数学III / 関数と極限

関数と極限 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 分数関数のグラフ
  2. 無理関数のグラフ
  3. 逆関数
  4. 数列の極限(分数)
  5. 数列の極限(2次)
  6. 無限等比数列の極限
  7. 無限等比級数
  8. 関数の極限(0分の0)
  9. 三角関数の極限
  10. 関数の極限(無限大)
  11. 関数の連続性
  12. 関数の極限(分数・無限大)

問1分数関数のグラフ

★ 基礎分数関数

問題

分数関数 の漸近線を求めよ。

ヒントを見る

この形の分数関数は基本の双曲線 を平行移動したもの。どれだけ動かしたかが読めれば、漸近線も一緒に動くだけ。

解答・解説

方針

の形は、基本の双曲線 を右へ 、上へ 平行移動したもの。漸近線も同じだけ動く。(縦)と (横)。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 漸近線とは、グラフが限りなく近づくが、決して触れない直線のことだ。

この関数の形を見る。

基本の双曲線 に、何が起きているか。

  • が に変わった → 右へ 平行移動
  • がついた → 上へ 平行移動

の漸近線は と ( 軸と 軸)だった。グラフごと動かしたのだから、漸近線も同じだけ動く。

「複雑な式を、基本形 平行移動に分解する」のは、 次関数の頂点を求めたときとまったく同じ発想だ。

重要 の漸近線は、縦が 、横が

は、基本形 (漸近線 、)を右へ 、上へ 動かしたもの。漸近線も同じだけ動く。

xyOx=2y=3
y=1/(x-2)+3。漸近線 x=2(縦)、y=3(横)

まとめ:分数関数は「基本の双曲線を平行移動したもの」とみる。 は右に 、 は上に 。漸近線は分母が になる と、動かした先の だ。

発展。 「漸近線には触れない」というのは、いつでも正しいだろうか。

実は、正しくない。

次の関数を見てほしい。

のとき、分母が無限に大きくなるので 。 横の漸近線は ( 軸)である。だが、このグラフは 軸と何度も交わる。

軸を無限回、横切りながら、それでも 軸に近づいていく。

波打ちながら、振幅がどんどん小さくなる。 グラフを描くと、 軸を軸にして波が減衰していく形になる。「漸近線に触れない」は双曲線でたまたま成り立っていただけだった。

漸近線の正しい定義は「触れない直線」ではない。

無限の彼方で、差が に近づく直線である。途中で何回交わろうと、構わない。

この誤解は、教科書の例が双曲線ばかりであることから生まれる。

「よく見る例で成り立つ性質」を「定義」と取り違えない。 数学では、これが大事になる。もう つ、漸近線がある。

で だから、 は に近づく。

漸近線が斜めの直線だ(斜め漸近線)。

縦・横だけが漸近線ではなく、「無限の彼方で差が になる直線」なら、傾いていても漸近線である。

定義に立ち返れば、視野が広がる。 覚えた形だけで判断すると、こういう関数の前で立ち止まってしまう。

答

漸近線は と

別解

「平行移動」で覚えず、極限で確かめる。漸近線の定義に、正面から戻る別解である。

漸近線とは何か。

  • 縦の漸近線: そこに近づくと、 が に飛ぶ直線
  • 横の漸近線: を無限に飛ばしたとき、 が近づく値

この定義をそのまま計算する。

① 縦の漸近線を探す。

が限りなく大きくなるのは、分母が になるところだ。

本当に飛ぶか、確かめよう。 を入れると

なら

右から に近づけると、 は へ。

左から近づけると? なら

へ。

が縦の漸近線

② 横の漸近線を探す。

を無限に飛ばす。

の分母が無限に大きくなるので、この項は に消える。 残るのは だけ。

でも同じだ。

が横の漸近線

この方法の価値。

平行移動で覚えていると、 のような「分解されていない形」で手が止まる。極限で攻めれば、どんな形でも同じ手順で漸近線が出る。

  • 分母 になる → 縦の漸近線の候補
  • の極限値 → 横の漸近線

そして、この方法から「漸近線に触れない理由」も分かる。

は に限りなく近づくが、決して にならない。 だから も に近づくだけで、 ちょうどにはならない。「近づくが、届かない」という極限の考え方が、この 本の直線に表れている。

ポイント

  • の漸近線は 、。
  • 分母 の が縦の漸近線。

よくある間違い

  • を見て、漸近線を としてしまう。分母が になるのは
  • を横の漸近線でなく縦の漸近線と取り違える。定数項は上下の移動なので、横の漸近線 に影響する
  • 「漸近線に近づく」を「いつか交わる」と考える。 は決して にならないので、グラフが に触れることはない

問2無理関数のグラフ

★ 基礎無理関数

問題

無理関数 の定義域と値域を求めよ。

ヒントを見る

根号の中身が満たすべき条件が定義域を決める。値域は、 の値がどんな範囲に限られるかを考えれば分かる。

解答・解説

方針

根号の中は 以上でなければならない()。これが定義域。 の値は 以上なので、値域は 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 関数を見たら、まず「入れられない 」がないかを確認する。

危険なのは か所だけだ。

  • 分母: にしてはいけない
  • 根号の中:負にしてはいけない

この関数は根号があるから、中身に条件がつく。

これが定義域を決める。

値域は の性質から出る。

根号は負の値を返さない。 が最小で、あとは上へ伸びていくだけだ。

「入れられる範囲(定義域)」と「出てくる範囲(値域)」を分けて考える。 この つの区別が関数を扱う出発点である。

重要無理関数 は、根号の中 が定義域。値は 以上

① 定義域を求める。 根号の中は 以上。

② 値域を求める。 はつねに 以上。

xyO(-1,0)
y=√(x+1)。定義域 x≧-1、値域 y≧0、点(-1,0)から始まる

まとめ:無理関数は「根号の中 」が定義域の絶対条件。グラフは から始まって右上へ伸びる曲線(放物線を横に寝かせた半分)。値は から増える。

発展。 「定義域」という概念は目立たないが、数学で間違えやすい点のほとんどに関係している。

有名な「 の証明」を見てみよう。

どこがおかしいか。

なのだから、。 で割ったのが誤りだ。「 では割れない」という定義域の制約を破った瞬間、数学は崩壊する。

同じ注意点が根号にもある。

を入れてみよう。

正しくは

根号は「正のほうを返す」約束だったから、絶対値がつく。 乗と根号は、互いに逆の操作に見えて、完全な逆ではない。

符号の情報が 乗の時点で失われている。 も も 乗すれば同じ になる。失われた情報は根号では取り戻せない。

この非対称性が方程式で「 乗したら必ず検算」というルールを生む。

両辺を 乗すると 、つまり 、。

を代入すると左辺 、右辺 となり、成り立たない。

乗したときに、「右辺が負」という不可能な解まで混ざり込んだ。 偽の解、と呼ばれる。定義域を意識しない計算は、しばしば嘘の答えを生む。

「その式は、どこで意味をもつのか」という問いを忘れないことが、正しい数学の第一歩である。

答

定義域 、値域

別解

逆関数を作ると、定義域と値域が「見える」。 を、 について解いてみよう。

両辺を 乗する。

が の 次式で書けた。

ここで大事な但し書きがある。 もとの式で だから

この式は何のグラフか。

と の役割を入れかえて読むと、 という放物線である。頂点は に相当する。つまり、もとの無理関数のグラフは放物線を横倒しにしたものの「上半分」だ。

横倒しの放物線 の頂点は 。そこから右へ、上下に開いていく。その上半分()だけを切り取ったものが、 のグラフである。

この見方で、定義域と値域が一目で分かる。

  • の動く範囲: 頂点 から右へ、いくらでも →
  • の動く範囲: 上半分だから から上へ →

なぜ「上半分だけ」なのか。

であって、 ではない。 根号は「 乗して になる数」のうち、正のほうだけを返す約束になっている。もし下半分も含めたら、 つの に つの が対応してしまい、関数でなくなる。

逆関数の視点から分かること。

もとの関数の「定義域」は逆関数の「値域」。 もとの関数の「値域」は逆関数の「定義域」。

つが、きれいに入れかわる。

根号を見て「定義域は?」と身構えるより、 乗して放物線に直すほうが、絵として理解しやすい。 乗するのは、根号を外すいちばん素直な方法でもある。

ポイント

  • 定義域は根号の中 。
  • 値域は ( は非負)。

よくある間違い

  • 根号の中の条件を としてしまう。中身は なので、 から
  • 値域に負の値を含めてしまう。 は必ず 以上を返すので、 が負になることはない
  • 乗して と直したとき、 の条件を落とす。 乗すると下半分(捨てたはずの枝)まで復活してしまう

問3逆関数

★ 基礎逆関数

問題

関数 の逆関数を求めよ。

ヒントを見る

逆関数の作り方の手順(入れかえて、解き直す)を思い出そう。 と の役割を交換するのが出発点。

解答・解説

方針

逆関数は「 と の役割を入れかえて、 について解く」。 を について解く。グラフは元の関数を直線 で折り返したもの。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 逆関数とは、入力と出力を、逆にした関数だ。

もとの関数 は、 を入れて を返す。逆関数は を入れて を返す。

だから、作り方はこうなる。「 について解いて、 と の名前を入れかえる」式の上では、 と を入れかえて について解く、と覚えればよい。

グラフでは に関して折り返した形になる。 入力軸と出力軸を入れかえるのだから、 の線で鏡映しになるのは当然だ。

手順は 段階。 入れかえて、解く。それだけである。

公式逆関数は と を入れかえて について解く。グラフは に関して対称

① と を入れかえる。 の と を交換。

② について解く。

xyO
y=2x+3(青)と逆関数 y=(x-3)/2(赤)は y=x に関して対称

まとめ:逆関数は「入力と出力を逆にした関数」。作り方は を入れかえて解くだけ。グラフは元の関数を の直線で折り返した位置にくる。

発展。 すべての関数に、逆関数があるわけではない。

を考えよう。

になる は?

つある。 「 を入れたら何が返る?」に、答えが つに決まらない。

これでは関数にならない(関数は、入力 つに出力 つ)。だから には、そのままでは逆関数がない。逆関数をもつ条件は、はっきりしている。

これを 対 (単射)という。グラフで判定する方法がある。

横線テスト。 どんな水平線を引いても、グラフと 回以上交わらなければ、 対 である。

  • (直線)→ 水平線は必ず 回だけ交わる → 逆関数あり
  • (放物線)→ 水平線 が 回交わる → 逆関数なし

では、 を救う方法はないのか。ある。定義域を制限すればいい。

右半分だけに絞れば、 対 になる。 そして、この逆関数こそが

根号は「 に制限した 乗関数」の逆関数である。同じ話が三角関数にもある。 は周期的に同じ値を繰り返すので、 対 ではない()。

そこで に制限する。 その逆関数が ()である。「逆関数が欲しければ、 対 になるまで定義域を狭める」

これが、逆三角関数・対数関数・累乗根など、すべての「逆」の関数を作る共通の手順である。

逆をたどれるかどうかは、もとの関数が「情報を失っていないか」で決まる。 乗は符号の情報を捨てるから、逆をたどれない。捨てないように定義域を切れば、逆がよみがえる。

答

別解

関数を「操作の手順」と見て、逆再生する。 は、 に対して何をしているか。 つの操作を、順にやっている。

逆関数はこの操作を「元に戻す」手続きだ。元に戻すには、逆の操作を逆の順番でやる。

順番が逆になることに注意する。 靴下と靴を履くとき、脱ぐのは靴が先だ。最後にやった操作から、先に戻す。

と の名前を入れかえて

本解と同じ答え

この見方の強み。

式変形を 度もしていない。 「 倍して 足す」の逆は「 引いて で割る」と、言葉で追っただけだ。検算もこの見方でできる。

を通してから を通せば、元に戻るはずだ。

式でも確かめよう。

どちらの順で通しても、元に戻る。 これが「逆関数である」ことの正しい定義だ。

答えが合っているか不安なときは、必ずこの合成で検算する。

もう つ、グラフから読めること。もとの傾きは 、逆関数の傾きは で、逆数になっている。

当たり前だ。 で折り返すと、「右に 進んで上に 」が「右に 進んで上に 」に変わる。この「傾きが逆数」という関係は、あとで逆関数の微分()につながっていく。

ポイント

  • 逆関数は を入れかえて で解く。
  • グラフは に関して対称。

よくある間違い

  • 逆関数を「逆数」と混同し、 としてしまう。逆関数は入出力を逆にした関数であって、逆数ではない
  • と を入れかえたあと、 について解き直すのを忘れて のまま答える
  • 操作を逆に戻す順番を間違え、 としてしまう。最後にやった操作()から先に戻す

問4数列の極限(分数)

★ 基礎数列の極限

問題

極限 を求めよ。

ヒントを見る

が大きいとき、分子・分母を支配するのはどの項か。分子・分母を で割ると、消えていく部分としぶとく残る部分がはっきり見える。

解答・解説

方針

分子・分母がともに になる( の形)。分母の最高次 で分子・分母を割ると、 を使って極限が求まる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) を、そのまま代入してみる。

これでは、値が決まらない。

なぜ決まらないのか。 分子も分母も無限に大きくなるが、どちらがどれくらい速く大きくなるかで、比の行き先が変わるからだ。

  • 分子のほうがずっと速ければ →
  • 分母のほうが速ければ →
  • 同じくらいの速さなら → 有限の値

は「不定形」と呼ばれる。形だけでは決まらない、という意味である。決着をつける手は つ。分母の最高次 で、分子・分母を割る。

すると が使えて、消える項と残る項がはっきりする。「不定形は、割って形を変えてから極限をとる」のが、極限計算の基本の方法だ。

重要 の形は、分母の最高次で分子・分母を割る

分子・分母を で割る。

で 、 なので

xyOy=3
y=(3n+1)/(n+2)=3−5/(n+2)。n→∞ で 3 に近づく(漸近線 y=3)

まとめ: はそのままでは分からない(不定形)。分母の最高次 で割ると、 により、最高次の係数の比 が残る。

発展。 が「不定形」であることを、実感しておこう。

分母も分子も に飛ぶ、 つの例を並べる。

どれも形は 。だが答えは 、、 とバラバラだ。「形が同じでも、答えは決まらない」というのが、不定形の意味である。

決めているのは、「無限大の格」だ。無限大にも、大きさの序列がある。

右へ行くほど、ずっと速く大きくなる。

どれくらい違うか。 で比べよう。

と では、比べる意味がないほどの差だ。この序列が分かっていれば、極限は「見るだけ」で分かる。

は のとき というとても大きな数だ。 それでも、 という指数関数には必ず追い越される。

どんなに高い次数の多項式も指数関数には勝てない。この事実はコンピュータの分野で大きな意味をもつ。アルゴリズムの計算時間が

  • (多項式時間) → データが 倍で、時間は 倍。実用的
  • (指数時間) → データが 増えるだけで、時間は 倍。手に負えない

の指数時間の問題はスーパーコンピュータでも 年かかる。「多項式時間で解けるか、指数時間しかないか」が、コンピュータサイエンス最大の未解決問題( 対 問題、懸賞金 万ドル)の中心にある問いである。

極限の序列を知ることは、「何が計算可能か」を知ることでもあるのだ。

答

別解

割り算をして、「定数 消える項」の形にする。分子を分母で割ってみよう。

確かめる。 、そこから を引くと

この変形をもとの式に入れる。

式がまったく違う顔になった。

ここまで来れば、極限は目で見える。 を大きくすると、 の分母が無限に大きくなり、この項は に消える。

本解と同じ答え

この形の利点は「どう近づくか」まで分かることだ。

引き算だから、値は必ず より小さい。 つまり下から に近づく。

確かめよう。

下からじわじわと に迫っている。 決して を超えない。「近づき方」の情報は割った形でないと見えない。

そして、この式からはもう つのことが分かる。

これは双曲線だ。 漸近線は と 。極限 が計算していたのは、横の漸近線の高さである。「分数式の極限」と「双曲線の漸近線」は、同じことを違う言葉で言っている。

割り算をして「定数 分数」に直す変形は、極限にもグラフにも使える、分数式の基本の作法だ。

ポイント

  • は最高次で割る。
  • を使う。極限は最高次の係数比。

よくある間違い

  • を だと思ってしまう。無限どうしの比は形だけでは決まらず、増える速さの比較が要る
  • 最高次で割ったあと、 を使い忘れて のまま答える。 を最後まで実行する
  • で割るとき、分子の定数項 を割り忘れる( であって ではない)

問5数列の極限(2次)

★ 基礎数列の極限

問題

極限 を求めよ。

ヒントを見る

今度は 次。分子・分母を最高次の項で割るのが原則だ。割ったあと、 に向かう項を見きわめよう。

解答・解説

方針

の形。分母の最高次 で分子・分母を割る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) また だ。手順は前と同じ。分母の最高次で割る。

今度の最高次は である。

次数が上がっても、やることは変わらない。割ったあとは、 と で、余計な項がすべて消える。残るのは、最高次の係数どうしの比だけ。

そう、答えは最初から見えている。 がとても大きいとき、 や は に比べて無視できるほど小さい。「 の極限は、最高次の項だけで決まる」ことを、きちんと示すための手続きが割り算だ。

重要 は分母の最高次()で割る

分子・分母を で割る。

で 、 なので

まとめ:分母の最高次で割るのは 次でも同じ。 や はすべて に。最高次の係数の比 が答えだ。

発展。 「最高次の項だけが結果を決める」という考え方は、数学以外でも広く使われている。

その名をオーダー(次数)という。コンピュータの分野ではこう書く。

「 が大きいとき、おおよそ のスケールで増える」という意味だ。 係数の も、定数の も、まとめて無視する。

なぜ無視してよいのか。

が 倍になったとき、何倍になるかを見よう。

係数 は約分で消える。 どんな係数でも、「 が 倍で、時間は 倍」という性質は変わらない。

これがオーダーの考え方だ。細かい係数より、「どのスケールで増えるか」を見る。実際の例で、その効果を確かめる。

アルゴリズム : 回の計算() アルゴリズム : 回の計算()

なら は 回、 は 回。 のほうが 倍速い。

だが なら は 万回、 は 万回。 が 倍速い。

万なら は 億回、 は 兆回。 が 万倍速い。

係数 という大きなハンデがあっても、 が大きくなれば、次数の低いほうが必ず勝つ。「大きな では、次数がすべてを決める。」この原理があるから、ソートのアルゴリズムは から への改良に、あれほど価値がある。

万件のデータで

万倍の差。 日かかる処理が 秒で終わる。「 を大きくしたとき、何が支配的か」という極限の考え方は、ほかの分野でもよく使われる。

細部を捨て、結果を左右する部分だけを見る。 それが極限の眼差しである。

答

別解

手を動かして、実際に数を入れてみる。極限が「信じられない」ときは、数値実験がいちばんの薬だ。 を大きくしながら、値を計算する。

に向かって、じりじりと近づいている。

しかも、常に より小さい。 下から に迫っている。「本当に に近づくんだな」と、目で納得できる。

では、なぜ なのか。数の大きさを比べてみよう。 のとき、それぞれの項の大きさは

分子では、 が 万なのに対し、 は にすぎない。 ほとんど何もしていない。分母でも、 が 万に対し、 は で、 の影響しかない。

を大きくすればするほど、この差は開いていく。だから、実質的にはこうだ。

「最高次の係数の比」が答えになる理由が、これで見える。この直感を一般化しておこう。

分子と分母の次数が同じなら、極限は最高次の係数の比。さらに、次数が違う場合は?

  • 分子の次数 分母の次数 → (分母が圧勝)
  • 分子の次数 分母の次数 → (分子が圧勝)
  • 同じ次数 → 係数の比

この パターンを頭に入れておけば、 の分数式は、すぐに答えが分かる。

ただし、答えを「当てる」のと、「示す」のは別だ。 記述では必ず最高次で割る計算を書く。直感は方向を示し、計算がそれを証明する。

ポイント

  • 分母の最高次 で割る。
  • 極限は最高次の係数比 。

よくある間違い

  • 分母の最高次でなく、分子の最高次で割ろうとして混乱する。基準は分母の最高次
  • で割るとき、 を のままにしてしまう。各項をていねいに割る
  • 答えを と当てたところで満足し、割る計算を書かずに済ませる。当てるのと示すのは別で、記述では最高次で割る過程が要る

問6無限等比数列の極限

★ 基礎無限等比数列

問題

極限 を求めよ。

ヒントを見る

公比の絶対値と の大小関係で、 の行き先は パターンに分かれる。この公比はどのパターンか。

解答・解説

方針

無限等比数列 は公比 の大きさで振る舞いが決まる。 なら に収束する。 は 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) を、実際に書き出してみよう。

毎回、半分になる。 どんどん小さくなり、 に近づいていく。 の振る舞いは公比 の大きさだけで決まる。

  • (小数を掛け続ける)→ に収束
  • (大きくなる数を掛ける)→ 発散
  • → ずっと

「 を見たら、まず と の大小を比べる。」

今回は で、。 だから に収束する。

ただし、 になるのではない。 も、極めて小さいが、確かに正の数だ。 に「近づく」だけである。

公式無限等比数列 : なら に収束、 なら 、それ以外は発散

は を満たす。かけるほど小さくなるので に近づく。

1/21/41/81/160
(1/2)^n の値 1/2, 1/4, 1/8, … は 0 に近づく

まとめ: は「 より小さい数を何回もかけると 」というイメージ。 は とどんどん小さくなる。 が収束の条件だ。

発展。 公比 の値によって、 の振る舞いは 通りに分かれる。境界がどこにあるかを、正確に押さえよう。

注意すべきは の場合だ。

と を、永遠に行き来する。 大きくもならず、 つの値にも落ち着かない。

これを「振動」といい、極限は存在しない。 発散の一種として扱われる。

という境界線上で、(収束)と (振動)が分かれる。 わずかな差で、結果が変わる。さて、この という条件は、別の場面にも出てくる。

これはカオスの話につながる。

漸化式 を思い出そう。 これは となり、等比数列そのものだ。

  • → に収束(安定)
  • → 発散(不安定)

もっと一般に、 という漸化式で、 の不動点 の近くでは

ズレが 倍ずつ変化する。 これは等比数列だ。

「 より小さいか、大きいか」という 本の境界線が、安定と不安定を分ける。

天気予報が長期的に当たらないのも、この を超えているからだ。 大気の運動では、わずかな初期のズレが で拡大し続ける。 週間先には、初期の 度の誤差が天気を変えてしまう。

「バタフライ効果」を数学的に表すと、 の等比数列になる。 という素朴な事実は、「予測できる場合」と「できない場合」の境界にかかわっている。

答

別解

「 に近づく」を、はさみうちできっちり示す。公式を使わずに、 に収束する理由を証明する別解である。まず、 と を比べよう。

いつでも である。

なぜか。 は が 増えるたびに 倍になるが、 は 増えるだけ。倍々で増えるほうが必ず勝つ。

この不等式を逆数にする。

( つとも正の数なので、逆数をとると不等号が反転する。)そして、 は必ず正である。この つを合わせると、はさみうちの形になる。

両端の極限を見る。

左も右も に行く。 間に挟まれたものは に行くしかない。

はさみうちの原理で、証明できた

この原理の使いどころ。

「直接は計算できないが、上と下から評価できる」 ときに強い。

例。 を求めよ、と言われたら。

は とともに振動して、極限をもたない。 直接は手が出ない。だが、 は必ず成り立つ。

両端は に行く。

振動する部分を、絶対値の上限で押さえ込んだ。「値そのものは追えなくても、大きさなら押さえられる」という場面で、はさみうちが役に立つ。もう つ、対数を使う見方もある。

指数が に飛ぶ → 値は へ。「掛け算(等比)を、足し算(等差)に直す」のが、対数の得意とする使い方である。

ポイント

  • → 。
  • → 、 や → 発散。

よくある間違い

  • 「 に収束する」を「どこかで になる」と考える。 はどんな でも正で、 にはならない
  • 公比が負のとき( など)、負だから発散すると早合点する。判定に使うのは で、 なら収束する
  • を「 だから収束」としてしまう。 は と振動し、収束しない

問7無限等比級数

★ 基礎無限級数等比級数

問題

無限等比級数 の和を求めよ。

ヒントを見る

無限に足しても値が定まるのは、公比に条件があるとき。まず初項と公比を確認し、収束するなら和の公式へ。

解答・解説

方針

初項 、公比 の無限等比級数。 なので収束し、和は 。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 無限個の数を足す。答えは無限大になりそうに思える。

ところが、そうならない。

足す数がどんどん小さくなるからだ。 次に足す量が 倍ずつ縮んでいく。

部分和を計算してみよう。

に近づいて、そこで止まりそうだ。

この直感は正しい。 の等比級数は、必ず有限の値に収束する。

「無限に足しても、有限に収まることがある」のは、直感に反する事実だ。まずこの感覚を掴んでほしい。

公式無限等比級数()の和 ( は初項、 は公比)

初項 、公比 。 なので収束する。

S₁S₂S₃3/2
部分和 1, 4/3, 13/9, … は 3/2 に近づく(初項1・公比1/3)

まとめ:無限に足しても有限の値に落ち着くのが等比級数( のとき)。和は 。ここでは 。分母の計算に注意。

発展。 「足す数が に近づけば、和は収束する」と思っていないだろうか。

残念ながら、これは間違いだ。反例が つある。

調和級数と呼ばれる。

足す数 は確かに に近づく。 それでも、この和は無限大に発散する。

信じがたいので、証明を見てほしい。項をこうグループ分けする。

各グループを下から評価する。

どのグループも より大きい。そんなグループが無限に続く。

和は無限大に発散する。ただし、発散のスピードは絶望的に遅い。

和が を超えるには、約 項。 和が を超えるには、約 項が必要で、宇宙の全原子を使っても足りない。

それでも、無限に足せば、どんな大きな数も超えていく。この違いはどこから来るのか。

「 に近づく」だけでは足りない。「十分速く に近づく」ことが要る。ちなみに、 なら収束する。

なぜか が出てくる。 オイラーが 年に解いた、バーゼル問題である。

は発散し、 は収束する。 収束と発散の境目は、この つのあいだのきわどいところにある。

答

別解

「自分自身」を使って、方程式を立てる。公式を忘れても、この手が使える。級数の「自己相似性」を使う別解である。

和を とおく。

ここで、右辺の 項目以降をよく見る。

全体を でくくると

カッコの中は そのものだ。

無限に続く級数だからこそ、 項ずらしても同じ形が現れる。 これを自己相似という。だから、こう書ける。

についての、ただの 次方程式になった。

解く。

本解と同じ答え

公式 がなぜ成り立つかが、これで分かる。一般に とおけば

公式はこの 次方程式を解いた結果にすぎなかった。ただし、大事な注意がある。この計算は「 が有限の値として存在する」ことを前提にしている。

存在しない場合に使うと、嘘の答えが出る。

やってみよう。 (公比 )で、同じ操作をする。

正の数を無限に足したのに、答えが ?

もちろん、間違いだ。 この級数は に発散し、 という有限の値は存在しない。存在しないものを とおいて計算したから、無意味な答えが出た。

「収束を確かめてから、計算する」という順序を逆にすると、簡単に誤った結論が出てしまう。便利な技法ほど、使ってよい条件を確認する習慣が要る。

ポイント

  • 無限等比級数の和 ()。
  • なら和は存在しない(発散)。

よくある間違い

  • 公式の分母を としてしまう。 で、公比は引く
  • 初項を (第 項)と取り違える。この級数の初項は
  • の確認をせずに公式を使う。公比が 以上なら和は発散し、公式は成り立たない

問8関数の極限(0分の0)

★ 基礎関数の極限

問題

極限 を求めよ。

ヒントを見る

そのまま代入すると になってしまう。分子を因数分解すると、割り算の障害だった因数が消せる。

解答・解説

方針

を代入すると (不定形)。分子を因数分解して約分すると、代入できる形になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) まず、素直に を代入してみる。

分母が 。計算できない。

だが、諦めるのは早い。

は不定形だ。 分子も分母も に近づくが、どちらがどう に近づくかで、比の行き先が変わる。

そして、 になったということは、大事な情報でもある。

分子と分母が、どちらも で になる。つまり両方が を因数にもつということだ。

その共通因数こそが を作っている犯人である。 約分して追い出せばいい。

「 は、 を生む共通因数を約分して解消する。」 これが関数の極限の基本だ。

重要 の形は、因数分解して約分してから代入する

① 因数分解する。 。

② 約分後に代入する。

xyOx=2で穴
(x²−4)/(x−2)=x+2(x≠2)。x=2 に穴があるが x→2 の極限は 4

まとめ: は「 を作っている共通因数 」を約分すれば解ける。 は「 が に近づく(= そのものではない)」ので、 で割ってよい。

発展。 なぜ「」だと言い切って、約分してよいのか。極限の定義に立ち返ろう。

この式の意味はこうだ。「 を に近づけると、 は に近づく」ここで、 ちょうどのときの値はまったく問題にしていない。

近づく途中の話であって、到着点の話ではない。 だから の範囲で考えてよく、 だから約分できる。この区別が極限のいちばん大事なところである。

極端な例を作ってみよう。

だけ、値が に飛んでいる変な関数だ。それでも

である。 を に近づけると、 は に近づく。 での値()は極限には何の関係もない。

「近づく先」と「その点での値」は、別の概念だ。この つが一致するとき、関数は連続という。

上の は で不連続。 極限()と値()が違うからだ。そして、この問題の関数

は、 で「定義されていない」。グラフは直線 から、 の 点だけを抜いた形になる。そこに穴が空いている。

極限は なので、この穴を で埋めれば、連続な関数になる。除去可能な不連続点と呼ばれる。「極限は存在するのに、値が定義されていない(あるいは違う値)」という状況は、微分係数の定義でも出てきた。

は で定義されない。 だが極限は存在する。その極限値に という名前をつけたのが、微分である。

「穴の空いた点で、値を極限で定義する」この考え方が、微積分の基礎になっている。

答

別解

この式は「微分係数の定義」の形をしている。

式をじっと見てほしい。

とおくと、 だから

この形に、見覚えはないだろうか。 点 と を結ぶ直線の傾きで、平均変化率にあたる。そして、 の極限をとると?

微分係数の定義そのものだ。

の導関数は だから

本解と同じ答え

この見方から分かること。 の不定形は、じつは微分につながる形だった。

微分係数の定義

この式は のとき分子も に近づき、分母も に近づくので、必ず の形をしている。つまり、微分とは「 を、うまく計算する方法」だ。

幾何的に見よう。

これは 点を結ぶ直線(割線)の傾き。

を に近づけると、 点が重なっていく。 割線は接線に近づく。

ちょうどでは、 点が完全に重なって「 点を結ぶ直線」が定義できない( になる理由がこれだ)。だが、近づける途中の傾きは確かに に近づいていく。

接点そのものでは測れないのに、極限としてなら測れる。この逆説を乗り越えるために、 年前にニュートンとライプニッツが微分を作った。目の前の も、その歴史につながる例である。

ポイント

  • は因数分解して約分。
  • は に近づく( 自身ではない)ので約分可。

よくある間違い

  • を や だと思って答える。 は不定形で、値は式ごとに変わる
  • 約分したあと、 を代入し忘れて のまま答える。極限値は という数値
  • 「 だから を代入してよい」と考え、約分せずに で詰まる。 は が に近づくだけで、 のまま。だから で約分できる

問9三角関数の極限

★ 基礎三角関数の極限

問題

極限 を求めよ。

ヒントを見る

これは数IIIの基本極限そのもので、値を覚えているかを確かめる問題だ。単位円で弧と弦の長さを比べる図を思い出すと、値にも納得がいく。

解答・解説

方針

これは有名な基本極限。 のとき は に近づく。この事実は以降の三角関数の極限の基礎になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) を代入すると となり、また不定形だ。

だが今度は、因数分解も約分もできない。 は多項式ではないからだ。そこで、この極限は「基本の道具」として与えられる。

丸暗記ではなく、意味を掴んでほしい。

が小さいとき、 ということだ。

実際に数を入れてみよう( は弧度法)。

と、ほとんど同じ値になっている。

単位円で言えば、小さい角では弧の長さと、それに対する縦の高さがほぼ等しいということ。この つの極限が三角関数の微分のすべての基礎になる。

定理三角関数の基本極限 ( は弧度法)

これは公式として与えられている基本極限。

のとき と はほぼ同じ大きさになる(グラフでも と は原点付近でほぼ重なる)。

xyO→1
y=sin x / x。x→0 で 1 に近づく

まとめ: は三角関数の極限の基本になる。 の形だが、値は 。角は必ず弧度法で測ること(度数法だと成り立たない)。この形に持ち込むのが多くの問題の目標になる。

発展。 は、なぜ「基本極限」として特別扱いされるのか。

それは、三角関数の微分がこの 行から生まれるからだ。 を、定義に従って微分してみよう。

加法定理で展開する。

つの極限が出てきた。

代入すると

この有名な公式の根拠が である。

もしこの極限が でなかったら(たとえば度数法なら )、微分の公式はこうなる。

毎回、 という汚い係数がついてまわる。 積分でも、微分方程式でも、波の方程式でも、この係数が式を汚し続ける。弧度法を使うと、それが消える。

「( が小さいとき)」という近似も、ここから来ている。この近似は物理学でとても重要だ。振り子の運動方程式は本来こうだ。

この方程式は初等的には解けない。だが、振れ角が小さいとき と近似すると

単振動の方程式になり、きれいに解ける。 振り子の周期 も、この近似から出てくる。時計が正確に時を刻めるのも、 という近似が成り立つからだ。

行のこの極限から、三角関数の微分公式も振り子の周期の式も出てくる。

答

別解

「なぜ になるのか」を、面積の比較で証明する。公式として与えられているが、その根拠を知っておくと忘れない。

単位円(半径 )を考える。 中心 、 軸上に点 をとり、角 ()の位置に点 をとる。

つの図形の面積を比べる。

① 三角形

底辺 、高さは の 座標 。

② 扇形 (中心角 、半径 )

③ 三角形 ( での接線と、直線 の交点を とする)

底辺 、高さは 。

この つは、明らかに「小さい順に入れ子」になっている。三角形 は扇形にすっぽり含まれ、扇形は三角形 に含まれる。

各辺を 倍する。

各辺を で割る。

逆数をとる(正の数なので、不等号は反転する)。

はさみうちの完成だ。

のとき、左端は

右端はずっと 。両端が に向かうのだから、間に挟まれたものも に行くしかない。

証明できた

そして、この証明には隠れた前提がある。

扇形の面積を と書いたが、これは弧度法だから成り立つ式だ。もし度数法( を「度」で測る)なら、どうなるか。

にならない。

「」という簡単な式は、弧度法という単位を選んだから成り立つのだ。

弧度法が「自然な」角度の測り方と呼ばれる理由が、ここにある。 数学IIIで角度をラジアンで測るのは、こだわりでも意地悪でもなく、この 行を成り立たせるためである。

ポイント

  • (弧度法)。
  • 三角関数の極限はこの形に帰着させる。

よくある間違い

  • を度数法(度)で考えてしまう。この極限が になるのは弧度法のときだけで、度数法では になる
  • の と を約分して と書く。 は数ではなく関数の記号で、約分の対象ではない
  • のような形でも、そのまま と答える。角と分母を揃える( に直す)必要がある

問10関数の極限(無限大)

★ 基礎関数の極限

問題

極限 を求めよ。

ヒントを見る

を大きくしていくと はどこへ向かうか。それだけの問題。

解答・解説

方針

のとき 。だから は に近づく。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) が限りなく大きくなると、 はどうなるか。

を、とても大きい数で割る。

限りなく に近づく。

だから

この問題に、難所はない。 を知っていれば、それで終わりだ。ただし、 つ確認しておきたいことがある。

は になるのではない。 どんなに を大きくしても で、 より少しだけ大きい。

だから は より少しだけ小さい。 下から に近づくのである。

公式 のとき

が限りなく大きくなると は に近づく。

まとめ: は「 が大きいほど小さい」ので、 で 。全体は に落ち着く。極限の基本感覚だ。

発展。 極限には「バラしてよい計算」と「バラすと嘘になる計算」がある。その境目をはっきりさせておこう。

バラしてよい場合(極限の性質)。、 がともに有限の値として存在するなら

「極限が存在するなら、四則演算は自由にバラせる。」この問題は、これにあたる。

両方の極限が有限なので、堂々とバラしてよい。バラすと嘘になる場合(不定形)。片方が になったり、分母が になったりすると、上の性質は使えない。

この つが、代表的な不定形である。

の扱いにくさを見ておこう。

「」としたくなる。だが違う。

有理化する。

分子・分母を で割る。

答えは 。 でも でもない。

同じ でも、 なら に発散する。「形が同じでも、答えは違う」ので、不定形と呼ばれる。

まとめると、極限の作法はこうだ。

① まず代入してみる → 有限の値なら、それが答え

② 不定形になったら → 式を変形する(因数分解・約分・有理化・最高次で割る・はさみうち)

③ 変形して不定形が解消したら → 代入する

「代入 → 不定形なら変形 → 再び代入」この ステップが、極限計算の基本の流れである。

答

別解

答えは簡単だ。だから、「似て非なる極限」と比べてみる。

この問題の関数は 。極限は だった。では、これを 乗したら?

中身は に近づく。 そして「 を何乗しても 」だから、答えも と言いたくなる。

確かめよう。数値を入れる。

ではなく、 に近づいている。この数を式で書くと

なぜ、こんなことが起こるのか。 つの効果が綱引きしているからだ。

  • 底 は に近づく → に押し上げる力
  • 指数 は に飛ぶ → に押し下げる力( より小さい数を無限回掛けるから)

この綱引きが という中途半端な値で釣り合う。

「」は不定形である。

や と同じく、形だけでは答えが決まらない。

兄弟の式も見ておこう。

符号が になっただけで、答えは 。 ネイピア数の定義そのものである。

これは複利計算から生まれた。 年利 を 回に分けて複利で運用すると

年で 倍(年 回)、 倍(半年ごと)、 倍(月ごと) そして無限に細かく分けると 倍で頭打ちになる。

この問題からの教訓。

「中身の極限が だから、全体も 」という推論は、危険である。

極限は部分ごとにバラして考えてよい場合と、そうでない場合がある。

  • 和・差・積・商(分母が でない)→ バラしてよい
  • 、、、、 → 不定形。バラすと嘘になる

「」という当たり前の極限と似た形から、 という数が出てくる。簡単な問題ほど、その「隣」を覗いてみる価値がある。

ポイント

  • で 。
  • 残るのは定数部分 。

よくある間違い

  • を「 になる」と考える。 に近づくだけで、 にはならない
  • を と読み違え、 を に飛ばしてしまう。矢印の向き先を必ず確認する
  • 中身の極限が だからと、 の極限も だと考える。これは の不定形で、答えは

問11関数の連続性

★ 基礎連続関数

問題

関数 が で連続であることを、極限を用いて確かめよ。

ヒントを見る

連続の定義は『極限値と関数の値が一致する』こと。 つを別々に計算して、比べて見せればよい。

解答・解説

方針

で連続とは「」が成り立つこと。左辺(極限)と右辺( での値)を計算して一致を確かめる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「連続」を、感覚ではなく定義で捉えよう。

感覚的には「グラフがつながっている」ことだ。 ペンを紙から離さずに描ける、という状態。これを、極限の言葉で言い換える。

左辺は「 に近づいたときの、行き先」。 右辺は「 そのものでの、値」。

この つが一致すれば、連続である。なぜ、一致しないことがあるのか。

近づいた先が なのに、そこに実際にあるのは 、という関数も作れてしまう。グラフに「飛び」があるのだ。だから、確かめるのは つ。

  • 極限値( での行き先)
  • 関数の値( そのもの)

この つを別々に計算し、一致することを見せる。 それが「連続であることを示す」ということだ。

定理 で連続 (極限値と関数の値が一致)

① 極限を計算する。 は多項式なので、 でそのまま代入できる。

② での値を計算する。

③ 一致を確かめる。 なので、 は で連続。

まとめ:連続とは「グラフが切れずにつながっている」こと。数式では「近づいた先()と、その点の値()が一致」。多項式はどこでも連続なので、代入した値がそのまま極限になる。

発展。 「連続」という性質は、地味に見えて、役に立つ定理を生む。

中間値の定理。

が閉区間 で連続で、 と の符号が違うなら、その間に必ず となる が存在する。

当たり前に聞こえる。 「マイナスからプラスへ行くなら、途中で を通るはずだ」

だが、これは連続だからこそ言える。 途中でジャンプできる関数なら、 を飛び越えてしまう。

この関数は から へ行くが、 という値を 度もとらない。 ジャンプしたからだ。

中間値の定理の使い方。

方程式 に、実数解はあるか。因数分解できない。解の公式も( 次では)実用的でない。だが、 点だけ調べればいい。

多項式は連続。 符号が変わっている。だから、 の範囲に、必ず解がある。

解を求めずに、「解が存在する」ことだけを証明できた。

これが存在証明の力だ。

さらに、この定理はコンピュータの計算法にもなる。

二分法。

と の真ん中 で調べる → → 解は と の間

で調べる → → 解は と の間

これを繰り返すと、区間が半分ずつ縮んでいく。 回繰り返せば、区間の幅は 。小数点以下 桁まで決まる。

解の公式がなくても、連続性さえあれば、いくらでも精密に解を追い詰められる。「つながっている」という、ただそれだけの性質。そこから「必ず解がある」という存在証明が出て、「解を求める方法」まで出てくる。

数学が、当たり前に見える性質を厳密に定義する理由が、ここにある。 定義を固めておけば、そこから思いがけないものが引き出せるのだ。

答

なので連続

別解

「連続でない例」を見ることで、連続の意味をはっきりさせる。 が連続なのは、当たり前すぎて意識しにくい。連続が壊れる つのパターンを見てみよう。

① ジャンプ(飛び)がある。

の左から近づくと 、右から近づくと 。

左右の行き先が違う。 極限値そのものが存在しない。

グラフは で断崖のように切れている。 ペンを離さずには描けない。

② 穴があいている。

を入れると となり、値が定義されていない。極限は に近づくのに、 という点には、そもそも値が存在しない。

グラフは直線 から、 点だけをくり抜いた形。 穴があいている。

これは、 と定義してやれば連続になる(除去可能な不連続)。

③ 無限に飛ぶ。

で、 は無限に大きくなる。 極限値が有限でない。グラフは 軸に沿って、上下に吹き飛んでいく。

この つと比べると、 の「当たり前さ」がよく分かる。

  • 左から近づいても、右から近づいても (ジャンプなし)
  • で確かに値がある(穴なし)
  • その値が で、極限と一致する(飛びなし)

つの条件をすべて満たしている。そして、多項式はどこでも連続である。 に限らず、 でも、 次式でも、すべての実数で連続だ。

なぜか。 多項式は足し算・引き算・掛け算だけでできているからだ。

この つの演算は極限と自由に交換できる。 割り算(分母 の危険)も、根号(定義域の制限)も、場合分け(ジャンプの危険)も入っていない。「連続でなくなる原因」を、多項式は つも持っていない。

だから、多項式の極限は「代入するだけ」で求まる。 を計算するのに、 を代入して とする。この当たり前の操作が許されるのは、多項式が連続だからである。

当たり前だと思っていた操作も、「連続性」があるから許される。

ポイント

  • 連続 。
  • 多項式はすべての点で連続。

よくある間違い

  • を計算せず、 だけを示して「連続」と結論づける。極限値と関数の値の両方を出し、一致を言う必要がある
  • 「グラフがつながっているから連続」で済ませる。定義()に沿って示すのが答案の作法
  • 左右の極限を区別しない。 の極限が存在するには、左からと右からの行き先が一致していなければならない

問12関数の極限(分数・無限大)

★ 基礎関数の極限

問題

極限 を求めよ。

ヒントを見る

分子・分母を で割ると、 に向かう項とそうでない項が見分けられる。

解答・解説

方針

の形。分母の最高次 で分子・分母を割る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) で、分子も分母も無限大になる。また の不定形だ。

数列でやったことと、まったく同じ手が使える。分母の最高次()で、分子・分母を割る。

で 、。

数列()でも、関数()でも、手法は共通だ。

違いは、 が自然数だけを動くのに対し、 は実数として連続に動くことだけ。 無限大に飛ばすときの計算は、何も変わらない。

「 は最高次で割る」という 手を、あらゆる場面で使う。

重要 は分母の最高次()で割る

分子・分母を で割る。

で 、 なので

xyOy=2
y=(2x+1)/(x−3)=2+7/(x−3)。x→∞ で 2 に近づく(漸近線 y=2)

まとめ:関数の も数列と同じく分母の最高次で割る。 により、最高次の係数比 が残る。

発展。 この極限から、グラフの「全体像」が分かる。

関数を割り算で整理してみよう。

双曲線の形になった。

この関数の姿が完全に見える。

  • 縦の漸近線: 分母が になる
  • 横の漸近線: で だから

この問題で計算した極限 は、横の漸近線の高さである。 つの関数を、 つの角度から見てみよう。

① (右の彼方)

右へ行くと、 に上から近づく( だから)。

② (左の彼方)

左へ行っても、 に。 ただし今度は下から()。

③ (縦の漸近線)

の近くで、上下に吹き飛ぶ。この つの極限で、グラフの全体像が決まった。右上と左下に つの枝をもつ、 と を漸近線とする双曲線である。

極限はグラフを描くための道具でもある。関数の「果て」で何が起きているかを調べると、その関数の性質が分かる。数学IIIでグラフの概形を描くとき、必ず次の つを調べる。

  • 無限の彼方での挙動(横・斜めの漸近線)→ 極限
  • 分母が になる点での挙動(縦の漸近線)→ 極限
  • 増減と凹凸 → 微分

極限は微分と並ぶ「グラフを描く 本の柱」の 本である。 という 行の計算が、 本の漸近線を引いている。

答

別解

置き換えを使って、無限大を への極限に直す。

「」は扱いにくい。 無限は代入できないからだ。そこで、無限を有限に変換する。

この置き換えで、何が起こるか。

無限の遠くの様子を、原点の近くで調べられるようになった。

式を で書き直す。 を代入する。

分子・分母に を掛けて、分数を整理する。

きれいになった。

ここで の極限をとる。 この式は で分母が だから、そのまま代入できる。

本解と同じ答え

この方法の要点をまとめる。不定形 が代入できる普通の式になった。「無限大での挙動」を、「 の近くでの挙動」に言い換えたのだ。

の近くなら、代入して確かめられる。 これは大きな利点だ。この置き換えはいろいろな場面で活躍する。

たとえば、 を求めよ、と言われたら。そのままでは の不定形で、手が出ない。 とおくと

だから

基本極限の形になった。

という手の出ない形が、 という既知の極限に言い換えられた。「見たことのない形を、見たことのある形に変換する」

置き換え(変数変換)はそのためにいちばんよく使う道具である。 積分でも、微分方程式でも、同じ発想が繰り返し現れる。

無限が扱いにくいなら、有限に引き寄せればいい。 という 行がそれをやってのける。

ポイント

  • は最高次で割る(数列と同じ)。
  • 極限は最高次の係数比。

よくある間違い

  • と を混同する。 なら分母が に近づき、 に発散する(別の話)
  • 最高次で割ったあと、 で満足して極限をとらない。 を最後まで実行する
  • と置き換えたとき、 とすべきところを としてしまう。 が大きくなるほど は小さくなる