数学II / 式と証明

式と証明 最難関編の問題 全8問

東大・京大の最難関レベル。気づきにくい発想や、何段階もの議論が必要な問題

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 同じ順序の積の和の不等式
  2. (1+1/n)ⁿ が3を超えないこと
  3. 二項係数が n+1 で割り切れること
  4. 分数式の絶対値が1未満であること
  5. 2のべきの積と等比数列の和
  6. n+1個の条件をみたす多項式の次の値
  7. 値の偶奇から整数解がないことを示す
  8. 積の形の望遠鏡式

問1同じ順序の積の和の不等式

最難関編不等式の証明差の分解

問題

実数 および に対して、不等式

が成り立つことを示せ。また、等号が成り立つのはどのようなときか。

ヒントを見る

差をとって展開し、うまく組み直せるか。 と 、 と のように、同じ向きの大小差どうしの積は符号が決まっている。その形の和に書けないか。

解答・解説

方針

左辺から右辺を引いた差を計算すると、 のような「同じ向きの大小の積」の和にまとまる。同じ順序に並んだ2つの差の積は0以上なので、それだけで不等式が示せる。等号は3つの積がすべて0になる条件を詰める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 両辺とも と の1次ずつの式だ。差をとれば、 型の項の足し引きになる。

ねらいは差を「同じ向きに並んだ2つの差の積」の和に組み直すこと。 かつ なら 。この符号の決まった部品だけで組み立てられれば、不等式は自動的に成り立つ。

重要(差はペアの積の和に分解できる)

① 差の分解を確かめる。 ペアの積の和を素直に開く:

一方、左辺−右辺も展開すると

同じ式になった。よって、上の囲みに書いた分解は恒等式である。

② 各部品の符号。 より 。同様に 、。よって差は0以上で、不等式が成り立つ。

③ 等号の条件。 等号 ⟺ 3つの積がすべて0。 がすべては等しくないとすると だから、 より 。これと から 。よって等号が成り立つのは

のとき(このとき実際に等号が成り立つことは、代入で確かめられる)。

まとめ: 「差を符号の決まった部品に分解する」のが不等式証明の基本だ。同じ順序の積和 が平均どうしの積より大きい、という原理(チェビシェフの和の不等式)の要点を、分解1本で示した形になっている。

発展。 この不等式は 変数でも成り立つ。「同じ向きに並んだ2つの列の、同順序の積和の平均は、それぞれの平均の積以上」。データの言葉で言えば、正の相関をもつように並べた積の平均は、平均の積を下回らない。統計の共分散の非負性と同じ形をしている。

答

証明(差がペアの積の和に分解される)。等号は または のとき

別解

並べ替えて3つ足す(得意な人向け)。 ペアの分解に気づかなくても、並べ替えの原理からすぐに出せる。まず2項の基本を確認する。 のとき

つまり、大きいもの同士を組ませた方が積の和は大きい(同順序のときが最大)。この原理から、 をどう並べ替えて組ませても

が成り立つ(隣どうしの入れ替えを繰り返せば上の2項の基本に帰着する)。そこで、3つの巡回的な並べ替えについて書く:

自明な と合わせて3本を足すと、右辺の総和はちょうど

よって 。展開計算を1度もせずに、原理だけで届くルートだ。

ポイント

  • 差 = 。
  • 同順序の差の積はすべて0以上。
  • 等号は または 。

よくある間違い

  • 分解の恒等式を検証せずに使う。両辺を展開して同じ式になることまで書いて、初めて答案になる。
  • 等号条件を「 かつ 」としてしまう。3つの積が0になればよいので、片方の組がそろえば十分(または)。
  • 逆順(片方が増加、片方が減少)の場合と混同する。そのときは不等号の向きが逆になる。並びの向きの確認が第一歩。

問2(1+1/n)ⁿ が3を超えないこと

最難関編二項定理評価

問題

を自然数とする。二項定理を用いて、不等式

が成り立つことを示せ。

ヒントを見る

展開した第 項 を約分して、 を消した形で上から押さえられないか。押さえた量の和がそのままでは求まらないなら、さらに足しやすい形(和が求まる数列)まで粗くしてよい。

解答・解説

方針

二項定理で展開し、第 k 項を n によらない量で2段階に押さえる: まず約分して 1/k! 以下、さらに k! ≥ 2^{k−1} で等比の形に。等比数列の和は2未満なので、全体は 1+2=3 未満に収まる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 左辺は とともに変わるのに、右辺は定数3だ。つまり、展開の各項を によらない量で押さえて、足しても定数に収まることを示せばよい。

二項定理の第 項は 。分子の を で割ると、各因子が1以下になって が残る。 の和はそのままでは求まらない。だから、もう一段粗く で等比数列に落とす。2段階の評価が設計図だ。

公式二項定理 。等比数列の和

① 第 項を で押さえる。 に対して

(最後の 個の因子はどれも1以下。)

② を等比で押さえる。 で だから

③ 足し上げる。

まとめ: 「 を消す評価(約分して )」→「和が求まる形への評価(等比 )」の2段構え。この量 は とともに増えて に近づくことが知られていて、本問の評価はその「上限が存在する」ことを示す部分にあたる。

発展。 実は が について増加することも、同じ二項展開の項別比較で示せる。「増加し、上に押さえられている」という2つの条件がそろうと、行き着く先の数が存在する。それが自然対数の底 の誕生の仕方だ。

答

証明(展開の第 項を 、さらに で押さえて等比数列の和に帰着)

別解

第2段を部分分数で(もう1つの粗くし方)。 ②の の代わりに、 での

を使ってもよい( は を因数に含む)。すると

部分分数に分けた望遠鏡和の形が現れる。 の項()を別にして

等比数列の代わりに、隣どうしが打ち消し合う和で3未満に収めた。

「和が計算できる形まで粗くする」という第2段の設計には、等比(本解)と望遠鏡(本ルート)の少なくとも2つの選択肢がある。どちらでも同じ3が得られるので、評価のしかたは1通りではない。

ポイント

  • 第 項は約分して 以下( が消える)。
  • で等比の形へ。
  • 。

よくある間違い

  • ①の約分(各因子 )を書かずに に飛ぶ。 が消える理由がこの1行。
  • 等比数列の和を と等しいとする。 という厳密な不等号が最後の を支える。
  • の項()の扱いを落として、答えが 未満などにずれる。和の開始位置をそろえて書く。

問3二項係数が n+1 で割り切れること

最難関編二項係数整数性

問題

を自然数とする。

(1) 等式 が成り立つことを示せ。

(2) は の倍数であることを示せ。

ヒントを見る

割り切れることを素因数で調べようとすると沼にはまる。商そのものが「整数であることが明らかな量(二項係数の組合せ)」で書けてしまえば終わりだ。隣どうしの二項係数の比を、階乗で計算してみる。

解答・解説

方針

「割り切れる」を直接示す代わりに、商 が2つの二項係数の差に等しいことを示す。二項係数は整数で、整数の差は整数なので、それだけで割り切れることが分かる。比 を階乗で計算するのが早い。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「 で割り切れる」を素因数分解で示すのは難しい。発想を裏返す。商 が、整数であることが明らかな量(二項係数の差)に一致することを示せばよい。

整数の差は整数だから、それで割り切れることが確定する。決め手は隣どうしの二項係数の比を階乗表示で出すことだ。

重要整数性の証明の基本の方法。 その数を「個数を数えている量(二項係数)たちの和・差」で表す

① 比を計算する((1)の証明)。 階乗表示で

よって であり、

② 整数性((2)の証明)。 左辺 は二項係数(整数)の差だから整数。よって右辺 も整数であり、 は の倍数である。

③ 確かめ。 : 、、差は 。たしかに は の倍数。

まとめ: 「整数であること」は、その数を数え上げの量の組合せで書くのがいちばん強い証明になる。この商 はカタラン数と呼ばれる有名な数()で、本問の差の表示がその整数性のいちばん短い証明だ。

発展。 カタラン数は「正しい括弧の並べ方」「対角線を越えない最短経路」など、非常に多くのものを数えている(本サイトの場合の数の実戦編に、反射原理による勘定がある)。1つの数を、代数(本問)と数え上げの2通りで表せることが分かる。

答

(1) 階乗表示の比較で証明 (2) (1)の左辺が整数だから も整数

別解

互いに素を経由する(得意な人向け)。 差の表示の代わりに、もう1つの階乗の恒等式から攻める道もある。

分母を払うと

左辺は の倍数。だから右辺 も の倍数だ。ここで と の最大公約数を互除法で調べると

互いに素。よって は の側を割り切るしかない。「積が割り切れて、片方の因子と互いに素なら、もう片方を割り切る」という整数論の基本原理を、二項係数に適用した形だ。差の表示(本解)が数え上げ寄りの証明なら、こちらは整数論寄りの証明である。

ポイント

  • 比 (階乗表示)。
  • 差 = で、左辺は整数。
  • よって は の倍数。

よくある間違い

  • 比の計算で と 、 と の消し合いを混乱する。分子分母を階乗のまま並べてから約分する。
  • 「二項係数の差は整数、だから商も整数」という論理の核を書き落とす。等式だけでは証明にならない。
  • の検算()を省く。カタラン数の並びが見えると安心して進める。

問4分数式の絶対値が1未満であること

最難関編不等式の証明因数分解

問題

実数 が を満たすとき、次の不等式が成り立つことを示せ。

ヒントを見る

絶対値つきの分数の比較は「分母の符号の確認」+「2乗の差」が基本だ。 を展開せずに、和と差の積として因数分解してみると、仮定の形がそのまま現れないか。

解答・解説

方針

まず分母 が正であることを確かめる。次に絶対値の比較を2乗の差に持ち込み、 を因数分解すると となり、仮定からそのまま正と分かる形が現れる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 示すべきは 。絶対値どうしの比較は、2乗の差が扱いやすい。

は「和と差の積」ですぐに因数分解できて、整理すると 。仮定 がそのまま「正」を保証する形になる。分母が0にならないこと()を先に押さえておくのが作法だ。

重要絶対値の比較は2乗の差で: かつ なら 。差は「和と差の積」で因数分解

① 分母の符号。 だから 、すなわち

とくに分母は0でない。

② 2乗の差を因数分解する。

前の因子は 、後の因子は 。よって

③ 仕上げ。 より だから

両辺を正の数 で割って 。

まとめ: 差の2乗の因数分解 がすべてだ。「1より小さい2数から作ったこの分数は、また1より小さい」という閉じた構造をもつ、名のある形である。

発展。 この分数は相対性理論の速度の合成則そのものだ。光速を1とすると、速度 の船から速度 で打ち出したものの地上から見た速度が 。光速未満どうしをどう合成しても光速を超えない。本問の不等式はそのことを数学的に表している。

答

証明( による)

別解

2乗しないで、両側から直接はさむ(すっきりルート)。 ②の因数分解の部品を、2乗を経由せずにそのまま使うこともできる。 から はすべて正。だから

2つの式はそれぞれ と を意味する。あわせて

つまり 。①の で割って結論が出る。2乗の差(本解)は1本の式で済む代わりに展開が要る。両側評価(本ルート)は式が2本になる代わりに、因数分解が直接見える。同じ2つの因数 の、2通りの使い方だ。

ポイント

  • (分母の確認)。
  • 。
  • よって で結論。

よくある間違い

  • 分母 の確認を飛ばして絶対値を外す。 の一行が答案の要になる。
  • 因数分解 の符号の組合せを誤る。、 を展開で検品。
  • (絶対値の積の性質)を使ったことを書かない。 はここから出ている。

問52のべきの積と等比数列の和

最難関編恒等式望遠鏡式

問題

(1) 次の等式を示せ。

(2) 一般に、0以上の整数 に対して次の等式を示せ。

ヒントを見る

左端に「あと1つ因子があれば連鎖が起きる」形が見えないか。 から始まる連鎖を使い、掛けて畳むとうまくいく。掛けたものは最後に外せることも忘れずに。

解答・解説

方針

そのまま展開すると項が非常に多くなる。両辺に 1−x を掛けると、左辺は (1−x)(1+x)=1−x²、(1−x²)(1+x²)=1−x⁴、…と次々に畳まれて 1−x^{2^{n+1}} だけが残る。右辺×(1−x) も同じ値になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (1)を正直に展開しても16項で確かめられる。だが(2)の一般形はそうはいかない。

左辺の並び を見て、「 を1つ補えば、和と差の積の連鎖が起きる」ことに気づけるか。、、…と、掛けるたびに指数が倍になって畳まれていく。右辺も を掛ければ、等比数列の和の公式の形。両辺とも同じ1つの式にまとまる。

公式和と差の積 の連鎖。等比数列の和

① 左辺に を掛ける((2)を示す)。

② 右辺に を掛ける。 等比数列の和の公式(を積の形で読んだもの)から

③ 結論。 ①②より、両辺の差を とすると は恒等的に0。 は0でない多項式だから は恒等的に0、すなわち両辺は多項式として等しい( を含むすべての で成り立つ)。(1)は の場合である。

まとめ: 「足りない因子を掛けて連鎖を起こし、最後に外す」のが、積の望遠鏡の型だ。掛けた を外す③の一言(多項式として割ってよい理由)まで書いて、証明が閉じる。

発展。 (1)に を代入してみると、。左辺に並ぶのは 型の数(フェルマー数)で、「フェルマー数の積は より1小さい数になる」という整数の等式が、この恒等式の1つの断面として出てくる。

答

証明(両辺に を掛けると、左辺は畳まれて 、右辺も同じ)

別解

2進法の数え上げで係数を見る(得意な人向け)。 掛けて畳む代わりに、「展開したとき何が起こるか」を数え上げの目で見る。

左辺を展開した1つの項は、各因子 から「 を取るか を取るか」を選んだ積だ。 を取った因子の集まりを とすると、その項は

つまり、指数として現れるのは「 から選んだ和」で、その選び方1つにつき項が1つ。ここで2進法の一意性を使う。 から までのどの整数も、 の和としてちょうど1通りに書ける。だから展開後、()の係数はすべてちょうど1。これは右辺そのものだ。

この恒等式は「2進法表示の一意性」を表していた。代数の等式と数え上げの事実が、同じものの2つの言い方になっている。

ポイント

  • を掛けると左辺は連鎖して 。
  • 右辺 × も 。
  • 係数がすべて1 ⟺ 2進法表示の一意性(別の表し方)。

よくある間違い

  • 掛けた を外す論理(多項式として なら )を飛ばす。 の場合が気になったら、この一言で解消する。
  • 連鎖の途中を書き飛ばして指数を誤る。 と、毎回ちょうど倍になる。
  • (1)を16項の展開で確かめて、(2)で手が止まる。一般化に耐える方法(畳む・数える)を最初から選ぶ。

問6n+1個の条件をみたす多項式の次の値

最難関編因数定理恒等式

問題

を自然数とする。 次多項式 が

を満たすとき、 の値を求めよ。

ヒントを見る

個の条件から係数を求めるのは手に負えない。条件の式を分母を払って「= 0」の形に書き替えると、ある多項式がたくさんの零点をもつ、という言明にならないか。零点がその個数だけあれば、多項式の形はほぼ決まる。

解答・解説

方針

係数を求めにいくのは無謀。条件 f(k)=k/(k+1) を「(k+1)f(k)−k=0」と読み替えると、g(x)=(x+1)f(x)−x という n+1 次式が x=0,1,…,n を零点にもつ。因数定理で g の形が決まり、残る定数は g(−1) で確定する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の係数を連立方程式で求めるのは、 が一般では不可能だ。条件 の分母を払って「=0」の形に直すと、因数定理が使える形になる。

。つまり多項式

は の 個を零点にもつ。 は 次だから、因数定理よりこれで因数がすべて出そろい、 と、定数 を残して確定する。 はまだ使っていない特別な点 ( が消える点)を代入すれば求まる。

定理 次多項式が相異なる 個の零点 をもてば、 と書ける(因数定理)

① の形を決める。 は次数 で、()。よって

② で を決める。 。一方

よって 。

③ を代入する。

したがって

すなわち が奇数なら 、偶数なら 。

まとめ: 「値の条件」を「零点の条件」に言い換えて、因数定理で決める。分母を払ってできる の次数がちょうど零点の個数と合う瞬間に、問題は事実上解けている。 という「仕掛けが消える点」を定数決定に使う呼吸も込みで覚えたい。

発展。 同じ設計はそっくり使い回せる。たとえば「 次の が ()を満たすとき は?」なら、 とおけばよい。「分母を払って零点」という方法は、この種類の問題すべてに使える。

答

が奇数のとき 、偶数のとき (まとめて )

別解

を具体的に書き下ろして確かめる(具体で信じるルート)。 ①②の結果を について解くと、 そのものが1本の式になる:

分子は で となるから、確かに で割り切れて、 は多項式になる(検算にもなっている)。 で試すと気持ちがいい。 で

たしかに を満たす1次式で、。「 が奇数なら 」の最小例が、 という素朴な式で目の前に現れる。一般論(本解)で答えを出し、小さい の明示式で具体的に確認する。抽象と具体の往復が、この種の問題をほんとうに自分のものにする。

ポイント

  • が を零点にもつ。
  • から 。
  • (奇数なら1、偶数なら )。

よくある間違い

  • 係数を連立方程式で求めにいく。 が一般だと手も足も出ない。「分母を払って零点」へ言いかえることが、解く手がかりになる。
  • の次数()と零点の個数()が一致していることを確認せずに、定数 を残した形を断定する。
  • の決定に を使おうとする。そこには未知の が入っていて循環する。使えるのは仕掛けの消える 。

問7値の偶奇から整数解がないことを示す

最難関編整式偶奇の論証

問題

を整数係数の多項式とする。 と がともに奇数ならば、方程式 は整数の解をもたないことを示せ。

ヒントを見る

整数 での値 について、わかっている値 と比べたい。 や の偶奇はどうなっているか。 の偶奇で分けて考える。

解答・解説

方針

整数解 r があったとして偶奇で矛盾を出す。r が偶数なら f(r) と f(0) の差は偶数、r が奇数なら f(r) と f(1) の差は偶数になる。どちらにしても f(r) は奇数となり、0(偶数)にはなれない。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「整数解をもたない」ことの証明は、余り(ここでは偶奇 = 2で割った余り)だけを見て矛盾を出すのが基本だ。

手がかりは と の2つの値だけ。そこで「任意の整数 での値 は、 の偶奇に応じて か と偶奇が一致する」ことを示す。すると はいつでも奇数で、0(偶数)にはなれない。

重要整数係数の多項式では なら (値の偶奇は代入する数の偶奇だけで決まる)

① が偶数のとき。 とすると

右辺の各項は (偶数)を因数にもつから偶数。よって と の偶奇は一致し、 は奇数。

② が奇数のとき。

各 は (偶数)を因数にもつから偶数。よって と の偶奇は一致し、 は奇数。

③ 結論。 どちらの場合も、整数 に対して は奇数。奇数は0でないから、 は整数の解をもたない。

まとめ: と という2つの窓が、すべての整数での値の偶奇を見張っている。偶数を入れれば 側、奇数を入れれば 側と偶奇がそろうからだ。整数解の存在を素早く否定できる、整数係数多項式でよく使う基本の道具になる。

発展。 この判定は「 が奇数なら整数解なし」と1つの積にまとめられる。裏返すと、「整数解をもつなら は偶数」となる。これは整数解の必要条件なので、方程式を解く前の確認に使える。

答

証明(整数 に対し は または と偶奇が一致し、常に奇数 ≠ 0)

別解

因数定理と連続整数で(得意な人向け)。 合同式を使わずに、因数分解の形からすぐに出す方法もある。整数解 があったとする。因数定理により、整数係数の多項式 を使って

と書ける(整数係数で割り切れることは、割り算を実行すれば確かめられる)。 と を代入すると

掛け合わせて

ここで と は連続する整数だから、どちらかは必ず偶数。よって は偶数だ。ところが仮定から は奇数×奇数=奇数。矛盾。よって整数解は存在しない。

「連続整数の積は偶数」という1つの事実で、方程式全体の結論が決まる。合同式ルート(本解)と因数定理ルート、好みで選べる2本立てだ。

ポイント

  • 偶数 → 、 奇数 → (mod 2)。
  • どちらでも は奇数。
  • 奇数 ≠ 0 だから整数解なし。

よくある間違い

  • が偶数の場合だけ調べて閉じる。奇数の は と比べる。2つの窓の両方が要る。
  • が偶数であることを「奇数のべきだから」などで済ませる。 を因数にもつ、という因数分解が根拠。
  • 結論を「実数解をもたない」と書いてしまう。否定できるのは整数解だけ。たとえば は (ともに奇数)で整数解をもたないが、実数解 はもつ。

問8積の形の望遠鏡式

最難関編因数分解積の計算

問題

を2以上の自然数とする。次の積を求めよ。

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和がだめなら因数分解を考える。 は2つの分数の積に割れる。割れた2系列をそれぞれ並べて書き出すと、隣どうしで何が起きるか。

解答・解説

方針

各因子を と因数分解すると、分子と分母が1つずつずれた2つの積に分かれ、それぞれが階段状に約分されて端だけが残る(積の望遠鏡)。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 和の計算に「差の形に割って畳む」(部分分数)があるように、積の計算では「積の形に割って約分の連鎖を起こす」のが、それに対応する方法だ。

は和と差の積で

と割れる。 の系列と の系列に分けて掛けると、どちらも隣との約分が階段状に連鎖して、端の数だけが残る。

公式和と差の積: 。積の畳み込み: は間が約分されて端だけ残る

① 2系列に分ける。

② それぞれ畳む。 前の系列は

(分子と次の分母が次々に消える。)後の系列は

③ 掛け合わせる。

確かめ: なら で、。

まとめ: 「和の望遠鏡(部分分数)」の積バージョン。因数分解 → 系列を分ける → 階段状の約分、の3拍子だ。分けたそれぞれの積がきれいに畳まれる形(分子と分母が1ずれ)を見抜けば解ける。

発展。 を限りなく大きくすると、積は に近づく。無限個の「1より小さい数」を掛け続けたのに、0にならずに にとどまる。無限積が0になるかどうかは、各因子が1にどれだけ速く近づくかで決まる。この問題はそのことを確かめられる例になっている。

答

別解

数学的帰納法で閉じる(確実ルート)。 答えの形 に見当がついたら(小さい の実験でも見つかる)、帰納法で固めるのが確実だ。 のとき: 左辺 、右辺 で成立。

で成り立つと仮定する。 では、仮定の積に次の因子を掛けて

これは求める式の を に置き換えた形そのもの。よってすべての で成り立つ。

途中の約分( が消え、 が消える)がきれいに決まるのは、答えの形が正しい証でもある。「実験で予想 → 帰納法で確定」は、閉じた式を求める問題の安全網として、望遠鏡と並ぶ二枚看板だ。

ポイント

  • に割る。
  • 2系列がそれぞれ と に畳まれる。
  • 積は (大 で に近づく)。

よくある間違い

  • 積を から始めてしまう。 で全体が0になる。範囲()の確認が最初。
  • 2系列の畳みで残る端を取り違える。前系列は先頭の分子 と末尾の分母 、後系列は末尾の分子 と先頭の分母 。
  • の検算を省く。1行で式全体のミスが検出できる、最も安い保険。