数学I / 数と式

数と式 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 展開の基本公式
  2. 共通因数でくくる因数分解
  3. 整式の整理と次数・定数項
  4. 整式の加法・減法
  5. 整式の乗法
  6. 工夫して展開する
  7. 公式による因数分解
  8. たすき掛けによる因数分解
  9. 複2次式の因数分解
  10. 文字が2種類ある式の因数分解
  11. 対称式・交代式の因数分解
  12. 展開・因数分解を利用した証明

問1展開の基本公式

★ 基礎展開

問題

次の式を展開せよ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

3つとも展開公式ですぐに計算できる。(1)は『2乗』の形だ。まん中の項(2つの積の2倍)を落としやすい。(2)は『和と差の積』。(3)は の係数が の2次式で『たす・かける』で作る形。それぞれどの型か見分けよう。

解答・解説

方針

展開は公式に当てはめれば機械的にできる。使う公式を3つ確認しよう。(1)は 。(2)は 。(3)は 。

どれを使うかは式の形を見て決める。「2乗の形」「和と差のかけ算」「 が共通の2つのカッコ」を見分けよう。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 展開の問題は、配り始める前に「どの公式の形か」を見分けるのが最初の仕事。

(1)は同じものの 乗、(2)は和と差のかけ算、(3)は が共通の つのカッコ。形さえ見分ければ、あとは公式に当てはめるだけだ。形を見分ける力をつけることが、この問題の目的である。

公式乗法公式 、、

(1) に当てはめる。、 だ。

x²3x3x9x3x3
(x+3)² = x²+3x+3x+9 = x²+6x+9

まん中の (ここでは )を忘れやすいので注意。

(2) 和と差のかけ算 の形だ。、。

のように、係数の2も2乗するのを忘れずに。

(3) で、、。

まとめ: の係数は2数の和 、定数項は2数の積 。符号に気をつけよう。

発展。 に を入れると となる。展開公式は暗算の道具でもある。 のように、和と差の積を使うと「きりのいい数 少し」のかけ算をすぐに済ませられる。

この つの公式はこの先の因数分解(逆向き)・ 次方程式・平方完成まで、数Iの計算の基本として使われ続ける。「形を見分けてから手を動かす」習慣ごと持ち上がっていく。

答

(1) (2) (3)

別解

公式のまん中の項()がどこから来るのかは、正方形の面積の絵で見ると忘れなくなる。 は「 辺 の正方形の面積」。この正方形を、辺を と に区切って切り分けると、 つの部屋ができる。

  • の部屋:
  • の部屋が つ(右上と左下):
  • の部屋:

まん中の は「細長い部屋 部屋分」の面積だ。だから公式は と倍が付く。 という誤りは 部屋のうち角の 部屋しか数えていない絵に相当する。

(2)の も、正方形から小さい正方形を欠いた図形の切り貼りで絵にできる。公式を忘れたら面積の絵に戻ればよい。展開公式は図形を使って正しいことを確かめられる。

ポイント

  • (まん中の を忘れない)
  • (和と差のかけ算)
  • (和と積)

よくある間違い

  • を とする(まん中の を落とす)
  • を とする(係数 も2乗して )
  • (3)で和と積の入る場所を逆にして 型にする(和が の係数、積が定数項)

問2共通因数でくくる因数分解

★ 基礎因数分解共通因数

問題

次の式を因数分解せよ。

(1)

(2)

ヒントを見る

まず各項に共通するものを探す。(1)は係数と文字の両方に共通なものがある。(2)は3項すべてに共通する『係数の最大公約数 × 共通の文字』を前に出す。くくったあと、カッコの中を展開して元に戻るか確かめよう。

解答・解説

方針

因数分解の第一歩はいつも「共通因数はないか?」を探すことだ。全部の項に共通してかけられている数や文字を見つけて、前に出してくくる。

(1)は と に共通する 。(2)は各項に共通する 。くくり出したら、展開して元に戻るか確かめよう。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 因数分解と言われたら、公式より先に「全部の項に共通してかかっているものはないか」と目を走らせる。

共通因数のくくり出しはすべての因数分解の最初の手順だ。これを飛ばすと後の公式も使えない。(1)は 、(2)は が全項に共通。くくり出したら、展開して元に戻るかの確認までがワンセットだ。

公式共通因数でくくる:各項に共通してかかっている文字・数を前に出す

(1) と に共通してかけられているのは 。これを前に出してくくる。

くくった後、、 と、展開して元に戻ることを確かめるとよい。

3x²6xx23x
3x²+6x = たて 3x × よこ(x+2) = 3x(x+2)

(2) 各項 、、 を見る。係数の共通は2(最大公約数)、文字の共通は と 。だから共通因数は 。

まとめ:カッコの中は各項を で割った 、、。最後の を、 などと間違えないように。

発展。 「くくり出したら展開して戻す」検算はすぐに済むのに、項の落とし・割り算ミスをほぼ全部見つけられる。因数分解は答えの検算が展開という機械作業でできる、数学でも珍しく答え合わせ付きの計算だ。この安心感は、因数分解が複雑になるほど助けになる。

共通因数くくりはこの後のすべての因数分解の「第 手」。たすき掛けの前に でくくり、公式を使う前に でくくる。「まず共通因数」という習慣は、式が複雑になる数IIでも変わらず最初の一手である。

答

(1) (2)

別解

共通因数を見落とさない・取り切るための、分解表の書き方を紹介する。各項を数と文字の積にバラして並べる。(2)なら

縦に見比べて、全行にいる部品に印をつける。 が 個、 が 個、 が 個ある。共通因数は だ。

くくった後の中身は各行から印の部品を抜いた残り: 。

この表を使うと「取り切ったか」が見える。たとえば で止めると、残りの全項にまだ がいるのが表ですぐ分かる。慣れれば頭の中でやる作業だが、迷ったら紙に表を書く。速さより確実さを優先する。

ポイント

  • 因数分解は、まず「共通因数はないか」を探す
  • 係数の最大公約数と、共通する文字をくくり出す
  • くくった後は、展開して元に戻るか確かめる

よくある間違い

  • 共通因数でくくった後、カッコの中の項を1つ落とす(特に を忘れる)
  • を などと間違える
  • のように途中で止めて取り切らない(中にまだ共通の が残る)

問3整式の整理と次数・定数項

★ 基礎整式降べきの順

問題

次の問いに答えよ。

(1) 整式 の同類項をまとめて降べきの順に整理し、その次数と定数項を答えよ。

(2) 整式 を、 に着目して降べきの順に整理し、そのときの次数と定数項を答えよ。

ヒントを見る

(1)は同じ種類の項( どうし・ どうし・定数どうし)を集め、次数の高い順に並べる。(2)は『 に着目』なので、 の項・ の項・ を含まない項(これが定数項あつかい)に仕分ける。 は数だと思って。

解答・解説

方針

「降べきの順」とは次数の高い項から低い項へ順に並べることだ( → → 定数)。まず同類項(同じ文字・同じ次数の項)をまとめ、それから次数の順に並べる。

(2)のように文字が2種類あるときは、『 に着目』と言われたら、 だけを文字と見て、 を含む部分は数の仲間(定数)としてあつかう。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「整理せよ」系の問題は、手を動かす前に「何を基準に並べるのか」を確認する。基準は文字の次数だ。同類項を先に集めてから、次数の高い順(降べきの順)に並べる。

(2)のように文字が 種類あるときは、「 に着目」の指示で、どの文字を中心に考えるかが決まる。 だけを文字とみなし、 は数の仲間(定数)としてあつかう。着目する文字が決まれば、(1)と同じ仕分け作業に戻る。

(1) 同類項をまとめる。 の項: 。 の項: 。定数: 。次数の高い順に並べて

いちばん高い次数は2だから次数は2、 を含まない項が定数項 。

(2) に着目するので、 の項、 の項、 を含まない項に分ける。 の項は 、 を含まない項は 。まとめて

まとめ: に着目したときの次数は2、 を含まない項 が定数項だ。 が入っていても、 から見れば定数のあつかいになる、というのがポイント。

発展。 「 に着目」の考え方はこの単元の文字 種類の因数分解(次数の低い文字で整理)や、数IIの「 についての方程式とみる」「定数 に着目し直す」でも使う。どの文字に着目するかは、解く側が選べる。このことに気づくと、文字式の扱いが上達する。

降べきの順は「桁の大きい位から書く」数の記法と同じ発想でもある。 と書ける。整式は「 を に置き換えた数」のように振る舞うので、整理・加減・乗法が筆算とそっくりになる。

答

(1) 、次数 、定数項 (2) 、次数 、定数項

別解

同類項の整理を「棚への仕分け」の絵でやると、落としも重複もなくなる。棚を つ用意する。「 の棚」「 の棚」「定数の棚」だ。式の項を先頭から順に つずつ棚に投げ込む。(1) を仕分けると

  • の棚: → 合わせて
  • の棚: →
  • 定数の棚: →

棚を左(高い次数)から読み上げると となり、降べきの順が自動で完成する。

(2)のコツは、 にだけ印(丸や色)をつけること。印のついた と、印のない残り( の式)で棚を作れば、 と が同じ「 の棚」に入り()、 がまるごと定数の棚に落ちる。「着目する文字以外は数」という抽象的な指示が、印つけの一手で作業になる。

ポイント

  • 降べきの順 = 次数の高い項から低い項へ並べる
  • まず同類項(同じ文字・同じ次数)をまとめる
  • 「 に着目」のときは、 を含まない項( が入っていても)が定数項

よくある間違い

  • (2)で を含む項を定数項に入れ忘れる(『 に着目』では は定数あつかい)
  • 同類項のまとめで、符号を間違える
  • (2)の次数を「 があるから 次と 次で 次」等と誤る( に着目した次数は の指数だけで数える)

問4整式の加法・減法

★ 基礎整式加法・減法

問題

、 のとき、次の式を計算せよ。

(1)

(2)

ヒントを見る

(1)は同じ種類の項どうしを足すだけ。(2)は先に ・ を作ってから引く。このとき はカッコの中の符号を全部変える。ここがいちばん間違えやすい。

解答・解説

方針

整式の足し算・引き算は同類項(同じ次数の項)どうしをまとめるだけだ。いちばん気をつけるのは、引き算のときの符号。 のように引くときは、カッコの中の全部の項の符号が変わる。ここでのミスがとても多い。

(2)はまず と を計算し、それから引く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 式の足し引きは同類項をまとめるだけだ。そう分かっていても、ミスが起きるのは引き算の符号だ。

を見た瞬間に「 の全部の項の符号が反転する」と身構える。(2)は先に と をそれぞれ計算してから引く。一度に つの操作(倍と引き算)をやらないのが、ミスを減らす段取りである。

(1) 同類項をまとめる。

(2) まず 、 を計算する。

次に引く。ここが大事なところだ。 を引くので、 の各項の符号が全部反対になる。

まとめ: のように、引き算でマイナスがプラスに変わるところを、ていねいに書こう。

発展。 検算は数の代入が手軽だ。 とすると 、 となる。これは偶然すぎて検算にならないので で: 、。答えの式は 。文字の計算は数を入れれば数の計算で照合できる。この検算は整式のすべての計算に使える。

縦書きの発想は整式の割り算(数IIの筆算)でそのまま使う。整式は「 の代わりに を桁にした数」と見られる。加減・乗法・除法のすべてが数の筆算と同じ手順で理解できる。

答

(1) (2)

別解

数の筆算と同じ縦書きでやると、同類項の対応と符号が目で追えるようになる。同類項が縦に揃うように書き並べる。(2)の なら、 の下に を置いて、列ごとに引く。

  • の列:
  • の列:
  • 定数の列:

横書きだと「どの項とどの項を組むか」を目が探し回るが、縦書きなら列で組が決まる。数の の筆算と同じだ。

引き算の符号ミス( の処理)も、「この列は 引く 」と 1 列 演算に分解されるので起きにくい。項数の多い整式・係数に分数が混ざる計算ほど、縦書きの価値は上がる。

ポイント

  • 整式の加減は、同類項(同じ次数)どうしをまとめる
  • 引き算では、引くカッコの中の全部の符号を変える
  • 、 を1つずつ確かめる

よくある間違い

  • 引き算で、最初の項の符号だけ変えて残りを変え忘れる
  • を のままにしてしまう
  • の計算で一部の項だけ 倍する(倍は全項に配る)

問5整式の乗法

★ 基礎整式展開

問題

次の式を計算せよ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

(1)は1つの項を各項にかける。符号に注意する。(2)(3)は前のカッコの各項を、後ろの各項すべてに(もれなく)かけて、最後に同類項をまとめる。かけ算のもれと符号ミスが2つの大きな間違いだ。

解答・解説

方針

整式のかけ算は分配法則で1つずつ配ってかけていく。(1)は単項式 × 多項式。前の を、カッコの中の各項にかける。符号に注意。

(2)(3)は多項式 × 多項式。前の2つの項を、後ろの各項にもれなくかける。かけ忘れが出ないよう、順番を決めてかけよう。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 多項式のかけ算は「前の各項を、後ろの各項にもれなく配る」だけだ。だが項数が増えると抜けが出る。

配る前に、(前の項数)×(後ろの項数)で答えの項数の見当をつけておく。(2)なら 項出るはず(まとめる前)。配り終えて項数が合っていれば抜けなし。あとは同類項をまとめて完成だ。

(1) を、カッコの中の各項にかける。

のように、マイナス×マイナスがプラスになるところに注意。

(2) 型の公式を使うか、1つずつ配ってかける。

6x²4x−15x−103x22x−5
(3x+2)(2x−5) = 6x²+4x−15x−10 = 6x²−11x−10

(3) 2種類の文字があるが、やることは同じ。1つずつ配ってかけて、同類項 と をまとめる。

発展。 グリッド法の表は、実は分配法則 を 回使った結果の見取り図。「かけ算の展開はなぜ全組み合わせなのか」の理由が、面積の敷き詰めとして目に見える。

検算の小技もひとつ紹介する。 を両辺に代入する。(2)なら左辺 、右辺 。係数の合計どうしが一致するはず、という原理で、展開ミスの多く(符号・かけ忘れ)が 回の代入で見つかる。

答

(1) (2) (3)

別解

かけ忘れを構造的になくす長方形の表(グリッド法)を紹介する。(2) を、縦横に項を並べた表にする。縦に 、横に を並べる。各マスに「縦 × 横」を書き込む。

マスは 個ある。表の形が「もれなく」を保証する。あとは全マスを足して同類項をまとめる。

これは小学校の「かけ算の筆算を面積で描く」のと同じ絵で、 のような文字 種類でも、 項 項でも(マスが 個になるだけ)崩れない。展開公式はこの表の結果に名前をつけたものだ。公式が思い出せない形は、いつでも表に戻ればよい。

ポイント

  • かけ算は分配法則で、1つずつもれなく配ってかける
  • マイナス×マイナス = プラスに注意
  • 最後に同類項(まん中の の項など)をまとめる

よくある間違い

  • 多項式×多項式で、かけ忘れの項が出る
  • の符号を間違える(プラスになる)
  • 文字 種類の積で と を別の同類項として扱いまとめ損ねる

問6工夫して展開する

★ 基礎展開置き換え

問題

次の式を展開せよ。

(1)

(2)

ヒントを見る

まともに展開する前に、うまい形が隠れていないか探す。(1)は共通の を1つのかたまりと見ると? (2)はかける順番を変えると、先に『和と差の積』が作れる。

解答・解説

方針

そのまま展開すると大変な式も共通のかたまりを1文字に置きかえると、公式がそのまま使えてラクになる。(1)は を1つのかたまり とみると、 という和と差のかけ算になる。

(2)は順番を工夫する。先に を計算すると になり、そのあとが和と差のかけ算になる。「どこを先に計算するか」で手間が変わる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) そのまま展開すると項が多くて大変そうだと感じたら、それは共通のかたまりを探すサインだ。

(1)は がどちらのカッコにもいる。かたまりを 文字 とみれば となり、和と差の積の公式が使える。(2)は順番の工夫。先に を作ると、次も和と差の積になって連鎖する。「どこから計算するか」も解法のうちである。

公式和と差の積 (共通のかたまりを とおくと使える)

(1) を1つのかたまりとみて とおく。すると和と差のかけ算だ。

をもとに戻して、 を展開する。

(2) 前から順にかけるより、組み合わせを工夫する。 が和と差のかけ算になっているので、先に計算する。

残りの をかけると、これもまた和と差のかけ算の形だ。

まとめ:和と差のかけ算 が2回使えると気づけば、すぐに片づく。

発展。 (2)の連鎖はもっと続けられる。 に を掛ければ 、さらに掛けて 。「和と差の積の連鎖」は という積の形を生み、数Bの数列や 進法の話( の因数分解)にも出てくる。

かたまり置き()は、複2次式()・対称式・数IIの複雑な展開まで、この単元の後半から先へずっと使い続ける中心技術。同じ形の反復を見たら 文字に置き換える。これは式変形で最もよく使う整理の方法である。

答

(1) (2)

別解

「順番の工夫」の効果はわざと悪い順番で 度やってみるとよく分かる。(2)を前から順に、 でなく から計算してみよう。

項の 次式になり、公式の形ではない。これに を掛けると、 項の配り算になり、同類項をまとめてようやく に着く。答えは同じだが、手数とミスの機会が数倍だ。

良い順番( が先)なら

となり、和と差の積が 回続いて 行で終わる。かけ算は順番を選べる(交換・結合法則)。だから「公式が使えるペアを先に組む」ことができる。計算の前に 秒だけ、ペアの組み方を考える習慣をつけるとよい。

ポイント

  • 共通のかたまりを1文字に置きかえると、公式が使える
  • かける順番を工夫すると、和と差のかけ算が現れる
  • 置きかえたら、最後にもとに戻すのを忘れない

よくある間違い

  • (1)で をもとに戻した後、 の展開で を落とす
  • (2)を前から順にかけて、計算を複雑にする
  • (1)を とせず全 項を配って符号ミスをする

問7公式による因数分解

★ 基礎因数分解公式

問題

次の式を因数分解せよ。

(1)

(2)

(3)

ヒントを見る

展開の公式を逆向きに使う。(1)は定数が平方数で、まん中の項がその 倍になっている。何かの2乗に見えないか。(2)は2つの平方の差。(3)は『かけて定数項・たして 次の係数』の2数を探す形。

解答・解説

方針

因数分解は展開の逆だ。展開の公式を逆向きに使う。3つの形を見分けよう。(1)(2乗の形)。(2)(2乗 − 2乗)。(3) の形は 。

(3)は、かけて定数項・たして の係数になる2数 を探すのがコツ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 因数分解は展開の逆再生。与えられた式を見て「これはどの展開公式の結果か」を推理する。

手がかりは項の数と符号だ。 乗が つとまん中の項があるなら完全平方、 乗の差なら和と差の積、 なら 数探し。(3)は「かけて 、たして 」の 数を探す。積が負なら 数は異符号、という符号の読みが決め手になる。

公式因数分解 (まん中が になっていれば完全平方)

(1) 、まん中の に気づくと、 の形だとわかる。

x²5x5x25x5x5
(x+5)² = x²+5x+5x+25 = x²+10x+25

(2) 、 なので、 の形。

(3) かけて (定数項)、たして ( の係数)になる2数を探す。 と だ(、)。

まとめ:2数を探すときは、まず積が になる組(、、…)を書き出し、その中から和が になるものを選ぶとよい。

発展。 「かけて 、たして 」の 数は、実は 次方程式 の解だ。 次方程式を学ぶと、 数探しは解の公式で機械的に求まる( の解 が、そのまま因数 の中身)。勘で探していた作業が後の単元で完全に自動化される。

逆に言えば、因数分解は「 次方程式を解いていた」ことになる。 の解が であることを、因数分解は先取りしている。因数分解と方程式は同じ事実の表裏で、この対応が数Iの中心軸になる。

答

(1) (2) (3)

別解

(3)の 数探しを「勘」でなく、符号の推理 → 候補表の 段でやると確実になる。

符号の推理: 積 が負 → 数は異符号。和 が負 → 絶対値の大きい方がマイナス。

候補表(積が になる組を、大きい方をマイナスにして並べる):

組 和

行目で見つかり、 となる。符号の推理を先にやると、候補が半分以下に絞れる(同符号の組を試さずに済む)。積が正なら「 数は同符号で、和の符号がその符号」となる。この 行のルールを持っていれば、 数探しはほとんど機械作業になる。

検算は展開か、 の代入で: 元の式は 、答えは 。

ポイント

  • 因数分解は展開の逆。公式を逆向きに使う
  • 、
  • は、かけて定数・たして の係数の2数を探す

よくある間違い

  • (3)で2数の符号を間違える(積が負なら、2数は異符号)
  • (2)を などとする(和と差の積で、2乗ではない)
  • (1)を とする(まん中に があるので完全平方)

問8たすき掛けによる因数分解

★ 基礎因数分解たすき掛け

問題

次の式を因数分解せよ。

(1)

(2)

ヒントを見る

の係数が でないので、たすき掛け。 の係数と定数項を、それぞれ2つの数の積に分ける。その組み合わせを、たすきにかけた和が『 の係数』に合うまで試す。まず簡単な分け方から。

解答・解説

方針

の係数が1でないときの因数分解には、たすき掛けを使う。 のような形を目指す。 の係数(たての積)、定数項(たての積)、そして の係数(たすきにかけた和)が、ぴったり合う組を探す。

最初は何通りか試すことになるが、展開して元に戻るか確かめれば確実だ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の係数が でない 次式は、「積と和」だけの推理では組が見つからない。

係数の分解(たての積)とまん中の係数(たすきの和)を、同時に合わせる必要がある。それを表にしたのがたすき掛けだ。 の形を目指し、、、 を満たす組を探す。何通りか試すことになるが、展開で確かめれば確実である。

公式たすき掛け: を に分け、 になる組を探す

(1) を因数分解する。 を 、 を に分けて、たすきにかけた和が の係数7になる組を探す。

うまく7になった。だから

2x²x6x32x1x3
2x²+7x+3 = (x+3)(2x+1)。まん中 x+6x=7x

(2) 。、 と分けて、たすきの和を調べる。

の係数 と合った。だから

まとめ:たすき掛けは、合う組が見つかるまで何通りか試すのがふつう。見つけたら、展開して元に戻ることを必ず確かめよう。

発展。 たすき掛けで見つからないときは、そもそも整数の範囲で分解できない場合がある( など)。 次方程式の判別式を学ぶと、「分解できるか」を試す前に判定できるようになる。無駄な試行を切り上げる根拠になる。

たすき掛けは 次式の因数分解の中では最も手間のかかる作業だが、この先の 次方程式・ 次関数・ 次不等式のすべてで「まず因数分解できるか」が最初の一手になる。ここでの反射神経が数I全体の計算速度を決める。

答

(1) (2)

別解

やみくもに試す前に、符号のパターンを先に決めると候補が半分になる。定数項の符号を見る。

  • (1) : 定数 が正 → 定数側の 数は同符号。 の係数 も正 → 両方プラス。試すのは の組だけ。あとは の係数 を に割って、たすきの和が になる並べ方を選ぶ()。

  • (2) : 定数 が負 → 定数側は異符号( と 、または と )。 の係数 は か 。組み合わせを表にして、たすきの和が になるものを探すと 。

「同符号か異符号か」を最初に決めるだけで、試す組の数が半減する。それでも複数試すのがふつうだ。たすき掛けは当てものではなく、絞り込みだと思えば、 回目、 回目の試行も苦にならない。

ポイント

  • の係数が1でない因数分解は、たすき掛け
  • たての積が の係数と定数項、たすきの和が の係数になる組を探す
  • 見つけた組は、展開して元に戻るか確かめる

よくある間違い

  • たすきの和の計算で、符号を間違える
  • の係数や定数項の分け方を1通りしか試さず、あきらめる
  • たすきの和を「たての積の和」と取り違える(斜めに掛けて足す)

問9複2次式の因数分解

★ 基礎因数分解複2次式

問題

次の式を因数分解せよ。

(1)

(2)

ヒントを見る

(1)は をひとかたまりと見ると、見慣れた2次式になる。因数分解して戻す。戻したあと、まだ分解できる形が残っていないか確認する。(2)は『2乗の差』の形が見えるか。

解答・解説

方針

と が出てくる式(複2次式)は、 を1つのかたまり に置きかえると、見なれた2次式の因数分解になる。まず の式として因数分解し、そのあと を に戻す。戻したあと、まだ因数分解できるところ( など)があれば、さらに分解する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) と しかない式は、 をひとかたまりに見れば 次式になる。見た目の次数に惑わされず「実質 次」と見抜くのが第一手だ。

とおくと 。 の 次式として因数分解し、最後に を に戻す。戻したあとも気を抜けない。 のように、まだ分解できる因数が残っていないかを必ず点検する。

公式複2次式( 型)は とおいて2次式に直す

(1) とおくと、 なので 。これを因数分解する。

を に戻すと

ここで止めない。 も も和と差のかけ算でさらに分解できる。

(2) とみて、 とおくと 。

を戻すと 。 はさらに分解できる( はこれ以上分解できない)。

まとめ:複2次式のポイントは を戻したあとに「まだ分解できないか」を必ず確かめること。ここで止めてしまうミスが多い。

発展。 「 乗の和は分解できない」は実数の範囲ではの話。数IIで虚数 ()を学ぶと と割れてしまう。「分解できるか」はどの範囲の数で考えるかで変わる。扱う数の範囲が広がると、分解できる限界も変わる。

検算は数の代入で。(1)に を入れると元の式は 、答えは 。 因数もの分解でも、 回の代入で全体をチェックできる。

答

(1) (2)

別解

「これ以上分解できるか」の点検を、因数の形で仕分けると迷わない。分解を終えた後、残った 次因数を つずつ調べる。

  • ( 乗の差): 分解できる →
  • ( 乗の和): これ以上できない(実数の範囲では)

(1)で を戻した は、両方とも「差」の形だ。だからどちらも割れて 因数になる。

(2)の は、片方が「和」、片方が「差」。差だけが割れて

は残す。 などと無理に分解すると展開して になり別物だ( 度でも試せば分かる)。「和は割れない、差は割れる」という 行の判定表を持てば、複2次式の最後の詰めで手が止まらない。

ポイント

  • の式は と置きかえて2次式にする
  • を戻したあと、まだ分解できるところ( など)を分解する
  • (2乗 + 2乗)は、これ以上分解できない

よくある間違い

  • を戻したところで止めて、 を答えにしてしまう
  • を無理に などと分解しようとする
  • の置きかえで を ( でなく)としてしまう

問10文字が2種類ある式の因数分解

★ 基礎因数分解最低次の文字

問題

次の式を因数分解せよ。

(1)

(2)

ヒントを見る

2つの文字が混ざったら、まず片方の文字で整理する。(1)は を含む項と含まない項に分けると、共通のカッコが現れる。(2)は について整理してみよう。

解答・解説

方針

2種類の文字が混ざった式は、片方の文字について整理してからくくると、うまくいく。コツは次数の低いほうの文字について整理すること。(1)は でくくる形にそろえてみる。(2)は が1次(低い)なので、 について整理する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 文字が 種類あると、どこから手をつけるか迷う。迷ったら「次数の低いほうの文字について整理する」。

低い文字なら整理後の形が単純で、共通因数が見つかりやすいからだ。

(1)は も も 次なので、どちらでもよいが、 でくくってみる。(2)は が 次で が 次 → について整理する。この選択が解けるか詰まるかを分ける。

重要共通部分が出るように、項を2組に分けてそれぞれくくる(たすきの前段)

(1) を含む項と含まない項に分けて、 でくくる形にそろえる。

両方の項に共通の が出てきた。これでくくれる。

abb2a2a1b2
(a+1)(b+2) = ab+2a+b+2

(2) が1次で次数が低いので、 について整理する。 を含む項は 、 を含まない項は 。

ここで に気づく。

共通の でくくって

まとめ:次数の低い文字()について整理すると、共通のかたまりが見つけやすい。

発展。 「次数の低い文字で整理」の原理はこうだ。 について 次なら、式は必ず「( の式) + ( の式)」の形に書ける。 次式は「係数」と「定数」の 部品しかないので、共通因数を探す場所が か所に限定される。次数が高い文字について整理すると部品が増え、探す場所も増える。手が止まる理由はここにある。

この整理術は、数IIの「 について整理して因数定理」「 文字の対称式」まで持ち上がる。どの文字について整理するかは、解く側が選べる。うまく選べることが、文字式を扱う力になる。

答

(1) (2)

別解

答えの形を、具体的な数で当たりをつけてから確かめる、という逆向きの攻め方もある。(1) に を入れると 。答えが の形なら、 的な分解になるはず。答え を同じ数で検分すると で、一致する。

これは「答えの発見法」ではなく、確実な検算法だ。文字 種類の因数分解は符号やくくり方でミスが出やすいので、 と など 組ほど代入して両辺の数が合うかを見る。 組で合えば、まず間違いない。

(2)も で: 元の式 、答え 。

文字の式は数を入れれば数の式になる。この当たり前を検算に使えるようになると、因数分解の答えに自信が持てる。

ポイント

  • 2文字の式は、次数の低いほうの文字について整理する
  • 整理すると共通のカッコが現れ、くくれる
  • 途中で のような因数分解も使う

よくある間違い

  • 次数の高い文字について整理して、複雑にしてしまう
  • に気づかず、くくれない
  • 項ずつくくった後、カッコの中が一致しないのに強引に共通因数とみなす

問11対称式・交代式の因数分解

★ 基礎因数分解対称式・交代式

問題

次の式を因数分解せよ。

(1)

(2)

ヒントを見る

先に一部だけ公式でまとめられないか。(1)は の部分が何かの2乗。(2)は が『和と差の積』。まとめた結果、共通のカッコが現れるはず。

解答・解説

方針

共通のかたまりが見えれば置きかえ、見えなければ2項ずつくくる。この2つの手を使い分ける。(1)は に気づくと、 が共通のかたまりになる。

(2)は と、 に分けると、共通の が出てくる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 一見バラバラの項も、一部を公式でまとめると共通のかたまりが現れることがある。

見るポイントは つある。「 乗の形が隠れていないか」「 項ずつ組むと共通因数が出ないか」だ。(1)は に気づけば、 が全体の共通のかたまりになる。(2)は と に分けると、 が共通で現れる。

(1) なので、 を1つのかたまり とみる。すると

を戻して

(2) 前2項 と、後2項 に分ける。前は和と差のかけ算 、後は 。

両方に共通の が見えた。くくって

まとめ:共通のかたまりを見つけるのがすべて。 を と書きかえると共通が見える、という一手を覚えておこう。

発展。 「交代式は で割り切れる」は、数IIの因数定理( なら が因数)の先取りだ。 文字の交代式なら がまるごと因数になる。式の対称性から因数が分かるという、役に立つ原理である。

対称式には別の見方もある。 と (基本対称式)さえ分かれば、 も も計算できる。この技術は 次方程式の解と係数の関係(数II)で中心的に使う。今回の「 をかたまりと見る」見方は、その基礎になる。

答

(1) (2)

別解

つの式の性格の違いに気づくと、答えの形が先に予想できる。対称式と交代式という見方だ。

(1) は対称式: と を入れ替えても、式はまったく変わらない( と が入れ替わるだけ、 も同じ)。だから答えも入れ替えに対して不変な形になるはずだ。実際 は で不変。

(2) は交代式: と を入れ替えると、全体の符号が反転する(、)。

交代式には役に立つ性質がある。 を代入すると必ず になる(入れ替えても同じ式なのに符号が逆、そんな値は だけ)。 になるということは、 で割り切れる、ということだ。

実際 を(2)に入れると となる。だから が因数だと計算前に確定する。あとは残りを求めるだけで、答え の形が予測できていた。

式の対称性を見てから手を動かす。これは高校数学の全単元で使える第一手である。

ポイント

  • 共通のかたまりが見えたら置きかえ、見えなければ2項ずつくくる
  • 、 を利用
  • のように書きかえて共通因数を見つける

よくある間違い

  • (2)で を と書きかえられず、共通因数を見つけられない
  • くくったあとのカッコの中(符号)を間違える
  • (1)で を 等と誤り、くくり方を崩す

問12展開・因数分解を利用した証明

★ 基礎証明展開因数分解

問題

を整数とする。連続する2つの偶数 、 の積に を加えると、奇数の2乗になることを証明せよ。

ヒントを見る

左辺 を展開して整理すると? その式が『何かの2乗』の形にまとまることを示す。最後に、その『何か』が奇数だと言えば完成。

解答・解説

方針

『〜になることを証明せよ』は、式を変形して、目標の形にたどり着けばよい。ここでの目標は『奇数の2乗』。だから、 を展開して整理し、 の形に持っていく。 は奇数(偶数 に1を足したもの)なので、 になれば『奇数の2乗』が示せる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 証明問題でも、やることは計算と同じだ。ゴールの形を先に式で書いておく。

ゴールは「奇数の 乗」。奇数は の形だから、目指す形は だ。つまり「与えられた式を展開・整理して、何かの 乗に変形する」が道筋になる。

を展開すると になる。これは の展開そのものだ。ゴールから逆算する目があれば、変形の行き先に迷わない。

連続する2つの偶数 、 の積に1を足した式を、展開して整理する。

が、 の形(、)になっていることに気づくのがポイントだ。

4n²2n2n12n12n1
(2n+1)² = 4n²+2n+2n+1 = 4n²+4n+1。2n(2n+2)=4n²+4n に 1 を足すと完成

ここで は偶数 に1を足した数だから奇数。だから は、奇数 の2乗になっている。よって、連続する2つの偶数の積に1を足すと奇数の2乗になることが示された。(証明終わり)

発展。 別解の「まん中の 乗」の見方を使うと、親戚の命題が次々に証明できる。連続する つの奇数( で は偶数)の積に を足しても になる。つまり偶数の 乗だ。さらに「差が の 数の積 はまん中の 乗」と一般化できる。

証明の作法もここで押さえたい。「 を整数とする」と文字で置くことが、無限個の場合を一度に扱う仕掛けだ。数値実験は発見のための道具で、文字式は証明のための道具だ。役割を分けて両方使うのが、数学の正しい進め方である。

答

であり、 は奇数だから、奇数の2乗になる(証明終)

別解

この命題は具体的な数で実験してから見ると、中身がとても素朴だと分かる。

と出てくる奇数はいつもかけた 数のまん中の数だ( と のまん中が 、 と のまん中が )。理由はまん中の数 を中心に考えると分かる。連続する つの偶数は を挟んで と 。積に を足すと

和と差の積の公式そのものだ。 と がぴったり打ち消し合って、まん中の数の 乗だけが残る。本解の は、 とおいたこの計算の変装だった。

まん中の数を中心に置くと、式が対称になる。これは、対称性を利用して式を簡単にするという、よく使う方法のいちばん簡単な例である。実験 → まん中の発見 → 公式で証明、という流れを一度体験しておくと、証明問題への構えが変わる。

ポイント

  • 証明は、式を変形して目標の形にたどり着く
  • を の形に見抜く( 型)
  • は奇数(偶数+1)であることを、はっきり書く

よくある間違い

  • 展開しただけ()で止め、2乗の形に変形しない
  • が奇数であることの説明を書き忘れる
  • 具体的な数()の確認だけで証明としてしまう(すべての で成り立つ論証が要る)