数学C / 複素数平面

複素数平面 ★★ 標準の問題 全12問

定期テストレベル。典型パターンの運用

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 複素数の除法
  2. 極形式(第1象限)
  3. 累乗(ド・モアブル)
  4. 1の3乗根
  5. 原点まわりの回転
  6. 60°回転
  7. 複素数と円
  8. 実部と共役
  9. 複素数の積
  10. 2乗と回転
  11. 絶対値と偏角から複素数
  12. 3点が一直線上にある条件

問1複素数の除法

★★ 標準除法

問題

を の形で表せ。

ヒントを見る

分母の共役を分母・分子に掛けて、分母を実数にする。複素数の割り算のいつもの手順だ。分子の計算( 乗の展開)も丁寧に。

解答・解説

方針

分母の共役を分母・分子にかけて実数化する。。分母は 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 複素数の割り算の定跡どおり、分母の共役を掛けて実数化する。

分母は となる。共役との積は なので、必ず実数になる。分子を展開して整理すれば の形が出る。

重要複素数の割り算は、分母の共役を分母・分子にかけて実数化する

① 分母の共役をかける。 の共役 を上下に。

② 分母を実数化する。 。

③ 分子を展開する。 。

まとめ:複素数の割り算は「分母の共役をかけて実数化」。分母が (実数)になる。 は で、これは 回転にあたる( が より偏角が 大きい)。

発展。 答えが (絶対値 )になったのは、分子・分母の絶対値が等しかったから。一般に は必ず単位円上に乗る。この性質は「絶対値が等しい 複素数の比は回転を表す」として、図形問題(なす角の計算)の基礎になる。

「共役を掛けて実数化」は数IIの「分母の有理化」( に を掛ける)と同じ発想の複素数版。分母から見えない部分(虚部・根号)を、組になる数を掛けて消す。代数のいろいろな場面で使われる、昔からの手法である。

答

別解

計算する前に、極形式の目で答えを見抜いてみよう。 は絶対値 ・偏角 。 は絶対値 ・偏角 (実軸について鏡写しの 点だ)。複素数の商は「絶対値は割り算、偏角は引き算」だから

絶対値 ・偏角 の複素数は、 そのものだ。展開計算と一致する。

「共役で割る」ことの図形的な意味も見える: は「 を偏角の 倍だけ回した単位円上の点」。分数の形を見たら、まず両者の絶対値と偏角を見積もる。そうすれば、計算の前に答えの形を予想でき、検算にも使える。

ポイント

  • 割り算は分母の共役をかけて実数化。
  • 分母 。

よくある間違い

  • 分母だけに共役を掛けて式の値を変えてしまう(分子にも同じものを)
  • 等、中間項 を落とす展開ミス
  • を とする( で )

問2極形式(第1象限)

★★ 標準極形式

問題

複素数 を極形式で表せ。

ヒントを見る

絶対値と偏角を出す。偏角は の値だけで決めず、点がどの象限にあるかを図で確認してから決めよう。

解答・解説

方針

絶対値 と偏角を求める。偏角は から。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 極形式は「絶対値 」と「偏角 」の つの読み取りで決まる。

偏角は 、 を両方満たす角で、第 象限の である。

だけだと と区別できないので、点がどの象限かの確認が要る。

公式極形式 。、(象限に注意)

① 絶対値を求める。 。

② 偏角を求める。 点 は第 象限。 より 。

ReImOz(1,√3)r=260°
z=1+√3 i は絶対値2・偏角60°

まとめ:極形式は「絶対値 と偏角 」。、 で第 象限だから 。偏角は の値だけでなくどの象限かも見て決めるのが大事だ。

発展。 極形式は「複素数の掛け算を、回転と拡大で読む」ための書き方だ。( の略記)と書けば、「 を掛ける 回して 倍する」という操作の名札になる。直交形式 が「位置」の言葉なら、極形式は「操作」の言葉である。

偏角には の不定性がある( 周回っても同じ点)。ふつうは に代表を取るが、 乗根の問題ではこの「 の分だけ答えが増える」ことを使う。次の の 乗根の問題で、その使い方が分かる。

答

別解

点 を図に打つと、極形式は計算なしで読める。原点からこの点まで、横に ・縦に の直角三角形ができる。 辺は ()なので、–– の有名三角形だ(正三角形の半分)。

  • 斜辺 が絶対値
  • 底辺 に対して高さ と縦長なので、底角は大きい方の になり、これが偏角

三角定規の形がそのまま答えを言っている。有名角の複素数はこの「三角定規を当てる」読みで足りる。(直角二等辺 → )、(横長 → )、そして今回の ()の つの形を絵で覚えておくと、極形式・回転・累乗の問題全体で計算の初動が速くなる。

ポイント

  • 、。
  • 象限を見て偏角を確定する。

よくある間違い

  • と を取り違える(縦長なら 。図を描いて確認)
  • 絶対値を (成分の和)とする( 乗和の平方根で )
  • 極形式を 等、 の形から崩す

問3累乗(ド・モアブル)

★★ 標準ド・モアブル

問題

を計算せよ。

ヒントを見る

まず を極形式に直す。累乗は絶対値の累乗と偏角の倍加に分かれる。 乗した偏角がちょうど 周になるところに注目する。

解答・解説

方針

を極形式にしてからド・モアブルの定理を使う。。絶対値は 乗、偏角は 倍。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 乗を展開で計算するのは大変なので、累乗は極形式 ド・モアブルの定理で計算する。

ド・モアブルで「絶対値は 乗、偏角は 倍」。

偏角 はちょうど 周なので、実軸の正の向きに戻ってきて、答えは実数になる。

定理ド・モアブル

① 極形式にする。 。

② ド・モアブルを使う。 絶対値は 乗、偏角は 倍。

③ 計算する。 、。。

まとめ:複素数の高い累乗は「極形式にしてド・モアブル」。 を直接展開すると大変だが、偏角 を 倍して (一周)になり、実数 。極形式が役に立つことが分かる問題だ。

発展。 ド・モアブルの絵で見ると、 は「 ずつ回りながら 倍ずつ膨らむ螺旋」の 歩目。 歩でちょうど 周 になる。 乗が実数になるのは、 だからだ。( で負の実数)、 となる。 が の倍数のとき( が の倍数のとき)に実数になることも、螺旋の絵から読める。

乗の階段(二進累乗法)は、コンピュータが大きなべき乗を計算する標準アルゴリズムでもある。 乗に掛け算 回でなく約 回で済む。暗号(べき剰余)の実装を支える考え方が、この 行の計算に入っている。

答

別解

極形式を使わず、 乗の階段で登る代数ルートもある。まず 乗を計算する。これは軽い展開だ。

乗は「 乗の 乗」だから

(。) 行で終わり、ド・モアブルと同じ答えになる。 は「 乗すると という簡単な数になる」特別な複素数で、この階段は のような大きな指数でも通用する(、あとは の周期 で処理)。

指数を「 乗のかたまり」に割ってから登る。極形式が使えない場面(多項式の計算の途中など)でも使える、覚えておきたい別の道である。

ポイント

  • 累乗は極形式 → ド・モアブル。
  • 偏角 × 、絶対値の 乗。

よくある間違い

  • 絶対値の 乗を でなく 等とする
  • 偏角を 倍せず のまま使う
  • で を とする( のべきは周期 : )

問41の3乗根

★★ 標準n乗根

問題

方程式 の解をすべて求めよ。

ヒントを見る

の 乗根は単位円を 等分した点たち。 等分の偏角を書き出して、それぞれを成分の形に直そう。

解答・解説

方針

の解( の 乗根)は、絶対値 、偏角が を 等分した の複素数。ド・モアブルで求める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の解は、ド・モアブルの定理にならって絶対値と偏角に分けて考える。

より (絶対値は正の実数)。偏角は 倍して になればよいから

つまり解は単位円を 等分する 点で、正三角形の頂点だ。座標に直せば 。「 乗根は単位円の 等分」という絵が、この問題の主題である。

定理 の解は絶対値 ・偏角 ()の複素数

① 偏角を 等分する。 の解は偏角 ()、絶対値 。

② 各解を書く。

  • :。
  • :。
  • :。

ReImO1ωω²
z³=1 の3解は単位円を3等分する点(正三角形)

まとめ: の 乗根は「単位円を 等分した点」。 なら ずつ回った 点。複素数平面で正三角形の頂点をなす。これらの和は になる、という性質もある。

発展。 一般に の解は単位円の 等分点(正 角形の頂点)で、 の 乗根と呼ばれる。 なら 、 なら正六角形になる。方程式の解が正多角形を描くという、代数と幾何がつながる例だ。

等分点の和は常に (正多角形の重心 原点)。この事実は 計算・確率(等確率の回転)・信号処理(離散フーリエ変換)まで使われる基本の性質で、 はその最小例である。

答

別解

数II の因数分解でも、同じ 解が出せる。幾何のルートの検算を兼ねて、並べて解いてみる。

と、 次方程式 の解

ド・モアブルの 点と完全に一致する。

つのルートは見ているものが違う。因数分解は「方程式の解」という代数の見方、ド・モアブルは「単位円の 等分点」という幾何の見方だ。 という式で表される点が、実は の位置にあることは、両方をやって初めて分かる。

この虚数解は (オメガ)の名で数IIにも登場した(、)。あのときの代数的な性質は「 回転」の言葉ですべて絵で説明できる。 は「 回回せば 周」、 は「正三角形の重心が原点」である。

ポイント

  • は単位円の 等分点。
  • 偏角 、絶対値 。

よくある間違い

  • 実数解 だけで「解けた」とする( 次方程式の解は複素数で 個)
  • 偏角の分割を 等、 の等分にしない
  • 、 の値・符号を誤る

問5原点まわりの回転

★★ 標準回転

問題

複素数 を、原点のまわりに 回転した点を表す複素数を求めよ。

ヒントを見る

回転は『ある複素数を掛ける』操作で実現できる。それはどの複素数か。それさえ思い出せば計算は 行。

解答・解説

方針

回転は を掛ける。 回転は ()を掛ける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 原点まわりの 回転は、 を掛ける操作。 なら

つまり 倍 回転。

掛け算 回で回転が済む。これが複素数平面のいちばん便利な仕組みである。

重要原点まわり 回転は を掛ける。 回転は を掛ける

① 掛ける複素数を決める。 回転は 。

② 計算する。 。

ReImOziz90°
z=2+i を90°回転(i倍)すると −1+2i

まとめ:原点まわりの回転は「 を掛ける」。 なら 、 なら 。複素数の掛け算が回転を表すという、複素数平面で中心になる性質だ。

発展。 倍を 回続けると 倍になる。 回転で、点は原点対称の位置へ移る。「」という定義そのものが「 を 回で (符号反転)」という回転の言葉で読める。 は「 の平方根」であり、「 回転の半分」でもある。

原点以外の点 のまわりの回転は、 を原点へずらしてから回す: 。「ずらす → 回す → 戻す」の 段合成は、図形の回転問題(正方形の頂点・正三角形の決定)の定跡として次に控えている。

答

別解

ベクトルの単元で使った 回転の規則と突き合わせると、 倍の意味が二重に確かめられる。平面ベクトルの 回転(反時計回り)は「成分を入れかえて、頭に来た方の符号を反転」

だった(垂直なベクトル作りの規則)。点 に適用すると 。複素数の計算 、つまり点 となり、完全に同じ答えだ。

一般でも となる。 倍の展開がベクトルの回転規則 を自動で行っている。回転後の点と元の点の内積は で、確かに直角だ。

ベクトルでは「規則」として覚えた操作が、複素数では「 を掛ける」というただの掛け算になる。回転を掛け算で表せることが、複素数平面という単元の特徴である。

ポイント

  • 回転 = を掛ける。
  • 回転 = を掛ける。

よくある間違い

  • を「足して」しまう(回転は掛け算。 は平行移動)
  • の展開で の処理を忘れ のまま止まる
  • 時計回り(、 倍)と混同する(反時計回りが正の向き)

問660°回転

★★ 標準回転

問題

複素数 (実数)を、原点のまわりに 回転した点を表す複素数を求めよ。

ヒントを見る

回転にあたる複素数(絶対値 、偏角 )を作って掛ける。

解答・解説

方針

回転は を掛ける。 にこれを掛ける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 回転は を掛ける。

が実数(偏角 の点)なので、掛け算は単なる 倍になる。回転因子の成分が 倍されて終わる、いちばん素直な回転である。

重要 回転は を掛ける

① 掛ける複素数を書く。 。

② に掛ける。

ReImOz回転後60°
z=2(実数)を60°回転すると 1+√3 i

まとめ:実軸上の点 を 回すと (絶対値 、偏角 )。回転は を掛けるだけ。 の三角比を正確に代入するのがポイント。

発展。 と と原点の 点は、 辺が長さ で挟角 、つまり正三角形を作る。ある点を 回転すると、正三角形の第 頂点が出る。正三角形の作図・判定( の背景)は、この 回転の応用だ。

回転因子 は 乗すると になるので()、 の 乗根のひとつでもある。回転・累乗・ 乗根が、単位円の上ですべてつながっていることを、この単純な問題からも感じ取れる。

答

別解

計算せずに、単位円の絵で着地点を読むこともできる。 は「実軸上、原点から距離 」の点で、極形式で言えば絶対値 ・偏角 である。

回転は絶対値を変えず、偏角だけ動かす。 回した先は「絶対値 ・偏角 」の点で、半径 の円周上を ぶん進んだ場所だ。座標は

つまり 。掛け算の展開と同じ答えに、絵だけで着いた。

この点は極形式の問題( の極形式は )の逆向きの計算になっている。あちらは「座標 → 絶対値と偏角」、こちらは「絶対値と偏角 → 座標」だ。 つの問題がペアで、極形式の辞書を双方向に引く練習になっている。

ポイント

  • 回転 を掛ける。
  • 掛け算 = 回転(絶対値そのまま)。

よくある間違い

  • と の値( と )を入れ替える
  • 回転因子を掛けず 的な意味不明の加算をする
  • 回転で絶対値まで変わると誤解する(回転は距離を保つ)

問7複素数と円

★★ 標準軌跡

問題

を満たす点 は、複素数平面上でどのような図形を描くか。また、点 がこの図形上にあるかを調べよ。

ヒントを見る

は『点 からの距離』。距離が一定の点の集まりは何か。判定のほうは、候補の点を式に代入するだけ。

解答・解説

方針

は「 からの距離が 」の点の集まり = 中心 、半径 の円。点 を代入して かを調べる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 絶対値 の意味は「点 と点 の距離」。だから

は「点 からの距離が の点の集まり」、つまり中心 (座標では )、半径 の円だ。点 の判定も距離で行う: なので、中心からちょうど で円上にある( はこの円のてっぺんの点)。式を「距離の日本語」に訳すのがすべてである。

重要 は、中心 、半径 の円( からの距離が )

① 図形を読む。 は「 からの距離が 」の点の集まり。中心 (点 )、半径 の円。

② 点 を調べる。

中心 からの距離が なので、点 は円上にある。

ReImOi(中心)2i
|z−i|=1 は中心 i・半径1の円。2i はその円上にある

まとめ: は円の方程式(複素数版)。 が中心、 が半径。距離が で表せるのが複素数平面の便利なところ。 は中心 の真上、距離 で円周上だ。

発展。 円のもう つの複素数表示 ( の展開)は、 を含む式の図形判定で使う上級の道具。 という関係を使うと、絶対値の問題を共役の代数に変換できる。

「絶対値 距離」の目で読める図形は円だけではなく、 は垂直二等分線、 は楕円(数Cの曲線)になる。距離の言葉で定義された図形はすべて、複素数の絶対値で 行になる。

答

中心 ()、半径 の円。点 は円上にある

別解

とおいて、数IIの座標の式に直しても同じ結論に着く。

両辺を 乗して

これは見慣れた円の方程式(中心 、半径 )そのものだ。点 を代入すると となり、円上にある。

複素数の 行 と、座標の式 は、同じ円の2 通りの表し方だ。複素数の側は「中心と半径が式にそのまま出ている」ので図形の意味が読みやすく、座標の側は計算(接線・交点)の道具が揃っている。問題に応じて書き方を使い分ける。

書き直しの練習としては、( 点から等距離 → 垂直二等分線)、(アポロニウスの円)なども同じ手順( を代入して整理)で座標の式に落ちる。困ったら とおけばよい、というのは複素数の図形問題の安全策である。

ポイント

  • は中心 、半径 の円。
  • 点を代入して距離 で円上。

よくある間違い

  • 中心を (符号ごと)と読む( の中心は )
  • の計算で虚部の を実部側に混ぜて とする
  • 「円上」と「円の内部」を区別せず答える(距離と半径の大小まで述べる)

問8実部と共役

★★ 標準共役

問題

について、 と を求めよ。

ヒントを見る

共役との和と差を考える。足すと何が残り、引くと何が残るか。実部・虚部との関係が見える計算だ。

解答・解説

方針

(実部の 倍、実数)、(虚部の情報)。実際に計算しても同じ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 共役 (虚部の符号を反転)を作って、足す・引くだけだ。

結果から一般法則が分かる。和は実数(実部の 倍)、差は純虚数(虚部の 倍)。

共役との和・差は複素数から実部・虚部を「取り出す」操作である。

公式(実数)、(純虚数)

① 和を計算する。 虚部が打ち消し合う。

② 差を計算する。 実部が打ち消し合う。

まとめ:共役との和・差で実部・虚部を取り出せる。、。共役は「実部・虚部を分離する道具」。この性質は複素数が実数になる条件などで活躍する。

発展。 和・差に積を加えると三点セットになる: で、共役との積は絶対値の 乗だ。割り算の実数化(分母に共役をかける計算)は、この性質を分母に使ったものだった。

、 と逆向きに書くと、「実部・虚部はいつでも と の式で表せる」と分かる。これは、座標 の代わりに を変数に使うという、複素数平面の図形問題(軌跡の 表示)の考え方の基礎になる。

答

、

別解

計算の結果を鏡の絵で見ておこう。なぜ和が実軸に、差が虚軸に乗るのかが一目になる。 は を実軸で折り返した鏡像である。 が実軸の上 にいるなら、 は同じ横位置で下 にいる。

和 : 平行四辺形の法則で 本の矢印を足すと、上向き成分 と下向き成分 が相殺する。横成分だけが残って倍になり、実軸上の に着く。

差 : 引き算では逆に横成分 が相殺する。縦成分だけが残って倍になり、虚軸上の に着く。鏡像と足せば縦が消え、引けば横が消える。この絵を持っていると、 の公式は暗記しなくても絵から読める。

さらに、この つの操作は「 が実数 ⟺ 」「 が純虚数 ⟺ ()」という判定条件の源。証明問題で「実数であることを示せ」と来たら、 との一致を示す。その第一歩がこの計算である。

ポイント

  • 、。
  • 共役で実部・虚部を分離。

よくある間違い

  • 共役を「実部の符号反転」()と誤る(反転するのは虚部)
  • を (実数)と書く( は純虚数)
  • と ()の順序を混同する

問9複素数の積

★★ 標準積

問題

を計算せよ。

ヒントを見る

ふつうに分配して展開し、 を実数に置きかえて整理する。

解答・解説

方針

分配法則で展開し、 を使う。実部と虚部を整理する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 複素数の積は、多項式と同じ分配法則の展開 の後処理。

が実部に合流するのがポイントだ。 項の展開のうち、 どうしの積だけが実数になる。

公式複素数の積は分配法則で展開し、 を使う

なので 。

まとめ:複素数の積は「ふつうに展開して 」。 が になり実部に加わる。成分での積は分配法則、極形式での積は「絶対値の積・偏角の和」。目的に応じて使い分ける。

発展。 偏角でも同じ検算ができる: 積の偏角は偏角の和。 の偏角(約 )と の偏角(約 )を足すと約 で、答え の偏角()と合う。「絶対値は積、偏角は和」のペアは、掛け算の完全な検算になる。

の言葉で書くと の加法定理が出てくる。複素数の積の展開と の加法定理は、同じ計算の別の書き方だ。(偏角の和がちょうど )から という有名な等式が出る、という遊びもある。

答

別解

展開の答えを、絶対値の性質でワンチェックする習慣を紹介したい。積の絶対値は絶対値の積で、 が成り立つ。両辺を 乗した形で使うと平方根も要らない。

だから答えの絶対値の 乗は になるはず。検分すると

一致した。展開ミス(符号や中間項の誤り)があれば、まずここで気づく。この検算から、次の恒等式も出てくる: 、一般に

「 乗和 乗和は 乗和」(ブラーマグプタの恒等式)であり、複素数の積の絶対値の関係は 世紀のインドの数論の等式と同じものだった。展開 問にも、こうした構造がある。

ポイント

  • 展開して を使う。
  • が実部に加わる。

よくある間違い

  • を として実部が になる()
  • 中間項 の符号整理を誤り虚部が や になる
  • 実部と虚部をまとめず のまま答える

問102乗と回転

★★ 標準ド・モアブル回転

問題

を計算し、その結果を極形式でも表せ。

ヒントを見る

まず展開で計算。次に極形式の目で見直すと、 乗が『絶対値の 乗・偏角の 倍』になっていることを確認できる。両方の見方をつなぐ問題だ。

解答・解説

方針

展開して を得る。極形式では (、偏角 )の 乗で、絶対値 、偏角 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) まず素直に展開する。

次に、この結果を極形式で読み直す。 は絶対値 ・偏角 の点だから

つの計算を「代数(展開)」と「幾何(極形式)」の両面から見る。この問題は つの表し方の対応を確かめる練習である。

定理

① 展開する。 。

② 極形式で確認する。 なので、 乗すると絶対値 、偏角 。

xyOzz²θ2θ
z²: 絶対値は2乗、偏角は2倍(原点まわりの回転+拡大)。z=√2(cos45°+isin45°)→z²=2(cos90°+isin90°)

まとめ:成分計算と極形式計算が一致することを見る問題。 は、 を「大きさ 倍・ 回転」に対応させると、 乗で「 倍・」。両方の見方でつながる。

発展。 「 乗 偏角を倍に」を逆から読むと「平方根 偏角を半分に」となる。どんな複素数にも平方根が( の) つ存在することが、絵から分かる。実数の範囲では「負の数に平方根がない」という壁があったが、回転で考えれば偏角を半分にするだけだ。複素数で方程式の解がすべてそろう( 次方程式は 個の解を持つ)ことの直感的な理由がここにある。

は 乗の計算()の部品としても再登場する。この単元では、小さな計算の結果が次の問題の道具になることが多い。

答

別解

「 乗する」という操作を、点の運動として観察してみよう。 は絶対値 ・偏角 の点。 乗の規則(ド・モアブル)は

  • 絶対値は 乗:
  • 偏角は 倍:

つまり点は「原点からの距離を 乗しながら、偏角を倍に開いて」動き、 の点が (虚軸上)へ移る。これは展開の答え の位置とぴったり一致する。

この「 乗 偏角を倍に開く」という動きの感覚は、いろいろな現象を説明する。実数( か )を 乗すると か になるので、必ず正になる。純虚数()の 乗は なので、負の実数になる()。そして の は「 乗して純虚数になる数」だ。 が の平方根である理由も、 が の半分だから、の一言で済む。

ポイント

  • (展開)。
  • 極形式では絶対値 乗・偏角 倍。

よくある間違い

  • と中間項 を落とす
  • 極形式で絶対値を のまま( 乗し忘れ)にする
  • の偏角を や とする(虚軸の正の向きは )

問11絶対値と偏角から複素数

★★ 標準極形式

問題

絶対値が 、偏角が である複素数 を の形で求めよ。

ヒントを見る

極形式の定義どおりに書いて、 の ・ の値を入れるだけ。

解答・解説

方針

極形式 を書き、三角比の値を代入して展開する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「絶対値と偏角」から複素数を作る。これは極形式の逆向きの読みだ。

三角比の値 、 を入れて展開すると

極形式 → 直交形式の書き直しは三角比の値の代入だけで済む。

公式絶対値 、偏角 の複素数

① 極形式を書く。

② 三角比を代入して展開する。 、。

まとめ:「絶対値と偏角 → 複素数」は極形式を書いて展開するだけ。()の三角比 、 を正確に。 の絶対値 で確認できる。

発展。 「絶対値と偏角の組」から点を決める考え方は、極座標(数Cの曲線の単元)と同一のものだ。複素数平面の ⇔ の書き直しは、極座標の ⇔ と同じ変換式(、)で行う。 つの単元は同じ道具を別の名前で扱っている。

この は 乗すると初めて正の実数になる()。「 が実数になる最小の 」型の問題は、偏角が の約数分のいくつか、という角度の勘定に帰着する。極形式で作った数はそのまま累乗の問題に使える。

答

別解

三角比の表を引かずに、三角定規の絵で座標を直読みする方法もある。「絶対値 ・偏角 」は原点から斜辺 の棒を の角度で伸ばした先の点。棒の下に直角三角形を描くと、–– の正三角形の半分の形になり、辺の比は で

  • 底辺(実部) は斜辺 に対して長い方の辺(角度が浅いので横に長い)
  • 高さ(虚部) は短い方の辺

極形式の問題( は偏角 )と見比べると、実部と虚部が入れ替わった鏡のペア( と は をはさんで対称)になっている。どちらが でどちらが かは、「角度が浅ければ横長、深ければ縦長」の絵で確かめれば取り違えない。

有名角()の複素数は、表を暗記するより三角定規 枚の絵で覚えるとよい。図を描くわずかな手間で、符号・比率のミスを防げる。

ポイント

  • 。
  • 三角比を代入して展開。

よくある間違い

  • と の値を入れ替えて とする
  • 絶対値 の掛け忘れで を答える
  • の換算を誤り の値を使う

問123点が一直線上にある条件

★★ 標準共線

問題

複素数平面上の 点 、、 が一直線上にあることを示せ。

ヒントを見る

点が一直線上にある条件を、複素数の商で表す方法があった。商がどんな値になれば一直線上といえるか。実際に計算して確かめよう。

解答・解説

方針

点 が一直線上 ⟺ が実数( は各点の複素数)。この比を計算して実数かを調べる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 複素数平面で 点の共線を調べる道具は、差の比

( から見た 方向の比)。この値が実数なら、 方向は回転のずれがないので、同一直線上だ。

実数 なので、 点は一直線上にある( は から 方向へ 倍の位置)。

重要 点 が一直線上 が実数

① 比を計算する。 、、。

② 実数かを確かめる。 は実数。よって は実数なので、 点は一直線上にある。

ReImOA(0)B(1+i)C(2+2i)
0, 1+i, 2+2i は一直線上(y=x 上)にある

まとめ:複素数平面で 点が一直線上にあるかは「 が実数か」で調べる。この比が実数 = と が平行(偏角の差が か )。ここは比が (実数)で一直線上、 は の 倍の位置だ。

発展。 差の比のフル活用形が、 点の円周角の定理の複素数版だ: (非調和比)が実数 ⟺ 点が同一円周上(または直線上)。共線条件はその の極限とみなせる。これは「直線は半径無限大の円」という射影幾何の考え方につながっている。

実数条件の実務的な言い換え を使うと、 となり、共役の計算だけで共線が判定できる。文字のまま論証する問題(垂心・外心の証明)では、この形が主力になる。

答

(C-A)/(B-A)=2(実数)なので一直線上

別解

「比が実数なら一直線」の理由を、商の幾何的意味から掘っておこう。複素数の商 の偏角は つの差の偏角の差になる。つまり点 から を見る方向と を見る方向のなす角そのものだ。

  • 商が実数(偏角 か ) ⟺ 方向が同じ向きか正反対 ⟺ 一直線
  • 商が純虚数(偏角 ) ⟺ 方向が直角 ⟺

今回の商 は「正の実数」なので、 は と同じ側にいる( をはさまない)ことまで読める。ベクトルの言葉なら の実数倍条件と同じことだ。

この「商の偏角 なす角」は、複素数平面の図形問題でいつでも使える目安だ。共線(実数)・垂直(純虚数)・正三角形( 回転)のどれも、位置関係の問いは差の比を つ計算して偏角を読むことに集約される。 点問題を見たら、まずこの比を作る癖をつけたい。

ポイント

  • 一直線上 が実数。
  • 実数 = 偏角の差 or (平行)。

よくある間違い

  • 差をとらず座標の比 で判定する(基準点 からの差の比)
  • 商の計算(分母の実数化)を誤り虚部が残ったのに実数と結論する
  • 「実数である」ことの明言と結論(よって一直線上)の一文を書かない