数学II / 式と証明

式と証明 ★★★★ 難関の問題 全8問

旧帝大・早慶レベル。一部の単元に用意した挑戦枠

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 二項定理と定数項
  2. 多項定理による係数
  3. 相加・相乗平均による不等式の証明
  4. コーシー・シュワルツの不等式
  5. 数値代入による恒等式の係数決定
  6. 整式を2次式で割った余り
  7. 比例式を用いた等式の証明
  8. 条件つきの最小値(相加・相乗平均)

問1二項定理と定数項

★★★★ 難関二項定理一般項

問題

の展開式における定数項を求めよ。

ヒントを見る

展開の一般項を書き、 の指数を の式で表す。定数項は指数が になるところ。その を係数に代入。

解答・解説

方針

二項定理の一般項 を作り、 の指数が になる を求める。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 展開全体を書くのは無駄。定数項だけをねらう。二項定理の一般項を立てて、 の指数が になる項を探す。

一般項は 。 の指数は 。これが になるのは 。その項の係数 を計算すれば定数項が出る。

定理二項定理の一般項: の一般項は

① 一般項を書く。 、、 として

② 定数項の を求める。 の指数が :

③ 係数を計算する。

まとめ:特定の項は「一般項で指数を の式にし、狙う指数になる を代入」。 を指数に正しく反映するのが要( の指数は )。定数項は指数 、最高次でも同様に狙える。

発展。 二項展開 の特定の項は、指数の一次方程式 (目標)を解いて を求める。定数項は目標 。 と の指数が異符号(片方が負のべき)なら定数項が存在する。ローラン多項式(負のべきを含む)の係数抽出は、母関数の理論で頻出のテクニックだ。

答

別解

別解:「文字を減らす」置き換えをして、指数だけを追う(苦手な人向け)。 一般項の の部分だけに注目する。 の各項は、 を 個、 を 個掛けたもの。

のべきだけ数える。 からは 、 からは 。合計の指数は 。

定数項は指数 、すなわち で 。「 を 個、 を 個」使う項だ。係数は、選び方 、 のべき 、符号 。掛けて 。

二項定理の公式(本解)と同じだが、「 の指数だけを足し算で追う」と、どの項が定数項かを機械的に特定できる。 が という負のべきだと見れば、指数の合計 の条件が立式しやすい。

ポイント

  • 一般項 。
  • で 、係数 。

よくある間違い

  • 一般項の の指数 の計算を誤る( は )。
  • 係数で (と符号 )を忘れ、 だけにする。
  • を求めた後の の計算(特に符号)を誤る。

問2多項定理による係数

★★★★ 難関多項定理

問題

の展開式における の項の係数を求めよ。

ヒントを見る

項の展開の一般項は に各項のべきを掛けたもの。 になる指数の組を選び、係数( の 、 の )も忘れずに掛ける。

解答・解説

方針

多項定理の一般項 ()で、 に対応する を代入する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 項の展開だから多項定理を使う。一般項は ()。

ほしいのは 、すなわち 。指数がこれで確定する。係数は (並べ方)に、(係数のべき)を掛ける。

定理多項定理の一般項: で ()の項は

① 指数を決める。 に対応するのは を 個、 を 個、 を 個。すなわち ()。

② 一般項を作る。

③ 係数を計算する。 並べ方 、係数部分 。よって

まとめ:多項定理は「並べ方 × 各項の係数のべき」。指数の組 を正しく選び、 の中の係数 を落とさないのがポイント。

発展。 多項定理 の係数 は多項係数。これは「 個を 種類に 個ずつ分ける」場合の数でもある。二項係数()の一般化で、組合せ論と代数を橋渡しする。

答

別解

別解: を固定して、 の二項展開を 段階で行う(得意な人向けの視点)。 とみて、まず について二項展開する。

の項は 。ほしいのは だから、 の中の の項を拾う。 の の項は 。

合わせて 。多項定理をまとめて使う(本解)代わりに、「 とそれ以外」に 分して二項展開を 段重ねる。多項定理 に を掛けた と一致する。 項以上の展開は 項ずつに分けて二項定理を繰り返すこともできる。

ポイント

  • 、並べ方 。
  • 係数 、合わせて 。

よくある間違い

  • 多項定理の係数 の分母(各指数の階乗)を誤る。
  • 係数のべき ( の係数)を掛け忘れる。
  • を満たさない指数( で和 )を選ぶ。

問3相加・相乗平均による不等式の証明

★★★★ 難関相加相乗不等式の証明

問題

を正の実数とするとき、 が成り立つことを示せ。また、等号が成り立つのはどんなときか。

ヒントを見る

左辺は つの「 数の和」の積。それぞれに相加・相乗平均を当てて、 つを掛け合わせる。等号はすべての相加相乗の等号が同時に成り立つとき。

解答・解説

方針

各因数に相加・相乗平均 、、 を用い、正の数どうしなので辺々を掛け合わせる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 左辺は つの「 数の和」の積。相加相乗平均を各因数に使う。

、、。 つとも正の数どうしの不等式だ。正の数の不等式は辺々を掛けてよい。 つを掛けると右辺は 。等号は各不等式の等号が同時に成り立つ のとき。

公式相加・相乗平均の不等式: のとき (等号は )

① 各因数に相加相乗。 より

② 辺々を掛ける。 すべて正だから、不等号の向きを保って掛け合わせられる。

③ 右辺を整理する。 だから ()。よって

④ 等号条件。 等号は かつ かつ 、すなわち のとき。(証明終)

まとめ:「和の積」「積」の形は、各因数に相加・相乗平均を当てて掛け合わせるのが基本だ。正の数どうしだから辺々を掛けられる。等号はすべての相加相乗の等号が同時に成り立つ 。

発展。 は、より一般の 変数の相加相乗平均 の応用。 変数版 と組み合わせると、対称式の不等式が次々に導ける。等号成立が「全部等しい」なのは、相加相乗平均の共通の特徴だ。

答

各因数に相加・相乗平均 等を用い、 つを掛けると 。等号は 。証明は解答参照

別解

別解: 等の比で 変数にして確かめる(別の視点)。 不等式が同次(すべての項が同じ次数)なので、 と正規化しても一般性を失わない。さらに対称性を使いつつ、各因数を比で見る。

と つの比に分け、各因数の比

を使う()。 つの因数それぞれがこの形で になり、積が 。だから 。等号は各比が 、すなわち 。

相加相乗を つ掛ける本解と同じだが、各因数を「」と読むと、 という最も基本的な不等式に帰着する。同次な不等式は「比で見る・ つを に固定する」と扱いやすい。

ポイント

  • 各因数に 等、辺々を掛ける。
  • 、等号は 。

よくある間違い

  • 相加相乗を掛け合わせるとき、 因数がすべて正であることの確認を省く(負が混じると不等号が壊れる)。
  • 右辺 の平方根の処理( なので )を誤る。
  • 等号成立を「 または 」で止め、 つの等号が同時= まで詰めない。

問4コーシー・シュワルツの不等式

★★★★ 難関不等式の証明平方の和

問題

実数 について

が成り立つことを示せ。また、等号が成り立つ条件を述べよ。

ヒントを見る

(左辺)(右辺)を計算する。うまく整理すると、いくつかの「平方の和」になる。平方の和は 以上だから不等式が言える。等号はすべての平方が のとき。

解答・解説

方針

左辺から右辺を引いて展開すると、 という平方の和にまとまる(ラグランジュの恒等式)。平方の和は 以上。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) コーシー・シュワルツの不等式は、「左辺 右辺 平方の和」を示せば済む。両辺を展開して差をとる。

左辺 と右辺 の差を計算すると、きれいに平方の和にまとまる。(ラグランジュの恒等式)。平方の和は必ず 以上だから、左辺 右辺。等号は つの平方がすべて 、すなわち 。

定理平方の和は 以上。、等号は

① 差をとる。 左辺 右辺を計算する。

② 展開して整理する。 左の積を展開すると の 項。 を引くと、同じ項 が消え、残りが平方の形にまとまる。

(これはラグランジュの恒等式。実際に右辺を展開すると左の差に一致する。)

③ 結論。 右辺は平方の和だから 以上。よって

④ 等号条件。 等号は 、、 がすべて成り立つとき、すなわち ( 組のベクトルが平行)のとき。(証明終)

まとめ: は「 を平方の和にする」。この不等式の差は (ラグランジュの恒等式)。等号は 組の比が等しい()とき。

発展。 コーシー・シュワルツの不等式は成分の数によらず( 次元でも)、積分でも()成り立つ普遍的な不等式。ベクトルの内積・関数の内積を「大きさの積で抑える」基本原理で、量子力学の不確定性原理や統計の相関係数 もこの不等式から出る。

答

左辺 右辺 (ラグランジュの恒等式)。等号は 。証明は解答参照

別解

別解:ベクトルの内積として幾何的に見る(得意な人向けの高い視点)。 、 とおくと、不等式は

内積の定義 ( は ベクトルのなす角)を使えば、 から直ちに従う。等号は 、すなわち と が平行()のとき。

ラグランジュの恒等式(本解)の「おつり」 は、 次元では外積 の大きさの 乗、つまり ベクトルが張る平行四辺形の面積の 乗だ。「内積は大きさの積を超えない」という図形的事実を式で書いたものが、コーシー・シュワルツの不等式である。

ポイント

  • (左辺)(右辺)。
  • 等号は 。

よくある間違い

  • 左辺 右辺を展開するとき、平方の和にまとまることを見抜けず途中で挫折する。
  • ラグランジュの恒等式の つの平方 の組を誤る。
  • 等号条件(、 ベクトルが平行)を書き忘れる。

問5数値代入による恒等式の係数決定

★★★★ 難関恒等式係数決定

問題

次の等式が についての恒等式となるように、定数 の値を定めよ。

ヒントを見る

右辺は などの因数が並ぶ形。 を入れると多くの項が消える。 を順に代入すると、 つずつ係数が決まる。最高次から も。

解答・解説

方針

最高次の係数比較で 。あとは を順に代入すると、各因数が次々と になり、 が芋づる式に決まる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 恒等式の係数決定は「数値代入」が速い。右辺の各因数が になる を選ぶと、項が次々に消える。

まず最高次の係数比較。左辺の と右辺の を比べて 。あとは (第 項が消えて だけ残る)、( と が残る)、( の項まで残る)を順に代入すると、 が芋づる式に決まる。

重要恒等式はどんな でも成り立つ。因数が になる値を代入すると、係数が つずつ求まる

① 最高次で 。 右辺の の係数は (第 項だけが 次)。左辺の の係数は 。よって 。

② を代入 → 。 を含む項がすべて になり、残るのは 。

③ を代入 → 。 を含む項が 。

④ を代入 → 。

よって 。

まとめ:因数が階段状に並ぶ恒等式は「最高次で 、あとは因数が になる値を順に代入」。 で が芋づる式に決まる。展開して係数比較するよりずっと速い。

発展。 を 系で展開する(別解の組立除法)のは、ニュートンの前進差分による補間。一般に、 次多項式は の形の基底で一意に表せ、係数は差分商 で与えられる。データ点から多項式を復元する数値計算(補間法)の基礎だ。

答

別解

別解:組立除法(順に割っていく)で係数を出す(得意な人向けの視点)。 右辺の形 は、 を で「ニュートンの補間」したもの。組立除法で係数が順に出る。

を で割ると商 、余り 。だから (定数項に相当)。商 を で割ると商 、余り 。だから 。

商 を で割ると商 、余り 。だから 、最後の商 。数値代入(本解)で を入れるのと同じ結果 。組立除法は、 で順に割った余りが 、最後の商が になる、という機械的な手順。ニュートンの前進差分による補間公式そのものだ。

ポイント

  • 最高次で 。
  • 、、。

よくある間違い

  • 最高次の係数比較()を最初にせず、代入だけで進めて計算が重くなる。
  • 代入で から を出すとき、 を使い忘れる。
  • 代入の式 から を出す計算を誤る。

問6整式を2次式で割った余り

★★★★ 難関整式の割り算余り

問題

を で割った余りを求めよ。

ヒントを見る

割る式 に を掛けると簡単な式になる。すると が扱いやすくなり、 の指数を小さくできる。 を で割った余りに注目。

解答・解説

方針

で割るので、 として次数を下げる。 より 、。 を で割った余りに帰着する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) を割るのは無理。 を法として、次数を下げる。。

さらに、 が の因数であることに気づきたい。 だから、、したがって 。これで指数を で割った余りに落とせる。 より 。余りは 。

重要余りは「割る式 」とみて次数を下げる。 より

① の関係を作る。 だから、 で割った余りを考えるときは

② 指数を で割った余りに帰着。 だから

③ をさらに下げる。 とみて 。よって

余りは 。

まとめ:高い累乗の余りは「割る式から周期を作る」。 は を掛けると になり、、 の周期 。指数 を で割った余り に落とし、最後に で 次まで下げる。

発展。 は円分多項式 で、根は の原始 乗根。 を割った余りは で周期的に と巡回する。割る式が の原始 乗根の式なら周期 。整数の合同 とそっくりの構造が、多項式の割り算に現れる。

答

別解

別解:(1の原始 乗根)を代入して余りを決める(得意な人向けの視点)。 の解を とすると、 は の原始 乗根(、)。余りを とおくと、 で

より 。そして ( から)。だから

は虚数(実数でない)だから、係数を比べて 、。余りは 。

次数を下げて指数計算する本解と同じ余り 。 は虚数なので、 つの複素数の等式が実質 本(実部・虚部)の働きをし、 が一度に決まる。 の根が「 の原始 乗根」だと気づけば解ける。周期が なので、指数 を に下げられる。

ポイント

  • → 、。
  • → 。

よくある間違い

  • が の因数()であることに気づかず、周期 を見つけられない。
  • を で割った余りを誤る( で余り )。
  • の関係( から)を使わず、余りを のまま残す。

問7比例式を用いた等式の証明

★★★★ 難関条件つき等式比例式

問題

のとき、 が成り立つことを示せ(分母は でないとする)。

ヒントを見る

比例式が出たら とおくのが基本だ。 を左辺・右辺に代入して、どちらも同じ式( の式)になることを見る。

解答・解説

方針

比例式は「 とおく」。 を左辺・右辺それぞれに代入し、両方が になることを示す。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 比例式が出たら「 とおく」のが基本だ。 とすると 、。

これを両辺に代入して、両方が同じ式()になることを示す。左辺 。右辺 。両方 で一致。

重要比例式 は とおき、 と表すと扱いやすい

① 比を とおく。 とおくと 、。

② 左辺を計算する。

③ 右辺を計算する。

④ 結論。 左辺 右辺 だから、等式は成り立つ。(証明終)

まとめ:比例式の条件つき等式は「 とおいて代入」。文字が減って両辺が の式になり、同じ式になることを見れば証明できる。分母が でない条件のもとで、約分が正しくできることが大事だ。

発展。 加比の理「」は、比例式の変形でよく使う。連比 を扱うときや、複数の比をまとめるときに役に立つ。比を とおくのと同値だが、 を導入せずに済むので証明が簡潔になる。

答

とおくと 。両辺とも に等しい。証明は解答参照

別解

別解:加比の理(比の合成)で示す(得意な人向けの視点)。 から、比の性質を組み合わせて示す。 の両辺を乗すると 。

比が等しいとき、「分子どうし・分母どうしを足した比」も同じ(加比の理): 。一方、 の両辺を掛け合わせると 。これは に等しい( だから )。 も も に等しいので、互いに等しい。

とおく本解と同じだが、加比の理「」を使うと、文字 を導入せずに比の変形だけで示せる。比例式の証明は「 とおく」か「加比の理」の 択がよく使われる。

ポイント

  • とおき 。
  • 左辺・右辺ともに 。

よくある間違い

  • 比例式を「 とおく」発想に至らず、変形が進まない。
  • を代入するとき、左辺の のくくり出しを誤る。
  • 両辺がともに になることを示さず、片方だけで結論する。

問8条件つきの最小値(相加・相乗平均)

★★★★ 難関相加相乗最大・最小条件つき

問題

を正の実数とし、 を満たすとする。 の最小値を求めよ。

ヒントを見る

、 とおくと、 乗の和は で下から押さえられる。 を の条件で評価する。 の最小は。

解答・解説

方針

対称性から で最小と見当をつけ、それを不等式で裏づける。 乗の和 を使い、 を相加・相乗平均で下から評価する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 対称な条件()と対称な式なので、 で最小と見当がつく。それを不等式で裏づける。

乗の和には (等号 )が使える。、 とおくと、和 。 を相加相乗平均などで下から評価する。 の下で (等号 )。あとは組み立てれば最小 。

公式(等号 )。相加・相乗平均 、および

① 乗の和を下から押さえる。 、 とおくと

② を評価する。 。 より 、よって 。ゆえに

③ まとめる。

④ 等号の確認。 すべての等号は かつ 、すなわち のとき同時に成り立つ。このとき値は 。よって最小値は 。

まとめ:対称な条件つき最小は「等しいときが最小」と見当をつけ、不等式で裏づける。 乗の和は で、 は ()で下から。等号がすべて でそろうことの確認が仕上げ。

発展。 対称式の最大最小は「和と積で 変数化」が基本だ。(和固定)なら積 が を動き、対称式はすべて の関数。凸性(または微分)で端 ()か端 のどちらで最小最大かが決まる。制約付き最適化の基本パターンだ。

答

( のとき)

別解

別解: とおいて 変数にし、 次関数に帰着させる(苦手な人にも見通しのよいルート)。 を使い、対称式を積 で表す。 が正で和が だから、(相加相乗、 最大は )。

を で書き換える。、、 など交差項も で書ける。整理すると与式は

で は減少関数(微分すると負)。だから最小は 最大の 、すなわち 。。

を使う本解に対し、 の 変数関数に落とすと、最小がどこで起こるか(端 )が単調性から確実に分かる。対称式は「和と積」で 変数化するのが常道だ。

ポイント

  • 、。
  • 最小 、等号 。

よくある間違い

  • 対称性から で最小と「見当」をつけただけで、不等式で裏づけない。
  • の係数()を誤る。
  • ( の下で)の評価を忘れ、 を下から押さえられない。