数学II / 指数関数・対数関数

指数関数・対数関数 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 指数法則(0・負の指数)
  2. 有理数の指数と累乗根
  3. 指数関数のグラフ
  4. 指数の大小比較
  5. 指数方程式(基本)
  6. 指数不等式(基本)
  7. 対数の定義
  8. 対数の性質
  9. 底の変換
  10. 対数関数のグラフ
  11. 対数方程式(基本)
  12. 常用対数と桁数

問1指数法則(0・負の指数)

★ 基礎指数法則

問題

次の値を求めよ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

マイナス乗が何を意味するか(逆数との関係)を思い出すのが第一歩。かけ算・わり算で指数がどう動くかは、指数法則にまかせる。

解答・解説

方針

、、かけ算は指数を足す、わり算は引く。この4つの指数法則で計算する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 指数の計算は、 つの法則で全部片づく。

そして、 つの約束。

(1) 負の指数は「逆数」。

分数の負の指数はひっくり返して正の指数にする。

(2) 、。掛けて 。

(3) 指数の引き算。

「同じ底なら、指数を足し引きする」ことが、指数計算の中心である。

公式指数法則:、、、

(1) マイナスの指数は逆数にする。 の逆数は 。

(2) かけ算なので指数を足す。 にも注意。

(3) わり算なので指数を引く。

発展。 指数を拡張していく道のりは、まだ続く。

指数 意味 例
自然数 回掛ける
負の整数 逆数
有理数 累乗根
無理数 極限
複素数 オイラーの公式

「 を 回掛ける」とはいったい何を意味するのか。

答え: 有理数で近似して、その極限をとる。

この数列はある値に収束する。 その極限を と定義する()。

「掛ける回数」という素朴な意味は、とっくに失われている。 それでも指数法則は成り立ち続ける。だから拡張する価値がある。

そして、複素数の指数。

オイラーの公式。 ここで「 を 回掛ける」などと考えてはいけない。指数関数の性質(微分すると自分自身になる)を保つように定義すると、必然的にこの形になるのだ。

そして とすると

オイラーの等式。 数学の つの重要な定数(、、、、)が、 本の式に集まる。数学で最も有名な式のひとつと言われる。

から始まった拡張の旅が、ここまで来た。 「規則を保つように定義を広げる」という一手が、これほど遠くまで連れて行く。

答

(1) (2) (3)

別解

「」も「」も、なぜそう決まっているのか。 天下り式に覚えるのではなく、必然性を見よう。理由が分かれば、二度と忘れない。

表を作って、指数を ずつ下げていく。

規則を読む。 右へ つ進むごとに(指数が 減るごとに)、値が半分になっている。

この規則をそのまま続けたらどうなるか。

表が完成した。

も、 も、「表を自然に延長した結果」だった。これが「定義の拡張」の作法である。

指数法則で確かめる。 という法則を、 の場合にも使いたい。

左辺は明らかに 。 だから でなければならない。法則を守るには、そう決めるしかない。

負の指数も同様。

左辺は 。 だから

「 乗は 個も掛けないから じゃないの?」という素朴な疑問への答えも、ここにある。

を「 を 回掛ける」と読む限り、 は意味をなさない。 そこで読み方を変えるのだ。

「 に、 を 回掛ける」 と読めば、 は「 に何も掛けない」= 。意味が通る。同じ発想は他でも使われている。

  • ( という規則を保つため)
  • 空集合の要素の和 、積 (何も足さなければ 、何も掛けなければ )

「規則が壊れないように、境界の値を決める」という方法で、数学は扱える範囲を広げてきた。 は指数法則から自然に決まる値だ。

ポイント

  • (マイナス指数は逆数)。
  • かけ算は指数を足す、わり算は引く。

よくある間違い

  • としてしまう()
  • としてしまう(負の指数は逆数。)
  • で逆数にするのを忘れる(ひっくり返して )

問2有理数の指数と累乗根

★ 基礎有理数の指数累乗根

問題

次の値を求めよ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

分数の指数と累乗根の対応を思い出そう。どの数も小さい素数の累乗に直してから指数法則に乗せると、まとめて計算できる。

解答・解説

方針

分数の指数は根号に直す:。累乗根のかけ算は中身をまとめられる。底を素因数の累乗にそろえると計算しやすい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分数の指数は、累乗根を意味する。

「分母は根っこ( 乗根)、分子はべき( 乗)」という対応を押さえる。

しかし、根号のまま計算するのは大変だ。 のべきに統一するのが、この単元の必勝法である。

(1) に注目する。

指数どうしの掛け算で、 と が約分される。 根号を書く必要すらない。

(2) 、。掛けると指数が足されて 。

(3) だから 。

「底を素因数分解して、 のべきに揃える」だけで全問解ける。

公式、

(1) に直すと、指数どうしのかけ算になる。

(2) 累乗根の積は中身をまとめる。

(3) 、マイナス指数は逆数。

発展。 分数指数を使うと、 年で 増える利率は半年でいくつかという問いに正しく答えられる。

素朴な誤り: 「半年なら だろう」

正しくは: 年で 倍になるということは、半年では 倍。

約 であって、 ではない。

なぜか。 半年で ずつ増えると、 年では

増えてしまう。複利のせいで、多すぎるのだ。「掛け算で考えるときは、半分にするのは『割る 』ではなく『平方根』」と覚えておくと、指数的な変化がつかみやすい。

同じ計算がいろいろな場面で必要になる。

放射性物質の半減期。 半減期 の物質は 時間で半分になる。では 時間では?

約 残る( ではない)。

音楽の平均律。 オクターブ( 振動数 倍)を 音に等分するには、 音あたり 倍にする。

ピアノの隣り合う鍵盤の振動数の比は、 という無理数である。バッハの時代に確立されたこの調律法が、 乗根という数学の上に成り立っている。

「等分する」とき、足し算的に等分するのか、掛け算的に等分するのか。 指数で考えるときは、後者になる。分数指数はそれを表す書き方である。

答

(1) (2) (3)

別解

根号のまま計算するルートも見ておこう。分数指数に慣れないうちは、こちらのほうが安心できる。そして「なぜ なのか」を確かめる。

根号ルートで解く。

(1)

または、順番を変えて

どちらでも同じ。 ただし後者のほうが楽だ( の 乗根より、 の 乗根のほうが計算しやすい)。「先に根をとってから、べきにする」と、数が小さく保てる。

(2)

同じ 乗根どうしは中身を掛けてよい。

は、平方根のときと同じ規則だ。

(3)

負の指数 → 逆数、分数指数 → 累乗根。 段階で処理する。さて、「なぜ なのか」。

指数法則を守るように決めたからで、ここでも同じ理屈である。

「 乗すると になる数」は、 そのものである。

同じく

指数法則 を保とうとすると、分数指数は累乗根でしかありえない。どちらのルートを使うべきか。

分数指数 根号
掛け算・割り算 ずっと速い(指数を足すだけ) 中身を掛ける必要がある
数の大小比較 速い(指数を比べる) 難しい
直感的な理解 慣れが要る 分かりやすい

慣れたら分数指数、迷ったら根号。 ただし、この先(対数、微分積分)では分数指数が標準になる。 と書けないと、微分の公式が使えない。

根号のままでは、この計算はできない。 分数指数はこの先の単元で使うための準備である。

ポイント

  • 分数の指数は根号:。
  • 底を の形にそろえると、指数法則で楽に計算できる。

よくある間違い

  • の分母と分子を取り違える(分母が根、分子がべき)
  • を のように計算してしまう
  • 負の分数指数で、逆数にするのを忘れる()

問3指数関数のグラフ

★ 基礎指数関数のグラフ

問題

関数 について、定義域と値域を答えよ。また、増加関数か減少関数かを答えよ。

ヒントを見る

にいろいろな値(負の数も)を入れてみて、 がどう動くかを観察しよう。 が決して取れない値があることに気づくはず。

解答・解説

方針

()のグラフの形を思い出す。 はどんな実数でもよく、 はつねに正、そして右上がり(増加)。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) のグラフを、値の表から起こしてみる。

つのことが読み取れる。

定義域: にはどんな実数を入れてもよい( でも でも計算できる)。

値域: は必ず正。どんなに を小さくしても、、、 と に近づくが、決して にはならない。

増減: が増えると も増える。

「 に近づくが にならない」ので、 軸が漸近線になっている。

公式():定義域は実数全体、値域は 、増加関数、点 を通る

は の指数関数。

  • 定義域: にはどんな実数を入れてもよいので、実数全体。
  • 値域: は が大きな負でも に近づくだけで、 や負にはならない。よって 。
  • 増減: なので が増えると も増える。増加関数。
xyO(0,1)
y=2^x:値域 y>0、増加、(0,1)を通る

発展。 指数関数には、特別な底がある。ネイピア数 だ。

なぜ が特別なのか。 は微分しても自分自身になる唯一の関数だからだ(定数倍を除いて)。

グラフのどの点でも、「高さ」と「傾き」が等しい。 高さ のところでは傾きも 、高さ のところでは傾きも になる。増え方が現在の量に比例する。

これは、自然界のあらゆる「自己増殖」の法則そのものである。

  • 細菌: 数が多いほど、増える速さも大きい
  • お金(複利): 元本が多いほど、利息も多い
  • 放射性崩壊: 原子が多いほど、崩壊する数も多い(こちらは減少なので )
  • 人口増加: 人が多いほど、生まれる子も多い

「変化率が、現在の量に比例する」現象は、必ず の形になる。 これは微分方程式の最も基本的な解であり、自然現象を表すときによく使う関数だ。 の定義の つは、複利から出てくる。

「年利 を、 回に分けて複利計算する」と考える。 回なら 倍、 回なら 倍、 回なら約 倍 となり、無限に細かく分けると、 倍に収束する。

「連続複利の極限」が 。 銀行の利息計算から、自然界の成長法則まで、 つの数がつないでいる。

を学ぶことは、 への準備運動である。 数IIIではこの特別な関数を中心に学ぶ。

答

定義域:実数全体、値域:、増加関数

別解

底が変わると、グラフはどう変わるか。 それを押さえておけば、指数関数のすべてが見える。底が より大きいとき()。

、、 は、どれも増加関数だ。

底が大きいほど、急激に増える。 で比べると

底が より小さいとき()。 の値の表を作る。

が増えると、 は減るので、減少関数だ。

なぜか。 と書き直せば分かる。 を、 軸で折り返したグラフである()。

この違いが、不等式を解くときに大事になる。すべての指数関数に共通する性質。共通1: 必ず点 を通る。

すべての指数関数のグラフが 点 で交わるのである。共通2: 値域はいつも 。

正の数を何乗しても、正である。 にも負にもならない。

共通3: 軸が漸近線。

なら で、 なら で、 に限りなく近づく。この「 に近づくが にならない」性質が、現実の現象を記述する。

放射性物質の崩壊。 半減期ごとに半分になるが、完全にゼロにはならない(数学的には)。

薬の血中濃度。 体内から少しずつ抜けていくが、指数的に減衰する。

コーヒーの冷め方(ニュートンの冷却法則)。 室温との温度差が指数的に減っていく。そして、増加のほうも急激だ。

細菌の増殖、複利、ムーアの法則(半導体の性能は 年で 倍)、SNS の情報拡散は、すべて の形をしている。「指数関数的」という言葉が、日常語として使われるほど、この関数は現実を支配している。

枚の紙を 回折ると、月に届く。( mm 万 km。実際には折れないが、計算はこうなる。)

指数の増え方は人間の直感を軽々と超える。 その増え方の速さを知っておくことも、この関数を学ぶ意味である。

ポイント

  • はつねに正()。 や負にならない。
  • は増加、 は減少。どちらも を通る。

よくある間違い

  • 値域を「実数全体」としてしまう( は必ず正なので )
  • 定義域を に限ってしまう(指数は負でも でもよい)
  • になる があると思ってしまう( 軸は漸近線で、決して届かない)

問4指数の大小比較

★ 基礎大小比較

問題

、、 を小さい順に並べよ。

ヒントを見る

見た目がバラバラな つを、同じ底の累乗の形にそろえられないか。そろえば、指数の大小だけの比較になる。

解答・解説

方針

すべて底 の累乗にそろえる。 の指数関数は増加関数なので、指数が大きいほど数も大きい。指数を比べるだけでよくなる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 、、 は根号の種類がバラバラで、このままでは比べられない。

そこで、すべてを「 の何乗か」に統一する。

底が に揃った。 あとは指数だけを比べればよい。

は増加関数だから、指数が大きいほど値も大きい。

指数の大小比較は「底を揃えて、指数を比べる」ことに尽きる。

重要底をそろえて指数を比べる( なら指数が大きいほど数も大きい)

① 底を にそろえる。

② 指数を比べる。 、、 を通分すると 、、。よって 。

底 の指数関数は増加関数なので、指数の大小がそのまま数の大小。

まとめ:形の違う累乗の大小は底をそろえて指数を比べる。底が より大きいなら指数の大小がそのまま答え。

発展。 「底を揃える」「累乗して整数化する」以外にも、大小比較の道具がある。対数をとる方法だ。

例: と は、どちらが大きいか?

巨大すぎて計算できない( は 桁の数だ)。累乗して整数化する手も使えない。そこで、両方の常用対数をとる。

大きな数の比較が小数点以下 桁の比較になった。

なぜこれが正しいのか。 は増加関数だから、大小関係を保つ。

「対数をとっても、順序は変わらない」ので、安心して対数に移して比べられる。この「対数を使って大きな数を扱う」という発想が、対数を発明した動機だった。

世紀の天文学者たちは大きな数の掛け算に多くの時間を使っていた。惑星の軌道計算では 桁 桁の掛け算を何百回も手計算する必要があった。ネイピアは掛け算を足し算に変える表(対数表)を作った。

掛け算 足し算。 計算時間が大きく短縮され、「天文学者の寿命が 倍になった」と言われた。

電卓が登場するまでの 年間、対数表と計算尺(対数目盛の定規)が、科学技術の計算に使われていた。 アポロ計画の宇宙飛行士も計算尺を持って月へ行った。

「大きすぎる数を、扱いやすい大きさに畳み込む」のが対数の役割であり、次の問題群で学ぶ内容の中心である。

答

別解

根号のまま比べる方法もある。「同じ乗数で累乗して、整数にする」ルートだ。 分数指数に不安があるときの、確実な逃げ道になる。

発想: つの数を、同じ回数だけ累乗して、根号を消す。 の根号を消すには 乗、 を消すには 乗。両方を消すには、 と の最小公倍数 乗すればよい。

乗する。

根号がすべて消えて、整数になった。

乗した結果の大小が、元の数の大小と同じ( つとも正の数で、 は正の数の範囲で増加関数だから)。

指数を比べるルートと、同じ答え。この方法の要点は「 が単調増加である」という事実だ。

正の数どうしなら、累乗しても大小関係は変わらない。

ただし、負の数が混じると崩れる。 だが、 乗すると となり、逆転する。 だから「両方とも正」という条件が不可欠だ。

数値でも確かめておこう。

確かに合っている。

どちらのルートを選ぶか。

  • 底が揃えられる( のべきに書ける)→ 指数比較が速い
  • 底がバラバラ( と など)→ 累乗して整数化

たとえば と を比べるなら、底を揃えられない( と は別物)。だから 乗する。

根号の中身が違っても、比較できた。 この技は大小比較の問題で必ず役に立つ。

ポイント

  • 底をそろえれば、指数の大小で数の大小が決まる。
  • は指数と同じ向き、 なら逆向き。

よくある間違い

  • 根号の中身( と )だけを比べて、 と誤る
  • を のべきに直せず、比較の土俵に乗せられない
  • 累乗して比べるとき、負の数が混じっていないかの確認を怠る(正の数どうしでのみ大小が保たれる)

問5指数方程式(基本)

★ 基礎指数方程式

問題

次の方程式を解け。

(1)

(2)

ヒントを見る

右辺も左辺と同じ底の累乗で書けないか試す。両辺の底がそろえば、指数どうしを比べるだけ。(2)はどの底に統一するかをまず決めよう。

解答・解説

方針

両辺を同じ底の累乗にそろえる。底がそろえば、指数どうしが等しいと言える。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 指数方程式の原則は、両辺の底を揃えること。

(1)

を のべきで書き直す。

底が同じなら、指数も同じ。

(2)

左辺の底を に直す。 だから

右辺は 。

「底を揃えて、指数を比べる」ことができるのは、指数関数が 対 である(違う が同じ値を返さない)からだ。

重要指数方程式は、両辺を同じ底の累乗にそろえ、指数を比べる

(1) なので、両辺が の累乗になる。

(2) 底を にそろえる。、。

xyOy=32x=5
y=2^x と y=32 の交点。2^x=32=2⁵ より x=5

発展。 「底を揃えて指数を比べる」という推論が正しいのは、指数関数が 対 だからである。

「違う指数からは、必ず違う値が出る」ので、逆に値が同じなら指数も同じだと言える。なぜ という条件が必要か。

だと、 で、 が何であっても同じ値になる。 となり、 対 でない。

だから という方程式の解は「すべての実数」であり、指数を比べる推論は使えない。 という条件も、実は重要だ。

が負だとどうなるか。 を考えると

  • → (正)
  • → (負)
  • → (実数では定義できない)

負の数の指数関数は実数の範囲では「穴だらけ」になる。 だから指数関数の底は正で、 でないと決められている。この条件は、対数の底にもそのまま引き継がれる。

つの条件がついてまわる。

  • 底 : 負の底では指数関数が定義できない
  • 底 : を何乗しても で、 対 でない
  • 真数 : は必ず正なので、 の は正の数しかありえない

この最後の条件(真数条件)が対数方程式で命取りになる(問題 で見る)。

「条件がついている」ことには、必ず理由がある。 理由まで理解しておくと、条件を忘れなくなる。

答

(1) (2)

別解

底が揃えられない場合はどうするか。 そこで登場するのが対数だ。この問題を対数で解いてみると、対数の存在理由がはっきりする。

対数ルートで解く。

(1)

両辺の をとる。

左辺は対数の定義から そのもの( を 乗すると なので、「 は の何乗か」の答えは )。

同じ答え

「対数をとる」とは「何乗か」を取り出す操作である。指数の肩に乗っている を、地上に引きずり下ろす。

この式が対数の存在理由そのものだ。

(2) も、対数をとれば

対数が特に役に立つのは、「底が揃えられない」ときだ。

例: を解け。

は のべきでは書けない。 、 なので、 は と のあいだだと分かるが、正確な値は?底を揃える作戦はここで詰む。

対数なら、答えが書ける。

。 確かに と のあいだだ

「 を何乗すると になるか」という問いに、 という「名前」を与えたのが、対数の発明である。 が「 乗すると になる数」に与えられた名前であるのと、まったく同じ構造だ。

問い 答えの名前
乗して になる数は?
を何乗すると ?
が になる角は?

「求まらない答えに、名前をつける」のは、数学でよく使う方法だ。名前をつけた瞬間、その数を式の中で自由に使えるようになる。

そして名前をつけた後で、その性質を調べる。 なら「積が和になる」という性質が見つかった。次の問題で、それを学ぶ。

ポイント

  • 両辺を同じ底の累乗に → 指数を比べる。
  • を使って底をそろえる。

よくある間違い

  • を のべき()に直せず、方程式が解けない
  • の変形で、マイナスをつけ忘れる
  • 底を揃えずに、指数だけを見比べてしまう(底が違えば指数は比べられない)

問6指数不等式(基本)

★ 基礎指数不等式

問題

次の不等式を解け。

(1)

(2)

ヒントを見る

方程式と同じく、まず底をそろえる。ただし不等式では、底が より大きいか小さいかで、指数の不等号の向きがどうなるか。そこが最大の注意点だ。

解答・解説

方針

両辺を同じ底の累乗にそろえる。底が より大きければ不等号はそのまま、 より小さければ不等号が逆になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 不等式も、まず底を揃える。しかし、方程式とは違う注意点がある。

(1)

底 は より大きい → は増加関数。増加関数では、大小関係がそのまま指数に引き継がれる。

(2)

底 は より小さい → 減少関数だ。

減少関数では、値が大きいほど、指数は小さい。 つまり不等号が反転する。

( と、底を に揃えた。)

底が より小さいと、不等号がひっくり返る。これがこの単元でいちばん多い間違いである。

公式指数不等式: は指数の大小そのまま、 は不等号が逆になる

(1) 。底 なので不等号はそのまま。

(2) 底を にそろえる。。底 なので、指数を比べるとき不等号が逆になる。

xyOy=32x=5
y=2^x>32 ⟺ 曲線が直線 y=32 より上 ⟺ x>5

発展。 「増加関数か減少関数か」で不等号の扱いが変わる。この構造はあらゆる不等式に共通する原理である。

「単調な関数を通しても、順序は保たれる(または反転する)」

この原理が使える場面。

  • 指数: で保存、 で反転
  • 対数: 底 で保存、 で反転(同じ)
  • 乗: の範囲でのみ保存( は正の範囲で増加)
  • 逆数: は( で)減少関数 → 反転する

逆数で反転する例。

当たり前に見えるが、これも「減少関数だから反転」の一例だ。そして、この原理を知らないと、危険な間違いを犯す。

両辺に を掛けて 、つまり ?

間違い。 が負のとき( など)を確かめてみよう。

しかし は を満たさない。 解を落としている。

正しい答えは または 。なぜ間違えたか。「 を掛ける」とき、 の符号が分からないのに、不等号の向きを固定してしまった。

なら向きはそのまま、 なら反転するので、場合分けが必要になる。

「掛ける数・割る数の符号」「関数の増減」 の つを、不等式では常に意識する。等式では気にしなくてよかったことが、不等式では命取りになる。

答

(1) (2)

別解

「不等号がひっくり返る」を、忘れずに済む方法がある。 グラフを見ることと、数値で確かめることだ。

グラフで理解する。

は、右下がりのグラフ(減少関数)。 が増えると は減る。だから「 が大きい」ということは「 が小さい」ということだ。

「」の部分を、グラフで探す。 グラフの左側(x が小さいほう)で、 の値が大きくなっている。 となるのは 。

そこより左(小さい )が の範囲。

グラフを見れば、「左側だ」と一目で分かる。 不等号の向きを頭で考える必要すらない。数値で確かめる(最も確実な検算)。

答え が正しいか、実際に数値を入れてみる。

(答えの範囲内):

(答えの範囲外):

成り立たない。範囲外なので、これで正しい。

もし答えを と間違えていたら、 が解に含まれることになる。しかし で不等式を満たさないので、 回代入すれば、間違いが分かる。

秒の検算で、致命的なミスが防げる。「不等号の向きに迷ったら、数値を つ入れる」ことを、習慣にしておきたい。なぜ底が より小さいと反転するのか、もう 度整理する。

書き直すと、指数にマイナスがついている。

底 は より大きい(増加関数)ので、そのまま指数を比べられる。

最後に「両辺を で割った」から、不等号が反転した

「底が より小さい」を「指数にマイナスがつく」に読みかえれば、反転の理由は「負の数で割ったから」 と分かり、中学以来おなじみのルールに帰着する。

つの理解を持っておこう。

  • グラフの目: 減少関数だから、大小が逆転する
  • 式の目: で、負の数を割ることになる

どちらでもよい。 つでも腑に落ちれば、二度と間違えない。

ポイント

  • 底 は不等号そのまま、底 は逆。
  • この符号の反転が指数不等式で最も間違えやすい。

よくある間違い

  • 底が より小さいのに不等号をそのままにするミス。逆にする
  • 底を揃えずに指数を比べてしまう
  • 答えが出たあと、数値を代入して確かめない(1回の代入で符号ミスは必ず見つかる)

問7対数の定義

★ 基礎対数の定義

問題

次の値を求めよ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

対数の定義『 は、 を何乗すると になるかを表す数』に戻ろう。定義さえ言えれば つとも即答できる。

解答・解説

方針

は「 を何乗すれば になるか」を表す。 の をさがす。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 対数は、「何乗すればよいか」を答える関数である。

日本語で読み下すのが、いちばん確実だ。

(1) :「 を何乗すると ?」

(2) :「 を何乗すると ?」

分数になったら、指数は負だ。

(3) :「 を何乗すると ?」

どんな底でも 。 だからだ。「 を見たら、指数の式に直す」のが、対数の第一歩である。

公式対数の定義:

(1) を何乗すれば か。 なので

(2) を何乗すれば か。 なので

(3) どんな底でも なので

発展。 対数は「」という記号のせいで難しく見えるが、人間の感覚そのものでもある。

フェヒナーの法則。 人間の感覚は刺激の対数に比例する。

音の大きさ。 倍のエネルギーの音を、人は「 倍うるさい」程度にしか感じない。だから音の単位デシベルは対数目盛だ。

dB 増えると、音の強さは 倍。

地震のマグニチュード。 が 増えると、エネルギーは約 倍。

と の差は だが、エネルギーは 倍()。 という小さな数字の裏に、 倍の差が隠れている。対数目盛では、小さな差が大きな違いを表す。

星の明るさ(等級)、酸性度(pH)、味覚、視覚のように、対数で表す量は多い。人間の感覚は、ほとんどが対数的である。

なぜ人間はこう作られているのか。 「 円と 円の差」と「 万円と 万 円の差」は、同じ 円でも重みがまるで違う。変化の「割合」が問題であって、「差」ではない。

対数は割合を差に変える。

「 倍」という割合が、どこでも同じ「距離」になるのが、対数目盛の特徴だ。人間の感覚が対数的なのは、広い範囲の刺激(ささやき声から爆音まで、 万倍の幅)を、限られた神経で処理するためかもしれない。

という計算は、この「割合を差に変える」働きを式で表したものだ。

答

(1) (2) (3)

別解

対数と指数は、 つの事実の「言い換え」にすぎない。 その対応表を作っておけば、どんな問題でも行き来できる。

変換の公式。

左が対数の言葉、右が指数の言葉。 同じ内容を、 通りに書いているだけだ。

実例で確かめる。

対数の式 指数の式 読み方
を 乗すると
を 乗すると
を 乗すると
を 乗すると

つの数(底・指数・値)が登場し、対数と指数で「どれに注目するか」が変わる。

「指数 を求めたい」ときに使うのが、対数。 求める数の位置が違うだけである。この対応から、 つの重要な公式が「当たり前」として出てくる。

公式1:

「 を『 を何乗すれば になるか』乗する」のだから、 になるのは当然だ。同語反復のような当たり前だ。

公式2:

「 は の何乗か?」と聞かれれば、 乗に決まっている。

この つは、「指数と対数が互いに逆の操作である」ことの表明だ。()や、 と同じ関係にある。そして、この「逆」という関係が、グラフに現れる。

逆関数どうしのグラフは に関して対称になる。問題 で、この事実を確認する。

対数を「新しい難しい関数」だと思わないこと。 それは指数を裏返して見ているだけであり、まったく新しい内容ではない。

迷ったら、必ず指数の式に書き直す。 の計算で行き詰まる人の 割は、この書き直しをしていない。

ポイント

  • =「 を何乗で になるか」。
  • 、 は覚えておく。

よくある間違い

  • 底と真数を取り違える( は「2を何乗すると8か」)
  • を としてしまう(分数なので指数は負。)
  • としてしまう(どんな底でも )

問8対数の性質

★ 基礎対数の性質

問題

の値を求めよ。

ヒントを見る

対数の和と差は、真数のかけ算・わり算にまとめられる。 つを つの対数にまとめてから値を求めよう。

解答・解説

方針

対数の和は真数のかけ算、差はわり算にまとめられる。1つの対数にまとめてから計算する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 対数の つの性質を使う。

の足し算は真数の掛け算。 の引き算は真数の割り算。

つを つにまとめる。

や の値は、それぞれは無理数(汚い数)だ。 しかしまとめると、きれいに になる。

「バラバラの を、 つにまとめる」のが、対数計算の基本方針である。

公式、

① 1つの対数にまとめる。 和はかけ算、差はわり算。

② 定義で値を出す。 なので

まとめ:バラバラの対数は、和 → かけ算・差 → わり算 で1つにまとめると真数が簡単になる。最後は定義で値を読む。

発展。 「掛け算を足し算に変える」という性質から、計算尺という道具が生まれた。

計算尺のしくみ。 本の定規に、対数目盛(等間隔ではなく、 の位置が に対応する目盛)を刻む。

を計算したいとき。 片方の定規の「」を、もう片方の「」に合わせ、そこから「」の位置を読むと、 が出る。

なぜか。 対数目盛では、位置が に対応している。定規をずらして足し合わせると

「長さの足し算」が、「数の掛け算」になる

掛け算を、定規をずらすだけで実行できる。 電卓のない時代、技術者は計算尺を胸ポケットに入れて持ち歩いた。

アポロ 号の月着陸( 年)でも、宇宙飛行士は計算尺を携行していた。 コンピュータが故障したときの、最後の砦として。そして、対数の発明者ネイピア( 年)は、こう書いている。

「計算に費やす無駄な時間と、避けがたい誤りほど、数学の学徒を悩ませるものはない。」

彼は 年かけて対数表を作り、天文学者たちの膨大な計算を救った。 ラプラスは「対数の発明は、天文学者の寿命を 倍にした」と讃えた。この性質は今も使われている。

コンピュータの内部では大きな数の掛け算を「対数をとって足す」ことがある(浮動小数点数の指数部の足し算が、その例だ)。

音量調節のつまみ、写真の露出、機械学習の損失関数(対数尤度) のように、掛け算を足し算に変える対数の性質は、今もいろいろな場面で使われている。

という小さな計算。 この性質は、 年前に対数が作られてから、ずっと計算に使われてきた。

答

別解

「なぜ の和が、真数の積になるのか」は、指数法則を裏返すと分かる。証明を知れば、公式は忘れられない。そして数値で検算しよう。

証明: 指数法則から導く。

とおく(つまり 、)。指数法則から

これを対数の言葉で書く。

証明終わり。

「指数を足すと、値が掛かる」 という指数法則を、裏返しただけだ。

対数の性質はすべて指数法則の言い換えである。

指数法則 対数の性質

つとも、左を裏返せば右になる。 覚えるのは指数法則だけでよい。

数値で検算する。

ぴったり になった。 個々の値は無理数なのに、和が整数になる。まとめてから計算する意味がここにある。

もし つずつ小数で計算していたら、誤差が入るし、 という整数の答えも得られなかった。さて、対数計算でいちばん多い誤りを、はっきりさせておこう。

これは決して成り立たない。 正しいのは

「掛け算が、足し算になる」のであって、「足し算が足し算になる」のではない。

確かめてみよう。 。一方 。

たまたま一致した。 しかし、これは偶然だ。 に対し、。今度は違う。

つの例で確かめただけでは、公式の真偽は分からない。 反例を探すことが、公式を疑うということだ。

対数の中の足し算は「外に出せない」。 これが、 を扱ううえで最も重要な戒めである。

ポイント

  • 和はかけ算、差はわり算で1つの対数に。
  • 。

よくある間違い

  • の和を、真数の和にしてしまう( で、積になる)
  • 引き算を掛け算にしてしまう( で、割り算)
  • を や としてしまう(底と真数が同じなら必ず )

問9底の変換

★ 基礎底の変換

問題

の値を求めよ。

ヒントを見る

底 のままでは計算しにくい。底をそろえる変換があった。 も も同じ数の累乗であることを活かそう。

解答・解説

方針

底がそろっていないので、底の変換公式で底を にそろえる。。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、底が で、真数が である。

「 を何乗すると ?」と考えると、、。 はそのあいだにある。答えは整数ではない。

も も のべきだと気づく。

そこで、底の変換公式を使う。

底を に統一する。

「底を揃えて、割り算する」のが底の変換だ。

確かめる。

公式底の変換

底を にそろえる。

、 なので

発展。 底の変換公式から、次のことが分かる。どの底で対数をとっても、違いは定数倍だけである。

は の定数倍にすぎない。

つまり、底を変えても「グラフの形」は変わらない。縦に伸び縮みするだけだ。

のグラフは のグラフを縦に 倍しただけ。

だから、数学では「どの底を使うか」は好みの問題になる。 そして、分野ごとに慣習がある。

  • 数学・物理: 底 (自然対数 )。微分が ときれいになるから
  • 工学・実用計算: 底 (常用対数)。桁数がすぐ分かるから
  • 情報科学: 底 。ビット(情報量)の単位に対応するから

情報理論での対数。 「 通りの可能性から つを特定するのに、何ビット必要か?」

回の「はい/いいえ」質問で、 通りが特定できる()。

ビットとは「 択を 回決める情報量」 のことだ。だから底 の対数が情報の自然な単位になる。この考え方がシャノンの情報理論( 年)を生み、デジタル通信・データ圧縮・暗号のすべての基礎になった。

という計算。 それは「 択の質問を 回すれば、 通りが特定できる」という、情報の量の話でもある( 択 回 ビット、だから 回 ビット)。

底を変えるとは「単位を変える」こと。 メートルをフィートに直すのと同じで、中身は変わらない。

答

別解

公式を使わず、定義に戻って解く。 そして、底の変換公式が「なぜそうなるのか」を証明する。定義ルート: 「 を何乗すると ?」を、そのまま解く。

求める値を とおく。

指数方程式になった。底を に揃える。

底が同じなので、指数を比べる。

公式を使わずに解けた。 しかも、これは指数方程式を解いているだけだ( 番の問題と同じ)。

対数の問題は指数の問題に言い換えられる。 迷ったら、いつでもここに戻ればよい。さて、底の変換公式を証明しよう。

証明。 とおく。定義から

両辺の をとる( は任意の底)。

左辺に「」を使う。

について解く。

証明終わり。 使ったのは「」だけで、前問の性質から出てくる。

この公式の使い道は つある。

用途1: 底を揃える(この問題)。異なる底の対数が混じった式は、 つの底に統一しないと計算できない。

用途2: 電卓で計算する。 電卓には ()と ()しかない。 を計算したければ

どんな底の対数も を底とする対数から計算できる。

用途3: 逆数の関係。 とすると

底と真数を入れかえると、逆数になる。

確かめる:

「底と真数の立場は、逆数で結ばれている」という対称性がある。

ポイント

  • 底がそろわないときは底の変換で共通の底に。
  • 分子が真数、分母が底(の対数)。

よくある間違い

  • 底の変換公式で、分子と分母を逆にする( で、真数が分子)
  • としてしまう(4を2乗すると16。8ではない)
  • と を のべきに直せず、計算の土俵に乗せられない

問10対数関数のグラフ

★ 基礎対数関数のグラフ

問題

関数 について、定義域を答えよ。また、増加関数か減少関数かを答えよ。

ヒントを見る

対数に入れられる数(真数)には制限があった。それがそのまま定義域になる。増加か減少かは底と の大小で決まる。

解答・解説

方針

()のグラフの形を思い出す。真数 は正でなければならず、 なので右上がり(増加)。 を通る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、 の逆関数である。

逆関数の性質から、答えが読める。

元の関数 :

  • 定義域: 実数全体
  • 値域:

逆関数 では、定義域と値域が入れかわる。

  • 定義域: (元の値域)
  • 値域: 実数全体(元の定義域)

「真数は正でなければならない」ことが、定義域 の意味だ。 を何乗しても正の数にしかならないのだから、負の数や の対数は存在しない。

増減も、逆関数に引き継がれる。 が増加関数なら、その逆関数 も増加関数。( で折り返しても、「右上がり」は「右上がり」のまま。)

公式():定義域 、増加関数、点 を通る

は の対数関数。

  • 定義域:対数は真数が正のときだけ定義される。よって 。
  • 増減: なので が増えると も増える。増加関数。
  • なので点 を通る。
xyO(1,0)
y=log_2 x:定義域 x>0、増加、(1,0)を通る

発展。 指数関数と対数関数の「増え方」を比べると、とても大きな差がある。

宇宙の原子数を超える

指数関数は急激に増え、対数関数はゆっくりと増える。

が 万になっても、 は ほどにしかならない。 これほど遅い増加は他にない。この「遅さ」がコンピュータ科学では「速さ」を意味する。

アルゴリズムの計算量を考えよう。 個のデータから、目的のものを探す。

  • 線形探索( つずつ調べる): 回( 万個なら 万回)
  • 二分探索(半分に絞り込む): 回( 万個でも 回ほど)

万回 vs 回。 この差は、 時間かかる処理が 秒で終わるほどの違いだ。

二分探索とは。 辞書で単語を引くときの動作そのものである。まん中を開いて、目的の語が前か後ろかを判断し、半分を捨てる。 これを繰り返す。

回で になる( 万)。

「半分ずつ捨てる」→「 回で終わる」 という関係は、アルゴリズム設計の基本だ。

データベースの検索、ソート、ファイルシステム、GPS の経路探索など、高速なアルゴリズムのほとんどが の計算量を達成することを目標にしている。「 で済む」はコンピュータ科学における最高の褒め言葉のひとつである。

対数関数の増え方が「遅い」ことが、情報技術で計算を「速く」するのに役立っている。 数学の性質は思わぬところで価値に変わる。

答

定義域:、増加関数

別解

「逆関数」という関係を、グラフで完全に理解しよう。 つの関数が 枚の鏡で結ばれている。値の表を つ並べる。

:

:

と がそっくり入れかわっている。

座標を入れかえた点は直線 に関する対称点である(座標の対称移動で学んだ通り)。

この 枚の鏡がすべてを説明する。

鏡を通ると
定義域: 実数全体 → 値域: 実数全体
値域: → 定義域:
軸が漸近線 → 軸が漸近線
点 を通る → 点 を通る
増加関数 → 増加関数

「対称に映すと、 と の役割が入れかわる」だけのことだ。 軸が漸近線になる、という性質を確かめよう。 を に近づけると

どこまでも下へ落ちていく( へ)。 しかし には決して届かない。 軸に近づくが、触れることはない。

これは、 で「 軸に近づくが届かない」ことの、鏡像である。そして、逆関数の関係は「操作を打ち消し合う」ことも意味する。

「 乗する」と「 をとる」は、互いに打ち消し合う。 服を着て、脱げば、元に戻るように。この「打ち消し合い」が方程式を解くときの道具になる。

をとることで、指数の肩から が降りてきた。 逆関数を使うと、指数の肩にある変数を取り出せるのだ。

ポイント

  • 対数の定義域は真数 ()。
  • は増加、 は減少。どちらも を通る。

よくある間違い

  • 定義域を実数全体としてしまう(真数は正なので )
  • 値域を としてしまう(対数の値は負にも にもなる。値域は実数全体)
  • でも値があると思ってしまう( 軸が漸近線で、 は定義されない)

問11対数方程式(基本)

★ 基礎対数方程式真数条件

問題

方程式 を解け。

ヒントを見る

まず真数条件を確認してから、対数の定義で『指数の式』に書き直す。最後に、出た解が真数条件を満たすかのチェックを忘れずに。

解答・解説

方針

まず真数条件(真数 )を確認する。そのうえで、対数の定義で外して を求め、最後に真数条件を満たすかチェックする。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 対数方程式は、指数の式に直すのが第一手。

しかし、まだ終わりではない。

対数には「真数条件」がある。 の は必ず正でなければならない( は正の値しかとらないから)。

求めた は を満たす。だから答えとして正しい。

真数条件のチェックを飛ばしてはいけない。 今回は問題なかったが、チェックを怠ると、成り立たない「偽の解」を答えてしまうことがある(別解で実例を見る)。

対数方程式の手順は 段階。 ①真数条件を書く → ②指数の式に直して解く → ③条件を満たすか確認。

重要対数方程式は、真数条件(真数 )を確認し、定義 で外す

① 真数条件を書く。 真数 は正でなければならないので 、つまり 。

② 定義で外して解く。 は 。

③ 真数条件を確認する。 は を満たすので、これが解。

まとめ:対数方程式は「真数条件を書く → 定義で外す → 求めた解が真数条件に合うか確認」の3手順。条件チェックを飛ばすと、真数が負になる不適な解を書いてしまう。

発展。 「偽の解が紛れ込む」現象は、同値変形でない操作をしたときに起こる。数学の答案で、最も注意すべき点だ。

同値でない変形の例。

操作 何が起こるか 対策
乗する 解が増える( が の解に入ってしまう) 最後に代入して検算
分母を払う 分母が になる値が紛れ込む 分母 を確認
をまとめる 真数条件がゆるむ 元の真数条件で確認
両辺を で割る 解が減る( を失う) の場合を別に調べる

特に危ないのが最後の「解が減る」パターンだ。 偽の解は検算で見つかるが、失った解は二度と戻ってこない。

両辺を で割ると 。 しかし も解である()。「 で割った」瞬間に、 の可能性を勝手に捨てていた。

正しくは、移項して因数分解する。

「割る」のではなく「因数分解する」 のが原則だ。同値変形の意識を、 つの問いにまとめよう。

  1. この変形で、解が増えていないか?( 検算で撃ち落とす)
  2. この変形で、解が減っていないか?( 割った文字が の場合を調べる)
  3. 元の式が意味を持つ条件は?( 真数条件、分母 、根号の中 )

数学の答案は「正しい答えを出す」だけでは足りない。 「それがすべての解であり、他に解がないこと」まで示して、はじめて完成する。

真数条件のチェックもその答案に欠かせない。

答

別解

「真数条件なんて、形だけの手続きだろう」と思う人のために、それを忘れると本当に間違える例を示す。この 例で、真数条件の重要性が骨身にしみるはずだ。

問題: を解け。

手順1(飛ばしてはいけない): 真数条件を書く。

つとも満たす必要がある。

きつい方の条件が残る。

手順2: 対数の性質でまとめて、指数の式に直す。

手順3: 次方程式を解く。

つの解が出た。

手順4(ここが本番): 真数条件で、ふるいにかける。

は を満たすか? 答えは、満たさない。

実際に元の式に代入してみよう。

負の数の対数になる。 これは存在しない。 を何乗しても にはならない。

は方程式の解ではなかった。 計算の途中で紛れ込んだ偽の解である。

は を満たす。代入して確かめると

正しい。

もし真数条件を書かずに「」と答えたら、半分間違いで、大きな減点になる。なぜ偽の解が生まれるのか。

この変形が、実は「同値でない」。

  • 左辺が意味を持つには、 かつ が必要
  • 右辺が意味を持つには、 だけでよい( つとも負でもよい)

のとき、、 で、どちらも負だが、積は で正になる。 右辺は計算できてしまうが、左辺は計算できない。

「まとめる」操作が条件をゆるめてしまった。 だから、まとめる前の条件()に立ち返って、ふるいにかける必要がある。

教訓。

これは対数だけの話ではない。 「 乗する」「分母を払う」「両辺を掛ける」など、同値でない変形をしたら、必ず検算する。

真数条件は形だけの手続きではなく、正しくない解を取り除くための手順である。

ポイント

  • 対数方程式は真数条件(真数 )が最優先。
  • 定義 で外す。

よくある間違い

  • 真数条件()を書かずに答えてしまう
  • を としてしまう(指数の式に直すと )
  • を と計算してしまう( ではなく の3乗で )

問12常用対数と桁数

★ 基礎常用対数桁数

問題

は何桁の数か。ただし とする。

ヒントを見る

桁数と常用対数の関係を思い出そう(たとえば 桁の数の は 台)。まず を、与えられた値で計算するところから。

解答・解説

方針

正の数 の桁数は ( は整数部分)。 を計算して整数部分を見る。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、まともに計算すると大変な数だ。しかし「桁数」だけなら、常用対数で分かる。

桁数と常用対数の関係。

各辺の をとる。

「 の整数部分に を足すと、桁数になる」というのが公式だ。

計算する。

整数部分は 。 だから桁数は

大きな数の桁数が掛け算 回で分かった。

公式正の数 の桁数 ( は整数部分)

① を計算する。 指数は前に出せる。

② 整数部分に を足す。 なので

よって は 桁の数。

まとめ:桁数は「 をとって整数部分 」。 が なら、 は 台(10桁)という意味だ。

発展。 対数の小数部分が「最高位の数字」を決める。この事実から、意外な法則が導かれる。

ベンフォードの法則。

「自然界のデータの最高位の数字は、 が最も多く、 が最も少ない」

最高位
出現率

「どの数字も ずつ」ではなく、 で始まる数が で始まる数の 倍以上も多いのだ。なぜか。対数の目盛で考える。

の目盛の上で、「 で始まる数()」が占める幅は

「 で始まる数()」の幅は

対数目盛の上では、 の領域が の領域より 倍以上広い。

「数が対数的に分布している」なら、最高位の数字は に偏る。これがベンフォードの法則の理由だ。この法則は非常に広く成り立つ。

  • 国の人口、川の長さ、株価、物理定数、住所の番地、SNS のフォロワー数(どれも で始まる数が最多)

そして、実用的な応用がある。だ。

人間が数字を「でっち上げる」と、各数字を均等に使ってしまう。 しかし本物のデータはベンフォードの法則に従う。

この「ずれ」を検出すれば、粉飾決算や選挙の不正が見抜ける。実際に、会計監査や選挙監視で使われている手法である。エンロン事件の会計データもこの法則からのずれで疑われた。

という値は、ベンフォードの法則とも関係している。対数を学ぶと、数がどのように分布しているかも分かるのだ。

答

桁

別解

本当に 桁か、実際に計算して確かめよう。 そして、桁数だけでなく「最高位の数字」まで分かることを確かめる。

答え合わせ: を実際に計算する。

数えてみる。 は、 , , , , , , , , , 桁

確かに 桁だった。 対数の予言は正確である。ここから先が大事なところだ。 の「小数部分」は、何を意味するのか。

を、整数部分と小数部分に分ける。

は「 の後に が 個」で、桁を決める部分だ。

は? 、 だから、 と のあいだの数だ。

したがって

最高位の数字は だ。

実際の値 を見ると、先頭は 。ぴったり当たっている。

の小数部分が「数字の並び」を決めている。

つまり、次のことが言える。 という 桁の数を計算しなくても、 桁で から始まる数だと分かってしまう。この技はとても大きな数を扱うときに役に立つ。

例: は何桁で、最高位は何か?

桁(整数部 に を足す)。

小数部分は 付近 → → 最高位は 。

実際、 は と始まる 桁の数だ

桁の数のおおよその値を、 度も計算せずに言い当てた。

「桁数を求めよ」という問題の意味を考える。 それは「大きな数を、計算せずに把握する方法」である。銀河の星の数や宇宙の原子の数のような大きな数も、この方法で扱える。

という 桁の数値を使うだけだ。 それが 桁の巨大数の姿を、完全に描き出す。対数は大きな数を「圧縮」して扱う道具である。

ポイント

  • 桁数 。
  • は が 、つまり10桁。

よくある間違い

  • 整数部分に を足すのを忘れて「9桁」としてしまう
  • を などと誤って変形する(指数は前に出して )
  • の計算を間違える(掛け算のミスが命取り)