数学A / 図形の性質

図形の性質 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 中点連結定理
  2. 角の二等分線と辺の比
  3. 三角形の重心
  4. 内接円と接線の長さ
  5. 外心と中心角
  6. チェバの定理
  7. メネラウスの定理
  8. 円周角の定理
  9. 円に内接する四角形
  10. 接弦定理
  11. 方べきの定理
  12. オイラーの多面体定理

問1中点連結定理

★ 基礎中点連結定理平行線と比

問題

で、辺 、 の中点をそれぞれ 、 とする。

ABCMNMNBC
M・N は AB・AC の中点。MN は BC と平行で長さは半分

(1) のとき、 の長さを求めよ。

(2) のとき、 を求めよ。

ヒントを見る

、 はどちらも「まん中」の点だ。まん中どうしを結んだ線は、向かいの辺 とどんな関係になっているか、図でよく見てみよう。長さと向きの2つに注目。

解答・解説

方針

2辺の「中点どうし」を結んだ線 に注目する。この線には、いつも決まった性質がある。まず図で、 と の位置を見くらべよう。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「 辺の中点を結ぶ」と聞いたら、中点連結定理を思い出す。

結論は つある。 「平行になる」と「長さが半分になる」は、どちらも使うので、セットで覚えたい。(1)は長さの話。 なら 。同じ長さにしないこと。

(2)は角の話で、ここで平行のほうを使う。 なので、直線 が 本の平行線を横切る形になる。同位角は等しいから

平行が見えたら、同位角・錯角を探す。

定理中点連結定理:三角形の2辺の中点を結ぶと、残りの辺と平行になり、長さはその半分

、 は辺の中点なので、この定理がそのまま使える。

(1) は の半分。だから

(2) だった。平行な2直線に が斜めに交わっているので、同じ位置にできる角(同位角)は等しい。

と は同位角だから

発展。 中点連結定理には、意外な応用がある。

どんな四角形でも、 辺の中点を結ぶと平行四辺形になる。(ヴァリニヨンの定理)

証明は中点連結定理だけでできる。四角形 の対角線 を引くと、 の中点連結から「 の中点と の中点を結んだ線分は に平行で長さは半分」。 でも同じことが言えるので、向かい合う 辺が平行で長さも等しい。これは平行四辺形の条件そのものだ。

元の四角形がどんなにいびつでも(へこんでいても、ねじれた四角形でも)中点を結べば必ず平行四辺形になる。この性質はどんな四角形でも例外なく成り立つ。

中点は図形を「ならす」働きを持つ。 ばらばらな四角形から、整った平行四辺形が現れる。 つの定理から、このような整った性質が導ける。

答

(1) (2)

別解

中点連結定理を「相似」から作り直してみよう。 定理を丸暗記せずに済むし、なぜ「半分」になるのかが腑に落ちる。

と を比べる。

  • は共通
  • は の中点だから
  • は の中点だから

辺の比が等しく、そのあいだの角が共通である。これは相似条件そのものだ。

相似が言えれば、あとは全部ついてくる。

  • 対応する辺の比が → 、つまり
  • 対応する角が等しい → (平行を経由しなくても、直接出る)
  • ついでに も、同位角が等しいことから言える

中点連結定理は相似比 の相似の言いかえである。ベクトルで見ると、さらに短く済む。

となる。この 本の式が「平行(向きが同じ)」と「長さが半分」の両方を同時に言っている。

ここにベクトルの利点がある。 図形の つの結論(平行と長さ)が、 つの等式に圧縮された。数Cで学ぶベクトルはこういう「まとめて言う」力を持っている。

逆も成り立つ、というのも大事だ。 「 が の中点で、 なら、 は の中点」となり、平行から中点が言える。台形の面積を求めるとき、この逆向きの使い方が役に立つ。定理は逆も使えるかどうかを必ず確かめておく。

ポイント

  • 中点どうしを結んだ線は向かいの辺と「平行 + 長さ半分」の2点セット。
  • 平行が言えると、同位角・錯角で角度の問題にもつながる。

よくある間違い

  • を と同じ長さにしてしまう間違いが多い。半分になる
  • (2)で と が「同位角」であることを確認せず、 から引いてしまう
  • 中点連結定理を「平行」だけ、または「長さ半分」だけで覚える(結論は2つセット)

問2角の二等分線と辺の比

★ 基礎角の二等分線辺の比

問題

で 、、 とする。 の二等分線が辺 と交わる点を とする。

●●ABCD6432
∠A の二等分線 AD。BD:DC = AB:AC = 6:4

(1) を求めよ。

(2) の長さを求めよ。

ヒントを見る

は を2つに分けている。その分け方は から出ている2本の辺 と の長さの比と同じになる。まず と の比を書いてみよう。

解答・解説

方針

を半分に切った線が、向かいの辺 をどんな比で分けるか。この比は から出ている2辺 、 の長さで決まる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「角の二等分線が対辺と交わる」という形を見たら、角の二等分線と辺の比の定理を使う。

「 側の切れ端 : 側の切れ端 を含む辺 : を含む辺」。 対応関係を、同じ側の文字どうしで覚えるのがコツだ。

比を逆にしないこと。 のそばの には、 を含む辺 が対応する。(2)は を に分けるだけ。

定理角の二等分線と辺の比: の二等分線は向かいの辺 を に分ける()

(1) 、 なので

(2) を、 に分けた「 のほう」が だ。全体を 個分と考えると、 はそのうち 個分。

発展。 面積比で証明した経験は、そのままチェバの定理へつながる。

チェバの定理( 本の線が 点で交わる条件)

も、面積比を 回使うだけで証明できる。「頂点を共有する 三角形の面積比 底辺の比」を、 つの辺で繰り返すのだ。この単元の定理は、ほとんどが「面積比」か「相似」に還元できる。

  • 角の二等分線と辺の比 → 面積比
  • チェバの定理 → 面積比
  • メネラウスの定理 → 相似(または面積比)
  • 方べきの定理 → 相似
  • 中点連結定理 → 相似

バラバラな定理を暗記するのではなく、 つの道具(面積比と相似)に還元して理解する。 そうすれば、忘れてもその場で作り直せるし、見たことのない問題にも手が出る。

幾何の定理は覚えるものではなく、導けるようになるものである。

答

(1) (2)

別解

この定理は面積を 通りに表すだけで証明できる。 証明が分かれば、比の向きを二度と間違えない。 と の面積比を、 つの方法で計算する。

方法1: 底辺を 、 と見る。この つの三角形は頂点 を共有している。だから を底辺と見たときの高さが同じ( から直線 に下ろした垂線の長さ)。高さが同じなら、面積比は底辺の比。

方法2: をはさむ 辺で計算する。 は の二等分線だから、(この角を とする)。面積公式()を使うと

も も共通なので、約分して

つの方法で、同じ面積比を計算した。だから

定理が証明された。 という比の向きも、この証明を追えば自然に決まる。 の側には、 と が両方入っているからだ。

「同じ量を 通りに表して等式を作る」 のは、図形問題でよく使う手筋のひとつである。面積を 通りに書く、長さを 通りに書く、角を 通りに書く。 つのものを 通りに表せたら、そこに等式ができる。

外角の二等分線でも似た定理が成り立つ。 の外角の二等分線が直線 と交わる点を とすると

(ただし は線分 の外側にあり、外分点になる。) 内角の二等分線が内分し、外角の二等分線が外分する。内分と外分が対応している。この 点を直径の両端とする円が、次に学ぶアポロニウスの円になる。

ポイント

  • 二等分線が向かいの辺を分ける比 = はさんでいる2辺の比。
  • 比が出たら、全体の長さ ÷(比の合計)× 自分の取り分 で実際の長さになる。

よくある間違い

  • を と逆にしてしまうミス。 側には が対応する
  • (2)で比 をそのまま長さにしてしまう( を に分けるので )
  • という条件を使い忘れる((1)の比だけでは長さは決まらない)

問3三角形の重心

★ 基礎重心中線

問題

の3本の中線の交点を とする。辺 の中点を とする。

GABCM21
重心 G は中線を 2:1 に分ける(AG:GM = 2:1)

(1) 中線 のとき、 と の長さを求めよ。

(2) のとき、中線 の長さを求めよ。

ヒントを見る

重心 は中線 を2つに分けている。頂点 に近いほうと、辺 に近いほうでは、長さの比が決まっている。図の と を見くらべてみよう。

解答・解説

方針

は3本の中線が集まる点(重心)だ。重心は中線を、いつも決まった比で分ける。頂点側と辺側、どちらが長いかに注目。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 重心について覚えることは、 つだけでよい。

重心は中線を頂点側から に分ける。 頂点に近いほうが 、辺に近いほうが なので、頂点側が長い、と覚える。(1) 中線 は つぶんにあたる。 つぶんは だから

(2) は つぶん。 つぶんは で、 は つぶんだから 。

比を「何個ぶん」で考えると、行き来が楽になる。 は全体の 、 は である。

定理重心:三角形の3本の中線は1点(重心 )で交わり、 は各中線を頂点側から に分ける

つまり 。頂点 に近いほうが長く、辺の中点 に近いほうが短い。

(1) を に分ける。合計は 個分。

(2) は全体の にあたる。 なので、全体 は

発展。 三角形には、重心のほかにも「 本の線が 点で交わる」点がいくつもある。五心と呼ばれる。

  • 重心(): 本の中線の交点。三角形の面積の中心
  • 外心(): 辺の垂直二等分線の交点。 頂点から等距離 → 外接円の中心
  • 内心(): 角の二等分線の交点。 辺から等距離 → 内接円の中心
  • 垂心(): 本の垂線の交点
  • 傍心: 外側にできる円の中心( つある)

どれも「 本が 点で交わる」という、当たり前ではない事実を含んでいる( 本の直線は普通、三角形を作ってしまう)。さらに、次の定理がある。

重心 、外心 、垂心 は、必ず同じ直線上に並ぶ。 しかも という決まった比で。この直線をオイラー線という。 世紀の数学者オイラーが発見した定理だ。

どんな三角形を描いても(細長くても、ひしゃげていても)、 つの中心が必ず一直線に並ぶ。実際に定規で描いて確かめてみてほしい。この性質は三角形の形によらず成り立つ。

答

(1) (2)

別解

なぜ なのか。 その理由を つの角度から見よう。 つは物理の目、もう つは座標の目である。

見方1: 重心は「つり合いの点」。三角形の つの頂点に、同じ重さのおもりを 個ずつ置く。この 点の重さがつり合う点が、重心だ( という文字も、重心を表す言葉の頭文字である)。

なぜ になるのか。 シーソーで考えよう。 と のおもり( ずつ)は、その中点 にまとめて の重さを置いたのと同じ働きをする(中点なら左右がつり合うから)。

すると三角形の重心は、「 に重さ 、 に重さ 」のつり合う点になる。シーソーのつり合いは「重さ 距離」が等しいとき。

重い側(、重さ )が支点に近い。 てこの原理そのままだ。だから頂点側が つぶん、辺側が つぶんになる。

三角形の板を鉛筆の先で支えるとしたら、重心の 点で支えられる。物理的な意味がある定理である。見方2: 座標で確かめる。

頂点の座標を 、、 とすると、重心の座標は 点の平均になる。

一方、( の中点)は

この つから を書き直す。

これは「 と を に内分する点」の公式そのものだ( 側の重みが 、 側の重みが のとき、点は から見て の位置にくる)。

が中線 上にあり、 である。座標だけで証明できた。しかも の式は 、、 について対称だから、他の 本の中線についても同じことが言える。つまり 本の中線が 点で交わることまで、同時に証明されている。

「 本が 点で交わる」という当たり前ではない事実が、 という対称な式の中に、あっさり収まっている。対称性が交点の存在を保証するのである。

ポイント

  • 重心は中線を 2:1(頂点側 2、辺側 1)に分ける。
  • 「頂点側が 2」を取りちがえないこと。長いほうが頂点側。

よくある間違い

  • の向きを逆にする(頂点側が 、辺の中点側が )
  • を中線の半分()としてしまう(正しくは 倍)
  • (2)で から 、 の順に出すべきところ、いきなり としてしまう

問4内接円と接線の長さ

★ 基礎内接円接線の長さ

問題

の内接円が辺 、、 とそれぞれ点 、、 で接している。、、 とする。

IABCPQR756
内接円と接点 P・Q・R。同じ頂点からの接線は等しい

、、 の長さを求めよ。

ヒントを見る

同じ頂点から出る2本の接線は長さが同じだ。だから 、、。この3つの長さを 、、 とおいて、3辺の式を作ってみよう。

解答・解説

方針

1つの頂点から円に引いた2本の接線は、長さが等しい。この「等しい接線」を文字でおいて、3辺の長さで連立すると解ける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 内接円の問題では、円外の 点から引いた 本の接線の長さは等しいことを使う。この問題で使う道具はこれだけだ。

同じ頂点から出る 本の接線は同じ長さ。 だから、求める長さを

と文字で置く。すると 辺の長さがこの 文字で表せる。

文字・ 式の連立方程式になった。図形の問題が代数の問題になった。

定理円外の1点から引いた2本の接線の長さは等しい

この定理から、同じ頂点から出る接線は等しい。そこで

とおく。各辺は2つの接線に分かれるので

3つを全部たすと、左辺は が2回ずつ出るので

あとは引き算だ。 から を引くと

同じように

まとめ:よって 、、。

発展。 「円外の点から引いた 本の接線は等しい」という事実は、対称性からすぐに分かる。

点 と円の中心 を結ぶ直線を軸として、図全体を折り返す。円は自分自身に重なり、 本の接線は入れかわる。折り返して重なるのだから、長さは等しい。

もちろん、直角三角形と三平方の定理でも証明できる()。しかし対称性による説明のほうが、計算なしで理由を示している。

「図形に対称軸があるか?」と問う癖をつけたい。対称性が見つかれば、多くの等式が計算せずに得られる。

  • 二等辺三角形 → 底角が等しい(折り返せば重なる)
  • 円 → 中心を通る直線で折り返せば重なる
  • 正多角形 → 何本もの対称軸を持つ

「同じものは同じ」と言い切れる根拠が対称性だ。難しい計算を始める前に、まず図を見て、折り返せる軸がないかを探す。それが幾何を得意にする近道である。

答

別解

この連立方程式には、 行で解ける手がある。そして、その過程で覚えておくと一生使える公式が手に入る。 式を、すべて足す。

左辺は 、右辺は 。

つの和がいきなり出た。ここで という数の意味を見ておく。 辺の和(周の長さ)は 。その半分が だ。周の長さの半分を と書く。

あとは引き算だけ。

から、 を引くと

同様に

連立を解く手間がまったくない。そして、これが公式になる。

(、、 で、 は周の半分。)

「頂点 からの接線の長さ ( の向かいの辺)」。 となり、検算もすぐにできる。

なぜ (周の半分)が出てくるのか。 辺は つの接線に分けられ、それぞれが同じ長さのペアになっている。だから は「周の半分」にちょうど等しい。 本の接線を、ペアごとに 本ずつ拾ったものである。

この は内接円まわりの次の公式で使われる。

  • 面積: ( は内接円の半径)
  • ヘロンの公式:
  • 接線の長さ: 、、

ヘロンの公式に 、、 が出てくるのは偶然ではない。 それは接線の長さである。 年前から知られるヘロンの公式にも、内接円の接線の長さが入っている。

ポイント

  • 同じ点から引いた接線は等しい → 接線の長さを文字でおくのが基本。
  • 3辺を全部たすと になる。半分にして、各辺を引けば1つずつ求まる。

よくある間違い

  • 同じ頂点から引いた2本の接線が等しいことに気づかず、文字を6個も置いてしまう
  • と を別の文字で置いて連立が解けなくなる
  • 公式 の を「 を含む辺」と取り違える( は の向かいの辺 )

問5外心と中心角

★ 基礎外心中心角と円周角

問題

は の外心(外接円の中心)である。 とする。

80°40°OABC
外心 O。∠BOC(中心角)は ∠BAC(円周角)の2倍

を求めよ。

ヒントを見る

は円の中心なので、 は弧 を中心から見た角、 は円周上から見た角だ。同じ弧を「中心から」と「円周から」見た角の大きさは、どちらが何倍になるか思い出そう。

解答・解説

方針

外心 は外接円の中心だ。すると は弧 の中心角、 は同じ弧の円周角。この2つには決まった関係がある。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 外心 は外接円の中心だ。だから 、、 は同じ円の上にある。

すると は弧 に対する円周角。 は同じ弧に対する中心角である。

「外心」という言葉に惑わされないこと。 外心 外接円の中心と読みかえた瞬間に、円周角の定理の問題に変わる。

用語を定義に戻して読む。図形の問題では、これが第一手になることが多い。

定理中心角は円周角の2倍:同じ弧に対する中心角は円周角の 倍

外心 は外接円の中心だから、 は弧 の中心角。そして は同じ弧 の円周角。よって中心角は円周角の 倍。

発展。 外心と内心は、名前が似ているが役割がまったく違う。混同しないよう、性質を対にして整理しておきたい。

外心 内心
何の交点か 辺の垂直二等分線 角の二等分線
等しい距離 頂点から等距離 辺から等距離
円 外接円の中心( 頂点を通る) 内接円の中心( 辺に接する)
位置 鈍角三角形では外に出る 必ず内部

なぜ性質が対になるのか。

  • 「 点から等距離の点の集まり」 垂直二等分線 → だから外心は 辺の垂直二等分線上
  • 「 直線から等距離の点の集まり」 角の二等分線 → だから内心は 角の二等分線上

「点から等距離」なら垂直二等分線、「直線から等距離」なら角の二等分線。 この つの原理が外心と内心を生んでいる。

丸暗記ではなく、「何から等距離か」で区別する。 外接円は 頂点(点)を通るのだから、中心は頂点から等距離にある外心だ。内接円は 辺(直線)に接するのだから、中心は辺から等距離にある内心だ。

言葉の意味を追えば、性質は思い出せる。 幾何の用語はよくできている。

答

別解

「中心角は円周角の 倍」について、なぜ 倍なのかを考える。 二等辺三角形と外角だけで、その理由が見える。証明を知れば、公式を疑わずに使える。

使うのは「半径はすべて等しい」ことだ。

だから も も二等辺三角形。二等辺三角形の底角は等しい。

直線 を引いて、円と反対側で交わる点を とする。 そして 、 と置く()。

を見る。 の二等辺三角形だから、底角も 。

三角形の外角は、隣り合わない つの内角の和だから

同じことを でやると

足す。

倍になる理由は二等辺三角形の外角だった。 が つ集まって になる。円周角の定理の「 倍」はここから来ている。

この証明の利点は つある。

つ目: 円周角がどこにあっても同じ理由が通る。 点 を弧の上で動かしても、 と の値は変わるが、和 は変わらない(中心角 が固定だから)。つまり同じ弧に対する円周角は、どこで測っても等しい。これも同時に証明されている。

つ目: 外心の特別な性質が見える。 外心が三角形の内部にあるとは限らない。 が鈍角なら、外心は三角形の外側に出る(そのときは上の証明を少し修正する必要がある)。直角三角形なら、外心は斜辺の中点にぴったり乗る(斜辺が直径になるというタレスの定理)。

「外心はどこにいるか」で、三角形の形が分かる。

  • 鋭角三角形 → 外心は内部
  • 直角三角形 → 外心は斜辺の中点
  • 鈍角三角形 → 外心は外部

図を描くとき、外心の位置は三角形の形が決める。適当に真ん中へ置いてはいけない。

ポイント

  • 外心 = 外接円の中心。だから頂点から円の中心への角は中心角。
  • 中心角 = 円周角 × 2。同じ弧を見ていることが条件。

よくある間違い

  • 中心角を円周角の半分にしてしまう(中心角のほうが2倍で大きい)
  • 外心を内心(内接円の中心)と取り違える
  • 鈍角三角形でも外心が内部にあると思い込む(鈍角三角形では外心は三角形の外に出る)

問6チェバの定理

★ 基礎チェバの定理

問題

の内部の点で3本の線 、、 が1点で交わっている。ここで は辺 上、 は辺 上、 は辺 上の点である。

ABCDEF
3本の線 AD・BE・CF が1点で交わる(チェバの定理)

、 のとき、 を求めよ。

ヒントを見る

頂点から辺へ引いた3本の線が1点で集まっている。このとき、辺を分ける3つの比を三角形に沿ってぐるっとかけ合わせると、ある決まった値になる。分かっている2つの比を先に代入してみよう。

解答・解説

方針

3本の線が1点で交わるときに使える、比のかけ算の公式がある。3つの辺の比をぐるっとかけると になる、というものだ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 三角形の内部の 点から、 頂点を通る線が 辺を切っている。この形にはチェバの定理を使う。

注意するのは、比の「向き」をそろえることだ。 分子・分母の文字を見てほしい。

と、三角形を一周している。 前の分母の文字が次の分子の文字になる。しりとりのように連なるのだ。

この向きさえ守れば、あとは代入して解くだけである。

定理チェバの定理:3本の線 、、 が1点で交わるとき

三角形の頂点 辺 次の頂点…とぐるっと一周する順に、辺を分ける比をかけると になる、という式だ。分かっている値を入れる。

左の2つをかけると なので

発展。 チェバの定理は逆も成り立つ。

この逆が実際にはよく役に立つ。「 本の線が 点で交わることを証明せよ」という難問が、比の積を計算するだけの作業に変わる。たとえば「 本の中線は 点で交わる(重心の存在)」の証明。中線なら 、、 だから

チェバの逆より、 点で交わる。証明終わり。同じ手で「 本の角の二等分線は 点で交わる(内心の存在)」も証明できる。角の二等分線の定理から などとなり、 つ掛けると分子分母がきれいに約分されて になるのだ。

「 本が 点で交わる」という当たり前ではない主張が、掛け算 回で片づく。 チェバの定理の逆は五心の存在証明を統一的に与える。定理の逆のほうが役に立つ例である。

答

別解

公式を使わず、「重り」で解く方法がある。質量法(てこの原理)と呼ばれ、慣れると暗算で答えが出る。発想: 頂点に重りを置いて、シーソーでつり合わせる。

点 は 上のシーソーの支点だと思う。 ということは、 側の腕が長く、 側の腕が短い。

てこの原理: 重い側が支点に近い。 腕の長さと重さは反比例するから

に 、 に を置く。

次に、点 で同じことをする。 だから

の重りはもう と決まっている。 比 を保つには、 の重りは の 倍で 。これで 頂点の重りが決まった。

あとは を読むだけ。 は 上の支点だから、てこの原理で

チェバの定理と同じ答え。公式を 度も使っていない。

なぜこれでうまくいくのか。 頂点に重りを置くと、その全体の重心がちょうど 本の線の交点になる。「 と の重りをまとめると に の重りを置いたのと同じ」「 の と の がつり合う点が交点」と考えると、 本の線が 点で交わることまで、この見方で説明できるのだ。

質量法の強み。

  • 比の向きを間違えない(重りの比は、腕の長さと逆になる。注意はこれだけ)
  • 暗算しやすい(整数の重りを次々に決めるだけ)
  • 公式を忘れても解ける

弱点は、外分がからむとき(メネラウスの定理の状況)。そこでは「負の重り」を使う必要が出てきて、少し扱いにくい。内部で交わるチェバ型なら質量法、外に飛び出すメネラウス型なら公式と、使い分けるとよい。

物理の直感が幾何の定理を解く。 数学の道具は つの分野に閉じていない。

ポイント

  • チェバは「3本が1点で交わる」ときの比の関係。3つの比のかけ算 = 1。
  • 比を書く順番は三角形を一周する向き(頂点→辺の点→頂点)にそろえる。

よくある間違い

  • 比の向き( か か)がばらばらだと合わない。一周する向きに統一する
  • 積を でなく他の値に等しいとしてしまう(チェバの定理の右辺は必ず )
  • 質量法で重りの比を腕の長さと同じ向きにしてしまう(重りは腕の長さと逆比)

問7メネラウスの定理

★ 基礎メネラウスの定理

問題

を1本の直線が横切り、辺 を 、辺 を 、辺 の延長を で交わっている。

ABCFED
直線 FED が三角形を横切る(D は BC の延長上)

、 のとき、 を求めよ。

ヒントを見る

1本の直線が三角形の3辺(1つは延長)を横切っている。このとき、辺を分ける3つの比を、三角形を一周する順にかけ合わせると決まった値になる。分かっている2つを先に入れてみよう。

解答・解説

方針

三角形を1本の直線が横切るときにも、比のかけ算の公式(メネラウス)がある。三角形をぐるっと一周する順に、辺を分ける比をかけると になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) チェバとの違いは、直線が三角形を「横切る」こと。 点のうち つ()が辺の延長上にある。この形はメネラウスの定理だ。

チェバとまったく同じ「一周する」形をしている。

頂点 → 分点 → 頂点 → 分点 と交互に、 から出発して に戻る。 この道順で書けば、比の向きを間違えない。

代入して解く。

定理メネラウスの定理:1直線が三角形の3辺(または延長)を切るとき

チェバと形はそっくりだが、こちらは「1本の直線が横切る」ときの式だ。頂点 と一周する順に、途中の分点で比をとってかける。分かっている値を入れる。、 なので

数の部分をまとめると だから

よって 。

発展。 チェバとメネラウスは、対になる定理である。どちらも積が になり、一周する形も同じ。なぜこんなに似ているのか。

答えは「符号つきの比」で考えると分かる。線分の比に向きの符号( から へ進む向きを正、逆を負)をつけると

  • チェバ(すべて内分): 符号つきの積
  • メネラウス( 点が外分): 符号つきの積

符号だけが違う。 外分点が つ(または つ)あると、比が負になって積の符号が反転するのだ。

つの定理は つの式の つの表し方だった。この見方は射影幾何学という分野につながる。そこでは「点と直線」「交わると結ぶ」が対等に扱われ()、チェバとメネラウスは互いの双対として、 枚のコインの裏表になる。

似ている定理を見たら、「なぜ似ているのか」を問う。 そこには、共通の構造があることが多い。

答

別解

公式が不安なら、座標を置いて確かめられる。 疑わしいときは計算して確かめる。幾何の答えを、代数で検算する方法を身につけたい。

座標を計算しやすいように置く。

(どんな三角形で試してもよい。 比の関係は三角形の形によらないからだ。原点と 軸を使うと計算が軽くなる。)

分点の座標を出す。

は を に分ける点。

は を に分ける点( から測る)。

直線 と、直線 の交点 を求める。直線 : と を通るので、傾きは 。

直線 : と を通るので、傾きは 。

連立して解くと

を代入して 。交点は 。

を計算する。 、、 は一直線上にあるので、 座標の差だけ見れば比が出る。

メネラウスの定理の答えと、ぴったり一致した。

この検算の価値。 メネラウスの比の向きは間違えやすい。答えに自信がないとき、座標で 回確かめれば白黒がつく。 試験中に 分かけてでも、間違いに気づけるなら安い。

そして図の理解が深まる。 計算してみると、 は を越えたずっと外側()にあると分かる。 は線分 の内部ではなく、延長上にいる。メネラウス型の特徴が座標にはっきり現れている。

チェバとメネラウスの見分け方を、最後に整理しておく。

  • チェバ: 本の線が 点で交わる。 分点はすべて辺の上(内部)
  • メネラウス: 本の直線が三角形を横切る。 分点のうち つ(または つ)が辺の外(延長上)

どちらも積が になり、しりとりの向きも同じ。 違うのは「線が 本か 本か」「点が内か外か」だけである。図を見て、どちらの状況かを判定する。それが最初の一手だ。

ポイント

  • メネラウスは「1本の直線が横切る」ときの比の関係。3比のかけ算 = 1。
  • 一周する順に比を書けば、チェバと同じ形で計算できる。

よくある間違い

  • 延長上の点 をふくむ比の向きをまちがえやすい。頂点を一周する順に統一する
  • チェバの定理と取り違える(1点で交わるのがチェバ、1直線が横切るのがメネラウス)
  • を と逆に読む(しりとりの向きに合わせる)

問8円周角の定理

★ 基礎円周角の定理

問題

円 の周上に3点 、、 がある。弧 (点 を含まないほう)に対する中心角 とする。

100°50°OABC
同じ弧 BC の中心角 100°、円周角 50°

円周角 を求めよ。

ヒントを見る

は弧 を中心から見た角、 は同じ弧を円周から見た角だ。円周から見た角は中心から見た角に対してどんな大きさになるか思い出そう。

解答・解説

方針

同じ弧 を、中心 から見た角と、円周上の から見た角。この2つの大きさの関係を使う。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 円の問題で最初に確認するのは、その角がどの弧を見ている角かである。

は中心 が頂点 → 中心角。 は円周上の点 が頂点 → 円周角。

つとも、同じ弧 ( を含まないほう)を見ている。

「中心が頂点か、円周上が頂点か」を見分ける。 それだけで、 倍するか半分にするかが決まる。中心角のほうが大きい。図を見れば当たり前だが、あわてると逆にしてしまう。

定理円周角の定理:同じ弧に対する円周角は中心角の半分()

と はどちらも同じ弧 を見ている。中心から見た角(中心角)と円周から見た角(円周角)では、円周角のほうが半分。

発展。 円周角の定理は実際の競技場の設計にも使われる。

ラグビーのコンバージョンキックを考えよう。トライした地点から、タッチライン(サイドライン)と平行な線上のどこからでも蹴れる、というルールがある。ゴールポストの 本(、)を見込む角が最大になる位置は、どこか?

これは「見込む角が最大の点を探せ」という問題だ。円周角の定理から、、 を通る円が蹴る位置の直線に接するとき、その接点で角が最大になる(円が小さいほど円周角は大きく、直線と交わってしまうとその外側では角が小さくなる)。

キッカーが「どこまで下がるか」で悩むのは、この最適化問題を解いているのだ。

同じ問題は美術館で絵をいちばん大きく見込める位置(レギオモンタヌスの問題)としても知られている。天井近くに掛けられた絵は、近づきすぎても離れすぎても見込む角が小さくなる。ちょうどよい距離があるのだ。

「円周角一定の弧」という道具を使えば、最適な位置が分かる。 幾何はコートの上にも美術館にも生きている。

答

別解

円周角の定理には、答えを出すこと以上に大事な使い道がある。それを つ紹介したい。使い道1: 「同じ弧を見る角は、どこから見ても等しい」

点 を、弧の上でどこへ動かしても

変わらない。 中心角 が動かないのだから、その半分も動かない。

これは意外な事実だ。 サッカーで、ゴールの幅()を「見込む角」を考えよう。ゴールに近づけば角は大きく、離れれば小さくなりそうに思える。しかし、円周上を動くかぎり、角度はまったく同じである。

「一定の角度で を見込む点の集まり」 円弧。 これが円周角の定理の、いちばん大事な意味である。使い道2: タレスの定理( の特別な場合)

弧 が半円(中心角 )のとき、つまり が直径のとき

直径を見込む円周角は必ず直角。 円周上のどこに を取っても、必ず直角三角形になる。

逆も成り立つ。 「 を満たす点 の集まり」は、 を直径とする円である。「直角に見える点の軌跡は円」という事実は、軌跡の問題で頻出する。

使い道3: 円周角の定理の逆( 点が同じ円周上にある証明)

「 点から同じ角度で見込まれているなら、 点は同じ円の上にいる」。

これがとても役に立つ。「 点が同一円周上にあることを示せ」という難問が、角度が等しいことを示すだけの問題に変わる。そして 点が共円だと分かれば、今度は円周角・内接四角形・方べきの定理と、円の道具がすべて使えるようになる。

円周角の定理は角度を別の場所へ移すのに使える。 離れた つの角を「同じ弧」でつなぎ、等しいと言い切れる。円を使うと、バラバラの角度どうしを結びつけられる。幾何の問題で「円を見つける」ことで解けることが多いのは、このためだ。

ポイント

  • 円周角 = 中心角 ÷ 2(同じ弧を見ているとき)。
  • 円周上のどこから見ても、同じ弧なら円周角はいつも同じ大きさ。

よくある間違い

  • 円周角を中心角の2倍にしてしまう(円周角は中心角の半分)
  • どちらの弧に対する角かを確認しない( を含まないほうの弧が対応する)
  • 円周角が点 の位置で変わると思い込む(同じ弧に対する円周角はどこでも等しい)

問9円に内接する四角形

★ 基礎内接四角形

問題

四角形 が円に内接している。、 とする。

ABCD85°95°
円に内接する四角形。向かい合う角の和は 180°

と を求めよ。

ヒントを見る

円に内接する四角形では向かい合った2つの角をたすといつも同じ値になる。 の向かいは 、 の向かいは だ。

解答・解説

方針

円に内接する四角形では、向かい合う角の間に決まった関係がある。 と 、 と がそれぞれ向かい合っている。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「四角形が円に内接している」という条件から言えることは つある。

まず(i)を使う。 向かい合う角(対角)は と 、 と 。

隣り合う角と足してはいけない。 の相手は つ飛ばした である。

検算: 四角形の内角の和は 。 となる。必ずこれを確かめる。

定理円に内接する四角形:向かい合う角の和は

と は向かい合っているので、和は 。

同じく と も向かい合うので

発展。 どんな四角形でも円に内接できる、わけではない。 ここがこの問題の特徴だ。

三角形なら、どんな形でも必ず外接円がある( 点を通る円は必ず つ引ける)。しかし四角形になると、円に内接できるものと、できないものに分かれる。 点目が「たまたま」円の上に乗るための条件が、対角の和が である。

  • 長方形・正方形 → 内接できる(対角は )
  • 等脚台形 → 内接できる
  • 平行四辺形(長方形以外) → 内接できない(対角が等しいので、和が になるのは長方形のときだけ)
  • ひし形(正方形以外) → 内接できない

平行四辺形が円に内接できないという事実は、意外に感じるかもしれない。しかし対角が等しい()ので、和が になるには両方 でなければならない。つまり長方形しかありえない。

「 点が同じ円の上に乗る」のは、特別な場合である。だからこそ、それが示せたときの見返り(円の定理が全部使える)が大きい。

点、 点と増えれば、共円はさらに珍しくなる。 それでも、正多角形はすべて共円だし、有名な九点円(三角形の つの特別な点が つの円に乗る)のような例もある。

「たまたま円の上に乗る」ための条件は、幾何学で古くから研究されてきた。

答

別解

「なぜ対角の和が なのか」 は、円周角の定理から 行で導ける。理由を知れば、「隣り合う角と足す」という誤りは起こらない。 と はそれぞれどの弧を見ているか。

  • ()は、 を含まない弧 に対する円周角
  • ()は、 を含まない弧 に対する円周角

この つの弧を合わせると、円を 周する。

中心角で言えば、 つの中心角の和は 。

円周角は中心角の半分だから

「 つの弧を合わせると 周する。だから角の和は の半分」 となる。これが になる理由だ。

同じ理由で 。 対角どうしのペアだけが円を 周ぶん分け合っている。隣り合う角ではこうならない(弧が重なったり足りなかったりする)。

そして、この定理の逆がとても役に立つ。

「 点が同じ円の上にあることを示せ」という問題が、角度の計算になる。 点が共円だと分かると、円の性質がまとめて使えるようになる。

  • 円周角の定理(同じ弧の角は等しい)
  • 方べきの定理(交点からの長さの積が等しい)
  • 接弦定理

「共円を示す」と、円の定理が使えるようになる。

外角の性質(ii)もこの から出る。 の外角は で、これは に等しい。

つの性質は同じことの言いかえである。片方を覚えれば、もう片方は自動で出る。

円に内接する四角形は「対角がつながっている」。 向かい合う 角が円周を分け合っているから、和が になる。そう考えると、この定理は忘れにくくなる。

ポイント

  • 内接四角形は「向かい合う角の和 = 180°」。
  • 隣どうしではなく、向かい(対角)の関係であることに注意。

よくある間違い

  • 対角ではなく隣り合う角と足して としてしまう( の相手は1つ飛ばした )
  • 四角形の内角の和 での検算をしない
  • どんな四角形でも対角の和が になると思い込む(円に内接するときだけ)

問10接弦定理

★ 基礎接弦定理

問題

円 の周上の点 で接線 を引く。 から円周上の点 へ弦 を引くと、接線 と弦 のなす角が であった。点 はこの角と反対側の弧の上にある。

65°65°TABℓ
接線 ℓ と弦 TA のなす角 = 反対側の弧の円周角 ∠TBA

円周角 を求めよ。

ヒントを見る

接線と弦 がつくった角に注目。この角は弦 を反対側の弧の上の点 から見た角と、実は同じ大きさになる。

解答・解説

方針

接線と弦がつくる角には、円周角と結びつく性質(接弦定理)がある。接線と弦のなす角は、その弦を反対側の弧から見た円周角に等しい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 接線と弦が作る角を見たら、接弦定理を使う。

「接線と弦の角」と「反対側の円周角」が、そのまま等しい。 倍にも半分にもしない。同じ値である。

注意するのは「反対側」の意味だ。 接線と弦のなす角が のとき、その角がにらんでいる弧(角の内側にある弧)がある。円周角を測る点 はその弧の反対側にいなければならない。

図で、角の内側にどちらの弧があるかを確かめる。これが接弦定理を使うときの唯一の注意点である。

定理接弦定理:接線と弦のつくる角は、その弦に対する反対側の弧の円周角に等しい

接線 と弦 のなす角は、弦 を反対側の弧から見た円周角 と等しい。よって

発展。 接弦定理も、逆が成り立つ。

「ある直線が円に接することを証明せよ」という問題が、角度が等しいことを示す問題に変わる。円がらみの定理は、そろって「逆」が使える。

定理 順に使う 逆に使う
円周角の定理 角を求める 点が共円であることを示す
内接四角形の定理 角を求める 点が共円であることを示す
接弦定理 角を求める 接線であることを示す
方べきの定理 長さを求める 点が共円であることを示す

「順」は計算に、「逆」は証明に使う。 入試の証明問題で「共円を示せ」「接線であることを示せ」と問われたら、これらの逆を思い出す。

定理を学んだら、必ず「逆は成り立つか?」と問う習慣をつけたい。成り立つなら道具が 倍になり、成り立たないなら(その反例を知ることで)理解が深まる。

数学の定理は両刃の剣である。 片側だけ研いでいては、もったいない。

答

別解

接弦定理は円周角の定理の「極限」として理解できる。 そう見ると、なぜ「そのまま等しい」のかが腑に落ちる。証明: 直径を引いて、直角を作る。

点 で接線 が引かれている。接線は接点を通る半径と垂直である。

を通る直径 を引く( は円周上の反対側の点)。

は直径 に対する円周角なので、(タレスの定理)。

の内角の和から

一方、接線と弦のなす角は

( だから、 と を足すと 。)

は弦 に対する円周角。 そして も同じ弧に対する円周角だから等しい。

「接線 半径」と「直径の円周角は 」の つだけで証明できた。そして、もっと直感的な見方がある。接弦定理は「円周角の定理の極限」だ。

円周上に 点 、 を取り、弦 を引く。円周角の定理より、(弦 と弦 のなす角)は ここで を に限りなく近づける。

すると、弦 は接線 に近づいていく。(円に 点で交わる直線が、 点が重なる瞬間に接線になる。)

接線とは、 つの交点が重なった割線である。その極限で、円周角の定理がそのまま接弦定理になるのだ。

「 点を近づけて 点にする」という発想は、数IIIで学ぶ微分の基本の考え方でもある( 点を通る直線の極限が接線)。幾何の接線と、微分の接線は、まったく同じ考え方でできている。

接弦定理の使いどころ。 接線が出てきたら、接弦定理で「角を円の中へ運び込む」。円の外にある角(接線がらみの角)を、円の内側の円周角に置き換えられる。それだけで、問題が解ける形に変わることが多い。

ポイント

  • 接弦定理:接線と弦の角 = 反対側の弧の円周角。
  • 「接している点」でできる角に注目する。接点から弦を引いて角を作る。

よくある間違い

  • 接線と弦のなす角を2倍(または半分)にしてしまう(接弦定理では、そのまま等しい)
  • 「反対側の弧」の円周角でなく、同じ側の弧の円周角と等しいとしてしまう
  • 接線と半径が垂直であることを使い忘れる(接線がらみの証明はここが出発点)

問11方べきの定理

★ 基礎方べきの定理

問題

円の2つの弦 、 が円の内部の点 で交わっている。、、 とする。

PABCD263PD
2弦の交点 P。PA·PB = PC·PD

の長さを求めよ。

ヒントを見る

交点 から左右に伸びる長さのかけ算が、弦 側と弦 側で等しくなる。 と を等号でつないでみよう。

解答・解説

方針

円の中で2本の弦が交わるとき、交点から測った長さの「かけ算」が、2本で等しくなる(方べきの定理)。式を1つ立てれば が出る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 本の弦が円の中で交わっているので、方べきの定理を使う。

「同じ弦の 本を掛ける。それが、もう 本の弦でも同じ値になる」。

掛ける相手を間違えないこと。 と は同じ弦 の上にある 本。 と は弦 の上の 本。 のように、違う弦どうしを掛けてはいけない。

つの点 から見て、どの弦を通っても「積」が同じになる。この不変性が方べきの定理の中身である。

定理方べきの定理:2つの弦が点 で交わるとき

交点 から両側に測った長さのかけ算が、2本の弦で等しくなる。式にすると

数を入れる。

左は なので

発展。 方べきの定理も、逆が成り立つ。

長さの積を計算するだけで、 点が共円だと証明できる。 角度を測る必要すらないので、とても便利だ。

さらに、方べきは数IIの「円の方程式」と直結する。 円 と点 について

符号にも意味がある。

  • 正()→ は円の外
  • → は円周上
  • 負 → は円の内

つの式の符号で、点と円の位置関係がすべて分かる。

そして、 つの円について「方べきが等しい点の集まり」を考えると、直線になる。これを根軸という( 円が交わるなら、その共通弦を延長した直線だ)。数IIの「 円の方程式を引き算する」という計算は、この根軸を求めている。

幾何(長さの積)と代数(円の方程式)が、方べきという つの量で結ばれている。 別々に見えた つの単元が、実は同じものを違う言葉で扱っていた。数学を学び進めると、こういうことが何度もある。

答

別解

方べきの定理のもとにあるのは、相似である。 証明を追えば、なぜ「積」という形になるのかが分かる。

と を見比べる。(対応する頂点の順番に注意。 と 、 と が対応する。)

組の角が等しいことを示す。

組目: 対頂角。

( 本の直線が交わってできる対頂角だから、当然等しい。)

組目: 円周角。

この つは、どちらも弧 に対する円周角である。だから等しい。

角が等しいので、相似。

相似なら、対応する辺の比が等しい。

たすきに掛ける(内項の積 外項の積)。

方べきの定理が証明された。 「積」の形が出てくるのは、比例式をたすきに掛けたからである。

円周角の定理が離れた つの三角形を相似で結んでいる。これは円があるから成り立つ。

方べきの定理には つの型がある。 どれも同じ「積が一定」だが、点 の位置が違う。

型1(この問題): が円の内部。 本の弦が交わる。

型2: が円の外部。 本の割線を引く(円を 回ずつ横切る)。式の形はまったく同じ。

型3: が円の外部で、片方が接線。 接線の長さを とすると

接線のときだけ 乗になるのはなぜか。接線は「 つの交点が重なった割線」だから、 になるのだ。極限で 点が 点に融合する。接弦定理と同じ発想である。

つの型を、別々の公式として覚えてはいけない。 すべて「点 から円へ引いた直線の、 つの交点までの距離の積は一定」という つの事実の別の表れだ。

この一定値を「方べき」という。 中心からの距離を 、半径を とすると、方べきの値は に等しい。つまり点と円の位置関係を測る量である。

ポイント

  • 方べきの定理:交点から測った長さのかけ算が、2本の弦で等しい。
  • 接線が絡むときは (接線は2乗)になる。

よくある間違い

  • のように、違う弦どうしを掛けてしまう
  • 接線の場合()と混同して、2乗をつけたり外したりする
  • が円の外にあるときは別の公式が要ると思い込む(内部でも外部でも式の形は同じ)

問12オイラーの多面体定理

★ 基礎オイラーの多面体定理正多面体

問題

正十二面体は、正五角形の面が 枚集まってできた立体である。

頂点 8・辺 12・面 6
立方体で確かめると v=8、e=12、f=6 で 8−12+6=2

(1) 辺の数 を求めよ。

(2) 頂点の数 を求めよ。

ヒントを見る

まず辺の数から。面は正五角形なので1枚に辺が5本。ただし1本の辺はとなり合う2枚の面で共有されている。頂点は、面と辺の数が分かれば の式で求まる。

解答・解説

方針

面の枚数と、1枚の面が持つ辺の数から、まず辺の総数を数える。頂点の数はオイラーの多面体定理 にあてはめれば出る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 正十二面体の辺や頂点を、 つずつ数えるのは無理だ(立体を回しているうちに、数えたか数えていないか分からなくなる)。

そこで数え上げの技を使う。

(1) 辺を数える。 「正五角形 枚に辺が 本、面が 枚だから 本」とすると、これは数えすぎである。

本の辺は必ず 枚の面で共有されている(立体の辺は、 枚の面の境目だから)。だから で割る。

「二重に数えて、後で割る」 のは、数え上げでよく使う方法だ。

(2) 頂点を数える。 ここでオイラーの多面体定理が使える。

定理オイラーの多面体定理:頂点の数 、辺の数 、面の数 について

(1) 面は正五角形が 枚。正五角形1枚の辺は 本なので、面ごとに数えると 本。

でも1本の辺は、となり合う 枚の面が共有している。つまり同じ辺を 回ずつ数えてしまっている。だから で割る。

(2) オイラーの定理 に 、 を入れる。

発展。 正多面体はなぜ 種類しかないのか。 これは古代ギリシャ以来の有名な事実で、オイラーの定理から証明できる。

条件はこうだ。 つの頂点に 枚以上の正多角形が集まり、その角の和が 未満でなければならない( ちょうどだと平らになってしまい、立体にならない)。

  • 正三角形(): 枚()・ 枚()・ 枚()まで可。 枚は で平面になる → 種類
  • 正方形(): 枚()のみ。 枚は → 種類
  • 正五角形(): 枚()のみ。 枚は で超過 → 種類
  • 正六角形(): 枚で になり、もう立体にならない → 種類

合計 種類。これで打ち止めである。 角形以上は言うまでもない。

「 つしかない」という事実は、数学として証明できる。 プラトンはこの つの立体に火・土・空気・水・宇宙を対応させた(プラトンの立体と呼ばれる所以だ)。ケプラーは惑星の軌道をこの 立体で説明しようとした。

現代でも、正二十面体はウイルスの殻の形として現れ(限られた種類のタンパク質で最も効率よく球に近い殻を作れるから)、サッカーボールは正二十面体の頂点を切り落とした形をしている。

「これしかない」という有限性が、自然界の形を決めている。 数え上げと簡単な不等式だけから、こうした結論が出る。

答

(1) (2)

別解

オイラーの定理を使わずに、頂点も数え上げで出せる。 そして両方の答えが合うことで、オイラーの定理そのものを検算できる。頂点を辺と同じ発想で数える。

正五角形 枚には頂点が 個。面が 枚だから、単純に掛けると

しかし、これも数えすぎだ。 つの頂点には、何枚の面が集まっているか?

正十二面体では、 つの頂点に 枚の正五角形が集まる。(実際に模型やサイコロを見ると分かる。正五角形の内角は で、 枚なら になる。 未満なので立体の角ができる。 枚だと で を超えてしまい、平面をはみ出して閉じない。)

だから で割る。

オイラーの定理と同じ答え。そして、これでオイラーの定理を検算できる。

ぴったり になった。

数え上げの原理は つ。「全部数えて、重複した回数で割る」。

  • 辺: 本の辺は 枚の面が共有 → で割る
  • 頂点: つの頂点に 枚の面が集まる → で割る

「何個で共有しているか」を見極めるのが要点。 辺はいつでも 枚(これは立体なら必ずそう)。頂点は立体によって違う( 枚、 枚、 枚 )。

この方法で、 種類の正多面体をすべて調べられる。

正多面体 面の形 面 頂点に集まる面 辺 頂点
正四面体 三角形
立方体 正方形
正八面体 三角形
正十二面体 五角形
正二十面体 三角形

すべて となり、オイラーの定理が確かめられる。

表を見ると、次の対応に気づく。 正十二面体(、)と正二十面体(、)は、面と頂点の数が入れかわっている(辺はどちらも )。立方体(、)と正八面体(、)も同じだ。

これは偶然ではない。 正十二面体の各面の中心を結ぶと、正二十面体ができる(双対という)。面が頂点に、頂点が面に入れかわるので、 つの立体は互いに対応し合う関係にある。

正四面体だけは自分自身と双対()。孤高の存在だ。

ポイント

  • 辺の数 = (1面の辺の数 × 面の数)÷ 2(1辺は2面で共有)。
  • オイラーの定理 は、どんな凸多面体でも成り立つ。

よくある間違い

  • 辺を としてしまう(1本の辺は2枚の面が共有するので2で割る)
  • 頂点を数えるとき、1頂点に集まる面の数(正十二面体では3枚)で割るのを忘れる
  • オイラーの定理を や と誤って覚える(正しくは )