこと。

発展。 公式 を移項すると 。「2乗の平均は、平均の2乗より必ず大きい(散らばりの分だけ)」という不等式が読み取れる。

この関係は数学Bの統計的な推測や、入試の証明問題(2乗の平均と平均の2乗の大小)でもそのまま中心的に使われる。公式を「計算の道具」と「不等式の事実」の両面で持っておきたい。

答

(1) 分 (2) 分散 、標準偏差 分(両方の方法で一致)

別解

第3の見方として、「データを平行移動してから計算する」手もある。分散は散らばりの量で、全員に同じ数を足し引きしても変わらない。そこで全データから を引くと、。この小さい数のデータで分散を計算すると

移動しても分散は不変だから、これが元のデータの分散でもある。

引く数を平均ちょうどにすれば偏差の計算そのものだが、平均が半端なときは「キリのいい近くの数」を引くだけでも計算が軽くなる。分散が「位置」でなく「散らばり」だけを測っている、という性質の実用化だ。

ポイント

  • 定義と公式のどちらでも分散は計算できる。両方使えると検算になる
  • 平均値が整数で偏差が簡単なら定義、平均が半端なら公式が有利
  • 標準偏差はデータと同じ単位(分)をもつ

よくある間違い

  • (乗の平均)と (平均の乗)を混同する
  • 標準偏差を答えるべきところで分散を答える
  • 公式ルートで の計算(大きい数の乗の和)を焦って間違える

問4データの修正と平均値・分散の変化

★★ 標準データの修正分散

問題

20人の生徒のテストの得点について、平均値は 点、分散は であった。ところが採点ミスが見つかり、 点だった1人は正しくは 点、 点だった1人は正しくは 点であることが分かった。

修正後の平均値と分散を求めよ。

ヒントを見る

個々のデータは不明。でも平均は総和で、分散は『2乗の総和』で決まる。だから追うべきものは2つある。総和がどれだけ変わるかと、2乗の総和がどれだけ変わるかだ。、 の変化をこの2つで見よう。

解答・解説

方針

人分のデータを再計算したくなるが、個々の得点は与えられていない。あるのは修正前の平均と分散、そして2か所の修正内容だけだ。

ここで発想を変える。平均は総和で決まり、分散は(公式 を使えば)2乗の総和で決まる。だから『総和がどれだけ変わったか』『2乗の総和がどれだけ変わったか』の2つの増減だけ追えば、全データを知らなくても修正後の値が出せる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 20人分のデータを再計算したくなるが、個々の得点は与えられていない。あるのは修正前の平均と分散、そして2か所の修正内容だけだ。

ここで発想を変える。平均は総和で決まる。分散は公式 を使えば2乗の総和で決まる。

だから「総和がどれだけ変わったか」「2乗の総和がどれだけ変わったか」。この2つの増減だけを追えば、全データを知らなくても答えが出る。

公式分散 。平均が不変なら2乗の総和の変化だけ追えばよい

まず平均値の変化を調べる。 修正による総和の変化は

点の修正と 点の修正がちょうど打ち消し合い、総和は変わらない。よって平均値は修正後も 点のままだ。

次に2乗の総和の変化を調べる。 『総和が変わらないなら分散も変わらないのでは?』と思うかもしれないが、そうはいかない。分散が見ているのは値の位置ではなく、平均からの距離だからだ。分散の公式 で考えると、 は変わらないので、変化するのは だけ。2乗の総和の変化を、和と差の積で計算すると

( などとまじめに2乗するより、 のほうが速く正確だ。因数分解の公式は計算の道具でもある。)よって は だけ増える。

修正後の分散。

自体の値を知らなくても、『元の分散 』の形に組み替えられるのが、この公式の利点だ。

結論。 平均値 点(変わらず)、分散 。(直感でも確かめられる。、 の修正はどちらも『平均 から遠ざかる』向きだ。だから散らばりが増えるのは自然で、分散の増加と合っている。)

発展。 今回の修正は「平均から遠い側へ2人を動かした」ので、散らばりが増えて分散が上がった。逆に、平均へ近づける修正なら分散は下がる。数値の増減を、分布の形の変化として言葉にできると理解が締まる。

「集計量(総和・2乗の総和)さえ管理すれば個票は要らない」という考え方は、次の合併の問題や、数学Bの統計でも通用する実務的な発想だ。

答

平均値 点(変わらない)、分散

別解

平均が変わらないことを先に確かめると、「偏差の付け替え」だけで分散が出る近道が開く。総和の変化は 。だから平均は 点のまま動かない。平均が動かないなら、各人の偏差の基準も動かない。変わるのは修正された2人の偏差だけだ。

  • 1人目: 偏差 が に。偏差の2乗は から へ、。
  • 2人目: 偏差 が に。偏差の2乗は から へ、。

偏差の2乗の合計は 増える。人数 で割って、分散は 。この近道は「平均不変」が前提であることに注意。平均が動く修正なら、全員の偏差が測り直しになるので、本解の2乗の総和ルートが安全だ。

ポイント

  • 修正の影響は「総和の変化」と「2乗和の変化」に分けて追跡する
  • を使うと、平均が変わらない場合は2乗和の変化だけで済む
  • 2乗の差は で計算すると速い
  • 結果の妥当性を「平均から遠ざかったか・近づいたか」で直感チェックする

よくある間違い

  • 総和が同じだから分散も変わらない、と早合点する(2乗の総和は変わる)
  • 2乗の総和の変化を人数で割らず、そのまま分散に足す
  • 偏差の近道を平均が動く場合にも使ってしまう(平均不変のときだけ許される)

問5変量の変換(1次式)と標準化

★★ 標準変量の変換

問題

変量 のデータの平均値は 、標準偏差は である。

(1) で新しい変量 を定めるとき、 の平均値・分散・標準偏差を求めよ。

(2) で新しい変量 を定めるとき、 の平均値と標準偏差を求めよ。

ヒントを見る

(2)は を『 の形』に開けば、いつもの変換公式で処理できる。結果に注目する。平均と標準偏差が特別な値になるはずだ。これが『標準化』で、偏差値のもとになっている。

解答・解説

方針

(1)は変換公式 、 の練習だ。(2)がこの問題の中心で、、つまり『平均を引いて標準偏差で割る』という変換を扱う。これも と展開すればただの1次式変換なので、同じ公式で処理できる。

でも結果に注目してほしい。平均が 、標準偏差が になる。この操作は標準化と呼ばれ、どんなデータもこの変換で平均 ・標準偏差 の共通のものさしに乗る。偏差値もこの考え方でできている。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 1次式の変換 では、平均はそのまま変換され()、散らばりは 倍になる(。 は足しても散らばりに影響しない)。

(2)の も、展開すれば というただの1次式だ。同じ公式で処理できる。結果は平均 、標準偏差 。この「平均を引いて標準偏差で割る」変換には標準化という名前が付いている。

公式変量の変換 :、、

(1) は 、 の1次式変換なので

分散は 倍ではなく 倍()だ。標準偏差と分散のどちらを聞かれているかを見落とさないこと。

(2) 分数の形のままだと公式が使いにくいので、まず展開する。 なので、、 だ。

よって の平均値は 、標準偏差は だ。

まとめ:結果が と という『きれいすぎる値』になったのは偶然ではない。引いた がちょうど平均、割った がちょうど標準偏差だからだ。この変換(平均を引いて標準偏差で割る)を標準化という。データの単位や水準のちがいを消して共通のものさしに乗せる操作で、模試の偏差値は標準化した値を『 倍して を足した』もの( に対して )にすぎない。数学Bの『統計的な推測』でも中心的な役割を果たす、先につながる操作だ。

発展。 標準化は「単位や満点の違うもの同士を比べる」ための共通の物差しだ。数学 点と英語 点、どちらが相対的に良いかは、標準化した値(平均から標準偏差いくつ分か)で初めて比べられる。

数学Bの統計的な推測では正規分布をこの標準化で「標準正規分布」に統一し、1枚の数表であらゆる場合を処理する。この問題の変換はその標準化の練習にあたる。

答

(1) 平均 、分散 、標準偏差 (2) 平均 、標準偏差

別解

(2)は計算の前に、変換の「意味」から結果を予言できる。 は、目盛りの張り替えだ。まず (平均)を引く。これで平均の位置が原点 に来る。次に (標準偏差)で割る。これで標準偏差が 目盛りになる。

つまり は「平均から標準偏差いくつ分離れているか」を表す数だ。平均 ・標準偏差 になるのは、そういう物差しを作ったのだから当然である。

身近な応用が偏差値だ。偏差値は 、つまり標準化した値を「平均 ・標準偏差 」の物差しに乗せ替えたもの。テストの偏差値 は「平均より標準偏差1つ分上」という意味だと、この変換から読める。

ポイント

  • → 平均は同じ変換、標準偏差は 倍、分散は 倍
  • (標準化)は必ず平均 ・標準偏差 になる
  • 分数の形の変換も の形に直して公式を適用する

よくある間違い

  • (1)で分散を とする(分散は 倍)
  • (2)で平均への を忘れて と答える
  • 標準偏差に でなく をそのまま使い、負の標準偏差を書いてしまう

問6相関係数の計算(偏差の表)

★★ 標準共分散相関係数

問題

5人の生徒の数学 と理科 のテストの得点は次の通りであった。

と の相関係数 を求めよ。

ヒントを見る

共分散1つ・標準偏差2つを別々に出すと、偏差を何度も計算し直すことになる。そこで1枚の表に『偏差・偏差・それぞれの2乗・積』を横に並べ、列ごとに合計する。こうすると3つの材料が一度にそろう。

解答・解説

方針

相関係数 を計算するには、共分散1つと標準偏差2つ、材料が3つ要る。これらをバラバラに計算すると偏差を何度も求め直すことになり、ミスのもとだ。

そこで、偏差の表を1枚作って全材料を同時に仕込む。各生徒について『 の偏差・ の偏差・それぞれの2乗・積』を横に並べ、列ごとに合計すれば、分散2つと共分散が一度に手に入る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 相関係数 の材料は3つ。共分散1つと標準偏差2つだ。

バラバラに計算すると、偏差を何度も求め直すことになってミスを呼ぶ。そこで偏差の表を1枚作り、全材料を同時に仕込む。各生徒について「 の偏差・ の偏差・それぞれの2乗・積」を横に並べ、列ごとに合計すれば、分散2つと共分散が一度に手に入る。

公式相関係数 ( は共分散=偏差の積の平均)

まず平均値。

偏差の表を作る。 各生徒について( の偏差, の偏差)と、偏差の2乗・偏差の2乗・偏差の積を並べる。

  • :
  • :
  • :
  • :
  • :

列ごとの合計: 偏差の2乗和 、偏差の2乗和 、偏差の積の和

(検算ポイント: 、 それぞれの偏差の和が になっていることを、表を作った時点で確認しておく。)

分散・共分散・相関係数。

分母は 。根号のまま掛けてから外すときれいに整数になる。 などと途中で小数にしないこと。

なので、数学と理科の得点にはかなり強い正の相関がある。散布図では点が右上がりの帯状に並ぶイメージだ。

246810246xy
数学 x と理科 y の散布図(r = 0.8: 強い正の相関)

発展。 は「かなり強い正の相関」だ。散布図を描くと、5点が右上がりの帯に乗っている様子が確認できる。数値と図を往復して確かめる習慣は、相関の読み違い(外れ値による見かけの相関など)への備えになる。

相関が強くても、それは「一緒に動く」ことしか意味しない。片方が原因でもう片方が結果、という因果関係までは言えない。この区別はデータを扱う全分野で最重要の注意である。

答

別解

数を小さくしてから表を作る方法もある。相関係数は、1次式の変換で値が変わらない(正の倍率なら)という性質を使うのだ。 は全部偶数なので 、 は と変換すると

平均はどちらも だから、値そのものが偏差になる。積の和は 、 の和は 、 の和は 。

元の で計算した値と一致する。変換の性質(あとの問題で正面から学ぶ)を先取りして使うと、2桁の2乗計算が1桁の暗算に変わる。

ポイント

  • 偏差の表(偏差・2乗・積)を作れば、 が一度にそろう
  • のように、根号は掛けてから開くと楽
  • 計算後は に収まっているか必ず確認する

よくある間違い

  • 偏差の積の符号を誤る(負 × 負 = 正に注意)
  • 分母を として と誤答する(分母は標準偏差の積 )
  • 偏差の合計が になっているかの検算をせず、写し間違いに気づかない

問7箱ひげ図(五数要約)の読み取りと正誤判定

★★ 標準箱ひげ図四分位数読み取り

問題

A組・B組(各40人)のテストの得点について、箱ひげ図から次の値が読み取れた。

  • A組: 最小値 、第1四分位数 、中央値 、第3四分位数 、最大値
  • B組: 最小値 、第1四分位数 、中央値 、第3四分位数 、最大値

次の(1)〜(4)のそれぞれについて、「正しい」「正しくない」「これらの値だけからは判断できない」のどれかを理由とともに答えよ。

(1) 四分位範囲はA組のほうが大きい。

(2) A組には 点以上の生徒が 人以上いる。

(3) B組には 点の生徒はいない。

(4) 平均値はB組のほうが高い。

ヒントを見る

問われているのは計算力より『その図から確実に言えるか・言えないか』。使うことは2つある。四分位数は人数を約 ずつ区切る位置であること、そして箱ひげ図には平均値の情報がないことだ。各主張を1つずつ吟味しよう。

解答・解説

方針

箱ひげ図の読み取りで問われるのは、計算力ではなく『その図から確実に言えることと、言えないことの区別』だ。

使う知識は2つ。①四分位数はデータをおよそ ずつに区切る位置だ。②箱ひげ図には平均値の情報がない(五数要約は順位の情報だけで、値の分布の形までは決めない)。

各主張を『五数要約から論理的に導けるか?』と1つずつ確かめていく。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 箱ひげ図の読み取りで問われるのは、計算力ではなく「その図から確実に言えること」と「言えないこと」の区別だ。

使う知識は2つ。①四分位数はデータをおよそ ずつに区切る位置。②箱ひげ図には平均値の情報がない(五数要約は順位の情報だけ)。

各主張を「五数要約から論理的に導けるか?」と1つずつ検問していく。導けなければ、正解は「判断できない」だ。

公式四分位範囲 。四分位数は人数を約 ずつ区切る。箱ひげ図には平均値の情報はない
30405060708090(点)A組B組
A組・B組の箱ひげ図(各40人)

(1) 正しい。 四分位範囲は だ。

よってA組のほうが大きく、正しい。

(2) 正しい。 『 だからだいたい 人』で済ませず、きちんと詰めてみる。A組の は、小さいほうから 番目と 番目の得点の平均だ。もし 点以上の生徒が 人以下だとすると、 番目の得点は 点未満となり、 番目の得点はそれ以下なので、2つの平均が になることはありえない。よって 点以上の生徒は 番目から 番目の 人以上いる。正しい。

(3) 正しい。 B組の最大値は 点なので、 点を超える生徒はいない。よって 点の生徒はおらず、正しい。最大値・最小値はひげの端から直接読める、いちばん素直な情報だ。

(4) 判断できない。 この問題の中心になる設問だ。箱ひげ図(五数要約)からわかるのはデータの順位の区切りであって、平均値はわからない。中央値はB組のほうが高い()が、たとえばA組に 点近い高得点者が何人もいれば、平均値はA組のほうが高くなることも十分ありえる。『中央値が高い → 平均値も高い』という推論は成り立たない。中央値は順位しか見ておらず、平均値は値の大きさに引きずられる、という2つの代表値の性格のちがいが、そのまま答えになっている。

発展。 箱ひげ図は「順位の要約」であって「値の分布の完全な記録」ではない。同じ箱ひげ図を持つ、姿の違う分布は無数にある。この限界を知っていることが、資料の読み手としての成熟だ。

ヒストグラムと箱ひげ図の対応を問う問題(どのヒストグラムがどの箱ひげ図か)も、この問題の「言える・言えない」の区別の応用である。

答

(1) 正しい (2) 正しい (3) 正しい (4) 判断できない

別解

「判断できない」を確信を持って答えるための、強い方法がある。反例を自分で作ってしまうのだ。(4)の平均値なら、こう考える。A組の五数要約を保ったまま、中身の自由な部分を動かせるか。

たとえば、中央値 と第3四分位数 の間にいる8人( 番目から 番目)は、五数要約に一切触れずに と の間を自由に動ける。全員 点の場合と、全員 点の場合では、箱ひげ図はまったく同じなのに、平均は 点以上変わる。

つまり、同じ箱ひげ図から平均が大きくも小さくもなり得る。だから平均の大小は「判断できない」。「言えない」ことの証明は反例1つで完了する。集合と命題で学んだ「偽の証明は反例」が、データの読み取りでもそのまま働いている。

ポイント

  • 四分位数は「人数の約 ごとの区切り」なので、そこから人数の下限が保証できる
  • 最大値・最小値からは「その範囲の外に誰もいない」ことが言える
  • 箱ひげ図から平均値は読み取れない(中央値と平均値は別物)

よくある間違い

  • (4)で中央値の大小をそのまま平均値の大小と結論してしまう
  • (2)のような人数の保証を「判断できない」としてしまう(四分位数の定義から導ける)
  • 「グラフの印象」で正誤を決め、五数要約からの論理で確かめない

問8外れ値の判定と平均値への影響

★★ 標準外れ値四分位数代表値

問題

10個のデータ

について、次の問いに答えよ。ただし、「 未満、または より大きい値」を外れ値とする。

(1) 第1四分位数 、第3四分位数 を求め、外れ値を判定せよ。

(2) このデータ全体の平均値と、外れ値を除いた9個のデータの平均値をそれぞれ求め、外れ値が平均値に与える影響を述べよ。

ヒントを見る

(1)は外れ値判定の手順どおり。(2)がこの問題で伝えたいことだ。外れ値込みと抜きで平均を実際に2回出して比べる。平均は外れ値でどれだけ動く? 中央値なら? 数値で実感するのが狙い。

解答・解説

方針

(1)は外れ値判定の手順どおりだ。 個のデータなので下組・上組 個ずつ、それぞれの中央値が 、、境界は四分位範囲の 倍外側だ。

(2)がこの問題の伝えたいことだ。外れ値込みと外れ値抜きで平均を実際に2回計算して比べる。『平均値は外れ値に敏感、中央値や四分位数は鈍感』という教科書の一文を、数値の実感として持つための問題だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (1)は判定の手順どおりに進める。10個のデータなら下組・上組5個ずつ、それぞれの中央値が 、。境界は四分位範囲の 倍外側だ。

(2)がこの問題の伝えたいことだ。外れ値込みと抜きで、平均を実際に2回計算して比べる。「平均値は外れ値に敏感、中央値や四分位数は鈍感」。教科書の一文を数値の実感として持つための問題である。

公式外れ値: 未満、または より大きい値

(1) データは 個なので、下組は前半 個、上組は後半 個にきっちり分かれる。

  • 下組 の中央値:
  • 上組 の中央値:

四分位範囲は なので、外れ値の境界は

未満の値はなく、 より大きい値は だけだ。よって外れ値は だ。

x1527354752外れ値でない範囲外れ値
外れ値でない範囲は 15 以上 47 以下なので、52 は外れ値

(2) 全体( 個)の平均値は

外れ値 を除いた 個の平均値は、総和から を引いて個数を に直せばいい(全部足し直す必要はない)。

まとめ:比べてみると、外れ値 が1個含まれるだけで平均値は から へと も動く。残り9個のデータは何も変わっていないのに、だ。一方、中央値( と の平均 )は、 の部分が でも でも変わらない。順位で決まる量だからだ。平均値は外れ値に敏感、中央値は頑健(影響を受けにくい)。外れ値がありうるデータでは、平均値だけを見ず中央値もあわせて確認するのが分析の基本姿勢だ。

発展。 四分位範囲という基準は、絶対的な決まりではなく広く使われる目安だ(箱ひげ図のひげの長さの慣習に由来する)。基準を変えれば外れ値の判定も変わる。「基準込みで判定が決まる」という相対性を知っておきたい。

外れ値が見つかったときの正しい態度は「なぜこの値が出たのか」を調べることだ。入力ミスなら直し、実態なら残して中央値で説明する。数値処理の先に、判断の問題がある。

答

(1) 、、外れ値は (2) 全体の平均 、除いた平均 。外れ値は平均値を大きく引き上げる

別解

「敏感・鈍感」の対比は思考実験を1つ足すとさらにはっきり見える。外れ値の を、もっと極端な に書き換えてみる。

、、中央値 は、1つも動かない。これらは「何番目の値か」だけで決まる量で、端の値がいくら暴れても順位が変わらない限り無反応だからだ。

一方、平均は から へ跳ね上がる。1つの値だけで、全体の代表値が実態からかけ離れた値になる。

年収の統計で「平均値」と「中央値」が大きくずれる話は、この現象である。データに極端な値が混ざり得るときは、どちらの代表値を見るべきかを考える。それがこの問題の実用的な教訓である。

ポイント

  • 外れ値の判定は と の境界で機械的に行う
  • 平均値は外れ値に敏感、中央値・四分位数は影響を受けにくい(頑健)
  • 総和から1個引いて個数を1減らす、という平均の再計算に慣れる

よくある間違い

  • (2)で除いた後の平均を、個数 のまま割ってしまう(除いた後は 個)
  • 外れ値を「必ず取り除くべき誤り」と決めつける(影響を確認するのが目的で、実際の値のこともある)
  • 境界の計算で四分位範囲()でなく 自体を 倍してしまう

問9仮説検定の考え方(効果の判断)

★★ 標準仮説検定

問題

ある部活動で新しい練習方法を試したところ、 人中 人の記録が向上した。「新しい練習方法には効果がある」と判断してよいかを、次の考え方で調べたい。

効果がないならば、各部員の記録は向上するかしないかが同じ確率(それぞれ )で起こると考えられる。そこで、公正なコイン 枚を投げて表の枚数を数える実験を 回行ったところ、表が 枚以上になったのは 回であった。

基準となる確率を として、「新しい練習方法には効果がある」と判断してよいか答えよ。

ヒントを見る

『効果がある』と言いたいなら、まず反対の仮説『効果なし(=五分五分)』を立てる。すると『20人中15人以上が向上』は『コイン20枚中15枚以上が表』と同じ現象。その珍しさを実験の割合で見積もり、基準と比べる。

解答・解説

方針

『新しい練習方法に効果がある』と主張したい。仮説検定の構えどおり、反対の仮説『効果がない(向上するかどうかは五分五分)』を立てて、それを追いつめる。

仮説のもとでは、各人の記録が向上する確率は 。つまり『 人中 人以上が向上』は『コイン 枚中 枚以上が表』と同じ現象だ。この起こりにくさをコイン実験の相対度数で見積もり、基準 と比べる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「効果がある」と主張したい。仮説検定の構えはその反対から始まる。

「効果がない(向上は五分五分)」という仮説をわざと立てて、それを追いつめるのだ。

仮説のもとでは、 人中 人以上の向上は「コイン 枚中 枚以上が表」と同じ現象になる。その起こりにくさを実験の相対度数で見積もり、基準()より小さければ、仮説のほうを疑う。それが棄却だ。

重要仮説検定:主張の反対(効果なし=五分五分)を仮説に立て、相対度数が基準より小さければ棄却

まず仮説を立てる。 主張したいことは『新しい練習方法には効果がある』だ。その反対の仮説

を立てる。『なぜわざわざ反対を仮定するのか』と戸惑うかもしれないが、これは背理法と同じ構えだ。反対の仮定から『ありえないほど珍しいこと』が導かれれば、仮定のほうを疑える。

仮説のもとでの起こりにくさを見積もる。 仮説が正しければ、各人の向上・非向上はコインの表裏と同じ五分五分の現象だ。よって『 人中 人以上が向上する』ことは『コイン 枚中 枚以上が表になる』ことと同じ仕組みで起こる。実験では 回中 回だったので、相対度数は

基準と比べて判断する。

『効果がない』のに 人以上も向上することは、基準 を下回る『めったにない』出来事だ。それが実際に起きた。ならば『効果がない』という仮説のほうが疑わしいと考えて、これを棄却する。

結論。 新しい練習方法には効果があると判断してよい。

(注意: この判断は『絶対に効果がある』ことの証明ではない。めったに起こらないことがたまたま起きた可能性は ではなく、基準 は『その見込みちがいをどこまで許すか』の取り決めだ。統計的な結論には、いつもこの但し書きが付く。断定ではなく、根拠のある判断、というのが仮説検定の立ち位置だ。)

発展。 基準の に絶対の根拠はなく、慣習的な約束だ。そして仮説が正しくても、 回に 回ほどは偶然「珍しいこと」が起きて、正しい仮説を誤って棄却してしまう。検定は「確からしい判断」であって「証明」ではない。

この考え方は背理法(矛盾したら仮定を捨てる)の確率版と見ることもできる。数学Bの統計的な推測で、正規分布を使った本格的な検定として再登場する。

答

相対度数 なので「効果がない」という仮説は棄却され、効果があると判断してよい

別解

コイン実験の代わりに、場合の数で理論値を直接計算することもできる(数学Aの組合せを使う)。コイン 枚の表裏の出方は全部で 通り。表がちょうど 枚になる出方は、 枚から表の位置を選ぶ組合せの数だけある。表が 枚以上になる出方を数えると

確率は 、およそ 。

実験の相対度数 は、この理論値の近似だったことが分かる。 回の実験は理論計算の「代用品」であり、回数を増やすほど理論値に近づく。実験と理論、2つの道が同じ結論(棄却)に着くことを確かめておくと、検定の仕組みへの信頼が深まる。

ポイント

  • 主張の反対(効果がない)を仮説に立てるのが仮説検定の第一歩
  • 「仮説のもとでの起こりにくさ」を実験・シミュレーションの相対度数で見積もる
  • 基準( など)より小さければ仮説を棄却する。ただし結論は断定ではなく確率的な判断である

よくある間違い

  • 「効果がある」ほうを仮説として立て、論理が循環する
  • 相対度数と基準の大小比較の結論を逆にする
  • 「ちょうど15人」の確率だけを見る(「15人以上」というそれ以上極端な場合も含めて数える)

問10変量の変換と相関係数

★★ 標準相関係数変量の変換

問題

2つの変量 の相関係数は である。次の各場合について、新しい2つの変量の相関係数を求めよ。

(1) の各値に を加え()、 はそのままとする。

(2) はそのまま、 の各値を 倍する()。

(3) の各値を 倍し()、 はそのままとする。

ヒントを見る

単位を変えたら相関係数はどうなる? 偏差の変化だけ追えばいい。定数を足すと偏差は? 正の数を掛けると偏差は? 共分散と標準偏差が同じ倍率で動くなら、割り算の結果はどうなるか。負の倍率のときだけ何かが起きる。

解答・解説

方針

単位を変えたら(点→パーセント、cm→mなど)相関係数はどうなるか、という問題だ。

決め手は偏差の変化を追うことだ。 と変換すると偏差は 、つまり は偏差に影響せず、偏差が 倍になるだけだ。すると共分散(偏差の積の平均)は 倍、標準偏差は 倍。相関係数は分子と分母で がほぼ約分され、残るのは符号だけだ。

結論を先に言うと、平行移動と正の倍率では は不変、負の倍率では符号だけ反転する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 単位を変えたら(点→パーセント、cm→m など)相関係数はどうなるか、という問題だ。

偏差の変化を追えば解ける。 と変換すると、偏差は 倍になる( は偏差に影響しない)。

すると共分散は 倍、標準偏差は 倍。相関係数は分子と分母で大きさが約分され、残るのは の符号だけ。「相関係数は単位に依らない。符号だけが変わり得る」が結論の形だ。

公式相関係数は正の1次変換では不変・負の倍率で符号反転(単位に依らない)

一般に ()と変換すると、偏差は になる。平均も一緒に動くので、 は偏差から消えてしまう。これをもとに各場合を考える。

(1) ()では偏差がまったく変わらないので、共分散も標準偏差もすべて元のまま。よって

全員に 点足しても『連動の強さ』が変わらないのは直感どおりだろう。

(2) とすると、 の偏差が 倍になるので

相関係数は

分子の と分母の が約分されて消える。相関係数が割り算で定義されているので、倍率の影響が自動的に打ち消される。

(3) とすると、 の偏差が 倍になるので

共分散は符号ごと反転するが、標準偏差は必ず正なので絶対値がついて変わらない。この非対称のせいで、約分しきれない符号が1つ残る。

(意味を考えれば当然で、 の符号を反転すれば『 が増えると も増える』関係は『 が増えると は減る』関係に裏返る。)

まとめ。 相関係数は平行移動や正の倍率の変換では変わらず、負の倍率を掛けると符号だけが反転する。つまり は単位の取り方によらない量だ。点数で測ろうがパーセントで測ろうが同じ値になる。だからこそ、異なるデータの間で『連動の強さ』を比べる共通のものさしとして使える。

発展。 「単位に依らない」からこそ、相関係数は違う現象どうしの比較に使える。気温とアイスの売上(C と円)、身長と体重(cm と kg)。単位の混ざった量の関係を、 から の1本の物差しに乗せるのが の役目だ。

この不変性は実際の計算の時短にも使える(データから定数を引き、キリのいい数で割ってから を計算してよい)。相関係数の計算問題で役に立つ。

答

(1) (2) (3)

別解

散布図の絵で考えると、計算なしで結論が見える。相関係数は「点の並びが直線にどれだけ近いか」を測る量だからだ。(1) に を足すのは、散布図全体を右へ平行移動すること。点の並びの形はまったく変わらない。だから のまま。

(2) を 倍するのは、縦方向に引き伸ばすこと。帯は縦長になるが、「直線への乗り具合」は変わらない。 のまま。

(3) を 倍するのは、左右の反転。右上がりの並びが右下がりに裏返る。強さは同じで向きだけ逆、。

「平行移動と拡大縮小では形の崩れ方が変わらない。反転だけが向きを裏返す」。この絵を持っておくと、公式を忘れても符号を間違えない。

ポイント

  • のとき (同符号なら不変、異符号なら符号反転)
  • 共分散は 倍、標準偏差の積は 倍になる。分子は符号を持ち、分母は持たない
  • 相関係数は単位(cm でも m でも)によらない、無単位の量である

よくある間違い

  • (2)で「 倍したから相関も強くなり 」とする( は を超えない)
  • (3)で標準偏差まで 倍して符号が打ち消される、と考える(標準偏差は常に正で 倍)
  • (足し算の部分)が相関に影響すると思い込み、余計な計算を始める

問112つのグループを合わせた平均値と分散

★★ 標準平均値分散グループの統合

問題

A班 人のテストの得点は平均値 点、分散 であり、B班 人の得点は平均値 点、分散 であった。A班とB班を合わせた 人全体の平均値と分散を求めよ。

ヒントを見る

平均や分散は『足せない』量。でも総和と2乗の総和なら足せる。各班の2乗の総和を、分散の公式を逆に使って復元 → 合算 → 全体の分散へ。分散を単純平均しないことが大事だ。

解答・解説

方針

平均 点・分散 のA班と、平均 点・分散 のB班を合わせたら?

平均は総和経由で素直に出る(人数が同じなので2つの平均のちょうど中間になる)。危ないのは分散だ。 と平均したくなるが、これは誤り。分散は平均からの距離で決まる量で、合併すると『全体の平均』という新しい基準点からの距離で測り直しになるからだ。

確実な手順は公式の変形 で各班の『2乗の総和』を復元し、全体で合算してから全体の分散を計算すること。総和と2乗総和は、平均や分散とちがって単純に足せる量だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 平均 点のA班と平均 点のB班を合わせる。平均は総和経由で素直に出る(人数が同じなら、ちょうど中間の 点)。

危ないのは分散だ。 と平均したくなるが、これは誤り。分散は「平均からの距離」で決まる量だ。合併すると、基準点が各班の平均から「全体の平均 」に変わり、全員の距離が測り直しになる。2乗の総和を経由して計算し直すのが本筋である。

公式(平均・分散から2乗の総和を復元して合算する)

まず全体の平均値。 A班の総和は 点、B班の総和は 点なので、全体の平均値は

次に各班の『2乗の総和』を復元する。 分散の公式 を変形すると 。平均と分散から『2乗の平均』が逆算できる。

  • A班: 、よって2乗の総和は
  • B班: 、よって2乗の総和は

全体の分散。 2乗の総和は足してよい量なので、全体の2乗の平均は

よって全体の分散は

結論。 平均値 点、分散 。

まとめ:注目してほしいのは、分散 が各班の分散(、)のどちらよりも大きいことだ。合併後の散らばりには、各班の中での散らばりに加えて『班どうしの平均のずれ( と )』が新たな散らばりとして上乗せされる。A班の平均的な生徒も全体平均 から見れば 点ずれているのだ。『分散の平均 』という誤答が、この上乗せ分を見落としていることも、これで納得できるだろう。

発展。 「全体の散らばり=群の中+群の間」という分解は、統計学で分散分析と呼ばれる手法のもとになっている。クラス間の学力差を説明するとき、個人差(群内)と学級差(群間)を分けて見る、という発想である。

2つの平均が同じ班を合べたら( 点と 点)、部品②は になり、分散はちょうど分散の平均になる。誤答の が正解になる特別な場合まで言えると、理解は完全だ。

答

平均値 点、分散

別解

合併後の分散は意味のある2つの部品に分解できる。この見方を知ると、 では足りない理由まで説明できる。部品①は「各班の中の散らばり」。2つの班の分散の平均で、。

部品②は「班どうしのずれ」。各班の平均が全体平均 からどれだけ離れているかで、。合併後の分散は、この2つの和で

という誤答は、部品②(班間のずれ)を丸ごと忘れた値である。「全体の散らばり=班の中の散らばり+班の間の散らばり」という分解は、人数が違う場合には重みつきの平均になるが、構造は同じである。

ポイント

  • グループ統合の分散は「分散の平均」ではないので、2乗和に戻して計算する
  • で各グループの2乗和を復元するのが基本
  • 平均が異なるグループを合わせると、全体の分散は各グループの分散より大きくなりうる

よくある間違い

  • 全体の分散を としてしまう(班間のずれの分が抜ける)
  • 乗の総和と乗の平均を混同して、人数倍を忘れる
  • の変形を使わず、乗の総和を復元できない

問12データの合計値から相関係数を求める

★★ 標準相関係数共分散分散の公式

問題

20組の2変量データ について、次の合計値が分かっている。

(ここで は20組すべてについての合計を表す。)

の平均値、分散、共分散を求め、相関係数 を求めよ。

ヒントを見る

個々のデータはなく、合計値だけ。それでも全部出せる。分散は『2乗の平均 − 平均の2乗』。共分散にも同じ形の公式『積の平均 − 平均の積』がある。まず合計値を個数で割って、各平均を作るところから。

解答・解説

方針

個々のデータは1つも与えられず、あるのは合計値(、、、、)だけ。それでも相関係数は完全に計算できる。

分散は 、そして共分散にも同じ形の公式 (積の平均 − 平均の積)がある。分散の公式で を に置き換えたものが分散、と見れば、2つの公式が同じ変形から出てくる、対になる公式だとわかる。

実際の統計処理でも、データを1件ずつ見ながら5つの合計を貯めておけば済む。実用上も大事な計算法だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 個々のデータは1つもない。あるのは5つの合計値だけ。それでも相関係数は完全に計算できる。

分散の公式 には、対になる公式がある。共分散の だ。どちらも「合計値を で割った平均たち」だけでできている。5つの合計値を で割って部品(平均・2乗の平均・積の平均)をそろえ、公式に流し込めばよい。

公式、共分散 (積の平均 平均の積)

まず平均値。

分散。 『2乗の平均 − 平均の2乗』で

よって 、 だ。

共分散。 共分散(偏差の積の平均)は、分散の公式を導いたのと同じ展開で

という『積の平均 − 平均の積』の形に変形できる(展開して 、 が定数であることを使えば確かめられる。分散の公式は とした特別な場合だ)。よって

相関係数。

まとめ:(積の平均 )と (平均の積 )は別物だ。この差 が共分散で、2変量が連動している分だけ『積の平均』が『平均の積』からずれる、と読める。 なので、かなり強い正の相関だ。

発展。 合計値だけで統計量が全部出る、という事実には実務的な意味がある。 組の生データを保存しなくても、5つの合計値さえ記録しておけば、あとから平均・分散・相関係数を再現できる。データの「要約統計量」という考え方だ。

別解の「 はコサイン」という見方からは、 が当たり前の事実として見える。数学IIで学ぶコーシー・シュワルツの不等式は、この事実の代数版である。

答

、、、、、

別解

得意な人向けに、相関係数が何を表すかが分かる見方を1つ示す。各データの偏差を成分として並べた、 個の成分を持つ2本の矢印(偏差のベクトル)を想像する。 の偏差の列と、 の偏差の列だ。

このとき、共分散 は2本の「内積 ÷ 」、標準偏差はそれぞれの「長さ ÷ 」にあたる。すると

これは、ベクトルのなす角の の式と同じ形だ。つまり相関係数とは「偏差ベクトルどうしのなす角のコサイン」である。

だから必ず 以上 以下。 は2本が同じ向き(完全な正の相関)、 は直交(無相関)、 は正反対。相関係数の性質がすべて角度の言葉で言い換えられる。数学Cでベクトルの内積を学んだら、ぜひこの見方に戻ってきてほしい。

ポイント

  • 合計値( など)だけで平均・分散・共分散・相関係数まで計算できる
  • 共分散にも「積の平均 − 平均の積」の公式()がある
  • 電卓統計やコンピュータの集計はこの形の合計値を使っている

よくある間違い

  • を と混同する
  • 分散・共分散の計算で合計値を で割り忘れる
  • の分母を分散の積()にしてしまう(標準偏差の積が正しい)