数学C / 空間ベクトル

空間ベクトル 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 立方体の正六角形の切り口
  2. 平面をはさむ2点と折れ線の最小
  3. 四面体の4本の中線の共点
  4. 四面体の対辺の垂直(直辺四面体)
  5. 球面と平面の交わりの円
  6. 球に内接する直方体の最大体積
  7. 平行六面体の対角線の平方和
  8. 正四面体の中心から見た頂点

問1立方体の正六角形の切り口

最難関編空間図形断面

問題

座標空間の1辺1の立方体 を、平面 で切る。

(1) 切り口が正六角形であることを示せ。

(2) 切り口の面積を求めよ。

ヒントを見る

立方体の12本の辺のうち、平面が横切る辺はどれか。辺上の点は座標の2つが0か1で、残り1つが動く。交点を全部並べて、隣どうしの距離と角を内積で測ってみると。

解答・解説

方針

平面と立方体の辺の交点を全部求める: 各辺上では座標2つが0か1に固定されるので、x+y+z=3/2 との交点は座標の和で機械的に判定できる。交点は6つの辺の中点で、辺の長さと内角(内積)を計算すれば正六角形とわかる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 切り口の頂点は、平面と立方体の辺との交点だ。立方体の辺の上では3座標のうち2つが か に固定される。

だから各辺について、 を満たす点があるかは「残り1座標が に収まるか」の機械的な判定で決まる。数えると、交点はちょうど6本の辺の中点になる。

あとは6点を順に結び、辺の長さと内角(となり合う辺ベクトルの内積)を計算すれば、「正六角形」が数値で確定する。

重要断面の頂点 = 平面と辺の交点。辺上では2座標が固定なので、平面の式への代入で交点が全数調査できる

① 交点を洗い出す((1)前半)。 辺の固定2座標の和は のいずれか。交点の残り座標は で、辺上( 以上 以下)にあるのは和が のときの のみ。固定2座標が 型の辺は12本中6本あり、交点は

これらは6本の辺の中点である(この順で隣り合う2点は立方体の同じ面の上にあり、切り口はこの順の六角形)。

② 正六角形であること((1)後半)。 隣り合う2点の差はどれも の並べ替えの形で、長さはすべて

また隣り合う辺のベクトルの内積はどれも で、、内角はすべて 。辺も角もすべて等しいから正六角形である。

平面 x+y+z=3/2 による切り口(赤)。6本の辺の中点を結ぶ正六角形で、対角線 (1,1,1) 方向に垂直な断面

③ 面積((2))。 1辺 の正六角形の面積は だから

まとめ: 断面を求めるには、辺との交点をすべて調べる。立方体では座標の固定パターンで交点が代数的に拾える。中心 を通る対角線 方向に垂直な切り口が正六角形になる、という立体の名場面を、ベクトルの計算だけで確定させる問題だ。

発展。 平面 を から まで動かすと、切り口は点→正三角形→六角形→正三角形→点と変化し、正六角形になるのは中心を通る のときだけ。この「立方体を体対角線に垂直に切ると正六角形」のとき、切り口の面積も最大になる。

答

(1) 6辺の中点を順に結ぶ正六角形(証明) (2)

別解

対称性で「正」を言い当てる(計算を検算に回す)。 辺長と内角を測る前に、この切り口が持つ対称性を見よう。平面 は立方体の中心 を通り、法線 は体対角線の方向だ。

  • 120°回転対称: 座標の巡回 は立方体を保ち、 を変えない(=体対角線まわりの120°回転)。切り口はこの回転で自分に重なる。
  • 点対称: 中心対称 も立方体と平面を保つ(座標和は )。

120°回転対称な六角形は、辺が と交互になり得るまでが限界。だが点対称(180°)も併せ持つと、 が強制されて回転対称は60°に上がる。したがって内角も辺もすべて等しい正六角形しかありえない。

面積は正六角形の公式で 。対称性から先に正六角形であることが保証され、計算(辺長 )は検算になる。対称図形の議論の典型的な進め方だ。

ポイント

  • 交点は「固定2座標の和が1」の6辺の中点。
  • 辺長すべて 、内角すべて120°(内積 )。
  • 。

よくある間違い

  • 辺との交点を求めるとき、パラメータが に収まるか(辺の内部か)の確認を落とし、延長上の交点を数えてしまう。
  • 6頂点を結ぶ順序を誤り、辺の長さの計算が対角線と混ざる(座標和の巡回順に並べる)。
  • 正六角形の面積公式 の係数を と混同する( は を代入した後の本問の値)。

問2平面をはさむ2点と折れ線の最小

最難関編対称点最短経路

問題

2点 と、 平面()上を動く点 に対し、 の最小値と、それを与える の座標を求めよ。

ヒントを見る

平面の上で折れ曲がる経路では、折れ線をまっすぐに伸ばす方法があったはずだ。A を平面の反対側に映すと、経路の長さはどう書き換えられるか。

解答・解説

方針

折れ線の和の最小は「鏡像」で直線化する: A の xy平面に関する対称点 A′(1,1,−3) をとると AR=A′R なので、AR+RB=A′R+RB ≥ A′B。等号は R が線分 A′B 上のときに成り立つ。最小値は |A′B| で、R は A′B と平面の交点である。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 折れ線 の最小は、鏡像で直線に伸ばすのが基本だ。

A の 平面に関する対称点 をとると、R が平面上にある限り 。だから

等号は R が線分 上のとき。最小値は そのもので、R は線分と平面の交点として求まる。折れ線をまっすぐに直す、の一言に尽きる。

重要平面に関する対称点で折れ線を直線化: (等号は が線分 上)

① 対称点をとる。 の に関する対称点は 。 はともに 側、 は反対側にある。

② 最小値。

よって で、等号は が線分 と平面の交点のとき。

③ 交点を求める。 線分 : ()。: より (。たしかに線分上)。

xyOABA′R
A, B と反射点 R を含む断面(横軸は地面上の距離)。A の鏡像 A′ をとると A→R→B の長さは A′→R→B に等しく、まっすぐな A′B(長さ6)が最短

まとめ: 折れ線は鏡で伸ばす。平面(空間)でも、数直線・平面図形と同じ原理が通る。等号成立の位置(交点が線分の内部にあること )の確認までがワンセット。反射の法則=最短経路、という物理との関係も確かめておきたい。

発展。 等号成立の R では、入射角と反射角が等しくなっている(鏡像の作図が反射の法則そのもの)。「光は最短時間の経路を通る」というフェルマーの原理から反射の法則を導くのが、この問題の物理版だ。平面が2枚(床と壁)になっても、鏡像を2回とれば同じ直線化が通用する。

答

最小値 、

別解

三角不等式だけで(鏡を使わない代数ルート)。 ベクトルの三角不等式 を、高さ成分を仕込んで使う。 に対し、平面内のずれを 、 とおくと

これは3次元ベクトル と の大きさ。三角不等式で

ここで は R によらない定ベクトル(A, B の平面成分の差)だから

等号は のとき。成分比から ()で、 となり、本解と一致する。鏡像(本解)は図形の発明、三角不等式は代数の直進。高さ と が「」と束ねられるところに、鏡像の展開図と同じ考え方が入っている。

ポイント

  • 対称点 で 。
  • 最小値 。
  • は と平面の交点 。

よくある間違い

  • 対称点の符号を誤る( の鏡像は )。
  • 最小値を とする(直結の線分は平面を経由しない。折れ線の最小は鏡像経由の )。
  • 等号成立の確認(線分 が実際に平面と交わる=パラメータが 内)を飛ばす。

問3四面体の4本の中線の共点

最難関編位置ベクトル共点の証明

問題

四面体 において、各頂点とその向かい合う面の重心を結ぶ4本の線分を考える。

(1) この4本の線分は1点で交わることを示せ。

(2) その交点は各線分を頂点の側からどのような比に内分するか。

ヒントを見る

三角形の重心が中線を 2:1 に内分したことの空間版を疑う。線分 A–G_A 上の点を でパラメータ表示し、「どの頂点から作っても同じ式になる 」を探す。対称な形が現れる比はどこか。

解答・解説

方針

頂点 A と対面の重心 G_A=(b+c+d)/3 を結ぶ線分を 3:1 に内分する点を位置ベクトルで計算すると (a+b+c+d)/4 となる。これは頂点の選び方によらない対称な式だ。つまり4本すべてがこの1点を通る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「4本が1点で交わる」を、2本ずつの交点計算で示すのは煩雑だ。候補の点を先に対称な式で言い当てるのがうまい。

頂点 A と向かいの面の重心 を結ぶ線分を、A の側から に内分してみると、位置ベクトルは 。

この式はA, B, C, D について完全に対称なので、どの頂点から出発しても同じ点に着く。4本すべてがこの1点を通り、比も で確定する。

重要共点の証明: 対称な候補点を先に立て、各線分の内分点として表せることを確かめる。 の内分点

① 内分点を計算する。 頂点 の対面 の重心は 。線分 – を の側から に内分する点は

② 対称性で共点((1))。 右辺は について完全に対称である。どの頂点から出発して同じ計算をしても、 の内分点は同じ点 になる。よって4本の線分はすべて を通り、1点で交わる。

③ 比((2))。 ①の計算がそのまま答え: は各線分を頂点の側から

に内分する(三角形の の空間版で、次元が1つ上がると比も1つ進む)。

ABCDG
四面体の頂点と対面の重心を結ぶ線分(破線)。すべてが重心 G = (a+b+c+d)/4 を通り、頂点側から 3:1 に内分される(図は3本を表示)

まとめ: 対称な候補を先に言い当てる。共点・共線の証明では、探すのではなく当てて確かめる方が速い。(中点)、(三角形)、(四面体)を平均の点の並びとして覚えておくと、比 の進み方まで見通せる。

発展。 次元を下げると三角形の中線の (質量2対1のてこ)、上げると 次元単体で 。「頂点1個 vs 残り 個」という質量比が、そのまま内分比になる。重心という1点が次元をまたいで同じ設計図で決まっている。

答

(1) 位置ベクトル の点をすべてが通る(証明) (2)

別解

質点をつり合わせる(てこの原理で見える化)。 4頂点に質量1の質点を置く。系全体の重心が求める共有点だ。

まず B, C, D の3質点だけを合成すると、「面 BCD の重心 に置いた質量3の質点」と等価になる。

すると系全体は「 に質量3、A に質量1」の2質点。その重心はてこの釣り合いから線分 をA 側から (重い側に寄る)に内分した点

どの頂点を「1人」に選んでも、全体の重心は同じ1点。だから4本の線分はすべてこの点を通り、比はいつも だ。

位置ベクトルの対称式(本解)と、質点の合成(本ルート)は同じ計算の2つの表し方だ。だが「重い側に で寄る」という理由が体感できるのは、てこの言葉のほうだ。三角形の重心の も同じ絵(質量2対1)で説明がつく。

ポイント

  • 対面の重心 。
  • 内分点が (名前が消える)。
  • 対称性から4本すべてが同じ点を通る。

よくある間違い

  • の向きを逆にする(交点は重い側=面の重心寄り。頂点から測って )。
  • 面の重心を と書く(3点の重心は3で割る)。
  • 2本の線分の交点を連立で求めてから残り2本を検証する長い道に入る(対称式 を先に当てるのが本筋)。

問4四面体の対辺の垂直(直辺四面体)

最難関編内積の恒等式論証

問題

四面体 において、 かつ ならば、 であることを示せ。

ヒントを見る

「2つ成り立てば3つ目も」という形は、3つの量の和が常に0である予感。 などとおいて、3組の対辺の内積を全部書き出して足してみると。

解答・解説

方針

3組の対辺の内積の和が恒等的に0になることを、A を始点とする位置ベクトルで展開して示す。恒等式が立てば、2項が0のとき残る1項も自動的に0になる。個別の計算なしで結論が出る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「2組の垂直から3組目の垂直を出す」問題は、個別に座標を置くより、3組の内積をまとめて1本の恒等式にすると速い。

A を始点に とおいて、3組の対辺の内積の和 を展開してみる。すると、すべての項がちょうど打ち消し合ってどんな4点でも和は になる。仮定より最初の2項が なら、残る1項も自動的に 。恒等式を使えば、そのまま証明になる。

重要恒等式 (どんな4点でも成り立つ)

① 3つの内積を展開する。 だから

つまり6項が3組の相殺で消え、恒等的に0である。

② 仮定を代入する。 より 、 より 。①の恒等式からただちに

③ 吟味。 3組の対辺がすべて垂直な四面体(直辺四面体)は実在する。たとえば正四面体では3組とも垂直で、この定理は「2つ確かめれば十分」という省力化を与えている。

まとめ: 「2つで3つ目が従う」は和が0の恒等式のサイン。位置ベクトルで書き出して足すだけで6項が消える。平面の垂心の存在証明(2本の高さが交われば3本目も通る)とまったく同じ流れが、空間の対辺にも当てはまる。

発展。 同じ展開から、直辺四面体では対辺の平方和がすべて等しいことも出る: 。また射影の視点から、直辺四面体には「4本の高さが1点で交わる」(垂心をもつ四面体)という特別な性質もある。一般の四面体では、4本の高さが1点で交わるとは限らない。

答

証明(恒等式 による)

別解

射影して平面の垂心に帰着させる(3次元を2次元へ)。 D から平面 ABC に垂線を下ろし、足を H とする。 は平面に垂直だから、平面内のどのベクトルとも内積 。すると

つまり ⟺ (空間の垂直が、影の垂直に置き換わる)。同様に ⟺ 。

2つの仮定は「H から C への線が AB に垂直、B への線が AC に垂直」と言いかえられる。これはH が三角形 ABC の垂心だということだ。垂心なら3本目の垂直 も成り立ち、逆にたどって 。

恒等式(本解)は無駄のない代数で、射影は「この四面体の真上から見ると、垂心の絵が現れる」という幾何による説明だ。直辺四面体とは垂心の真上に頂点を持ち上げた四面体のことである。

ポイント

  • 3組の対辺の内積の和は恒等的に0(展開で相殺)。
  • 2組が垂直(内積0)なら残る1つも0。
  • 平面の垂心の存在証明と同じ流れ。

よくある間違い

  • 恒等式の3項の向き( と )を混ぜ、和が0にならない(巡回 の並びで統一)。
  • 始点をそろえずに展開して項が氾濫する(全ベクトルを A 始点の で書く)。
  • 「2組が垂直なら残りも垂直なのは当たり前」と根拠なしに書く(恒等式または射影の議論が根拠)。

問5球面と平面の交わりの円

最難関編球面点と平面の距離

問題

球面 と平面 が交わってできる円の中心の座標と半径を求めよ。

ヒントを見る

球と平面が交わる様子を、球の中心を通る断面で描いてみる。中心から平面への距離、球の半径、交円の半径の3つが作る図形は何か。足の座標は「法線方向にどれだけ進むか」で書ける。

解答・解説

方針

交円の中心は「球の中心から平面へ下ろした垂線の足」、半径は三平方 √(R²−d²)。距離 d は点と平面の距離の公式、足は中心から法線方向に d だけ進んだ点として計算する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 球面と平面の交わりは円。その中心と半径は、球の中心 C から平面へ下ろした垂線がすべてを決める。

垂線の長さ は点と平面の距離の公式。交円の中心 F は「C から法線方向に だけ進んだ足」。半径は直角三角形の三平方で 。

計算は「距離 → 足 → 三平方」の3手で流れ作業になる。

公式点と平面の距離 。交円の半径 、中心 = 垂線の足

① 距離を測る。 中心 、平面 (法線 、):

だから、たしかに交わって円ができる。

② 半径(三平方)。

xyO543CF
球の中心を通り平面に垂直な断面。球は半径5の円、平面は直線(x=4 の位置)に見え、交円の半径3が三平方 5²=4²+3² で決まる

③ 中心(垂線の足)。 から法線の単位ベクトル の向きに 進む( なので の向き):

(検算: 。平面上にある。)

まとめ: 球と平面の交円は「距離 → 三平方 → 足」の3手で機械的に決まる。断面の直角三角形()を思い浮かべられれば、公式を覚えていなくてもその場で組み立てられる。空間の問題を断面の平面図形に落とす、いつもの方法だ。

発展。 を動かすと、 で円、 で1点(接する)、 で共有なしとなる。平面での「円と直線」の3つの場合が、そのまま空間に移ったものだ。さらに2つの球面の交わりも、差をとると平面(根面)が現れて同じ議論になる。「球どうしの交円」まで、この問題の道具で扱える。

答

中心 、半径

別解

直交分解で「なぜ円か」まで示す。 交わり上の点 P を、足 F を経由して分解する: 。 は平面の法線方向(長さ )、 は平面内にあり、2つは垂直だから三平方で

つまり、交わり上のすべての点は F からちょうど の距離にある(逆に、平面内で F からこの距離の点はすべて球面上にある)。これが「交わりが F 中心・半径 の円そのもの」であることの証明だ。

本解の「三平方で半径」はこの分解の計算部分。「中心はなぜ垂線の足か」「なぜ円になるのか」まで問われたときに、この直交分解が答案のもとになる。

ポイント

  • (点と平面の距離)。
  • (断面の直角三角形 5, 4, 3)。
  • 足 。

よくある間違い

  • 点と平面の距離で分母 を忘れる。
  • 足 F へ進む向き(法線の )を検分せず、平面の反対側の点を答える(F を平面の式に代入して検算)。
  • を と逆に書く(交わる条件 の確認も兼ねて図を描く)。

問6球に内接する直方体の最大体積

最難関編最大最小相加相乗

問題

半径 の球に内接する直方体の体積の最大値を求めよ。

ヒントを見る

直方体が球にぴったり入る条件を1本の式にする。球の中心と直方体の中心が一致するとき、直径に等しいのは直方体のどの長さか。そのあと積 xyz を押さえる不等式は、2乗した形で使うとぴったり合う。

解答・解説

方針

内接の条件は「直方体の対角線 = 球の直径」の1本: x²+y²+z²=12。体積 V=xyz の最大はV²=x²y²z² に3変数の相加相乗を使うと (12/3)³=64 で頭打ちになる。等号は x²=y²=z²、すなわち立方体のとき。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 直方体が球に内接する条件は、1本の式だけで書ける。対角線が球の直径、すなわち3辺 について

最大化したい体積は 。「和が一定の下で積を最大化」する問題なので、3文字の相加相乗平均を使う。ただし のままでは形が合わないので、 と2乗して「 の積」に直すのがつなぎの一手になる。

定理相加相乗(3変数): (等号 ⟺ )。積の最大化は2乗して和の固定に合わせる

① 条件を式にする。 対角線 が直径 に等しいから 。

② 相加相乗で押さえる。 に適用:

③ 等号の確認。 等号は 、すなわち (1辺2の立方体)のとき。このとき対角線は 。たしかに内接し、 が実現する。よって最大値は

まとめ: 「内接条件を対角線1本で表す」+「積は2乗して相加相乗」の2手。制約が『2乗の和』の形のときは、積も2乗した形で扱うと不等式がうまく合う。等号(立方体)が実現することの確認までがワンセットだ。

発展。 半径 なら最大は1辺 の立方体で 。2次元版は「円に内接する長方形の最大は正方形」。制約が対称なら最適も対称になることが多い。この経験則(と、それを厳密にする相加相乗・微分)は、最適化の大きな手がかりになる。

答

(1辺2の立方体のとき)

別解

1文字ずつ最適化する(微分で段階的に)。 3文字を一度に扱わず、まず を止める。残る条件は (一定)で、このとき積 の最大は2文字の相加相乗から

よって 。あとは1変数の微分:

増減表から で最大 。等号をたどると かつ 、条件から の立方体。

3文字の相加相乗(本解)は1行で済むが、「 に直す」ひらめきが要る。逐次最適化は2文字の相加相乗と1変数の微分という教科書の道具2つの直列で、ひらめきを腕力に置き換える。多変数の最大化によく使う方法として、両方の型を覚えておきたい。

ポイント

  • 内接 ⟺ 対角線 = 直径: 。
  • (相加相乗)。
  • 等号は立方体 、最大値8。

よくある間違い

  • 内接条件を「対角線=半径」として で進める(対角線は直径 )。
  • のまま3文字の相加相乗を使おうとして形が合わない( に直してから)。
  • 等号成立( が拘束を満たすこと)の確認を落とす。

問7平行六面体の対角線の平方和

最難関編内積の展開恒等式

問題

平行六面体の1つの頂点から出る3辺のベクトルを とする。

(1) 4本の対角線の長さの平方の和が に等しいことを示せ。

(2) のとき、その値を求めよ。

ヒントを見る

対角線をベクトルで書き並べると、符号のパターンに対称性がある。平方和を展開したとき、 の係数は4本分でどうなるか。全部足す前に、符号だけ数えてみるとよい。

解答・解説

方針

4本の対角線は a+b+c, a+b−c, a−b+c, −a+b+c と符号違いで書ける。平方和を展開すると、内積の交差項(a·b など)は正と負が2個ずつでちょうど打ち消され、2乗の項だけが4回ずつ残る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 平行六面体の4本の対角線は、1つの頂点から出る3辺 を使うと

と、符号違いの4通りで一斉に書ける(すべての の組8通りのうち、逆向きを同一視して4本)。平方和を展開すると、交差項 などは符号が2勝2敗でちょうど打ち消される。2乗の項だけが4回ずつ残り、答えの形 が分かる。

重要対称な符号パターンの平方和では、交差項の符号の勝敗を数える: の符号は で2勝2敗 → 消える

① 展開する((1))。 各対角線の平方は

(複号は各対角線の符号の積で決まる。)4本分を足すと、2乗の項は 。交差項 の係数は、 の符号の積が で正、 で負となる。 が2回、 が2回で和は0。 も同様に消える。よって

② 値を出す((2))。

③ 吟味。 この和はなす角(内積)によらない。平行六面体をどれだけ傾けても、辺の長さが同じなら対角線の平方和は不変だ。長方形の箱でない場合も含めて成り立つのが恒等式の力だ。

まとめ: 対称な符号の平方和では交差項の勝敗を数える。展開を全部書かずに、係数の符号だけ集計すれば済む。平行四辺形の法則(2本・係数2)→ 平行六面体(4本・係数4)と、次元とともに規則正しく拡張される。

発展。 平方和の 、つまり「対角線の2乗の平均」が になる、と読み替えることもできる。符号 を無作為に選んだ和 の2乗の平均、という確率の言葉になり、「独立な誤差は分散(2乗)で足し合わさる」という統計の基本原理と同じ式が現れている。

答

(1) 展開すると交差項がすべて相殺(証明) (2)

別解

平行四辺形の恒等式を2段重ねにする(展開しない)。 平面で学んだ恒等式 を、部品として使い回す。4本の対角線を「 の符号」でペアにする( 本目は と読み替えて に):

(、 として適用。)2式を足すと

もう一度同じ恒等式を入れ子の形で使った。全展開(本解)は腕力による方法で、恒等式の2段重ねは「2次元の定理を積み木にして3次元を組む」方法だ。次元を上げる証明の典型例になっている。

ポイント

  • 対角線は の対称な4本。
  • 交差項は2勝2敗で相殺、2乗項が4回ずつ。
  • (なす角によらない)。

よくある間違い

  • 対角線を8本と数える( 全8通りは逆向きどうしで同一視して4本)。
  • 展開で交差項の係数2を落とす、または「2勝2敗で消える」の数え上げを雑にする(表にすると確実)。
  • (2)で とする(長さの2乗の和: )。

問8正四面体の中心から見た頂点

最難関編正四面体対称性

問題

4点 を考える。

(1) 四面体 は正四面体であり、原点 が外接球の中心であることを示せ。

(2) を確かめ、 を求めよ。

ヒントを見る

この4点の座標は「+1 が奇数個」という対称な選び方。辺の長さ・原点からの距離を1組計算すれば、対称性で全部に写せる。(2)の内積は成分でも出るが、和が零ベクトルであることの2乗からも取り出せる。

解答・解説

方針

(1)は6辺の長さと4頂点の原点距離を成分計算で確かめるだけだ。座標の対称性(符号をちょうど2つ反転)により、全部同じ値になる。(2)の内積も成分ですぐに計算できるが、「和が0」と「大きさが等しい」から2乗の展開だけで −1/3 を出す別ルートもある。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 4点の座標は「 と を、偶数個だけ符号反転した組」で、きれいな対称性を持つ。

(1)は成分計算で機械的に確かめられる。6辺の長さと、4頂点の原点からの距離を出すだけだ。座標の対称性(どの2点も、ちょうど2座標だけ符号が違う)により、全部同じ値になる。

(2)の内積も成分で即算できる。あわせて、「4本の和が 」と「大きさがすべて等しい」という構造だけから同じ答えを出す道もある。2乗の展開1本で済むルートだ。

重要。和が なら内積の総和が確定し、対称性で各内積も確定する

① 正四面体であること((1))。 たとえば : 差は で 。どの2点も座標がちょうど2つ符号反転している(積 の点どうしの差)ので、6辺すべて となり、正四面体である。また各頂点の原点からの距離は で等しく、原点は4頂点から等距離にあるので、外接球(半径 )の中心である。

② 和が零ベクトル((2)前半)。 各成分ごとに だから

③ 中心角の余弦((2)後半)。 成分で 、大きさは どうしだから

別ルート: ②の両辺を2乗すると で内積6組の和が になる。対称性からどの組も等しく、各組 、。

OAOBOCODO
外接球の中心 O から正四面体の4頂点へのベクトル(青)。和は零ベクトルで、どの2本のなす角も cosθ=−1/3(約109.5°)

まとめ: 立方体の頂点から正四面体を切り出す座標化は、空間の対称図形の計算を機械的に進めるためによく使う方法だ。中心角 は分子模型(メタンの結合角)にも現れる有名な角だ。「和が0の対称配置」の2乗展開から角度が出る、という(2)の別ルートも一緒に覚えておきたい。

発展。 は、化学でメタン の結合角として登場する数値そのもの(炭素から4方向へ、正四面体の頂点に水素が付く)。「和が零になる対称な4方向」は、力のつり合い・アンテナ配置・色空間の設計など、あちこちで再利用される配置だ。

答

(1) 全辺 ・全頂点が (証明) (2)

別解

「和が零」の2乗で(2)を出す(成分に頼らない)。 4本のベクトルの和を計算すると (各座標で )。この式の両辺の大きさを2乗する。対称性から、6組の内積はすべて同じ値 だから

よって 、すなわち で

成分の掛け算(本解)はすぐに終わるが、このルートの価値は一般性にある。「中心からの4本が対称で和が零」という構造だけを使ったので、座標の与え方によらず、どんな正四面体でも中心角の余弦は になる。答えが座標の偶然でないことまで示せている。

ポイント

  • 立方体の頂点の半分(積+1)= 正四面体、全辺 。
  • 各成分の和が0 → 。
  • (2乗展開の対称性でも出る)。

よくある間違い

  • の分母を でなく とする。
  • (1)で辺を2、3本だけ確認して「対称性より」と締める(使う対称性の中身=符号2つの反転で点が移り合う、を明示するか、6辺を数え切る)。
  • 和が になることを確認せずに2乗展開ルートへ進む(このルートの前提)。