数学I / データの分析

データの分析 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 分散は「範囲の半分」の2乗を超えない
  2. 平均と中央値は標準偏差以上には離れない
  3. 相異なる整数データの分散の最小値
  4. 相関係数を最大にする組み方(並べ替え不等式)
  5. 回帰直線と相関係数の関係
  6. 和と差の標準偏差(共分散の展開)
  7. 最高点はどこまで高くなれるか
  8. 相関は推移するか

問1分散は「範囲の半分」の2乗を超えない

最難関編分散最大値2次関数

問題

個のデータ がすべて ()を満たすとする。このデータの平均値を 、分散を とする。

(1) を示せ。

(2) が偶数のとき、等号が成り立つデータの例を1つ挙げよ。

(3) が奇数のとき、 の最大値を求めよ。

ヒントを見る

平均のまわりで測るのをやめて、区間の中点のまわりで測ってみよ。どちらの2乗和が大きいか。(3) 分散を1つのデータ だけの関数と見ると、どんな形か。最大はどこでとるか。

解答・解説

方針

分散は平均のまわりの散らばりだが、平均の位置は分からない。そこで「どんな でも 」を使い、中点 のまわりで評価する。(3)は「分散は各 の下に凸な2次関数」だから最大は区間の端(つまり か )でとる、と絞ってから の最大化に持ち込む。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分散は平均のまわりの散らばりだ。だが平均がどこにあるかは分からない。分かっているのは「全部が に入っている」ことだけである。

そこで、測る中心を取り替える。区間の中点 なら、どのデータも から 以内にある。これは確実に使える情報だ。

ただし中心を平均からずらすと、2乗和は必ず増える。逆に言えば「平均のまわりの2乗和 中点のまわりの2乗和」。この向きの不等式こそ、いま欲しいものである。

(3)は最大値を狙う。分散を1つのデータ だけの関数と見ると、 の2次関数で下に凸だ。下に凸な関数の閉区間での最大は必ず端でとる。だから最大にするデータは か しか使わない。ここまで絞れれば、あとは個数の問題になる。

公式任意の に対して (中心を平均からずらしたぶんだけ増える)

① (1) 中点のまわりで測る。 とおく。 は区間の中点だから、 より

(区間の端まででも、中点からの距離は である。)公式より

引いた が 以上であることを使っている。

② (2) 等号の例。 が偶数のとき、 を 個、 を 個並べる。平均はちょうど中点 になり、どの偏差も 。よって

で等号が成り立つ。

xm中点Mn/2 個平均n/2 個
n が偶数のときの等号の配置。データを両端 m と M に半分ずつ置くと、平均はちょうど中点にきて、どの偏差も (M-m)/2 になる。散らばりはこれ以上大きくできない

③ (3) まず「端だけを使う」ことを示す。 以外を固定し、 を の関数と見る。 で、( は他の和)だから、 の係数は

つまり下に凸の2次関数である。下に凸な関数が閉区間 で最大になるのは端点だけ。よって が最大のとき は か である。他のデータも同じだから、最大を与えるデータは と だけからなる。

④ 個数を最適にする。 が 個、 が 個()とする。平均は で、 の偏差は 、 の偏差は 。したがって

あとは のもとで を最大にすればよい。 が奇数だと半々にできないので、 は と のときが最大で

よって求める最大値は

まとめ: 「範囲さえ分かれば分散に上限がつく」。中心を中点に取り替えるのが第一手、最大の探索を端点に絞るのが第二手である。

発展。 が奇数のときの最大値 は、 よりわずかに小さい。ちょうど半々に割れないぶんだけ損をするのだ。 を大きくすれば差は消えていく。

この不等式(ポポヴィチウの不等式)は実務でも使える。測定値の上限と下限しか分からない状況で、標準偏差の上限を見積もれるからだ。逆に「標準偏差が大きいのに範囲が狭い」という報告があれば、それは計算間違いである。散らばりと範囲は独立には動けない。

答

(1) 中点 のまわりで測ると 。平均のまわりの2乗和はそれ以下 (2) と を 個ずつ (3)

別解

もっと鋭い上限を作る(高い視点)。 実は より強い評価が、平均を使って書ける。各データは を満たすから、2つの距離の積は 以上である。

展開すると 。 について足して で割ると

よって

「分散は、平均から左端までの距離と、平均から右端までの距離の積を超えない」。これが本当の姿だ。最後に相加相乗平均を使う。2つの距離の和は で一定だから

これで(1)が出る。しかも途中の は、平均が端に寄っているデータに対してずっと鋭い上限を与える。たとえば のデータで平均が なら、分散は 以下になり、 よりはるかに強い評価になる。

最初の不等式で等号が成り立つのは、すべての が か のときである。(3)で「端点だけを使う」と絞ったのは、この等号条件を先取りしていたことになる。

ポイント

  • 中点 のまわりで測ると 。
  • で、平均のまわりが最小。
  • 最大は端点 だけのデータ。 の最大化に帰着する。

よくある間違い

  • (1)で と勝手に仮定して議論する。平均がどこにあるかは分からない。だからこそ「中点のまわりで測り、平均のまわりのほうが小さい」という向きの評価が必要になる。
  • (3)で、最大を与えるデータが端点( か )だけであることを示さずに、いきなり「半々にすればよい」と決めつける。 が奇数のときは半々にできないので、この詰めが欠かせない。
  • ()の最大を としてしまう。 は整数だから、 が奇数のときの最大は である。

問2平均と中央値は標準偏差以上には離れない

最難関編平均と中央値三角不等式標準偏差

問題

個のデータ の平均値を 、中央値を 、標準偏差を とする。以下、「 を最小にする は中央値 である」ことは用いてよい。

(1) 任意の実数 に対して

が成り立つことを示せ。

(2) を示せ。

(3) とする。比 は にいくらでも近づけられることを、データの例を作って示せ。

ヒントを見る

(1) を新しい変量 と見よ。 について何が言えるか。(2) を「偏差の平均」の形に書けないか。そこから絶対値を中に入れる。

解答・解説

方針

平均は外れ値に引きずられ、中央値は動じない。だが2つが離れられる距離には限界があり、それが標準偏差である。三角不等式・中央値の最小性・(1)の3段を積み重ねるとちょうど にたどり着く。(1)自体は「分散は 以上」の言い換えにすぎない。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 平均は外れ値に引きずられる。中央値は動じない。だから2つは離れうる。ではどこまで離れられるのか。

答えは「標準偏差 まで」である。 は散らばりの尺度だから、散らばりが小さいデータでは平均と中央値がほとんど一致する。

使う道具は3つ。三角不等式(和の絶対値は絶対値の和以下)、中央値の最小性(絶対偏差の和は中央値で最小)、そして「絶対値の平均 2乗平均の平方根」。この3段を積み重ねると、ちょうど にたどり着く。

(1)の不等式は、実は「分散は 以上」の言い換えにすぎない。 という新しい変量を考えれば、 がそのまま(1)になる。

公式どんな変量 でも分散は 以上: 、すなわち
定理三角不等式

① (1) 新しい変量を作る。 とおく。 の分散は 以上だから

ここで である。移項すると

両辺とも 以上だから、平方根をとって(1)を得る。

② (2) 3段で挟む。 まず、平均と中央値の差を「偏差の平均」の形に書く。

第1段は三角不等式である。

第2段は中央値の最小性。絶対偏差の和を最小にするのは中央値だから、 と比べて

第3段は(1)で とする。

3つをつなげば 。

③ (3) 限界に迫る例を作る。 を自然数とし、 を 個、 を 個並べたデータ( 個)を考える。

中央値は小さい順に並べたときの真ん中の値である。 が過半数( 個)を占めるから 。平均は 。

分散は2値データの計算から 、すなわち である。よって

を大きくすれば、この値はいくらでも に近づく( なら約 )。したがって(2)の は、これ以上小さい値には置き換えられない。

x01中央値 ± s中央値平均1 が2個
例: 0 が3個、1 が2個。中央値は 0、平均は 0.4、標準偏差は約 0.49。平均は必ず『中央値 ± 標準偏差』の帯(青)の中にある。この例では帯の端すれすれ

まとめ: 「平均は、中央値から標準偏差ぶんまでしか離れられない」。三角不等式・中央値の最小性・2乗平均との比較を積み上げるだけで、3つとも基本的な道具である。

発展。 実は等号 が成り立つのは、データがすべて同じ値のとき()に限る。それでも(3)のように比を にいくらでも近づけられる。「等号は成立しないが、定数 は改良できない」という状況だ。

実務ではこの不等式が警告として働く。所得分布のように、平均が中央値よりずっと大きいデータは、この限界に近いところにいる。もし「平均と中央値の差が標準偏差の 倍」という報告があれば、それは計算間違いである。データを見る前に、数字どうしの整合性が確かめられるのだ。

答

(1) の分散が 以上、から従う (2) 三角不等式 中央値の最小性 (1) の3段 (3) を 個・ を 個並べると比は で、 で に近づく

別解

(1)をコーシー・シュワルツで示し、等号条件まで追う(得意な人向け)。 (1)はコーシー・シュワルツの不等式の特別な場合でもある。

両辺を で割って平方根をとれば(1)である。この見方の利点は、等号条件がはっきりすることだ。コーシー・シュワルツの等号は「2つの並びが比例するとき」、いまの場合は がすべて等しいときである。

そこで(2)の等号を追ってみよう。 として、第3段((1)で )で等号が成り立つには、 がすべて等しい必要がある。その共通の値は だから、データは と の2種類しかない。

が 個、 が 個とすると、偏差の和が だから 、すなわち 。つまり2つの値がちょうど半々である。このとき中央値は小さい順に並べた真ん中2つの平均で 。したがって となり、 と等しくはならない。

結局、等号が成り立つのは (全部同じ値)のときだけである。「近づけるが到達できない」不等式の典型だ。

ポイント

  • (1)は の分散が 以上、というだけ。
  • 三角不等式 中央値の最小性 (1) の3段で に到達。
  • が 個・ が 個で比は 。

よくある間違い

  • 「平均は外れ値に引きずられるから、中央値からいくらでも離れられる」と思い込む。確かに平均は動くが、そのとき標準偏差も一緒に大きくなる。だから比 は を超えない。
  • (2)の第2段で、中央値の最小性を「平均の最小性」と取り違える。2乗の和を最小にするのが平均、絶対値の和を最小にするのが中央値である。役割が違う。
  • (3)で「 に近づく例」ではなく「 ちょうどになる例」を探し続ける。等号は のときしか起こらない。近づけられるが到達できない、という状況を正しく捉える。

問3相異なる整数データの分散の最小値

最難関編分散二重和整数

問題

とし、 はどの2つも異なる整数であるとする。このデータの分散を とする。

(1) 分散は次のようにも書けることを示せ。

(2) を示し、等号が成り立つのはどんなときか答えよ。

ヒントを見る

平均が邪魔だ。平均を経由せずに散らばりを測る式は作れないか。2点の差に注目せよ。

(2) 相異なる整数を小さい順に並べると、 番目と 番目の差は最低でもいくつか。

解答・解説

方針

分散の定義には平均が現れるが、整数の情報と相性が悪い。そこで「すべての2点の差の2乗の平均」という表し方に書き換える。この形なら平均を経由せず、相異なる整数の差が 以上であることを直接流し込める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 整数で、しかもどの2つも異なる。だから隣どうしは最低でも は離れる。散らばりには「これ以上詰められない」下限があるはずだ。

ところが分散の定義には平均が出てくる。平均は整数とは限らないし、整数の条件と結びつけにくい。

そこで平均を消す。分散は「すべての2点の差の2乗の平均」としても書けるのだ。それが(1)である。この形なら、平均を経由せずに「2点の差」だけで評価できる。

相異なる整数を小さい順に並べれば、 番目と 番目の差は少なくとも 。この不等式を二重和に流し込めば、 という「最も詰まった配置」の分散が、そのまま下限として現れる。

公式、

① (1) 二重和を展開する。 各項を偏差で書き直す。 だから

第1項は について足すと 倍になるから 。第3項も同じく 。第2項は

偏差の和は だからだ。よって

となり、(1)の式を得る。平均が消えたことに注目したい。

② (2) 差の下限を入れる。 小さい順に並べ替えて とする(並べ替えても分散は変わらない)。

相異なる整数だから隣どうしは 以上離れる。 を 回足せば、 のとき

両辺とも正だから2乗しても向きは変わらない。 なら両辺 、 でも入れ替えれば同じ。したがってすべての組で

(1)の式に入れると

③ 右辺を計算する。 右辺は(1)の式を「データ 」に当てはめたものだから、 から までの分散に等しい。

よって

等号はすべての で となるとき、すなわち が連続する整数 のときである(平行移動しても分散は変わらないので、 は何でもよい)。

34567145812連続する整数(分散 2)すき間あり(分散 14)
n=5 の例。上: 連続する整数 3,4,5,6,7 は分散が最小の 2。下: すき間のある 1,4,5,8,12 は分散 14。相異なる整数である以上、上の配置より詰めることはできない

まとめ: 平均が扱いにくいときは、平均の出てこない表し方を探す。「すべての2点の差の2乗の平均」は、分散のもう1つの表し方である。

発展。 から までの分散 は、よく知られた値だ。サイコロの目( から )なら である。

本問は「相異なる整数のデータは、どんなに詰めてもサイコロ型より散らばれない」と言っている。区間 に連続的に一様分布する点の分散は で、こちらとほとんど同じ値になる。 のずれは、整数が格子点であることから来る補正だ。離散と連続が という同じ定数で結ばれているのは、偶然ではない。

答

(1) と書いて展開する(平均が消える) (2) 並べ替えて を代入すると、 の分散 が下限として出る。等号は連続する整数のとき

別解

定義のまま、詰まった並びを直接評価する(手を動かすルート)。 二重和を使わない道もある。 で考えてみよう。相異なる整数だから隣どうしは最低 離れる。いちばん詰まった並びは で、平均は真ん中の 。偏差は となり、分散は

確かに公式と合う。一般の でも、間隔をすべて にした並びを考えれば、偏差は という等差数列になる。その2乗和は

で割って 。同じ値である。

ただし、この道で厳密に「最小」を言うには「間隔を1か所でも広げると2乗和が必ず増える」ことを示さねばならない。それを一般の配置について直接示すのは意外に面倒だ。本解の二重和はその面倒をまとめて片づける道具である。具体例で答えの見当をつけ、証明は二重和で行う。この二段構えが実戦的だ。

ポイント

  • と書けば、平均が消える。
  • 相異なる整数なら 。
  • 下限は の分散 。等号は連続整数。

よくある間違い

  • 平均が整数だと決めつける。 が偶数なら、連続整数の平均は の端数を持つ。二重和の表現を使えば、平均を扱わずに済む。
  • (2)で を示さずに使う。根拠は「隣どうしが 以上」を 回足すことである。一言でよいので書く。
  • 等号を「 から までのとき」だけに限ってしまう。平行移動しても分散は変わらないから、連続する整数ならどこから始めても等号である。

問4相関係数を最大にする組み方(並べ替え不等式)

最難関編相関係数共分散並べ替え

問題

変量 の値の集まり と、変量 の値の集まり を1対1に対応させて、5個のデータ を作る。対応のつけ方は 通りある。

(1) 対応をどう変えても は変わらない。このことを用いて、相関係数 を最大にすることが を最大にすることと同じである理由を説明せよ。

(2) を最大にする対応は、 と を同じ順位どうしで組んだものであることを示せ。

(3) の最大値と最小値を求めよ。

ヒントを見る

対応を変えたとき、平均・標準偏差・共分散のうち、動くのはどれか。(2) なのに となるペアがあったら、 を入れ替えてみよ。和はどう変わるか。

解答・解説

方針

変えられるのは「組み方」だけ。何が動いて何が動かないかを見極める。平均も標準偏差も値の集まりだけで決まるので不変で、動くのは だけ。あとは「大小が食い違うペアを入れ替えると和が増える」という交換論法で、最大が同順であることを示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 値の集まりは決まっていて、変えられるのは「組み方」だけだ。まず、何が変わり何が変わらないかを見極める。

平均も標準偏差も の値全体・ の値全体だけで決まる。組み方には無関係だ。動くのは共分散、すなわち だけである。

だから問題は「積の和を最大にする組み方は?」に言い換えられる。

あとは交換だ。大小が食い違うペア(小さい に大きい )があれば、そこを入れ替えると和が増える。増えるなら、それは最大ではない。したがって最大の対応には食い違いが1つもない。つまり同じ順位どうしで組む、ということになる。

公式相関係数 、共分散

① (1) 動くのは1か所だけ。 は、 の値の集まりと の値の集まりだけで決まるので、対応を変えても不変である。したがって

の右辺で、対応によって動くのは だけ。しかも はその1次式で、係数 は正である。よって を最大にすることと を最大にすることは同じである。

② (2) 交換すると和が増える。 ある対応で、 なのに となるペア(逆順のペア)があったとする。この2人の だけを入れ替えると、和の変化は

、 だから、この値は正である。つまり和は必ず増える。

対応は有限個( 通り)なので、 を最大にする対応は存在する。その対応に逆順のペアがあれば、いま見たように入れ替えて和を増やせてしまい、最大に矛盾する。よって最大の対応には逆順のペアが1つもない。すなわち の大小と の大小が完全に一致する。これは同じ順位どうしの組である。

③ (3) 値を計算する。 同順の対応は である。

、。偏差は が 、 が だから

よって

同じ議論で、最小は逆順 のときで、共分散は 、 である。

xyO同順(r=0.89)逆順(r=-0.89)12345510
同じ値の集まりでも、組み方で散布図はまったく違う。同順(青)は右上がりで相関は最大 0.89、逆順(赤)は右下がりで最小 -0.89。真ん中どうしの組 (3,3) は両方に共通(黒)

まとめ: 「何が動いて何が動かないか」を見極めれば、 通りを調べずに済む。動く量が1つだけなら、その最大化に集中すればよい。交換論法は順序に関する最大最小の問題で広く使える方法である。

発展。 (2)で示した「同順で積の和が最大、逆順で最小」は並べ替え不等式と呼ばれ、数学のあちこちで使われる。相加相乗平均の証明や、チェビシェフの和の不等式もこの仲間だ。

直感的には「大きいものどうし、小さいものどうしを組めば総和が大きい」という当たり前の話に見える。だが証明は、交換1回ぶんの差 の符号を見るだけで済む。当たり前に見えることも、1行の式で確実に押さえるのが数学のやり方である。仕事の割り当てや投資の組合せなど、応用の場面も広い。

答

(1) で、。分母と は不変だから、 は の増加関数 (2) 逆順のペアを入れ替えると和が増える (3) 最大 、最小

別解

残差から相関係数を求める(得意な人向け)。 (3)の値を、共分散を経由せずに出すこともできる。同順の対応 に、最小二乗の直線(回帰直線)を当てはめてみる。傾きは 、切片は だから、直線は

この直線からの縦のずれ(残差)は、 から順に

で、2乗和は である。ここで「残差の2乗和の最小値は に等しい」という関係を使う。 だから

(同順なので 。)本解と一致する。

この計算から の意味も分かる。 とは「 の散らばりの が で説明でき、残り が直線からのずれ」という意味だ。 が に届かないのは、点 が直線から大きく上に外れているからである。相関係数を「直線でどれだけ説明できるか」の物差しとして読む。この見方は統計の実務でそのまま使われる。

ポイント

  • 対応を変えても は不変。動くのは だけ。
  • 逆順ペアの交換で和が だけ増える。
  • 最大は同順で 、最小は逆順で 。

よくある間違い

  • 対応を変えると平均や標準偏差も変わると思い込む。変わるのは「どの とどの を組むか」だけで、値の集まり自体は変わらない。したがって は不変である。
  • (2)を「 通り全部調べればよい」で済ませる。答えは出るが、一般の では通用しない。交換の一手で「最大なら逆順ペアはない」と言い切るのが本筋である。
  • (3)で共分散を とし、 を引き忘れる。 の最大化と の最大化は同値だが、 の値そのものは共分散から計算する。

問5回帰直線と相関係数の関係

最難関編最小二乗法相関係数2次関数の最小

問題

個のデータ について、 の平均を 、分散を ()、 の平均を 、分散を ()、共分散を 、相関係数を とする。直線 に対して

とおく( は各点から直線までの縦のずれの2乗和である)。

(1) を最小にする を求めよ。

(2) の最小値は であることを示せ。

(3) (2)から を導き、 となるのはどんなときか答えよ。

ヒントを見る

2変数の最小化は片方を固定して1つずつ。まず について平方完成せよ。(3) は何の和か。だから符号はどうなるか。

解答・解説

方針

は の2変数関数だが、1つずつ平方完成すればよい。まず について。すると「直線は を通る」が自動的に出る。次に について平方完成すると最小値が出て、その形 がそのまま を示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「データに最もよく合う直線」をどう決めるか。縦のずれの2乗和 を最小にする、というのがその答えだ。

は と の2変数関数だが、怖がることはない。 を先に、 を後に、と1つずつ平方完成すればよい。 について平方完成すると が出る。これは「直線は必ず点 を通る」ことを意味する。データの重心を通るのだ。

その を代入すると、 は だけの2次関数になる。もう一度平方完成すれば が決まり、最小値も出る。そして最小値の形 が、 の理由をそのまま示している。 は2乗の和だから 以上になる。理由はそれだけだ。

公式(平方完成。 で最小)

① について最小化する。 とおくと で、 である。公式より のとき最小で、そのときの値は

「直線は を通る」ことが、計算から自動的に出てきた。

② について最小化する。 展開すると

の2次関数で、 の係数 は正だから下に凸。平方完成して

よって のとき最小である。

③ (2) 最小値を整理する。

最後は より を使った。

xyO12345510
点 (1,2),(2,3),(3,7),(4,6),(5,12) と回帰直線 y=2.3x-0.9。赤い縦線が残差で、その2乗の和が最小になるように直線が決まる。最小値 n·s_y^2(1-r^2) が 0 以上であることから |r|<=1 が従う

④ (3) 符号を見る。 は2乗の和だから、その最小値も 以上である。

、 だから 、すなわち 。等号 は のとき、つまり残差がすべて のときである。これはすべての点が1本の直線 の上に乗ることを意味する( の符号は の符号と一致する)。

まとめ: 2変数の最小化も「1つずつ平方完成」で片づく。そして最小値の式 から、相関係数の性質(、 は直線上)がまとめて説明できる。

発展。 (2)を書き直すと

となる。 は「 の散らばりの総量」、 は「直線で説明しきれなかった残り」である。したがって は「 の散らばりのうち、 で説明できる割合」を表している。

統計学ではこれを決定係数と呼ぶ。 なら で「 説明できた」と読む。相関係数は「 もあるから強い」と見るのではなく、2乗して「説明できた割合」として読むとよい。そうすると、()がそれほど強くないことも分かる。

答

(1) 、(直線は点 を通る) (2) 平方完成2回 (3) より 。 は全点が1直線上にあるとき

別解

先に標準化してしまう(高い視点)。 と を標準化しておくと、話がずっと透明になる。

とおくと、 も も平均 、分散 である。そして

相関係数は「標準化した2つの積の平均」である。ここで「 を で近似したときの残差の2乗の平均」を考える。

左辺は2乗の平均だから 以上である。したがって、どんな実数 に対しても

とすれば 、すなわち が即座に出る。

さらに、この式は最良の傾きが であること(標準化したデータでは傾きがそのまま相関係数になる)、そのときの残差の2乗の平均が であることまで一度に示している。 のときだけ残差が 、つまり全点が直線上だ。

標準化すると や が式から消える。「相関係数は単位のとり方によらない」のも、このためである。センチメートルで測ろうがインチで測ろうが、 は動かない。

ポイント

  • の平方完成で、直線が を通ることが出る。
  • の平方完成で 、最小値 。
  • だから 。等号は全点が直線上。

よくある間違い

  • を と の2変数のまま扱おうとして詰まる。片方を固定して1つずつ平方完成すればよい。まず 、次に の順が楽である。
  • 「残差」を点から直線までの垂直距離(最短距離)だと思う。ここで最小化しているのは縦方向のずれ の2乗和である。垂直距離で測ると、別の直線が最適になる。
  • (3)で の条件を落とす。 がすべて同じ値だと で、そもそも相関係数が定義できない。分母が になる場合を除くのは、相関を扱うときの大前提である。

問6和と差の標準偏差(共分散の展開)

最難関編共分散相関係数標準偏差

問題

2つの変量 について、標準偏差は 、 であるとする。 と の相関係数を とする。

(1) の標準偏差 のとりうる値の範囲を求めよ。また、両端が実現するデータの例をそれぞれ挙げよ。

(2) と の相関係数を で表せ。

(3) (2)で求めた値のとりうる範囲を求めよ。

ヒントを見る

和の分散は「2乗して足す」だけでは出ない。真ん中に何が入るか。(2) の偏差と の偏差を掛けて足すと、何が残るか。

解答・解説

方針

と (すなわち )を組み合わせる。(2)では と の共分散が、偏差の積の展開で になる(交差項が消えて が現れない)ことがポイント。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 和の標準偏差は、 と の「連動の仕方」で変わる。同じ方向に動けば増幅し、逆方向に動けば打ち消し合う。

その連動を測るのが共分散 で、 という関係がある。あとは の動ける範囲を知ればよい。それが 、すなわち である。

(2)は共分散の「掛け算のような性質」を使う。 の偏差と の偏差を掛けると となり、交差項が消える。だから共分散は だけになり、 が姿を消してしまう。

だから、この値は負の 。つまり和と差は、いつでも負の相関を持つ。ここがこの問題の特徴だ。

公式、
定理コーシー・シュワルツの不等式より 、すなわち

① (1) 範囲を出す。 である。したがって

だから 。標準偏差は 以上だから

実現例を作る。 が 、 が という2個のデータなら 、 で、 は だから (このとき )。 を に取り替えると は で (このとき )。

② (2) 共分散を計算する。 偏差を 、 と書く。 の偏差は 、 の偏差は である。よって共分散は

が消えてしまった。一方、標準偏差は

したがって求める相関係数は

③ (3) 範囲を出す。 より だから

分子が (負)なので、分母が小さいほど値は小さくなる。よって

和と差の相関はつねに負である。最も に近いときでも で、 のときは (和と差が完全に逆向きに連動する)。

x(長さ3)y(長さ4)x+yx-yO
偏差をベクトルと見ると、標準偏差は長さ、共分散は内積になる(図は相関 r=1/2 のとき)。x+y と x-y の標準偏差は長さ 3 と 4 の平行四辺形の2本の対角線の長さ。三角不等式から 4-3=1 以上 3+4=7 以下と分かる

まとめ: 共分散は「掛け算のように」展開できる。 と の共分散が になるのはその典型で、 である限り、和と差は必ず相関を持つ。

発展。 偏差を「ベクトル」と見ると、この問題の全体が一目で分かる。 の偏差を並べたものを1本の矢印、 の偏差を並べたものをもう1本の矢印と思うのだ。すると標準偏差は矢印の長さ、共分散は内積、相関係数は2本のなす角の余弦にあたる。

の標準偏差は2本を足した矢印の長さ、 は引いた矢印の長さ、つまり平行四辺形の2本の対角線である。三角不等式から「 以上 以下」が読み取れる。これが(1)の答えの意味だ。データの分析がそのまま幾何の問題になる。

答

(1) ( で両端) (2) (3) 以上 以下(つねに負)

別解

を動かして追いかける(苦手な人向け)。 (1)を、 を実際に動かしながら見てみよう。

なら 。 なら 。 なら 。 が から へ連続的に動けば、 も から へ連続的に増える。だから範囲は で、途中に飛びはない。

ここでは (無相関)のときに注目する。 で、これは 、つまり三平方の定理そのものである。無相関な2つの量を足すと、標準偏差は「直角三角形の斜辺」のように合成されるのだ。

3つの場合を並べてみる。

  • (完全に同じ動き): (ただの足し算)
  • (無関係): (三平方の定理)
  • (完全に逆の動き): (引き算)

はこの3つの極端のあいだを連続的に埋めている。「独立なら分散が足せる」という統計の基本則も、この の場合にほかならない。数式を覚えるより、この3つの絵を覚えておくほうが、はるかに応用が利く。

ポイント

  • 、。
  • より、和と差の共分散は 。
  • 和と差の相関はつねに負( 以上 以下)。

よくある間違い

  • といつも思ってしまう。標準偏差は単純には足せない。足せるのは分散で、それも無相関のときだけである。
  • (2)で共分散を「標準偏差の積」と混同する。共分散は偏差の積の平均であって、 ではない。定義に戻って偏差を掛けて足す。
  • (3)で の範囲を求めるとき、 が自由な実数だと思ってしまう。 という制約があるからこそ、範囲が に収まる。

問7最高点はどこまで高くなれるか

最難関編最大値の評価コーシー・シュワルツ標準偏差

問題

個のデータ ()の平均値を 、標準偏差を ()、最大値を とする。

(1) が成り立つことを示せ。

(2) 5人が受けた小テストで、平均点が 点、標準偏差が 点であった。最高点は 点を超えないことを示し、最高点が 点になるときの5人の得点を求めよ。

ヒントを見る

1人が平均から大きく上に離れたら、残りの人はどうしなければならないか。偏差の和は何か。残りの人たちが「同じだけ負担する」とき、2乗和はどうなるか。

解答・解説

方針

最大値をとるデータの偏差を とする。偏差の総和は だから、残り 個の偏差の和は 。これにコーシー・シュワルツを当てると、 の2乗が 以下に押さえ込まれる。等号は「残り全員が同じ値」のとき。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 平均と標準偏差だけから、最高点に上限がつく。これは意外に感じるかもしれない。

だが考えてみれば当然だ。 が小さければ全員が平均の近くにいるはずで、突出した1人はいられない。その感覚を式にすればよい。

決め手は「偏差の和は 」という事実である。1人が平均から大きく上に離れれば、残り全員でそのぶんを下に埋め合わせなければならない。

そして、埋め合わせを「できるだけ小さい2乗和で」行うには、残り全員が均等に負担するのがいちばん効率がよい。これがコーシー・シュワルツの不等式の内容だ。だから等号は「残り 人が全員同じ値」のときになる。

が小さいほど、埋め合わせる人数が少ないぶん上限は厳しくなる。5人なら 倍までしか離れられない。

定理コーシー・シュワルツの不等式

① (1) 偏差で書く。 最大値をとるデータを としてよい(番号を付け替えるだけ)。偏差を とおくと、定義から

である。第1式より、残り 個の偏差の和は

1人の突出を、残り全員が背負っている形だ。

② コーシー・シュワルツを当てる。 残りの 個に対して

左辺は 、右辺の和は である。 と略記すると

③ 整理する。

両辺を で割って 。 だから

等号はコーシー・シュワルツの等号のとき、すなわち (残り 人の偏差がすべて等しい)ときである。

④ (2) 数値を入れる。 、、 だから

よって最高点は 点を超えない。等号のときを調べる。最高点が なら 。残り4人の偏差は等しく、その値を とすると偏差の和が だから

つまり残り4人は 点である。得点は 。検算すると平均は 、分散は で標準偏差 。条件を満たしている。

x5560804人平均最高点
平均 60・標準偏差 10・5人のとき、最高点が上限の 80 になる配置。1人だけが上に飛び出し、残り4人は全員 55 点に集まる。突出のぶん(+20)を4人が 5 点ずつ負担している

まとめ: 「平均・標準偏差・データ数」の3つだけで、最大値の上限が決まる。使う道具は「偏差の和は 」とコーシー・シュワルツだけ。データ数が少ないほど上限は厳しい。

発展。 この不等式(サミュエルソンの不等式)は、データの整合性チェックに使える。「5人、平均 、標準偏差 、最高点 」という報告があれば、それは必ずどこかが間違っている。 だからだ。

チェビシェフの不等式が「平均から 標準偏差以上離れた値の割合は 以下」と割合を抑えるのに対し、こちらは最大値そのものを直接抑える。 が小さいときは、こちらのほうがはるかに鋭い。 なら「 より遠くには誰も行けない」と言い切れるが、チェビシェフでは「 より遠い人は 以下」としか言えないのだ。

データ数が少ないほど、1人の突出を他の全員で支えなければならない。そう考えると、この不等式が当たり前のことを言っているようにも思える。

答

(1) 偏差の和が であることとコーシー・シュワルツの不等式から (2) 。等号のとき残り4人は全員 点(得点は )

別解

判別式で押さえる(得意な人向け)。 コーシー・シュワルツを使わず、2次関数の判別式だけでも同じ結論が出る。実数 に対して

とおく。2乗の和だから、どんな でも である。展開すると

( と を使った。)これは の2次関数で、 の係数 は正。つねに 以上なのだから、判別式は 以下である。

整理すると 、すなわち 。 だから、求める不等式になる。等号は となる が存在するとき、つまり のときである。「残り全員が同じ」という等号条件も、この形なら見やすい。

じつはコーシー・シュワルツの不等式の証明そのものが、この判別式である。道具の中身を開けてみると、いつもの2次関数が入っているのだ。定理を暗記していなくても、 から出発すれば自力でたどり着ける。

ポイント

  • 偏差の和が だから、突出のぶんを残り 人が背負う。
  • コーシー・シュワルツで 。
  • 等号は残り 人が全員同じ値。 なら 。

よくある間違い

  • 「標準偏差が なら、平均から 以上離れた人はいない」と誤解する。標準偏差は散らばりの平均的な大きさで、個々のデータはもっと離れうる。ただし離れられる限界が である。
  • コーシー・シュワルツを全体( から )に適用してしまう。突出した を除いた残りに当てるのがポイントである。全体に当てても、当たり前の式しか出ない。
  • (2)で等号のデータを求めるとき、残り4人を「平均と同じ 点」としてしまう。それでは偏差の和が になる。 ずつ負担して 点である。

問8相関は推移するか

最難関編相関係数残差コーシー・シュワルツ

問題

3つの変量 があり、いずれも標準偏差は正であるとする。 と の相関係数が 、 と の相関係数が であるとき、 と の相関係数を とする。

(1) となることはあるか。理由をつけて答えよ。

(2) を示せ。

(3) となる5個のデータの例を1つ挙げよ。

ヒントを見る

「 のうち で説明できる部分」と「説明できない残り」に分けてみよ。残りの大きさはいくらか。(1) 極端な例を自分で狭めていないか。 にどんな変量をとってもよい。

解答・解説

方針

標準化した偏差で考える。 を「 で説明できる部分」と「残差」に分け、 も同様に分ける。すると と の相関は「説明部分どうしの積」「残差どうしの積」に分解し、前者は で確定、後者はコーシー・シュワルツで に収まる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「 と が似ていて、 と も似ているなら、 と も似ているはずだ」という推論が正しいかどうかを考える。

答えは「ある程度は正しい」。似ている度合いには下限がつくが、 と から言えるのは意外に弱い。

示す道具は「残差」である。 を「 で説明できる部分」と「残り」に分ける。 も同じように分ける。すると と の相関は「説明できる部分どうしの相関」「残りどうしの相関」に分解する。

前者は で確定だ。後者はコーシー・シュワルツで の範囲に収まる。だから は より小さくはなれない。

定理コーシー・シュワルツの不等式

① (1) 上限は に届く。 届く。 として と同じ値の並びをとればよい。このとき と の相関係数は と の相関係数に等しく で、条件を満たす。そして と の相関係数は である。

「 と が完全に一致する」ことは何も禁じられていない。極端な例を自分で勝手に排除しないことが大事だ。

② (2) 標準化して残差に分ける。 標準化した偏差を

とおく。どれも平均 、分散 で、相関係数は積の平均として書ける。

ここで「 で説明できる部分」を引いた残差を作る。

残差は と無相関になる。実際

また残差の大きさは

についても同様に 、 である。

③ 相関を分解する。 、 を代入する。

真ん中の2項は (残差は と無相関)、最後は だから

コーシー・シュワルツより

したがって

④ (3) 下限を実現する例。 次の5個のデータを考える(平均はすべて )。

偏差は が 、 が 、 が である。偏差の2乗和は順に 。偏差の積の和を計算すると

したがって

条件を満たし、下限がちょうど実現している。

yxzθθO
標準化した偏差をベクトルと見ると、相関係数は2本のなす角の余弦。x と y、y と z がそれぞれ角 θ(cosθ=4/5)だけ離れているとき、x と z のなす角は最大で 2θ。cos2θ = 2(4/5)^2 - 1 = 7/25 が下限になる

まとめ: 相関は完全には推移しない。 と から言えるのは「 以上」だけである。これは決して強い相関ではない。「 と に相関、 と に相関、ゆえに と にも強い相関」という推論は、統計では通用しないのだ。

発展。 標準化した偏差をベクトルと見ると、相関係数は「2本のベクトルのなす角の余弦」になる。 なら は約 である。

と が角 、 と が角 だけ離れているなら、 と の角は最小で (同じ側に重なる)、最大で (反対側に開く)。角が大きいほど余弦は小さいから

本解のコーシー・シュワルツはこの「角度の三角不等式」を式で書いたものにほかならない。相関を角度だと思えば、推移の限界が一目で見える。「相関が高い」とは「向きが近い」ということだ。

答

(1) ある( を と同じ値の並びにとればよい) (2) で説明できる部分と残差に分け、残差どうしにコーシー・シュワルツを当てる (3) 例: 、、

別解

判別式ですぐに示す(得意な人向け)。 残差を持ち出さなくても、2乗の非負性だけで下限が出る。標準化した に対し、実数 を使って次の量を考える。

2乗の平均だから、どんな でも である。展開すると、 と3つの相関係数を使って

の2次関数で、 の係数は正。つねに 以上なのだから判別式は 以下である。

数行で終わってしまった。 という組合せを思いつくのが山場だが、「 と の関係を知りたいなら、両方を含む2乗を作って で調整する」と考えれば自然である。

等号は となる が存在するとき、つまり がすべて になるときだ。判別式が のときの は で、そのとき が成り立つ。(3)の例で確かめると、偏差を正規化した の和がちょうど の 倍になっている。

コーシー・シュワルツも突き詰めればこの判別式である。定理の名前を思い出せなくても、 から出発すれば道は開ける。

ポイント

  • 標準化すると、相関係数は積の平均になる。
  • で説明できる部分と残差に分けると 。
  • 残差の積はコーシー・シュワルツで に収まる。

よくある間違い

  • 「相関は推移する」と思い込み、 も 前後になると考える。実際には まで下がりうる。相関の推移には思ったよりずっと弱い制約しかない。
  • (2)で残差の積をコーシー・シュワルツで抑えるとき、上からの評価だけを使う。いま欲しいのは下限だから、必要なのは 以上という負の側の評価である。
  • (1)で「 を と同じにするのは反則だ」と勝手に決める。問題は3つの変量の相関を問うているだけで、 の値の並びが と一致してはいけない理由はどこにもない。