物理 / 単振動
気体をばねにする
問題
断面積 の水平なシリンダーに、なめらかに動く質量 のピストンで気体を閉じこめる。シリンダーの外側は大気(圧力 )に開いている。
はじめ気体の圧力は 、体積は で、ピストンは静止している。ここでピストンを外向きに だけずらして静かにはなす。 は気柱の長さ に比べて十分小さいとする。
(1) 気体の温度がつねに一定に保たれるとする。ピストンが だけずれたときの気体の圧力を求め、 が小さいときの近似を使って、ピストンにはたらく力が復元力になることを示せ。ばね定数にあたる量を で表せ。
(2) (1) のばね定数の値と、ピストンの振動の周期を求めよ。
(3) 実際には振動が速いと熱の出入りが間に合わず、断熱変化 (一定)とみなすほうが正しい。 として、このときのばね定数と周期を求めよ。
ヒントを見る
体積が少し変わると圧力はどれだけ変わるか。力の式を の 1 次まで書いたとき、どんな形になるかを見たい。断熱でも、変わるのは 1 か所だけである。
解答・解説
方針
閉じこめた気体は、押されると圧力が上がって押し返す。だから気体もばねとしてはたらく。圧力を変位 で表し、 の 1 次まで展開して力を書けば、 の形が見える。断熱では指数が になるだけで、手順は同じである。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 ばね定数とは「変位 あたりに戻ろうとする力」である。金属のばねでなくても、力がこの形になれば単振動になる。
閉じこめた気体は、押されれば圧力が上がって押し返し、引かれれば圧力が下がって引き戻す。まさにばねである。
やるべきことは、圧力を変位 の式で書き、力を の 1 次まで展開することである。使う近似は ( が小さいとき)だけでよい。
① 温度一定のときの圧力。 温度が一定なら が成り立つ。ピストンを外向きに ずらすと体積は になるから
体積が増えたぶんだけ圧力が下がる。
② 力の形。 ピストンには、内側の気体が押す力 (外向き)と、外の大気が押す力 (内向き)がはたらく。外向きを正として
の形になった。つまりピストンは単振動する。
③ 値と周期。 数値を入れる。
④ 断熱のとき。 を使う。
力の計算はさきほどと同じで、係数だけが 倍になる。
熱を逃がさないほうが気体は硬くなり、振動は速くなる。
まとめ 気体は立派なばねである。ばね定数は で、気柱が短いほど(体積が小さいほど)硬い。自転車の空気入れを押しこむほど反発が強くなるのは、この が分母にいるからである。
発展 — 一歩先へ。 音は空気の圧縮と膨張が伝わる現象で、これも速すぎて熱の出入りが間に合わない。
ニュートンは音速を等温として計算し、実測より小さい値を得た。ラプラスが断熱として計算し直すと、ちょうど 倍だけ大きくなり実測と合った。
ここで周期が 倍になったのと同じ因子である。「気体の硬さは、熱が逃げるかどうかで 倍変わる」という 1 つの事実が、ピストンの振動と音速の両方を説明している。
で 、断熱では で
別解
- グラフの傾きで読むルート。 ばね定数は「体積を少し変えたとき、圧力がどれだけ変わるか」で決まる。式で書けば
だから、圧力の変化 が分かればよい。- グラフの接線の傾きを とすると
等温では で、 での傾きは である。これを入れると となる。
断熱の曲線は同じ点を通るが、傾きがちょうど 倍だけ急である。だから硬さも 倍、周期は 倍になる。
計算する前に「どちらが急か」がグラフで見えるので、断熱のほうが周期が短くなることを目で確かめてから式に入れる、という進め方ができる。
ポイント
- 閉じこめた気体はばねとしてはたらき、ばね定数は P0S²/V0
- 体積が小さいほど硬い(分母に V0 がいる)
- 断熱では圧力の変化率が γ 倍になり、ばね定数も γ 倍
- 周期は 1/√γ 倍に短くなる
よくある間違い
- 気体の圧力だけを見て、大気が押し返す力を忘れる(復元力は差で決まる)
- 1/(1+u) を展開せずに進めて、力が変位の 1 次にならない
- 断熱で温度が変わることを気にして状態方程式を持ち出す(必要なのは PVᵞ が一定という関係だけ)