数学B / 漸化式と数学的帰納法

漸化式と数学的帰納法 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 等差型の漸化式
  2. 等比型の漸化式
  3. 階差型の漸化式
  4. 特性方程式型(基本)
  5. 漸化式から項を求める
  6. 等差数列と見抜く
  7. 等比数列と見抜く
  8. 特性方程式型(引き算)
  9. 数学的帰納法の枠組み
  10. 階差型(指数)
  11. 等比型(分数の公比)
  12. 特性方程式型(分数の係数)

問1等差型の漸化式

★ 基礎漸化式等差数列

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

漸化式が『前の項に同じ数を足す』形。これはよく知っている数列そのものだ。名前が分かれば一般項の公式に乗せられる。

解答・解説

方針

は「となりの項が ずつ増える」、つまり公差 の等差数列。初項 、公差 の一般項を書く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 漸化式とは「次の項の作り方」を書いたルールブックだ。

は、今の項に を足すと、次の項になると言っている。まず、実際に作ってみよう。

ずつ増えている。これは等差数列そのものだ。漸化式を見たら、まず「どの基本型か」を判定する。足すのか、掛けるのか。 ここでは足しているので、等差。

知っている数列に直せれば、あとは公式に当てはめるだけだ。 これがこの単元すべての出発点である。

公式 は公差 の等差数列。一般項

① 型を見抜く。 は「毎回 足す」ので、公差 の等差数列。

② 一般項を書く。 初項 、公差 。

まとめ: を見たら等差数列。公差はその定数。漸化式の一番やさしい型で、等差の一般項の公式に入れるだけだ。

発展。 漸化式はたかが「次の項の作り方」だ。だが、この方法は現代科学でも広く使われている。

自然現象を表す式はたいてい「変化のルール」の形をしている。

  • 物体の運動: 今の速度から、次の瞬間の位置が決まる
  • 人口: 今の人口から、来年の人口が決まる
  • 気温: 今の状態から、 分後の状態が決まる

「今の状態 → 次の状態」 という形は、漸化式と同じだ。連続的に扱えば微分方程式になる。

左は微分方程式、右は漸化式。 言っていることは同じで、変化率が で一定である。そして解も同じ形になる。

コンピュータは微分方程式をそのままでは解けない。 だから漸化式に直して、 ステップずつ計算する。これをオイラー法という。

天気予報も、ロケットの軌道計算も、ゲームの物理エンジンも、この 行を何百万回も繰り返している。

。 この素朴な式は現象をコンピュータで再現する方法の、いちばん簡単な例である。

答

別解

公式を思い出せないときは、「グラフにする」と分かる。

項を書き出し、点として打つ。 横軸に番号 、縦軸に値 をとる。

この 点は一直線に並ぶ。 進むごとに、必ず 上がるからだ。直線なら、式は 次式である。

傾き は「 進むと 増える」こと、つまり公差そのものだ。あとは切片 を決めればよい。 のとき だから

公式と同じ答えが出た。

確かめる。 で 、 で

この見方の利点。 「 の は だったか?」と迷わずに済む。直線の式を立てて、 点通せばいいだけだ。

そして、この見方は数列の性質をよく表している。等差数列 次関数の、飛び飛びの値。

公差 傾き。 この対応を覚えておくと、等差数列の問題は「直線の問題」として読める。たとえば「第 項が 、第 項が の等差数列」なら、 点 、 を通る直線を求めればよい。傾きは

公差 が 点の傾きとして出てくる。

ポイント

  • は公差 の等差数列。
  • に代入。

よくある間違い

  • としてしまう( で になり、初項が合わない)。公差を足す回数は 回
  • 「」を「 の次の項」ではなく「 に を足したもの」と読み違える。添字の は「番号」であって値ではない
  • 初項 を 番目と勘違いして、 と書いてしまう。番号は から始まっていることを、必ず最初に確認する

問2等比型の漸化式

★ 基礎漸化式等比数列

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

『前の項に同じ数をかける』形。これもよく知っている数列だ。どちらの基本数列かを見抜くのが第一歩。

解答・解説

方針

は「となりの項が 倍になる」、つまり公比 の等比数列。初項 、公比 の一般項を書く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 前問は「足す」型だった。今度は で、「掛ける」型だ。

書き出してみる。

毎回 倍。これは等比数列である。漸化式の第一関門はこの 択だ。

  • → 足す → 等差
  • → 掛ける → 等比

か か。 ここを見誤らなければ、あとは公式に乗せるだけである。

公式 は公比 の等比数列。一般項

① 型を見抜く。 は「毎回 倍」なので、公比 の等比数列。

② 一般項を書く。 初項 、公比 。

まとめ: を見たら等比数列。公比はその 。等比の一般項に入れるだけだ。

発展。 「毎回 倍」は 行で書けるルールだ。しかし、その増え方は人間の直感を裏切る。

有名な逸話がある。

チェス盤の マス目に米を 粒、 マス目に 粒、 マス目に 粒と、前のマスの 倍を置いていく。 マス目には何粒か。

全部の合計は

約 京粒。 重さにすると数千億トンで、世界で数千年かけて作る米の総量を超える。

「毎回 倍」を 回繰り返すだけで、こうなる。

なぜ直感が外れるのか。 人間の感覚は足し算的にできている。「 日 万円ずつ増える」なら 年で 万円と見当がつく。

だが掛け算的な増加は、 桁ずつ桁が増えていく。 が線形に増えると、桁数が線形に増える。つまり値そのものは急激に大きくなる。

回倍にするごとに、約 倍。この感覚はふだんの生活でも役に立つ。

  • 複利: 年利 なら約 年で 倍( の法則)
  • 感染症: 人が 人にうつせば、 世代で 人超
  • 半導体: 「 年で 倍」(ムーアの法則)を 年続けた結果が、今のスマホだ

。 この 行が急激な増え方を生んでいる。

答

別解

公式を使わず、「 を何回掛けたか」を数える。漸化式 を、 から順にさかのぼってみよう。

その も である。代入する。

もう一度。

規則が見える。

回さかのぼると、 が 個出る。

どこまでさかのぼる? 分かっているのは だけだから、 まで。

公式と同じ答え。

この方法の利点は、 という指数が「数えた結果」として出てくることだ。公式を丸暗記していると「 だったか だったか」で必ず迷う。しかしさかのぼって数えれば、迷いようがない。

具体例で確かめる。 は?

矢印は 本。 つまり 倍を 回。

第 項までに、 倍は 回。 初項はまだ 度も掛けられていないからだ。

これは「植木算」と同じ構造である。 木が 本並ぶとき、木と木のあいだは か所。項が 個なら、掛け算は 回。

ポイント

  • は公比 の等比数列。
  • に代入。

よくある間違い

  • としてしまう( で になり、初項 に合わない)。掛ける回数は 回
  • を「 を足す」と読み違え、等差として としてしまう
  • 初項 を忘れて とする。等比数列は「初項 公比の累乗」であって、公比の累乗だけではない

問3階差型の漸化式

★ 基礎漸化式階差数列

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

足される量が とともに変わるので、これは階差数列の型だ。初項に階差を積み上げて一般項に戻す。積み上げる個数(和の上端)に注意。

解答・解説

方針

なので、階差数列が 。 で 。上端が に注意。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は足し算だが、足す量が毎回変わる。

なら 、 なら 、 なら を足す。足す量そのものが数列になっている。

これを階差型という。

差が分かっているなら、初項から順に足し上げれば一般項に戻せる。

注意すべきは「何回足すか」だ。 から までは、矢印が 本。だから足す差も 個で、和の上端は になる。

「差が分かれば、和で戻す。ただし上端は 。」 これが階差型の解き方である。

公式階差型 は、 で

① 階差を確かめる。 なので階差は 。

② 和で一般項を出す()。 上端は 。

③ を確認する。 で一致。すべての で成り立つ。

まとめ: は階差型。「初項 + 階差の和」で一般項が出る。和の上端が なのと、 の確認を忘れずに。

発展。 出てきた一般項 には、よく似た有名な式がある。

定数を から に変えてみる。

に から順に入れてみよう。

は、すべて素数だ。偶然だろうか。続けてみる。

これも全部、素数。

実は、 から まで、 個すべてが素数になる。 オイラーが 年に見つけた、有名な素数生成多項式である。では、 は?

なので、素数ではない。

あっけない終わり方だ。 だが、この失敗こそが教訓になる。 回連続で成り立っても、それは証明ではない。

「 から まで確かめたから、すべての で正しい」という推論は誤りである。

では、どうすればすべての で言えるのか。 そのための道具がこの単元の後半で学ぶ数学的帰納法だ。「 個目が正しい」+「 個目が正しければ 個目も正しい」という、この 段があって初めて、無限個を保証できる。

実験は予想を生む。証明が予想を確定する。 オイラーの はその境目を示している。

ちなみに、すべての で素数になる多項式は存在しない(定数を除く)。これは証明されている。素数はそんなに簡単な式では捕まらない。

答

別解

「答えの形」を先に予想して、係数だけ決める。まず、次数を見積もる。階差(足す量)は で、 次式だ。

和をとると、次数は 上がる。

だから一般項は 次式のはずである。そこで、こう置く。

、、 を、条件から決める。

① 漸化式に代入する。 に入れる。

これが に等しい。

② 係数を比べる。 すべての で成り立つのだから、 の係数どうし、定数どうしが等しい。

③ 初項で を決める。 より

本解と同じ答え。

確かめる。 で

この方法の強み。 の計算をまったくしていない。形を仮定して、係数を合わせるだけで済んでいる。

未定係数法と呼ばれるこの手は、階差が多項式のときにいつでも使える。

  • 階差が 次式 → 一般項は 次式
  • 階差が 次式 → 一般項は 次式

の公式を思い出せなくても、連立方程式さえ解ければ答えにたどり着く。

ただし、階差が のような指数のときは使えない。 そのときは素直に で足し上げる。道具は使い分けるものだ。

ポイント

  • 階差型は ()。
  • 上端 、 の確認。

よくある間違い

  • 和の上端を にしてしまう( とする)。 から までの矢印は 本なので、上端は
  • 初項 を足し忘れる。階差型は「初項 差の和」であって、差の和だけではない
  • のときの断り書きを飛ばす。階差型の公式は でしか使えないので、 で成り立つかを最後に確かめる

問4特性方程式型(基本)

★ 基礎漸化式特性方程式

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

『 倍して定数を足す』型には、両辺から同じ数を引いて『何かの等比数列』に変形する方法がある。その『同じ数』の見つけ方を思い出そう。

解答・解説

方針

の型。特性方程式 を解いて 。両辺から を引くと となり、 が等比数列になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、掛けてから、さらに足している。

等差でも等比でもない。だが、書き出すと規則が分かる。

各項に を足してみよう。

の累乗になった。

つまり は等比数列である。 だけずらすと、等比になる。

なぜ なのか。 その を機械的に見つける道具が特性方程式だ。 を解くと 。この を引く( を足す)と、余計な定数が消える。

「ズレを吸収して等比にする」のが特性方程式型の解き方である。

重要 は、特性方程式 の解 で と変形する

① 特性方程式を解く。 より 。

② を引いて等比の形にする。

③ 置きかえて等比数列にする。 とおくと 。初項 。

④ に戻す。 。

まとめ:()は「特性方程式で を出す → を等比数列とみる」。 は「動かない値(不動点)」で、そこからのズレが等比的に変化する、というイメージだ。

発展。 という数列は、パズルでも有名だ。

ハノイの塔。

本の柱があり、 本目に大きさの違う円盤が 枚、大きい順に積んである。これを別の柱へ移す。ただし

  • 回に動かせるのは 枚
  • 小さい円盤の上に、大きい円盤を置いてはいけない

最小の手数は何回か。

枚のときの最小手数を とする。 移す手順を考えると、必ずこうなる。

この問題の漸化式そのものだ。

だから

枚なら 手、 枚なら 手。

伝説によれば、インドの寺院に 枚の黄金の円盤があり、僧侶がこれを移し終えたとき世界が終わる、という。

秒に 手動かしても、約 億年かかる。 宇宙の年齢( 億年)の 倍以上だ。移し終えるのは、はるか先のことになる。

この数列 はメルセンヌ数と呼ばれる。 が素数のとき も素数になることがあり、知られている最大の素数はすべてこの形をしている( 年時点の最大は 、 万桁超)。

。 この短いルールから、パズルの手数と、知られている最大の素数の形の両方が出てくる。

答

別解

特性方程式を使わずに、「差をとって定数を消す」。

邪魔なのは、末尾の だ。 この定数さえ消えれば、話は簡単になる。定数を消すときによく使う方法が「引き算」である。

漸化式を つ並べる。

辺々を引く。

が消えた。 定数どうしが打ち消し合ったからだ。ここで、差を新しい数列と見る。

すると

は公比 の等比数列だ。

初項を求める。 、 だから

差が分かったので、階差型として復元する。 で

等比数列の和。

でも で合う

本解と同じ答えにたどり着いた。

つの道を比べてみる。

  • 本解(特性方程式): ズレの基準点 を見つけ、 を等比にする
  • 別解(階差): 式を引いて定数を消し、差 を等比にする

どちらも「等比数列に持ち込む」点は同じ。 違うのは何を等比にするかだ。本解は「ズレ」、別解は「差」を等比にしている。

別解の強み。 特性方程式を覚えていなくても、定数が邪魔なら引き算で消すという一般的な発想だけで解ける。この発想は 項間漸化式など、もっと難しい型でも通用する。

ポイント

  • 特性方程式 で を求める。
  • が公比 の等比数列になる。

よくある間違い

  • 特性方程式を と書いてしまい、定数項 を落とす。特性方程式は「 も も に置き換えた式」なので、定数はそのまま残る
  • を求めたあと、 の初項を のままにする。等比数列になるのは なので、初項は
  • 最後に を戻し忘れて で終える。求めたのは であって ではない

問5漸化式から項を求める

★ 基礎漸化式

問題

、 で定まる数列 の第 項 を求めよ。

ヒントを見る

一般項は要らない。漸化式に を順に入れて、第 項まで芋づる式に計算すればよい。

解答・解説

方針

一般項を求めなくても、漸化式に順に代入すれば項が出る。 から と つずつ計算する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 聞かれているのは ひとつだけだ。

一般項を求める必要はない。漸化式は「次の項の作り方」なのだから、 から順に 回進めば に着く。

式を解くより、手を動かすほうが速い。「漸化式 一般項を求めるもの」と決めつけない。有限個でよいなら、逐次計算で足りる。 この割り切りも立派な判断である。

注意は 点だけ。 の は、毎回変わる。 を作るときは 、 を作るときは なので、添字を取り違えないことだ。

重要漸化式は、初項から順に代入すれば項が求まる

に を順に入れる。

よって 。

まとめ:「第 項だけ」なら、一般項を求めるより順に代入するのが速い。 の に、 を出すときは 、 は 、と正しく合わせるのがポイント。

発展。 この数列 は、身近な問題にも現れる。

ケーキを直線で切る問題。

丸いケーキを、まっすぐ 回切ると 切れ。 回切ると、うまく切れば 切れ。 回では?

回目の切り口と平行に切ると 切れにしかならない。だが、すでにある 本の切り口を両方またぐように切ると 切れになる。 回切ったときの最大の切れ数を とすると

この問題の数列と、ぴったり同じだ。なぜ漸化式が同じになるのか。 本目の直線を引くとき、既にある 本すべてと交わるように引くのが最大だ。すると新しい直線は 個の交点で区切られ、 個の区間に分かれる。

その 個の区間がそれぞれ既存の領域を つずつ 分割する。

「 本目を引くと、領域は 個増える」ことが、この問題の の意味である。

回切れば、最大 切れ。

同じ漸化式がまったく違う問題から現れる。 数学では、こうしたことがよくある。「 ずつ増える量を足していく」という構造さえ同じなら、ケーキだろうと数列だろうと、答えは同じ式になる。

構造が同じなら、答えも同じ。 数学が「抽象」を大事にするのは、 つ解けば全部解けるからである。

答

別解

一般項を求めてから、 を代入する。遠回りに見えるが、「第 項は?」と聞かれたら、こちらが必要になる。

① 階差型として解く。

階差は 。 で

② 検算する。

逐次計算と同じ答え。

この一般項の中身を見てみよう。

これは三角数だ。 点を三角形に並べたときの個数である。

つまり

数列そのものを書き出すと

差が と ずつ増える数列である。どちらを使うか、の判断。

  • だけ → 逐次計算( 回の足し算で終わる)
  • が欲しい → 一般項( 回足すのは現実的でない)

逐次計算なら 回。一般項なら 行。「小さい なら手を動かす、大きい なら式を作る」という使い分けが、漸化式との正しい付き合い方だ。

ポイント

  • 特定の項は順に代入して求める。
  • の値を各ステップで正しく合わせる。

よくある間違い

  • を作るときに を代入してしまう( を計算することになる)。 を作るのは のとき
  • の を定数だと思い込み、毎回同じ数を足してしまう。足す量は と変わる
  • を「 番目」と数え、 回でなく 回足してしまう。 から までの矢印は 本

問6等差数列と見抜く

★ 基礎漸化式等差数列

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

差が一定、という条件そのものから数列の名前が分かる。名前が分かれば公式どおり。

解答・解説

方針

は「差がつねに 」、つまり公差 の等差数列。初項 、公差 の一般項を書く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) なので、差がいつでも で一定だ。

「差が一定」の数列を、何と呼んだか。 等差数列だ。

と書き直せば、いつもの形になる。

表現が変わっても、中身は同じ。 漸化式は

と、 通りの書き方をされる。移項しただけである。「差の形で来たら、まず移項してみる」とよい。見慣れた形に戻せば、あとは公式に乗せるだけだ。

公式差 が一定なら等差数列(その値が公差)

① 型を見抜く。 (差が一定)なので、公差 の等差数列。

② 一般項を書く。 初項 、公差 。

まとめ:漸化式が「差 = 一定」の形なら等差数列と即断できる。公差はその一定値。型さえ見抜けば公式に入れるだけだ。

発展。 「差をとる」という操作は、数列の次数を 下げる。

実験してみよう。 数列 ( 次式)の差をとる。

回の差で、定数になった。

では、 次式ならどうか。 で試す。

回の差で、定数。 次式 なら

回の差で、定数()。

規則が見えた。

これは実用的な道具になる。数表だけ与えられて「一般項を求めよ」と言われたとき、差を何回とれば定数になるかを調べれば、次数が分かる。

例。 の一般項は?

回で定数 → 次式。

と置いて、 点を代入すれば決まる( になる)。

この技法を階差法という。 ニュートンが補間公式として体系化したもので、数表から法則を見つける古典的な方法だ。

差をとると次数が下がり、和をとると次数が上がる。 微分と積分の関係と、まったく同じ構造である。数列の差と和は、離散版の微積分である。

答

別解

等差数列を「階差型の特別な場合」として解く。階差型の公式はこうだった。

この問題では で、定数だ。

を 個足すのだから

公式と同じ答え

ここで気づいてほしい。

これは、等差数列の一般項の公式そのものだ。

つまり、等差数列の公式は階差型の公式で 定数とした場合にほかならない。

なぜ差を足し上げると元に戻るのか。 実際に並べてみよう。

隣どうしが打ち消し合う。 と 、 と

残るのは両端だけ。 望遠鏡を畳むように、途中がすべて消える。

これが階差型の公式の成り立ちである。

この視点の価値。 等差・等比・階差を、バラバラの公式として覚える必要がなくなる。

「差が一定 → 等差」も「差が の式 → 階差型」も、 つの原理( 差を足し上げれば元に戻る)の現れだと分かる。公式が つあるのではなく、原理が つあるだけだ。

ポイント

  • 差が一定 → 等差数列(その値が公差)。
  • 。

よくある間違い

  • を「 の 倍」と読み違え、等比としてしまう。引き算は差、割り算が比
  • としてしまう( で になる)。初項に足す回数は 回
  • 公差 と初項 を取り違えて とする。 に代入して初項に戻るかを必ず確かめる

問7等比数列と見抜く

★ 基礎漸化式等比数列

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

比が一定、という条件から数列の名前が分かる。あとは公式どおり。

解答・解説

方針

は「比がつねに 」、つまり公比 の等比数列。初項 、公比 の一般項を書く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) なので、比がいつでも で一定だ。

「比が一定」なら、等比数列である。

分母を払えば、見慣れた形に戻る。

差の形が等差だったように、比の形は等比だ。

  • (差が一定)→ 等差
  • (比が一定)→ 等比

引き算か、割り算か。 ここを読み取れば、型は決まる。まず分母を払って、いつもの形に直そう。

公式比 が一定なら等比数列(その値が公比)

① 型を見抜く。 (比が一定)なので、公比 の等比数列。

② 一般項を書く。 初項 、公比 。

まとめ:漸化式が「比 = 一定」の形なら等比数列。公比はその値。等差の「差」に対して、等比は「比」を見る、と対にして覚える。

発展。 「比が一定かどうか」を見る目は、現実のデータを読むときに役に立つ。

感染症の広がりを考えよう。 人の感染者が平均して 人にうつすとする( を実効再生産数という)。世代ごとの感染者数は

これは、この問題の漸化式と同じ形だ。

なら、 人から始まって

世代で 倍。 これが「指数関数的増加」の速さである。では、 を 未満にできたら?

減っていく。 やがて に近づく(収束する)。

が分かれ目になる。 が か かで、結果は正反対になる。この という境目こそが、対策の目標になる。

同じ構造があちこちにある。

  • 人口: 組の夫婦から生まれる子が平均 人未満なら、人口は減る
  • 核分裂: 個の中性子が次に 個以上を生むかどうかが、臨界の条件
  • 投資: 年利 なら 。複利は等比数列である

「比を見る」ことの意味。

差(増えた人数)を見ると「先週より 人増えた」で終わる。比を見ると「 倍になった」と分かり、来週の予測ができる。

等比数列の見方を持っている人は、変化のスピードそのものを読める。

答

別解

「比の積」でまとめて求める。比が与えられているのだから、比をそのまま掛け合わせてみよう。

分子と分母が、次々に約分される。

残るのは両端だけ。 望遠鏡を畳むように、途中がすべて消える(等差のときは差の「和」で消えた。等比では比の「積」で消える)。

一方、各因子はすべて である。 因子は 個。

公式と同じ答え。

さらに、この式を別の形に書き直してみる。

の形になった。

この形から分かること。 は指数関数 の、 での値である。等差数列が 次関数( 直線)の飛び飛びの値だったのと、ちょうど対をなす。

  • 等差数列 次関数(まっすぐ増える)
  • 等比数列 指数関数(加速して増える)

どちらの表示を使うか。

値はまったく同じ。 前者は「初項 公比の累乗」という数列としての見方、後者は「指数関数」という関数としての見方である。

確かめる。 で 、 で

つの数列に、 つの見方がある。 場面に応じて、見やすいほうを使えばよい。

ポイント

  • 比が一定 → 等比数列(その値が公比)。
  • 。

よくある間違い

  • を「差が 」と読み違え、等差としてしまう。分数の形は「比」を表す
  • としてしまう( で になる)。掛ける回数は 回
  • 比が一定と分かった時点で、 と初項を忘れる。初項 を必ず前に掛ける

問8特性方程式型(引き算)

★ 基礎漸化式特性方程式

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

『 倍して定数を引く』型。両辺から同じ数を引くと等比の形に直せる。その数は と を同じ文字とみなした方程式から見つかる。

解答・解説

方針

特性方程式 を解いて 。 と変形し、 を等比数列とみる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、掛けて、引く形だ。 前に見た と同じ仲間だ。

形は 。 、。符号が変わっても、手順はまったく同じである。

特性方程式 を解く。 。すると

が公比 の等比数列になる。

この という数の意味を、確かめておこう。 もし だったら、 となり、ずっと のまま動かない。

は「動かない値」である。 そこからのズレだけを追えばよい。それが特性方程式型の見通しである。

重要特性方程式 の解 で、

① 特性方程式を解く。 より 、。

② を引いて等比の形に。

③ 置きかえて等比数列に。 とおくと 。初項 。

④ に戻す。 。

まとめ:引き算()でも手順は同じ。特性方程式で不動点 を出し、そこからのズレ を等比数列とみる。 が答えの「定数部分」になる。

発展。 不動点には「安定」と「不安定」の 種類がある。

この問題の不動点は 、そしてズレは 倍ずつ拡大した。

もし初項がぴったり なら、永遠に のまま。 だが、ほんのわずかでもズレると、たちまち吹き飛ぶ。

これを不安定な不動点という。

イメージは鉛筆を立てること。 完全に垂直なら立ち続ける。だが 度でも傾けば、傾きはどんどん大きくなって倒れる。

逆に、係数の絶対値が より小さいと?

ズレは半分ずつになる。 どこから始めても、 に吸い寄せられる。これが安定な不動点だ(次の問題で扱う)。

すり鉢の底に置いたビー玉。 どこに置いても、転がって底に落ち着く。

この 行は力学系(時間とともに変化する系)の基礎になる。

現実の例。

  • 経済: 金利や物価が均衡点に戻るか、暴走するか
  • 生態系: 個体数が安定するか、絶滅・急増するか
  • 気象: わずかな初期のズレが拡大する(バタフライ効果)

天気予報が 週間先までしか当たらないのも、これが理由だ。 大気の運動は不安定な系で、観測のわずかな誤差が指数関数的に拡大する。

。 この 行の中に、「予測できる系」と「予測できない系」を分ける境界がある。

答

別解

「 からのズレ」だけを追いかける。特性方程式を「公式」としてでなく、考え方の流れとして見る別解である。

① 動かない値を探す。

「もし、ある値 から始めたら、次もその のまま」になる、そんな都合のいい値はあるか。

確かめる。 なら 。本当に動かない。

この を、不動点(動かない点)と呼ぶ。

② ズレを測る。

実際の初項は 。不動点 より、 だけ上にいる。

③ ズレがどう変化するかを見る。

ズレは毎回きっかり 倍になる。

④ ズレを、不動点に足し戻す。

本解と同じ答え

数列で確かめよう。

きれいに 倍ずつ離れていく。この見方から分かること。数直線の上に を打つ。 はそのすぐ右にいる。そして進むたびに、 から 倍の速さで右へ吹き飛んでいく。

が複雑に見えたのは、「」という基準がズレていたからだ。 基準を に取り直せば、ただの等比数列だった。特性方程式がしていることは、「原点をずらす」ことである。座標の原点を に移せば、数列は等比数列に見える。

ポイント

  • 特性方程式 で 。
  • が公比 の等比数列。

よくある間違い

  • 特性方程式を と書いてしまう。符号はもとの漸化式のまま()写す
  • の初項を としてしまう。等比になるのは なので、初項は
  • 最後に を戻し忘れて で終える。求めたのは であって ではない

問9数学的帰納法の枠組み

★ 基礎数学的帰納法

問題

すべての自然数 について が成り立つことを、数学的帰納法で証明せよ。

ヒントを見る

帰納法は 段構え。最初の 枚(最小の )を確かめる/『 番目で成り立つなら 番目でも成り立つ』を示す。 段目では仮定した式をどう使って次の式を作るかが焦点。

解答・解説

方針

数学的帰納法は 段階。(I) で成り立つことを確かめる。(II) で成り立つと仮定して、 でも成り立つことを示す。この つで、すべての自然数について言える。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 証明すべきは「すべての自然数 で成り立つ」こと。

自然数は無限にある。 つずつ確かめていては、永久に終わらない。そこで、 段構えの仕掛けを使う。

  • (I) で成り立つことを、実際に確かめる
  • (II) 「 で成り立つ」を仮定して、「 でも成り立つ」を導く

この つで、なぜ無限個が片づくのか。ドミノ倒しを思い浮かべよう。(I) は「 枚目を倒す」こと。(II) は「 枚目が倒れれば 枚目も倒れる」という仕組みを作ること。

仕組みができていれば、 枚目を倒すだけで、あとは勝手に全部倒れる。

「 段で、無限個を証明する。」 この論法の枠組みそのものを、まず掴んでほしい。

定理数学的帰納法:(I) で成立、(II) の成立を仮定して でも成立、を示せば全ての自然数で成立

(I) のとき。 左辺 、右辺 。成り立つ。

(II) を仮定する。 が成り立つとする。この両辺に、次の項 を足す。

右辺を でくくって整理する。

これは、もとの式で とした右辺 に一致する。よって でも成り立つ。

結論。 (I)(II) より、すべての自然数 で成り立つ。

P(1)P(2)P(3)P(4)P(k)…
数学的帰納法: P(1)が真 かつ「P(k)真ならP(k+1)真」→ ドミノのように全ての n で真

まとめ:数学的帰納法は「ドミノ倒し」。(I) 最初の 枚を倒し、(II) 枚目が倒れれば 枚目も倒れる、を示す。この つで全部倒れる(全部で成立)。仮定した式を使うところがヤマだ。

発展。 「たくさん確かめたから正しい」という推論は、数学では通らない。

その理由がよく分かる例がある。

オイラーの式。

から順に、値を出してみよう。

すべて素数だ。

でも ( 素数)。 でも ( 素数)。 でも ( 素数)。

から まで、 個すべてが素数になる。「これは、すべての で素数だ」と言いたくなる。だが、 で

素数ではない。

個の成功のあとに、あっさり反例が現れた。これが「実験は証明ではない」ということだ。

もっと極端な例もある。 ある予想は 以下のすべての数で成り立つのに、それより大きいところで破れることが証明されている(スキューズ数の話)。計算で確かめられる範囲では、反例は見つからない。

だからこそ、帰納法が要る。帰納法の (II) は「 で成り立てば でも成り立つ」という仕組みを証明する。仕組みさえ作れば、確かめていない先の無限個まで、まとめて保証できる。

「 万回試して大丈夫だった」は、数学では何も言っていないのと同じ。逆に、 行の帰納法は無限個を完全に押さえる。

これが、数学が「証明」にこだわる理由である。 実験で予想は立てられるが、すべての自然数で成り立つことを保証できるのは、証明だけである。

答

n=1 で成立、n=k の成立を仮定して n=k+1 でも成立を示す

別解

帰納法の (II) は、実は「階差の確認」にすぎない。この見方を知ると、帰納法の計算がずっと軽くなる。証明したい式の右辺を、関数と見る。

主張は「左辺の和 」だ。(II) で何をしているか、よく見てほしい。 で正しいと仮定すると、左辺の和は 。そこに新しい項 を足したものが、 になってほしい。

移項すれば、確かめるべきことはこれだけだ。

「右辺の階差が、足す項に一致するか」が、(II) の中身のすべてである。

実際に計算する。

共通因数 でくくる。

足す項 に、ぴったり一致した。あとは (I) の を確かめれば終わり。

この見方の強み。

  • やることが 行に決まる。 「 を計算して、足す項と比べる」だけ
  • 式が複雑でも迷わない。 でも、やることは同じ( の階差が になるか)
  • なぜ帰納法が使えるのかが見える。 「初項が合っていて、階差も合っている 全部合っている」というのは、階差型の漸化式そのものだ

そして、大事な但し書き。

帰納法は「確認」の道具であって、「発見」の道具ではない。 という式は、帰納法からは出てこない。

式は実験や工夫(逆順に足す、図で数える)から予想する。 帰納法はその予想を確定させる最後の一手である。

予想する道具と、確定させる道具。 つを両手に持って初めて、数学は進む。

ポイント

  • (I) の確認、(II) 仮定 → を示す。
  • 仮定した式に次の項を足して の形を作る。

よくある間違い

  • (II) で、証明したい の式を最初から使ってしまう(結論の先取り)。使ってよいのは の仮定だけ
  • の仮定を書かずに、いきなり の計算を始める。「仮定を、どこでどう使ったか」が見えない証明は減点される
  • (I) の確認を飛ばす。仕組み (II) だけあっても、 枚目のドミノが倒れなければ何も起きない

問10階差型(指数)

★ 基礎漸化式階差数列

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

足される量が なので、階差数列の型だ。積み上げる和が等比数列の和になる。和の上端が であることに注意。

解答・解説

方針

階差が 。 で 。この和は等比数列の和で計算する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、足し算だが、足す量が と急激に増える。

差が の式で書けている。 つまり階差型だ。

足す量を並べてみる。

この足す量そのものが等比数列になっている。

手順は階差型のまま。 初項から差を足し上げる。

違うのは、足し上げる中身だ。 前に見た階差型は の公式( 次式の和)を使ったが、今回は等比数列の和の公式を使う。「階差型の枠 等比の和」という、 つの道具の組み合わせである。

公式階差型 。階差が等比なら等比数列の和を使う

① 階差を確かめる。 。

② 和で一般項を出す()。 階差 の和は等比数列の和。

よって

③ を確認する。 で一致。

まとめ:階差が指数()のときは、階差の和が等比数列の和になる。()を正しく出すことが大事だ。

発展。 この数列は 倍ずつ増えるから、どこまでも大きくなる。

では、逆に「半分ずつ」ならどうなるか。

足しても足しても、増え方が小さくなっていく。 どこかで止まるのか、それとも無限に大きくなるのか。

部分和を計算してみよう。 等比数列の和の公式(公比 )で

に近づくが、決して を超えない。

無限個を足したのに、答えは有限。 これを無限級数の収束という(数学IIIで詳しく学ぶ)。この事実は 年前から人を悩ませてきた。

ゼノンのパラドックス。

アキレスが km 先の亀を追う。アキレスが km 進むと、亀は少し先へ。その地点に着くと、亀はまた少し先へ。

「追いつくには無限回の『追いかけ』が必要だ。だから永遠に追いつけない。」

どこがおかしいか。

各段階の時間を足すと

無限回の追いかけに、合計 時間しかかからない。

「無限に多くのステップ 無限に長い時間」ではない。 これがパラドックスの答えである。同じ数列 でも、向きによって正反対の性質になる。

  • 掛ける方向()→ 急激に大きくなって発散
  • 割る方向()→ 収束して有限

「 倍ずつ増える」と「 分の ずつ減る」。 同じ でも、掛ける向きでは発散し、割る向きでは有限の値に収束する。

答

別解

進法で見ると、答えがすぐに分かる。まず、数列を書き出そう。

この数たちを、 進法で書いてみる。

は「 が 個並んだ数」だ。

なぜそうなるか。 は 、つまり の累乗を 個ずつ集めたもの。 進法で書けば、各桁に が立つ。

ここからが本題だ。「 が 個」に、 を足すとどうなるか。

繰り上がりが連鎖して、桁が つ増える。 進法で となるのと、まったく同じ現象だ。

つまり

本解と同じ答え。 の計算を 度もしていない。

確かめる。 、

この見方が示すこと。

等比数列の和の公式

は、「 に を足すと 」の 進法版にすぎない。公式を暗記する代わりに、 進法の繰り上がりを思い出せばいい。

応用。 g、 g、 g、 g の分銅が 個ずつあると、 g から g までの重さをすべて量れる。

個の分銅()で、 から まで量れる。

しかも、量り方は 通りしかない( 進法表示が一意だから)。

コンピュータが 進法を使うのも、同じ理由だ。 ビットで から までを、重複なく表せる。

。 この数列は、 進法で全部の桁がうまった「満タン」の数を表している。

ポイント

  • 階差型 。
  • 階差が等比なら等比数列の和で計算。

よくある間違い

  • 和の上端を にして としてしまう。階差を足す回数は 回なので、上端は
  • 等比数列の和の初項を としてしまう。足すのは から なので、初項は
  • のように、和と一般項を混同する。和は であって ではない

問11等比型(分数の公比)

★ 基礎漸化式等比数列

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

公比が より小さい等比数列。一般項を書いたあと、初項も公比も の累乗であることを使うと、指数 つにまとまってきれいになる。

解答・解説

方針

公比 の等比数列。一般項に入れ、指数を整理する。 にそろえると指数が見やすい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) なので、毎回、半分になる。

公比が の等比数列だ。 公比が分数でも、型はまったく同じである。

書き出してみよう。

減っていくが、 にはならない。 半分にし続けても、いつまでも正の数が残る。

一般項は公式どおり。

これで答えは出ている。 だが、、 と、底を にそろえると、指数の足し算だけできれいに整理できる。

「底をそろえて、指数で比べる。」 指数計算の基本の作法だ。

公式 は公比 の等比数列。

① 一般項を書く。 初項 、公比 。

② 指数を でそろえる。 、。

まとめ:公比が分数でも手順は同じ。 のままでもよいが、 の累乗にそろえると とすっきりする。

発展。 「半分ずつ減る」数列は自然界のいたるところに現れる。

放射性物質の崩壊。

放射性炭素 は、 年ごとに量が半分になる。この 年を半減期という。

この問題と、まったく同じ漸化式だ。ここから、考古学の道具が生まれる。生きている生物は大気中の を取り込み続けるので、体内の濃度は一定に保たれる。死ぬと取り込みが止まり、あとは半分ずつ減っていくだけ。

だから、残っている の量を測れば、死んでからの時間が分かる。

  • 残り → 年前
  • 残り → 年前
  • 残り → 年前

残り なら、 年前だ。

放射性炭素年代測定と呼ばれるこの方法で、遺跡の年代が特定されてきた。ラスコー洞窟の壁画も、ツタンカーメンの棺も、この計算で年代が決まっている。なぜ「半分」が基準なのか。

にならないからだ。指数関数的な減少は決して に到達しない。 だから「全部なくなるまでの時間」は定義できない。

代わりに「半分になるまでの時間」を使う。 そしてこの時間はいつ測り始めても同じである( も も、同じ ステップ)。この「いつでも同じ」という性質が、時計として使える理由だ。

同じ構造は薬にもある。 血液中の薬の濃度も半減期に従って減る。「 日 回」という服用間隔は、この計算から決まっている。

。 この 行が 万年前の炭を「時計」に変えた。

答

(すなわち )

別解

「指数の部分だけ」を数列として見る。数列をすべて の累乗で書き直そう。

指数だけを取り出して、並べる。

ずつ減る、ただの等差数列だ。

指数の数列を とおく。 初項 、公差 だから

もとに戻す。

本解と同じ答え

確かめる。 で 、 で 、 で

なぜ、こんなにうまくいくのか。掛け算は指数で見ると足し算になる。

だから

「 倍する」が「指数から 引く」に言い換えられた。

これは、対数の考え方そのものである。

対数をとると、掛け算が足し算に、等比が等差に変わる。

この言いかえが役に立つ。

「 を 回掛ける」という掛け算の計算が、「 から ずつ引く」という足し算の計算になる。間違いようがない。

指数計算に自信がないときほど、この見方が助けになる。 指数だけを見れば、そこにあるのは中学生でも分かる等差数列だ。

掛け算と足し算は、別々の計算に見える。 対数を使うと、その つを行き来できる。

ポイント

  • 公比 の等比数列。
  • の累乗にそろえると指数が整理できる。

よくある間違い

  • としてしまう。逆数の累乗は で、指数の符号が変わる
  • の指数の足し算で、 を と符号を誤る
  • 公比が より小さいので「やがて になる」と考えてしまう。半分にし続けても にはならず、 に近づくだけ

問12特性方程式型(分数の係数)

★ 基礎漸化式特性方程式

問題

、 で定まる数列 の一般項を求めよ。

ヒントを見る

係数が分数でも『何倍かして定数を足す』型の攻め方は同じ。両辺から同じ数を引いて等比に直す。その数の見つけ方を思い出そう。

解答・解説

方針

特性方程式 を解いて 。 と変形し、 を公比 の等比数列とみる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、掛けて、足す形だ。 の形だ。

係数が分数でも、特性方程式型の手順は ミリも変わらない。

これを解くと 。

が公比 の等比数列になる。

「分数だから難しそう」と身構えないことだ。 が でも でも でも、やることは同じだ。不動点 を求めて、そこからのズレを追う。

型が同じなら、手順も同じ。 これを確認するのが、この問題の役目である。

重要係数が分数でも特性方程式は同じ。 の解 で

① 特性方程式を解く。 より 、。

② を引いて等比の形に。

③ 置きかえる。 とおくと公比 の等比数列。初項 。

④ に戻す。

まとめ:係数 でも流れは変わらない。特性方程式で を出し、 を公比 の等比数列とみる。 が大きくなると は に近づく(不動点に収束する)。

発展。 「どこから始めても、同じところに落ち着く」という性質は、数学の重要な定理につながっている。

電卓で実験してみよう。

好きな数を入れて(単位はラジアン)、 ボタンを何度も押す。

押し続けると、どんな数から始めても

に落ち着く。

これが の不動点だ。

(ドッティ数と呼ばれる)。

なぜ収束するのか。 この問題と同じ理屈である。不動点の近くで、 は距離を縮めるからだ()。

ズレが毎回縮む → 不動点に吸い寄せられる。

この問題では、縮む割合が だった。 の場合は約 倍。 未満でありさえすれば、必ず収束する。

これを縮小写像の原理(バナッハの不動点定理)という。この定理は現代数学のいろいろな分野で使われている。

  • 方程式の解の存在証明: 「解がある」ことを、繰り返しの収束から示す
  • 微分方程式の解の一意性: 解がただ つであることの根拠
  • GPS の位置計算: 繰り返し補正して、真の位置に収束させる
  • 機械学習: パラメータを繰り返し更新し、最適値へ近づける

「繰り返せば、答えにたどり着く」というのが、コンピュータが方程式を解く方法の基本だ。

を何度も繰り返すと に着く。 その素朴な事実の中に、数値計算のすべての原理が入っている。

答

(すなわち )

別解

「 に吸い寄せられていく」ことを、ズレの視点で見る。まず、実際に項を出してみよう。

に近づいている。 しかも、 との差がきれいに半分ずつになっている。

この という数は何を表すか。

「動かない値」だ。 もし なら

ずっと のまま。 これを不動点という。

ズレを追う。 とおくと

ズレは毎回きっかり半分。 初項は だから

不動点に足し戻す。

本解と同じ答え

この見方には利点がある。

さっき見た も、不動点は だった。 だが、そこではズレが 倍ずつ拡大し、数列は から吹き飛んでいった。

今回は、ズレが半分ずつ縮小する。 どんな初項から始めても、必ず に近づく。

どこから始めても、行き先は 。

係数 の大きさで、振る舞いが決まる。 と の違いが、「吸い寄せる」と「突き放す」の違いになる。

すり鉢の底に落ちるビー玉と、鉛筆の先で立とうとするビー玉。 同じ「不動点」でも、性格は正反対である。

ポイント

  • 分数係数でも特性方程式で を求める。
  • が公比 の等比数列。

よくある間違い

  • 特性方程式 の移項で を としてしまう。両辺を 倍して
  • の初項を のままにする。等比になるのは なので、初項は
  • の指数整理で とすべきところを と誤る。 を忘れない