数学III / 積分法の計算

積分法の計算 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 不定積分(累乗)
  2. 不定積分(1/x)
  3. 不定積分(指数関数)
  4. 不定積分(sin)
  5. 不定積分(cos)
  6. 不定積分(負の指数)
  7. 定積分(1/x)
  8. 定積分(指数関数)
  9. 定積分(sin)
  10. 不定積分(多項式)
  11. 不定積分(根号)
  12. 不定積分(1/cos²)

問1不定積分(累乗)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

積分は微分の逆。『微分すると になる関数』を探す。次数が つ上がって、係数の帳尻を合わせる形になる。 を忘れずに。

解答・解説

方針

()。指数を 増やして、その数で割る。積分定数 を付ける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 積分とは、微分の逆をたどることだ。

問いを、こう読み替える。「微分すると になる関数は、何か?」

微分すると指数が 減る。 だから、もとの指数は 大きい のはずだ。

を微分してみる。

惜しい。 が余分だ。

なら、 で割っておけばいい。

これが公式の成り立つ理由である。

「指数を 増やして、その数で割る」

そして、 を忘れない。 定数は微分すると消えるので、 に何を足しても、微分すれば同じ になる。

答えは つではなく、無限にある。 その全部をまとめて表すのが だ。

公式()

指数を 増やして、その数で割る。

まとめ:累乗の積分は「指数 、その数で割る」。微分()の逆。 を付けるのを忘れずに。微分して戻るか確かめると安心だ。

発展。 「微分の逆が積分」という当たり前に見える関係は、実は大事な内容をもっている。

それを、微積分学の基本定理という。 つの、まったく違う概念を結びつけているからだ。

  • 微分:接線の傾き。局所的な、瞬間の変化率
  • 積分:曲線の下の面積。大域的な、全体の積み上げ

傾きと面積。 一見、何の関係もない。それが「逆の操作」だというのは、意外な主張である。

なぜ、そうなるのか。面積を変数の関数と見る。

を、ほんの少し( だけ)増やす。 面積はどれだけ増えるか。増えた部分は、幅 、高さ約 の細い長方形だ。

両辺を で割る。

とすると、左辺は 。

「面積を求める関数を微分すると、もとの関数に戻る」

これが基本定理だ。

証明の中心は 行の式「面積の増加分 高さ 幅」である。この定理で、何が変わったのか。

それまで、面積の計算は「無限個の長方形を足し上げる」という、大変な作業だった。 アルキメデスが放物線の面積を求めるのに、何十行もの議論を要した。基本定理はそれを「原始関数を見つけて、端点で引き算する」に変えた。

無限の足し算が つの引き算になった。 世紀、ニュートンとライプニッツが独立に発見したこの定理が、微積分を「計算可能な技術」に変えた。この定理はその後の物理学や工学の基礎になった。

「微分の逆が積分」

この 行は微積分でいちばん基本になる定理の つである。

答

別解

「積分 面積」の側から、係数 の意味を確かめる。 から まで、 の下の面積を求めよう。公式を使えば

この を、面積の定義(細長い長方形の足し上げ)から出せるだろうか。

区間 を 等分する。 番目の長方形は

  • 横幅:
  • 高さ:

全部足す。

ここで、 の公式(数列で学んだ)を使う。

代入する。

とすると

面積は 公式と一致した。

数値でも確かめよう。

確かに に近づいている。

この計算が示すこと。

積分の公式 の分母 は、 の公式の最高次の係数から来ている。

であり、この がそのまま積分公式の係数になる。「和の公式」と「積分の公式」は、同じ構造をしていたのだ。歴史的には、こちらが先だった。

アルキメデスは 年前に「放物線と直線が囲む面積」を、この方法(取り尽くし法)で求めている。 微分も積分もない時代に、無限に細かい長方形を足し上げて。微積分の発明( 世紀)はこの面倒な計算を「微分の逆」という一手に置き換えた。

の公式を思い出して極限をとる、という数ページの計算が、 という 行で済むようになった。それが「微積分学の基本定理」の役割である。

ポイント

  • 。
  • 積分定数 を必ず付ける。

よくある間違い

  • 積分定数 を書き忘れる。不定積分の答えは つではなく、定数の分だけ無限にある
  • 指数を 減らして としてしまう(微分と混同)。積分では指数が 増える
  • 指数を増やしたあと、割る数を間違えて とする。割るのは新しい指数()

問2不定積分(1/x)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

の原始関数は、累乗の規則が使えない唯一の例外だった。どの関数を微分すると になるか。絶対値が付く理由も考えてみよう。

解答・解説

方針

は累乗の公式が使えない( で分母が )。 の積分は という特別な結果。絶対値を付ける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) だから、累乗の公式を使いたくなる。

を入れてみよう。

分母が 。 使えない。累乗の公式には、 か所だけ使えないところがある。それが だ。

では、どうするか。「微分すると になる関数」を思い出す。

対数だ。

ただし、 は でしか定義されない。 でも は意味をもつので、そちらもカバーしたい。そこで、絶対値をつける。

「 の積分だけは例外で、対数になる。しかも絶対値つき。」

公式( の特別な場合)

累乗の公式 は で分母が になり使えない。 の積分は

まとめ: の積分だけは という特別な結果( の逆)。 でも定義できるように絶対値を付けるのが約束。累乗の公式の唯一の例外だ。

発展。 の積分だけがなぜ特別なのか。面積の側から見ると、その理由が見える。

双曲線 の下の面積を、 から まで測る。

この面積関数は特別な性質をもつ。

「掛け算が、足し算になる」なぜ、そうなるのか。

第 項で、 と置換する(、 のとき )。

が約分されて消えた。

この「掛け算 → 足し算」こそ、対数の定義的な性質である。

つまり、 の下の面積は対数そのものである。なぜ、 でだけ、こんなことが起こるのか。 がスケール不変だからだ。

区間 を、区間 に縮めると、幅は 倍になる。 同時に、高さ は 倍になる。面積( 幅 高さ)は変わらない。

「拡大しても、面積が変わらない」という性質をもつのは、 ただ つだ。 で試すと、幅 倍、高さ 倍で、面積は 倍に変わってしまう。このスケール不変性が「掛け算 → 足し算」を生み、対数を生む。

そして、 が累乗公式の「穴」である理由も、これだ。

なら、答えは のべき。 べき関数は「 を 倍すると、値が 倍」というスケール則をもつ。

だが のときだけ、面積がスケール不変になる。 べき関数では表せない。「拡大しても変わらないもの」を測るには、掛け算を足し算に変える関数(つまり対数)が必要になる。

の積分が対数になるのは、偶然ではなく必然である。

答

別解

なぜ絶対値が要るのか。 の場合を、実際に計算して確かめる。

「絶対値をつけろ」と言われても、納得しにくい。 自分の手で確かめよう。

のとき、 は定義されない( の中身は正でなければならない)。では、 のとき、微分すると になる関数は何か。

を試してみよう。 なら なので、これは定義できる。合成関数の微分で計算する。

( の微分は 。ここで 、。)

確かに になった。

まとめると、こうだ。

つの場合を、 つの式にまとめたい。

そこで気づく。

どちらの場合も、 と書ける。

絶対値は つの場合を 行にまとめる工夫である。

数値で確かめよう。 での傾きは?

、。

確かに、 でも導関数は になっている。

注意すべきこと。

のグラフは 軸に関して対称ではない。

むしろ、 の部分と の部分は 軸を境に鏡映しになっている。

そして、 をまたいで積分してはいけない。

で被積分関数が発散する。 この積分はそもそも定義されない(発散する)。「絶対値をつけたから、負でも大丈夫」ではない。

という特異点を、またぐことはできないのだ。 積分区間は必ず か のどちらかに収まっていなければならない。

絶対値は便利だが、 の壁は越えられない。 そこを混同しないことが大切だ。

ポイント

  • ( は例外)。
  • 絶対値を付ける。

よくある間違い

  • 絶対値を書き忘れて とする。 の場合が抜け落ちる
  • に累乗公式を当てはめ、 という無意味な式を作ってしまう。 は公式の穴
  • も対数になると勘違いする。対数になるのは だけで、 は累乗公式()

問3不定積分(指数関数)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

の累乗の積分は形が変わらない。ただし中身の係数の分だけ調整が要る。微分して元に戻るかで検算すれば安心。

解答・解説

方針

。 は微分すると になるので、積分では逆に をかける。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「微分すると になる関数」を探す。

まず、素直に 自身を微分してみよう。

合成関数だから、内側 の微分 が余分に出てくる。

倍になってしまった。

なら、あらかじめ を掛けておけばいい。

「微分で出てくる係数を、積分では割って打ち消す」これが、合成関数の積分の基本発想だ。

同じ発想は や の積分にも使える。

内側が 次式なら、その係数で割る。 これでまとめて処理できる。

公式

を微分すると 。積分では逆に をかける。

まとめ: の積分は「 をかけて 」。微分で が前に出るぶん、積分では で打ち消す。 なら のまま。 を忘れやすいので注意。

発展。 「 を掛けて補正する」という手は、内側が 次式のときだけ通用する。

なぜ、 次式限定なのか。内側の微分が定数だからだ。

定数なら、積分の外にくくり出せる。では、内側が 次式ならどうなるか。

とおくと 。

ところが、被積分関数には という因子がない。

が残ってしまい、簡単にならない。この積分は、初等関数では書けないことが証明されている。微分は 秒。積分は永遠に不可能。

「積分できる形」と「できない形」の境目は、かなり微妙だ。

違いは、 という因子があるかないか、それだけ。その が「 の材料」になるかどうかで、解けるかどうかが分かれる。同じような例を並べてみよう。

どれも、見た目は同じくらい単純だ。それでも、積分できるものと、できないものがある。リウヴィルの定理( 年)がこの境界を厳密に定めた。

「初等関数の原始関数が、初等関数になるとは限らない」

しかも、なるかどうかを判定するアルゴリズムまで存在する(リッシュのアルゴリズム)。数式処理ソフトはこれを使って「初等関数では表せない」と判定している。

微分は、手順が決まっている。 どんな関数も機械的に微分できる。

積分は、そうはいかない。 手がかりを探し、置換や部分積分を試し、それでもダメなら「初等関数では書けない」と認めるしかない。この非対称性があるので、積分では工夫が必要になる。

答

別解

「 を掛けておく」を、置換積分として厳密に書く。慣れれば暗算でできるが、置換の手順を踏むと、なぜ なのかが完全に見える。内側を新しい文字で置く。

両辺を微分する。

ここが大事なところだ。 を に取り替えるとき、 という係数が生まれる。

もとの積分に代入する。

が積分の外に出た。あとは、基本の積分だ。

最後に、 を戻す。

本解と同じ答え

置換積分の何が起きているのか。 の式を、 の式に書きかえた。

引っ越すと、「ものさし」が変わる。 なので、 のものさしは の 倍細かい。

同じ幅を測っても、 で測ると 倍の数字が出る。 だから、面積(積分)を合わせるには を掛けて補正する必要がある。

この式がものさしの換算率を表している。

cm と mm の換算のようなものだ。 cm mm。同じ長さでも、mm で測れば数字は 倍。

置換積分は「積分しやすいものさしに、単位を変換する方法」である。この方法はもっと難しい積分で役に立つ。

とおくと、。

「」というかたまりが、まるごと に置き換わった。 これが置換積分の考え方だ。「 の部分が、被積分関数の中に隠れている」ので、それを見つけるのが置換積分のコツである。

ポイント

  • 。
  • をかけるのを忘れない。

よくある間違い

  • を掛け忘れて とする。微分すると になってしまい、元に戻らない
  • ではなく を掛けて とする。微分で出る係数は積分では「割る」
  • の積分も同じ要領でできると考える。内側が 次式()のときだけ、この方法が使える

問4不定積分(sin)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

『微分すると になる関数』を探す。符号を間違えやすいので、答えを微分して確かめる習慣を。

解答・解説

方針

の逆をたどる。 の積分は (マイナスがつく)。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「微分すると になる関数」を探す。

微分の公式を思い出そう。

番目の式に注目する。 を微分すると、。欲しいのは だから、符号を逆にすればいい。

マイナスがつく理由が、これだ。微分でマイナスが出るなら、積分では逆にマイナスをつけて打ち消す。

符号を間違えないコツ。

答えを微分して、 に戻るか確かめる。 すぐにできる検算だ。

「積分は微分の逆。符号もたどり直す。」 これを毎回、口の中で唱えたい。

公式

なので、逆に

まとめ: の積分は (マイナスがつく)。微分では 、 だった。積分はその逆なので符号に注意。、 と覚える。

発展。 を 回微分すると元に戻る。この「 周期の循環」は、 と比べると特徴が分かる。

なぜ、 は 周期で、三角関数は 周期なのか。オイラーの公式を使うと、その理由が分かる。

この式を微分すると

「微分する」ことが「 を掛ける」ことと同じになった。そして、 を 回掛けると?

回で元に戻る。

三角関数の 周期は虚数単位 の 周期と同じものである。

複素数平面で言えば、 を掛けることは の回転。 回回せば で 周。「微分すると、位相が ()進む」という事実と、ぴったり対応している。

この視点は積分にも使える。

( を使った。)

実部と虚部に分けると

一方、左辺は

両者が一致する

実部を比べると 、虚部を比べると 。 つの積分公式が つの複素数の計算から同時に出てきた。複素数を使うと、三角関数の計算は指数関数の計算になる。

そして、指数関数の計算はずっと簡単だ(微分も積分も、係数を掛けたり割ったりするだけ)。これが、物理学や工学で複素数を多用する理由である。

交流回路の解析、量子力学、信号処理では、どれも三角関数を に置き換えて計算し、最後に実部をとる。

という素朴な公式も、複素数を使うと別の見方ができる。

答

別解

符号を間違えないための「循環の輪」を作る。 と の微分は つで一巡する。

回微分すると、元に戻る。

確かめよう。

この輪を頭の中に描いておく。そして、積分は「輪を逆回り」することだ。

の つ手前(反時計回り)にいるのは、。

同じ輪で、他の積分も読める。

つの積分公式が つの輪から全部出てくる。符号で迷ったら、輪を書けばいい。なぜ、こんな循環が起こるのか。

と は だけずれた同じ波だからだ。

微分すると、位相が 進む。

回ずらせば となり、 周して元に戻る。積分は逆向きに ずらすこと。

( を使った。)

確かに、一致する

「微分 位相を進める、積分 位相を戻す」電気回路で、コンデンサやコイルが電流の位相をずらすのも、この数学で説明できる。

丸暗記ではなく、 つの輪として覚える。 そうすれば、 つの公式を忘れることはない。

ポイント

  • (マイナス)。
  • 微分の逆。符号に注意。

よくある間違い

  • マイナスを落として とする。微分すると になり、符号が合わない
  • の積分と の積分を取り違える。 の積分にはマイナスがつき、 にはつかない
  • 積分定数 を忘れる。三角関数でも、不定積分には必ず が要る

問5不定積分(cos)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

『微分すると になる関数』はどれか。・ の微分の表を思い浮かべて逆にたどろう。

解答・解説

方針

の逆。 の積分は (こちらはマイナスなし)。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 前問と対にして覚えるべき積分だ。

「微分すると になる関数」は?

そのまま、 である。

マイナスはつかない。 つを並べて、対比しよう。

なぜ、 の積分にだけマイナスがつくのか。

微分の側を見れば分かる。 を微分するとマイナスが出る()。その符号を積分では打ち消す必要がある。

逆に、 を微分してもマイナスは出ない()。だから積分でも符号はそのまま。「マイナスが出るのは、 を微分するときだけ」ということが、すべての符号のもとになっている。

公式

なので、逆に

まとめ: の積分は (マイナスなし)。 の積分()とセットで覚える。「、」。マイナスがつくのは のほうだ。

発展。 と の積分には、「直交性」という重要な性質がある。

周期( から )にわたって、 つの三角関数の積を積分してみよう。

周波数が違う波どうしの積は、積分すると必ず になる。ところが、同じ波どうしなら

ではない値が出る。

この性質を直交性という。

なぜ「直交」なのか。

ベクトルの内積を思い出そう。

関数どうしの「内積」を、積分で定義する。

すると、異なる周波数の三角関数は、この内積が になる。つまり「直交している」ことになる。

関数を無限次元空間のベクトルと見る。 その空間で、、、、、 は互いに直交する基底ベクトルになる。そして、ここからフーリエ級数が生まれる。

「どんな周期関数も、 と の重ね合わせで書ける」

係数 、 は、どうやって求めるか。

直交性を使う。 両辺に を掛けて、 から まで積分する。すると、直交性により、 の項だけが残り、他はすべて になる。

欲しい成分だけを、「取り出す」ことができる。これは、ベクトルの成分を内積で取り出すのと、まったく同じ操作だ。

フーリエ解析は現代の多くの技術で使われている。

  • MP3: 音を周波数成分に分解し、聞こえない成分を捨てて圧縮
  • JPEG: 画像を周波数成分に分解し、細かい成分を捨てて圧縮
  • 医療のMRI: 信号を周波数分解して、体内の画像を再構成
  • 地震波の解析、音声認識、通信

どれも、この直交性を使っている。そして、その直交性は のような素朴な積分公式を積み重ねて証明される。基本公式は決して「基本」にとどまらない。

答

別解

面積として、 の積分を「見る」。公式を使うだけでなく、定積分の値がグラフのどこを表しているのかを確かめよう。

から まで積分する。

答えはちょうど 。

これは何の面積か。

のグラフで、(高さ )から (高さ )まで、なめらかに下がる曲線の下の面積だ。幅は 、高さは最大 。もし三角形なら、面積は 。

もし長方形なら 。

実際の面積は で、その中間にある。 曲線が三角形の斜辺より上に膨らんでいるぶん、面積が大きくなっている。それがちょうど になる。

次に、 周期分を積分してみよう。

答えは だ。

なぜ になるのか。

のグラフは 軸の上と下を、対称に行き来する。

  • : 正の面積
  • : 負の面積
  • : 正の面積

合計 。

上と下が、きれいに打ち消し合う。

これは「面積が 」ということではない。 実際の面積(絶対値の和)は だ。

定積分は 軸より下を負として数える。この符号つきの面積を、符号つき面積という。「 周期の積分が 」という事実には、大事な意味がある。

交流電流(正弦波)の平均値は だ。 プラスとマイナスが打ち消し合うから。だから、交流の「大きさ」を表すには、平均値では役に立たない。

そこで、 乗してから平均する(実効値)。

平均は 、その平方根が 。

家庭のコンセントが「 V」というのは、この実効値だ。 実際の電圧は V の間を振動している()。 という 行の公式が、電力の計算でも使われる。

ポイント

  • 。
  • (マイナスなし)。

よくある間違い

  • の積分にもマイナスをつけて とする。マイナスがつくのは の積分のほう
  • を の微分()と取り違える。積分は微分の逆で、符号がたどり直される
  • 定積分が になったとき「面積が 」と解釈する。 軸の上下が打ち消し合っただけで、実際の面積は ではない

問6不定積分(負の指数)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

を負の指数の累乗に書き直せば、いつもの累乗の積分規則がそのまま使える。

解答・解説

方針

と指数に直す。 は ではないので累乗の公式が使える。指数を 増やして 、その数 で割る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) を見ると、「また対数か?」と思うかもしれない。

違う。 対数になるのは、 だけだ。

指数に直して確かめよう。

累乗の公式が使えるのは、 のとき。

今回は 。 ではないので、公式が使える。

答えにマイナスがつくのは、 で割ったからだ。

検算しよう。

「分数の形を見たら対数」ではない。

(指数 )だけが例外で、それ以外は累乗の公式。 この区別を確実にしておこう。

公式()

① 指数に直す。 。()なので公式が使える。

② 公式で積分する。 指数を 増やして 、その数 で割る。

まとめ: は に直せば累乗の公式が使える( は例外の ではない)。積分結果 を微分すると に戻る。()だけが になる例外だ。

発展。 「無限に広がるのに、面積は有限」という話を、もう一歩進める。

トリチェリのラッパ(ガブリエルのホルン)という、有名な図形がある。()を、 軸のまわりに 回転させてできる立体だ。無限に長い、細くなっていくラッパの形をしている。

この立体の体積を計算しよう。

体積は で、有限だ。無限に長い立体なのに、 リットルの水で満たせる。次に、表面積を計算する。

表面積の公式は複雑だが、下から評価するだけで十分だ。

表面積は無限大。

まとめると、こうなる。

ここに、有名な逆説が生まれる。「このラッパは、 リットルのペンキで満たせる。」「だが、内側の表面を塗るには、無限のペンキが要る。」

満たせるのに、塗れない?

どこがおかしいのか。

おかしくない。 数学的には、どちらも正しい。逆説に見える理由は「ペンキを塗る」という物理的なイメージにある。

現実のペンキには、厚みがある。 厚み のペンキを塗るなら、必要な量は「表面積 」で、確かに無限になる。

だが、ラッパの細い部分では、直径がペンキの厚みより小さくなってしまう。 そこはもう「塗る」ことができない。一方、「満たす」というのは、厚みゼロの数学的な体積の話だ。

「無限の表面積」と「有限の体積」は、矛盾しない。 直感が 次元の物理的な感覚にもとづいているために、矛盾に見えるだけだ。この図形を発見したトリチェリ(–)の結果は、当時の数学者たちにとって意外なものだった。

「無限は、有限に含まれうる」この事実は、無限という概念への理解を、根本から書き換えた。 という、なんでもない公式。

この公式から、 年前に議論された無限の逆説が出てくる。

答

別解

と の違いを、「無限まで積分する」ことで見る。

どちらも で に近づく関数だ。 グラフの形も似ている。だが、無限まで積分すると、正反対の結果になる。

まず、 を、 から まで積分する。

をどんどん大きくすると?

無限まで積分しても、面積は に収まる。

無限に広がる領域なのに、面積は有限。次に、 で同じことをする。

を大きくすると?

発散する。 面積は無限大になってしまう。同じような形の つの曲線。片方は面積が有限、もう片方は無限。

この差はどこから来るのか。「 への近づき方の速さ」だ。

で比べると、 に対し、。 倍の差だ。すそが薄いほうが、面積を稼がない。

この境目がちょうど にある。

、つまり が収束と発散を分ける境界線だ。そして、この境界は無限級数の話と完全に対応している。

積分の収束・発散と、級数の収束・発散が、同じ境界をもつ。

これは偶然ではない。 積分は「連続的な足し算」、級数は「離散的な足し算」で、どちらも足し上げる操作だからだ(積分判定法)。 という関数はあらゆる意味で「境界線上」にいる。

  • 積分公式: 累乗公式が使えない唯一の例外
  • 原始関数: べき関数でなく、対数
  • 広義積分: 収束と発散の境目
  • 級数: 収束と発散の境目

この つの「特別扱い」はすべて同じ根っこから生えている。

ポイント

  • 、公式は で使える。
  • だけが例外()。

よくある間違い

  • の積分も対数だと考えて とする。対数になるのは だけ
  • 指数を 増やしたあと、割る数を (もとの指数)にしてしまう。割るのは新しい指数
  • 答えのマイナスを落として とする。微分すると になり、符号が合わない

問7定積分(1/x)

★ 基礎定積分

問題

定積分 を求めよ。

ヒントを見る

の原始関数(対数)に、上端・下端を代入する。 と の値はすぐ出せる。

解答・解説

方針

原始関数 を求め、上端 ・下端 を代入して引く。、。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 定積分の手順は、 段階だ。

① 原始関数を求める → ② 上端と下端を代入して、引く

この問題では、原始関数は 。積分区間 はすべて正なので、絶対値は外してよい。

ここで、 の値を思い出す。

答えはぴったり 。

上端が に選ばれているのは、偶然ではなく、面積がちょうど になるように、 が定められているのだ。その意味は別解で明らかにする。

公式、

① 原始関数を求める。 ( で正なので )。

② 代入して引く。

まとめ: の定積分は で計算する。、 を使う。区間 の面積がちょうど になる、きれいな結果だ。

発展。 の積分が対数になるという事実は、素数の分布ともつながっている。

素数定理という、数論の有名な定理がある。「 以下の素数の個数 は、 に近い」

確かめよう。

  • : 実際の素数は 個。
  • : 実際は 個。

そこそこ合っている。

もっと精度の高い近似は積分で書かれる。

対数積分と呼ばれる。

  • : (実際は で、誤差 )

かなり高い精度だ。

なぜ、素数の分布に が現れるのか。

直感的にはこうだ。

「 の近くの数が素数である確率は、およそ 」

が大きくなるほど、素数はまばらになる。 その「まばらさ」の度合いが、 で測られる。だから、 から まで、 を「足し上げれば」(積分すれば)、素数の個数の見積もりになる。

素数という、離散的で気まぐれに見える対象。その分布が連続的な積分で、これほど正確に記述される。これは、 世紀の数学者たちが見つけた事実である。

そして、この近似の「誤差」を精密に評価する問題が、リーマン予想だ。

年にリーマンが提出したこの予想は、 年以上、未解決のまま。 懸賞金 万ドルがかかっている。「 と の誤差は、 程度に収まるか?」

これが証明できれば、素数の分布が完全に理解できる。 という、教科書の定積分。その と の関係は、素数についての古くからの問題の、中心部分にまでつながっている。

基本公式は決して「基本」では終わらない。

答

別解

この定積分は の「定義」そのものである。

とは何か。 いくつかの答え方がある。

  • の極限
  • 微分しても変わらない指数関数の底
  • の和

そして、もう つ。

「双曲線 の下の面積が、ちょうど になるところ」

それが だ。

この定義がいちばん幾何的で分かりやすい。確かめよう。上端をいろいろ変えて、面積を測ってみる。

面積が になるのは、 と の間。その正確な値が

面積を測るだけで、 が現れる。なぜ、これが自然な定義なのか。歴史的に、対数はこの面積として発見された。

世紀の数学者たちは の下の面積を調べていて、それが特別な性質をもつことに気づいた。

「掛け算が、足し算になる」のは、対数の性質だ。面積を測っていたら、対数が出てきてしまった。そして、その対数の「底」が何かを調べると、 という数が出てきた。

この数に という名前をつけたのが、オイラーである。 つの定義がすべて同じ数を指す。

極限、級数、微分、積分という つの別々の考え方から、同じ つの数にたどり着く。

これほど多面的な数は と のほかにない。そういう数だけが「自然」と呼ばれる資格をもつ。この問題の答えが というきれいな数になるのは、 がそう定義されているからだ。

ポイント

  • 。
  • 、。

よくある間違い

  • を のまま残してしまう。自然対数では
  • を としてしまう。( の 乗が )
  • 定積分で の引く順を逆にする。上端の値から下端の値を引く

問8定積分(指数関数)

★ 基礎定積分

問題

定積分 を求めよ。

ヒントを見る

の原始関数はそのまま 。上端・下端を代入して引くだけ。

解答・解説

方針

原始関数 を求め、上端 ・下端 を代入して引く。。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の原始関数は、 自身だ。

微分しても積分しても、姿が変わらない。 これが の特権である。あとは、端点を代入して引くだけ。

を忘れないこと。 どんな数の 乗も だ。

この値の意味を確かめておこう。 は で高さ 、 で高さ の曲線。もし直線(台形)なら、面積は 。

実際の面積 はそれより少し小さい。 曲線が下に凸で、台形の斜辺より下にあるからだ。

答えが出たら、大きさの見当と合うか確かめる。 それが検算になる。

公式

① 原始関数は 。

② 代入して引く。 。

まとめ: の定積分は「 に上端・下端を代入して引く」。 を忘れずに。 が、 と 軸が で囲む面積になる。

発展。 「微分しても積分しても変わらない」という の性質は、微分方程式でとても重要な役割をもつ。

もっとも基本的な微分方程式はこれだ。

解は 。 他にはない。では、 階の微分方程式なら?

「 回微分すると、自分に戻る」

解は 。 やはり指数関数だ。次に、符号を変えてみる。

「 回微分すると、自分の 倍」この解は で、三角関数になる。 なら指数関数、 なら三角関数。

符号 つで、まったく違う種類の関数が現れる。そして、この つを橋渡しするのが、複素数だ。

確かめる。

指数関数の肩に をつけると、三角関数になる。

オイラーの公式が微分方程式の側から現れた。この構造が物理学のすべてを支配している。

指数的な成長・減衰()。

  • 人口、複利、放射性崩壊、細菌の増殖

振動()。

  • バネ、振り子、音波、光波、電磁波

そして、両方が混ざった減衰振動。

解は で、指数的に減衰しながら振動する。

車のサスペンション、建物の耐震設計、電気回路は、どれもこの方程式を使って設計される。そして、量子力学の基本方程式(シュレーディンガー方程式)も、 の形をしている。

このように、 は物理の多くの式に現れる。 という、 行の計算。指数関数が微分方程式の解としてよく現れることが、その理由である。

答

別解

面積の定義(長方形の足し上げ)から、 を出してみる。「なぜ になるのか」を、原始関数を使わずに確かめる別解である。区間 を 等分し、長方形の面積を足す。

この和をじっと見てほしい。

これは、公比 の等比数列だ。

( だから。)

等比数列の和の公式が使える。 初項 、公比 、項数 。

( となるのが、分かりやすい。) を掛けて

の極限をとる。

とおくと、。

ここで、 つの極限を使う。

( 番目は、 の での微分係数が であることと同じだ。)

面積は 原始関数を使わずに導けた。

数値で確かめよう。

に近づいている

この計算から見えること。

指数関数の積分が そのものになる理由が、等比数列の性質に根ざしている。 は「等間隔で見ると、等比数列になる」関数だ。

どの隣どうしの比も で一定。和をとると、等比数列の和の公式で「初項と末項の差」が出てくる。

そして極限をとると、 の値の差 の形が現れる。「等比数列の和 → 指数関数の積分」離散的な等比数列が、連続にすると指数関数になり、その和が積分になる。

数列(数学B)と微積分(数学III)が、ここで 本につながる。

ポイント

  • 。
  • 。

よくある間違い

  • を としてしまい、答えを にする。 なので、
  • に余計な係数をつけて などとする。 の積分は そのもの
  • と (べき関数)を混同する。指数の肩に があるのが指数関数

問9定積分(sin)

★ 基礎定積分

問題

定積分 を求めよ。

ヒントを見る

の原始関数の符号に注意しながら、上端・下端を代入。 と の値を確認して、引き算の符号を丁寧に。

解答・解説

方針

原始関数 を求め、上端 ・下端 を代入して引く。、。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 手順は、いつもの 段階だ。

① 原始関数: の原始関数は (マイナスがつく)。

② 端点を代入して引く。

ここで、符号のミスが起きやすい。 ていねいに計算しよう。

答えは 。

マイナスが つ絡むので、慎重に。そして、答えの という数を、図で確かめる。 の山( から )は幅 、高さ 。

長方形なら面積 、三角形なら 。 その中間の という値は、なるほど妥当だ。

答えが出たら、大きさの感覚と照合する。 これが最良の検算である。

公式

① 原始関数は 。

② 代入して引く。 、。

まとめ: の定積分は で計算。符号の処理(、)がヤマ。 で と 軸が囲む面積 という有名な値だ。

発展。 の山の面積がちょうど という整数になる。これは、偶然だろうか。

偶然ではなく、弧度法を選んだ結果である。もし度数法で角を測っていたら、どうなるか。

汚い数字になる。

弧度法だからこそ、 という清潔な答えが出る。弧度法を使うと式が簡単になる例は、ほかにも多い。

すべて、係数 や という、きれいな数になる。度数法なら、どこにも という汚い係数が張りつく。さて、 の積分から、思わぬ結果が導ける。

乗の積分を計算してみよう。

半角の公式 を使う。

答えは 。

の積分は ( なし)、 の積分は ( あり)。 乗しただけで、 が現れた。この は電力の計算で使われる。

交流の電力は電圧の 乗に比例する。

その平均は

平均はちょうど 。だから、交流の実効値は

家庭用の V は実効値なので、瞬間の最大電圧は

コンセントの電圧は、実は V の間を、 秒に 回(または 回)振動している。「 V」という表示は、 という積分から出た数だ。

という基本の計算。

その 乗版がいまこの瞬間、部屋の照明を灯している。

答

別解

答えの を、「平均の高さ」として読み解く。

面積 幅 平均の高さ、と考えてみよう。

の山の「平均の高さ」は約 である。この数字がなぜ大切か。

最大値は (頂点)、最小値は (両端)。 単純に と考えるのは間違いだ。

の山は、両端で急に立ち上がり、頂上付近では長く平らである。 だから、平均は真ん中()より高くなる。

「高いところに、長く留まっている」ので、その分だけ平均が押し上げられている。この という数は工学の現場で頻繁に使われる。交流を整流(全波整流)して直流にすると、その平均値は最大値の 倍になる。

電源アダプタの設計で、必ず出てくる係数だ。さらに、対称性を使うと、計算が半分になる。

なぜか。 の山は を軸に左右対称だからだ。

確かめる。

対称性を見つけたら、半分だけ計算して 倍する。 計算量が減り、ミスも減る。もう つ、大事な区別をしておこう。

から まで(丸ごと 周期)積分すると?

になる。

山(、面積 )と谷(、面積 )が、打ち消し合うからだ。「積分が 」と「面積が 」は、まったく別のこと。実際の面積(絶対値)を知りたければ

絶対値をつけて、 軸の下も正として数える。この区別を忘れると、「速度を積分して道のりを求めよ」という問題で、必ず間違える。

  • 変位 (符号つき)
  • 道のり (絶対値)

符号つきか、絶対値か。 問題文が何を聞いているかを、必ず見極めよう。

ポイント

  • 。
  • 、符号の処理に注意。

よくある間違い

  • の代入で、 のマイナスを処理し損ねる。 と、 段ずつていねいに
  • としてしまう。(単位円で の 座標)
  • から まで積分して になったとき、「面積が 」と答えてしまう。山と谷が打ち消し合っただけで、実際の面積は

問10不定積分(多項式)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

項ごとに、次数を つ上げて係数を調整する。最後に 。

解答・解説

方針

各項を別々に積分する。、。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 項の引き算だ。バラバラに積分してよい。

なぜバラしてよいのか。

微分がそういう性質をもっているからだ。

微分は和と定数倍について項ごとに計算できる。 その逆の操作である積分も、同じ性質をもつ。これを積分の線形性という。

あとは、各項に累乗の公式を当てはめる。

係数がきれいに約分されて、 という簡単な形になった。

は つだけ。 項ごとに 、 と書く必要はない(まとめて つの定数になる)。

公式。項ごとに積分

各項を積分する。

(確認:。)

まとめ:多項式は項ごとに積分。 は 、 は 。係数の変化も確かめると計算ミスが減る。数II の積分と同じだ。

発展。 積分も和と定数倍について項ごとに計算できる(線形性)。では、掛け算はどうか。

これは、成り立たない。

反例で確かめよう。 とする。

左辺:

右辺:

まったく違う。

「積の積分は、積分の積ではない。」微分でも、同じことが言えた。

正しくは、積の微分公式

この式を逆に読んでみよう。両辺を積分する。

移項すると

部分積分の公式である。

積の微分公式を積分しただけで、部分積分が出てきた。この公式は「積の積分ができない」という困難への、 つの回答だ。

積の積分を、直接は計算できない。 だが、「別の積の積分」に書き換えることはできる。

そして、書き換えた先が計算しやすければ、それで解ける。例:

、 とおく(、)。

が微分されて になり、積分が簡単になった。部分積分のコツは「微分すると簡単になるほう」を に選ぶこと。

  • → 微分すると次数が下がる → に選ぶ
  • → 微分すると (代数式)になる → に選ぶ
  • 、 → 微分しても複雑さが変わらない → に選ぶ

「積の積分はできない」という問題に対して、部分積分という方法が つある。そして、その方法のもとになっているのは、積の微分公式という 行の等式である。

答

別解

答えを微分して、検算する。

積分の答えは必ず微分で確かめられる。 これほど確実な検算法はない。

答え を微分する。

もとの被積分関数に、ぴったり戻った。

すぐに終わる検算だ。 積分の答えを書いたら、必ずこれをやる習慣をつけたい。なぜ、この検算が役に立つのか。

微分は「機械的に必ずできる」からだ。 迷いようがない。

積分は「探す」作業で、間違える余地が大きい。 その答えを、確実な微分で検証する。「不確かなものを、確かなもので確かめる」のは、数学の基本的な方法である。

さて、積分定数について、もう つ考えておこう。「なぜ は つでいいのか。」分けて積分したのだから、こう書くべきではないか。

確かに、 つの定数が出てくる。だが、 は結局「ただの定数」だ。それを と名づければ、 文字で済む。

「任意の定数どうしを足し引きしても、任意の定数」だから は つで十分である。ここで、 の意味を、もう一段深く考えてみよう。

なぜ、積分の答えは つに決まらないのか。微分が「情報を捨てる」操作だからだ。

この つは、微分すると全部同じ になる。微分の時点で、「定数の分だけ上下にずれている」という情報が失われる。だから、逆をたどっても、元の位置は復元できない。

グラフで言えば、 軸方向にどれだけ平行移動されていたかが、分からない。そして、この不定性を消すには、追加の情報が要る。「点 を通る」といった条件があれば

が確定し、答えが つに決まる。この「条件で を決める」作業が、微分方程式を解くということの中身だ。

  • 微分方程式: 変化のルール(傾き)を与える
  • 積分: そこから関数を復元する( の不定性が残る)
  • 初期条件: を決める(スタート地点を指定する)

ロケットの軌道計算も を決める作業である。 加速度(方程式)だけでは足りない。「どこから、どんな速度で発射したか」を与えて、初めて軌道が つに決まる。

は単なるお約束ではなく、「変化のルールだけでは、未来は決まらない」ことを表している。

ポイント

  • 多項式は項ごとに積分。
  • 微分して戻るか確認。

よくある間違い

  • で係数 を割り忘れ、 としてしまう。 と約分する
  • の項でマイナスを落とし、 としてしまう。符号は最後まで持ち歩く
  • 積分定数を項ごとに 、 と書く。 つの定数の差はやはり定数なので、 は つで足りる

問11不定積分(根号)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

根号を分数の指数に直せば、累乗の積分規則で処理できる。分数の割り算(逆数を掛ける)だけ落ち着いて。

解答・解説

方針

と指数に直す。累乗の公式で指数を 増やして 、その数 で割る(= をかける)。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 根号のままでは、公式が当てはまらない。

指数に直す。

これで、累乗の公式が使える。

を入れる。

で割る を掛ける。 分数の割り算は逆数を掛ける。最後に、根号の形に戻す。

「根号 → 分数指数 → 公式 → 根号に戻す」微分のときと、まったく同じ ステップだ。

公式( は実数、)

① 指数に直す。 。

② 公式で積分する。 指数を 増やして 、その数 で割る。

まとめ: は に直せば累乗の公式が使える(数III では が分数でも使える)。 で割る = をかける。答えは に戻して書く。

発展。 の下の面積が 、 の下が 。 つで正方形を分ける。

この関係は逆関数の一般的な性質に根ざしている。 と、その逆関数 について、こんな公式がある。

右辺は長方形の面積だ。左辺の つの積分がその長方形を分け合っている。なぜ、こうなるのか。

のグラフを描き、点 を取る。 原点とこの点を対角線とする長方形を考える。グラフはこの長方形を つの部分に分ける。

  • グラフの下(x軸側) →
  • グラフの上(y軸側) → 横向きに見れば、逆関数の積分

「上の部分」を、首を 傾けて見てみよう。 を横軸、 を縦軸にすると、それは のグラフの下の面積だ。

つを足せば、長方形全体。

この問題で確かめよう。 、、。

長方形( の正方形)の面積に、ぴったり一致する。この公式(ヤングの不等式の等号版)は、実用的だ。片方の積分が難しくても、もう片方が簡単なら、引き算で求まる。

例: を求めよ。

の積分は、部分積分が要る。面倒だ。だが、逆関数の なら簡単に積分できる。

( を使った。)

行で終わった。

「難しい積分は、逆関数の積分に直す」この技法は、 の積分でも使える。

の積分が の積分から出てきた。面積を つの向きから見る。縦に切るか、横に切るか。

この つの視点の転換が計算を大きく簡単にすることがある。 と の つの数の和が になることに気づく。そこから、逆関数の積分公式という、広く使える道具が得られる。

答

(すなわち )

別解

係数 の意味を、面積として「見る」。 から まで、 の下の面積を求めよう。

面積は 。

この には、図形的な意味がある。同じ区間で、(放物線)の下の面積を計算しよう。

だ。

つを足すと

ぴったり だ。

これは、 辺 の正方形の面積である。なぜ、こうなるのか。

と は互いに逆関数だ。 グラフは に関して対称になる。正方形 の中で、

  • 放物線 の下の部分 → 面積
  • その上の部分(つまり の下の部分を、 で折り返したもの)→ 面積

つで正方形を、 に分割している。この事実を、アルキメデスは 年前に知っていた。「放物線は、それを囲む長方形を に分ける」

当時は積分がなかったので、取り尽くし法という、無限に細かい三角形を足し上げる方法で証明した。 何ページもかかる、大変な作業だった。それが今や、 という 行で片づく。

さらに一般化してみよう。

が大きいほど、面積は小さくなる。

は の直前までほとんど に張りついている。 だから面積が小さい。そして、 なら

公式が、分数の指数でもそのまま成り立つ

「 が より小さいほど、面積は に近づく」

は、 の直後で急激に立ち上がり、ほとんど に張りついている。 だから面積が に近い。指数 を から まで動かすと、面積 が連続的に変わっていく。

その途中、 で分母が になり、破綻する。そこだけが対数の領分だ。

つの公式の中に、 も も もすべて含まれている。 指数を実数に拡張したから、こう計算できる。

ポイント

  • 、公式で積分。
  • で割る = 倍。

よくある間違い

  • 指数の計算で とすべきところを のままにする。積分では指数が 増える
  • で割るのに、 を掛けてしまう。分数で割るのは、逆数()を掛けること
  • を根号に戻すとき、 と の区別で混乱する。どちらも同じだが、 の形が読みやすい

問12不定積分(1/cos²)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

『微分すると になる関数』を、微分公式の表から逆引きしよう。

解答・解説

方針

の逆をたどる。 の積分は 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) を見て、「これは何の微分だったか?」と考える。

微分公式を思い出そう。

ぴったり一致する。

微分公式を逆に読むだけで、積分公式になる。これが積分の学び方の基本だ。微分公式の一覧表を、右から左に読む。

新しく覚えることは、 つもない。

「積分の公式」は「微分の公式」の裏返しにすぎない。 そう思えば、暗記の負担は半分になる。

公式

なので、逆に

まとめ: の積分は 。微分公式 の逆。三角関数の微分公式を覚えていれば、その逆が積分公式になる。

発展。 ここまでで、基本の積分公式が出そろった。全体を 枚の地図にまとめよう。

つ。すべて、微分公式の裏返しだ。そして、この つを組み合わせる技法が つある。

① 線形性:和・定数倍はバラせる

② 置換積分: とおいて、ものさしを変える

③ 部分積分:積の微分公式の裏返し

これで、高校で出会う積分の大半は処理できる。だが、微分と積分の「非対称性」は、忘れてはならない。

微分は必ずできる。 どんな複雑な式でも、 つの規則(和・積・合成)を機械的に適用すれば、有限回で終わる。積分はできないことがある。

どれも、初等関数では書けない。この違いはどこから来るのか。

微分は「分解」だ。 複雑な関数を、部品に分けて、それぞれ微分して、組み立てる。必ず終わる。

積分は「発見」だ。 「微分するとこれになる関数」を、探し出さなければならない。見つかる保証はない。

この非対称性を日常のたとえで言えばこうだ。

ガラスのコップを割るのは簡単だ(微分)。割れた破片から、元のコップを復元するのは難しい(積分)。それでも積分を学ぶのには理由がある。

なぜか。 物理の法則は微分方程式で書かれているからだ。

物理法則は「変化のルール」を表す。 だが、知りたいのは「 時間後に、ロケットはどこにいるか」だ。変化のルールから、実際の軌道を復元する。

それが積分である。

微分が法則を書き表す道具なら、積分はその法則から未来を予測する道具だ。次の単元(積分法の応用)ではこの技術で、面積・体積・道のり・曲線の長さを計算していく。

つの公式と つの技法。

これらの道具を使って、次は応用の問題に進もう。

答

別解

を使って、別の見方をする。三角関数の基本公式を、思い出そう。

両辺を で割る。

つまり、この問題の積分はこうも書ける。

意外な形になった。

もし が答えなら、この式が成り立つはずだ。

検算しよう。右辺を微分する。

確かに、被積分関数に戻った。この形から、 の積分も分かる。

の積分は、そのままでは手が出ない。 だが、 の形に書きかえれば、すぐに解ける。「積分できない形を、積分できる形に書き換える」のが、積分計算の全体の方針だ。

定積分でも確かめてみよう。

きれいに になる。

この結果を面積として確かめる。 は、 で高さ 、 で高さ の、増加する曲線。

幅は 。

台形なら面積 。

実際は で、それより少し小さい。 曲線が下に凸で、台形の斜辺より下を通るからだ。

答えが という整数になるのは、 だからである。

そして、被積分関数は常に正だ。

だから、 は定義域のどこでも増加する。 から まで、 は から へ、 度も下がることなく駆け上がる。「導関数が常に正 単調増加」

積分の式が という関数の性質をそのまま表している。

ポイント

  • 。
  • の逆。

よくある間違い

  • の積分を、 の積分と混同する。 の積分ははるかに難しい別問題
  • を と書き換えたあと、 の積分だと勘違いする。 の積分が
  • の定義域を忘れる。 となる点( など)をまたぐ積分はできない