数学B / 漸化式と数学的帰納法

漸化式と数学的帰納法 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 2倍角が生む周期3の数列
  2. 和と項の関係から比の畳み込みへ
  3. 不動点が2つある分数型漸化式
  4. 2乗の漸化式を対数で開く
  5. フィボナッチ数列の指数評価
  6. 漸化式が保つ性質(奇数・互いに素)
  7. 隣にしか動かせないハノイの塔
  8. 2乗で増える数列と単位分数の和

問12倍角が生む周期3の数列

最難関編数学的帰納法置き換えの発見

問題

数列 を 、 で定める。

(1) すべての自然数 について が成り立つことを、数学的帰納法で示せ。

(2) すべての自然数 について が成り立つことを示せ。

ヒントを見る

初項の形 が最大のヒントだ。 を漸化式に入れると は何になるか。角が毎回何倍になるかが見えれば、(2)は「7を法とした角の巡回」の話になる。

解答・解説

方針

漸化式 4a(1−a) はa=sin²φ とおくと 4sin²φcos²φ=sin²2φ となる。「2倍角の公式が形を変えたもの」だと見抜けば解ける。(1)は帰納法でこの置き換えを固定し、(2)は角が 2倍ずつ進むこと(π/7 → 2π/7 → 4π/7 → 8π/7)と sin²(8π/7)=sin²(π/7) で一周する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 漸化式 は、多項式のまま追うと2乗のたびに次数が倍増して破綻する。

手がかりは初項の形 だ。 とおいて漸化式に入れると

この漸化式は倍角の公式の変装で、角を2倍にする操作だった。すると と当たりがつき、(1)は帰納法で固定できる。(2)は角の列 が、 の値としては3歩で一周すること( が決め手)を見ればよい。

公式倍角: 。 より

① (1) を帰納法で示す。 : 。 で と仮定すると、 として

よって でも成り立ち、すべての で成立する。

② 角の一周((2)の決め手)。 だから

③ (2) を示す。 (1)より

ここで で、 は の整数倍だから の値を変えない。よって

すなわち数列は周期3で循環する(実際 は相異なるので、周期はちょうど3)。

まとめ: 「初項の形が置き換えを指名する」。 で始まる2次の漸化式は倍角の公式を言いかえたものだ、と気づけばよい。倍角=角の2倍化、周期性=(mod 7)という2つの性質が、ひとつの数列の上で重なっている。

発展。 巡回する3つの値 の和はちょうど になる( から)。また、写像 はロジスティック写像と呼ばれ、ほんの少し初期値をずらすと軌道が指数的に離れていく「カオス」の代表例。 の置き換えを使うと、そのカオスの中にある規則的な軌道(周期3)を見つけられる。

答

(1) 帰納法+倍角の公式(証明) (2) から周期3(証明)

別解

指数を で割った余りで追う(巡回する理由)。 角の分子だけを見ると、列は と倍々に進む。ここで の値は を で割った余りだけで決まる( が 増えると角は 増え、)。

π72π74π78π7xyO
角は毎回2倍: π/7 → 2π/7 → 4π/7 → 8π/7。8π/7 は π/7 の対蹠点(π+π/7)なので sin² は同じ値に戻る=3歩で一周

だから見るべきは を で割った余りの列:

だから、余りは の3周期で巡回する。これがそのまま だ。

(2)の「周期3」は、 を法とした の位数が だという整数の事実から来ている。三角関数の問題に見えるが、中心にあるのは合同式だ。整数の単元で学ぶ「 の余りの周期」と、まったく同じものが動いている。

ポイント

  • で (倍角の変装)。
  • 帰納法で 。
  • から周期3。

よくある間違い

  • (2)を数値の近似で「ほぼ同じ」と述べる。 は と による厳密な等式。
  • 帰納法の段で、角の対応( が になる)を書かずに式だけ進める。
  • 「周期はちょうど3」と主張するのに が相異なることの確認を落とす(問題の要求が「」だけなら不要だが、「周期3」と言い切るなら要る)。

問2和と項の関係から比の畳み込みへ

最難関編和と一般項比の畳み込み

問題

数列 は で、初項から第 項までの和 が

を満たす。一般項 を求めよ。

ヒントを見る

和の条件はまず で項だけの式に。出てきた漸化式は等差型でも等比型でもない。隣どうしの「比」が の式になる形だ。比を から順に掛け合わせると何が起きるか。

解答・解説

方針

S_n の関係式は S_n−S_{n−1}=a_n で漸化式に直すのが基本だ。整理すると (n−1)a_n=(n+1)a_{n−1} という「比の形」の漸化式になり、a_n/a_{n−1}=(n+1)/(n−1) を掛け連ねる(畳み込む)と間が約分されて一般項が出る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) と の混ざった条件は、()で を消すのが第一手だ。

整理すると、係数に の入った漸化式 が現れる。定数係数でないから特性方程式は使えない。だが比の形 に直せば、 から順に掛け連ねて(畳み込んで)間が約分される。階差の「足し込み」の、掛け算版だ。

重要 の関係式は で項の式へ。 型は比を掛け連ねて畳む(分子と分母がずれて約分される)

① 漸化式に落とす。 で

② 比を畳み込む。 (帰納的に正)として

で掛け連ねると

(分子の が分母と約分され、分子の末尾2つ と分母の先頭2つ だけが残る。)

③ 一般項と検算。 より

( でも で成立。)検算: 。たしかに条件を満たす。

まとめ: 「 を消す → 比の形 → 掛けて畳む」。係数に が入る漸化式では、差(階差)で畳むか比で畳むかの2択がまず頭に浮かぶべきで、両端に何が残るかを丁寧に数えるのが、畳み込みの基本だ。

発展。 漸化式 の両辺を 側で見ると、 となる。つまり が保存量(どの でも同じ値 )になっている。畳み込みで一般項を求めたことは、この保存量を見つけたことと同じである。「掛けて畳む」漸化式はしばしば「何かで割ると一定」の形に言い換えられる。

答

別解

値を並べて予想し、帰納法で確定する(手を動かすルート)。 関係式から前へ前へと計算できる。 を について解くと

から順に: 、、。 と並び、三角数だ。そこで と予想し、帰納法で確定する: が で正しければ で、

予想がそのまま再生産され、帰納が閉じる。比の畳み込み(本解)は一般項を「導出」し、予想+帰納法は「言い当てて検証」する。どちらも答案として完全だが、値を数個計算して形を見る癖は、初手が見えないときの命綱になる。

ポイント

  • で 。
  • 比 を掛け連ねて 。
  • 検算: 。

よくある間違い

  • を にも使う( は存在しない。 で使い、 は初項で別に確認)。
  • 畳み込みで残る項を数え違える。分母に残るのは先頭の 、分子に残るのは末尾の 。
  • の断りなしに比をとる(全項正が帰納的に言えることを一言)。

問3不動点が2つある分数型漸化式

最難関編分数型漸化式不動点

問題

数列 を 、 で定める。

(1) とおくとき、 が等比数列であることを示せ。

(2) 一般項 を求めよ。また、 を求めよ。

ヒントを見る

まず を解いて「動かない値」を求めてみる。2つ出てくるはずだ。1つなら逆数の置き換えだったが、2つのときは何をとると等比になるか。誘導の の形が答えを言っている。

解答・解説

方針

分数型漸化式の不動点(x=(4x−2)/(x+1) の解)は x=1, 2 の2つ。不動点が2つのときは「両方からのずれの比」b_n=(a_n−1)/(a_n−2) をとると等比になる、が基本だ。分子・分母それぞれを漸化式で計算すると公比 3/2 が現れる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分数型漸化式の決め手は不動点(その値から動かない )だ。 を解くと 、つまり の2つ。

不動点が1つなら「ずれの逆数」で等差化する。2つあるときは「2つの不動点からのずれの比」 をとると等比数列になる。これがこの型の基本の方法だ。

分子 と分母 を別々に漸化式で計算すれば、共通の分母 が約分されて公比が現れる。

重要分数型漸化式は不動点で分類: 不動点2つ()なら が等比、1つ(重解)なら が等差

① 分子と分母を計算する((1))。

辺々割ると( は から帰納的に保たれる)

よって は公比 の等比数列。

② 一般項((2)前半)。 だから 。 を について解くと 。分子分母に を掛けて整理すれば

③ 極限((2)後半)。 分子分母を で割ると

数列は不動点のうち に吸い込まれていく( が に対応)。

まとめ: 「不動点を先に求めて型を判定する」。2つなら比 、1つなら逆数を使う。極限が不動点の一方に落ちることまで含めて、分数型漸化式の全体像が1問に収まっている。

発展。 公比 は偶然ではない。一般に の不動点が のとき、 の公比は になる(本問は )。しかも極限は、公比の絶対値が1より大きければ 側、小さければ 側の不動点に落ちる。不動点と公比だけで、数列の振る舞いが分かる。

答

(1) (公比 ) (2) 、極限は

別解

分子と分母を別々の数列にする(線形化の仕組み)。 と分数のまま持ち、分子・分母を別々に更新してみる。

だから ()という連立の線形漸化式が取り出せる。和と差の要領でうまい組合せを探すと

つまり 、(初期値 の等比)。この2本から を復元すれば、本解と同じ一般項に着く。仕組みはここから分かる。本解の は、2つの等比数列の比にほかならない。だから公比は 。分数型漸化式の裏では、いつも連立線形漸化式が回っている。

ポイント

  • 不動点 → が等比(公比 )。
  • 。
  • 極限は不動点の一方 。

よくある間違い

  • 不動点を求めずに誘導の を天下りに使い、「なぜこの形か」を説明できない。
  • から へ戻す変形( を について解く)で符号を誤る。
  • 極限で を に対応させてしまう。 が発散するのは分母 、つまり のとき。

問42乗の漸化式を対数で開く

最難関編対数化特性方程式

問題

数列 を 、 で定める。一般項 を求めよ。

ヒントを見る

が の2乗に比例する。掛け算と累乗の混ざった漸化式を、足し算と掛け算の漸化式(見慣れた型)に変換する道具は何か。全部の項が正であることを確かめてから使うこと。

解答・解説

方針

2乗が入る漸化式は、そのままでは追えないが全項が正なので対数がとれる。b_n=log₂a_n とおくと b_{n+1}=2b_n+1 となる。特性方程式型の1次漸化式に変わり、b_n+1 が等比になって b_n=2ⁿ−1。指数に戻して完成。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は2乗のせいで、繰り返すと指数が雪だるま式に増える。多項式的な変形では追えない。

だが右辺は積と累乗だけでできている。積・累乗を和・積に変える道具は対数だ。全項が正( から帰納的に明らか)だから、 とおけて

見慣れた特性方程式型に変わった。あとはいつもの手順で解いて、最後に指数の形へ戻せばよい。

重要積と累乗だけの漸化式は対数で「1次の漸化式」に開く(全項が正であることの確認が前提)。 は が等比

① 正であることと対数化。 で、 なら となるので、帰納的に全項正。 とおくと

② 特性方程式型を解く。 より 。 だから は初項 、公比2の等比数列:

③ 指数に戻す。

検算: 、、。

まとめ: 「積・累乗の漸化式は対数で開く」。変換すれば教科書の特性方程式型になり、戻せば という二重指数になる。増え方の桁が違う数列(、…)でも、対数をとれば一度に説明できる。

発展。 は二重指数で、桁数そのものが毎回ほぼ倍になる( は約 桁)。「2乗する漸化式は情報量(桁数)を倍にする」。この増え方は、方程式の数値解法(ニュートン法)が1回の反復で正しい桁数を倍にしていく「2次収束」と同じリズムだ。

答

別解

指数だけを追って帰納法(対数を使わないルート)。 数項を計算して、 の指数に注目する:

指数は と並び、どれも「 のべき 」だ。そこで と予想して帰納法にかける:

指数の計算 だけで帰納が閉じる。対数化(本解)は「なぜ特性方程式型になるのか」まで説明できる基本の方法、指数の帰納法は予想さえ立てば最も短い別の道だ。 という本解の中間結果が、こちらでは指数の列としてじかに見えている。

ポイント

  • 全項正を確認して 。
  • → 。
  • (二重指数の増え方)。

よくある間違い

  • 対数をとる前に「全項が正」の確認を書かない(対数化の前提)。
  • の展開で の2倍を落とす、または を忘れる。
  • から と書く(指数の位置のミス。 の肩に全体が乗る)。

問5フィボナッチ数列の指数評価

最難関編数学的帰納法2段仮定

問題

数列 を 、 で定める。すべての自然数 について

が成り立つことを、数学的帰納法で示せ。

ヒントを見る

3項間の漸化式に、1段仮定の帰納法は噛み合わない。何段仮定すればよいか。仮定を漸化式に入れたあと、共通因数をくくり出すと、示すべきことが「ただの数の大小比較」1つにまとまる。

解答・解説

方針

漸化式が2項前まで使うので、帰納法も「n=k と n=k+1 の両方を仮定して n=k+2 を示す」2段仮定型にする(出発点も n=1,2 の2つ)。仮定を足すと (7/4)^{k+1}+(7/4)^k = (7/4)^k·(11/4) となる。これが (7/4)^{k+2} 以下になるかどうかは、11/4 と 49/16 の比較に帰着する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は2項前までを使う漸化式。だから帰納法も「 の両方を仮定して を示す」2段仮定型が噛み合う(出発点の確認も の2つ必要)。

仮定を漸化式に入れると 。共通因数 をくくれば、示すべきことは

というただの数の比較1つにまとまる。。この1点の余裕が帰納の歯車を回す。

重要3項間漸化式の評価は2段仮定の帰納法(出発点2つ+2つの仮定)。仮定代入後は共通因数をくくり、定数の比較にまとめる

① 出発点。 、。

② 帰納の段。 ある で と をともに仮定する。漸化式より

③ 定数の比較で締める。 だから

よって でも成立。①②③より、すべての自然数 で 。

まとめ: 「漸化式が2項使うなら、仮定も2つ・出発点も2つ」。帰納法の設計は漸化式の形が決める。締めの比較 は (黄金比)で成り立つ。 がぎりぎりではなく少し余裕のある定数であること、そして黄金比がフィボナッチの真の成長率であることが、この1行から分かる。

発展。 同じ設計図を逆向きに使うと、下からの評価も作れる。 は ()を満たすから、 が回り、。フィボナッチ数列は と の指数関数ではさまれ、真の成長率はその間の黄金比 ()になっている。

答

証明(2段仮定の帰納法。決め手は すなわち )

別解

黄金比で「ぴったり回る」評価を作る(なぜ で通るかの理由)。 もっと強い不等式も同じ方針で証明できる。(黄金比、)として

出発点: 、。帰納の段:

が等号で成り立つから、評価が一切緩まずに回る。これが黄金比の特別さだ。あとは から で、元の不等式が従う。

本解の比較 が成り立つ境目こそ 。 という定数は「黄金比より少し大きいから通る」。問題の裏にある本当の境界線が、この別解で分かる。

ポイント

  • 2段仮定の帰納法(出発点は )。
  • 共通因数をくくって にまとめる。
  • を満たす なら同じ証明が通る(黄金比が境目)。

よくある間違い

  • 1段仮定で書き、 の に仮定が使えず詰まる(2項使う漸化式には2段仮定)。
  • 出発点を しか確認しない(2段仮定の帰納法は出発点も2つ)。
  • を と指数を足してしまう(和は指数法則の対象外。共通因数でくくる)。

問6漸化式が保つ性質(奇数・互いに素)

最難関編数学的帰納法不変性

問題

数列 を 、、 で定める。

(1) すべての項が奇数であることを示せ。

(2) 隣り合う2項 は互いに素であることを示せ。

ヒントを見る

(1) 漸化式を偶奇(2で割った余り)だけに注目して読むと、各項の偶奇はどう決まっていくか。(2) 隣接2項の公約数 は漸化式を逆向きに使うと、1つ前のペアについて何を割り切るか。降りていった先に何があるか。

解答・解説

方針

(1)は偶奇だけを追う帰納法で示す。4a_{n+1} は偶数なので、a_{n+2}=4a_{n+1}−a_n の偶奇は a_n と同じになる(偶数−奇数=奇数)。(2)は互除法と同じ考え方で解く。d が a_{n+2} と a_{n+1} を割るなら a_n=4a_{n+1}−a_{n+2} も割る。公約数が階段を1段ずつ降りて、最後は gcd(a₂,a₁)=1 に突き当たる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (1)は値でなく偶奇だけを追えばよい。 はつねに偶数だから、 の偶奇は の偶奇だけで決まる(偶−奇=奇)。出発点の2つが奇数なら、奇数であることが遺伝していく。

(2)は互除法の精神だ。隣接2項の公約数 は漸化式を と逆向きに読むと、1つ前のペア の公約数でもある。つまり公約数は階段を1段ずつ降りる。最後に に突き当たって、 が確定する。

重要漸化式の性質証明は「性質が漸化式で遺伝するか」を見る。公約数は漸化式を遡っても保たれる(整数係数の線形漸化式の互除法)

① (1) 偶奇の帰納法。 はともに奇数。 が奇数と仮定すると

よって2段仮定の帰納法により、すべての項が奇数である。

② (2) 公約数を降ろす。 を と の正の公約数とする。漸化式から

で、右辺は の倍数の差だから 。つまり は の公約数でもある。

③ 底に突き当てる。 ②を繰り返すと、 は の公約数まで降りる。 だから となる。すなわち、どの隣り合う2項も互いに素である。

まとめ: 帰納法は「性質の遺伝」を確かめる道具である。(1)は偶奇が、(2)は公約数が、漸化式の階段をどう伝わるかを見た。とくに(2)の「公約数を漸化式で1段ずつ降ろして初期値に突き当てる」論法は、整数係数の漸化式全般で使える有効な型だ。

発展。 別解の恒等式 は、隣接2項のペア が双曲線 の上の格子点を渡り歩いていることを意味する。 のように、漸化式は「曲線上の格子点を次々生む機械」でもある。ペル方程式(整数の単元)で、同じ形をもう一度見ることになる。

答

(1) 2段仮定の帰納法(偶奇) (2) 公約数が漸化式を遡って に到達する(証明)

別解

不変量を使う(2つの小問がつながる)。 この漸化式には、変わらない量が隠れている。 とおいて、1歩進めてみる:

(展開すると と などが打ち消し合う。)つまり は不変量で、 から

ここから(2)がすぐに出る。 が と をともに割るなら、左辺は の倍数、よって 、。

ここで から言えるのは だけだ(2を割り切る平方数は1だけ)。さらに(1)の「全項奇数」を使えば、 かつ が奇数であることからも が出る。(1)の偶奇と(2)の互いに素が1本の恒等式で結びついている。

漸化式で「変わらない量」を探す見方は、この単元でよく使う考え方のひとつだ。カッシーニの恒等式(フィボナッチの )と同じ種類の議論である。

ポイント

  • 偶奇: 偶(4a)−奇(a)=奇 が2段仮定で遺伝。
  • なら 。
  • 降りた先 で 。

よくある間違い

  • (1)で「偶数 から奇数 を引くと偶数」と符号の錯覚をする(偶 奇 奇)。2で割った余りの表で確かめればすぐに分かる。
  • (2)の降下の向きを取り違える。必要なのは「」(遡る向き)で、根拠は 。
  • (1)の偶奇の帰納で、出発点を だけにする( の偶奇は に依存するので、奇数番と偶数番の2系列とも出発点が要る)。

問7隣にしか動かせないハノイの塔

最難関編漸化式を立てる操作の分解

問題

3本の杭 A, B, C がこの順に一列に並び、杭 A に大きさの異なる 枚の円盤が大きい順に積まれている。円盤は1回に1枚だけ動かせ、隣り合う杭にしか移動できず(A↔B、B↔C のみ)、小さい円盤の上に大きい円盤を置くことはできない。 枚すべてを杭 A から杭 C へ移すのに必要な最小の手数を とする。

(1) ()が成り立つことを示せ。

(2) を求めよ。

ヒントを見る

いちばん大きい円盤はいつ・どこへ動けるか。隣接制限の下では C へ一足飛びに行けない。最大円盤が動く瞬間、残りの 枚はどこに退避していなければならないか。その退避と復帰は、それぞれ「小さいハノイの塔」1回分ではないか。

解答・解説

方針

最大の円盤の動きに注目して操作全体を分解する。最大円盤は A→B→C と2回動くしかなく、その前後で上の n−1 枚が「A→C」「C→A」「A→C」と3回の完全な引っ越しをする。これで a_n=3a_{n−1}+2 が立つ。解くのは特性方程式型で 3ⁿ−1。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 操作列を正面から数えるのは不可能だ。最大の円盤の動きを軸に全体を分解するのが、漸化式を立てる基本になる。

隣接制限があるから、最大円盤は と一足飛びには動けず、 と最低2回動く。そして最大円盤が動く瞬間には、残り 枚がすべて「今いる杭でも行き先でもない杭」に退避していなければならない。

追いかけると、 枚は 、、 と3回の完全な引っ越しを強いられる。これが となる理由だ。

重要漸化式を立てる型: 「最大(最後・最外)の要素の動き」で場合を骨組みし、残りを同じ問題の小さい場合として数える

① 下からの評価(必要性)。 どんな最短手順でも、最大円盤が と動く直前、上の 枚はすべて杭 C にある(A は最大円盤の下、B は行き先だから空でなければならない)。ここまでに 枚の A→C の引っ越し(最小 手)が済んでいる。次に最大円盤が と動く直前、 枚はすべて杭 A に戻っている必要がある(C→A の引っ越し、最小 手)。最後に 枚を A→C へ( 手)。最大円盤自身の2手とあわせて

② 上からの評価(実現可能性)。 逆に、「 枚を A→C → 最大を A→B → 枚を C→A → 最大を B→C → 枚を A→C」という手順は制約をすべて守り、ちょうど 手。よって 。①②から

③ 解く((2))。 (A→B→C)。特性方程式 より : で は初項 、公比3の等比数列。

まとめ: 「最大の円盤がどう動くか」で操作全体が3つの子問題+2手に割れる。漸化式は数式でなく操作の構造から立てるものだ。この最小手数 は、実は全円盤配置 通りをすべて1回ずつ通る手順になっている(だから1手も無駄にできない)。

発展。 個の配置を頂点、合法手を辺としたグラフを描くと、シェルピンスキーの三角形(自己相似のフラクタル)が現れることが知られている。隣接制限ハノイの最短手順はその三角形の一辺を端から端までなぞる道にあたる。ちなみに通常ルール(どの杭へも動かせる)なら最小手数は で、制限によって手数が 型から 型へ増える。

答

(1) 最大の円盤を2回動かす分解(証明) (2)

別解

「全部の配置を通る」ことから直接数える(状態の視点)。 円盤 枚の置き方は、各円盤がどの杭にいるかで決まり(同じ杭の中では大きい順が強制される)、全部で 通り。1手動かすごとに配置は1つ変わる。

そこで次を帰納法で示す: 最短手順は 通りの配置をすべてちょうど1回ずつ通る(だから手数は )。

枚で正しいとする。 枚の最短手順は本解の3幕構成で、第1幕(最大が A にいる間)は上の 枚が全 配置を1回ずつ通り、第2幕(最大が B)、第3幕(最大が C)も同様。最大円盤の位置が3幕を区別するから、全体で 配置をちょうど1回ずつ通る。手数は配置数より1少ない 。

漸化式を解く(本解)代わりに、「手数=通る配置の数 」という対応で答えが直接出た。1手も無駄にできない(同じ配置に二度戻れない)ことまで、おまけで証明されている。

ポイント

  • 最大円盤は A→B→C の2回、その合間に 枚が3回引っ越す。
  • 下からと上からの両評価で 。
  • → 。

よくある間違い

  • 隣接制限を忘れて、通常のハノイの塔()と混同する。
  • 「この手順で 手で運べる」(上からの評価)だけを示し、それより少ない手数では不可能なこと(下からの評価)を落とす。「最小の手数」の証明は両側が要る。
  • 特性方程式 の解 を使う場面で、 を等比としてしまう(正しくは )。

問82乗で増える数列と単位分数の和

最難関編部分分数望遠鏡式

問題

数列 を 、 で定める。

(1) が成り立つことを示せ。

(2) を示し、 がすべての で成り立つことを確かめよ。

ヒントを見る

漸化式の両辺から1を引いてみると、右辺がきれいに因数分解できないか。その積の形を逆数にすると、 が「引き算の形」に割れる。和が消えていく仕掛けはそこにある。

解答・解説

方針

漸化式を a_{n+1}−1=a_n(a_n−1) と変形すると、「次の項−1」が「今の項×(今の項−1)」という積に割れる。逆数をとると 1/a_n が差の形に分かれて(部分分数)、和が望遠鏡式に消えていく。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 数列は と急激に増える。一般項は望めない。だが問われているのは逆数の和だ。

漸化式の両辺から1を引いてみる:

「次の項 」が「今の項 × (今の項 )」に因数分解された。積の逆数は部分分数で差に割れる。 が「隣り合う量の差」にほどけて、和が望遠鏡式に消える寸法だ。

重要漸化式の変形 が部分分数 を生む(積に割れたら逆数は差に割れる)

① (1) を示す。 上の変形から

( が帰納的に成り立つので分母は0にならない: なら 。)

② (2) 望遠鏡和。 (1)を から まで足すと、間が消えて

(。)

③ 1未満であること。 より だから

実際 となり、和は1にどこまでも近づくが決して届かない。

まとめ: 「漸化式を引き算して因数分解 → 逆数を部分分数に → 望遠鏡」。この数列(2, 3, 7, 43, …)は「逆数の和が最速で1に迫る」ことで知られる有名な数列で、各項が『それまでの積+1』になっている( も同じ変形から示せる)。

発展。 この数列(シルベスター数列)は「単位分数の和で1に迫る最速の列」として知られる。残りの隙間は で、 が2乗のオーダーで増えるため、正しい桁数が毎回ほぼ倍増しながら1へ収束する。しかも各ステップで選んでいるのは「足しても1を超えない最大の単位分数」で、貪欲法そのものだ。

答

(1) による(証明) (2) 望遠鏡和で

別解

「それまでの積 」を中心に考える(積の恒等式ルート)。 決め手の変形 を繰り返し使うと、 がさらに割れていく:

(。)つまりこの数列は「次の項 それまでの積 」で成長している(、)。すると逆数の和は、帰納法で

と書ける(: 。 を足すと分母が更新される)。 だから、本解の式と完全に一致する。

部分分数(本解)は機械的に強く、積の恒等式は数列の設計思想(積 )まで見せてくれる。 が1へ非常に速く近づく理由は、分母が毎回「それまでの積」で膨らむからだ。

ポイント

  • の因数分解がすべての出発点。
  • (部分分数)。
  • 望遠鏡和 。

よくある間違い

  • (1)の通分 の分子を と誤る(分子は )。
  • 望遠鏡和で残る項を取り違える。先頭は 、末尾は 。
  • (分母が正で0でない)の帰納的確認を飛ばして部分分数を使う。