数学II / 式と証明

式と証明 ★★ 標準の問題 全12問

定期テストレベル。典型パターンの運用

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 二項定理と定数項
  2. 二項展開の係数の和
  3. 高次式を2次式で割った余り
  4. 割った余りの条件から余りを求める
  5. 部分分数分解
  6. 繁分数式の整理
  7. 比例式と等式の証明
  8. 比例式の条件つき等式
  9. 逆数の和の不等式
  10. 和と逆数の和の積
  11. 2乗の和の積の不等式
  12. 分数式の最小値(相加相乗)

問1二項定理と定数項

★★ 標準二項定理一般項

問題

の展開における定数項を求めよ。

ヒントを見る

一般項を書き、 の指数をひとまとめにする。指数がちょうど になる取り出し方が定数項。 側がマイナスの指数になることに注意。

解答・解説

方針

一般項を書き、 の次数が (定数)になる項だけを取り出す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 全部展開してはいけない。ほしいのは定数項の1つだけだ。

二項定理の一般項を書き、 の次数がちょうど になる項だけを狙い撃つ。 側と 側で次数がプラスとマイナスに働くので、「次数の帳尻が合う選び方はどれか」という方程式を先に解く。それが設計図になる。

公式二項定理の一般項

一般項は

の次数は 。定数項は 、つまり 。

よって定数項は 。

発展。 「次数の帳尻方程式」 がもし整数解を持たなければ、定数項は である。 の係数を聞かれても、同じ方程式()が整数解を持たないから即座に と答えられる。存在しないことまで機械的に判定できるのが、この方法の強みだ。

3項の展開 では、選び方が多項係数 になる。「選んで掛けて足す」という原理はそのまま拡張される。

答

別解

一般項の式を書かず、「選び方」の言葉で直接読むこともできる。展開とは6個のカッコのそれぞれから か を1つずつ選んで掛け、すべての選び方を足すことだ。 を 個、 を 個選ぶと、 の次数は 。

定数項は次数 だから 。つまり「 を2個、 を4個」選んだ項だけが残る。選び方は 通り、符号は 。よって定数項は 。

一般項の公式はこの「選んで掛けて足す」を文字で書いただけのものだ。仕組みで考えれば、公式の添字( をどちらの個数にするか)で迷わなくなる。

ポイント

  • 定数項は『 の次数 』になる項
  • 一般項で次数をまとめてから を決める
  • の の符号を忘れない

よくある間違い

  • の次数 の合算を誤る
  • 全部展開してから探して手間取る
  • の符号を負として、 と答える(偶数個で正)

問2二項展開の係数の和

★★ 標準二項定理

問題

とする。次の値を求めよ。

(1)

(2)

ヒントを見る

係数を全部求めて足すのは遠回り。 という和、もとの式の に何かを代入した値そのものになっていないか。交代和のほうも同じ発想でいける。

解答・解説

方針

係数の和はうまい値を代入するとすぐに出る。 で全部の和、 で符号交代の和。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 係数を1個ずつ求めて足すのは最終手段だ。この等式は「どんな でも成り立つ恒等式」であることに注目する。

恒等式なら、好きな値を代入してよい。 を入れると、右辺は係数の総和そのものになる。(2)の符号が交互の和は、 の代入で作れる。「ほしい和の形から、逆に代入する値を設計する」のが、この問題の要点だ。

に、うまい値を代入する。

(1) を代入すると、左辺は 、右辺は 。よって

(2) を代入すると、左辺は 、右辺は 。よって

(展開せず、代入だけで係数の和が出る。 と の使い分けがコツだ。)

発展。 に代入する値の設計は、 と にとどまらない。 なら の和が出るし、微分してから代入すれば の重みつき和も作れる(数IIの微分を学んだ後の話だ)。

に を入れた は、この技のいちばん有名な特例で、「部分集合の総数」という組合せの事実とも一致する。

答

(1) (2)

別解

(1)と(2)を「連立」させると、さらに2つの和が手に入る。偶数番目だけの和と、奇数番目だけの和だ。(1) と (2) を足すと、奇数番目が消えて

引くと偶数番目が消えて 。「 と の代入結果を足し引きして、偶数次・奇数次を分離する」。この足し引きの方法は係数の和の問題でよく続けて使われ、入試では(1)(2)のあと、この分離まで続けて問われることが多い。

ポイント

  • 全係数の和は を代入
  • 符号を交代させた和は を代入
  • 展開しなくても、代入するとすぐに出る

よくある間違い

  • を などと誤る
  • (2)で を思いつかず、係数を全部計算する
  • 代入してよい理由(恒等式だから)を意識せず、暗記の手順として使う

問3高次式を2次式で割った余り

★★ 標準多項式の割り算

問題

を で割った余りを求めよ。

ヒントを見る

次式で割った余りは 次以下だから、余りを文字でおける。割られる式=割る式×商+余り、の関係式に、割る式が になる の値を入れると商の項が消える。

解答・解説

方針

余りは1次式 とおける。 が になる を代入すると、、 が決まる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) を実際に割ることはできない。割り算の等式 を書いて、 を消す作戦に出る。

を消すには、 が になる値、 を代入すればよい。2回の代入で の連立方程式ができる。「割る式の根を代入して商を消す」は、余りの問題の基本である。割る式は 次だから、余りは1次以下。 とおく。

なので、、 を代入すると右辺の が消える。:左辺 、右辺 。よって 。:左辺 、右辺 。よって 。

2式を解いて 、。よって余りは

( は でともに 。割る式の根を代入するのが、この型の解き方だ。)

発展。 次数下げの置き換え規則は割る式で決まる。 で割るなら 、 なら 。「割る式 」を移項した形が、そのまま置き換えの辞書になる。

この見方は複素数と方程式の単元( の計算、 を で割る型)で中心的に使う。大きな指数を周期で折りたたむ技として、覚えておく価値が高い。

答

別解

「次数下げ」の見方も役に立つ。余りだけを考えるなら、 の分だけ自由に引いてよい。つまり を に置き換えてよい。

を とみなすと

だから は、余りだけを見れば と同じものだ。次数が1次以下まで下がったこれが、そのまま余りである。

代入ルートが「値の連立」で攻めるのに対し、次数下げは「式のまま」置き換えで進む。指数が大きいときほど、 と1行で片づくこの見方が役に立つ。整数の合同式( を使う桁の議論)と同じ発想の、多項式版だ。

ポイント

  • 次で割った余りは1次以下 → とおく
  • 割る式が になる値()を代入すると商が消える
  • は で

よくある間違い

  • 余りを定数だけと決めつける(2次式で割る余りは とおく)
  • を とする(偶数乗なので )
  • 次数下げで を に置き換える( で割る場合との混同。割る式が になる置き換えを確認する)

問4割った余りの条件から余りを求める

★★ 標準多項式の割り算恒等式

問題

整式 を で割ると余りが 、 で割ると余りが である。 を で割った余りを求めよ。

ヒントを見る

で割った余りは 次以下。余りを文字でおいて関係式を作り、与えられた つの余りの条件を代入の形で使うと、文字の連立になる。

解答・解説

方針

で割った余りを とおく。『 で割った余りが 』は、 に を代入すると 、という意味だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) がどんな式かは分からない。でも、余りの問題では式そのものは要らない。

で割った余りは、2次式で割るのだから とおける。決め手は条件を式に直すことだ。「 で割ると余り 」は「」という値の情報である(剰余の定理)。 の代入で の連立ができあがる。

公式 次式 で割った余りは ( を代入すれば余りが出る)

は 次だから、余りは1次以下。 とおく。『 で割った余りが 』は 、『 で割った余りが 』は 。この を上の式に入れると が消える。

:。 :。

2式を引いて 、戻して 。よって余りは

発展。 割る式が のように重根を含むと、値の情報だけでは足りなくなり、「 で割った余り」の形を経由する、一段むずかしい型になる。値が使えるのは根がすべて異なるときだ、という条件を意識しておこう。

別解の「点を通る多項式の当てはめ」は補間と呼ばれる考え方の基本で、実験データから式を推定する数値計算の基礎にもなっている。

答

別解

連立を解く代わりに、「グラフの直線当てはめ」で読む方法もある。条件を点の言葉で言い換えると、、。求める余り は1次式、つまり直線で、 と同じ値を でとる。だから は2点 と を通る直線だ。

傾きは 。 と即座に書ける( で 、 で の検算もすぐにできる)。「 個の点を通る 次式」という見方は、割る式が3次以上になっても通用する(3点なら放物線の当てはめ)。連立の計算を図形の性質で置き換えられる。

ポイント

  • で割った余りは
  • 次で割った余りは とおく
  • 根 を代入して連立方程式に

よくある間違い

  • 余りを定数と決めつける(2次式で割る余りは1次以下 )
  • 、 の値の対応を取り違える
  • 「 で割った余り」と「 の代入値」が同じであることの根拠(剰余の定理)を飛ばす

問5部分分数分解

★★ 標準部分分数分解恒等式

問題

を の形に分解せよ。

ヒントを見る

分母を払って恒等式にしてから、 だけ・ だけが残る の値を代入するのが早い。係数比較でも解けるが、どちらが楽か比べてみよう。

解答・解説

方針

両辺に分母をかけて分数を払い、、 を代入して 、 を1つずつ求める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分解後の形()が指定されているから、これを恒等式として を決める問題だ。

両辺に をかけて分数を払う。。ここで、どんな でも成り立つのだから、 と を選んで代入する。片方の項が消える値を選ぶのがうまさで、 が1回ずつの代入で確定する。

両辺に をかける。

を代入: より 。 を代入: より 。

(部分分数分解は、数列の和や積分で役に立つ重要な道具だ。)

発展。 部分分数分解は数学Bの数列の和で特によく使う。 と分解すると、和をとったとき隣どうしが打ち消し合い、長い和が両端だけ残る(望遠鏡和)。

分母に のような重複因子があるときは、 と項を増やして分解する。数学IIIの積分でも、分数関数を積分できる形に直す基本の方法として使い続けることになる。

答

別解

恒等式のもう1つの決め方、「係数比較」でも解ける。 の右辺を整理すると 。左辺と係数を見比べて

差をとって 、よって 。代入ルートと同じ答えだ。

恒等式の係数の決定には「数値代入」と「係数比較」の2大手法があり、どちらでも必ず同じ結論に着く。代入は消える値があるとき速く、係数比較は機械的で見落としがない。両方を持って、式の形で使い分けるのが理想である。

ポイント

  • 分母を払って恒等式にする
  • 『因数を にする値』を代入すると片方が残る
  • 分解後、通分して元に戻るか検算できる

よくある間違い

  • 代入する値()の選び方に気づかない(項が消える値を選ぶ)
  • と の対応を取り違える
  • 分解結果を通分して元に戻る検算をしない

問6繁分数式の整理

★★ 標準分数式

問題

次の式を簡単にせよ。

ヒントを見る

分数の中に分数が入った形は、まず内側の小さい分数を消すのが先。分子と分母に同じものをかけて一掃できないか。何をかければ全部消えるだろう。

解答・解説

方針

分子・分母に共通の をかけると、中の小さい分数がまとめて消える。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分数の中に分数が入った繁分数式。見た目の複雑さにまどわされず、「小さい分数を消す」ことだけ考える。

分子・分母の中の分数の分母は と 。その最小公倍数 を、外側の分子と分母の両方にかける。

一度の掛け算で入れ子が消える。「分子・分母に同じものをかけても値は不変」という分数の原理そのものだ。分子・分母に をかける(中の分母を払う)。

分子:。分母:。よって

(繁分数は『分子・分母に共通の数をかけて小さい分数を消す』のが速い。)

発展。 繁分数を次々に入れ子にした という形は連分数と呼ばれ、 や黄金比の近似分数を作る方法として数学史に名を残している。互除法とも深くつながる話題だ。

実用面では電気回路の並列抵抗 など、逆数の和の形は自然科学の随所に現れる。この問題の整理の仕方はその読み書きの基礎である。

答

別解

「中を先に片づけてから割る」2段ルートも、着実で間違えにくい。まず分子を通分する。。分母も通分する。。

繁分数は「分子 ÷ 分母」だから

一括で をかける本解と、通分してから割る別解。手数は別解のほうが多いが、1歩ずつが小さいのでミスが起きにくい。複雑な繁分数(3段以上の入れ子)では、内側から1段ずつ処理するこの方式なら、間違いを防ぎやすい。

ポイント

  • 繁分数は分子・分母に共通の数をかけて小分数を消す
  • のように、きれいに消える
  • 最後に約分できないか確認

よくある間違い

  • 分子だけ、分母だけに をかける(両方にかけて初めて値が不変)
  • 符号( と )を取り違える
  • の通分で分子を とする(引く順に注意)

問7比例式と等式の証明

★★ 標準等式の証明比例式

問題

のとき、 が成り立つことを証明せよ(分母は でないとする)。

ヒントを見る

比例式の証明は、比の値を つの文字でおくと見通しがよくなる。おいた文字で と を表して左辺に入れると、約分できる形が現れる。

解答・解説

方針

比例式は『 とおく』のが基本だ。、 と表して、両辺がともに になることを示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 比例式の証明の基本は「 とおく」だ。 と共通の値に名前を付ける。

すると 、 と、4文字が2文字と で書き直せる。あとは示したい式の左辺に代入して、 になることを確かめるだけ。分数のまま変形して迷子になるのを、 という固定点が防いでくれる。 とおく。すると 、。

左辺に代入する。

右辺は 。よって両辺とも で等しい。

(比例式は『 とおいて、文字を で表す』のが証明の基本だ。)

発展。 この問題の等式は「加比の理」と呼ばれる性質だ。 のとき、分子どうし・分母どうしを足した も同じ比になる。混ぜても濃度が変わらない食塩水のイメージで覚えられる。

比例式は数学Cのベクトルの成分比や、図形の相似比の計算で絶えず出てくる。「 とおく」「積に払う」の2つの方法は、そのすべての場面で通用する。

答

とおくと両辺とも (証明は解答参照)

別解

を置かずに、「分数を払って積の等式で示す」方法もある。条件 は、分母を払えば という積の等式だ。示したい も、分母を払えば 、展開して

つまり 。これは条件そのものだ。変形はすべて同値(分母は でない)だから、証明が完成する。

分数の等式を「たすき掛けの積」に直して代数の式として扱うこの方式は、文字の置き方すら不要な最短路になることがある。 方式との使い分けは、連なる比が3つ以上あるか( 型なら が便利)が目安だ。

ポイント

  • 比例式は とおく
  • 、 と表して代入
  • 両辺がともに になれば証明完了

よくある間違い

  • とおかず、分数のまま操作して混乱する
  • の可能性への配慮を忘れる(今回は問題文で除外されている)
  • 結論の式を変形して条件に到達したのに、論理の向き(同値性)を確認しない

問8比例式の条件つき等式

★★ 標準等式の証明比例式

問題

のとき、 が成り立つことを証明せよ。

ヒントを見る

比の値を つの文字でおき、 と をその文字で表す。そのうえで左辺と右辺を別々に計算し、同じ値になることを確かめる、という流れが確実。

解答・解説

方針

とおいて 、 を代入。両辺がともに になることを示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 前問と同じ配置だから、同じ第一手。 とおく。

、 を左辺・右辺の両方に代入する。左辺は分子・分母から がくくり出せて 。右辺も 。両辺が同じ値に落ちれば証明完了だ。2乗が絡んでも、 方式の手順は何も変わらない。 とおくと 、。

左辺:

右辺:

両辺とも で等しい。

発展。 条件つき等式の証明は「条件で文字を減らす()」か「差を作って条件の因数を見つける」の二本立てだ。条件が 型のときも、この2つ( の代入か、差の中に を探すか)がそのまま主戦力になる。

この問題の左辺 と右辺 が等しいという事実は、比が等しい2組の数では「2乗の和の比」も「積の比」も元の比の2乗に一致する、という比例式の増殖性を示している。

答

とおくと両辺とも (証明は解答参照)

別解

積の等式で攻めると、きれいな因数分解が姿を見せる。条件は 。示したい等式の分母を払うと 、つまり

を示せばよい。この左辺は因数分解できる。前2項と後2項を組み直すと

条件 から、積は確かに 。証明が終わる。「差を作って因数分解し、条件の因数を見つける」のは、等式証明のもう1つの型だ。 という条件の形が、差の中に因数としてそのまま埋まっている様子は、 方式では見えない点である。

ポイント

  • 比例式は とおいて代入
  • 左辺・右辺を別々に計算し、同じ形にたどり着く
  • どちらも になれば証明完了

よくある間違い

  • 左辺・右辺の一方しか計算せず、比較にならない
  • をくくる約分( で割る)に気づかない
  • 差の因数分解で、条件の形()を因数として探す発想がなく展開のまま止まる

問9逆数の和の不等式

★★ 標準不等式の証明相加平均・相乗平均

問題

、 のとき、 が成り立つことを証明せよ。また、等号が成り立つのはどんなときか。

ヒントを見る

つの項はどちらも正で、かけ合わせると文字がそっくり消える。この形に使える、和と積を結ぶ不等式があった。等号成立の条件まで詰めよう。

解答・解説

方針

正の2数 、 に相加平均・相乗平均を使う。積が (定数)になるのがポイント。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) と 、2つの正の数の和の下限を問われている。

この2数、掛けると になる。積が定数の2数の和ときたら、相加平均・相乗平均の関係を使う。。等号は2数が等しいとき、つまり 。使用条件(2数が正)の確認を忘れずに。

公式相加平均・相乗平均の関係 (、。等号は )

、 なので 、。この2数に相加相乗を使う。

( なので、右辺が定数 になる。)

xyO最小2
t=b/a とおくと y=t+1/t≥2(t>0)、最小2は t=1(a=b)のとき

まとめ:等号は 、つまり 、 より のとき。

発展。 「積が定数になる2数の和」は、相加相乗がいちばん役に立つ場面だ。、 など、逆数がらみの最小値問題はすべてこの型で、この単元の最後の問題で本格的に登場する。

相加相乗は3数版()にも拡張される。2数版が で示せたのに対し、3数版の証明はぐっと歯ごたえが増す、よい練習問題である。

答

相加相乗より 。等号は (証明は解答参照)

別解

相加相乗を使わず、「差を平方の形にする」直接証明もできる。不等式証明の原点の型だ。左辺から右辺を引いて、通分する。

分子は2乗だから 以上。分母は 、 から正。よって全体は 以上で、不等式が成り立つ。

等号は分子が 、つまり のとき。等号条件が の形から目で読めるのが、この方式の利点だ。実は相加相乗の関係そのものが、この「差=平方」で証明される。この問題の2つの解法は定理を使うか、定理の証明を現場でなぞるかの違いである。

ポイント

  • 正の2数に相加相乗
  • 積が定数()になる組を作る
  • 等号成立()を必ず述べる

よくある間違い

  • 、(2数が正)の確認を書かない
  • 等号成立条件を書き忘れる
  • 等号条件を「」のまま放置し、 まで整理しない

問10和と逆数の和の積

★★ 標準不等式の証明相加平均・相乗平均

問題

、 のとき、 が成り立つことを証明せよ。

ヒントを見る

まず左辺を展開して整理する。定数のほかに、逆数どうしのペアが現れる。そのペアをどう下から抑えるかがいちばん大事なところだ。

解答・解説

方針

まず展開して、出てきた に相加相乗を使う。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 左辺のカッコ2つは、そのままでは相加相乗の形をしていない。まず展開して形を確かめる。

現れた は、積が の2数の和。前問で示したとおり 以上だ。よって全体は 以上。等号は のとき。前問の結果が部品としてそのまま使われている。

公式相加平均・相乗平均の関係 ()

左辺を展開する。

、 に相加相乗を使うと 。よって

まとめ:等号は 、つまり のとき。

発展。 この不等式は 個に一般化される。。「相加平均は調和平均以上」という平均どうしの序列の言い換えでもある。

カッコごとに相加相乗を使う道( と を掛ける)も正しく通るが、掛け合わせてよいのは両辺が正のときだけ、という注意が要る。複数の不等式を合成するときの作法として覚えておきたい。

答

展開して相加相乗を使うと 。等号は (証明は解答参照)

別解

この後の問題で証明する不等式 を先取りして使うと、展開すら不要になる。その不等式に、 の代わりに を、 の代わりに を入れる(、 だから根号がとれる)。

右辺の中身が になって文字が消えるので、1行で終わる。等号は 、整理して 。「何を代入するとほしい形になるか」を逆算して不等式に食わせる。この使い方こそが有名不等式を道具として運用する感覚である。

ポイント

  • まず展開して を作る
  • その部分に相加相乗()を使う
  • 等号は

よくある間違い

  • 展開せずにカッコごとに相加相乗を当てはめて、等号条件の整合を確認しない
  • 展開で出る を落とす
  • 等号成立条件()を、途中で使った不等式の等号条件から確認しない

問112乗の和の積の不等式

★★ 標準不等式の証明

問題

、、、 を実数とする。 が成り立つことを証明せよ。また、等号が成り立つ条件を述べよ。

ヒントを見る

左辺と右辺をそれぞれ展開して差をとる。うまく整理すると『何かの 乗』にまとまる。

解答・解説

方針

『左辺 右辺』を計算して、 乗の形にまとめる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 大小を示す基本は「差をとる」。左辺から右辺を引いて、 以上だと分かる形(平方の形)にまとめにいく。

展開すると と は打ち消し合い、残るのは 。これは 。2乗だから 以上で、証明が終わる。等号は のとき。「差を平方に押し込む」型の代表格だ。差をとる。左辺・右辺を展開して

乗は 以上だから 。よって

等号は 、つまり のとき。

(これはコーシー・シュワルツの不等式の基本形。差が 乗になることが証明の決め手だ。)

発展。 この不等式はコーシー・シュワルツの不等式と呼ばれ、数学の全域で使われる大物だ。ベクトルの言葉では 、つまり「内積は長さの積を超えない」( が を超えない)ことを言っている。

文字を増やした も、別解の2次関数方式ならそのまま証明できる(平方の数が3つに増えるだけだ)。差の平方方式では項の整理が大変になるので、一般化には判別式方式が強い。

答

差 。等号は (証明は解答参照)

別解

2次関数の判別式から出す、視点の高い証明もある。 の関数 を考える。2乗の和だから、どんな でも だ。展開して について整理すると

のとき、下に凸の放物線が 軸より下に潜らない条件は、判別式が 以下。

移項すれば示したい不等式そのものだ。等号は となる がある場合、つまり かつ 、比の言葉で 。「うまい2次関数を作って判別式で落とす」この設計は、より多くの文字の不等式にもそのまま伸びる、汎用性の高い型である。

ポイント

  • 差をとって展開 → 乗にまとめる
  • で証明できる
  • 等号は

よくある間違い

  • 展開の途中でミスして にたどり着けない
  • 等号条件を書き忘れる
  • 等号条件を の形だけで書き、 など分母が の場合の表現に無頓着になる( の積の形が安全)

問12分数式の最小値(相加相乗)

★★ 標準相加平均・相乗平均

問題

のとき、 の最小値を求めよ。また、そのときの の値を求めよ。

ヒントを見る

分子の次数が分母より高いときは、まず割り算して『多項式 + 分数』の形に直す。すると、和の最小値でおなじみの形が現れる。置きかえると見やすい。等号成立の値が範囲に入っているかも確認。

解答・解説

方針

そのままでは相加相乗が使いにくい。 と置きかえて、 の形に持ちこむ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分子が2次・分母が1次の分数式。このままでは知っている方法が使えない。

分母 をひとかたまりに、()と置きかえる。分子を で書き直すと

「変数+定数/変数」の形が現れた。積が定数 の2数の和だから、相加相乗を使う。等号成立の が範囲()に入るかの検分まで含めて1セットである。

公式相加平均・相乗平均の関係 ()

とおく( より )。分子は平方完成すると なので

なので相加相乗より

等号は 、つまり ( で範囲内)のとき。 より ()。よって のとき最小値 。

( と平方完成して で置きかえれば解ける。等号がとれる が範囲内かの確認も忘れずに。)

xyO最小 2√2
y=(x²+2x+3)/(x+1)(x>0)。最小 2√2≈2.83(x=√2−1)

発展。 相加相乗で最小値を求めるときは、「等号が成立できるか」の検分を必ず行う。もし定義域が なら、等号点 は範囲外となり、相加相乗の は「到達できない下界」にすぎなくなる(そのときは単調性で端の値が最小になる)。

数学IIIに進むと、この種の分数関数の増減は微分で機械的に調べられるようになる。相加相乗・逆手流・微分の3本の道を持つのが最終形だ。

答

のとき最小値

別解

「 とおいて、実数解の存在条件から の範囲を出す」逆手流でも解ける。 とおき、分母を払って整理すると

この方程式が の解を持つような の範囲が、そのまま関数のとりうる値の範囲だ。判別式は 。実数解には (今の設定では 側)が必要になる。境目の では重解 で、範囲の条件も満たす。よって最小値 ()。

「関数の値域=方程式が解を持つ の集合」という発想の転換は、分数関数・2変数の最大最小で広く使える方法だ。相加相乗と答えが一致することが、双方の検算になる。

ポイント

  • そのままでは使えない → 置きかえで の形に
  • 分子を平方完成すると置きかえが見える
  • 等号成立の が変域内か確認する

よくある間違い

  • 置きかえずに、分子と分母へ別々に相加相乗を当てはめようとする
  • 等号成立の (または )が定義域に入るかの検分を飛ばす
  • 分子の書き直し()で、 の代入計算を誤る