総合演習 / 力学の融合

熱と仕事・力学 — 力学的エネルギーと熱、気体と力

力学的エネルギーが熱に変わる過程、気体の圧力とばね・重力のつり合いなど、熱と力学が同じ舞台で絡む問題を集めました。

全 8 問(応用 5・最難関編 3)。課程の学習順に並んでいます。

問1 落下の繰り返しで水を温める ★★★ 応用物理基礎・熱とエネルギー

質量 のおもりを高さ から落下させ、その位置エネルギーで羽根車を回して水をかき混ぜる操作を、 回繰り返した。位置エネルギーがすべて水の温度上昇に使われたとする。水の質量を 、比熱を 、重力加速度を として、水の温度上昇を求めよ。

問2 摩擦熱で水を温める ★★★ 応用物理基礎・熱とエネルギー

速さ で運動していた質量 の物体が、水中で止まった。物体の運動エネルギーがすべて熱に変わり、まわりの水を温めたとする。水の質量を 、比熱を として、水の温度上昇を求めよ。

問3 気体をばねにする 最難関編物理・単振動

断面積 の水平なシリンダーに、なめらかに動く質量 のピストンで気体を閉じこめる。シリンダーの外側は大気(圧力 )に開いている。

はじめ気体の圧力は 、体積は で、ピストンは静止している。ここでピストンを外向きに だけずらして静かにはなす。 は気柱の長さ に比べて十分小さいとする。

気体 P0, V0大気 P0xピストン m
水平なシリンダーに気体を閉じこめる。ピストンを外向きに x だけずらしてはなす。

(1) 気体の温度がつねに一定に保たれるとする。ピストンが だけずれたときの気体の圧力を求め、 が小さいときの近似を使って、ピストンにはたらく力が復元力になることを示せ。ばね定数にあたる量を で表せ。

(2) (1) のばね定数の値と、ピストンの振動の周期を求めよ。

(3) 実際には振動が速いと熱の出入りが間に合わず、断熱変化 (一定)とみなすほうが正しい。 として、このときのばね定数と周期を求めよ。

問4 気体分子運動論(圧力の導出) ★★★ 応用物理・気体の熱力学

1 辺 の立方体の容器に、質量 の分子 個の理想気体が入っている。 軸に垂直な 1 つの壁について、(1) 速度の 成分が の分子が、この壁に 1 回衝突(弾性衝突)するとき壁が受ける力積の大きさを求めよ。 (2) この分子が時間 の間にこの壁に衝突する回数を求めよ。 (3) 圧力が と表せることを示せ。ただし を用いてよい。

vx跳ね返り1 辺 L の立方体
1 辺 L の立方体に質量 m の分子 N 個。1 個が壁に弾性衝突する
問5 ばね付きピストンの加熱 ★★★ 応用物理・気体の熱力学

断面積 のなめらかなピストン付きシリンダーを水平に置き、内部に温度 、体積 の理想気体を閉じ込める。ピストンはばね定数 のばね(はじめ自然長)で外の壁につながれ、大気圧は である。気体を温めてピストンを 押し出したとき、(1) 気体の圧力 (2) 気体の温度 (3) 気体がした仕事 を求めよ。

気体 300 KV₀=1.0×10⁻² m³k=1.0×10³ N/m(自然長)大気圧 P₀=1.0×10⁵ Pa
ばねにつながれたピストン。温めると押し出されてばねが縮む
問6 鉛直シリンダーの向きと気柱 ★★★ 応用物理・気体の熱力学

断面積 のシリンダーに、質量 のなめらかなピストンで気体を閉じ込める。開口部を上にして鉛直に立てたとき、気柱の長さは であった。このシリンダーを開口部が下になるようにひっくり返すと、気柱の長さはいくらになるか。大気圧を 、重力加速度の大きさを とし、温度は一定とする。

M気柱 20開口が上M気柱 L=?開口が下
同じ装置を直立(左)から倒立(右)にする。温度一定
問7 大気の圧力はなぜ高さとともに減るか 最難関編物理・気体の熱力学

大気の温度がどの高さでも で一定だとする。高さ での圧力を 、空気のモル質量を 、重力加速度の大きさを とする。

高さ から までの、断面積 の薄い空気の層を考える。

地面P(h)SP(h+Δh)S重さΔh
高さ h の薄い空気の層。上下の圧力による力と、層自身の重さがつり合う。

(1) この層にはたらく力のつり合いから、 を、その層の空気の密度 を用いて表せ。

(2) 理想気体の状態方程式から、密度が と書けることを示せ。

(3) (1) と (2) から が得られる。この関係を満たす関数は の形であり、 である。 の値を求めよ。

(4) 富士山の山頂()での気圧は、地上の何 か。 とする。

問8 その星は大気を保てるか 最難関編物理・気体の熱力学

天体が大気を保てるかどうかは、分子の熱運動の速さと脱出速度の比で決まる。分子の速さが脱出速度に近いと、上層から少しずつ分子が逃げていき、長い時間のうちに大気を失う。

目安として、分子の二乗平均速度が脱出速度の を超えると、その気体は数億年のうちに失われるとされる。

分子の二乗平均速度は 、脱出速度は である。、大気の温度を とする。

(1) 水素分子()と酸素分子()の二乗平均速度を求めよ。

(2) 地球(、半径 )の脱出速度を求めよ。

(3) 地球は水素と酸素のどちらを保てるか。目安に照らして答えよ。

(4) 月(、半径 )ではどうか。月に大気がほとんどない理由を説明せよ。