数学C / 複素数平面

複素数平面 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 正三角形の対称式による特徴づけ
  2. 単位円を直線にうつす変換
  3. 正n角形の頂点への距離の平方和
  4. 2つの回転の合成
  5. ナポレオンの定理
  6. 3つの偏角の和
  7. 円を楕円にうつす変換 z+1/z
  8. 縮小回転が描く螺旋の全長

問1正三角形の対称式による特徴づけ

最難関編正三角形対称式

問題

相異なる3つの複素数 について、次を示せ。

3点 が正三角形の3頂点である

ヒントを見る

与式の両辺を2倍して移項すると、3つの「差の平方」の和にまとまらないか。実数なら平方和が0は各項0だが、複素数では違う。和が0の3つの数の平方和が0になるとき、その3つはどんな配置か。

解答・解説

方針

等式は「差の平方和 (α−β)²+(β−γ)²+(γ−α)²=0」と同値(展開恒等式)。u=α−β などとおくと u+v+w=0 は常に成り立ち、条件は u²+v²+w²=0。2つから uv+vw+wu=0 も出て、u,v,w は t³=(定数) の3解になる。したがって絶対値が等しく、3辺が等しい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 頂点そのものより辺のベクトル(差)で考える。示すべき等式は展開の恒等式

によって「差の平方和が 」と同値だ。そこで とおく。 はいつでも成り立ち、条件は 。この2つから も出て、 は同じ3次方程式 の3解になる。つまり絶対値が等しい。3辺の長さが等しい、が結論になる。

重要 かつ ⟹ ⟹ は の3解(絶対値が等しい)

① 条件を差の式に直す。 上の恒等式から、与式 ⟺ 。また の平方から

なので、与式のもとで も従う。

② 3乗根の配置を読む(⟸ の証明)。 を解にもつ3次方程式は、解と係数の関係から

すなわち は同じ数 の3つの3乗根。3乗根の絶対値はすべて で等しいから となる。つまり3辺の長さが等しく、 は正三角形の3頂点である( が相異なるので 、三角形は退化しない)。

③ 逆(⟹)。 正三角形なら、辺 は辺 を 回転したもの: として (向きが逆なら で、以下同様)。()だから

よって与式が成り立つ。

まとめ: 「差の平方和 = 0」は複素数ならではの条件だ。実数では成り立たない条件が、複素数では同じ長さ・120°開きという形を許す。正三角形の判定式として、回転()による定義と並ぶもう1つの表し方だ。

発展。 因数分解の2つの因子は「向き」を区別している: が一方の回り、 がもう一方の回りの正三角形。この判定式はナポレオンの定理(この単元の別問題)の証明でそのまま働く。また対称式の条件は とも書き替えられ、「重心を原点にすると 」という座標系の選び方の話にもつながる。

答

証明(差 に直すと条件は で、 とあわせて が同じ数の3乗根になる)

別解

因数分解して「向きつき判定式」にほどく。 対称式は1の3乗根 で因数分解できる:

(展開して 、 を使うと確かめられる。)よって条件は

この2つの式はそれぞれ「時計回りの正三角形」「反時計回りの正三角形」の判定式にほかならない(たとえば前者は と変形でき、 は絶対値1・偏角 の回転因子なので、辺 を 回すと辺 になる、と言っている)。

3乗根の議論(本解)は「なぜ絶対値が揃うか」を、因数分解は「向きの情報まで込みの判定式」を与える。この判定式は次の問題(ナポレオンの定理)の証明でそのまま使う。

ポイント

  • 与式 ⟺ 。
  • と合わせて は の3解 → 。
  • 逆は の代入で 。

よくある間違い

  • 複素数の「2乗の和が0」を実数の感覚で「各項が0」と誤読する(複素数では でも があり得て、そのときに正三角形が出る)。
  • (差の和は必ず0)を書き忘れ、対称式の連立が閉じない。
  • ⟸(正三角形なら等式)と ⟹(等式なら正三角形)の両向きを示すべきところ、片向きで終える。

問2単位円を直線にうつす変換

最難関編軌跡共役の計算

問題

が単位円 上を動くとき()、 が描く図形を求めよ。

ヒントを見る

「実部が0」を共役を使った等式で書くと計算が進む。 を通分したとき、分子に条件 がそのまま使える形が現れないか。出てきた直線の「全部」に届くかの確認も忘れずに。

解答・解説

方針

「純虚数 ⟺ w+w̄=0」を使い、w+w̄ を通分して計算する。分子に 1−zz̄ が現れ、|z|=1 で消える。逆に虚軸のどの点 w にも、z=(w−1)/(w+1) が単位円上にあることを確かめて、軌跡が虚軸「全体」であることまで言い切る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「描く図形が虚軸(直線)らしい」と当たりをつけたら、合言葉は「純虚数 ⟺ 」。

を通分して計算すると、分子に が現れる。 のとき、これはちょうど になる。つまり はつねに純虚数だ。

軌跡の答案はもう一歩ある。「虚軸のどの点にも対応する がある」ことの確認(逆向き)だ。 について解いた が単位円上にあることを見て、初めて「虚軸全体」と言い切れる。

重要実部の判定は共役で: 。軌跡は「乗る」と「届く」の両方向

① を計算する。 だから、通分して

(分子の の1次の項は打ち消し合う。) なら分子は0なので、 は虚軸上にある。

② 届くこと(逆向き)。 任意の純虚数 ( は実数)に対し、 を について解くと 。このとき

で、たしかに単位円上( も確認できる)。 も で実現する。

③ 結論。 軌跡は虚軸全体である。なお は にうつる。これがこの変換の「動かない点」だ。

xyOi−iz=−1
単位円(黒)上の z が w=(1+z)/(1−z) で虚軸(赤)にうつる。z=−1 は w=0 へ、z=±i(赤点)は動かない

まとめ: 1次の分数の式は円を直線に(直線を円に)うつす。その判定は の計算1本で済む。「乗る」(必要)と「届く」(十分)の2方向を書いて初めて『図形を求めよ』への完答になる。

発展。 のような1次分数変換は、「円と直線をまとめて円とみなす」と、円を必ず円に移す(直線は半径無限大の円)。単位円が虚軸に、円の内部が左半平面に移る。この対応は電気工学のスミスチャート(インピーダンスの図)として実用されている。分母の零点 が「無限遠へ飛ぶ点」で、そこが直線化の源だ。

答

虚軸全体(直線 )

別解

タレスの定理で図形的に(計算1行)。 、 に注目する。つまり

分数 の偏角は、「点 から を見る方向」と「点 から を見る方向」のなす角。 と は単位円の直径の両端だから、円周上の からこの2点を見込む角は直角(タレスの定理)。

偏角が の複素数は純虚数。 倍しても純虚数のままだから、 は純虚数である。ほとんど計算をせずに結論が出た。

の通分(本解)は逆向きの確認まで一気通貫でこなせる実務の道、タレスは「なぜ虚軸なのか」を一目で見せる図の道。円周角が分数の偏角に置き換わる。これは複素数平面の問題でよく使う見方だ。

ポイント

  • (乗る)。
  • が (届く)。
  • 軌跡は虚軸全体( は不動点)。

よくある間違い

  • (分母が0になる点)の除外を書き忘れる。
  • 「 が純虚数」を示しただけで軌跡を「虚軸」と結論する(虚軸の全体に届くこと=逆向きの確認が要る)。
  • の通分で の共役の分配を誤る。

問3正n角形の頂点への距離の平方和

最難関編1のn乗根距離の平方

問題

を3以上の整数とし、()を1の 乗根とする。単位円上の任意の点 ()に対して、次を示せ。

ヒントを見る

を「絶対値の2乗=自分×共役」で展開すると4項に割れる。 について足したとき、残る項と消える項はどれか。1の 乗根の和について知っていることは何か。

解答・解説

方針

距離の平方は共役で開く: |z−ζ|²=(z−ζ)(z̄−ζ̄)=|z|²+|ζ|²−zζ̄−z̄ζ。和をとると交差項に Σζₖ とその共役が現れ、1のn乗根の和が0であることから消える。残るのは 2 が n 個だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 距離の平方は、複素数では共役で開くのが原則だ。

だから、最初の2項は合わせて 。和をとると、交差項には と が現れる。1の 乗根の総和は なので、交差項は丸ごと消え、 が 個残って 。

公式。1の 乗根の和: ( の解と係数、)

① 展開する。

② 各部分を評価する。 より第1の和は 。また で、共役の和も 。よって交差項は消え

③ 吟味。 値が の位置によらない。正 角形の頂点は、円周上のどの点から見ても「距離の平方の合計」が同じになるように、対称に並んでいる。なお が円上になくても同じ計算で と一般化できる。

まとめ: 「距離の平方は共役で開く」と「根の和は0」の組み合わせは、複素数平面の距離の問題でよく使う。展開 → 対称性で交差項が消える、という流れは、重心や慣性モーメントの計算にも通じる普遍的な設計だ。

発展。 重心分解の式は統計の「分散の分解」と同一で、 の内訳( と 散らばり )まで表している。さらに同じ計算で は なら になり、円の半径を変えても交差項は現れない。「対称な点配置では、和の計算で交差項が消える」という仕組みは、正多角形が関係する和のすべてに使える。

答

証明( を共役で展開し、 で交差項が消える)

別解

重心で分解する(ベクトルの公式の再利用)。 平面ベクトルで学ぶ分解公式(ライプニッツの公式)を複素数で使う。 点 の重心を とすると、任意の点 に対して

(「点までの平方和 = 重心までの平方和 + 重心まわりの散らばり」で、統計の分散の分解と同じ式だ。)1の 乗根の重心は (和が0)。よって

共役の展開(本解)は自己完結の計算、重心分解は「 の内訳は (点の位置)(頂点の散らばり)」という意味を示している。 に一般化すれば和は で、単位円上に限らずすぐに読める。

ポイント

  • (単位円どうし)。
  • で交差項が消える。
  • 和は ( の位置によらない)。

よくある間違い

  • を と書いてしまう(絶対値の平方は共役との積)。
  • を使う場面で、 の側の処理を忘れる。
  • 乗根の和が0であることの根拠(等比数列の和、または の係数)を書かずに流す。

問42つの回転の合成

最難関編回転不動点

問題

複素数平面上で、原点を中心とする の回転を 、点 を中心とする の回転を とする(いずれも反時計回り)。

(1) 合成変換( を行ってから を行う)は、ある点を中心とする の回転であることを示せ。

(2) その中心を表す複素数を求めよ。

ヒントを見る

回転を「1次式」として書くと、合成は代入1回。 の係数に何が起きるかを見ると、角が分かる。中心は「合成で動かない点」として方程式を立てる。

解答・解説

方針

回転は z → ρ(z−c)+c(ρ=cos60°+isin60°)という1次式。合成すると z の係数は ρ·ρ=ρ² で、角は足されて120°になる。中心は不動点方程式 c=ρ²c+(定数)を解けば出る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 回転は複素数では1次式だ: 中心 、角 の回転は ()。

1次式と1次式の合成はまた1次式で、 の係数は回転因子の積 。角がちょうど足されて になる。係数の絶対値が1(回転因子)である1次変換は、必ずどこかを中心とする回転。その中心は不動点で、 を解けば求まる。

重要回転の合成: の係数(回転係数)は積になり、角は和になる。中心は不動点方程式で求める

① 合成を計算する((1))。 とおくと 、。合成は

の係数 は絶対値1・偏角 である。よってこの変換は( の係数が1でないので平行移動ではなく)ある点を中心とする の回転である。

② 中心 = 不動点((2))。 中心 は を満たすから

③ 値を計算する。 だから

(実部が なので2つの中心 の垂直二等分線上にあり、実軸の下側 の方向にある。検算として を代入で確かめられる。)

xyO1czz′z″
回転の中心 0, 1(黒)と、合成(120°回転)の中心 c=(3−√3i)/6(赤)。例の点 z(青)は f で z′ へ、g で z″ へ移り、c のまわりの120°回転と一致する

まとめ: 回転は1次式で表され、合成は係数の積(角の和)になり、中心は不動点として求まる。変換の合成が複素数では掛け算と1次方程式になる。 と の中心が のとき、新しい中心が2点から等距離のところに現れる幾何も、式 で表されている。

発展。 角の和が の倍数になる合成(たとえば や )では、 の係数が になって回転でなく平行移動が現れる(不動点が存在しない)。「回転の群」の中で平行移動が生まれる瞬間で、点対称2回=平行移動、という中学以来の事実もこの式 の特別な場合だ。

答

(1) 1次式の合成で回転係数が (証明) (2)

別解

幾何の構成で中心を言い当てる(回転合成の作図)。 回転の合成の中心は作図で先に求まる。

角 の回転(中心 )に続けて角 の回転(中心 )を行うと、合成は角 の回転になり、その中心 P は線分 を底辺に、底角 ( 側)と ( 側)の三角形の頂点にある(回転の向きの側に注意)。

本問は だから底角は 。中心 と を結ぶ線分の(回転の向きから)下側に、底角 の二等辺三角形を建てると、頂点は

(高さは 。)不動点方程式(本解)の解と一致する。1次式の合成(本解)は角の加法と中心を代数で一括処理する、どの場合にも使える方法だ。作図すると「中心がどこにできるか」が先に目で分かる。両方持つと、答えの検算が互いにできる。

ポイント

  • で、角は足されて120°になる。
  • 不動点 。
  • (実部 、2中心から等距離)。

よくある間違い

  • 回転の式を と書いてしまう(中心 の回転は 。中心を引いて回して戻す)。
  • 合成の順序を逆にする( してから は 。1次式の代入順で中心が変わる)。
  • 不動点方程式 を解くとき、 で割る計算()を焦って誤る。

問5ナポレオンの定理

最難関編正三角形回転の応用

問題

三角形 の各辺を1辺とする正三角形を、三角形の外側に3つ作り、それらの重心を とする。三角形 は正三角形であることを示せ。

(頂点を表す複素数を (反時計回り)とし、 について、3点 が を満たせば正三角形(または3点が一致)となることは、証明して用いてよい。)

ヒントを見る

すべてを複素数の1次結合で書く。第3頂点は回転、重心は平均で表せる。判定式に流し込むと、α, β, γ のからむ部分が共通因数として外に出て、残った「数だけの係数」が0になるかどうかで決まる。

解答・解説

方針

外側の正三角形の第3頂点は「辺の端点を −60°回転」で書けるので、各重心 N は α,β,γ の1次結合になる。判定式 p+ωq+ω²r=0 に代入すると、共通因数 α+ωβ+ω²γ がくくり出され、係数部分が 1+ω+ω²=0 の親戚の計算でちょうど0になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 図形の操作を、複素数の言葉で表す。「辺 AB の外側に正三角形を建てる」は「 を 回転して第3頂点を作る」ことだ。つまり第3頂点は の1次結合で書ける。

すると3つの重心 も の1次結合になる。正三角形の判定は、1の3乗根 を使った式 が便利だ。代入すると共通因数がくくり出され、残る係数の計算が の親戚でちょうど になる。

重要補題: なら など、差が互いに120°回転で移り合い、 は正三角形(または一致)

① 補題の証明。 と から

同様に 。よって3辺の長さは等しく()、正三角形をなす(すべての差が0の場合は3点が一致)。

② 重心を1次結合で書く。 は反時計回りなので、辺 の外側の正三角形の第3頂点は を のまわりに 回転した ()。重心は

巡回的に 、。

③ 判定式に代入する。 とおくと、、 に注意して

中括弧を計算する: を代入すると

よって となり、補題より三角形 は正三角形である(外側に立てた場合、3中心が一致することは起こらない)。

まとめ: どんな三角形からも正三角形が生まれるという定理が、「回転・平均・判定式」の3部品の係数計算で証明できる。共通因数 をくくり出して数だけの部分で判定する。これは複素数で図形の性質を証明するときの典型的な手順だ。

発展。 ナポレオン三角形の重心は元の三角形の重心と一致する(重心どうしの平均を計算すると に戻る)。さらに、正三角形を内側に建てた「内ナポレオン三角形」も正三角形で、外と内の面積の差が元の三角形の面積に等しい、という続きも知られている。1つの定理から、対称性にもとづく結果がいくつも出てくる。

答

証明( を係数計算で示す)

別解

回転因子で直接確かめる( を使わない判定)。 正三角形の判定式を経由せず、「1辺を 回すと隣の辺になる」を直接検算してもよい。各重心を の1次結合で書き下ろしたら(本解の①)、2辺のベクトル

を計算し、()が成り立つことを係数比較で確かめる。回転因子 が「長さが等しく、なす角 」を一語で表すので、これ1本で正三角形が確定する。

の判定式(本解)は対称式を使うので計算が軽く、回転因子の直接検算は「どの辺がどの辺に回るか」という図形の対応を確かめながら進められる。検算を兼ねて両方で通すと、係数計算のミスがほぼ確実に捕まる。

ポイント

  • 補題: → 差が120°回転で移り合う。
  • 重心は 型の1次結合。
  • 判定式で共通因数をくくり、係数 。

よくある間違い

  • 「外側」の正三角形の回転の向き( か か)を混ぜる(3辺とも同じ向きで統一。逆向きは内側ナポレオン)。
  • 重心を「頂点の和 ÷ 3」でなく2点の中点で計算してしまう。
  • 判定式 の と の割り当て(頂点の並び順=向き)を確認せずに使う。

問63つの偏角の和

最難関編偏角積の計算

問題

の偏角をそれぞれ ()とする。積 を計算することにより、 の値を求めよ。

ヒントを見る

や は有名角ではない。個別に求めるのはあきらめて、3つまとめて扱う道具は何か。積が実数(しかも負)になったら、和について何が言えるか。範囲の絞り込みまで丁寧に。

解答・解説

方針

個々の偏角は求まらない(正接が1,2,3の角)が、「積の偏角=偏角の和」なので、積を1回計算すれば和が読める。αβγ=−10(負の実数)から和は π+2kπ となる。あとは各角の範囲から k=0 に絞る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は正接が の角であり、個々の値はきれいに書けない。

だが問われているのは和だ。複素数の掛け算は「絶対値は積、偏角は和」。つまり積 を1回計算すれば、その偏角として が(2π の整数倍を除いて)読める。

積が負の実数になれば和は 。あとは各角の範囲()から を絞って確定する。

公式積の偏角 = 偏角の和(mod )。負の実数の偏角は

① 積を計算する。

② 偏角を読む。 は負の実数だから

③ 範囲で確定する。 で、(正接が で偏角も増える)。よって

この範囲にある は のみ。したがって

まとめ: 求まらない角は和にして積で測る。正接が の3つの角の和がちょうど になるという古典的な等式が、複素数の掛け算2回と範囲の吟味だけで証明される。偏角の の不定性を範囲で取り除く最後の一歩まで書いて完答だ。

発展。 は「方眼紙の3つの角」としても有名で、格子点だけで作った3つの直角三角形を組み合わせる図の証明もある。仲間に (こちらは )があり、円周率の計算(マチンの公式)にもつながっている。

答

別解

正接の加法定理で(複素数を使わない)。 だから、加法定理を2回使えば数IIの範囲で解ける。

で正接が負だから は鈍角、すなわち の形()。よって

複素数の積(本解)はこの加法定理の計算を「掛け算1回」に圧縮したものだ。実際、 の展開で起きていることは、加法定理の分子分母の計算と一字一句対応している。複素数の積は偏角の加法定理を機械的に計算する方法だ、と分かる問題だ。

ポイント

  • (負の実数)。
  • 積の偏角=偏角の和 → 和は 。
  • 範囲 から和は 。

よくある間違い

  • 積の偏角から「和 」と即断する(偏角は の整数倍の任意性がある。範囲 から 和 で絞る一段が要る)。
  • の展開で の符号を落とす。
  • 「偏角の和=積の偏角」を使う前提(積が0でない)に触れない(小さな穴だが、除外の習慣として)。

問7円を楕円にうつす変換 z+1/z

最難関編軌跡極形式

問題

が円 上を動くとき、 が描く図形を求めよ。また、 の最大値と最小値を求めよ。

ヒントを見る

極形式で をおくと、 の実部・虚部はどうなるか。足したときに cos と sin の係数がずれる。その媒介変数表示が表す曲線は何だったか。

解答・解説

方針

z=2(cosθ+isinθ) と極形式でおくと 1/z=(1/2)(cosθ−isinθ) となる。足すと実部と虚部で係数が変わり、w=(5/2)cosθ+(3/2)isinθ になる。これは楕円の媒介変数表示。|w|² は cos²θ の1次式になり、最大最小は軸の端で起きる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 円周上の は極形式が便利: とおくと

(逆数は「絶対値が逆数、偏角が符号反転」。)足すと実部と虚部で係数の増減が逆になり

これは楕円の媒介変数表示そのもの。 の最大最小は、 が の1次式になることから、軸の端で決まる。

公式 のとき 。 は楕円

① 媒介変数表示を作る。

② 曲線を特定する。 から を消去して

これは長半径 (実軸方向)、短半径 の楕円全体である( が1周すると楕円も1周する)。

xyO5/23i/2
円 |z|=2(破線)が w=z+1/z で楕円(青、半長軸 5/2・半短軸 3/2)にうつる。|w| の最大は実軸の端(±5/2)、最小は虚軸の端(±3i/2)

③ の最大最小。

より 。よって最大値 (、)、最小値 (、)。

まとめ: は「半径 の円」を「半長軸 ・半短軸 の楕円」にうつす。 では楕円がつぶれて実軸の線分 になる(基準の応用問題でおなじみの範囲)。円の半径を動かすと楕円の一族ができる、という変換の見方も知っておきたい。

発展。 円の半径 を一般にすると、 の像は長半径 ・短半径 の楕円で、 から焦点はいつも (共焦点の楕円の族)。 では線分 につぶれる。この写像(ジューコフスキー変換)は、円を翼の断面に移す変換として航空力学の古典になっている。

答

楕円 。 の最大値 、最小値

別解

共役で を直接計算する(楕円を経由しない最大最小)。 だけが目的なら、共役の展開ですぐに出る。

より最初の2項は 。残りは とその共役の和で 。よって

最大は で 、最小は で である。 の最大 ・最小 が楕円を描かずに分かった(最大は実軸上 、最小は虚軸上)。

媒介変数表示(本解)は図形が楕円であることまで分かる方法、共役の直接計算は「大きさだけ欲しい」ときの最短路だ。目的に応じて方法を選べるようにしておくとよい。

ポイント

  • で係数がずれる。
  • → 楕円。
  • → 最大 ・最小 。

よくある間違い

  • を とする(偏角の符号反転を忘れる)。
  • 実部と虚部の係数( と )を取り違えて楕円の長短軸が逆になる。
  • の最大最小を「 の最大」など座標の一方だけで判断する( を の式にして比べる)。

問8縮小回転が描く螺旋の全長

最難関編点列無限等比級数

問題

、()で点列を定める。折れ線 の長さの総和(無限和)を求めよ。

ヒントを見る

各辺の長さを と「共通の因子」の積に分けられないか。 を でくくると分かる。辺長が等比だと分かれば、あとは級数の和と有理化だけ。

解答・解説

方針

掛ける数 q=(1+i)/2 は「1/√2 倍して45°回転」。辺の長さは |z_{n+1}−z_n|=|z_n||q−1| で、|z_n|=|q|ⁿ が等比だから辺長も等比数列(公比 1/√2)になる。総和は無限等比級数で求める。有理化で √2+1 に畳む。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 掛ける数 がどんな変換かを先に見る: 、偏角 なので、「 倍して 回る」縮小回転だ。点列は原点へ渦を巻いて落ちていく。

折れ線の各辺の長さは

は等比数列だから、辺の長さも等比数列(公比 )。総和は無限等比級数で閉じる。

公式(くくり出し)。無限等比級数: 初項 ・公比 ()の和は

① 部品を測る。

だから となり、螺旋は原点に収束する。

② 辺の長さの等比性。

初項 、公比 の等比数列。

xyOz₀=1z₁
点列 1, (1+i)/2, i/2, … が原点へ渦巻く螺旋。各辺は1本前の 1/√2 倍で、全長は √2+1 に収束する

③ 総和。

まとめ: 「縮小回転の点列 → 辺長の等比 → 無限級数」。無限に折れ曲がりながら回転を続ける螺旋の全長が、有限の値 になる。等比級数の和と、最後の有理化までが計算の要点だ。

発展。 この螺旋は「対数螺旋」の離散版で、どの1歩も前の1歩と同じ角度・同じ縮小率で進む。そのため全体と部分が相似になる。自己相似の方程式 は、コッホ曲線など、フラクタルの長さ・面積の計算の基本形。オウムガイの殻や台風の渦がこの形になるのは、「成長のルールが場所によらず一定」という同じ理由による。

答

別解

自己相似で方程式を立てる(等比級数の公式を使わない)。 この螺旋には、みごとな自己相似がある。折れ線全体を 倍すると、最初の1辺を除いた残りの折れ線にぴったり重なる( たちが たちに移るから)。

倍は長さを 倍にするので、全長 について

最初の辺は 。方程式を解いて

等比級数の公式(本解)は項別の足し算、自己相似は「全体=1辺+縮小コピー」という構造の方程式。フラクタル図形(コッホ曲線など)の長さの計算と同じ発想で、無限の和が1本の1次方程式で求まる。

ポイント

  • : 倍+45°回転。
  • 辺長 (等比)。
  • 総和 。

よくある間違い

  • 辺の長さの公比を と混同する(公比は 。 は初項の側に入る)。
  • 無限等比級数の収束条件 への言及を落とす。
  • の有理化を焦って と逆数にしてしまう(答えは 。分母分子に を掛けてから共役)。