場合分けの技術 — いつ分けるか・何で分けるか・どう書くか
文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月6日
場合分けは、高校数学で最初にぶつかる「考え方の壁」です。2次関数の軸が動く問題で初めて出会い、絶対値、2次不等式の文字係数、三角方程式、微分の極値、数列の公比、とあらゆる単元で繰り返し出てきます。この記事では、「いつ分けるのか」「何で分けるのか」「どう書くのか」の3つに分けて、場合分けの技術を説明します。
いつ分けるのか: 「1つの式で書けない」とき
場合分けが必要になるのは、ある量の値によって「使う式が変わる」ときです。絶対値 は、 なら 、 なら で、1つの式では書けません。2次関数の最小値は、軸が定義域の左にあるか中にあるか右にあるかで、最小値をとる場所が変わります。文字係数 の は、正なら下に凸、0なら1次式、負なら上に凸で、グラフの形が変わります。
「この量の値によって、使う式やグラフの形が変わるか」を問うのが、場合分けの要否の判定です。変わらないなら分ける必要はありません。
何で分けるのか: 「式が変わる境目」で
分ける基準は、「式が変わる瞬間」です。絶対値なら中身が0になる点、2次関数の最小値なら軸が定義域の端と一致する点、文字係数なら係数が0になる点、判別式なら になる点です。
境目の値を先に求めて、数直線に書き込み、それで区切られた各区間で式を確定する、という手順を固定してください。境目を「なんとなく」決めると、区間が抜けたり重なったりします。
最小値と最大値で、分け方の数が違うことにも注意が要ります。下に凸の2次関数の最小値は、軸が「左外・中・右外」の3通りですが、最大値は「軸が定義域の中央より左か右か」の2通りです。この違いは、2次関数の標準「軸が動く場合の最小値」と「最大値」を並べて解くと、図で見えます。
どう書くのか: 答案の型
場合分けの答案は、型を決めておくと安定します。
まず、分ける基準を1行で宣言します。「軸 と定義域 の位置関係で場合分けする」のように書きます。次に、各場合を「(i) のとき」「(ii) のとき」「(iii) のとき」と見出しにして、それぞれの場合で式を確定し、答えを出します。最後に「以上より」で、全部の場合をまとめて答えます。
境目の値(この例では と )は、隣り合う場合のどちらかに必ず含めます。どちらに含めても答えは一致しますが、両方に含めたり、どちらにも含めなかったりするのは誤りです。採点では、この境目の扱いを見ています。
各場合の中で、さらに場合分けが必要になることがあります(入れ子)。そのときは、外側の場合の見出しを「(i)」、内側を「(i-a)」「(i-b)」のように階層をつけて書きます。入れ子が2段を超えるようなら、分け方を見直したほうがよい合図です。
場合分けを減らす工夫
場合分けは、少ないほど計算も答案も短くなります。減らす工夫を3つ挙げます。
1つ目は、対称性です。 を含む関数が偶関数なら、 だけを調べて対称に写します。2つ目は、グラフで一括して読むことです。絶対値を含む方程式 は、場合分けせずに、左辺のグラフ(折れ線)と横線 の交点を読めば、解の個数が一目でわかります。3つ目は、「主役の交代」です。パラメータ を含む不等式が「すべての で成り立つ」条件は、 で場合分けするのではなく、 の式とみて の範囲を求めます。難関(★★★★)以上の問題で、この考え方が頻繁に使われます。
場合分けの「漏れ」と「重なり」を防ぐ
場合分けで最も多い失点は、漏れです。境目の値を先に数直線に書き、区間が全体を覆っているかを確かめれば防げます。次に多いのが、場合分けの仮定と求めた解の照合忘れです。「 のとき」と仮定して解いた は、仮定に反するので解ではありません。各場合の最後に「これは仮定を満たす」の1行を書く習慣をつけてください。
場合分けが出てくる単元
数学Iの実数と1次不等式(絶対値)、2次関数(軸が動く)、2次方程式・2次不等式(文字係数)で場合分けの基本を学び、数学IIの三角関数(角の範囲)、微分の考え(極値の位置)、数学Bの数列(公比が1のとき)で繰り返します。物理では、力と運動の法則の摩擦(静止か動くか)、剛体のつり合い(倒れるかすべるか)、運動量と力積(再衝突が起こるか)が場合分けの問題です。
最初に出会う2次関数の場合分けを、図で理解しておくことが、以後のすべての場合分けの土台になります。2次関数の記事に、場合分けの答案の書き方を含めてまとめてあります。