数学III / 積分法の計算

積分法の計算 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 原始関数が書けない定積分(区間の折り返し)
  2. 値が n によらない定積分(ディリクレ核)
  3. 1/(1+x²)^n の定積分(部分積分で漸化式)
  4. 1/(1+e^x) の対称性で折りたたむ定積分
  5. x^m(1-x)^n の積分と二項係数の交代和
  6. √(x²+1) の積分(根号を消す置換と循環型部分積分)
  7. 減衰振動の絶対値の積分(山の面積が等比数列)
  8. 三角関数の有理式(半角の置換と対称性)

問1原始関数が書けない定積分(区間の折り返し)

最難関編置換積分対称性対数関数

問題

定積分

を求めよ。

ヒントを見る

原始関数を探しても出てこない。区間の両端を入れ替える置換を試せ。 を加法定理で開き、 を足すと何が見えるか。

解答・解説

方針

原始関数は初等関数では書けない。定積分だけで使える方法、すなわち「区間を自分自身に移す置換」 を試す。加法定理より となり、 の性質から2つを足すと定数 になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) まず原始関数を探しにいくと、必ず行き詰まる。 の不定積分は初等関数では書けないからだ。

そこで、定積分にしかない方法を使う。区間 を自分自身に移す置換、すなわち の折り返しである。区間が変わらないので、 が再び の式として現れる可能性がある。

実際に折り返すと、加法定理から 。これに を足すと と、もとの の逆数の 倍になる。

は積を和に変える。だから、もとの被積分関数と折り返した被積分関数を足すと、 という定数になってしまう。 が長方形の面積として求まる、という筋書きだ。

公式加法定理より
重要定積分では「区間を自分自身に移す置換」が使える:

① 折り返して、もう1つの式を作る。 とおくと で、 は に対応する。上端と下端が入れ替わることで負号が吸収され

積分変数の名前は何でもよいので、 を と書き直しておく。

② 中身を計算する。 加法定理より

これは区間内のすべての で成り立つ恒等式である。

③ 2本の式を足す。 もとの と①の を足すと

中カッコの中は の和の性質から 。 が消えてしまうのだ。よって

θyOπ/4log2
y=log(1+tanθ)(青)と、折り返した y=log(1+tan(π/4-θ))(赤)。同じ θ での高さの和はつねに log2(破線)になる。だから2つの面積を足すと、たて log2・よこ π/4 の長方形になる

まとめ: 原始関数が求まらない定積分には、まず「区間を自分自身に移す置換」を試す。 の折り返しはその最も基本的な形で、被積分関数と折り返したものの和が簡単になれば解ける。

発展。 上端の を他の値に変えると、この方法はまったく使えなくなる。使っていたのは という特別な事情である。難関大の定積分ではこうした「仕込まれた特殊値」を見抜けるかどうかで、解けるかどうかが決まる。区間の端・係数・角度に不自然にきれいな値が置いてあれば、それは偶然ではなく出題者が置いた道しるべだ。式を睨む前に、まず数値の意味を疑う習慣をつけたい。

答

別解

有理式に書きかえてから、分数変換で折り返す(高い視点)。 同じ対称性は別の場面では別の形で現れる。 とおくと より 。 は に対応するから

今度は区間 を自分自身に移す置換を探す。 がそれだ( のとき 、 のとき )。計算すると

代入すると(上端と下端が入れ替わるので負号は吸収される)

右辺の第1項は 、第2項は そのものである。よって

本解の「角の折り返し 」が、こちらでは「分数変換 」という姿をしている。同じ1つの対称性が三角関数の式と有理式とで違う形に表れているのだ。ついでに、有名な積分 も手に入る。

ポイント

  • 原始関数は書けない。定積分固有の技を使う。
  • で 。
  • の和が定数 になり、 が長方形の面積に。

よくある間違い

  • 原始関数を求めようとして、時間を無駄にする。 に初等的な原始関数は存在しない。「定積分の値だけが求まる」問題があることを知っておく。
  • 折り返しの置換で、 の負号と、上端・下端の入れ替えの両方を処理して符号を二重に反転させる。向きが入れ替わることで負号は吸収される、と手順で覚える。
  • を、特定の でだけ成り立つ式だと思う。これは区間内のすべての で成り立つ恒等式で、だからこそ積分できる。

問2値が n によらない定積分(ディリクレ核)

最難関編積和の公式望遠鏡和定積分

問題

を自然数とし

とおく。

(1) のとき

が成り立つことを示せ。

(2) を求めよ。

ヒントを見る

分母の を消したい。 と の積を、積和の公式で開くとどうなるか。出てきた形を から まで足すと、何が起きるか。

解答・解説

方針

分子・分母とも三角関数だから、積和の公式で「割り算」を「和」にほどく。 が差の形になることに気づけば、望遠鏡和で中間項が消える。あとは を項別に積分すればよい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分母に 、分子に 。このままでは原始関数が見えない。 が一般なのだから、なおさらである。

だが分子も分母も同じ三角関数の仲間だ。積和の公式を使えば、「割り算」を「和」にほどける可能性がある。実際、 となる。右辺は差の形だ。 と足せば中間項がすべて打ち消し合い、両端だけが残る(望遠鏡和)。

こうして が と の和で書ける。 の和なら、項別に積分するだけだ。

公式積和の公式

① (1) 差の形を作る。 、 として積和の公式を使う。 に注意すると

② 足し上げる(望遠鏡和)。 で足すと、右辺は

と中間項が消える。よって

両辺に を足してから で割る( では だから割ってよい)。

③ (2) 項別に積分する。 有限個の和だから、そのまま項ごとに積分してよい。

は整数だから である。したがって、 の項はすべて消えて

がどんな値でも、答えは のまま動かない。

xyOπ/237
被積分関数。n=1(青、sin3x/sinx)と n=3(赤、sin7x/sinx)。n が大きいほど原点近くの山は高く鋭くなり、その先は激しく振動する。それでも 0 から π/2 までの面積はつねに π/2 で変わらない

まとめ: 三角関数の「割り算」は積和の公式で「和」にほどく。差の形が出れば、望遠鏡和で消える。 の項は区間 上でぴたりと になり、定数項 の寄与だけが残る。

発展。 が大きいほど被積分関数は暴れる。 の近くには高さ の鋭い山ができ、その先は激しく振動する。それでも面積は のまま動かない。山が高くなるぶん幅が狭くなり、振動部分は正負が打ち消し合うからだ。

この関数はディリクレ核と呼ばれ、 で「原点だけに無限の高さを持ち、面積は のまま」という特別なものに近づく。フーリエ級数がもとの関数に収束するかどうかを論じるときに中心となる関数であり、デルタ関数という現代的な道具の原型でもある。

答

(1) を で足すと中間項が消える (2) ( によらない)

別解

隣どうしの差をとる(得意な人向け)。 恒等式を作らなくても、 と の差を見ればすぐに終わる。

分子に和差の公式 を使う。、 とすると 、 だから

分母の がきれいに約分される。よって

つまり は が1つ増えても変わらない。あとは出発点を見ればよい。同じ式で とすると

よってすべての で 。「一般項を求める」のではなく「変化量が であることを示す」。数列でも積分でも、この一手はとても役に立つ。値が によらないと分かっているときは、まず差をとってみるとよい。

ポイント

  • (積和)。
  • について足すと望遠鏡和で中間項が消える。
  • なので、残るのは定数項だけ。

よくある間違い

  • 部分積分や置換で原始関数を求めようとする。 の原始関数は初等的には書けない。積和で「和」にほどく以外に道はない。
  • 恒等式を示すときに で割る操作を、 となる点でも行う。 に限れば で割ってよい( は端点で、被積分関数の値は に近づく)。
  • を出したところで止まり、( は整数)を使い忘れる。ここが になることが、この問題の結論そのものである。

問31/(1+x²)^n の定積分(部分積分で漸化式)

最難関編部分積分漸化式三角置換

問題

を自然数とし

とおく。

(1) を求めよ。

(2) が成り立つことを示せ。

(3) を求めよ。

ヒントを見る

が一般だと直接は攻めにくい。 と をつなぐ関係を作れないか。部分積分で出てくる の分子を、分母と同じ形に近づけてみよ。

解答・解説

方針

は で片づく。一般の は漸化式を作る。 を微分する側、 を積分する側にして部分積分すると が現れる。ここで と分けると と の両方が現れ、漸化式が閉じる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) が分母にある。 なら の置換で片づくが、 が一般だと同じ手は苦しい。

こういうときは漸化式を作る。 と をつなぐ関係さえ手に入れば、 から順に上っていける。部分積分で を崩してみる。 を微分する側に回し、 を積分する側に回す(つまり を掛ける)。すると という項が現れる。

ここが決め手だ。 と分ける。分子を分母と同じ形にそろえるのである。すると と の両方が現れ、漸化式が閉じる。

公式部分積分

① (1) を求める。 とおくと 、 である。 は に対応する()。

② (2) 部分積分で漸化式を作る。 、(すなわち )として部分積分する。 だから

端の項は で 、 で である。次に、残った積分の分子を分母にそろえる。

積分すると である。よって

について整理して

③ (3) を求める。 とすると

とすると

まとめ: べきが上がる積分は、部分積分で「1つ隣」とつなぐ。 のように分子を分母にそろえる変形によって、漸化式が閉じる。

発展。 漸化式 の右辺にある は、上端 の寄与(部分積分の端の項)である。もし上端を まで伸ばせば(大学で学ぶ広義積分)この項は消え、

という比だけの漸化式になる。ここから という有名な形が現れ、円周率の無限積(ウォリスの公式)へつながっていく。端点の寄与が消えるかどうかで、式の形は大きく変わる。

答

(1) (2) 部分積分と の分解 (3)

別解

三角関数に書きかえてから、半角で次数を下げる(別ルート)。 の置換は だけの道具ではなく、一般の でも使える。

とおくと 、 だから

有理関数の積分が のべきの積分になった。 なら

半角の公式を2回使って次数を下げる。

よって

本解と一致する。、 を使っている。「有理関数の積分」と「三角関数の積分」は という橋でつながっている。 が小さいうちは、漸化式を立てずに半角の反復で押し切るほうが速い。どちらの形で計算するかを選べるのが強みである。

ポイント

  • は で 。
  • 部分積分で を出す。
  • で に分解すると、漸化式が閉じる。

よくある間違い

  • 部分積分の端の項 の値を としてしまう。 では分母が になる。
  • の分解を思いつかず、 を新しい記号で置く。未知数が増えるだけで、方程式が閉じない。
  • で の上端を としてしまう。 の上端は であって ではない。対応するのは である。

問41/(1+e^x) の対称性で折りたたむ定積分

最難関編対称性置換積分偶関数・奇関数

問題

(1) すべての実数 に対して

が成り立つことを示せ。

(2) を偶関数、 を正の定数とするとき

が成り立つことを示せ。

(3) を求めよ。

ヒントを見る

原始関数は書けない。区間が原点対称であることが唯一の手がかりだ。 と組になる式は何か。それと足すとどうなるか。

解答・解説

方針

の原始関数は初等関数では書けない。使えるのは「区間が原点対称」という事実だけである。 の置換で得た式ともとの式を足すと、(1)により厄介な分母がそっくり消える。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の原始関数は、初等関数では書けない。 が分母にいるせいだ。

しかし積分区間が と原点対称である。ここに手がかりがある。 と折り返した積分を、もとの積分に足してみる。 と の和が になるなら、厄介な分母がそっくり消えてしまう。

実際そうなる。 は点 に関して対称だ。対称な2点の高さを足すとつねに になる。この問題はこの一点で解ける。

重要区間が原点対称なら、 の置換で得た式ともとの式を足す。 と組になるのは で、和は になる

① (1) 通分する。 分母・分子に を掛けると

よって

② (2) 折り返して足す。 とおく。 とおくと で、 は 。向きが入れ替わって負号が吸収され

最後の等号で が偶関数であること()を使った。もとの式とこの式を足すと、(1)より

最後は「偶関数の原点対称区間の積分は、半分の2倍」を使った。よって 。

③ (3) 当てはめる。 は偶関数だから、(2)がそのまま使える。

xyO(0, 1/2)
y=1/(1+e^x) は点 (0, 1/2) に関して対称。x と -x での高さを足すとつねに 1(破線)になる。この『2つ足すと1』が、原点対称な区間の積分を半分に折りたたむ

まとめ: 原始関数が求まらなくても、対称性を使えば分母を消せる。「 を見たら、 を足す」は難関大の頻出パターンである。分母がまるごと消えて、式が大きく簡単になる。

発展。 (2)は「重み を掛けて原点対称区間で積分すると、右半分だけを重み で積分したのと同じ」と読める。重みが左右で と に分かれ、合わせてちょうど 個ぶんになるからだ。

この関数は物理でフェルミ分布と呼ばれ、 の形で「電子がエネルギー の状態を占める確率」を表す。点 に関する対称性は「境界のエネルギーではちょうど半々」という物理的な意味を持つ。数学の対称性がそのまま自然界の対称性になっている例である。

答

(1) 通分すればよい (2) の置換で得た式ともとの式を足す (3)

別解

被積分関数を「偶関数 奇関数」に切り分ける(構造から見る)。 (1)の等式は、 から を引いたものが奇関数であることを言っている。実際

で、 を に変えて分母・分子に を掛ければ

となり、確かに符号が反転する。したがって被積分関数は

と分解できる。第2項は(偶関数)(奇関数)(奇関数)だから、原点対称な区間での積分は になる。残るのは第1項だけで

本解が「2本の式を足して消す」道なら、こちらは「最初から消える部分を切り離す」道である。使っている事実は「奇関数の原点対称区間の積分は 」という、いちばん基本的なものだけだ。同じ対称性を、分解の言葉で述べ直したのである。

ポイント

  • と の和は 。
  • 原点対称な区間では の置換式を足す。
  • 分母が消え、 だけが残る。

よくある間違い

  • 原始関数を求めようとする。 の原始関数は初等関数では書けない。「区間が原点対称」という条件こそが、与えられた唯一の道具である。
  • (2)の置換で (偶関数)を使い忘れる。 が奇関数だと、同じ計算をしても恒等式が出るだけで値は決まらない。偶関数であることが、この方法が使える条件になっている。
  • 自体が偶関数だと勘違いする。偶なのではなく、 を引いたものが奇関数、という構造である。グラフは点 に関する点対称であって、 軸対称ではない。

問5x^m(1-x)^n の積分と二項係数の交代和

最難関編部分積分漸化式二項定理

問題

を 以上の整数とし

とおく。

(1) のとき が成り立つことを示せ。

(2) を示せ。

(3) を求めよ。

ヒントを見る

(1) 部分積分で を微分する側に回すと、 が1つ減る。端の項はどうなるか。(3) 求める和は、じつは(2)で計算した積分そのものである。 を展開してみよ。

解答・解説

方針

同じ積分を2通りに計算する。片方は部分積分の漸化式で閉じた形に、もう片方は二項定理で展開してから項別に積分する。両者を等号で結べば、二項係数の交代和の値が手に入る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (3)の和は、そのままではとりつく島がない。 が分母にも二項係数にも現れ、符号まで交代している。

だが を二項定理で展開して積分すれば、ちょうどこの和が出てくる。つまり(3)は「積分を展開して計算した姿」である。

ならば作戦は決まる。同じ積分を2通りに計算すればよい。片方は展開して和にする。もう片方は部分積分で閉じた形にする。2つを等号で結べば、和の値が手に入る。

積分のほうは部分積分でよい。 を微分する側に回すと指数が1つ下がり、 を積分する側に回すと指数が1つ上がる。重みが から へ移っていくのだ。端の項は両端とも になる(片方には のべき、もう片方には のべきが残るから)。だから漸化式はきれいに閉じる。

公式部分積分
定理二項定理

① (1) 部分積分する。 、 とすると 、 である。

端の項を見る。 だから では 、 では 。両端とも である。よって

② (2) 繰り返して落とす。 (1)を 回使うと、 が になるまで下がる。

最後は 。分子に並ぶのは 、分母に並ぶのは

である。よって

③ (3) 同じ積分を展開して計算する。 二項定理より

有限個の和だから、項別に積分してよい。②の結果と見比べて

まとめ: 「同じ量を2通りに計算する」。積分は漸化式で閉じた形にし、和は展開で作る。2つの計算結果を等号で結ぶと、単独では手が出ない和の値が落ちてくる。

発展。 はベータ関数と呼ばれ、 が整数でなくても定義される。そのときの値は と書け、 は階乗を実数へ拡張したガンマ関数である。

答えは とも書ける。パスカルの三角形の数の逆数を、さらに で割った形だ。積分の値が組合せの数だけで書けてしまう。これは偶然ではない。 に 個の点をでたらめに打ったとき、ある点がちょうど 番目に小さくなる確率を考えると、この積分が自然に現れる。積分・組合せ・確率が1つの式で結ばれているのだ。

答

(1) 部分積分(端の項は両端とも ) (2) (1)を繰り返し、 に落とす (3)

別解

具体例で確かめ、対称性で見通す(手を動かすルート)。 一般式にいきなり飛びつかず、小さい場合で確かめるのは常に有効である。 なら

公式は 。合っている。 なら公式は 。(3)の和で確かめると

確かに一致する。左辺は正負が激しく入れ替わる4つの分数なのに、結果は という小さな数になる。打ち消し合いの妙である。

ここで と置換してみよう。 が出る。答えの式 が と について対称なのは、この置換の現れである。したがって漸化式は 側にも立てられる。どちらの指数を先に落としても、同じ場所に着く。

さらに と書き直すと、答えは二項係数ひとつで表せる。積分の値がパスカルの三角形の中にそのまま埋まっているのだ。

ポイント

  • 部分積分で の指数を下げる。端の項は両端とも 。
  • 繰り返して に落とす。
  • 同じ積分を二項展開すると、求める交代和になる。

よくある間違い

  • (1)の部分積分で を微分する側に回してしまう。それでは が下がって が上がるだけで、「片方の指数が になる」形に到達しない。どちらを微分側にするかで行き先が変わる。
  • 端の項 が でないと思い込む。 なら で 、 で で、両端とも消える。
  • (3)で「項別に積分してよいか」と悩んで止まる。ここは有限和(項数は 個)だから、そのような心配は無用である。無限和のときだけ注意が要る。

問6√(x²+1) の積分(根号を消す置換と循環型部分積分)

最難関編置換積分部分積分無理関数

問題

(1) と置換して

を求めよ。

(2) を求めよ。

ヒントを見る

(1) 与えられた置換をそのまま微分してみよ。 に が現れないか。(2) 根号が分子にある。部分積分で分母に回すとどうなるか。出てきた の分子を分母にそろえよ。

解答・解説

方針

とおくと となり、 になる。(2)は部分積分で根号を分母に回し、 で分けると 自身と が現れる。循環型の方程式として解く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 根号 が邪魔だ。これを消す置換を探したい。

うまい手がある。 とおくのだ。この を微分すると

となる。つまり 。扱いにくかった根号がそっくり に置き換わる。

(2)は根号が分母でなく分子にある。そこで部分積分だ。 を微分する側に回せば根号は分母に落ち、(1)で計算した が出てくる。しかも同時に 自身も現れる。循環型の部分積分である。

重要置換 は を与える(根号 を消す置換)

① (1) 置換する。 上の計算より である。 のとき だから

( なので絶対値は不要。)

② (2) 部分積分で循環させる。 と見て、 を積分する側( になる)に回す。

③ 分子を分母にそろえる。 と分けると

これを②に戻す。

が両辺に現れた。方程式として解けばよい。(1)を代入して

まとめ: 根号 は で消える。分子に根号がある積分は、部分積分で分母に回し、 で分解する。 が再び現れたら循環型なので、積分を「未知数」と見て方程式を解く。

発展。 は、放物線 の の部分の長さでもある。 だから となるからだ。

答えに が現れるのは、放物線の弧長が代数的な量だけでは書けないことを意味する。円弧の長さが を要求するように、放物線の弧長は を要求する。そして楕円になると、 でも三角関数でも書けなくなってしまう(楕円積分と呼ばれる、まったく新しい関数が要る)。曲線の長さは、その曲線がどれだけ複雑かを測る物差しでもあるのだ。

答

(1) (2)

別解

置換だけで押し切る(得意な人向け)。 部分積分を使わず、(1)の置換で まで続けて計算することもできる。 とおく。 の両辺を2乗すると 、すなわち だから

となる。 も根号も の簡単な式になった。微分して 。 は である。よって

(展開すると になる。)これは普通に積分できて

とおくと 、( との積が になる)。上端の値は

下端()の値は 。したがって

本解と一致する。この置換は という形からも分かるとおり、双曲線 上の点を1つの変数で表す仕掛けと同じものである。 型の根号はこれでまとめて片づく。

ポイント

  • で 。
  • 部分積分で根号を分母へ落とす。
  • で が現れ、。

よくある間違い

  • を見て 型の置換を試す。それは のための置換である。 と では使う置換が違う。
  • (2)の部分積分のあと、 をそのまま新しい積分として扱い、堂々巡りに入る。 の分解で と に割れることに気づけば、方程式になる。
  • 循環型で の移項を忘れる。 から であって、 ではない。両辺に現れた をまとめる一手を丁寧に。

問7減衰振動の絶対値の積分(山の面積が等比数列)

最難関編絶対値の積分周期性等比数列

問題

を自然数とし

とおく。

(1) を求めよ。

(2) を自然数とするとき

が成り立つことを示せ。

(3) を求め、さらに を求めよ。

ヒントを見る

絶対値がついたままでは原始関数が書けない。どこで区切れば絶対値が外れるか。 番目の山を、1つ目の山に重ねてみよ。 からは何が出てくるか。

解答・解説

方針

は周期 。 ごとに区切れば絶対値が外れる。 番目の山を左端に平行移動すると、 から定数 がくくり出せ、残りは1つ目の山とまったく同じ積分になる。こうして山の面積は公比 の等比数列になり、和は等比数列の和で書ける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 絶対値のついた は、そのままでは原始関数が書けない。 ごとに符号が変わるからだ。

ならば ごとに区切ればよい。各区間の中では はただの で、山ひとつぶんの積分になる。

そこで平行移動を考える。 番目の山を左端まで引き戻すと、 から という定数がくくり出せる。 のほうは周期 (絶対値をとれば)でまったく同じ形に戻るからだ。

つまり、山の面積は公比 の等比数列になる。積分の問題が等比数列の和の問題になる。

公式部分積分を2回で循環させて
重要 の周期は ( の周期 ではない)。 ごとに区切れば絶対値が外れる

① (1) 1つ目の山の面積。 上の原始関数を使う( は微分すれば確かめられる)。

② (2) 番目の山を左端へ移す。 とおくと で、 は に対応する。

は ずらすと符号だけが反転するから、絶対値をとれば元に戻る。 では

また で、後ろは定数である。よって

山の面積は1つ進むごとに 倍になる。

xyO面積 Ae^(-π)Ae^(-2π)Aπ2π3π
y=e^(-x)|sin x| の山。面積は1つ進むごとに e^(-π)(約 0.043)倍に縮む。2つ目の山はすでに 1つ目の 4% ほどで、3つ目はこの縮尺では見えない。積分は、この等比数列の和にほかならない

③ (3) 等比数列の和にする。 は 個の山の面積の和だから

初項 、公比 、項数 の等比数列の和である( なので公比は ではない)。 のとき だから

最後は分母・分子に を掛けて整理した。

まとめ: 周期的な絶対値は「1周期ぶんを計算して、あとは等比数列」。積分・数列・極限が1本の線でつながる典型である。

発展。 各山の面積が公比 の等比数列になる、という事実は「減衰振動が一定の割合でエネルギーを失う」ことの数学的な表現である。

ばねにおもりを付けて水中で揺らすと、振れ幅は指数関数的に小さくなる。1回の振動で振幅が何倍になるかを考え、その比の対数を対数減衰率と呼び、減衰の強さを測る量として使う。本問の がその比にあたる。無限に振動しても総面積が有限にとどまるのは、公比が より小さいからである。

答

(1) (2) の平行移動で がくくり出せる (3) 、

別解

原始関数を1つ用意し、端点だけを追う(機械的なルート)。 平行移動を思いつかなくても、符号を丁寧に処理すれば同じ場所に着く。区間 では の符号は一定で、 である( なら 、 なら 、と交互になる)。よって

原始関数 を使う。、 だから

したがって

( を引くと、符号が同じ向きにそろう。)これに を掛けると符号が2乗になって消え

最後は とくくった。ここで本解と同じ等比数列に合流する。発想の飛躍がなくても、原始関数と端点の値を正確に追えば必ずたどり着く。うまい変形が見えないときの、確実な逃げ道である。

ポイント

  • の周期は 。 ごとに区切る。
  • 平行移動すると が定数として外に出る。
  • 山の面積は公比 の等比数列。和は等比数列の和。

よくある間違い

  • 絶対値を外さずに を計算してしまう。それは山と谷が打ち消し合った値であって、 の積分(面積の総和)とは別物である。
  • の周期を と思い込む。 の周期は だが、絶対値をとると周期は になる。区切り方を間違えると絶対値が外れない。
  • も周期的だと錯覚し、各山の面積が等しいと結論する。 は 進むごとに 倍に縮む。だからこそ等比数列になり、無限に足しても収束する。

問8三角関数の有理式(半角の置換と対称性)

最難関編置換積分半角の置換対称性

問題

(1) 定積分

を求めよ。

(2) 定積分

を求めよ。

ヒントを見る

(1) 分母に と が混ざっている。両方を同時に有理式にする置換は何か。(2) を に替えた積分も一緒に考えよ。2つを足すと分子は何になるか。

解答・解説

方針

(1)は三角関数の有理式だから で有理関数に落ちる。(2)は単独で置換すると重い。 版の積分を組として用意すると、 の対称性から2つは等しく、足すと分子が分母と しか違わない形になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分母に と が混ざっている。三角関数の有理式だ。

こういうときにいつでも使える置換が である。 も も の有理式になり、 まで の有理式になる。三角関数の積分が有理関数の積分になる。

(2)は別の工夫が要る。 を単独で置換しても計算できるが、かなり重い。

そこで 版の積分も一緒に考える。区間 では の折り返しで と が入れ替わり、分母は変わらない。だから2つの積分は等しい。しかも足すと分子が になり、分母 と「 だけ違う」。ここからすぐに片づく。

公式 とおくと 、、

① (1) 半角の置換。 とおく。 のとき である(置換するのは であって ではない)。分母を計算すると

の項が消えるので計算が楽になる。よって

がきれいに約分された。したがって

② (2) 組になる積分を作る。 次の2つを考える。

と置換すると 、 で、分母 は変わらない。区間も自分自身に移る。したがって である。

③ 足すと分母が現れる。 分子を足すと になる。これは分母から を引いたものだ。

(1)より だから 。 だったので

まとめ: 三角関数の有理式は で有理関数に落ちる。そして「分子を足すと分母になる」形の積分は、組になる積分を作って足すのが基本である。まともに置換するより、はるかに軽い。

発展。 の置換は、 と の有理式ならば必ず有理関数の積分に変えてしまう。原理的には、三角関数の有理式の積分はすべてこの一手で「解ける問題」になる(そのあと部分分数分解をすればよい)。

ただし、いつでも使えることと、楽であることは別だ。本問の(2)のように、対称性を先に使えば計算量は大きく減る。どんな場合にも使える方法は最後の手段に取っておき、まず構造を探すのが、計算の上手なやり方である。

答

(1) ( の置換) (2) (対称性で組になる積分を作り、分子を分母にそろえる)

別解

なぜ でうまくいくのか(半角で因数分解する)。 公式を当てるだけでは、なぜこの置換を使うのかが分からない。分母の構造を見れば、 が現れる必然が分かる。

半角の関係 、 を使うと

分母が でくくれた。そこで分母・分子を で割ると

分子に が現れた。これは の導関数の 倍である。実際 とおけば

だから

「 で置換せよ」という公式の理由は、この因数分解にある。置換を選ぶ理由は、分母が でくくれる形になっているかどうかという構造の観察にあり、公式の暗記ではない。

ポイント

  • で三角の有理式が有理関数になる。
  • 分母が となり、 が約分される。
  • (2)は 版と組にして足す。分子が分母 になる。

よくある間違い

  • の公式で の を落とす。 だから、 には が出る。
  • 上端の対応を と誤る。置換しているのは である。 に対応するのは である。
  • (2)を単独で半角置換してそのまま計算しようとする。できなくはないが計算量が跳ね上がり、途中で符号や約分を落としやすい。組になる を作って足す、という一手を先に探す。