数学B / 漸化式と数学的帰納法

漸化式と数学的帰納法 ★★ 標準の問題 全12問

定期テストレベル。典型パターンの運用

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 特性方程式型(標準)
  2. 階差型(2次の階差)
  3. 指数型(pₐₙ + qⁿ)
  4. 1次式型(pₐₙ + n)
  5. 連立漸化式
  6. 分数型の漸化式(逆数変換)
  7. 数学的帰納法(等式)
  8. 数学的帰納法(不等式)
  9. 和 Sₙ の漸化式から一般項
  10. 数学的帰納法(整除)
  11. 特性方程式型(公比が負)
  12. 指数型(3ₐₙ + 4ⁿ)

問1特性方程式型(標準)

★★ 標準漸化式特性方程式

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

『 倍して定数を引く』型。両辺から同じ数を引くと等比数列になる。その数は と を同じ値とみなした方程式の解だ。置きかえた数列の初項を出し忘れないこと。

解答・解説

方針

特性方程式 を解いて 。 と変形し、 を公比 の等比数列とみる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、「 倍して 引く」の繰り返しだ。 さえなければ、ただの等比数列なのに。

そこで、ずらして等比にするのがこの型の定跡だ。うまい数 を見つけて の形に書き直せれば、 が公比 の等比数列になる。その は (特性方程式)の解 。「引いてから等比、最後に足し戻す」の三段で進む。

重要()は、特性方程式 の解 で

① 特性方程式を解く。 より 、。

② を引いて等比の形に。

③ 置きかえる。 とおくと 。初項 。

④ に戻す。

まとめ: 型は「特性方程式で → が等比」の一本道。 を求めたら、必ず の形に書き直してから置きかえるとミスが減る。

発展。 不動点の目で見ると、この数列の行き先も分かる。公比 は より大きいから、ずれ はどんどん膨らむ。数列は不動点から離れていく。もし漸化式が のように公比の絶対値が 未満なら、ずれは縮んで数列は不動点に吸い寄せられる(数IIIの極限でよく使う見方だ)。

「 次の漸化式は、不動点とそこからのずれ(等比)に分解できる」。この 行に、この型の解き方がすべて入っている。

答

別解

特性方程式からなぜ「 を引け」と分かるのか。先に数列を書き出すと、その理由が目で確かめられる。

このままでは規則が見えにくい。ところが各項から を引くと

きれいな のべき()が現れる。つまり 。

なぜ「」だったのか。 は に入れても動かない値()で、数列の不動点だ。不動点からのずれだけを見れば、 の効果が消えて純粋な 倍が残る。特性方程式はこの不動点を機械的に探す道具にすぎない。

「書き出す → 何かを引いてそろえてみる」は、特性方程式を忘れたときの復元手段にも、答えの検算にもなる。

ポイント

  • 特性方程式 で 。
  • が公比 の等比数列。

よくある間違い

  • 等比とみる対象を 自身と誤る(等比なのはずらした )
  • 最後に を足し戻すのを忘れて と答える
  • 初項を でなく のまま等比の公式に入れる

問2階差型(2次の階差)

★★ 標準漸化式階差数列

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

階差の型。初項に階差を積み上げるとき、和の上端は 。今回の階差の和は奇数の和としてまとめて計算できる形になっている。

解答・解説

方針

階差が (奇数)。 で 。奇数の和は平方数になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、前の項に「 で変わる量」を足していく形だ。これは階差数列の型だ。

差を積み上げれば任意の項に着く。 で

足すのは奇数 だ。奇数の和は平方数になるから、 の計算は軽い。上端が であることと、最後の の確認だけ丁寧に。

公式階差型 。奇数 個の和は

① 階差を確かめる。 。

② 和で一般項を出す()。 階差 は奇数。 個の奇数の和は 。

③ 展開して整理する。

④ を確認する。 で一致。

まとめ:階差が奇数 なら、和が平方数 になって計算が楽。 公式で地道に出しても同じだが、奇数の和 = 平方 を知っていると速い。

発展。 階差が の 次式なら、一般項は の 次式になる。差をとると次数が 下がる(逆に積むと 上がる)という、微分・積分の関係の離散版だ。階差が 次なら一般項は 次、と次数の見積もりが先にできる。

逆向きの目も役立つ。「一般項が 次式の数列」を見たら、階差は必ず等差数列になっている。数列の型あては、階差を 回とってみるのが最初の診察になる。

答

別解

答え は、形を変えると意味が読める。

書き出して確かめると 、、、 となり、逐次計算()と一致する。

この形から分かること: スタートの に、奇数 を 個積むと、奇数の和の分 だけ増える。「初項 奇数の和 初項 平方数」という問題の構造が、式の見た目にそのまま残っている。

平方完成した形で答えを持っておくと、検算( に小さい値を代入)も速いし、展開ミスがあれば との照合ですぐ気づける。

ポイント

  • 階差 の和は (奇数の和)。
  • の確認を忘れずに。

よくある間違い

  • 和の上端を にする(積む差は 個)
  • とすべきところを とする(公式の を に置き換える)
  • で導いた式の 確認を飛ばす

問3指数型(pₐₙ + qⁿ)

★★ 標準漸化式指数型

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

右辺に が混ざる型。一般項を『 の累乗の項と の累乗の項の組み合わせ』と予想して、漸化式に代入して係数を決める方法が見通しよい。

解答・解説

方針

の解は の形。 の部分(特殊解)を先に決め、残りの を初項条件で決める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、邪魔者が定数でなく と、 とともに育つ型だ。定数の特性方程式はそのままでは使えない。

こういうときは、解の形を先読みする。 倍する部分からは の系統、 を足す部分からは の系統が育つはず。そこで

の形を予想し、(特殊解の係数)を漸化式に合うように、 を初項に合うように決める。「型を予想して係数を決める」二段構えである。

重要()の一般項は の形

① 解の形を予想して代入する。 とおき、漸化式 に入れる。

② の係数を比べる。 の項は両辺で自動的に一致するので、 の項だけ見る。左辺 、右辺 。

③ 初項で を決める。 。 に を入れる。

④ 一般項を書く。

まとめ: 型は「 とおいて係数決定」が速い。 の項から が、初項から が決まる。( で割って階差型にする別解もある。)

発展。 答え の中で、 が大きくなると勝つのは 。「足される 」が「 倍の成長」を追い越す。 つの増え方の競争が答えの 項にそのまま表れている。

もし係数と底が同じ()だったら、予想 は左右で打ち消されて決められない。そのときは と を掛けた形に格上げする(共鳴と呼ばれる現象)。「予想が失敗したら 倍して再挑戦」というのが、型の予想ルートの、もう一歩先の作法だ。

答

別解

邪魔者 を「割り算」で退治する道もある。両辺を で割る。

とおくと となり、見慣れた「定数を足す型」になった。特性方程式 から 。 だから

。予想ルートと同じ答えだ。「増えていく余分な項は、その増え方()で全体を割って大きさをそろえる」のは、指数型の漸化式に広く使える正規化の発想である。

ポイント

  • とおく。
  • の係数比較で 、初項で 。

よくある間違い

  • 定数型と同じ特性方程式 を立てようとして詰まる( は定数でない)
  • 特殊解 の を決める式で の関係を使い損ねる
  • を決めるとき初項条件 でなく を使ってずれる

問41次式型(pₐₙ + n)

★★ 標準漸化式

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

右辺に の 次式が混ざる型。 次式の特殊解を仮置きして係数比較で決めると、残りは等比の話になる。

解答・解説

方針

右辺に (1次式)があるので、まず「1次式の特殊解」 を見つける。 が漸化式を満たすように を決め、残りを等比数列で処理する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、足される邪魔者が ( 次式)の型だ。

定数なら「定数の不動点」を引けばよかった。 次式なら、引くべきものも 次式。特殊解 を探す。 が漸化式をずっと満たすように を決めると、そこからのずれが純粋な等比数列になる。

を について整理し、係数比較で を決める。「邪魔者と同じ形の解を仕込む」のがこの型の解き方だ。

重要 は、1次式の特殊解を引いて等比数列にする

① 1次式の特殊解を求める。 が漸化式を満たすとして代入。

左辺 、右辺 。係数を比べる。

特殊解は 。

② 残りを等比数列にする。 とおく(等比部分 + 特殊解)。 を代入。

③ 一般項を書く。 。

まとめ:右辺に の1次式があるときは、「答えにも1次式が混じる」と読んで特殊解 を先に決める。残りは等比数列。指数型()のときと同じ「特殊解 + 等比」の発想だ。

発展。 特殊解ルート(本解)と階差ルート(別解)は、同じ結果に別の道筋でたどり着く方法だ。特殊解 を先に見抜けるなら最短、思いつかなければ差をとって機械的に次数を下げる。試験では「予想できたら特殊解、できなければ階差」と使い分ければよい。

この構造(一般解 等比の部分 邪魔者と同型の特殊解)は、大学で学ぶ微分方程式とまったく同じ設計になっている。漸化式は微分方程式の離散版であり、数Bのこの単元はその基礎にもなる。

答

別解

邪魔者の を、差をとって消す方法もある。となり合う つの漸化式を並べて引く。

差 をとると、 と の差は だから

次式の邪魔者がただの定数 に格下げされた。あとは基本の特性方程式型だ。 で、 が公比 の等比になるから 。

最後に差を積み上げて復元する。

「差をとるたびに邪魔者の次数が 下がる」ので、 が足される型なら 回差をとればよい。特殊解の形を予想しにくいときの、確実な迂回路である。

ポイント

  • 1次式の特殊解 を係数比較で求める。
  • 残りを等比数列(初項で 決定)。

よくある間違い

  • 特殊解の係数比較で の展開を誤り の連立を崩す
  • ずれの等比の初項を のまま使う(正しくは )
  • 求めた一般項を漸化式に戻して検算しない( の逐次計算 と照合する)

問5連立漸化式

★★ 標準漸化式連立

問題

、、、 で定まる数列の一般項 、 を求めよ。

ヒントを見る

つの漸化式を、足す・引くしてみよう。それぞれが 本の見慣れた漸化式になる。和と差が分かれば、もとの つは連立で復元できる。

解答・解説

方針

つの式の「和」 と「差」 を作ると、それぞれが単独の漸化式(等比・等差)になる。和と差を求めてから、、 を復元する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) と が互いを参照し合っていて、単独では解けない。ならば、組み合わせて 本の数列を作る。

つの式をよく見ると、係数が対称( の式は 、 の式は )だ。こういうときは和と差を使う。 式を足すと となり、和は公比 の等比数列になる。引くと となり、差はずっと一定である。和と差が分かれば、 で復元できる。

重要連立漸化式は、和 と差 を作ると単独の漸化式に分かれる

① 和の漸化式を作る。 式を足す。

公比 の等比数列。初項 。よって 。

② 差の漸化式を作る。 式を引く。

一定(公比 )。初項 。よって 。

③ 、 を復元する。 和と差から

まとめ:連立漸化式は「和と差で分解」が基本(係数が対称なとき特に有効)。和・差それぞれが等比や等差になり、単独で解ける。最後に和と差から で復元する。

発展。 和と差がうまくいったのは係数が対称だったから。対称でない連立漸化式では、 が等比になるような を探す(今回の和と差は の場合にあたる)。この 探しを機械化したものが、大学で学ぶ行列の固有値・固有ベクトルだ。

「 本の絡んだ数列を、独立に育つ 方向(今回は和と差)に組み替える」のは、座標軸を取り替えて問題を単純化する線形代数の中心思想で、この問題がその最初の体験になる。

答

、

別解

「和と差を作る」と言われても唐突に感じるなら、先に数列を書き出してみるとよい。

つの列を見比べると、気づくことが つある。

  • 和 : で、 のべきだ
  • 差 : で、ずっと のまま

つまり 、。この 本を連立して

実験が先、証明が後である。見つけた法則は和の漸化式( 倍)と差の漸化式(不変)を作れば正当化できる。「 本の数列を見たら、まず和と差を計算してみる」を実験の習慣にしておくと、この型は怖くない。

ポイント

  • 和 と差 を作る。
  • それぞれ単独の漸化式 → 復元。

よくある間違い

  • 和の等比の初項を でなく から始めて指数がずれる
  • 復元の で割る操作を忘れ、 と答える
  • 差が一定()なのを見落とし、差にも特性方程式を持ち出して混乱する

問6分数型の漸化式(逆数変換)

★★ 標準漸化式分数型

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

分子が だけの分数型は、両辺の逆数をとると扱いやすくなる。逆数を新しい数列とみなしたとき、どの型の漸化式になるかを見きわめよう。

解答・解説

方針

分数型は逆数をとると簡単になることが多い。両辺の逆数をとり、 とおくと、 の漸化式(今回は特性方程式型)になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、分数の形のままでは等差・等比のどの型にも見えない。

分数型の定跡は逆数をとること。分子が 単独(定数項なし)のときは特に役に立つ。

とおけば となり、見慣れた特性方程式型に変わる。「扱いにくい形は、変換して既知の型に持ち込む」の代表例だ。

重要分数型 は、逆数 をとると簡単な漸化式になる

① 両辺の逆数をとる。

② 置きかえる。 とおくと

これは特性方程式型。初項 。

③ 特性方程式で解く。 より 。。 は初項 、公比 。

④ に戻す。 。

まとめ:分数型は「逆数をとる」が最初の一手。 を計算すると のやさしい漸化式になる。あとは特性方程式型として処理し、最後に逆数で に戻す。

発展。 分母の列 ()はメルセンヌ数と呼ばれ、素数研究(巨大素数の探索は今もこの形で行われている)やハノイの塔の最少手数として、あちこちに現れる。

分子にも定数が付く一般の分数型 では、単純な逆数では割れない。そこでは不動点 を求めて や を新数列にとる。「変換して既知の型へ」という今回の考え方が、そのまま発展した形で使われる。

答

別解

「逆数をとれ」の一言がなぜ出てくるのか。まず数列を分数のまま書き出してみる。

分子はずっと 、分母は 。この分母の列は 足すと と倍々になる。つまり分母は で、

と予想できる。「分子が のまま、分母だけが規則的に育つ」ことに気づくと、逆数に変換しようと思える。分母 を中心に考えれば、それは という素直な数列(だから で倍々になった)。実験で見えた法則を、変換によって証明できる。

ポイント

  • 分数型は逆数 で変換。
  • の漸化式を解き、逆数で に戻す。

よくある間違い

  • 逆数をとる前に の確認を飛ばす(全項正なので逆数がとれる、の一言を書く)
  • の約分を でなく や と誤る
  • 最後に から に戻すのを忘れて を答えにする

問7数学的帰納法(等式)

★★ 標準数学的帰納法

問題

すべての自然数 について が成り立つことを、数学的帰納法で証明せよ。

ヒントを見る

段目が本番。 の式を仮定して、両辺に何を足せば の左辺が作れるか。足したあと、右辺が目標の形にまとまるかを因数分解で確かめる。

解答・解説

方針

(I) で成立を確認。(II) を仮定し、両辺に次の項 を足して、 の右辺 になることを示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「すべての自然数 で成り立つ」という無限個の主張を、有限の手続きで証明したい。そこで数学的帰納法を使う。

部品は つ。(I) 最初の 枚()が成り立つこと。(II) で成り立つと仮定すれば でも成り立つこと。

この つが揃うと、 とドミノ式にすべての へ伝わる。等式の帰納法では、(II)は「仮定の式の両辺に次の項 を足して、 版の右辺になるか」を確かめる計算になる。

定理数学的帰納法:(I) 、(II) 仮定 →

(I) のとき。 左辺 、右辺 。成り立つ。

(II) を仮定する。 とする。両辺に次の項 を足す。

右辺を でくくる。

中カッコの分子を整理する。。

これは の右辺 に一致。

結論。 (I)(II) より、すべての自然数 で成り立つ。

まとめ:等式の帰納法は「仮定の右辺 + 次の項」を計算し、 の右辺に一致させるのがヤマ。 でくくり、残りの分子を因数分解 できるかで決まる。

発展。 (II)の計算の芯は で をくくること。展開してから因数分解し直すのではなく、共通因数を先にくくると計算量が数分の一になる。目標の式 を横に書いておき、そこへ向けて式を整える意識が役に立つ。

帰納法が証明するのは等式だけではなく、不等式・倍数性・図形の性質なども、「 で成り立てば でも」の橋さえ架かれば証明できる。この単元の後半で、その橋の架け方のバリエーションを学ぶ。

答

n=1 で成立、n=k を仮定して両辺に (k+1)² を足すと n=k+1 でも成立

別解

帰納法は「与えられた式が正しいことの確認」だが、そもそもこの公式を自力で作り出す方法も知っておく価値がある。 乗の差を並べて足す。恒等式 を から まで足すと、左辺は途中が打ち消し合って

は既知だから、 について解けば

公式そのものが導出できた。帰納法は「答えを知ってから確かめる」道具、望遠鏡和は「答えを知らずに作る」道具。 つセットで持つと、 でも( 乗の差から)同じように公式を自作できる。

ポイント

  • 仮定の右辺に次の項 を足す。
  • でくくり、分子を因数分解して一致を示す。

よくある間違い

  • (II)で示すべき の式(ゴール)を先に書かず、変形の行き先を見失う
  • 仮定を使わずに の左辺を最初から計算し直す(帰納法の意味がなくなる)
  • 最後の因数分解で をくくらず 次の展開に突入して計算が破綻する

問8数学的帰納法(不等式)

★★ 標準数学的帰納法不等式

問題

を満たすすべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で証明せよ。

ヒントを見る

段目では仮定の両辺を 倍するところから。出てきた式と目標の式のあいだのすき間を、 の範囲を使って埋められるか。

解答・解説

方針

不等式の帰納法は出発点が 。(I) で確認。(II) ()を仮定し、 に仮定を使う。 の条件も利用して を超えることを示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 不等式の帰納法で、まず確かめるのは出発点。 では が偽、 でも が偽なので、主張は から。だから (I) は ()で確認する。

(II) では と分解して仮定 を使う。

あとは 、つまり を言えばよい。ここで という前提条件を使う。不等式の帰納法は「仮定でジャンプ → 残りの差は の範囲で埋める」の二段跳びだ。

定理不等式の帰納法:(I) 出発点で成立、(II) 仮定 → 。途中で仮定と条件を使う

(I) のとき。 左辺 、右辺 。 で成り立つ。

(II) ()を仮定する。 とする。 を調べる。

(ここで仮定 を使った。)あとは が より大きいことを示せばよい。

よって 。したがって

となり、 でも成り立つ。

結論。 (I)(II) より、 のすべての自然数で 。

まとめ:不等式の帰納法は「 に仮定を使って評価を下げ、さらに条件で押し切る」。等号でつなぐ等式とちがい、不等号を 段()つなぐのがコツだ。

発展。 と の比較は指数と 次式の比較だ。出だしこそ競るが、指数は倍々で伸びるので必ず突き放す。実は ()、(十分大きな )も成り立ち、指数関数はどんな多項式よりも最終的に大きくなる。この事実は数IIIの極限()で定理として整備される。

「小さい で反例、大きい で成立」という主張の証明には、出発点つき帰納法がぴったりはまる。出発点を探す作業( を実際に試す)自体が、問題の構造の理解になっている。

答

n=3 で成立、n=k(≧3) を仮定して n=k+1 でも成立

別解

帰納法を使わず、 を二項定理で下から見積もる直接証明もできる。 を展開すると、 では最初の 項だけでも

これが を超える条件を整理すると

なら両因数が正で成立。証明終わり。

境界の様子も因数分解から分かる。 では で、ちょうど等号()になる。主張が から始まる理由が式に現れている。指数の不等式は「二項展開の頭数項で押さえる」のも、帰納法と並ぶもうひとつの標準的な方法だ。

ポイント

  • 出発点は 。 に仮定を使う。
  • と不等号を 段つなぐ。

よくある間違い

  • 出発点を にしてしまう( では不成立。仮定にも を添える)
  • (II)で を示す途中、 の根拠(、実際は で十分)を書かない
  • 不等号の連鎖で等号の有無( と )を混ぜて書き、最終の が保証されない

問9和 Sₙ の漸化式から一般項

★★ 標準漸化式和と一般項

問題

数列 の初項から第 項までの和 が を満たす。一般項 を求めよ。

ヒントを見る

と が混ざった式は、 を つずらした式との差をとると が消える。残る漸化式の型を見きわめて解く。初項は元の式から別に出す。

解答・解説

方針

()を使って、 の漸化式を作る。、 を代入。初項は から。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 与えられたのは項と和の混ざった式 。このままではどちらも分からない。

橋渡しは ()。 と を辺々引くと、 が消えて

だけの漸化式に変わる。初項は から 、つまり 。「 入りの式は、 つ前と引き算して を消す」が定跡だ。

定理()で、 の関係式を の漸化式に変える

① 初項を求める。 なので 、よって 。

② 漸化式を作る()。 に代入。

③ 整理する。

④ 特性方程式型を解く。 より 。。初項 。

まとめ: の関係式は「」で の漸化式に直す。ここでは特性方程式型 が出た。初項 を別に求めるのを忘れずに。

発展。 答えの検算は条件式で。 なら 、一方 で、確かに一致する。「 と の関係式が条件の問題は、最後に条件式へ戻して確かめる」と安心だ。

()は、分数型の漸化式の分母にも、ハノイの塔にも現れた顔なじみ。同じ数列が違う問題の答えとして再登場するのは、背後の構造(倍々 )が同じだからだ。数列の学習が進むほど、こうした例が増えていく。

答

別解

条件式から具体の項を順に絞り出して、答えの形を先に見てしまう手がある。

  • : より
  • : より 、
  • : より
  • : 同様に

のそれぞれに を足すと 。 足すと倍々だ。 と予想できる。

この観察は漸化式 を変形した の姿そのもの。 が公比 の等比数列(初項 )だから 。予想 → 構造( で等比)の発見 → 証明、という流れは、特性方程式の答え()を実験が先取りしている形だ。

ポイント

  • で漸化式に変換。
  • 初項は から。

よくある間違い

  • を にも使う( は存在しない。初項は から別に)
  • 引き算で の符号処理を誤り とする
  • と の記号を混同し、和の式に一般項を代入してしまう

問10数学的帰納法(整除)

★★ 標準数学的帰納法整数

問題

すべての自然数 について、 は の倍数であることを数学的帰納法で証明せよ。

ヒントを見る

段目では を、仮定が使える形( を含む形)に変形すれば進める。 から始めて、どう分ければ仮定の式が現れるか。

解答・解説

方針

(I) で確認。(II) で が の倍数(= と書ける)と仮定し、 を を使って変形して、 でくくれることを示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「 の倍数である」ことを全部の で示す。倍数性も帰納法で証明できる。

(I) : 。確かに の倍数。(II) で ( は整数)と書けると仮定する。 を、仮定が使える形(つまり が見える形)にわざと崩すのがいちばん大事なところだ。 から

と変形すれば、 で の倍数。「仮定のかたまりを作り出す変形」が倍数性の帰納法の要点である。

定理整除の帰納法: で「 の倍数()」と仮定し、 を の形にする

(I) のとき。 で、 の倍数。成り立つ。

(II) を仮定する。 が の倍数、すなわち整数 で と書けるとする。 を調べる。

(ここで を使い、 と合わせて にした。)仮定 を代入する。

は整数なので、 は の倍数。

結論。 (I)(II) より、すべての自然数 で は の倍数。

まとめ:整除の帰納法は「 を でくくり出す」変形が決め手だ。 とすれば、仮定( の倍数)と残り()が両方 の倍数になる。

発展。 本解の変形 は、「余りだけ見れば だから 」という合同式(数A)の考えを、帰納法の言葉で書いたものだ。合同式を学んだ人なら の 行で済む。同じ事実に、帰納法・因数分解・合同式の つの道がある。

「 は の倍数」という一般形も、別解と同じ因数分解で証明できる。整数の倍数性の問題では、この恒等式が裏で使われていることが多い。

答

n=1 で 5 の倍数、n=k を仮定して n=k+1 でも 5 の倍数

別解

帰納法を使わない短い証明が、因数分解でできる。等比数列の和の公式を因数分解の形で読むと

カッコの中は のべきの和なので、明らかに整数だ。よって は の倍数。これで終わり。

という恒等式に を入れただけである。同じ理屈で「 は の倍数」「()は の倍数」もすぐに出る。

直感的に言えば、 進法で は ( が 個)となる。 進法の が の倍数であるのと同じことだ。帰納法はどんな場合にも使える方法、因数分解は特定の形に使える方法で、両方持っていると証明の選択肢が広がる。

ポイント

  • と変形。
  • 仮定を代入して の形に。

よくある間違い

  • (II)で の「」の補正を落とす( と の差)
  • 仮定を「」と文字でおかず、「 の倍数」のまま式変形して論証が曖昧になる
  • 結論で の形まで書かず「よって倍数」と飛ばす( 整数の形を見せる)

問11特性方程式型(公比が負)

★★ 標準漸化式特性方程式

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

公比が負になるだけで、攻め方はいつもの『定数を引いて等比化』と同じ。答えの数列が つの値を交互にとる振動型になる理由も考えてほしい。

解答・解説

方針

特性方程式 を解いて 。 と変形。公比が なので、 は を交互にとる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 型は基本の特性方程式と同じ。 から で

は公比 の等比数列だ。今回は公比が負になっている点に注意する。 は と符号を交互に変えるから、数列は振動する。計算は基本型と同じでも、答えの数列の動き方はまったく違う。

重要公比が負でも特性方程式は同じ。 が公比 の等比数列(符号が交互)

① 特性方程式を解く。 より 、。

② を引いて等比の形に。

③ 置きかえる。 は公比 の等比数列。初項 。

④ に戻す。

これは が偶数のとき 、奇数のとき ( と交互)。

まとめ:公比が だと、数列は 値を交互にとる(振動する)。特性方程式の手順は同じで、 が になる。 の符号を正しく追うのがポイントだ。

発展。 公比 の値で、ずれ の振る舞いは 通りに分かれる。 で発散、 で不動点へ収束、 で振動しながら収束、 で振動が続くか拡大する。今回の は「振動が減衰も拡大もしない」境界の住人だ。

で偶奇を書き分ける技は、場合分けを 本の式にまとめる、よく使う方法だ。 という三角関数との接点もあり、振動を式で扱う場面(数IIIの極限、フーリエ解析)で繰り返し登場する。

答

(すなわち偶数番目が 、奇数番目が )

別解

まず書き出してみると、この数列の動きはすぐに分かる。

と を交互に繰り返すだけ。「奇数番目が 、偶数番目が 」が答えの中身のすべてで、 はそれを 本の式にまとめた表現にすぎない( が奇数なら 、偶数なら )。

見どころは振動の中心だ。 と の真ん中は で、特性方程式の解 と一致する。不動点 を中心に、幅 で行ったり来たりしている( がずっと保たれる)。

公比が正の基本型では「不動点から一方向に離れる(または近づく)」、公比が負なら「不動点をはさんで交互に飛び移る」。特性方程式の解はどちらの場合も運動の中心を教えている。

ポイント

  • 公比が負でも特性方程式は同じ手順。
  • で符号が交互(振動)。

よくある間違い

  • 公比 のべきの指数を誤り と を取り違える( で初項に戻るか確認)
  • 振動する数列に「収束する」「単調に増える」といった誤ったイメージで検算を怠る
  • の読み取りを逆にする(奇数番目 ・偶数番目 。 を代入して確認)

問12指数型(3ₐₙ + 4ⁿ)

★★ 標準漸化式指数型

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

右辺に が混ざる型。一般項を の累乗と の累乗の組み合わせと予想して、係数を決める方針が速い。

解答・解説

方針

の解は の形。 の部分(特殊解)を先に決め、残りの を初項条件で決める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、「 倍の成長」に「 の注入」が加わる型だ。基本の指数型と同じ発想で解ける。

解の形を先読みする。 倍からは の系統、 からは の系統。

を予想し、まず を漸化式との整合()で、次に を初項 で決める。係数と底が違う()ことを確認してから進むのが作法だ。

重要()の一般項は

① 解の形を予想して代入する。 とおき、漸化式に入れる。

② の係数を比べる。 の項は自動的に一致するので、 の項だけ見る。左辺 、右辺 。

③ 初項で を決める。 。 に 。

④ 一般項を書く。

まとめ: 型は「 とおいて係数決定」。 の係数から 、初項から 。先の指数型の と同じ手順で、数字が変わっただけだ。

発展。 答え を見ると、注入される の系統が正、もとの成長 の系統が負の係数を持つ。初項 がちょうど両系統の差で書ける配置だった、ということだ。初項が変われば だけが動き、(特殊解)は変わらない。「特殊解は方程式が決め、初項は等比部分が吸収する」という役割分担がある。

この分担は基本の指数型・ 次式型・そして大学の微分方程式まで共通の設計。「一般解 斉次解() 特殊解」という言葉で再会することになる。

答

別解

今度は成長率の で割る変換を試そう(基本の指数型では足される の側で割った。割る相手を変えると、変形後の形が変わる)。

とおくと、 となり、階差型になった。階差が等比数列だから、積み上げは等比の和で

よって 。まとめると、指数型 は「 で割れば特性方程式型」「 で割れば階差型」となり、どちらの既知の型にも運べる。 つの変換を知っていれば、この型で詰むことはない。

ポイント

  • とおく。
  • の係数比較で 、初項で 。

よくある間違い

  • を決める等式を と左右取り違えて とする(検算 : で確かめる)
  • の を初項で決めるとき の寄与を引き忘れる
  • 等比の和の公式で項数( 項)と初項を取り違える(階差ルート)