数学I / 図形と計量

図形と計量 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 三角比の定義(直角三角形)
  2. 30°・45°・60° の三角比の計算
  3. 三角比の相互関係(sin から cos・tan)
  4. 三角比の相互関係(tan から sin・cos)
  5. 鈍角の三角比(拡張された定義)
  6. 180°−θ・90°−θ の公式で鋭角の三角比に直す
  7. 三角比を含む方程式
  8. 正弦定理(辺と外接円の半径)
  9. 余弦定理(2辺と間の角から残りの辺)
  10. 余弦定理(3辺から角を求める)
  11. 三角形の面積公式
  12. 内接円の半径

問1三角比の定義(直角三角形)

★ 基礎三角比の定義

問題

の直角三角形 において、、、 である。、、 の値をそれぞれ求めよ。

ヒントを見る

角 から見ると、3辺に『斜辺・対辺・隣辺』の役割がつく。斜辺は直角の向かい。残り2辺は『角 の真向かいか、となりか』で見分けられる。まず図で、その3つを区別するところから始めよう。

解答・解説

方針

直角三角形の三角比は3つの分数で決まる。、、 の3つだ。まずは言葉で覚える。

角 から見ると、辺に3つの名前がつく。

  • 斜辺: 直角の向かい。いちばん長い辺。ここでは 。
  • 対辺: 角 の真向かいの辺。ここでは 。
  • 隣辺: 角 のとなりの辺(斜辺でないほう)。ここでは 。

この3つで 、、 と決まる。注意は1つだけ。『対辺』『隣辺』はどの角から見るかで入れかわる。角 と角 では対辺が別の辺になる。だから と は別の値だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 三角比の定義は、角 から見た 辺の呼び名を決めるところから始まる。

  • 斜辺: 直角の向かい()
  • 対辺(向かい合う辺):
  • 隣辺(はさむ辺):

どの角から見るかで、対辺と隣辺が入れ替わる。角 の話をしているのに角 の対辺を使う、というミスがいちばん多い。

ABC435
∠C = 90°、AB = 5、BC = 3、CA = 4

直角は 。だから斜辺は向かいの だ。角 の位置に立ったつもりで、残り2辺を見分ける。

  • 対辺(角 の真向かい):
  • 隣辺(角 のとなり):
公式三角比の定義 、、

あとは定義の分数に入れるだけ。

もし としたら、角 から見た対辺と取りちがえている。図で『 の向かいはどれ?』を指でさして確かめるとよい。

まとめ:最後に検算。 だから、確かに の直角三角形だ。 も成り立つ。この は、次の問題で中心的に使う。

発展。 は、辺の長さがすべて整数になる有名な直角三角形(ピタゴラス数)。、 も同じ仲間で、問題作りで好んで使われる。 が分数できれいに出たら、この三角形を疑ってよい。

三角比の値は三角形の大きさによらない。 でも でも で同じになる。相似な三角形は同じ三角比を持つからだ。だから三角比は「形(角度)だけで決まる量」であり、角度の情報を数値で表す道具として働く。この性質が測量や物理でこれほど使われる理由である。

答

、、

別解

対辺・隣辺の取り違えを防ぐ、指差し確認の手順を紹介する。

角 の三角比を求める → 角 の頂点に指を置く。

  1. 斜辺: 直角()の向かい側の辺で、三角形で最も長い 。どの角を見ても斜辺は同じ。
  2. 対辺: 指を置いた角 から、まっすぐ向かい側の辺で、。角 に触れていない辺だ。
  3. 隣辺: 残りの辺で、。角 に触れている(斜辺以外の)辺。

もし角 で聞かれたら、対辺と隣辺が入れ替わる。、、。

(直角三角形だから)なので、これは という公式そのものだ。「サイン」と「コサイン」の 「co」 は complementary(余角)の意味だ。 つの角がペアで補い合っている。

検算は相互関係で。 となり、 が成り立つ(三平方の定理の言い換え)。

ポイント

  • 、、
  • 『対辺』『隣辺』は見る角で入れかわる。まず斜辺(直角の向かい)を決める
  • で検算できる

よくある間違い

  • 角 と角 の対辺を取りちがえ、 としてしまう
  • の分母を斜辺にしてしまう
  • 図を描かずに定義だけで考え、辺の対応を間違える

問230°・45°・60° の三角比の計算

★ 基礎三角比の値計算

問題

次の式の値を求めよ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

値を丸暗記していなくていい。2種類の三角定規(辺の比が と )の絵をかけば、そこから読み取れる。まず、式に出てくる角の値を、その絵から1つずつ拾い出そう。

解答・解説

方針

、、 の三角比はこの先ずっと使う。九九のようなものだ。丸暗記しなくていい。2種類の三角定規の絵をかけば、そこから読み取れる。 の定規と、 の定規だ。試験中に忘れても、絵をかけば復元できる。

30°60°√31245°45°11√2
2種類の三角定規の辺の比

あとは値を正しく入れて、根号の計算をていねいにやるだけ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の値は、三角定規 枚から読み取れる。

  • の定規():
  • – の定規(): 、

値を代入して計算するだけだが、 と の取り違えが最頻ミス。定規の絵を描いて、対辺・隣辺を確認してから代入したい。

(1) 値をそのまま入れる。

と の取りちがえがよくあるミスだ。『 は低い角。だから高さの割合 は小さくて 』と、意味で覚えると混ざらない。

(2) 、 を入れる。

きれいに になったのは偶然ではない。 の2角では、 の積はいつも になる。

(3) なので

まとめ:別のやり方もある。展開して と を使えば、 だ。

発展。 三角比の値の暗記は「定規の絵から読む」が最も確実だが、表として整理するとパターンが見える。 の値を で並べると

分子の根号の中が と並ぶという規則がある( は逆順)。この覚え方なら、 つの値を つの規則で再現できる。 の値 は の有理化。どちらで書いてもよいが、分母に根号を残さないのが答案の作法である。

答

(1) (2) (3)

別解

つの答えがすべてきれいな数()になったのは偶然ではない。それぞれに理由がある。

(1)

これは加法定理 (数IIで学ぶ)の形。 なので

計算せずに答えが出る。「」の形を見たら、角を足す。

(2)

と は余角()。余角どうしの は互いに逆数だ(、)。逆数の積は必ず 。

(3)

展開すると 。 なので 。

相互関係 を使えば、値を代入せずに済む。 に限らず、どんな でも が成り立つ。

答えがきれいになるときは、公式の構造が理由になっている。計算して確かめるだけでなく、「なぜきれいになったか」を問うと、あとで学ぶ公式の形が分かる。

ポイント

  • 、、 の三角比は、2種類の三角定規からすぐ出せるようにする
  • 根号の計算は、約分と有理化を落ち着いて行う
  • を使うと楽になる場面がある

よくある間違い

  • と の値を取りちがえる
  • を などと計算ミスする
  • (3)を とし、中間項 を落とす

問3三角比の相互関係(sin から cos・tan)

★ 基礎相互関係

問題

は鋭角とする。 のとき、 と の値を求めよ。

ヒントを見る

3つの三角比は1本の関係式(2乗の和が )でつながっている。 がわかれば が引き出せる。ただし2乗から戻すとき符号の分かれ道がある。『鋭角』の一言がそれを決めることに注目。

解答・解説

方針

の値だけから、 と を出す。三角形の絵がなくてもできる。使うのは相互関係 。この式が3つの値をつないでいる。 がわかれば が出て、 が出れば も出る。

ただし1か所だけ注意。2乗から戻すとき、 か かを選ぶ必要がある。それを決めるのが『 は鋭角』という条件だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 使う道具は相互関係

を代入すると 、よって 。

ここで符号を決める。 は鋭角(問題文にある)なので 、だから 。 のまま答えるのが最頻ミス。角の範囲を必ず確認して符号を確定する。これが三角比の計算の作法である。

公式三角比の相互関係 、

まず 。 相互関係 を について解く。

ここで の2択が出る。2乗の情報だけでは符号が決まらないからだ。決め手は『 は鋭角』。鋭角なら なので

次に 。 に入れる。

この答えは、辺が の直角三角形を思いうかべると確かめられる。 は、この三角形の話だ。

θ435
sin θ = 3/5 となる直角三角形(3 : 4 : 5)

発展。 は、三平方の定理そのものだ。斜辺 の直角三角形を描けば、対辺が 、隣辺が になり、 平方で 。「相互関係」という名前だが、中身は中学の定理である。

この式は角度が何であれ成り立つ( でも、鈍角でも、数IIで学ぶ 超でも)。単位円()の上の点が だから、円の方程式がそのまま相互関係になっている。三角比の理論は単位円の幾何学である。

答

、

別解

計算せず、直角三角形を描いて三平方で解くこともできる。こちらは符号の迷いが原理的に起きない。 とは「対辺 、斜辺 」の直角三角形があるということ( は鋭角なので、実際にそういう三角形が描ける)。

残りの隣辺は三平方の定理で

–– の三角形だ。 辺が揃えば、定義から直接読める。

辺の長さは正なので、符号の問題が発生しない。これがこの方法の最大の利点だ。 を書いて「鋭角だから正」と論じる手間が省ける。

ただし鈍角()では、直角三角形が描けないので相互関係の式で処理する必要がある(そのとき は負)。

  • 鋭角なら三角形を描く(速い・確実)
  • 鈍角を含むなら相互関係 符号の吟味(汎用)

つを使い分けられると、三角比の計算が一段速くなる。 も と分数の割り算で出るが、三角形なら で、すぐに出る。

ポイント

  • 、 が相互関係の基本
  • 2乗から戻すときは符号の判断が必要。『鋭角』なら
  • 有名な比( など)の直角三角形を思いうかべると検算になる

よくある間違い

  • のまま符号を決めずに答える
  • の分数の割り算で逆数を掛け忘れる
  • を と誤解して計算する()

問4三角比の相互関係(tan から sin・cos)

★ 基礎相互関係

問題

は鋭角とする。 のとき、 と の値を求めよ。

ヒントを見る

に は直接つながらない。でも両辺をあるもので割ると、 と を結ぶ第2の関係式が現れる。それを使って → の順にたどろう。

解答・解説

方針

今度は からの出発だ。 に を直接つなぐことはできない。そこで、両辺を で割ってできる第2の相互関係 を橋にする。 の順に、芋づる式に求めていく。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) から出発するときの相互関係は

( の両辺を で割った形。) を代入すると 、つまり 。鋭角なので (有理化)。 は から 。

公式相互関係

まず 。 これに を入れる。

右辺が ではなく、その逆数になっている点に注意。ここを取りちがえると という変な値が出る。 は 以下のはず、という感覚があればミスに気づける。 は鋭角なので 。有理化して

次に 。 を変形した を使う。

検算: 。確かに成り立つ。イメージでも確かめられる。底辺 、高さ の直角三角形なら斜辺は 。そこから 、、 が読み取れる。公式で出した値と絵が一致する。

θ12√5
tan θ = 2 となる直角三角形(底辺 1・高さ 2)

発展。 という値は、傾き の直線が 軸となす角でもある。 の直線を描けば、 軸との角が になる。 は「傾き」の別名だ()。図形と方程式(数II)で「 直線のなす角」を で求めるのは、この対応が理由である。

つの相互関係(、、)のうち、独立なのは最初の つだけだ。 つ目は前 つから導ける。覚える公式は少ないほどよい、という原則からすると、 つ目は「導ける便利式」として扱えば十分だ。

答

、

別解

ここでも三角形を描くルートが速い。公式を つも使わずに済む。 とは「対辺 、隣辺 」の直角三角形のこと。

斜辺は三平方で

辺が と揃った。定義から読むだけだ。

公式 を覚えていなくても解ける。三角形を描けば、必要な情報は全部そこにある。しかもこの図から、公式の意味まで分かる。斜辺の 乗は ()で、 だから

公式はこの三角形の三平方の定理を書き直しただけである。検算も忘れずに。、 となる。 つの関係が両方成り立てば、まず間違いない。

ポイント

  • から出発するときは を使う
  • の変形で につなぐ
  • 答えは分母を有理化した形に整える

よくある間違い

  • の右辺を と誤記して逆数を忘れる
  • 有理化を忘れて のまま答える(誤りではないが、指示があれば整える)
  • を「対辺 ・斜辺 」と読み違える(斜辺ではなく隣辺が )

問5鈍角の三角比(拡張された定義)

★ 基礎三角比の拡張

問題

次の値を求めよ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

などは『 から引く』と鋭角に直せる。符号を決めるのは、単位半円のどこに点があるかだ。左上にくる鈍角では、 座標()と が負、 座標()は正。図で確かめてから公式を使おう。

解答・解説

方針

の三角比を考える。でも直角三角形には の角は入らない。だから定義を広げる必要がある。

考える場所を半径 の半円に移す。角 の位置にある点の座標を使って、 座標、 座標、と決め直す。

計算は の公式で鋭角に直すのが速い。ただし符号の出どころは座標だ。左上の点は 座標が負。だから と が負になる。公式と図をセットで持っておきたい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 鈍角の三角比は、補角の公式で鋭角に直す。

だけ符号がそのまま、 と はマイナスが付く。符号を間違えやすい。(1) なので (正のまま)。

(2) なので (マイナスが付く)。

Oxy1−1120°135°150°
単位半円上の 120°・135°・150°(x 座標が cos、y 座標が sin)
公式、、

の公式で、鋭角の三角比に直して求める。

(1) なので

(2) なので

(3) なので

公式だけでなく、符号を図で確かめておく。(鈍角)では、半円上の点は左上にある。 座標が負だから 、。 座標は正だから 。

まとめ:『鈍角で負になるのは と 。 は正のまま』。この符号の地図が頭にあれば、マイナスのつけ場所をまちがえても自分で気づける。

発展。 三角比を鈍角まで拡張するのは、三角形の内角には鈍角がありうるからだ。鈍角三角形で余弦定理や正弦定理を使うには、 のような値が必要になる。定義を「直角三角形の辺の比」から「単位円の座標」へ広げたことで、 から のすべての角が扱えるようになった。

数IIではさらに広げて、 を超える角や負の角も扱う(そこでは「三角関数」と呼ばれる)。定義を広げても、既に知っている値は変わらない。定義を広げても、それまでの値はそのまま使える。数の範囲を負・分数・無理数・複素数と広げてきたのと同じ考え方である。

答

(1) (2) (3)

別解

符号の規則を丸暗記せず、単位円で毎回導けるようにしよう。半径 の円で、 軸から角 だけ回った点 をとる。このとき

これが三角比の拡張された定義だ。あとは座標の符号を見るだけ。

の点は、円の左上(第 象限)にいる。

  • 座標(高さ)は正 → 。値は の点と同じ高さ()
  • 座標(横)は負 →

から までは、点は円の上半分にいる。だから 座標()は常に 以上。「 にマイナスを付ける」という誤りは、この一言で防げる。

一方 座標()は を境に正から負へ変わる。 は、 が正・ が負の鈍角では必ず負になる。

単位円の絵 枚で、 つの公式の符号がすべて説明できる。暗記でなく、絵を描いて確かめる習慣を持ちたい。この単位円の見方は数IIの三角関数でそのまま中心的に使う。

ポイント

  • 鈍角の三角比は の公式で鋭角に直す
  • 鈍角では 、、。符号を先に判断してミスを防ぐ
  • 定義のもとは単位半円上の点の座標(、)

よくある間違い

  • にも負号をつけてしまう( は 〜 で常に 以上)
  • の対応を と取りちがえる
  • の有理化()を忘れる

問6180°−θ・90°−θ の公式で鋭角の三角比に直す

★ 基礎90°−θ・180°−θの公式

問題

次の三角比を鋭角の三角比で表せ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

半端な鈍角は『 から引くといくつ?』を考えると鋭角に直せる。あとは はそのまま、・ の符号がどうなるかだけだ。単位半円で点の位置から判断しよう。

解答・解説

方針

のような半端な鈍角も、鋭角の三角比で表せる。表に値がなくても、『鋭角に直せる』こと自体に意味がある。手順は毎回同じだ。① の形に直す。②公式で書きかえる( はそのまま、 と はマイナスをつける)。

単純作業に見えるが、ミスが起きやすいところが2か所ある。 からの引き算と、符号だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「鋭角の三角比で表せ」とあるので、 の公式を使って、角を 未満に落とす。

(1) → (符号そのまま)(2) → (マイナス)計算の中身は「 から引く」だけ。 は符号そのまま、 と はマイナス。この 行を守れば終わる。

Oxy1−120°160°
20° と 160° = 180° − 20° は y 軸に関して対称(sin の値が等しい)
公式、、

(1) なので

図で納得しておく。 と の点は 軸をはさんで左右対称の位置にある。高さ( 座標 )は同じ。だから にマイナスはつかない。

(2) なので

左右対称の点では、 座標()は符号だけ反転する。だからマイナスがつく。

(3) なので

まとめ:なお、 の公式も使うと、(2)は とも書ける。表し方は1通りではない。鋭角の三角比で表せていれば、どの形でも正解だ。

発展。 の公式( など)も、あわせて押さえたい。こちらは余角の関係で、直角三角形の つの鋭角の関係()そのものだ。

  • 補角 : は不変、・ は符号反転( 直角から引く)
  • 余角 : と が入れ替わる( 直角から引く)

つの公式は役割が違う。補角は「鈍角を鋭角に直す」、余角は「 と を行き来する」ために使う。どちらも単位円の対称性(左右反転・対角線反転)から導ける。単位円 枚から、これらの公式がすべて導ける。

答

(1) (2) (3)

別解

符号の を、単位円の象限で判定すると確実だ。〜 の角は単位円の上半分にいる。 を境に つの象限に分かれる。

角の範囲 象限 ( 座標) ( 座標)
第 (右上)
第 (左上)

鈍角( 超)では と が負、 は正のまま。これを 問に当てはめる。

  • (1) は鈍角 → は正 →
  • (2) は鈍角 → は負 →
  • (3) は鈍角(かろうじて 超)→ は負 →

「符号は象限で決まる、大きさは補角( から引いた角)で決まる」。この 段で考えれば、公式を つ覚える必要はない。

(3)の は をわずかに超えただけだが、 の符号は急激に反転する(、)。 は定義されない。 で分母が になるからだ。 付近の の激変は、単位円で 座標が を横切ることの現れである。

ポイント

  • 、、
  • 鈍角を見たら『 引くといくつか』をまず計算する
  • の公式と組み合わせると と を行き来できる

よくある間違い

  • にも負号をつける
  • のような引き算を暗算ミスする
  • 補角をとらずに 等と誤変換する

問7三角比を含む方程式

★ 基礎三角方程式

問題

とする。次の等式を満たす を求めよ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

単位半円の上で点を探す問題。 なら『高さ( 座標)が の点はどこ?』と考える。水平線を引くと半円と何か所で交わる? なら縦線で。交点の数がそのまま解の数になる。

解答・解説

方針

三角比の方程式は単位半円の上で点を探す問題として解くとわかりやすい。 なら『 座標が の点はどこ?』と考える。高さ の水平線を引くと、半円と2か所で交わる(鋭角に1つ、鈍角に1つ)。 なら縦線で探す。こちらは1か所しか交わらない。

解が何個あるかが図から見える。これが半円で解くいちばんの利点だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 三角比の方程式は、 の範囲で、その値になる角をすべて探すのが仕事だ。

注意するのは解の個数である。

  • の方程式: 上半円で同じ高さの点は左右に つある( と )→ 解が 個になりやすい
  • の方程式: 座標は まで単調に減るので、同じ値の点はただ つ → 解は 個

(1)の は と の 個。 を忘れるのが最頻ミスである。 の範囲で、半円上の点の座標を手がかりに考える。

(1) は、半円上で 座標が になる角。高さ の水平線を引くと、半円と2か所で交わる。鋭角側の と、対称な鈍角側 ()だ。

だけ答えて鈍角側を落とすのが、この型で最も多いミス。『()は解2つ』と、交点の個数で覚えたい。

Oxy1−130°150°y = 1/2
sin θ = 1/2 ⇔ y 座標が 1/2 の点は 2 つ

(2) は、 座標が になる角。 なので、 より

こちらは解が1つだけ。〜 では 座標は から へ一方通行で動くので、縦線は1回しか交わらない。 と で解の個数がちがう、という対比を図で押さえておく。

Oxy1−1120°x = −1/2
cos θ = −1/2 ⇔ x 座標が −1/2 の点は 1 つ

(3) 。 なので、 より

まとめ: が負になるのは鈍角のとき。符号から『答えは鈍角側』と当たりをつけてから探すと速い。

発展。 の解が 個なのは、〜 で が単調減少( から へ一直線に減る)だからだ。単調な関数は同じ値を 度とらない。単調性が解の一意性を保証する、という論理は数学全体で使われる。

一方 は で最大 をとる山型なので、同じ値を 度とる。だから解が 個。関数の増減の形が方程式の解の個数を決める。 次関数のグラフと 軸の交点の議論と同じ考え方が、ここにも現れている。

数IIで角の範囲を 〜 に広げると、 の方程式も解が 個になる(下半円にも交点ができる)。解の個数は考える範囲によって変わる。範囲の確認が常に最初の一手である。

答

(1) (2) (3)

別解

解の個数を単位円の絵で確定させれば、書き漏らしが構造的になくなる。

(1) のとき。 は 座標だ。上半円で「高さが 」の点を探す。水平線 を引くと、円と か所で交わる(右上と左上)。

水平線は円を 回切る。だから の方程式は解が 個になる(値がちょうど のときだけ 個)。

(2) のとき。 は 座標だ。「横位置が 」の点を探す。垂直線 を引くと、上半円では か所しか交わらない(下半分の交点は範囲外)。

垂直線は上半円を 回だけ切る。だから の方程式は解が 個だ。

(3) のとき。 が負なので鈍角だと分かる。 だから、補角の で となる。

「 は水平線で 交点、 は垂直線で 交点」。この絵を持てば、解の個数で悩まない。 の問題で答えを つしか書かない、という減点が消える。

検算は代入で。 となる。補角の公式がもう つの解の存在を保証している。

ポイント

  • ()の解は鋭角と鈍角の2つ、 の解は1つ
  • 単位半円で『 座標』『 座標』を探すイメージをもつ
  • 負の値なら鈍角(あるいは なら より大きい角)と当たりをつける

よくある間違い

  • (1)で を忘れて だけ答える
  • (2)で と答える(符号を確認していない)
  • の方程式でも解を つ書く(〜 では の解は つ)

問8正弦定理(辺と外接円の半径)

★ 基礎正弦定理外接円

問題

において、、、 である。

(1) 辺 の長さを求めよ。

(2) の外接円の半径 を求めよ。

ヒントを見る

『2つの角と1辺』がそろった配置。角と、その真向かいの辺をペアにすると、等しい比が作れる。まず各辺が『どの角の向かいか』を図で対応づけてから、その比を立てよう。

解答・解説

方針

どの定理を使うか、見分ける問題だ。与えられたのは『2つの角と1辺』。この組み合わせを見たら正弦定理を使う。 だ。角と対辺のペアが作れるから、この定理が使える。

注意は対応づけだけ。 は『角 の対辺』 のこと。 を端にもつ辺ではない。ここを間違えなければ、正弦定理は終わったも同然だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 正弦定理は「辺とその向かいの角」をペアで結ぶ。

( は角 の対辺、 は外接円の半径。)使うときは「 組のうち つが分かれば、残り つが出る」。

は角 の対辺()で、 だから、辺と対角のペアが揃っている。 は角 の対辺()で、 となっている。辺と対角のペアで考えるのが正弦定理の要点だ。

45°60°BCA62√6外接円
∠A = 60°、∠B = 45°、BC = 6 と外接円

まず対応の確認から。角 の対辺が 、角 の対辺が だ。図で『角の向かい側の辺』を指さして確かめてから式を立てる。

定理正弦定理 ( は外接円の半径)

(1) 正弦定理 より

よって だ。分数の中に分数が入る形になるが、 で が約分される。落ち着いて処理すればきれいになる。

(2) 正弦定理のもう1つの形 を使う。外接円の半径が正弦定理から出るのは意外かもしれないが、これが正弦定理の本体だ。

まとめ: の を忘れて とするミスが多い。『』までを1つの公式として、声に出して覚えたい。

発展。 正弦定理は「大きい角の向かいには長い辺」を数値化したものだ。 は 〜 で増加するので、角が大きいほど対辺も長い。今回なら だから 。答えの大小関係が角の大小と合っているか、最後に確認したい。

という量が出てくるのは、円周角の定理が背景にあるからだ。外接円で弦 に対する円周角が のとき、 となる。これは円周角の定理の三角比版だ。正弦定理は円の幾何学の言い換えである。だから外接円の半径が自然に登場する。

答

(1) (2)

別解

正弦定理を使う順序にコツがある。先に を求めておくと、以降の辺がすべて掛け算 回で出る。

手順1: 完全なペアから を出す

、 が揃っている。

外接円の半径 で、(2)の答えが先に出た。

手順2: を使って他の辺を出す

正弦定理を の形で使う。

掛け算 回で終わり。比例式を立てて交差乗算する手間がない。

この形で覚えておくと、(角 の対辺)も同じく で即座に出る。

は三角形の 「変換係数」 と言える。すべての辺が「 対角の 」で表せる。正弦定理が言っているのは、「辺と が比例し、その比例定数が 」ということだ。 を聞かれていなくても、まず を出すのが定跡である。

検算: の値がどのペアでも同じか確かめる。 で、一致した。

ポイント

  • 正弦定理
  • 小文字 はそれぞれ角 の対辺。対応を最初に書き出す
  • 『2角と1辺』または『外接円の半径』が現れたら正弦定理

よくある間違い

  • を角 の対辺と勘違いして式を立てる
  • の を忘れて としてしまう
  • の繁分数の計算を誤る(分母分子に を掛ける)

問9余弦定理(2辺と間の角から残りの辺)

★ 基礎余弦定理

問題

において、、、 であるとき、辺 の長さを求めよ。

ヒントを見る

手がかりは、わかっている角 が『2辺にはさまれている』こと。はさむ2辺とその角から、向かいの辺 を直接求められる関係が1つある。公式を書き出す前に、図で「はさむ角はどれ」「その向かいの辺はどれ」を指さして確かめよう。

解答・解説

方針

今度は『2辺とその間の角』だ。この組み合わせは正弦定理では手が出ない(角と対辺のペアが作れないから)。ここで使うのが余弦定理だ。

。言葉にすると『求めたい辺の2乗 三平方の定理 補正項』。 に入るのははさまれている角、出てくるのはその向かいの辺、という対応を押さえる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 与えられたのは 辺(、)と、そのあいだの角()。

このとき使う道具は つに決まる。余弦定理だ。

「 辺とはさむ角 → 向かいの辺」がこの定理の役割である。正弦定理は「辺と対角のペア」が要るが、ここには対角のペアが 組もない。だから正弦定理では動けない。

どちらの定理を使うかは与えられた情報の形で決まる。これが三角形の計量の基本だ。

60°ABC85BC = 7
AB = 8、AC = 5、∠A = 60° から BC を求める
公式余弦定理 ( は角 の対辺)

求めたい辺 を 、はさむ2辺を 、、間の角を とみて当てはめる。

値を入れる。

なので

最後の平方根で と迷わなくていい。辺の長さは正、の一言で片づく。

検算のコツ。余弦定理は『三平方の定理の補正版』だ。 なら補正項 が負に働くので、 は三平方の値 より小さくなるはず。確かに だ。角が ならちょうど三平方、鈍角なら三平方より大きくなる。この感覚は符号ミスの検出器として役立つ。

発展。 、、 から という整数が出たのは偶然ではない。 のおかげで となり、

という整数だけの式になるからだ。 で 。 や ()を含む三角形は、こうして整数の辺の組が作りやすい。 や は入試でもよく登場する「 の三角形」である。

さらに一歩。ベクトルを学ぶと、余弦定理は

の言い換えだと分かる()。三平方 → 座標 → ベクトルと表現を変えながら、同じ つの事実が姿を変えて現れる。

答

別解

余弦定理を「覚えた公式」でなく、座標に置いて三平方の定理で押し切る方法を見ておこう。公式を忘れても解けるし、余弦定理がなぜ成り立つかも分かる。頂点 を原点に置き、辺 を 軸に重ねる。

  • ( を 軸方向に)
  • は から距離 、 軸との角 の位置。つまり

あとは 点間の距離(三平方の定理)を計算するだけだ。

余弦定理と同じ答えになった。

ここで公式の意味が分かる。 一般に 、 と置くと

( を使った。)余弦定理は、座標に置いた三平方の定理そのものである。

なら で補正項が消え、 となる。ただの三平方の定理に戻る。 は「直角からのズレの補正」。角が鋭角なら で対辺は短くなり、鈍角なら で対辺は長くなる。図の直感と一致する。

ポイント

  • 『2辺と間の角』から残りの辺を求めるのは余弦定理の基本形
  • の に入る角は、求めたい辺の『向かいの角』
  • 最後に から正の平方根を選ぶ

よくある間違い

  • の項の符号を間違えて とする
  • はさむ角ではない角(対角)に余弦定理を当てはめる
  • で止まり、平方根をとって とするのを忘れる

問10余弦定理(3辺から角を求める)

★ 基礎余弦定理角の決定

問題

において、、、 であるとき、 の大きさを求めよ。

ヒントを見る

3辺が全部わかっている。ここから角を出すには、辺だけで を表せる関係を使う。分子で引くのは『求めたい角の真向かいの辺』の2乗だ。どの辺かを図で確かめてから代入しよう。 が負なら、その角は鋭角・鈍角どちら?

解答・解説

方針

3辺が全部わかっている。このときは余弦定理を について解いた形を使って、角のほうを求める。。分子の形は『はさむ2辺の2乗の和 対辺の2乗』。引くのがどれかを間違えないこと。

計算した が負になったら、その角は鈍角だ。符号から角の種類まで分かる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 今度は 辺がすべて分かっていて、角を聞かれている。

余弦定理を角について解いた形を使う。

は求めたい角 の対辺()、 と ははさむ 辺( と )。分子の引き算に来るのが対辺、ここを取りちがえないこと。

出た が負なら角は鈍角。負号を見て「計算ミスだ」と思わないように。 辺 は が飛び抜けて長く、その向かいは大きな角になるはずだ。

120°ABC357
3辺が 7・5・3 の三角形(∠A は鈍角)

、、 とおく。

公式余弦定理(角を求める形)

この式に代入する。分子で引くのは、求めたい角 の対辺 の2乗だ。

が負。この時点で は鈍角だとわかる。 で になるのは

ここで前に習った『鈍角の三角比』を使う。 を見て反射的に と答えたら、符号の見落としだ。確かめ: は最大の辺 の向かいの角。だからこの三角形で最も大きい角のはず。 という答えはそれと合っている。

発展。 と の大小で角の種類が決まる、という判定は三平方の定理の拡張として整理できる( は最大辺とする)。

  • → 鋭角三角形
  • → 直角三角形(三平方の定理)
  • → 鈍角三角形

余弦定理 の分子の符号が、そのままこの判定になっている(分母 は常に正)。 つの式が つの場合を統一的に説明する。これが定理を「三平方の一般化」と呼ぶ理由だ。

なお は をもつ整数三角形で、()を満たす。 版の とペアで、整数論(アイゼンシュタイン整数)にもつながる関係である。

答

別解

面積を先に出して から攻めるルートも見ておこう。ここには見落としやすい大事な点があり、それを知ることが本問の値打ちである。

手順1: ヘロンの公式で面積を出す。 辺だけから面積が出る公式だ。 として

手順2: 面積公式から を逆算する。 に 、 を入れて

手順3(間違えやすいところ): だけでは角が決まらない。 〜 には、これを満たす角が

の つが候補になる( の方程式は解が 個、を思い出そう)。 は鋭角と鈍角を区別できないのだ。

手順4: 鋭角か鈍角かを別の手段で決める。 三平方の定理との比較で判定する。

なので、直角のとき()より対辺が長すぎる。つまり角 は直角より開いている。よって鈍角で 。

教訓が つある。

  • は符号だけで鋭角・鈍角を判定できる(正なら鋭角、負なら鈍角)。だから角を求めるときは を使う余弦定理が第一選択。 経由は 通りの候補を残してしまう。
  • と の大小比較だけで、角の種類(鋭角・直角・鈍角)が分かる。 辺を見た瞬間に と気づけば、答えが 側だと計算前に見当がつく。

ポイント

  • 3辺既知なら (余弦定理の変形)で角を求める
  • 分子は『はさむ2辺の2乗の和 − 対辺の2乗』
  • の符号で鋭角・直角・鈍角がただちに判定できる

よくある間違い

  • 分子の引き算に対辺以外の辺を持ってきてしまう( の は求める角の対辺)
  • が負になった時点で計算ミスだと思い込む(鈍角なら負が正しい)
  • から と答える(符号を落として鋭角にしてしまう)

問11三角形の面積公式

★ 基礎面積

問題

において、、、 であるとき、 の面積 を求めよ。

ヒントを見る

2辺とそのはさむ角から面積を出す。決め手は『高さ』の作り方だ。一方の辺に角をかけると、底辺への高さが現れる。高さは『上向きの成分』だから、 と のどちらを使う?

解答・解説

方針

面積公式 。なぜ なのかを知れば、もう忘れない。 は『頂点 から底辺 に下ろした高さ』のこと。つまりこの公式は小学校で習った『底辺 × 高さ ÷ 2』の高さを、三角比で書いただけだ。

使う角が必ず『2辺にはさまれた角』なのも、この由来からわかる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 三角形の面積といえば「底辺 高さ 」。しかしこの問題では高さが与えられていない。

与えられているのは 辺( と )と、そのはさむ角()。

この公式は「 辺とはさむ角があれば面積が出る」と言っている。 が高さの役目を引き受けているのだ。余弦定理・正弦定理と同じく、与えられた形( 辺+はさむ角)が道具を指定する。まず何が与えられているかを確認する癖をつけたい。

30°ABC644 sin 30°
S = 1/2 × 6 × 4 sin 30°(4 sin 30° が高さ)

2辺 、 とその間の角 がわかっているので、面積公式を使う。

公式三角形の面積 ( 辺 、 とはさむ角 )

なので

公式の意味を図で確かめよう。 は、頂点 から直線 に下ろした高さだ。つまり『底辺 × 高さ ÷ 2 』。小学校の面積公式と同じ計算をしている。 を使うミスは『高さは上向きの成分だから 』という由来を思い出せば防げる。

発展。 辺の長さ 、 を固定したまま、はさむ角 だけを動かすと面積 はどう変わるか。 は で最大 をとるから、

辺の長さが決まっているとき、面積が最大になるのは直角のとき。角を開きすぎても閉じすぎても面積は減る。 の山型のグラフから、それが分かる。今回なら最大面積は で、 での はその半分だ。

辺だけが分かっているときはヘロンの公式 (ただし は周の半分)が使える。角を経由せずに面積が出る公式で、余弦定理から導ける。「何が与えられたか」に応じて面積公式を使い分ける。 辺+はさむ角なら 、 辺ならヘロン、底辺と高さなら小学校の公式、である。

答

別解

公式 を暗記していなくても、小学校の「底辺 高さ 」だけで解ける。むしろ、公式はこちらから作られている。

手順1: 底辺を決める。 を底辺にしよう。

手順2: 高さを三角比で出す。 頂点 から直線 に垂線 を下ろす。すると は の直角三角形で、斜辺が 、 だ。

高さは 。三角比の定義そのもの(斜辺 = 高さ)を使っただけである。

手順3: 小学校の公式に入れる。

同じ答えが出た。この 手順をまとめると、公式そのものになる。

は「斜辺を高さに変換する係数」。公式に が入っている理由はここにある。覚えていなくても、垂線を 本下ろせばその場で作り直せる。

なお が鈍角でもこの公式は成り立つ。垂線の足 が辺 の外に出るが、高さは ( は鈍角でも正)のままだからだ。鈍角でも面積公式は無修正で使える。 が 〜 で常に非負であるおかげだ。

ポイント

  • 使う角は必ず『2辺にはさまれた角』
  • が『高さ』を表しているという図形的な意味を理解する

よくある間違い

  • ではなく を使ってしまう(面積は )
  • を掛け忘れる
  • はさむ角ではない角( など)の を使う

問12内接円の半径

★ 基礎内接円面積

問題

3辺の長さが の三角形について、次の問いに答えよ。

(1) この三角形の面積 を求めよ。

(2) この三角形の内接円の半径 を求めよ。

ヒントを見る

『面積を2通りに表す』とよい。1つは普通に求めた面積。もう1つは、内心と3頂点を結んで三角形を3枚に切ったときの和だ。どの小三角形も高さが になることに気づけるか。2つをイコールで結ぼう。

解答・解説

方針

内接円の半径は面積を2通りに表すと求まる。1つ目は普通に計算した面積 。2つ目は内心と3頂点を結んで三角形を3枚に切り分けた和だ。どの小三角形も高さが になるので、 という式になる。

この2つをイコールで結べば が出る。『同じ量を2通りに表して方程式を作る』。図形問題でよく使う手の、最初の例だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 辺が で、 なので、これは直角三角形だ。まずこれに気づく。

(1) 直角をはさむ 辺が底辺と高さになるので、面積は素直に出る。(2) 内接円の半径 は面積を 通りに表すと出る。

なぜこうなるか。内心 と各頂点を結ぶと、三角形が つの小三角形に分かれる。どれも底辺が三角形の辺、高さが (内接円は各辺に接するから、中心から辺までの距離が )。その面積を足すだけだ。

「面積を 通りで表して等式にする」。これは図形分野でよく使う方法である。

IrABC435
直角三角形 3・4・5 と内接円(半径 r = 1)

(1) なので、三平方の定理の逆から、これは長さ の2辺が直角をはさむ直角三角形だ。よって

を見た瞬間に直角三角形を疑う。有名な比は覚えておくと初動が速い。

(2) 内接円の半径を とする。内心(内接円の中心)と3つの頂点を結ぶと、三角形は3つの小三角形に分かれる。ここが見せ場だ。それぞれの小三角形は元の三角形の各辺を底辺とし、高さがすべて (内接円は各辺に垂直に接しているから)。だから面積の和は

公式内接円の半径 ( は内接円の半径、 は周の長さ)

同じ面積を、(1)では直接、(2)では 経由で表した。2つをイコールで結ぶ。(1)より なので

まとめ:公式 は、この『3分割』の絵ごと覚えるとよい。導き方がわかれば、 を落とすこともない。

発展。 ( は周の半分)という関係は、内接円をもつ図形なら三角形以外でも成り立つ。 角形に内接円があるなら、中心と各頂点を結んで 個の三角形に分ければ、同じ議論で

となる。円そのものを「辺が無限に多い多角形」と見れば、周 を代入して となる。円の面積公式まで同じ形で説明できる。

なお の直角三角形は外接円の半径も簡単だ。直角三角形の斜辺は外接円の直径(タレスの定理)なので 。正弦定理 に ()を入れても と同じ結果になる。内接円は面積から、外接円は正弦定理から求める。 つの円の求め方をセットで覚えておきたい。

答

(1) (2)

別解

直角三角形に限れば、面積を使わずに が出る。接線の長さを数えるだけの、絵で分かるルートだ。直角の頂点を ()、、、 とする。内接円が 辺と接する点を考える。

手順1: 直角のかどは正方形になる。 内心 から辺 、 に下ろした垂線の長さはどちらも 。 だから、・接点 つ・ の 点は、 辺 の正方形をつくる。

つまり、頂点 から つの接点までの距離は、どちらも である。

手順2: 接線の長さは等しい。 円外の 点から引いた 本の接線の長さは等しい( から引いた 本、 から引いた 本、それぞれ同じ長さ)。 からの接線の長さを 、 からの接線の長さを とすると、 辺は接点で次のように分割される。

手順3: 足して引く。 上の 式で、前の 式を足すと

左辺は だから

面積の答えと一致した。

という式もある。直角三角形専用だが、 辺を見ればすぐに暗算で が出る。、半分で 。

一般の三角形では、面積を使う ( は周の半分)がいつでも使える。今回は 、 で となる。 つの道が同じ答えに着くことを確かめておきたい。

ポイント

  • は、内心で3分割すると導ける。丸暗記でなく導出ごと覚える
  • を見たら直角三角形を疑う(三平方の定理の逆)
  • 面積を2通りに表して未知数を求めるのは、図形問題の頻出テクニック

よくある間違い

  • の を忘れる(周の長さそのものを掛けてしまう)
  • 内接円と外接円を取りちがえる(外接円の半径は正弦定理から。直角三角形なら斜辺の半分)
  • が直角三角形だと気づかず、面積の計算で行き詰まる